JP5265900B2 - オフセット印刷用紙 - Google Patents
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Description
近年、このような新聞用紙には、環境保護、増頁あるいは持運び等の観点からも、軽量化の要請が強まっている。高い印刷品質を維持したままの軽量化は、用紙の単位面積当たりの重量(坪量)が軽くなることにより、紙が薄くなり、用紙の不透明度や紙力低下を引き起こす。その結果、印刷前面の画像や文字が、裏面に透き通って見える裏抜けの低下や、印刷画像の鮮明性の低下等の印刷品質悪化が生ずる。また、用紙自体の紙力も低下することから強度および紙こし(剛度)低下による、印刷時の走行性や印刷作業性の悪化、損紙の増加等が生ずる。
例えば、新聞用紙の裏抜けを少なくするためには、紙の不透明度および吸油度を上げることが最も効果的であることが知られている。不透明度を上げるには、比散乱係数の大きい二酸化チタン等を配合することが効果的であるが、二酸化チタンは非常に高価であるため、多く配合することは経済的ではなかった。また、吸油度が高い填料としては、ホワイトカーボンが広く使用されてきた。
また、新聞用紙は通常、浸透乾燥型インキを使用しアフタードライヤーを持たないコールドセット型の輪転機で印刷されており、単に顔料塗工層を設けてもインキの乾燥性が悪く、特にカラー印刷ではインキの層が多いため、インキセット性が遅くなってべたつきの問題が発生することがあり、印刷作業性に優れた新聞用紙を得ることは難しい。
そこで、本発明は、古紙パルプの配合率の高いオフセット印刷用紙において、白色度、不透明度が高く、裏抜けが良好で、十分な強度を有するとともに、特に浸透乾燥型インキを使用するコールドセット型高速輪転機による印刷時のインキ着肉性とインキセット性のバランスに優れ、かつパイリングの発生の少ないオフセット印刷用紙を提供することを課題とする。
合率が原紙重量当たり60重量%以上の原紙上に顔料塗工層を設けたオフセット印刷用紙
が浸透乾燥型インキを用いてコールドオフセット輪転機で印刷されるオフセット印刷用紙
において、原紙の坪量が30〜50g/m2であり、抄紙時に少なくともフレッシュな炭
酸カルシウムを含む1種以上の填料が原紙重量当たり3重量%を超え25重量%以下添加
され、原紙の顔料塗工層の塗工量が両面当たり1.5g/m 2 以上4.0g/m2以下で
あり、原紙及び顔料塗工層に含有する灰分が原紙由来の灰分と顔料塗工層由来の灰分とで
7重量%以上25重量%以下であることを特徴とする。
同様に、請求項2に記載のオフセット印刷用紙は、前記填料が、針状もしくはロゼッタ
型(いがぐり状)の炭酸カルシウム、または軽質炭酸カルシウムとシリカとの複合物から
選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする。
請求項3に記載のオフセット印刷用紙は、前記填料の平均粒子径が、レーザー回析法の
値で1.0μm以上10.0μm以下であることを特徴とする。
請求項4に記載のオフセット印刷用紙は、前記オフセット印刷用紙の平均表面粗さの値
が、超深度カラー3D形状測定レーザー顕微鏡の測定で、2.5μm以上8.5μm以下
であることを特徴とする。
請求項5に記載のオフセット印刷用紙は、前記オフセット印刷用紙が新聞用紙用である
ことを特徴とする。
請求項6に記載のオフセット印刷用紙の製造方法は、古紙パルプの配合率が原紙重量当
たり60重量%以上の原紙上に顔料塗工層を設けたオフセット印刷用紙が浸透乾燥型イン
キを用いてコールドオフセット輪転機で印刷されるオフセット印刷用紙の製造方法におい
て、原紙の坪量が30〜50g/m2であり、抄紙時にフレッシュな填料として原紙重量
当たり3重量%を超え25重量%以下の少なくとも炭酸カルシウムを含む1種以上を添加
して中性抄造し、得られた原紙に顔料塗工層を両面当たり1.5g/m 2 以上4.0g/
m2以下の塗工量で塗工し、原紙由来の灰分と顔料塗工層由来の灰分との合計が7重量%
以上25重量%以下となるようにすることを特徴とする。
(1)軽量でかつ古紙パルプや炭酸カルシウムの配合率を高くすることができ、環境に配慮したオフセット印刷用紙を得ることができる。
(2)印刷時の不透明度および白色度が高く、裏抜けが少なく、十分な強度を有する。
(3)特に浸透乾燥型インキを使用するコールドオフセット型高速輪転機による印刷において、インキ着肉性が良好で印刷画像の再現性、鮮明性など印刷品質に優れる。
(4)特に浸透乾燥型インキを使用するコールドオフセット型高速輪転機による印刷において、インキセット性が良好でべたつきが抑えられるとともに、パイリングの発生が少ないなど、印刷作業性に優れる。
[パルプ]
