JP5259102B2 - 低鉛青銅鋳物合金 - Google Patents

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Description

本発明は、給水・給湯用や蒸気用のバルブ或は継手などの配管器材、シリンダやケーシング等の圧力器材或は構造部材等にも適する青銅鋳物合金で、特に、高温下における引張強さを改善し、鋳物の健全性にも寄与した低鉛青銅鋳物合金に関する。
青銅鋳物(JIS H5120 CAC406)は、通常、鋳造性、耐食性、被削性、耐圧性に優れており、バルブ、コック、継手等の給水・給湯用や蒸気用の配管器材などにも多く用いられている。この青銅鋳物(CAC406)は、数%のPb(鉛)を含有しており、特に、被削性や耐圧性の向上に寄与している。ところが、昨今、低濃度のPbでも人体に悪影響を及ぼすとして、水道水中へのPb浸出規制や、土壌汚染を防止すべく、Pb含有廃棄物の排出規制、更には使用材料中のPb含有規制など、世界的にも各方面から厳しく規制されつつある。このような状況に基づいて、新たに有用な鉛レス銅合金の開発が急務となり、そのなかで、Bi系、Bi-Sb系、Bi-Se系などの各種の材料が開発されている。
例えば、特許文献1には、銅合金中の鉛に代えてBiを添加して切削性を上げ、脱亜鉛を防止した鉛レス銅合金が開示されており、特許文献2には、切削性向上のためのBi添加による鋳造時のポロシティ発生をSbの添加により抑制し、機械的強度を上げた無鉛青銅が開示されている。また、特許文献3には、SeとBiの添加により、特にZn-Se化合物を析出させ、機械的性質及び切削性や鋳造性をCAC406と実質同等とした青銅合金が開示されている。
また、特許文献4には、鉛の含有量を微量に抑えてSn、Ni、Zn、Bi、P等を含有し、機械的性質や鋳造性などを従来の鉛使用銅合金と同程度に維持した水道用部材が開示されている。
特公平5−63536号公報 特許第2889829号公報 米国特許第5614038号明細書 WO2006/137557
上記特許文献のように、Pbの代替成分として、Biを添加した青銅系低鉛合金において、微量のPbを含有している場合、鋳物材料が100℃を超えるような高温下に曝されると、機械的性質、とりわけ引張強さが低下するおそれがある。これは、Cuに固溶しないBi及びPbが低融点のBi-Pb2元系共晶物として結晶粒界、及び結晶粒内に存在し、ここが高温下において局部的に弱い部分となり、引張強さを低下させることが一因と考えられている。これらの現象はBiが添加された材料であれば、Bi系、Bi-Sb系、Bi-Se系などの各種の材料で同様の傾向が見られる。
特許文献4において、高濃度のNiの含有は、合金の押湯による効果を過剰に高め、鋳物の中心引けや堰前の引けを助長することになる。そのため、多数個取りの大量生産型の型方案を用いることが多い比較的小型の鋳物部品では、実質有効な押湯を取付けることが困難なため、過剰なNiの添加は鋳物の健全性を確保する上で逆効果を招きかねない。
また、本件出願人は、先に出願したPCT/JP2004/4757のなかで、合金中にTeを含有させて、高温下での機械的性質の向上を実現させる技術を提案している。しかし、蒸気用バルブ等に用いる青銅鋳物では、180℃程度の高温下においても所定の引張強さを必要とするため、高温下における引張強さの更なる改善と、汎用的な成分をより多く用いるなど量産性の改善が求められていた。
また、上記Bi-Pb2元系共晶物の生成を抑制し、高温化における引張強さを改善する技術として、Pbの含有量を0に近づける超低減技術が考えられる。しかし、鉛レス銅合金は、その量産時において、従来のCAC406の製造と鋳造設備を共用して製造しているところが多く、このような場合、炉や取鍋等からのPbの混入が考えられる。また、鉛レス銅合金は、コスト及び環境に配慮してスクラップ等のリサイクル材や、リサイクル材からなるインゴットを用いて製造されているが、これらの材料には不可避不純物としてのPbが混入していることから、例え鉛レス銅合金専用の鋳造設備を用いたとしても、鉛レス銅合金へのPbの混入が避けられない。従って、上記鉛レス銅合金は、鉛レスと言えども0.25質量%以下(JIS B 2011に規定の鉛レス青銅弁)のPbの含有を許容しているのが現状であり、量産性、コスト面からも、Pbの含有量を0に近づけるという超低減技術は現実的でない。
一方、Bi含有の鉛レス青銅合金において、低Pbを不可避不純物として含有を許容した上で、この合金中に高濃度のPを添加して高温下の引張特性を改善するようにした技術が知られており、引張特性を向上する上で特に有効な技術として注目されている。
しかし、高濃度のPの含有は、溶解雰囲気からのガス吸収や鋳型に含まれる水分との反応により、水素などの有害ガスを吸収し、凝固の際にこれが放出されて鋳物内部に気泡などのガス欠陥を発生させることがある。これにより、鋳物内部に巣を発生させる可能性が高くなっている。また、高濃度のPの含有は、合金の固相線温度を低下させることに繋がるため、凝固中における鋳型との反応時間が更に長くなり、ガス吸収をさらに助長して水素ガス放出の影響と相まって溶質の偏析を助長する場合もある。さらに、材料凝固時におけるマッシー型の凝固傾向が強くなることでデンドライトが発達し、このデンドライト間隙への溶湯の補給が阻害されたり収縮巣へのBiなどの補給も妨げられて、特に、厚肉鋳物や偏肉鋳物などの健全性を確保することが難しい。
このため、高濃度Pを含有したときに、P含有による悪影響を抑制するようにした手段として、次のようなものがある。イ.鋳造時における冷却速度を速めて鋳型からのガス吸収を抑制し、ガスの発生や偏析を抑制する。ロ.製品の厚肉化を避け、鋳物の凝固時間を短くする。ハ.溶解雰囲気を弱酸化性とし、ガスの吸収を抑制する。ニ.注湯温度を下げる。ホ.鋳型を塗型する。
しかし、何れの抑制手段にも以下のような問題がある。すなわち、イに関しては、砂型で生産する場合には大幅な冷却速度の向上は難しい。ロは、製品の強度等の制約があるため、薄肉化が難しい場合が多い。また、ハ及びニについては、実施は可能ではあるが、これらを最適化しても鋳物としての健全性を確保することが難しくなる場合がある。ホは、ある程度の効果を得ることはできるが、生産性が低くなり、コストの面でも不利となる問題が発生する。このように、合金中にPを含有させた場合には引張特性を向上させることはできるが、このPの含有によって新たな悪影響が生じ、これを解決することは難しい。このため、従来においては、実際にはPを含有させて引張強さを向上する場合、このPの含有量を抑制する以外に有効な手段が無く、Pの含有量を少なくするとこのP含有による引張特性の向上が十分に発揮できない。
ここで、一般に青銅系合金の高温下における引張強さに関して、青銅系合金製の砂型鋳物では、高温下での引張強さに低下が見られるが、例えば、表1に示す連続鋳造鋳物(約φ28mm)は、100℃〜200℃位までの高温下においても引張強さは低下しないことが経験的に知られている(図23参照:「鉛フリー銅合金鋳物の生産技術と適用事例」、財団法人素形材センター、平成16年10月15日発行、P35,37より引用)。しかし、これらの現象について、他の鋳物径や鋳造方法(例:金型鋳造)にわたって定量的に把握したものはない。
Figure 0005259102
このため、例えば、砂型鋳造等の鋳造によって合金を設ける場合において、特に、高温特性を向上させるために、Pを高含有させることを前提としたBiを含有する青銅系低鉛合金において、Pによる鋳物の健全性への悪影響を抑制するために定量的に把握することが求められている。
本発明は、上記の課題点に鑑みて鋭意研究の結果開発に至ったものであり、その目的とするところは、高温特性を向上させるため、Pを高含有させることを前提としたBiを含有する青銅系の低鉛合金において、Pによる鋳物の健全性への悪影響を抑制する有効かつ新たな手法の開発が求められ、もって、高温下における引張強さを改善しつつ鋳物の健全性を確保し、量産性に優れた鉛レスの青銅鋳物合金を提供することにある。
