JP5262230B2 - 新規多型検出法 - Google Patents
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Description
これらの多型(アレル)またはハプロタイプの量的効果とその酵素活性との間の関連を調査するために、CNVと他の多型の概念とを組み合わせて、各SNP, インデル,遺伝子変換多型のコピー数を定量するためのシステムを確立することが望まれている[非特許文献17、18]。
CYP2D6のジェノタイピング方法としてはSNP、インデル、遺伝子変換およびCNVに対する複数の方法(ロングPCRベースの制限断片長多型(RFLP)[非特許文献19]、Amplichip P450[非特許文献20、21]、ピロシーケンシング[非特許文献22]、SNaPshot[非特許文献23]など)が報告されているが、これらの技術は多型の定性的検出のために開発されたものであり、定量性を欠いている。
多型ごとにコピー数を算出するためには、遺伝子の総コピー数とアレル比を算出することが必要である。リアルタイム定量PCRを使用して総遺伝子コピー数を決定するための方法は既に確立されており、広く用いられている[非特許文献24、25]。一方、分子反転プローブ(molecular inversion probe)[非特許文献17]、TaqMan SNPジェノタイピングアッセイ[非特許文献26]、融解曲線分析[非特許文献27]および質量分析[非特許文献28]を含む、アレル比についてのいくつかの方法がこれまでに報告されているが、CYP2D6ジェノタイピングへの適用の可能性は不明であった。
Nat. Genet., 36: 949-51 (2004) Science, 305: 525-8 (2004) Nature, 444: 444-54 (2006) N. Engl. J. Med., 351: 2827-31 (2004) Genome Res., 16: 949-61 (2006) Am. J. Hum. Genet., 79: 275-90 (2006) Nat. Genet., 37: 727-32 (2005) Annu. Rev. Genomics Hum. Genet., 7: 407-42 (2006) Nat Biotechnol; 17: 292-296 (1999) J. Hum. Genet., 46: 471-7 (2001) Nature; 437: 1299-1320 (2005) Pharmacogenomics J; 5: 6-13 (2005) Clin Chem; 50: 1623-1633 (2004) J Clin Oncol; 23: 9312-9318 (2005) Pharmacogenomics J; 7: 257-265 (2007) Mol Ther; 83: 234-242 (2008) Nucleic Acids Res; 33: e183 (2005) Nat Rev Genet; 8: 639-646 (2007) Clin Chem; 46: 1072-1077 (2000) Drug Metab Pharmacokinet; 17: 157-160 (2002) Ther Drug Monit; 28: 673-677 (2006) Eur J Clin Pharmacol; 59: 521-526 (2003) Methods Mol Biol; 297: 243-252 (2005) Hum Mutat; 22: 476-85 (2003) J Biomed Biotechnol; 005: 48-53 (2005) BMC Genomics; 7: 143 (2006) Clin Chem; 46:1574-1582 (2000) Clin Chem; 51: 2358-2362 (2005)
[1]SNP部位を含むゲノム領域における被験体のジェノタイプを判定する方法であって、該被験体由来の該ゲノム領域を含むDNA含有試料を鋳型として、該SNP部位のタイピングをインベーダ法にて実施する工程を含み、かつ該工程において蛍光をリアルタイムで測定することを特徴とする方法;
[2]蛍光強度が飽和に達するより前の時点における各アレルに対応する蛍光強度の比を用いて、両アレルのコピー数の比を判定する、上記[1]記載の方法;
[3]SNP部位を含むゲノム領域がCNV領域内にある、上記[2]記載の方法;
[4]アレル非対称性を伴う重複を検出するためのものである、上記[2]または[3]記載の方法;
[5]インベーダ工程の前にSNP部位を含むゲノム領域を増幅する工程をさらに含む、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の方法;