本発明の原紙に配合するパルプとしては、原紙中に脱墨古紙パルプ(以下「古紙パルプ」または「DIP」ということがある)を60重量%以上配合する。古紙パルプは、化学パルプよりも不透明度が高くなりやすく裏抜けが改善されるとともに、機械パルプよりも吸油度が低いことから良好なインキセット性が得られ、べたつきが改善される。古紙パルプ以外には、化学パルプ(NBKP、LBKP等)、機械パルプ(GP、CGP、RGP、PGW、TMP等)を任意の割合で混合して使用することができる。脱墨パルプが60重量%未満の場合、化学パルプを併用すると不透明度および裏抜け値が低下し、また、機械パルプを併用すると、引張強度が低下するため印刷時の断紙が起こる問題がある。本発明において古紙パルプの配合量は、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上である。
本発明で原紙に含有される填料としては、抄紙時に原紙重量当たり3重量%を超えて添加されることが必要であり、好ましくは5重量%以上である。通常、古紙パルプにも2〜6重量%程度の炭酸カルシウムやクレー、タルク、シリカ等の無機物が含まれているが、抄紙時に新たにフレッシュな填料を添加することで、古紙パルプ由来の無機物を填料として利用した場合に比べて、白色度、不透明度、裏抜け、強度、紙厚等の品質向上効果が期待出来る。また、古紙パルプ由来の填料に比べてフレッシュな填料は、填料自身の品質に優れ歩留まりも良く、均一な填料分布を有する原紙を得ることができる。
本発明において、抄紙時に添加する填料の量の上限は特に限定されるものではないが、多すぎるとこわさの低下や紙粉の発生が起こりやすくなるため、25重量%以下程度が適当であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。
また、本発明のオフセット印刷用紙において、填料は古紙パルプに含有されていたものと抄紙時に添加されるものとを合わせて、原紙中の灰分として5重量%以上の割合で含有されていることが好ましい。灰分が少なすぎると裏抜け防止等の効果は十分ではなく、多すぎる場合は強度が低下する傾向がある。原紙中の灰分の上限は特に制限されるものではないが、後述するように顔料塗工層と合わせた灰分が7重量%以上25重量%以下となるように調整することで、優れた品質のオフセット印刷用紙を得ることができる。
本発明において添加される填料の種類は、白色度、不透明度等を高くし、さらに印刷品質や印刷作業性の向上に効果的なことから、炭酸カルシウムが好適であり、少なくとも炭酸カルシウムを含む1種または2種以上添加される。炭酸カルシウムとしては、後述する針状またはロゼッタ型の軽質炭酸カルシウムや、軽質炭酸カルシウムとシリカとの複合物を用いると、白色度、不透明度等の向上の他、原紙中での均一な填料分布が得られやすく好ましい。炭酸カルシウム以外の填料としては、水和珪酸、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、酸化チタン、合成樹脂填料等の公知の製紙用填料を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。新たに添加される填料における炭酸カルシウムが占める割合は、炭酸カルシウムが多いほど望ましいが、添加される填料100重量部に対して30重量部〜100重量部が好適である。
本発明で用いられる炭酸カルシウムとは、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムのいずれかであり、また形状についても針状、柱状、紡錘状、球状、立方形状、ロゼッタ型(いがぐり状)のいずれでも良い。この中でも特に、針状もしくはロゼッタ型のカルサイト系の軽質炭酸カルシウムを用いた場合に、不透明度、裏抜け改善効果に優れるとともに、填料分布も均一になりやすい。
また、本発明においては、軽質炭酸カルシウムとシリカとの複合物(以下、「軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物」ということがある)も使用することができる。軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物とは、軽質炭酸カルシウム粒子の表面をシリカで被覆した軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物であり、新たに添加される填料の全量または一部に使用することが好ましい。この軽質炭酸カルシウム−シリカ複合粒子を使用することにより、密度が低く、不透明度および裏抜けが良好なオフセット印刷用紙を得ることができる。このような軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物は、例えば特開2003−212539号公報、特開2005−219945号公報等に記載されている。
軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物を用いた場合は、インキセット性(印刷物のべたつき低減)に優れる。また、カレンダー処理を行った後でも、低密度を維持しながら高平滑度と相反する性質を発揮することができる。軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物は、インキ着肉性とインキセット性のバランスがより良好になることから、軽質炭酸カルシウムとシリカとの固形分重量比が、軽質炭酸カルシウム/シリカ=30/70〜70/30であることが好ましい。軽質炭酸カルシウムの固形分重量比が小さすぎる場合、印刷時の表面強度が劣る傾向にあり、多すぎる場合、インキセット性の向上効果が小さくなるため、前記の割合であることが好ましい。
また、複合物に使用する軽質炭酸カルシウムについては、針状、柱状、紡錘状、球状、立方形状、ロゼッタ型のいずれでも良いが、この中でも特にロゼッタ型のカルサイト系の軽質炭酸カルシウムを用いた場合に、特に裏抜け、不透明度改善効果が向上する。
本発明で用いられる填料の平均粒子径は、小さいほど望ましいが、小さすぎると不透明度や裏抜けに効果が小さく印刷時の紙粉も発生しやすいため、レーザー回折法の値で1.0μm以上が好ましい。上限としては10.0μm以下が好ましく、より好ましくは5.0μm以下である。平均粒子径が大きすぎると、強度や不透明度、裏抜けの低下、印刷時の紙流れ不良等の問題が起こる傾向がある。本発明では前記範囲の平均粒子径であることにより、より優れた品質向上効果を期待できるとともに、原紙における均一な填料分布も得られる。
その他必要に応じて、硫酸バント、サイズ剤、紙力増強剤、歩留まり向上剤、着色剤、染料、消泡剤等を含有してもよい。また、パルプの繊維間結合を阻害する作用を持つ有機化合物を含有することにより、低密度化した原紙を用いることが好ましい。配合し得るパルプの結合阻害剤としては、製紙用で紙の嵩高化のために上市された低密度化剤(あるいは嵩高剤)が適しており、具体的には、高級アルコールのエチレンおよび/またはプロピレンオキサイド付加物、多価アルコール型非イオン型界面活性剤、高級脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物のエチレンオキサイド付加物、あるいはポリアルキレンポリアミン・脂肪酸・エピクロロヒドリン縮合物等である。販売されている嵩高薬品としては、花王(株)のKB110、115、日本PMC(株)のPT−8102、日本油脂(株)のSF−B100などといった薬品があり、単独あるいは2種以上を併用してもよい。
原紙の抄紙方法については、特に限定されるものではなく、抄紙機としては例えば、長綱式抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、円綱式抄紙機、短綱式抄紙機等の商業規模の抄紙機が、目的に応じて適宜選択して使用出来る。
炭酸カルシウムは、酸性領域では溶解してしまうため、抄紙系は中性〜弱アルカリ性であることが望ましい。炭酸カルシウムを有効的に利用するためには、抄紙pH6.0以上で抄紙することが望ましい。また、表面塗工後の紙面pHは炭酸カルシウムを含んでいるため、本条件で抄造することによりpH7.0以上となる。
また、サイズプレス、ビルブレード、ゲートロールコーター、プレメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス等を使用して、本発明の効果を阻害しない範囲で澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、表面サイズ剤等を塗工することも可能である。本発明におけるオフセット印刷用紙は浸透乾燥型インキをコールドセット型高速輪転機で印刷できる必要があり、原紙も一般の新聞用紙並みの引張強度、引裂強度、伸び等の物理的強度を有するように製造される。坪量は30〜50g/m2程度である。
[顔料]
本発明の塗工層に用いられる顔料としては、従来から塗工用顔料として知られているカオリン、クレー、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料、プラスチックピグメントなどの有機顔料であり、これらの顔料は必要に応じて単独または2種類以上併用して使用できる。中でも炭酸カルシウムが好ましい。
炭酸カルシウムとしては、レーザー回折式で測定した2μmより小さい粒子径の累積堆積率が70%以上の炭酸カルシウムが好ましい。
また、重質炭酸カルシウムを顔料100重量部当たり50重量部以上、さらに好ましくは70重量部以上配合することにより、白色度やインキセット性等が向上する。