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、質量比で、Zn:3.0〜10.0%、Sn:2.0〜6.0%、Bi:0.1〜0.3%、P:0.16〜0.6%、Ni:0.1〜1.0%、Pb:0.005〜2.0%と残部Cuと不可避不純物からなる青銅鋳物合金であり、前記PとNiとの交互作用により固相線温度を上げ、過度のマッシー型凝固を緩和させ、溶質の偏析を抑制することにより鋳物の健全性を確保した低鉛青銅鋳物合金である。
請求項2に係る発明は、質量比で、Zn:3.0〜10.0%、Sn:2.0〜6.0%、Bi:0.1〜0.3%、P:0.16〜0.6%、Ni:0.1〜1.0%、Pb:0.005〜2.0%と残部Cuと不可避不純物からなる青銅鋳物合金であり、PとNiとの交互作用によりPの活性を低下させ、溶湯と鋳型との反応に対する感受性を緩和して鋳物の健全性を確保した低鉛青銅鋳物合金である。
すなわち、高濃度のPの含有は、溶解雰囲気や鋳型の水分との反応により、鋳物内部にガス欠陥を発生させる。Niの含有は、Pの活性を抑制することにより、擬似的にPの含有量を抑制するのと同様の効果を有する。また、Niの効果は、上記のように合金の押湯効果を高めることから、指向性凝固の傾向が強まり、発生したガスを押湯部に濃化させる効果もあり、これら両者の作用で鋳物の健全性を確保する。
請求項3に係る発明は、さらに質量比で0.0<Se≦0.35%を含有した低鉛青銅鋳物合金である。
請求項7に係る発明は、Pb:0.005〜2.0質量%の混入を許容した鉛レス青銅鋳物合金である。
請求項1に係る発明によると、Pを含有させることで高温下において引張特性を大きく改善させながら、Pを含有することによる悪影響を抑制でき、固相線温度を上げ、過度のマッシー型凝固を緩和させ、溶質の偏析を抑制することにより押湯効果を改善し、押湯系方案への適用を高め、鋳物の健全性を確保することができる低鉛青銅鋳物合金を提供できる。また、鉛を低減した鋳物合金であることにより、人体への悪影響を回避しつつリサイクルなどの環境保護の推進に寄与したり、更には、量産性とコスト面にも優れた低鉛青銅鋳物合金である。従来の低鉛銅合金では、主に使用温度100℃以下の給水・給湯用器具での適用に限定されるものであったが、高温下における引張強さを改善した本発明合金は、使用用途を限定することなく、従来の青銅合金の適用用途全般に展開できる。しかも、リサイクル材料としての使用範囲が拡大し、環境保護は勿論のこと、コスト面にも優れた効果を発揮する。特に、砂型鋳造品など、鋳造時における冷却速度が遅い合金に好適であり、高温下(約180℃)における引張強さ152MPaを必要とする合金に最適である。さらには、ある程度のPbを不可避不純物として許容することができ、この場合、合金の180℃における引張強さを、例えば、152MPaに確保することで、Pbの含有量に影響されることなく、高温下においても、優れた引張強さを確保することができる。これにより、その量産時において、従来のCAC406の製造と鋳造設備を共用して製造する場合において、その炉や取鍋等からのPbの混入に影響されることはなく、また、スクラップやスクラップを用いたインゴットなどのリサイクル材を用いて製造する場合にあっても、不可避不純物としてのPbの混入に影響されることはなく、高温下での引張強さは確保される。
また、Niを主要成分として含有し、P−Ni交互作用を得ることにより、Pの含有量を抑制しつつ、高温下(約180℃)における引張強さ152MPaを有する合金であり、Niの含有による引張強さの向上作用を得ることができた。例えば、JIS B 8270「圧力容器の構造」において、CAC406の200℃での基本許容応力値は38MPaと規定されているが、この規定値の4倍にあたる、152MPaを高温下においても確保することができる。Pは過剰に含有すると、鋳物の健全性が低下する傾向にあるが、P−Ni交互作用により、Pの含有量が少なくとも高温下における引張強さが確保できるので、鋳物の健全性も十分に確保することができ、バルブ等の耐圧容器に好適な合金を得ることができる。
請求項2に係る発明によると、Pを含有させることで高温下において引張特性を大きく改善させながら、Pを含有することによる悪影響を抑制でき、Pの活性を低下させることで、溶解雰囲気からのガス吸収や鋳型の水分や有機物との反応を抑制し、鋳物の健全性を高めて、耐圧性や機械的性質も改善できる低鉛青銅鋳物合金を提供できる。また、鉛を低減した鋳物合金であることにより、人体への悪影響を回避しつつリサイクルなどの環境保護の推進に寄与したり、更には、量産性とコスト面にも優れた低鉛青銅鋳物合金である。従来の低鉛銅合金では、主に使用温度100℃以下の給水・給湯用器具での適用に限定されるものであったが、高温下における引張強さを改善した本発明合金は、使用用途を限定することなく、従来の青銅合金の適用用途全般に展開できる。しかも、リサイクル材料としての使用範囲が拡大し、環境保護は勿論のこと、コスト面にも優れた効果を発揮する。特に、砂型鋳造品など、鋳造時における冷却速度が遅い合金に好適であり、高温下(約180℃)における引張強さ152MPaを必要とする合金に最適である。
しかも、Pを低濃度から高濃度で含有させることができ、高濃度により含有させた場合でも、Niを所定量含有させることで合金中への巣の発生や溶質の偏析等を防いで合金が厚肉鋳物や偏肉鋳物の場合にも健全性を確保できる低鉛青銅鋳物合金である。また、Niの含有量を調節して押湯系とばり堰系の方案に対応することができ、Niを高含有した場合には押湯系方案を効果的に配することで健全な鋳物が得られ、一方、Niの含有量を低く抑えることで、ばり堰方案を採用した場合に堰引けや中心引け、さらには外引けなどの発生を防ぐことができる。
また、ばり堰方案によって鋳物を設けることができるため鋳物の健全性が高まると共に、鋳物表面の肌荒れを少なくして精度の高い鋳物を得ることができ、また、歩留まりが高まってコストを抑えることができる低鉛青銅鋳物合金である。
さらには、Ni−P系金属間化合物の生成を抑制できることで、合金の常温及び高温伸びを確保して引張特性を高めることができる低鉛青銅鋳物合金である。
請求項に係る発明によると、Seを主要成分として含有し、Biの含有量を抑制しつつ、高温下(約180℃)における引張強さ152MPaを有する低鉛青銅鋳物合金を提供できる。また、Seは、合金中に、Se−Zn、Cu−Seの金属間化合物として存在するから、Biの含有量を抑えつつ、引張強さや鋳物の健全性の確保に有効であり、バルブ等の耐圧容器に好適な合金を得ることができる。
本発明に係る青銅鋳物合金は、低Pbが混入することを許容し、少なくともBiとPを含有し、鋳物材料中にPを高濃度に含有させることにより高温下での引張強さを改善した青銅鋳物合金において、Niを含有させることにより、PとNiとの交互作用により固相線温度を上げ、過度のマッシー型凝固を緩和させ、溶質の偏析を抑制することにより押湯効果を改善し、押湯系方案への適用を高め、鋳物の健全性を確保した。
Biを含有する鉛レス青銅合金では、押湯の効きが従来のPbを含有するCAC406などよりも小さいと経験的に知られており、鋳造条件によっては合金内部にポロシティが多く発生する場合がある。これを改善する方法として、押湯効果を高めて鋳物の健全性を確保するか、ポロシティを分散させて鋳物の健全性を確保するかの2通りが考えられる。Niは押湯効果を高めることで鋳物の健全性を高めるが、実質有効な押湯を取付けることが出来ない場合には、逆に鋳物の中心引けや堰部の引け、さらには外引けを助長する傾向にあるので注意する必要がある。
また、本発明に係る鉛レス青銅鋳物合金は、低Pbが混入することを許容し、少なくともBiと高濃度のPを含有する青銅鋳物合金において、Niを含有させてPの活性を低下させ、溶湯と鋳型との反応に対する感受性を緩和して鋳物の健全性を確保した。
これらにより、例えば、二次デンドライトアーム間隔が14μm以上の合金領域で、100℃を超える高温下での引張強さを改善し、少なくとも180℃における引張強さ152MPaを確保することもできる鉛レス青銅鋳物合金である。
このとき、本発明の鉛レス青銅鋳物合金は、後述するように、質量比で、P:0.15〜0.40%、Ni:0.1〜3.0%とするのが好ましく、前記のNiは、高濃度のPの含有による固相線温度の低下を抑制し、マッシー型凝固形態を緩和することで、溶質の偏析を抑制すると同時に押湯効果を改善し、有効な押湯を配された方案を用いた場合に鋳物の健全性を確保することができる。Niは、0.1質量%以上の含有で押湯効果の改善が得られ、Niの含有量の増加とともに直線的に押湯効果が増大する。