[6]ゲノム領域が複数のSNP部位を含み、増幅工程が該複数のSNP部位を含む複数の領域を同時に増幅するものである、上記[5]記載の方法;
[7]定量PCRを用いて得られる両アレルの総コピー数(総遺伝子コピー数)に基づいて、各アレルのコピー数を判定する、上記[5]または[6]記載の方法;
[8]定量PCRがTaqMan法により行われることを特徴とする、上記[6]記載の方法;および
[9]アレル非対称性を伴う重複もしくは欠失が検出されたSNP部位が連続して、または連続しなくとも複数含まれる範囲を同定することによりCNVのブレークポイントを特定することを含む、上記[6]〜[8]のいずれかに記載の方法
等を提供する。
インベーダ法では、TaqMan PCR法などとは異なり、アレル特異的オリゴヌクレオチド(アレルプローブ)自体は標識されず、多型部位の塩基の5’側に鋳型DNAと相補性のない配列(フラップ)を有し、3’側には鋳型に特異的な相補配列を有する。インベーダ法では、さらに鋳型の多型部位の3’側に特異的な相補配列を有するオリゴヌクレオチド(インベーダプローブ;該プローブの5’末端である多型部位に相当する塩基は任意である)と、5’側がヘアピン構造をとり得る配列を有し、ヘアピン構造を形成した際に5’末端の塩基と対をなす塩基から3’側に連続する配列がアレルプローブのフラップと相補的な配列であることを特徴とするFRET(fluorescence resonance energy transfer)プローブとが用いられる。FRETプローブの5’末端は蛍光標識(例えば、FAMやVICなど)され、その近傍にはクエンチャー(例えば、TAMRAなど)が結合しており、そのままの状態(ヘアピン構造)では蛍光は検出されない。
鋳型であるゲノムDNAにアレルプローブおよびインベーダプローブを反応させると、三者が相補結合した際に多型部位にインベーダプローブの3’末端が侵入する。この多型部位の構造を認識する酵素(cleavase)を用いてアレルプローブの一本鎖部分(即ち、多型部位の塩基から5’側のフラップ部分)を切り出すと、フラップはFRETプローブと相補的に結合し、フラップの多型部位がFRETプローブのヘアピン構造に侵入する。この構造をcleavaseが認識して切断することにより、FRETプローブの末端標識された蛍光色素が遊離してクエンチャーの影響を受けなくなって蛍光が検出される。
したがって、このような場合には、検量線分析を行わなくとも、多数の被験体のプロットが集中する3つのクラスターを総コピー数が2コピーのホモ接合体およびヘテロ接合体と推定し、これらのクラスターから外れた位置にプロットされる被験体は、目的のSNP部位を含む領域について、アレル非対称性を伴う重複が起こっていると判定することができる。
例えば、定量PCRより得られる両アレルの総コピー数が4コピーであり、RETINAより得られる両アレルのコピー数の比が1:1の場合、各アレル2コピーずつであると判定できる。また、定量PCRより得られる両アレルの総コピー数が3コピーであり、RETINAより得られる両アレルのコピー数の比が1:0の場合、被験体は重複を伴うホモ接合体であると判定することができる。さらに、定量PCRより得られる両アレルの総コピー数が1コピーであり、RETINAより得られる両アレルのコピー数の比が1:0の場合、被験体は欠失を伴うと判定することができる。
RETINAと定量PCRの結果に不一致が生じる場合、対象領域のゲノムDNA配列を直接シークエンスして検証することができる。後述の実施例に示されるとおり、例えば、定量PCRに使用されるプライマー配列部分に多型を有する被験体の場合、プライマーのアニーリング効率が悪いために、定量値が実際より低コピー数となる場合がある。RETINAを用いる本発明のジェノタイピング法は、それ単独では限定的な情報を与えるが、その信頼性はきわめて高いことが理解されよう。
(材料及び方法)
ゲノムDNA
International HapMap project [International Hapmap Consortium, 2005] のための、30トリオのヨーロッパ系祖先 (CEU) および30トリオのヨルバ族 (YRI) からなる計180のゲノムDNAサンプルを使用した。これらのDNAサンプルは、Coriell Cell Repositoryから購入した。