本発明に用いられる接着剤としては従来から用いられている、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体(ラテックス)、あるいはポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成接着剤;カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白などの蛋白質類;酸化澱粉、陽性澱粉、酵素編成澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などのエーテル化澱粉、デキストリンなどの澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体などの通常の塗工紙用接着剤1種以上を便宜選択して使用される。特に、スチレン・ブタジエン系ラテックスもしくはポリビニルアルコールを含有することにより、オフセット印刷時におけるブランケットへの紙粉の堆積、いわゆるブランケットパイリングが低減され、コストなどの点においては、澱粉を用いることが好ましい。
本発明においては、インキ着肉性、インキセット性、紙粉等の点から、これらの接着剤は顔料100重量部に対して20〜100重量部が好ましく、さらに好ましくは30〜80重量部である。接着剤が少なすぎると、表面強度が低下しやすく紙粉が発生しやすい。また、多すぎるとインキ着肉性の低下やインキセット性も悪くなり、印刷後の刷版の洗浄性も悪化する。新聞印刷では、1台のオフセット印刷機において1日に10万部以上印刷することが多く、このような長時間の印刷においては、パイリングが少ないことが求められる。
その他必要に応じて、消泡剤類、スライムコントロール剤類、染料類、分散剤類、増粘剤類、保水剤類、耐水化剤などを適宜配合しても差し支えない。また、本発明の塗工層には、表面サイズ剤を使用してもよい。表面サイズ剤としては、アルケニル無水コハク酸やアルキルケテンダイマー、オレフィン系不飽和モノマーを共重合の構成要素のひとつとするサイズ剤、またはスチレン系もしくはアクリルエステル系不飽和モノマーを共重合体の構成要素のひとつとするサイズ剤が挙げられる。勿論、これらを組み合わせて使用することも何ら差し支えない。
・塗工装置
上記の顔料、接着剤等を含有し調整された塗工液を塗工する方法としては、特に限定されるものではないが、ブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター、ゲートロールコーター等を用いて、一層もしくは二層以上を原紙上に片面ずつもしくは両面同時に両面塗工する。中でも、ゲートロールコーターなどのフィルム転写型ロールコーターを使用することにより、インキ着肉性が向上する。
塗工後の湿潤塗工層を乾燥させる方法としては、例えば蒸気加熱シリンダー、加熱熱風エアドライヤー、ガスヒータードライヤー、電気ヒータードライヤー、赤外線ヒータードライヤー、高周波ヒータードライヤー等の各種方式が単独または併用して用いられる。
本発明において塗工量は、通常は表裏面に塗工するため、両面当たり4.0g/m2以下である。なお、表裏各面に対する塗布量は同じでも違っていてもよく、原紙の表裏差や印刷条件等に合わせて適宜調整することができ、また片面のみに塗工することも差し支えない。片面当たりでは2.0g/m2以下が好ましい。塗工量が片面2.0g/m2を超えた場合は、良好なインキ着肉性等が得られるものの、浸透乾燥型インキを用いたオフセット印刷では原紙へ溶剤が吸収されることによってインキが乾燥する機構であるため、塗工量が多すぎると原紙の細孔が埋められて乾燥が不十分となり、インキセット性に劣り印刷後のべたつきが大きくなりやすい。また、塗工量が多くなると、オフセット印刷用紙の坪量を目標の値とするためには原紙の割合を減らす必要が生じ、結果的に裏抜けや紙こしが低下する等の問題がある。塗工量の下限は制限されるものではないが、少なすぎるとインキセット性は向上するものの、インキ着肉性および白色度が十分に得られないため、本発明では片面当たり0.5g/m2以上であることが好ましい。
以上のように塗工乾燥された後は、マシンカレンダー、またはスーパーカレンダー、高温ソフトニップカレンダー等で平滑化処理を行ってもよい。特に、100KN/m以下の軽度のカレンダー条件であることが好ましい。ただし、所望の品質のオフセット印刷用紙が得られれば、いずれのカレンダー処理、あるいは未カレンダー処理でもよい。
また、カレンダー処理後の調湿、加湿のための水塗り装置、静電気加湿装置、蒸気加湿装置等を適宜組み合わせて使用することも可能である。本発明のオフセット印刷用紙の水分としては、インキ着肉性等の印刷品質の点から、1.0%以上9.0%以下が好ましく、また、水分が5.0%以上でもインキセット性に優れる。