一方で、高濃度のNiの含有は、合金の押湯の効きを過剰に高め、鋳物の中心引けや堰前の引けを助長する。特に、多数個取りの大量生産型の型方案を用いることが多い比較的小型の鋳物部品では、実質有効な押湯を取付けることが困難なため、過剰なNiの添加は、鋳物の健全性を確保する上で逆効果を招きかねない。この影響は、2.0質量%以上の含有で顕著となり、理想的には1.5質量%未満にNiを抑制することで、従来方案の大幅な改善なしに生産することが可能となる。
ここで、本発明における「青銅」合金の基本構成は、Sn,Zn,BiとCu及び不可避不純物であり、好ましい青銅鋳物合金としては、Cu-Sn-Zn-Bi系(以下、「Bi系」という。)及びCu-Sn-Zn-Bi-Se系(以下、「Bi-Se系」という。)である。
本発明における青銅鋳物合金は低鉛としているが、この低鉛とは、Pbの含有量が、Pbを含有する青銅合金(CAC406等)に比して少ない合金であることをいい、JIS H5120等に規定されている、鉛フリー(鉛レス)銅合金における残余成分としてのPb含有量(0.25質量%以下)に限定されないことをいう。
本発明における「高濃度のP(燐)」とは、公知技術における残留Pよりも多い、0.1質量%を超える量のPをいう。
また、本発明における「PとNiの交互作用」とは、P含有量の増加に対する効果(引張強さ)の向上割合が、Niの含有により高温下において増加する、相乗効果をいう。
ここで、以降における「引張強さ」は、後述するJIS Z2201に規定の4号試験片を用い、アムスラー引張試験機にて評価したものである。
また、本発明における「鋳物の健全性」は、後述する階段状鋳物試験片を用い、染色浸透探傷試験にて観察面における鋳造の欠陥有無を評価したものであり、CAC406と同等、または鋳造方案の修正によりCAC406と同等まで改善可能な状態と判断可能であれば合格と評価したものである。
次に、各成分範囲とその理由を具体的に詳述する。
P:0.1<P≦0.6質量%
一般に、銅合金におけるPは、0.01以上0.1質量%以下の範囲内で、比較的低濃度の含有である。例えば、金属溶湯の脱酸の促進や湯流れ性を良好にするため、砂型鋳造により製造された鋳物には、残留Pとして、0.01以上0.1質量%未満を含有しており、例えばCAC406における残余成分としてのP含有量は、0.05質量%以下である。また、日本鋳造工学会第146回全国講演大会講演概要集P30に示されているように、Pを積極的に含有して鋳造割れを防止する場合であっても、200〜300ppm(0.02〜0.03質量%)の含有である。これらの例によるPは、鋳造炉中の金属溶湯や取鍋中の金属溶湯に添加され、鋳物に含有される残留Pは、0.1質量%以下である。
また、前述のPCT/JP2004/4757公報に提案されているように、P:0.01〜0.5質量%、好ましくは0.05〜0.1質量%を含有して、100℃における引張強さの改善を図っている。
なお、一般に、銅合金の連続鋳造では、金属溶湯の脱酸の促進を目的として、0.5質量%未満のPが金属溶湯に対して添加されるが、このPは鋳物に積極的に含有するものではなく、残留Pとしての含有量は開示されていない。
一方、本発明におけるPの含有は、高温下(約180℃)における引張強さの向上に寄与し、脱酸目的や鋳造割れを防止するための添加量を大きく上回る、高濃度の範囲に属する量のPを積極的に含有させるものであり、0.1質量%を超える含有がBi-Pb2元系共晶物の生成を抑制する一方、合金の粒界強度を上げることにより、高温下における引張強さの向上に寄与する。
好ましくは、後述する実施例1(Pの含有量と180℃における引張強さとの関係)において、引張強さ152MPaを満足する範囲として、上限値を0.6質量%とし、下限値を0.2質量%とするのが好ましい。なお、上限値は、180℃における引張強さのピーク値が得られると共に、量産時におけるコストの観点から、0.4質量%を上限とするのがより好ましく、また、後述する実施例5において鋳物の健全性が確認され、量産において鋳造方案の大幅な変更を伴うことなく鋳物の健全性が確保できる値としても、0.4質量%を上限値とするのが好ましい。
また、後述するNiを含有する場合には、NiとPとの交互作用により、180℃における引張強さ152MPaを確実に得られるPの下限値を下げることができることから、Pの下限値は、0.12質量%、より好ましくは、0.15質量%とし、上限値を0.4質量%に抑制した範囲で、180℃における引張強さ152MPaを得ることが可能となる。なお、より鋳物の健全性を必要とする場合には、さらにP含有量を抑制することが有効で、そのときの上限値は、0.3質量%が好ましい。Niを含有する場合、Pの含有量は0.16質量%とするのが最も好ましい。
Ni:0.0<Ni≦3.0質量%
一般に、銅合金におけるNiは、α相に固溶し、マトリックスが強化され、合金の機械的性質、とりわけ引張強さの向上に寄与する。例えば、特開2003−193157公報には、Niを0.2〜3.0重量%含有することにより、CAC406と同等の引張強さを常温下において確保した技術が提案されており、Ni含有量の増加に伴う引張強さの変化は、Pを0.01〜0.02重量%(130〜200ppm)含有する実施例合金にて、引張強さのピークがNi含有量0.6〜0.8重量%に存在するなだらかな山形状の特性を呈している(上述の公報における図1参照)。
また、高温下(180℃)においては、後述する実施例4(P及びNiの含有量と180℃における引張強さとの関係)の比較例に示すように、残留Pレベル(0.1質量%以下)のPを含有した鉛レス銅合金では、Ni含有量の増加に伴う引張強さは、ほとんど変化しない。
これに対し、本発明におけるNiの含有は、0.1質量%を超える高濃度のPの含有を前提として高温下における引張強さの向上に寄与するものであり、この引張強さの変化は、後述する実施例4に示すように、P-Niの交互作用により、微量のNi含有で引張強さが大きく向上する、放物線状(軸はx軸)の特性を得ることができる。これにより、Niを微量でも含有させることで、Pの含有量を高濃度範囲(0.1<P≦0.6質量%)内において抑制しつつ、高温下における引張強さを向上することが可能となった。これはPが溶湯から蒸発しやすく、高濃度にコントロールすることが難しいことを考慮すれば、極めて有用である。
具体的なNi含有量として、少なくとも0を超える値であればよく、例えば0.05質量%や0.08質量%も適用可能であり、好ましくは0.1質量%の含有により、Pの含有量を抑制しつつ、高温下(約180℃)における引張強さ152MPaを得ることができる。
一方、Niの過剰の含有は、引張強さの向上が飽和することから、上限値を3.0質量%としているが、Pの好ましい上限値(0.4質量%)における引張強さの向上の飽和状態を、図10(P=0.32質量%)から判断すると、2.0質量%を上限値とするのが良い。また、コスト低減を考慮して、少ないNi含有量でも効果的に引張強さを得ることができる範囲として、1.0質量%を上限とするのが良い。更に、高温下(約180℃)における引張強さ152MPaを最低限確保する観点からは、下限値を0.3質量%、上限値を0.6質量%とするのが好ましい。
また、Niの含有は、高濃度のPの含有による固相線温度の低下を抑制し、過度のマッシー型凝固形態を緩和することで、溶質の偏析を抑制すると同時に押湯効果を改善し、鋳物の健全性を確保することができる。さらに、Niは、Pの活性を低下させることで、溶解雰囲気からのガス吸収や鋳物の水分や有機物との反応を抑制し、鋳物の健全性を高め耐圧性や機械的性質を改善する。
この場合、例えば、Niの含有を1.5%以下とすることで押湯効果をより抑制すること、すなわち鋳物の耐圧性に影響を与えるような大きな鋳造欠陥(引け)を抑制することが可能になり、これにより、ばり堰方案に対する適用性を高めて、鋳物の健全性を確保できる。