CYP2D6アッセイについて報告されたPCRプライマー、インベーダプローブ及びアレルプローブを使用した [Nevilie et al., Biotechniques, 32: S34-43, 2002]。残りのPCRプライマーは、Primer Express 1.5 (Applied Biosystems)によって設計し、別のインベーダプローブ及びアレルプローブは、報告された基準に従って、設計および合成した[Mast and Arruda, Methods Mol Biol. 335: 173-186, 2006]。全てのプローブ及びプライマーの配列を表1に列挙する。FAMまたはYakima Yellowで標識したFRETプローブは、Third Wave Technologiesから購入した。Rox色素(Sigma)を、レポーターシグナルの正規化のために使用した。
全てのアッセイにおいて100 nMのプライマー濃度で、製造業者のプロトコールに従って、精製ゲノムDNAを鋳型にPCR増幅を行った。全てのPCR増幅にはTakara Ex Taq HS (Takara)を使用した。1セットのプライマーを使用するPCR反応は5μlの反応容量で、GeneAamp 9700 (Applied Biosy stems)で実施した。CYP2D6アッセイの条件としては、95℃2分間でゲノムDNAをDenatureしたあと、PCR反応として95℃15秒間および68℃4分間を35サイクル行った。MRGPRX1アッセイにおいては、95℃2分間のあと、PCR反応として95℃15秒間、58℃30秒間および72℃1分間を35サイクル行った。多重(マルチプレックス)PCRについて反応条件は、10μlの反応容量で、95℃2分間のあと、PCR反応として95℃15秒間、58℃30秒間および72℃4分間を37サイクル行った[Ohnishi et al., J Hum Genet. 46: 471-477 2001]。
PCR反応後、産物を10倍希釈し、RETINAのテンプレートとして使用した。RETINAは4μlの反応容量で、Third Wave Technologiesにより推奨されるプロトコルに従って、ABIprism 7900 (Applied Biosy stems)で実施した。データ分析は、Excel program (Microsoft)で実施した。
Taqmanアッセイを使用してコピー数分析を行なった。まず、CYP2D6について報告されたTaqmanアッセイを使用した [Bodin et al., J Biomed Biotechnol. 3: 248-53 2005]。しかし、数人のYRI個体において、報告されたアッセイのリバースプライマー中に3塩基の挿入を見出したので、YRI個体の分析において正確なデータを得るために、Primer Expressによって新たなリバースプライマーを設計し、コピー数分析を再度実施した。MRGPRX1については、Primer Express 1.5を使用して全てのアッセイを設計した。Taqmanプローブは5’末端がFAMで標識され、3’末端にNo Fluorescence Quencher およびMGBを連結したものを用いた。参照遺伝子として、VICで標識したRNase P assay (Applied Biosystems)を使用した。全てのTaqmanアッセイを報告されたプロトコルに従って実施し、コピー数計算をΔΔCt法によって実施した[Bodin et al., 2005, 上述]。我々は、ΔCt値の中央値を有するサンプルを2コピーと仮定し、キャリブレータとして使用した。全てのサンプルを2連で試験し、平均コピー数値を散布プロット分析で使用した。全てのアッセイのプライマー及びプローブの配列は表1に列挙した。
PCR-RETINAとTaqmanアッセイとの間で不一致な結果を示す2つのYRIサンプルを、既報の反応条件でPCRで増幅した [Dorad et al., Biotechniques. 39: 571-574 2005]。増幅されたDNAをABI prism 3700 sequencer (Applied Biosystems)でのDNAシーケンス解析に供し、Polyphred software (University of Washington)で分析した。
人工テンプレートを使用したアレル非対称性の検出
本発明者らは、CNV領域中の複数のSNP座位でのアレル非対称性の同時検出のためのmPCR-RETINAを開発した。まず、rs2114912 SNP座位のゲノム配列に対応する2つの80塩基長のオリゴヌクレオチドテンプレートを合成した (表1)。これらのオリゴヌクレオチドを使用して、1:8〜8:1の範囲のアレル比で、標準サンプルを作製した。PCRによるDNAフラグメントの増幅後、30分間のインベーダ反応中30秒毎にリアルタイム蛍光検出を実施した。種々のアレル比を有するサンプルは、反応の初期段階においてアレル比に比例して明確に分離されたが、30分の反応時間後には、1つのヘテロ接合体として融合した(図1)。種々の時点でのallelic discrimination (AD) プロットの中で、反応が飽和する直前の時点が、クラスター解析で最良の分離を示した。
