JP5260340B2 - 内燃機関用オイルリング - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関用ピストンに設けられたリング溝に装着して使用される内燃機関用オイルリングに関し、更に詳しくは、オイルリング表面へのオイルスラッジ前駆体及び/又はオイルスラッジの付着を抑制した内燃機関用オイルリングに関する。
一般に内燃機関用のピストンリングは、圧力リングとオイルリングとに大別される。このうち、オイルリングにあっては、オイルの掻き落とし機能と、オイルの消費量を制御するオイルコントロール機能とを有する。従来、内燃機関においては、燃費を向上させるためにシリンダボア内面とピストンリングとの摩擦の低減が重要となっている。現在では、圧力リングとオイルリングの合計張力をシリンダボア径で除した値は、0.2〜0.6N/mmの範囲にする必要があり、ピストンリングのフリクション低減のための低張力化とピストンリングの軸方向幅の薄幅化が求められている。特にオイルリングにおいては、摩擦力の低減とともにオイル消費の低減も求められており、これらの機能を高めるために、オイルリング本体の軸方向幅を薄くする薄幅化技術が追求されている。
オイルリングの形状としては、オイルリング本体と、オイルリングを径方向外方に押圧付勢するコイルエキスパンダとからなるいわゆる2ピースオイルリングや、一対のサイドレールと、そのサイドレール間に設けられるスペーサエキスパンダとからなるいわゆる3ピースオイルリングが一般に知られている。こうしたオイルリングにおいて、前記の薄幅化技術は、シリンダライナの内壁面へのオイルリングの追従性を向上させ、オイル消費量を低減させるのに有効に作用するが、反面、張力が低下してオイルの掻き落とし性能が低下するという欠点がある。
そこで、オイルの掻き落とし性能を低下させず、むしろ向上させるためには、オイルリングのシリンダライナ内壁面と摺動するレールの軸方向の幅を小さくし、接触面積を小さくすることで、単位面積当たりの接触圧力を低下させないようにする必要がある。その結果、現在では、内燃機関用オイルリングのオイルリング本体の軸方向の幅を0.8mm〜2.0mmの範囲とすることが一般化してきている。このようなエンジン環境下において、ピストンリングは、摩擦の低減による低張力化や軸方向幅の更なる薄幅化による軽量化が進むと考えられる。
しかしながら、例えばオイルリングの低張力化が進むと、オイルパンからのオイル上がり量が増えてオイル消費量が増大してしまうという問題が生じる。一方、オイルリングの薄幅化が進むと、ピストン周りの軽量化やシリンダ壁面への追従性が良くなり、オイル消費量を低減できるという利点がある反面、オイル戻し穴の面積は従来よりも縮小され、長時間使用した場合に、エンジンオイル中の未燃焼物質(以下、「オイルスラッジ」という。)がオイル戻し穴周辺に付着し、堆積してオイル通路を塞ぐこととなり、オイル消費量が増加してしまうという問題が生じる。さらに、そのオイルスラッジの付着や堆積が著しい場合は、オイルスラッジが炭化し、カーボンデポジットとなり、リングスティックを起こしやすいという問題がある。
こうした問題を解決するため、2ピースオイルリングについては、オイル戻し穴を拡大したり、コイルエキスパンダのコイルピッチを拡大したりする形状対策の他、オイルリングの表面へのオイルスラッジの付着防止対策を行っている。特にオイルスラッジの付着防止対策については、例えば特許文献1では、オイルリングの表面にフッ素系有機薄膜を気相法により形成した2ピースオイルリング又は3ピースオイルリングを提案している。また、特許文献2では、3ピースオイルリングの表面に親水性皮膜を形成することが提案されている。
特開2006−242297号公報 特開2006−258110号公報