このとき、鋳造時のNi含有量としては、押湯系の方案の場合にはNi含有量を高め、ばり堰系の方案(押湯の作用が働かない方案)の場合には低めとするのがよい。上述したように、Niを含有させると押湯効果がより強まるため、Niを多く含有させた場合、押湯を効果的に配設することで健全な鋳物が得られる。一方、ばり堰方案を使用したときに押湯効果を過剰に高めると、堰引けや中心引けさらには外引けが発生する可能性が高まる。ばり堰方案ではNiの含有量を低く抑えることが重要であるが、低く抑えすぎるとPによる影響を排除できなくなってしまうことに加え、高温下において高い引張り強さを確保できなくなる。従って、Niの含有量は、Pの含有量を最適含有量である0.16質量%を前提とした場合、0.2〜3.0質量%とするのが好ましい。更には、より鋳物の健全性を高めるために、Ni含有量の上限を2.0質量%とすることがより有効であり、1.5質量%以下に抑制するとなお望ましい。更に、高温引張り強さやNiの伸び低下への影響も考慮すると、0.3〜1.0質量%が最適である。
また、前述の課題のように、高濃度のNiの含有は、鋳物の中心引けや堰前の引けを助長し、多数個取りの大量生産型の型方案を用いることが多い比較的小型の鋳物部品では、実質有効な押湯を取付けることが困難なため、過剰なNiの添加は鋳物の健全性を確保する上で逆効果を招きかねない。
この影響は、2.0質量%以上の含有で顕著となるため、理想的には、1.5質量%未満にNiを抑制することで、従来方案の大幅な改善なしに生産することが可能となる。
また、Niの含有を1.5%以下とした場合には、Ni-P系金属間化合物の生成を抑制し、常温及び高温伸びと鋳物の健全性を確保して引張特性を高めることが可能になる。
Bi:0.1〜3.0質量%
Pbの代替成分たる低融点成分として、鋳造の凝固過程において、合金(鋳物)中のデンドライト間隙の最終凝固部に生じる、ミクロポロシティと称される微細な収縮巣(引け巣)に入り込むことにより、合金の健全性(耐圧性)を向上しつつ、切削性の確保に寄与する成分である。切削性向上には0.1質量%以上の含有が有効だが、ミクロポロシティを減少させ、合金の健全性を確保するためには、Seの含有と共に、0.25質量%以上の含有が必要である。一方、Biが多量に含有されると、鋳物の凝固過程において、Biが、Snや高濃度に含有されているPと共に鋳物表面に集中する「逆偏析」を生じ、この場合、鋳物内部におけるミクロポロシティが増加するおそれがあることから、合金の健全性を確保するためには、上限値を3.0質量%とするのが有効である。
耐圧性が要求される用途など、より効果的にミクロポロシティを低減する必要がある場合には、下限値を0.4質量%、上限値を2.5質量%とするのが有効である。また、CAC406と略同等の切削条件による加工を可能とする場合には、下限値を1.0質量%とするのがよい。
なお、Biが多量に含有されると、引張強さが低下することから、高温下における引張強さを量産レベルで確実に確保する必要がある場合には、上限値を2.6質量%とするのが有効であり、量産におけるコスト低減を重視する場合には、上限値を2.0質量%とするのが好ましい。
Zn:3.0〜10.0質量%
切削性に影響を与えずに、硬さや機械的性質、特に伸びを向上させる成分であり、3.0質量%以上の含有で、効果的に溶湯の脱酸を促進し、鋳物の健全性確保や湯流れ性を向上させる。Znは比較的安価であるため、可能な限り多く含有させたい成分であるが、Znの蒸気による鋳造環境の悪化を考慮して、上限値を10質量%とする。
また、Znによる脱酸効果を確実に得る場合には、下限を4.0質量%とするのが好ましい。更に、鋳型への溶湯の充填性を重視して、Znの蒸気圧を下げる必要がある場合には、上限値は9.0質量%とするのが好ましい。なお、後述するSnの最適下限値2.8質量%を考慮すると、δ相を析出させない範囲として、下限値を6.0質量%とするのが好適である。
Sn:2.0〜6.0質量%
合金の機械的性質、とりわけ、伸びと耐食性の向上に寄与する成分であり、2.0質量%以上の含有が有効である。一方、含有量の増加に伴い、硬く脆弱なδ相を析出し、加工性と伸びを低下させてしまうこと、及びコストを考慮し、上限値を6.0質量%とする。 また、CAC406と同等の引張強さを要求される場合には、2.8質量%以上の含有が効果的である。さらに、量産時において鋳造条件が相違しても、P,Bi,Snなどの溶質の逆偏析を抑制する必要がある場合には、上限値を5.5質量%とするのがよい。なお、より引張強さを重視して、引張強さのピーク値を得る場合には、上限値を4.5質量%とするのが好適である。
なお、Snと、Znの交互作用を見極めることにより、常温及び高温伸びを最適化することも可能である。
Se:0.0<Se≦1.3
SeはPbの代替成分として、CuとZnの含有比率に応じて、Se-Zn、Cu-Seなどの金属間化合物を形成することにより、Biの含有量を抑制しつつ、合金の切削性を確保する。また、これらの金属間化合物の晶出により、ミクロポロシティを分散して合金の健全性が向上し、引張強さを安定させる。
このように本発明のPとNiを含有した鉛レス青銅鋳物合金は、Bi系の鉛レス青銅合金に限ることなく、Bi−Se系の鉛レス青銅合金にも適用することができる。この場合、Bi系合金と同様の高温下における引張強さの改善と、鋳物の健全性を確保することができる。
Seの過剰の含有は、脆弱な上記金属間化合物の晶出量が多くなり、引張強さが低下するため、上限値を1.3%とする。さらに、Seの含有量を抑制しつつ、CAC406と同等の引張強さを要求される場合には、上限値を0.35質量%とするのがよい。
Pb:0.005〜2.0質量%
高温(180℃)時の引張強さを確保するために、Pbを0.005質量%以下に制御すべく、Pbを極力排除した材料の使用を余儀なくされていた。しかし、後述のPの含有により、高温下における引張強さが確保されたことから、Pbを含有するリサイクル材料の使用も促進されることが期待される。具体的には、本発明における低鉛の領域である、0.005〜2.0質量%の範囲で高温下における引張強さが改善され、国内の鉛レス青銅弁のPb含有基準である0.25質量%以下の範囲内でPbの含有を許容することが可能となる。
Te:0.0<Te≦1.0質量%
TeはZn、Cu、Bi、Seなどと化合物を生成し、合金中に分散相として存在する。特にPbと結合することで、Bi-Pb共晶の生成を抑制し高温下における合金の脆化を抑制する。また、Teの含有により、同じく高温特性の改善に効果のあるPの含有量を低減することが可能であり、その結果、鋳物の健全性が改善される。Teは0.1質量%以上の含有で高温引張強さの改善効果が明確となり、Zn、Pb、Biなどの含有量の影響もあるが、0.2質量%以上でさらなる特性の改善が可能である。しかし、過剰の含有は上記化合物が多量に生成されることから、合金を脆化させることがあるため、その含有量の上限は1.0質量%とするのが望ましい。また、0.5質量%以上の含有で180℃引張強さの改善の効果が飽和する傾向にあることから、その含有量の上限を0.5質量%とするのが有効である。
また、Teの高温特性改善の効果により、同様の効果を持つPの含有量を0.1質量%以下に抑制することが可能であり、その結果、鋳物の健全性が改善される。
不可避不純物:
本発明銅合金における不可避不純物としては、上述のPbの他、Fe:0.3質量%以下、Al:0.01質量%以下、Si:0.01質量%以下、Mn:0.25質量%以下、S:0.3質量%以下、Mg:0.01質量%以下、Ti:0.01質量%以下、Zr:0.1質量%以下、Co:0.3質量%以下、Cr:0.3質量%以下、Sb:1.1質量%以下が挙げられる。
特に、Sbの含有量と常温下及び高温下における引張強さの関係について検証した。表2、表3は、各化学成分値を有した鉛レス銅合金のSb含有の影響を示したもので、グラフ化したものを図12に示す。同図からわかるように、引張強さへの影響はなく、Sbが不可避不純物となることを確認した。
Figure 0005259102
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以下に、本発明における鉛レス青銅鋳物合金の好ましい実施例を詳述する。本実施例では、引張強さの基準値として、152MPaを180℃における目標値とした。180℃を基準としたのは、呼び圧力10Kまたはクラス150の青銅製バルブにおいて、流体を飽和蒸気とした場合の最高許容圧力が1.0MPaであり、この圧力に対応する飽和温度が180℃であることによる。また、152MPaを基準としたのは、JIS B 8270「圧力容器の構造」において、材料本体の引張強さの目標数値を、この材料を用いた製品の安全等を考慮して、基本許容圧力の4倍とする基本的な考え方に準拠し、CAC406の200℃での基本許容応力値38MPaの4倍の値とし、本発明合金の主な用途であるバルブなどの圧力容器の使用に適したものである。