PCR-RETINAがゲノムDNAを使用するCNV検出に適用可能か否かを試験するために、CYP2D6座及びMRGPRX1座に対応する2つのそれぞれのCNVの検出をこころみた。International HapMap project [International Hapmap Consortium, 2005]に使用された各90のCEUサンプルおよびYRIサンプルを使用してRETINA を実施した。CYP2D6では報告のある3つのSNPを選択し[Nevilie et al., 2002、上述]、MRGPRX1についてはdbSNPデータベースの情報に基づいて3つのSNPを選択した。CYP2D6アッセイでは、3つの座位のうち少なくとも1つにおいて、2人のCEU被験者及び9人のYRI被験者で3つの主要なクラスターの外側に検体由来のドットがプロットされた(図2a, b)。クラスター外にプロットされたこれらの11検体はTaqmanアッセイによって、3コピーのCYP2D6を有することが確認された (図2c,d)。一方、PCR-RETINAは、Taqmanアッセイによって3コピーまたは1コピーを有することが示された数人の個体を検出することができなかった。これらの検体は、3コピーの同じアレルまたは1つのアレルの欠失を含む検体であった。
MRGPRX1座でのPCR-RETINA分析では、両人種においてADプロット中に主要なクラスターの外側に位置する個体が多数検出され、これらの検体はTaqmanアッセイにより3コピー以上の重複を有する個体であることが確認された(図3)。このアッセイにおいて、PCR-RETINAは、4コピーを有する数人の個体を同定することができなかった。これらの個体は、両方のアレルを2コピーずつ有し、ヘテロ接合体のクラスターにプロットされた個体であった。これらの実験により、PCR-RETINAは、アレル非対称性を有するサンプルを検出できるが、欠失、ホモの重複、アレル対称性を伴う重複を検出できないことが示された。
CYP2D6の実験において、YRIの2検体でPCR-RETINAとTaqmanアッセイの間に結果の不一致を観察した。これらのサンプルは、Taqmanアッセイでは1コピー(欠失)を有すると推定されたが、PCR-RETINAではヘテロ接合体であった。この2検体に対してDNAシーケンス解析を実施した結果、Taqmanアッセイのリバースプライマー配列に対応する領域に、以前には報告されていない3塩基の挿入(M33388中の4578-4579insCAT)を見出した。この挿入が不一致につながったことを証明するために、この挿入を避けて新たなリバースプライマーを設計し、Taqmanアッセイによるコピー数解析を再実施した。その結果不一致は観察されなくなり、PCR-RETINAの結果が正しいことが確認された。
次に、PCR-RETINAにおけるADプロットグラフ中のドットの位置の情報(アレル比)とTaqmanアッセイによって測定された総コピー数とを組み合わせて、各アレルコピー数の推定を試みた。この推定の正確さを確認するために、CEU個体を使用してrs4756975座位についての検量線分析を実施した。2コピーのヘテロ接合体サンプル(NA07034およびNA12056)を混合することによって8:1〜1:8のアレル比の範囲で標準サンプルを、調製した。種々のアレル比の標準サンプルでPCR-RETINAを実施し、インベーダ反応の3分の時点で解析した(図4a)。X軸に蛍光強度比(FAM 強度/ Yellow 強度)のログをプロットし、Y軸にアレル混合比のログをプロットし、線形回帰曲線を計算した(図4b)。この検量線を、2コピーのヘテロ接合体個体の蛍光強度比を使用して補正した。実際に90人のCEU検体を用いてPCR-RETINAを実施し、線形回帰曲線によって各アレルのコピー数を計算した。検量線分析によって推定した種々のアレル比を有する個体は、ADプロットにおいてドット位置が明確に分離した(図4c, d)。
次いで、ゲノム増幅のブレークポイント探索にPCR-RETINAを適用した。コピー数多型におけるブレイクポイント探索は、遺伝子の機能単位の一部または全体が重複されているか否かを判断するために必須である。MRGPRX1遺伝子周辺には、the Database of Genomic Variantsにおいて4つのCNV領域が報告されており、この領域のブレイクポイントの探索にPCR-RETINAを利用した。Variation_0415 (8kb)およびVariation_0416 (13.4kb)はフォスミドペアードエンド配列から見出され、Variation_2907 (52.8kb) はSNP マッピングアレイから、そしてVariation_3838 (263.3kb) はBAC アレイCGHから見出された。