しかしながら、上記特許文献1で提案された技術は付着防止皮膜としてフッ素系有機薄膜を気相法で形成しているので、気相法の種類にもよるが、複雑な形状に均一な厚さで成膜することが難しいという問題がある。特にオイルスラッジの付着が問題となるオイル戻し穴の内表面やその周辺の複雑な形状部に均一な厚さで成膜することは難しい。また、気相法は主にチャンバー内でのバッチ処理で行われ、成膜速度が遅く、設備の問題も含めて製造コストの点でも問題がある。また、フッ素系有機薄膜の密着性に対しては、基材表面を化学処理して基材表面に水酸基を増加させたり、酸化ケイ素等の金属酸化物層からなる密着層を気相法で基材表面に形成して水酸基を表面に存在させたりして、その水酸基とフッ素系有機薄膜とが結合して密着性を高めることを提案しているが、いずれも別工程が必要であり、また気相法では前記同様の膜の均一性の問題もあり、設備の問題も含め製造コストの点で問題がある。
一方、特許文献2で提案された技術は親水性皮膜に水を付着させることにより、オイルスラッジの付着を防止しようとするものであるが、この技術では、オイル中に水分が存在していることが前提(同文献2中にも記載されている)であり、また、親水性皮膜が水分を付着した後でないとオイル付着防止効果を示さないとのことであるので、オイルリング使用開始時からオイルスラッジの付着防止効果を得ることは難しい。また、エンジンオイル内に水分が存在している場合であっても、1分子内に疎水基及び親水基を有するさび止め剤等の添加剤によって、エンジンオイルと水は油中水滴型のエマルジョン状態になり、加えて、オイルリングが摺動している状況下では、水分が選択的にオイルリングの表面に膜を形成できないという問題もある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、オイルリング表面へのオイルスラッジ前駆体及び/又はオイルスラッジの付着を抑制するため、基材に対して密着性の良い撥油性及び撥水性を有する塗布膜を生産性よく形成してなる内燃機関用オイルリングを提供することにある。なお、オイルスラッジ前駆体とは、金属及びハロゲンを含んだスラッジプリカーサである。
上記課題を解決するための本発明の内燃機関用オイルリングは、オイルリング表面へのオイルスラッジ前駆体及び/又はオイルスラッジの付着を抑制するための撥油性及び撥水性を有する塗布膜が、オイルリングの少なくとも一部に設けられており、前記塗布膜は、油との接触角が75°以上であり、かつ水との接触角が100°以上であり、50原子%〜70原子%のフッ素と2原子%〜5原子%のケイ素を含有することを特徴とする。
本発明の内燃機関用オイルリングにおいて、前記塗布膜が、フッ素:50原子%〜70原子%、ケイ素:2原子%〜5原子%、炭素:10原子%〜30原子%、酸素:1原子%〜5原子%、窒素:1原子%〜5原子%、水素:残り、の組成範囲であるように構成する。
本発明の内燃機関用オイルリングにおいて、前記オイルリングが、2ピースオイルリング又は3ピースオイルリングであるように構成する。
本発明の内燃機関用オイルリングによれば、油との接触角が75°以上であり、かつ水との接触角が100°以上である、50原子%〜70原子%のフッ素と2原子%〜5原子%のケイ素を含有する塗布膜がオイルリングの少なくとも一部に設けられているので、オイルリング表面へのオイルスラッジ前駆体及び/又はオイルスラッジの付着を抑制することができる。特に50原子%〜70原子%のフッ素は前記所定の撥油性及び撥水性を発現させるように主に作用し、2原子%〜5原子%のケイ素はオイルリングとの密着性を高めるように主に作用する。また、本発明では塗布膜をオイルリング表面に形成するので、塗布液を複雑な形状の隅々にまで回り込ませることができ、特にオイルスラッジ前駆体やオイルスラッジが付着しやすいオイル戻し穴やその周辺部にも均一な膜厚で形成される。したがって、本発明によれば、オイルリングの構成部材に対して密着性の良い撥油及び撥水性を有する塗布膜を生産性よく形成してなる内燃機関用オイルリングを提供することができる。