[灰分]
本発明において得られるオフセット印刷用紙の灰分は、原紙由来の灰分と顔料塗工層由来の灰分との合計が7重量%以上であり、より好ましくは10重量%以上である。灰分が7重量%未満であると、白色度、不透明度、裏抜け等に十分な効果が得られない。灰分の上限は特に限定されるものではないが、多すぎると強度低下等により印刷作業性が悪化するため、25重量%以下程度が適当である。好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは15重量%以下である。本発明では、このような灰分になるように原紙中に填料および塗工層中に顔料を含有することで、白色度、不透明度、裏抜けが向上するとともに、十分な強度を維持することが可能となり、高速で印刷されるオフセット輪転機においてもインキセット性、パイリングが良好となる。
本発明のオフセット印刷用紙は、超深度カラー3D形状測定レーザー顕微鏡(製品名:VK−9510/KEYENCE社製)での平均表面粗さの値が2.5μm以上であることが好ましく、より好ましくは3.0μm以上である。上限としては8.5μm以下であることが好ましく、より好ましくは6.0μm以下、さらに好ましくは5.5μm以下である。
この機器によれば、紙表面のミクロな凹凸を測定することが出来る。測定方法は、紙表面上の任意な領域を選択し、紙の厚さ方向(Z軸方向)に短波長のレーザー(408nm)を照射させ、紙表面上のミクロな凹凸を検出、それによるある一定レベルの基準面からの高さの差を紙表面の粗さとして、その平均値を算出したものである。この測定値は、実際に印刷した際のインキ着肉性や網点再現性、画像の鮮明性と高い相関がある。これまで、紙表面上の平滑性(粗さ)の測定機器としては、例えば王研式平滑度計やベック平滑度計、またパーカープリントサーフラフネス試験器等があったが、超深度カラー3D形状測定レーザー顕微鏡は、これら従来の測定機器より、さらにミクロな範囲の粗さを比較的広い領域で測定できるため、従来の機器では測定値に差がなくても、本発明で用いられる測定方法による平均表面粗さの値では差がみられ、それが実際の印刷面のインキ着肉性や網点再現性等と相関を示す。
この平均表面粗さの値が2.5μm以下であると、非常に優れたインキ着肉性や網点再現性の印刷品質が得られるが、インキセット性等に劣る傾向がある。また、8.5μm以上であると、インキセット性に関しては良好なものの、インキ着肉性や網点再現性等に劣る傾向がある。
(1)灰分:JIS P8251に準じて温度525℃で3時間を適用した。
(2)白色度:JIS P8148に準じて測定した。
(3)不透明度:JAPAN TAPPI NO.45に準じて測定した。
(4)引張り強さ:JIS P 8113に準じて測定した。
(5)ベック平滑度:JIS P8119に準じて測定した。
(6)レーザー表面粗さ:超深度カラー3D形状測定レーザー顕微鏡(VK−9510/KEYENCE)で測定した算術平均表面粗さ。
(7)裏抜け:東芝機械(株)のオフセット輪転機(4色)を用いて、新聞印刷用オフセット印刷インキ(東洋インキ(株)製 NewsKing)を用いて印刷速度600rpmで印刷した印刷物の裏抜けについて、4段階で目視評価した。◎:非常に優れる、○:優れる、△:やや問題あり、×:問題あり。
(8)インキ着肉性:東芝機械(株)のオフセット輪転機(4色)を用いて、新聞印刷用オフセット印刷インキ(東洋インキ(株)製 NewsKing)を用いて印刷速度600rpmで印刷した印刷物の鮮明性およびインキ着肉性を、4段階で目視評価した。◎:非常に優れる、○:優れる、△:やや問題あり、×:問題あり。
(9)インキセット性:東芝機械(株)のオフセット輪転機(4色)を用いて、新聞印刷用オフセット印刷インキ(東洋インキ(株)製 NewsKing)を用いて印刷速度600rpmで印刷した印刷物の非画線部の汚れについて、汚れの少ない具合を4段階で目視評価した。◎:非常に優れる、○:優れる、△:やや問題あり、×:問題あり。
(10)パイリング:東芝機械(株)のオフセット輪転機(4色)を用いて、新聞印刷用オフセット印刷インキ(東洋インキ(株)製 NewsKing)を用いて印刷速度600rpmで印刷した後の、ブランケットのパイリング状況を4段階で評価した。◎:非常に優れる、○:優れる、△:やや問題あり、×:問題あり。
(原紙の製造)
パルプとして晒しクラフトパルプ5%、メカニカルパルプ20%、古紙パルプ75%の割合で混合して離解し、カナダ標準型フリーネス(CSF)200ccに調整したパルプスラリーに、対絶乾パルプ当たり0.1%のポリアクリルアミドと、0.15%の歩留まり向上剤を添加して、填料として新たに軽質炭酸カルシウム(ロゼッタ型、平均粒子径3.0μm)を原紙重量当たり8.0%添加し、得られた試料をギャップフォーマー型抄紙機で坪量40.0g/m2となるように中性抄造し、新聞用紙原紙を得た。