そこで、最大の領域(Variation_3838)をカバーする26のSNPに対してアッセイを設計し、90 人のCEU検体を用いてPCR-RETINAを実施した。その結果、rs2220067とrs7110426との間にのみアレル非対称性が観察され、その外側の座位では観察されなかった(図5, 6)。従って、重複された領域の境界が、一方の側ではrs12364167とrs2220067との間に位置し、他方の側ではrs7110426 とrs11024893との間に位置すると考えられた。この領域に4つのTaqmanアッセイを設計して実施したところ、PCR-RETINAの結果と一致した。結果として、MRGPRX1遺伝子のみがこのCNV領域中に存在することが確認された (図5)。UCSCゲノムブラウザでこの領域を確認したところ、このCNV領域の両側にLine-1リピートが存在していることが明らかとなった(図5)。このことから、この領域のコピー数多型は、これらのリピートを起点として非アレル相同組換え等により生じた可能性が高いと考えられた。YRI検体を使用した同じ分析も、CEU検体によって得られたデータと同じ結果であった。
多重PCR およびRETINA の組み合わせ (mPCR-RETINA)の実行可能性を評価した。1セットのプライマーを用いたPCR-RETINAのADプロットパターンを、上記26のアッセイに対応するmPCR-RETINAのADプロットパターンと比較した。mPCR-RETINAにおいては26のターゲットで、わずか10ngのゲノムDNAを使用したが、mPCR-RETINAのADプロットのパターンは、1セットのプライマーを用いたPCR-RETINAのパターンとほぼ同一であった(図6)。このことは、mPCR-RETINAがCNV領域中の複数の座位を同時に検出できることを意味している。
(材料および方法)
ヒトゲノムDNAサンプル
第I期International HapMap projectにおいて用いられた45人の日本人被験体および45人の中国人被験体(JCH)由来の90のゲノムDNAサンプルを、mPCR-RETINAおよびリアルタイム定量PCRアッセイにおいて、アレル頻度の分析およびアッセイ性能の評価に使用した。これら90のJCHサンプルのうち2つ(NA18996およびNA18540)は、Locke DP, et al., Am J Hum Genet 2006; 79: 275-290で細胞の株化に伴う染色体異常が報告されているため、サンプルリストから除外した。JCHサンプルは、Coriell Cell Repositories(Camden、New Jersey、USA)から購入した。
RETINAにより各SNP、インデルまたは遺伝子変換多型のアレル比を推定するために、RETINA前にCYP2D6遺伝子のPCR増幅を実施した。3セットのプライマーペアで全CYP2D6遺伝子領域をカバーするように三重(トリプレックス)PCRを実施した。PCRプライマーのほとんどは、実施例1およびNevilie M, et al., Biotechniques 2002; Suppl: 34-43に記載されたプライマーを使用した。アンプリコン1のためのフォワードプライマーは、充分な増幅のためにHersberger M, et al., Clin Chem 2000; 46: 1072-1077に記載されたプライマーから選択し、アンプリコン3のリバースプライマーは、CYP2D6*10DおよびCYP2D6*36を検出するために、3’隣接領域中のCYP2D6およびCYP2D7Pの共通部位にて設計した。これらのアレルはそれぞれ、3’隣接領域またはエキソン9中および3’隣接領域中にCYP2D7P配列を有し、日本人集団において高頻度であることが報告されている[Soyama A, et al., Drug Metab Pharmacokinet 2006; 21: 208-216、Ishiguro A, et al., Clin Chim Acta 2004; 347: 217-221]。2988G>A(CYP2D6*41)はアンプリコン2とアンプリコン3との間の部位に位置し、三重PCR産物はこの多型部位をカバーしないので、この多型に特異的なプライマーを別に設計した。CYP2D6のアッセイマップについては図7を参照のこと。三重PCR増幅のために、Takara Ex Taq HS(Takara Bio、Otsu、shiga、Japan)を、製造者の指示に従って、250nMのプライマー濃度で使用した。PCRは、10ngのゲノムDNAを使用して、10μlの反応容量でGeneAmp 9700(Applied Biosystems、Foster City、California、USA)で実施した。CYP2D6アッセイのPCR条件は、95℃で2分間で開始し、その後98℃で10秒間および68℃で4分間を35サイクルであった。PCR後、アガロースゲル電気泳動によってPCR産物の増幅を確認した。使用した全てのプライマーおよびプローブの配列を表2に列挙する。