本発明の内燃機関用オイルリングの一例(2ピースオイルリング)を示す模式的な断面図であり、(A)は斜視図であり、(B)は断面図であり、(C)はオイル戻し穴の平面図である。 本発明の内燃機関用オイルリングの他の一例(3ピースオイルリング)を示す模式的な断面図であり、(A)は斜視図であり、(B)は断面図である。 2ピースオイルリングにおいて、塗布膜を少なくとも形成すべき部位を示す説明図である。 3ピースオイルリングにおいて、塗布膜を少なくとも形成すべき部位を示す説明図である。 実施例及び比較例での実機試験に用いたピストン構造の模式図である。
以下、本発明の内燃機関用オイルリングについて図面を参照しつつ説明する。以下に示す実施の形態は本発明の一例であって、本発明の技術的範囲は以下の実施の形態のみに限定されるものではない。
(オイルリングの形態)
本発明が適用されるオイルリングとしては、オイルリング表面へのオイルスラッジ前駆体及び/又はオイルスラッジの付着を抑制することが要求されるものであれば特に限定されず、図1及び図5に示す内燃機関のピストン50のオイルリング用リング溝53に装着される各種のオイルリングを挙げることができる。例えば、図1に示すいわゆる2ピースオイルリング10や、図2に示すいわゆる3ピースオイルリング20、さらにはその他の公知のオイルリング(図示しない)を挙げることができる。なお、オイルスラッジ前駆体とは、金属及びハロゲンを含んだスラッジプリカーサである。
2ピースオイルリング10は、図1に示すように、リング本体11と、リング本体11の内周溝17側に配置されるコイルエキスパンダ12とで構成されるものである。より具体的には、リング本体11は、シリンダ内壁面(図5の符号57を参照。)と摺動する摺動面15を径方向外方X1に有するレール部11a,11bを軸方向Yに一対有するものであり、連結部(ウエブ部)16は一対のレール部11a,11bを連結する態様で構成されており、さらに合い口(図示しない)を有する円環形状をなしている。一方、コイルエキスパンダ12は、リング本体11の径方向内方X2に位置する内周溝17側に接触して配置されたコイル巻きされた円環状部材であり、リング本体11を径方向外方X1に押圧付勢するための部材である。この2ピースオイルリング10では、連結部16にオイル戻し穴14が形成され、摺動中にオイル戻し穴14を通過したオイルはピストン50のオイルリング用リング溝53に設けられたオイルドレイン穴54から排出される。なお、図1(C)は、オイル戻し穴14を示す平面図であり、符号b、cは、オイル戻し穴14の寸法を示している。
3ピースオイルリング20は、図2に示すように、軸方向Yに配置された一対のサイドレール21a,21bと、そのサイドレール21a,21bを支持するスペーサエキスパンダ22とで構成されるものである。より具体的には、サイドレール21a,21bはそれぞれ独立して軸方向Yに離間して配置され、シリンダ内壁面(図5の符号57を参照。)と摺動する摺動面25を径方向外方X1に有するものであり、さらに合い口(図示しない)を有する円環形状をなしている。一方、スペーサエキスパンダ22は、一対のサイドレール21a,21b間にそのサイドレールに接触して配置され、そのサイドレール21a,21bの径方向内方X2側の端部23,23を径方向外方X1に押圧付勢するための耳部26を有する部材である。このスペーサエキスパンダ22には、サイドレール21a,21bを支持する突起部27が設けられており、その突起部27と前記した耳部26と間には平坦面を有する凹部28が形成されている。この3ピースオイルリング20では、スペーサエキスパンダ22はその構造上、オイル戻し穴に相当する空間24を有し、摺動中にサイドレール21a,21bにより掻き取られたオイルが、ピストン50のオイルリング用リング溝53に設けられたオイルドレイン穴54から排出される。