先ず、本試験において、Pの含有量と180℃における引張強さの関係について検証した。各サンプルの組成を表4に示す。試験結果を同表、並びにグラフ化したものを図1に示す。なお、本実施例における各サンプルは、砂型鋳物から採取した。引張試験は、試験片をCo鋳型を用いて鋳込み温度1130℃でJIS A号方案に鋳造後、切削加工により製作したJIS Z2201に規定の4号試験片とし、アムスラー引張試験機を用いて行った。この引張試験の条件は、供試品を砂型鋳物から採取する他の実施例においても同様である。
Figure 0005259102
No.1−1〜8は、Bi-Se系合金において、本発明合金の特徴成分であるPの含有量を変化させた供試品である。本試験結果から、Pを0.10質量%を超える高濃度に含有させることで、180℃という高温下での引張強さが向上していることがわかる。図1のグラフより、特に、152MPaという目標値を達成するためには、本実施例において、Pを0.26〜0.50質量%含有させることが必要である。
次に、表5に示すNo.1−9〜16は、No.1−1〜8と同様のBi-Se系合金において、主要成分であるSn,Zn,Bi,Seの含有量を変えて、本発明銅合金の特徴成分である高濃度のPを含有した供試品である。また、No.1−17〜24は、本発明銅合金(Bi系)において、主要成分であるSn,Zn,Biの含有量を変えて、本発明銅合金の特徴成分である高濃度のPを含有した供試品である。
Figure 0005259102
これらの供試品について、180℃における引張強さを検証した。表5を考察すると、本試験結果から、以下の成分範囲における実施例について、高濃度のPを含有することにより、高温下(180℃)における引張強さ152MPaという目標値を達成していることがわかる。
<Bi-Se系合金>
質量%で、Sn:3.0〜6.0(好ましくは3.1〜5.9)、Zn:4.0〜9.0(好ましくは8.3)、Bi:1.0〜3.0(好ましくは1.3〜2.2)、Se:0.2〜0.5、P:0.20(好ましくは0.22)〜0.50、残余:Cu及び不可避不純物
<Bi系合金>
質量%で、Sn:3.0〜6.0(好ましくは5.8)、Zn:4.0〜9.0(好ましくは8.4)、Bi:1.0〜3.0(好ましくは1.1〜2.2)、P:0.20〜0.40(好ましくは0.22〜0.27)、残余:Cu及び不可避不純物
次に、鉛レス青銅鋳物合金の高温下における引張強さを定量的に把握し、本発明の好適な対象合金領域を示すと共に、本発明の効果を検証する。
一般に、合金の引張強さは、そのミクロ組織の大きさに関係することが知られている。そこで、本試験は、合金のミクロ組織の大きさを示す尺度として、二次デンドライトアーム間隔を用いた。ここで、デンドライトとは、金属凝固における結晶の成長形態の1つである。図2は、デンドライトの模式図であり、同図において、幹を一次デンドライトアーム(一次枝)とした場合、この一次枝から生成している枝を二次デンドライトアーム(二次枝)と呼び、そのアーム間隔は鋳物の機械的性質などに大きな影響をおよぼすことが知られている。図3は、CAC406の代表的なミクロ組織を示した顕微鏡写真であり、このミクロ組織を観察すると、二次デンドライトアームが発達し、整列していることがわかる。
そこで、二次枝法を用いて二次デンドライトアームを測定し、ミクロ組織の大きさを評価した。二次枝法とは、図4(a)に示すように、整列したアーム群における平均間隔を求める方法である。即ち、二次アームが複数本、実質的に平行に成長しているデンドライトアームを顕微鏡組織において探し、そのデンドライトアームと略直交する任意の長さの直線を引き、この直線の距離Lをデンドライトアームを横切るアーム本数(n−1)で除し、これをdsとする。つまり、二次デンドライトアームの大きさは、L/(n−1)で表される。なお、試験片鋳物のミクロ組織は、観察する箇所により組織の大きさが異なり、多結晶であるために個々の結晶粒でデンドライトの発達の仕方に違いが見られる。本試験では、各試験片の二次デンドライトアーム間隔の測定方法を以下のように統一した。また、実際の製品鋳物では明確な結晶粒界が観察されない場合があるが、そのような場合には、下記3項を適用する。
1.観察箇所
JIS4号引張試験片 標点部 横断面
2.測定箇所
試験片の横断面中心付近を図4(b)に示すような各々の結晶粒について二次アームが整列している箇所を特定。計約3つ以上の結晶粒について測定した。
3.測定数
アーム5本以上整列しているデンドライトを30本
図4(c)は、CAC406の測定例である。測定本数が約10本を超えると、二次デンドライトアーム間隔の平均値が集束するので、測定箇所の違いによる影響を排除することができる。
上記方法に基づいて、本試験では、砂型鋳物、金型鋳物、連続鋳造鋳物に分けて、これら鋳物の常温並びに高温における引張強さについて検証した。各サンプルの組成を表6(常温)、表7(高温)に示す。試験結果を同表、並びにグラフ化したものを図5(常温)、図6(高温)に示す。なお、本実施例における常温とは、約23℃であり、他の実施例においても同様である。
Figure 0005259102
Figure 0005259102
本試験結果から、180℃での引張強さは、二次デンドライトアーム間隔が小さいほど、引張強さの低下は小さいことがわかる。ところで、連続鋳造鋳物の引張強さは低下しないというのが従来の常識であったが、本試験結果から明らかであるように、径の違いによって低下することが確認され、特に、径の太い鋳物の引張強さが低下している。これは、径が太くなるほど鋳物の冷却速度が遅くなることから、二次デンドライトアーム間隔が大きくなったことに起因していると考えられる。
ここで「連続鋳造鋳物」は、例えば中空縦形の鋳型に対して、上方から金属溶湯を流し込む一方、下方から凝固した鋳物を連続的に引き抜く「連続鋳造」により成形されたものであり、金属溶湯の凝固は、水冷等の冷却設備により促進される。
これに対し「砂型鋳造」は、硬化させた鋳砂からなる鋳型に金属溶湯を流し込み、これを空冷放置した後、凝固した金属部分を鋳型から取り出す「砂型鋳造」により成形されたものであり、「金型鋳物」は、金属製の鋳型に金属溶湯を流し込み、これを空冷放置した後、凝固した金属部分を鋳型から取り出す「金型鋳造」により成形されたものである。鋳物の冷却速度は、上述の鋳造方法の相違のほか、鋳物の大きさや鋳造方案によっても相違するが、本実施例における「砂型鋳物」「金型鋳物」は、「連続鋳造鋳物」に比して冷却速度は遅いことから、二次デンドライトアーム間隔が更に大きいものとなり、引張強さが低下したものと考えられる。
一方、本発明銅合金は、二次デンドライトアーム間隔に影響されることなく、高温域での引張強さの低下が改善されていることがわかる。すなわち、本発明銅合金は、上述の鋳造方法(冷却速度)の差異に影響されることなく、高温下における引張強度を向上した合金であり、換言すれば、公知の鋳造方法(冷却速度)により製造可能としつつ、高温下における引張強度を向上した合金であることがわかる。また、本発明銅合金は、図5及び図6の中で、CAC406と同様な傾向を示していることから、CAC406の代替材として、高温域まで引張強さを確保するものである。
なお、図6に示されるように、鉛レス銅合金の高温(180℃)での引張強さの推移の中で、目標値152MPaにおける二次デンドライトアーム間隔が14μm付近であることから、この14μmを本発明銅合金に好適な合金領域の境界基準値とした。従って、本発明銅合金によれば、二次デンドライトアーム間隔が14μm以上の合金領域で、少なくとも180℃における引張強さ152MPaを確保することができる。
ここで、実製品の二次デンドライトアーム間隔を測定する。特に、このアーム間隔が小さい傾向にある小型弁(耐圧10K、呼び径1/2、鉛レス青銅製の汎用ゲートバルブ、砂型鋳物)を採用した。図7は、胴体部の切断面を示しており、図8は、硝酸を用いて切断面をエッチング処理したものである。各々肉厚の異なる部位(合金領域)1乃至3の二次デンドライトアーム間隔は、27.9μm、24.7μm、23.4μmであり、何れも14μm以上のアーム間隔を有していることから、通常の砂型鋳物製品は改善対象として判断することができる。なお、14μm以上のアーム間隔を有する部位は、鋳物の一部分(合金領域)であればよく、この場合、鋳物部品全体が、本発明銅合金の実施対象となる。