CYPアレルデータベース(http://www.cypalleles.ki.se/)から酵素活性に影響を与えた24の多型を取り上げ、RETINAを実施した(表3)。アッセイ位置は図7に示す。1846G>Aおよび100C>TのRETINAのために、以前に報告されたアッセイを採用した[Nevilie M, et al., Biotechniques 2002; Suppl: 34-43]。残りの多型については、Third Wave Technologies(Madison、Wisconsin、USA)により推奨されたガイドラインに従い、インベーダアッセイを設計した。全てのプローブの配列を表2に列挙する。FAMまたはYakima Yellowで標識したFRETプローブはThird Wave Technologiesから購入した。Rox色素(Sigma、Saint Louis、Missouri、USA)をレポーターシグナルの正規化に使用した。多重PCR産物を使用して、上記と同様のプロトコルに従い、ABIprism 7900(Applied Biosystems)で、4μlの反応容量で2連で、各多型についてRETINAを実施した。データ分析はExcel(Microsoft、Redmond、Washington、USA)で実施した。各サンプルにおけるアレル比を、上述のとおり、RETINAにおけるADプロットグラフ中の相対的なドット位置の情報から推定した。
TaqManアッセイを使用してリアルタイム定量PCRを実施し、CYP2D6遺伝子の総コピー数を推定した。正確な推定のために標的特異的認識に最大の注意を払って、CYP2D6遺伝子の内部および周辺の異なる部位で5つのTaqManアッセイを設計した。アッセイ位置は図7中に示す。5つのアッセイのうち3つについてPrimer Express 2.0を用いてプライマーおよびTaqManプローブを設計した。残り2つはそれぞれ、報告されたアッセイ[Bodin L, et al., J Biomed Biotechnol 2005; 005: 48-53]および市販のアッセイ(Applied Biosystems)であった。これらのTaqManプローブの5’末端をFAMで標識し、3’末端にNon Fluorescence Quencher(NFQ)およびMGBを連結させた。サンプル間のゲノムDNA量の差異を補償するため、VICで標識したRNase Pアッセイ(Applied Biosystems)を使用した。全てのTaqmanアッセイは報告されたプロトコルに従って実施し、コピー数の計算をΔΔCt法によって実施した[Bodin L, et al., J Biomed Biotechnol 2005; 005: 48-53]。本発明者らが以前に同定した(Hum Mutat 2008; 29: 182-189)2コピーのCYP2D6を有するHapMap CEUコントロールサンプル(NA12753またはNA12707)をキャリブレータとして使用した。全てのサンプルを4連で試験し、平均コピー数の値を散布プロット分析で使用した。全てのTaqManアッセイのプライマーおよびプローブの配列を表2に列挙する。
最初に、アレル比のデータと総遺伝子コピー数のデータとを組み合わせて各多型のコピー数を推定した。その後、期待値最大化(Expectation-Maximization(EM))アルゴリズムに基づく分析ソフトウェアである「CNV phaser」(これは、ある集団におけるCNVまたは非CNV領域中のハプロタイプ構造を推定し、各個体にアレルの組み合わせ(ディプロタイプ)を割り当てることができる)を用いて、CYP2D6アレルについてハプロタイプ/ディプロタイプの推定を実施した。「CNV phaser」は、理化学研究所遺伝子多型研究センターの加藤護博士より提供された(Kato et al.、論文投稿中。日本国特許出願2008-048748およびPCT出願PCT/JP2008/053567に記載されている)。各個体は、「ディプロタイプ確率値(diplotype probabilty value)」を有する。「ディプロタイプ確率値」とは、観察されたジェノタイピングデータセットと一致する全ての可能なディプロタイプ中の1つの特定のディプロタイプをその個体が有する確率を意味する。各サンプル中で最も高いディプロタイプ確率を有するディプロタイプパターンを取り上げ、アレル頻度を計算した。従来の表現型予測および活性スコアリングは、Steimer W, et al., Clin Chem 2004; 50: 1623-1633、Heller T, et al., Ther Drug Monit 2006; 28: 673-677に記載のように実施した。