なお、軸方向の「軸」とは、円環形状からなるオイルリング10,20の中心軸(仮想中心)のことであり、「軸方向Y」とは、その中心軸が延びる方向(図1,2の例では上下に延びる方向)のことである。また、「径方向X」とは、円環形状からなるオイルリング10,20の中心軸(仮想中心)から見たときのオイルリング10,20の半径方向のことであり、「径方向外方X1」とは、例えば2ピースオイルリング10の摺動面15が摺動接触するシリンダ内壁面の側(外周縁方向)のことであり、「径方向内方X2」とは、例えば2ピースオイルリング10を構成するコイルエキスパンダ12が配置されるオイルリングの中心軸側のことである。
こうしたオイルリングの材質は特に限定されず、各種のものを採用できる。一例としては、鋼材、中でも8Cr鋼、10Cr鋼等を挙げることができる。これらのオイルリングに後述する塗布膜を形成するにあたっては、必要に応じて前処理を施すことが好ましい。前処理としては、一般的に適用されているアルカリ処理、酸処理、化成処理等が挙げられる。
(塗布膜)
本発明では、オイルリング表面へのオイルスラッジ前駆体及び/又はオイルスラッジの付着を抑制するための塗布膜13が、オイルリング10,20の少なくとも一部に設けられている。
図3及び図4に示す塗布膜13は、オイルスラッジ前駆体及び/又はオイルスラッジに対して弾く性質を有するものであり、それ自身の性質としては撥油性及び撥水性を有するものである。具体的には、塗布膜13は、50原子%〜70原子%好ましくは55原子%〜65原子%のフッ素と、2原子%〜5原子%好ましくは3原子%〜5原子%のケイ素とを含有するものであり、この塗布膜13は、油(エンジンオイル)との接触角が75°以上となる高い撥油性を示し、また、水との接触角が100°以上となる高い撥水性を示すものである。
こうした接触角を有する塗布膜13をオイルリング10,20に設けることにより、オイルスラッジ前駆体及び/又はオイルスラッジの付着を防ぐことができる。なお、接触角は上記の値以上であればその上限は特に限定されないが、例えば後述する実施例と比較例の結果からは、油に対する接触角としては90°程度とすることができ、水に対する接触角としては120°程度とすることができる。この接触角については、後述する実施例と比較例の結果からも、塗布膜13の成分のうちフッ素が主に関与していると考えられ、そのフッ素含有量を50原子%〜70原子%好ましくは55原子%〜65原子%の範囲とすることにより、前記の効果をもたせることができる。なお、接触角は後述の実施例で示す方法で測定したものである。
また、塗布膜13は、オイルリング10,20に対する密着性にも優れるものである。具体的には、塗布膜13が、50原子%〜70原子%好ましくは55原子%〜65原子%のフッ素と、2原子%〜5原子%好ましくは3原子%〜5原子%のケイ素とを含有することにより、オイルリング10,20に対する密着性を高めることができ、撥油性及び撥水性に優れた上記接触角を長期間維持して、オイルスラッジ前駆体及び/又はオイルスラッジの付着を防ぐことができる。この密着性については、後述する実施例と比較例の結果からも、塗布膜13の成分のうちケイ素が主に関与していると考えられ、そのケイ素含有量を2原子%〜5原子%好ましくは3原子%〜5原子%の範囲とすることにより、前記の効果をもたせることができる。なお、フッ素の含有量とケイ素の含有量は、後述する実施例で示す方法で測定したものである。
上記組成の塗布膜13は、塗布液をオイルリング10,20に塗布し、乾燥して形成できる。そうした塗布液としては、フッ素系溶媒に希釈されたフッ素シリコーン系表面処理溶液を好ましく挙げることができる。具体例としては、フッ素シリコーンコーティング剤(商品名:KP−801M、信越化学工業株式会社製)等を挙げることができるが、上記組成範囲となるものであれば他のフッ素シリコーン系表面処理溶液を用いることができる。こうした表面処理溶液には、フッ素樹脂とシリコーン樹脂と架橋剤(例えばイソシアネート)とを含むものを挙げることができ、それらを重合させて塗布膜13を形成できる。