測定方法としては、図8のようにエッチング処理し、金属組織を把握し易い状態で電子顕微鏡を用い、二次デンドライトアーム間隔を測定している。このように、同じ鋳物であっても、肉厚の違いによって二次デンドライトアーム間隔が異なるため、局所的な合金領域の引張強さを定量的に把握でき、引張強さに起因する製品としての合否判定が可能となる。
次に、本発明銅合金(Bi-Se系)に関して、Pbの含有量と180℃における引張強さの関係について検証した。各サンプルの組成を表8に示し、試験結果を同表、並びにグラフ化したものを図9に示す。なお、各サンプルは砂型鋳物から採取した。
Figure 0005259102
本試験結果から、Pを高濃度に含有する本発明銅合金では、Pbの含有量の増加に伴って緩やかに引張強さが低下するものの、0.5%以上から引張強さの低下が見られなくなり、しかも、180℃における目標値152MPaをほぼ確保していることがわかる。一方、比較例とした鉛レス銅合金では、引張強さの低下が顕著に表れており、Pbの含有量が0.005質量%を超えると、180℃における目標値152MPaを満たすことができない。このように、本発明銅合金は、Pbが含有されても高温下において優れた引張強さを確保することが可能であり、リサイクル材として極めて有用である。
次に、本発明銅合金(Bi系)に関して、Niの含有量と180℃における引張強さの関係について検証した。各サンプルの組成を表9に示し、試験結果を同表、並びにグラフ化したものを図10に示す。なお、本実施例4における各サンプルは、砂型鋳物から採取した。
Figure 0005259102
本試験結果から、Pを高濃度に含有した本発明銅合金にNiを加えることで、常温下及び高温下における引張強さを向上させることが判明した。特に、図10のグラフより、Niの含有量が0.1〜3.0質量%において、152MPaの目標値を確保していることが確認できる。
一方で、伸びはNiの含有量の増加とともに低下する傾向を示している。特に、常温での伸びにおいて顕著である。Niはマトリックスに固溶し引張強さを向上させるが、過剰なNiの添加は、Ni−P系金属間化合物などの生成により、伸びに影響を与えるため好ましくない。Sn、Zn、Bi、Pなどの各元素を最適化することで、常温および高温引張強さを確保しつつ、常温でのCAC406のJIS規格下限値である15%を十分に確保することができる。
次に、以下の各サンプルにおいて、常温下及び180℃における引張強さを検証した。
表10に示すNo.4−11〜16は、本発明合金(Bi系)において、主要成分であるSn,Zn,Biの含有量を変え、且つ特徴成分であるPとNiの含有量を変えた供試品である。また、No.4−17,18は、本発明合金(Bi-Se系)において、主要成分であるBi,Seの含有量を変えた本発明合金に係る供試品であり、No.4−19,20は、比較例として、主要成分であるZnの含有量を増した供試品である。
Figure 0005259102
更にここで、Pを0.14質量%、0.22質量%、0.28質量%、0.32質量%含有する本発明銅合金(Bi系)中に、Niを0、0.20質量%、0.40質量%、0.60質量%含有した場合の180℃における引張強さを検証した。比較例として、Pを0.02質量%、0.10質量%とした場合についても測定した。各サンプルの組成を表11に示し、試験結果を同表、並びにグラフ化したものを図11に示す。
Figure 0005259102
本試験結果から、高温下における引張強さは、Pを高濃度に含有するほど、Ni含有の特性向上効果をより促進させ、PとNiの交互作用があることが確認された。具体的には、比較例に示した低濃度のPの含有では、Niを含有しても引張強さの向上は微小なものに留まるが、Pを0.10質量%を超えて含有させた場合にNiを含有すると、引張強さが大きく向上した。特に、Pを0.14質量%以上含有させた場合に、表11、図11の特性に応じて少なくとも0.16〜0.61質量%のNiを含有させることで、引張強さの目標値152MPaを得ることができる。
また、以下のサンプルにおいて、180℃での伸びを検証した。本実験は、Sn、Zn、P、Niが180℃伸びに与える影響を調査するための4元配置実験であり、供試品の化学成分値と180℃伸びの測定結果を表12に示す。
Figure 0005259102
本試験結果から、Znは10%を越えて含有させると180℃伸びが低下する傾向にある。また、Sn・Ni・Pとの交互作用も存在する。Snとの交互作用は高Zn低Sn側で180℃伸びが低下する傾向にあるが、さらにSnを高く含有させた場合には、高Zn高Snでも180℃伸びが低下することがわかっている。Niとの交互作用は、Niを低く含有(0.2質量%)する場合、Znの含有量を高くすると180℃伸びが低下するが、Niを高く(0.4質量%)含有するとその影響は小さくなる。Pとの交互作用は、Pを低く含有(0.16質量%)するときにはZnの含有量の影響は小さいが、Pを高く(0.32質量%)含有するときは、高Zn(11質量%)側で180℃伸びが大きく低下する。
また、SnとPの交互作用も存在し、Pを高く含有(0.32質量%)するときには、Snの影響は小さいが、Pを低く含有(0.16質量%)するときには、高Sn(3質量%)側で180℃伸びが低下する。
表9、表10(Bi系)、表11、表12を考察すると、本試験結果から、以下の成分範囲における実施例について、高濃度のPを含有することにより、高温下(180℃)における引張強さ152MPaという目標値を達成していることがわかる。
<Bi系合金>
質量%で、Sn:2.0〜6.0(好ましくは2.3〜5.7)、Zn:6.0〜10.0(好ましくは6.5〜9.5)、Bi:0.1〜3.0(好ましくは2.6)、P:0.12〜0.40(好ましくは0.33)、Ni:0.1〜3.0、残余:Cu及び不可避不純物
なお、Bi-Se系合金については、上記Bi系合金の成分に加え、Se:0.1〜1.3を含有する範囲で、適用可能である。
図17は、P-Niの交互作用を示す概念図である。低濃度(0.1≦P)のPを含有した比較例合金に対し、高濃度(0.1<P≦0.6)のPを含有した本発明銅合金は、高温下における引張強さは向上する(図17のA参照)。これに対し、Pに加えてNiを含有した場合、低濃度のPを含有した比較例合金において、高温下における引張強さの向上は僅か(図17のC参照)であるものの、高濃度のPを含有した本発明銅合金では、高温化における引張強さが常温下における引張強さ付近まで大きく向上する(図17のB参照)。このように、P-Niの交互作用とは、P含有量の増加に対する効果(引張強さ)の向上割合が、Niの含有により高温下において増加する、相乗効果(図17のB−C参照)をいう。
本発明合金に、高温特性改善に効果のあるTeを添加した場合の効果について検証した。各サンプルの組成と180℃における引張強さの検証結果を表13に示す。
Figure 0005259102
この試験結果から、本発明合金にTeを0.2質量%以上含有することで180℃引張強さが改善できることがわかった。特に、Pの含有量の少ない所での効果が大きく、Teの含有によりさらにPの含有量を抑制することで、より高い鋳造性を得ることが可能となった。
下表は、塗型の有無で、PとNiの含有量により、180℃引張強さが変化するか調査を行ったものである。これより、Niを含有しPを低減したNo.6−1、2は、塗型の有無で180℃引張強さに変化がないものの、Pのみを添加したNo.6−3、4は塗型を塗布しない水準で180℃引張強さが大きく低下した。これは、Pの低減やNiの含有で、塗型の有無によらず鋳型との反応を抑制していることを意味する。また、Niの添加で注湯温度による180℃引張強さへの影響も小さくなるため、NiがPの活性を抑制して、雰囲気中のガス成分との反応も抑制している可能性も示唆される。
Figure 0005259102
次に、本発明の鉛レス青銅鋳物合金の鋳物健全性について試験を行い、その試験結果を説明する。