Soyama A, et al., Drug Metab Pharmacokinet 2006; 21: 208-216、Fukuda T, et al., Drug Metab Pharmacokinet. 2005; 20: 345-50、Chida M AN, et al., Pharmacogenetics 2002; 12: 659-662に記載されたプロトコルに従ってロングPCRを実施し、全遺伝子欠失(CYP2D6*5)および遺伝子重複(CYP2D6*1x2、CYP2D6*2x2、CYP2D6*10x2、CYP2D6*36x2またはCYP2D6*10-36)を含むCNVを確認した。
ABI prism 3700 DNAシーケンサー(Applied Biosystems)でダイレクトシーケンスを実施して、JCHサンプルにおいて、mPCR-RETINAで検出されたアレルを確認した。この実験には、報告されたプライマー[Soyama A, et al., Drug Metab Pharmacokinet 2004; 19: 313-319]および新たに設計したプライマーを使用した。全CYP2D6遺伝子領域をロングPCRで増幅し、Applied Biosystemsにより推奨されたプロトコルに従ってシーケンス反応に使用した。配列データをSeqScapeソフトウェア(Applied Biosystems)で分析した。ダイレクトシーケンスのための全てのプライマーの配列を表2に列挙する。
mPCR-RETINAおよびリアルタイム定量PCRによる、JCHサンプルにおけるCYP2D6のジェノタイピング
最初に、CYPアレルデータベースから、in-vivoまたはin-vitroでの機能的重要性が報告された24の多型を取り上げた。各多型についてインベーダアッセイを設計および構築し、HapMap JCHサンプルを使用して三重PCRおよび24のRETINAを実施した。次いで、100%のアッセイ成功率でアレル比データを取得し、7つの座位においてバリアントの型を検出した。さらに、特に100C>Tアッセイおよびエキソン9のCYP2D6/CYP2D7P遺伝子変換アッセイで、ヘテロ接合体クラスターにおいて明確なアレルの非対称性が観察され、各多型においてアレル比を推定することができた(図8a)。ダイレクトシーケンスを全てのJCHサンプルにおいて実施し、バリアントの型を確認した。
mPCR-RETINAの評価と同時に、総遺伝子コピー数の推定のために5つのリアルタイム定量アッセイを実施した。CYP2D6遺伝子領域にわたって特定の部位でアッセイを設計し、各サンプル中のCYP2D6の総コピー数の値がアッセイ間で一定であるか否かを調査した。88のJCHサンプルを検討したところ、エキソン9中に位置する2つのアッセイ間、または他の異なる部位中に位置する3つのアッセイ間で、完全な一致が観察された(図8b)。エキソン9中の2つのアッセイと他の3つのアッセイとの間では、コピー数データは複数のサンプルにおいて明らかに異なっていた。この差異は、エキソン9のCYP2D6/CYP2D7P遺伝子変換多型(これは、日本人集団においてCYP2D6*36として広く分布しており[Soyama A, et al., Drug Metab Pharmacokinet 2006; 21: 208-216]、13塩基の置換に起因して、エキソン9で設計したCYP2D6特異的TaqManアッセイでは検出できない)の存在によって引き起こされたと推定される。リアルタイム定量PCRアッセイにおける差異からのエキソン9中のCYP2D6/CYP2D7Pの比と、この多型についてのRETINAからの比との間に、完全な一致が観察された。これにより、3つのアッセイからのコピー数データがCYP2D6遺伝子の総遺伝子コピー数であり、エキソン9中の2つのアッセイからのコピー数データが、エキソン9の遺伝子変換多型を有するアレル以外のCYP2D6遺伝子のコピー数であったことが確認された。
mPCR-RETINAからの24の多型におけるアレル比のデータと、リアルタイム定量PCRアッセイ(エキソン9中を除く)からの総遺伝子コピー数のデータとを組み合わせ、全てのJCHサンプル中の全ての総遺伝子コピー数において、ADプロット図中のヘテロ接合体クラスターのクラスタリング分離を検討した。その結果、アレル比と総コピー数との間には食い違いがなく、これらのアッセイの精度が高いことが確認された。これら2つの技術からのデータを組み合わせることによって、全てのJCHサンプルにおいて、24のSNP、インデルおよび遺伝子変換多型のコピー数の値を得ることができた。