塗布膜13の形成は、塗布法であれば特に限定されず、スプレーコート法、ディップコート法、スピンコート法等を挙げることができる。塗布液を塗布した後は乾燥させ、上記した組成範囲の塗布膜13を得ることができる。なお、一部分に選択的に塗布する場合には、オイルリングをマスキングテープで覆ったり、一方向からスプレーしたり、一部分のみが浸漬するようにディップしたりする。
塗布膜13の厚さは特に限定されないが、0.01μm〜10μmが好ましく、0.1μm〜3μmがより好ましい。厚さが0.01μm未満では、薄すぎて均一な膜になっておらず、上記範囲の接触角を有する撥水性及び撥油性の効果を発揮できないことがある。一方、厚さが10μmを超えると、厚すぎて膜形成が困難になるとともに、コスト高になる。なお、塗布膜13の厚さは、エリプソメータ等で測定したものである。
こうした塗布膜13は、オイルリング10,20の一部に設けられてもよいし、全て(全周)に設けられてもよいが、オイルスラッジ前駆体及び/又はオイルスラッジが付着しやすい部分、すなわちオイルや水分が滞留しやすい複雑な形状部分には少なくとも設けられていることが望ましい。そうした部分としては、2ピースオイルリング10では、図3に示すように、オイル戻し穴14、上下2つのレール部で構成される外周溝18と内周溝17、コイルエキスパンダ12の径方向外周側、摺動面15等であり、また、3ピースオイルリング20では、図4に示すように、スペーサエキスパンダ22の突起部27と耳部26と間の凹部28、サイドレール21a,21bのスペーサエキスパンダ22側の面と摺動面25と径方向内方側端部23、である。
具体的には、2ピースオイルリング10のリング本体11については、図3(A)に示すように、オイル戻し穴14と、上下2つのレール部で構成される外周溝18及び内周溝17とに少なくとも塗布膜13が設けられていることが望ましく、また、図3(B)に示すように、リング本体11の全て(全周)に設けられていてもよい。一方、3ピースオイルリング20のサイドレール21a,21bについては、図4(A)に示すように、サイドレール21a,21bのスペーサエキスパンダ22側の面に少なくとも塗布膜14が設けられていることが望ましく、また、図4(B)に示すように、サイドレール21a,21bの全て(全周)に設けられていてもよい。なお、コイルエキスパンダ12やスペーサエキスパンダ22については、図3及び図4に示すように、その全周に設けられていることが好ましい。
本発明では上記した方法で形成された塗布膜13を付着防止膜としているので、複雑で入り組んだ部分にも塗布液が回り込みやすく、隅々まで均一な塗布膜を容易に形成することができる。
以上説明したように、本発明の内燃機関用オイルリングによれば、油との接触角が75°以上で、水との接触角が100°以上で、50原子%〜70原子%のフッ素と2原子%〜5原子%のケイ素を含有する塗布膜がオイルリングの少なくとも一部に設けられているので、オイルリング表面へのオイルスラッジ前駆体及び/又はオイルスラッジの付着を抑制することができる。特に50原子%〜70原子%のフッ素は前記所定の撥油性・撥水性を発現させるように主に作用し、2原子%〜5原子%のケイ素はオイルリングとの密着性を高めるように主に作用する。また、本発明では塗布膜をオイルリング表面に形成するので、塗布液を複雑な形状の隅々にまで回り込ませることができ、特にオイルスラッジ前駆体やオイルスラッジが付着しやすいオイル戻し穴やその周辺部にも均一な膜厚で形成される。
以下に、本発明に係る内燃機関用オイルリングについて、実施例と比較例を挙げてさらに詳しく説明する。
[実施例1]