先ず、本発明合金について、P及びNiの含有量が固相線温度に与える影響を検証する。試験方法としては、P、Niの成分値を変えた本発明合金と比較例合金の供試品の固相線温度を測定した。
各供試品の固相線温度は、熱分析により求めた。熱分析は、まず、合金の冷却曲線を求め、次に、冷却曲線の傾きや直線性を解析することで求めた。その解析方法については、「平成14年度鉛レス銅合金鋳物実用上の問題点解明研究報告書(素形材センター 研究調査報告574)」のp74〜75に詳細な説明がなされている。
各供試品の化学成分値(質量%)と、測定した固相線温度の結果を表15に示す。
Figure 0005259102
各供試品の化学成分値の割合について、No.7−1は、Pを脱酸目的程度の量に添加した従来のBiを含有する鉛レス青銅鋳物合金であり、No.7−2はNo.7−1のPを0.3質量%とした供試品である。これはPの高含有による固相線温度の低下を調査するための供試品である。No.7−3は、No.7−2にNiを1.0質量%含有させた供試品である。これはNiの含有による固相線温度の上昇を調査するための供試品である。No.7−4は、No.7−3のPを0.16質量%とした供試品である。これはNiの含有とともにPを低減したときの影響を調査するための供試品である。No.7−5は、No.7−4のNiを1.4質量%とした供試品である。これはPを中程度(0.15質量%)に含有させたときのNiの影響を調査するための供試品である。No.7−6は、Seを0.2質量%含有させた供試品である。これは、Seの含有による固相線温度の変化を調査するための供試品である。No.7−7は、Sbを0.4質量%含有させた供試品である。これは、Sbの含有による固相線温度の影響を調査するための供試品である。
表15において、No.7−1とNo.7−2の固相線温度の測定結果から、Pの増加により固相線温度が低下することがわかる。また、No.7−3の結果から、Niには固相線温度を上昇させる効果があることがわかる。No.7−4の結果から、Niを含有した状態でも、Pの含有量の変化により固相線温度が変化することがわかる。No.7−5の結果から、中程度のPの含有量であってもNiによる固相線温度を向上させる効果があることがわかる。No.7−6、No.7−7の結果より、Se及びSbを含有しても固相線温度の変化は小さいことがわかる。
この試験結果より、Pは本発明の合金の固相線温度を低下させ、Niは固相線温度を上昇させることがわかった。さらには、これらの作用は、PとNiの含有量の変化にリニアに対応することがわかった。また、SeやSbの含有が固相線温度に与える影響は小さく、これらを含有した場合にも同様の固相線温度が得られる。
続いて、本発明の鉛レス青銅鋳物合金について、階段状鋳物試験片を供試片として設け、これについて染色浸透探傷試験を行った。図13は、階段状鋳物試験片の鋳造方案を示した説明図であり、図14は、各試験片の測定箇所を示した説明図である。
図13に示す階段状鋳物試験片の鋳造方案により、表16に示すNo.8−1〜20の供試品を鋳造し、得られた鋳物から図14に示す試験片を切断して、それぞれの試験片の切断面を研磨した上で、染色浸透探傷試験を行った。染色浸透探傷試験とは、試験片の切断面に浸透液を吹き付け、これを10分間放置した後に浸透液を拭き取り、さらに、現像液を吹き付けて切断面に浮き出る赤色表示により、鋳造欠陥の有無を判定する試験である。階段状試験片の鋳造方案は、φ25mmの湯口から、φ70mm×160mmの押し湯を介して、階段状部における肉厚40mmの側方から溶湯を流し込むようにしており、鋳造条件は、溶解は15kg高周波実験炉で行い、溶解量は12kgとし、鋳込み温度1180℃、鋳型はCo鋳型を用いた。
No.8−1は、Pを脱酸目的に添加した従来のBiを含有する鉛レス青銅鋳物合金である。No.8−2、3はNo.8−1のPを高含有させたものであり、Pの含有量と鋳物の健全性を調査した供試品である。No.8−4〜7はPを0.3質量%に固定してNiの含有量を変化させて、Niの含有量と鋳物の健全性を調査するための供試品である。No.8−8〜13は、PとNiの含有量を変化させて、異なる含有量の組合せでの健全性を確認するための供試品である。No.8−14〜16は鋳物の健全性に影響を与えるBiとSeの含有量を変化させ、本発明にも適用されるかを確認するための供試品である。No.8−17、18は本発明合金を構成する元素の含有量を変化させ、鋳物の健全性を確認するための供試品である。No.8−19、20は、SbとNiを含有させ、本発明合金に微量元素を含有させた場合の影響を調査した供試品である。図15(a)〜図15(j)、及び図16(k)〜図16(t)において、各試験片の染色浸透探傷試験結果を示しており、各試験片No.1〜20は、図15(a)〜図15(j)と、図16(k)〜図16(t)までの各図に対応している。
試験結果より、No.8−1、2に関しては染色される箇所がほとんどなく良好な鋳造性が得られているが、Pを0.3質量%に増加したNo.8−3では染色される箇所が多く、生産時においては、鋳造方案の変更や鋳造方法の最適化が求められる。また、No.8−3にNiを0.1質量%含有させたNo.8−4は、Niの若干のポロシティ低減効果は見られるものの、染色された面積が多くこれも評価としては「△」とするが、最低限の効果は得られたものとする。さらに、Niの含有量を増すと染色される面積が減少し、1.0質量%のNi含有でほぼ無欠陥となり、良好な鋳物が得られる。また、様々なPとNiの組合わせでも、Niの含有により良好な鋳造性が得られることが確認された。また、Seを含有させた場合、染色される箇所が小さくなる傾向を示し、Seの含有により、より良好な鋳造性が得られることがわかった。また、本発明合金の構成元素を大きく変化させても、所定の質量比の範囲内であれば良好な鋳造性が得られることが確認された。また、SbやFeは、この階段状鋳物試験片での評価において、その影響は小さい。
Figure 0005259102
<Bi系合金>
質量%で、Sn:2.5(好ましくは2.9)〜6.0、Zn:4.0(好ましくは3.9)〜8.0、Bi:0.5〜3.0(好ましくは2.5)、P:0.15〜0.40(好ましくは0.36)、0≦Ni≦2.0(好ましくは1.9)、残余:Cu及び不可避不純物
なお、Bi-Se系合金については、上記Bi系合金の成分に加え、Se:0.1〜1.3を含有する範囲で、適用可能である。
(切削性試験)
切削性試験片は、円柱状の被削物を施盤にて施削加工し、バイトに掛かる切削抵抗を青銅鋳物CAC406の切削抵抗を100とした切削性指数で評価した。試験条件は、鋳込み温度1160℃(Co鋳型)、被切削物の形状φ31×300mm、表面粗さR3.2、切り込み深さ片肉3.0mm、施盤回転数1800rpm、送り量0.2mm/rev、油使用無しである。
切削性試験の試験結果を表17に示す。
Figure 0005259102
表17に示すNo.9−1〜4は本発明銅合金(Bi系)の供試品、No.9−5〜11は、本発明銅合金(Bi-Se系)の供試品である。
いずれの供試品も、CAC406の加工に用いられる、加工設備、刃物、切削条件で加工が可能である指数80%以上を満たしており、CAC406と略同等の切削条件で加工することができるものと認められる。
(隙間噴流腐食試験)
エロージョン・コロージョンは隙間噴流腐食試験により評価する。試験方法は腐食液に対して暴露面積を64mm(φ16mm)に加工した試験片を鏡面研磨し、次いで、この試験片表面より0.4mmの高さに配置した噴射ノズル(ノズル径:1.6mm)から試験溶液(1%塩化第二銅水溶液)を0.4リットル/minで噴射する。試験溶液を5時間噴射した後、腐食面における最大腐食深さを測定した。
表18に示すNo.10−1〜3は、本発明銅合金(Bi系)の供試品であり、比較例に示したCAC406、CAC401よりも良好な結果が得られた。
Figure 0005259102
(引張試験 破断面・組織評価)
実施例1(Pの含有量と180℃における引張強さの関係)と同様の引張試験を行い、引張試験片の破断面組織の観察、ミクロ組織の観察、EDX分析により評価した。