(顔料塗工層の形成)
粗粒重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製FMT−90)50部および塗工用の2級カオリン(IMERYS社製KCS)50部からなる顔料に、分散剤として対顔料でポリアクリル酸ソーダ0.2部を添加して、セリエミキサーで分散し、固形分濃度が70%の顔料スラリーを調整した。このようにして得られた顔料スラリーに非増粘型のスチレンブタジエンラテックス(ガラス転移温度14℃)10部、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉30部を接着剤として加え、さらに水を加えて固形分濃度25%の塗工液を得た。
この塗工液を、上記原紙に、両面の塗工量が固形分で2.0g/m2になるように、1200m/分の塗工速度でゲートロールコーターにより両面塗工を行い乾燥し、ソフトニップカレンダー(線圧15kN/m、温度110℃)により平滑化処理を行い、水分が8%のオフセット印刷用紙を得た。
実施例1において、炭酸カルシウムを原紙重量当たり5.0%添加した以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用紙を得た。
実施例1において、炭酸カルシウムを原紙重量当たり10.0%添加した以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用紙を得た。
実施例1において、軽質炭酸カルシウム(ロゼッタ型、平均粒子径3.0μm)に代えて針状型の軽質炭酸カルシウムを用いた以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用紙を得た。
実施例1において、軽質炭酸カルシウム(ロゼッタ型、平均粒子径3.0μm)を原紙重量当たり6.0%、および軽質炭酸カルシウム−シリカ複合体を原紙重量当たり2.0%添加した以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用紙を得た。
実施例1において、両面の塗工量が固形分で1.5g/m2になるように塗工した以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用紙を得た。
実施例1において、両面の塗工量が固形分で3.0g/m2になるように塗工した以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用紙を得た。
実施例1において、顔料の組成比を粗粒重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製FMT−90)100部とした以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用紙を得た。
実施例1において、炭酸カルシウムを原紙重量当たり2.0%添加した以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用紙を得た。
実施例1において、炭酸カルシウムを原紙重量当たり3.0%添加し、また、両面の塗工量が固形分で3.0g/m2になるように塗工した以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用紙を得た。
実施例1において、両面の塗工量が固形分で0.8g/m2になるように塗工した以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用紙を得た。
実施例1において、両面の塗工量が固形分で4.5g/m2になるように塗工した以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用紙を得た。
実施例1において、塗工液に顔料およびラテックスを配合せず、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉を100部として固形分濃度10%の塗工液を得て、この塗工液を塗工量が両面当たり1.0g/m2となるように塗工した以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用紙を得た。
実施例1において、炭酸カルシウムを原紙重量当たり2.0%添加し、また、塗工液に顔料およびラテックスを配合せず、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉を100部として固形分濃度10%の塗工液を得て、この塗工液を塗工量が両面当たり1.0g/m2となるように塗工した以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用紙を得た。