88のJCHサンプル中の各多型のコピー数データを使用して、ハプロタイプ(アレル)およびディプロタイプを、CNV phaserソフトウェアを用いて推定した。集団におけるハプロタイプの、および各サンプルにおけるディプロタイプの推定後、各アレルの頻度を計算した(表4)。最も高い頻度を有するアレルは、最近の報告[Soyama A, et al., Drug Metab Pharmacokinet 2006; 21: 208-216]から主にCYP2D6*1およびCYP2D6*2であると考えられた「Others」であり、その値は88のJCHサンプルにおいて0.466であった。二番目に高いのはCYP2D6*10-*36タンデム型であり、値は0.358であった。CYP2D6*10および全遺伝子欠失CYP2D6*5はそれぞれ0.057および0.051であり、Others-Others(これは、CYP2D6*1x2またはCYP2D6*2x2などの、機能的遺伝子の重複であり得る)は0.006であった。また、CNV phaserは、報告のないCYP2D6*10-*36-*36アレルを、非常に低い頻度に推定した。このアレル頻度データを最近の報告[Soyama A, et al., Drug Metab Pharmacokinet 2006; 21: 208-216、Soyama A, et al., Drug Metab Pharmacokinet 2004; 19: 313-319]と比較したところ、これらは互いに全く類似していた(表4)。
第2に、mPCR-RETINAは、特異性が高く、反復配列や遺伝子ファミリーの領域中であってもアッセイが可能である。一般に、重複領域は、ゲノムの別の領域に高い類似性を有することが多く、検出が困難な場合がある。他のPCRを基にした方法は、通常アンプリコンサイズに制限があり、特異性のある領域にプライマーを設計することがしばしば困難である。しかし、mPCR-RETINAは、1kb以上の長さのアンプリコンサイズでも対応可能で、PCRプライマーを特異領域に設計し、相同性領域のPCR増幅を回避できる。さらに、Invader法は標的SNP部位で独特のトリプレット構造を認識するCleavase VIII酵素を採用しているので、ハイブリダイゼーション単独による方法と比較して、高い特異性を示す。実際、PCR-RETINAは、Line-1リピート内の3SNPアッセイにおいて、ジェノタイピングが可能であった(rs2220067, rs11517776およびrs11024893, 図6)。
第3に、PCR-RETINAは各アレルのコピー数を推定できる正確なアレル特異的定量アッセイであり、リアルタイム定量PCRと組み合わせることによって、各アレルのコピー数を算出できる。この特徴は、CNVと表現型との相関解析、臨床診断に有用である。
mPCR-RETINAの他の利点として、プロトコールの簡素さと低コストがあげられる。mPCR-RETINAは単にPCRおよびインベーダアッセイの組み合わせであり、5分以内に多数のサンプルを同時に試験できる。多重PCRの採用と座位特異的蛍光プローブを必要としないことは、低コスト化につながる。
Claims (8)
- SNP部位を含むゲノム領域における被験体のジェノタイプを判定する方法であって、該被験体由来の該ゲノム領域を含むDNA含有試料を鋳型として、該SNP部位のタイピングをインベーダ法にて実施する工程を含み、かつ該工程において蛍光をリアルタイムで測定することを特徴とし、蛍光強度が飽和に達するより前の時点における各アレルに対応する蛍光強度の比を用いて、両アレルのコピー数の比を判定する、方法。
- SNP部位を含むゲノム領域がCNV領域内にある、請求項1記載の方法。
- アレル非対称性を伴う重複を検出するためのものである、請求項1または2記載の方法。
- インベーダ工程の前にSNP部位を含むゲノム領域を増幅する工程をさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- ゲノム領域が複数のSNP部位を含み、増幅工程が該複数のSNP部位を含む複数の領域を同時に増幅するものである、請求項4記載の方法。
- 定量PCRを用いて得られる両アレルの総コピー数に基づいて、各アレルのコピー数を判定する、請求項4または5記載の方法。
- 定量PCRがTaqMan法により行われることを特徴とする、請求項5記載の方法。
- アレル非対称性を伴う重複もしくは欠失が検出されたSNP部位が連続して、または連続しなくとも複数含まれる範囲を同定することによりCNVのブレークポイントを特定することを含む、請求項5〜7のいずれかに記載の方法。
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