表19に示すように、No.11−1は、本発明銅合金(Bi系)において、高濃度のPを含有した供試品であり、No.11−2は、本発明銅合金(Bi系)において、Niを含有することにより、Pを高濃度の範囲内(0.1<P≦0.6質量%)において抑制した供試品である。No.11−3は比較例であり、JIS H5120 CAC911(Bi-Se系青銅鋳物)に該当する供試品であり、Pの含有量は低濃度である0.02質量%である。
Figure 0005259102
各供試品を用いた180℃引張試験後の破断面SEM写真及び組織写真を、図18〜20に示す。本発明銅合金では、図19(b)に示すように、破断面中央部に繊維状、その周辺に放射状の破面組織が観察され、図18及び図19(a)に示すように、SEM写真において微少なディンプル(くぼみ)が多数みられることから、180℃における引張試験では「延性破壊」が生じたものと考えられる。
一方、比較例合金では、図20に示すように、結晶面(晶へき面)に沿った「へき開割れ」を呈し、SEM写真においてディンプルはみられないことから、180℃における引張試験では、「脆性破壊」が生じたものと考えられる。
このように、高濃度のPの含有により、高温下(180℃)における合金の結晶粒界等の強度が向上したことから、「脆性破壊」から「延性破壊」に転じている。また、Niを含有した場合も同様である。
図21は、本発明銅合金(No.11−2)のミクロ組織であり、図22は、図21のEDX分析による成分分布である。本実施例においては、初晶αがデンドライト状に成長し、その間隙部にBi相が観察され、このBi相に隣接してCu-P化合物(Cu3P)、Ni-P化合物(Ni3P)が存在する。また、P、Niは、初晶αにも固溶しており、マトリクス強度を向上させているものと考えられる。
従って、上記評価の結果、高濃度のPの含有により、高温下(180℃)に引張強さの向上効果が、供試品の破断面・組織観察によっても裏付けることができ、また、Niを含有した場合には、Pを高濃度の範囲内において抑制しつつ、高温下(180℃)に引張強さの向上効果が、供試品の破断面・組織観察によって裏付けることができた。
本発明の鉛レス青銅鋳物合金は、給水・給湯用や蒸気用の配管器材(バルブ・継手など)、圧力器材(ケーシング)等々、幅広い分野における各種部品に適する銅合金である。本発明合金は、引張強さの向上を図る合金であるから薄肉形状の部品、例えば配管器材のみならず、構造部品にも適する。ガス器具、洗濯機、空調機等の電気・機械製品を加工成形したりするのに適している。その他、本発明の銅合金を材料として好適な部材・部品は、特に、バルブや水栓等の水接触部品、即ち、ボールバルブ、ボールバルブ中の空用ボール、バタフライバルブ、ゲートバルブ、グローブバルブ、チェックバルブ、給水栓、給湯器や温水洗浄便座等の取付金具、給水・給湯管及び管継手、電気温水器部品(ケーシング、ガスノズル、ポンプ部品、バーナなど)、ストレーナ、水道メータ用部品、水中下水道用部品、排水プラグ、エルボ管、ベローズ、便器用接続フランジ、スピンドル、ジョイント、ヘッダー、分岐栓、ホースニップル、水栓付属金具、止水栓、給排水配水栓用品、衛生陶器金具、シャワー用ホースの接続金具、ガス器具、ドアやノブ等の建材、家電製品、サヤ管ヘッダー用アダプタ、自動車クーラー部品、釣り具部品、顕微鏡部品、水道メータ部品、計量器部品、鉄道パンタグラフ部品、その他の部材・部品に広く応用することができる。更には、トイレ用品、台所用品、浴室品、洗面所用品、家具部品、居間用品、スプリンクラー用部品、ドア部品、門部品、自動販売機部品、洗濯機部品、空調機部品、ガス溶接機用部品、熱交換器用部品、太陽熱温水器部品、自動車用部品、金型及びその部品、ベアリング、歯車、建設機械用部品、鉄道車両用部品、輸送機器用部品、素材、中間品、最終製品及び組立体等にも広く適用できる。
特に高温下に使用され得る用途として、以下の用途が挙げられる。
1.<Bi系(Niなし)、Bi-Se系(Niなし)>(耐圧性をさほど要求されない環境で使用される合金)
バーナー、ガスノズル、フレアナット、ボールタップ、サーモスタット部品、ボルト、ナット、スピンドル、摺動部品(軸受、歯車、プッシュ、スリーヴ、ウォームギア)などの構造部品。
2.<Bi系(Ni含有)、Bi-Se系(Ni含有)>(強度・耐圧性を要求される用途)
熱交換器(プレート、チューブ)、ガスタービン、原子炉部品、工業用炉部材(配管、バルブ、継手)、海水処理設備(配管、バルブ、容器、継手)、減圧弁、電磁弁、蒸気弁、安全弁、蒸気配管、給湯器具、蒸気発生装置、ボイラ部品(配管、バルブ、容器、継手)、ポンプ部品(ケーシング、カバー、インペラー)、スチームトラップ、ドレン管、蒸気用弁、フロート、空調機部品(配管、バルブ、継手)、蒸気用ストレーナ、油圧ポンプ部品(ケーシング、インペラー)、排気管、電気温水器部品(配管、バルブ、継手)、貯湯容器、比例弁、ルームヒータ部品、気化器、サービスバルブ、ボールタップ、食器洗浄器、バルブや水洗等の水接触部品(ボールバルブ、ボールバルブ用の中空ボール、バタフライバルブ、ゲートバルブ、グローブバルブ、チャッキバルブ、給水管、接続管、管継手、ストレーナ)、ヘッダー、分岐栓、ホースニップル、水洗付属金具、止水栓、給排水配水栓用品、サヤ間ヘッダーアダプタなどの配管・圧力器材。
なお、水栓金具や水栓附属金具、給水・給湯部品などは、通常の使用にあっては100℃以上の使用はないものの、冷水-熱水を交番的に使用される状況下や、食器洗い乾燥機などにおける熱風乾燥などの100℃を超える高温に曝される状況下にあっては、本発明銅合金は有意性がある。
本発明銅合金に関して、P含有量と180℃における引張強さの関係を示したグラフである。 デンドライトの模式図である。 CAC406の代表的なミクロ組織を示した顕微鏡写真である。 2次枝法の説明図である。 二次デンドライトアーム間隔と常温における引張強さの関係を示したグラフである。 二次デンドライトアーム間隔と180℃における引張強さの関係を示したグラフである。 小型弁(呼び圧力10K、呼び径1/2、鉛レス青銅製の汎用ゲートバルブ)における胴体部の切断面を示す写真である。 図7における胴体部の切断面を、硝酸を用いてエッチング処理した状態を示す写真である。 Pb含有量と180℃における引張強さの関係を示したグラフである。 本発明銅合金に関して、Ni含有量と180℃における引張強さの関係を示したグラフである。 本発明銅合金に関して、P含有量とNi含有量、及び180℃における引張強さの関係を示したグラフである。 鉛レス銅合金のSb含有の影響を示したグラフである。 階段状鋳物試験片の鋳造方案を示した説明図である。 階段状鋳物試験片における染色浸透探傷試験の観察面を示した説明図である。 試験片No.8−1〜10までの染色浸透探傷試験結果を示した写真である。 試験片No.8−11〜20までの染色浸透探傷試験結果を示した写真である。 P-Niの交互作用を示す概念図である。 本発明合金のSEM写真である。 (a)は本発明合金のSEM写真、(b)は同合金の破断面組織写真である。 (a)は比較例のSEM写真、(b)は同例の破断面組織写真である。 本発明合金のミクロ組織図である。 (a)〜(g)は図19のEDX分析による成分分布を示した写真である。 従来の連続鋳造鋳物に関する高温下での引張強さの変化を示したグラフである。

Claims (3)

  1. 質量比で、Zn:3.0〜10.0%、Sn:2.0〜6.0%、Bi:0.1〜0.3%、P:0.16〜0.6%、Ni:0.1〜1.0%、Pb:0.005〜2.0%と残部Cuと不可避不純物からなる青銅鋳物合金であり、前記PとNiとの交互作用により固相線温度を上げ、過度のマッシー型凝固を緩和させ、溶質の偏析を抑制することにより鋳物の健全性を確保したことを特徴とする低鉛青銅鋳物合金。
  2. 質量比で、Zn:3.0〜10.0%、Sn:2.0〜6.0%、Bi:0.1〜0.3%、P:0.16〜0.6%、Ni:0.1〜1.0%、Pb:0.005〜2.0%と残部Cuと不可避不純物からなる青銅鋳物合金であり、前記PとNiとの交互作用によりPの活性を低下させ、溶湯と鋳型との反応に対する感受性を緩和して鋳物の健全性を確保したことを特徴とする低鉛青銅鋳物合金。
  3. 質量比で0.0<Se≦0.35%を含有した請求項1又は2に記載の低鉛青銅鋳物合金。
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