(1)実施例1〜8と比較例1〜6のインキ着肉性及びインキセット性を対比すると、比
較例1〜6が両者のバランスが悪いのに対して、実施例1〜8はその両者のバランスが優
れていることがわかる。
(2)実施例1〜8の白色度、不透明度、引張り強さの試験結果から、本発明のオフセッ
ト印刷用紙は、裏抜けの低下、印刷画像の鮮明性の低下等の印刷品質悪化の発生が抑えら
れたものであることがわかる。
(3)実施例1〜8と比較例1〜6のレーザー表面粗さを対比すると、比較例1〜6のレ
ーザー表面粗さが6.0μm以上であるのに対して、それが6.0μm以下である実施例
1〜8の本発明のオフセット印刷用紙は、平坦で高平滑な表面性を備えることができ、イ
ンキ着肉性の低下や紙粉等の発生が抑えられた、印刷品質および印刷作業性を両立したも
のであることがわかる。
(4)比較例1は、填料の添加量が少ない例であり、実施例1〜5と同様の塗工層が設け
られているが、インキ着肉性が不十分である。比較例2も、填料の添加量が少ない例であ
り、トータル灰分は実施例2と同程度であって、比較例1に比べ塗工量が多いためにイン
キ着肉性は改善されているが、一方でインキセット性、パイリングが悪化している。この
ことから、原紙上に単に塗工層を設けただけではバランスの良い品質は得られず、抄紙時
にフレッシュな填料を原紙重量当たり3重量%を超え25重量%以下で添加することで、
目的とするオフセット印刷用紙が得られることがわかる。
(5)比較例3は、塗工層の塗工量が少ない例であり、裏抜け、インキ着肉性、パイリン
グに劣る。比較例4は、塗工量が多い例であり、インキセット性、パイリングに劣る。こ
のことから、本発明の塗工量の範囲、即ち、両面当たり4.0g/m2以下で塗工することにより、目的とするオフセット印刷用紙が得られることがわかる。
(6)比較例5は、顔料を含有しない塗工層(いわゆるクリア塗工層)を設けた、従来の
中性新聞用紙の例であり、インキ着肉性が不十分である。比較例6も顔料を含有しない塗
工層を設けた例であり、かつ新たな填料の添加量も少なく、インキ着肉性が不十分で、裏
抜けも劣る。
Claims (6)
- 古紙パルプの配合率が原紙重量当たり60重量%以上の原紙上に顔料塗工層を設けたオ
フセット印刷用紙が浸透乾燥型インキを用いてコールドオフセット輪転機で印刷されるオ
フセット印刷用紙において、
原紙の坪量が30〜50g/m2であり、抄紙時に少なくともフレッシュな炭酸カルシウ
ムを含む1種以上の填料が原紙重量当たり3重量%を超え25重量%以下添加され、原紙
の顔料塗工層の塗工量が両面当たり1.5g/m 2 以上4.0g/m2以下であり、原紙
及び顔料塗工層に含有する灰分が原紙由来の灰分と顔料塗工層由来の灰分とで7重量%以
上25重量%以下であることを特徴とするオフセット印刷用紙。 - 前記填料が、針状もしくはロゼッタ型(いがぐり状)の炭酸カルシウム、または軽質炭
酸カルシウムとシリカとの複合物から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とす
る請求項1に記載のオフセット印刷用紙。 - 前記填料の平均粒子径が、レーザー回析法の値で1.0μm以上10.0μm以下であ
ることを特徴とする請求項1または2に記載のオフセット印刷用紙。 - 前記オフセット印刷用紙の平均表面粗さの値が、超深度カラー3D形状測定レーザー顕
微鏡の測定で、2.5μm以上8.5μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のい
ずれか一項に記載のオフセット印刷用紙。 - 前記オフセット印刷用紙が新聞用紙用である請求項1〜4のいずれか一項に記載のオフ
セット印刷用紙。 - 古紙パルプの配合率が原紙重量当たり60重量%以上の原紙上に顔料塗工層を設けたオ
フセット印刷用紙が浸透乾燥型インキを用いてコールドオフセット輪転機で印刷されるオ
フセット印刷用紙の製造方法において、
原紙の坪量が30〜50g/m2であり、抄紙時にフレッシュな填料として原紙重量当た
り3重量%を超え25重量%以下の少なくとも炭酸カルシウムを含む1種以上を添加して
中性抄造し、得られた原紙に顔料塗工層を両面当たり1.5g/m 2 以上4.0g/m2
以下の塗工量で塗工し、原紙由来の灰分と顔料塗工層由来の灰分との合計が7重量%以上
25重量%以下となるようにすることを特徴とするオフセット印刷用紙の製造方法。
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