最初に、塗布膜の組成、接触角及び密着性について検討した。図1に示す2ピースオイルリング(材質:8Cr鋼、直径:φ90mm、径方向厚a1:2.5mm、軸方向幅h1:2.0mm、さらに、bが1.4mmでcが0.55mmのオイル戻し穴を52個形成されている。)にフッ素シリコーン系表面処理溶液(商品名:KP−801M、信越化学工業株式会社製)をディップコート法で塗布し、乾燥(120℃、30分)して表1に示す組成の塗布膜(厚さ:0.04μm)を形成した。なお、塗布膜は、オイルリング本体の全周と、コイルエキスパンダの全周に成膜した。塗布膜の組成は、X線光電子分光装置(アルバックファイ株式会社製、型番:PHI−5600)によって定量し、原子%で表した。
最初に、接触角の測定を行った。接触角は、水(蒸留水)とガソリンエンジン用オイルを上記2ピースオイルリングに1μL滴下し、協和界面科学株式会社製の全自動接触角測定装置(CA−V20)で測定した値で評価した。その結果を表1に示す。
次に、密着性試験を行った。先ず、塗布膜を成膜した後のオイルリングについて、水に対する接触角を上記接触角測定と同様に測定して接触角θaを求めた。その後、接触角測定した表面を、ケイドライ(なお、ケイドライとは、電子部品・精密機器用ワイパーである。)やスコッチ等(この実施例ではケイドライを用いた)でのべ30回擦った。その後、再度、同じ表面での水に対する接触角を上記接触角測定と同様に測定して接触角θa’を求めた。密着力(%)は[(θa’/θa)×100]の値で評価した。こ値が大きいほど塗布膜の効果が保持されていることを示すので、塗布膜がオイルリング表面に密着性よく成膜されている指標となる。その結果を表1に示す。
次に、図5に示すピストン構造50(ボア径:81mm)を有する排気量1.6リットル直列4気筒の自動車用ガソリンエンジンによる実機試験を行い、2ピースオイルリングのオイル戻し穴14の試験前後の開孔率について調べた。第1圧力リング55は、径方向厚a1を2.7mm、軸方向幅h1を1.2mm、摺動面形状をバレルフェースとし、第2圧力リング56は、径方向厚a1を2.9mm、軸方向幅h1を1.2mm、摺動面形状をテーパアンダーカットとし、オイルリング10(2ピースオイルリング)は上記同様とし、第1圧力リング55、第2圧力リング56及びオイルリング10の合計張力比を0.23N/mmとした。ここで合計張力比とは、ピストンに装着したピストンリング(第1圧力リング+第2圧力リング+2ピースオイルリング)の張力を合計したリング合計張力をボア径で除した値をいう。また、第1圧力リングはガス窒化にて全周に窒化層を形成し、2ピースオイルリングは塗布膜形成前にリング本体のみに窒化処理を行ったものを用いた。第2圧力リングは未処理のまま用いた。試験条件は、6000rpm−WOT(ワイドオープンスロットル)にて冷却水温度を3分毎に30℃と100℃との間で変化させ、300時間の冷熱耐久運転を行った。運転前後におけるオイル戻し穴の開孔率を測定した。開口率の測定は、図3のオイル戻し穴の寸法cを光学顕微鏡で拡大して測定して、運転前後でのオイル戻し穴の開口率([運転後の寸法c/運転前の寸法c]×100)で評価した。その結果を表1に示す。
[実施例2]
表1に示すように、組成の異なる塗布膜を形成した2ピースオイルリングを用いた他は、実施例1と同様にして、接触角と密着性と実機試験前後の開口率を測定した。なお、表1に示す組成の塗布膜は、フッ素シリコーン系表面処理溶液(商品名:KP−801M、信越化学工業株式会社製)のフッ素成分割合とケイ素成分割合が増すように調整したフッ素シリコーン系表面処理溶液を用いて成膜したものである。
[実施例3]
表1に示すように、組成の異なる塗布膜を形成した2ピースオイルリングを用いた他は、実施例1と同様にして、接触角と密着性と実機試験前後の開口率を測定した。なお、表1に示す組成の塗布膜は、フッ素シリコーン系表面処理溶液(商品名:KP−801M、信越化学工業株式会社製)のフッ素成分割合が増し且つケイ素成分割合が減るように調整したフッ素シリコーン系表面処理溶液を用いて成膜したものである。
[比較例1]
表1に示すように、組成の異なる塗布膜を形成した2ピースオイルリングを用いた他は、実施例1と同様にして、接触角と密着性と実機試験前後の開口率を測定した。なお、表1に示す組成の塗布膜は、シリコーン系表面処理溶液(商品名:アクアミカ(登録商標)、NP140−01、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)を用いて成膜したものである。
[比較例2]
表1に示すように、組成の異なる塗布膜を形成した2ピースオイルリングを用いた他は、実施例1と同様にして、接触角と密着性と実機試験前後の開口率を測定した。なお、表1に示す組成の塗布膜は、フッ素系表面処理溶液(商品名:ノベック(登録商標)、EGC−1720、住友スリーエム株式会社製)を用いて成膜したものである。
Figure 0005260340
[評価]
表1中の評価欄において、◎は密着力が90%以上かつオイル戻し穴開孔率が80%以上の場合であり、○は密着力が70%以上90%未満かつオイル戻し穴開孔率が70%以上80%未満の場合であり、×は少なくとも密着力及びオイル戻し穴開孔率の一方が70%未満の場合である。実施例1〜3のように、フッ素とケイ素を塗布膜中に含有させることにより、水とオイルに対する接触角がいずれも大きく、密着性もオイル戻し穴開口率も高い結果となった。このことは、本発明に係る塗布膜を形成したオイルリングは、塗布膜の密着性がよく且つその塗布膜は撥水性及び撥油性に優れたものであり、その結果、オイル戻し穴にオイルスラッジが溜まりにくくなって迅速にオイルをピストンドレイン側に逃がす効果が認められた。
特に、塗布膜の組成範囲として、フッ素:50原子%〜70原子%(好ましくは55原子%〜65原子%)、ケイ素:2原子%〜5原子%(好ましくは3原子%〜5原子%)、炭素:10原子%〜30原子%(好ましくは15原子%〜25原子%)、酸素:1原子%〜5原子%、窒素:1原子%〜5原子%(好ましくは2原子%〜4原子%)、水素:残り(好ましくは約10%前後)、の組成範囲であることが好ましい。この範囲の組成をもつ塗布膜について、本実施例と比較例では、表1に示す顕著な効果を確認できた。
10 2ピースオイルリング
11 リング本体
11a,11b レール部
12 コイルエキスパンダ
13 塗布膜
14 オイル戻し穴
15 摺動面
16 連結部(ウエブ部)
17 内周溝
18 外周溝
20 3ピースオイルリング
21a,21b サイドレール
22 スペーサエキスパンダ
23 径方向内方側端部
24 オイル戻し穴に相当する空間
25 摺動面
26 耳部
27 突起部
28 凹部
50 ピストン
51 第1圧力リング用リング溝
52 第2圧力リング用リング溝
53 オイルリング用リング溝
54 オイルドレイン穴
55 第1圧力リング
56 第2圧力リング
57 シリンダ内壁面
X 径方向
X1 径方向外方
X2 径方向内方
Y 軸方向
a1 リングの径方向幅
b,c オイル戻し穴の幅
h1 リングの軸方向幅

Claims (2)

  1. 内燃機関に用いられるオイルリングであって、オイルリング表面へのオイルスラッジ前駆体及び/又はオイルスラッジの付着を抑制するための撥油性及び撥水性を有する塗布膜が、オイルリングの少なくとも一部に設けられており、
    前記塗布膜は、油との接触角が75°以上であり、かつ水との接触角が100°以上であり、フッ素:50原子%〜70原子%、ケイ素:2原子%〜5原子%、炭素:10原子%〜30原子%、酸素:1原子%〜5原子%、窒素:1原子%〜5原子%、水素:残り、の組成範囲であることを特徴とする内燃機関用オイルリング。
  2. 前記オイルリングが、2ピースオイルリング又は3ピースオイルリングである、請求項に記載の内燃機関用オイルリング。
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