JP4397963B2 - 耐応力腐食割れ性に優れた鉛レス黄銅合金 - Google Patents

耐応力腐食割れ性に優れた鉛レス黄銅合金 Download PDF

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Description

本発明は、Biを含有した耐応力腐食割れ性に優れた鉛レス黄銅合金に関し、特に、黄銅合金中における腐食割れの発生を抑制して耐応力腐食割れ性を向上させた鉛レス黄銅合金に関する。
一般に、JIS CAC203、C3604、C3771等の黄銅合金は、耐食性、被削性、機械的性質などの特性に優れるため、バルブ、コック、継手等の水道用配管器材や電子機器部品などに幅広く用いられている。
この種の黄銅合金は、特に、アンモニア雰囲気等の腐食環境に曝され、引張応力が負荷された場合、応力腐食割れが発生する場合がある。この黄銅合金における応力腐食割れを防止する対策として、従来より、各種の提案がなされている。
例えば、特許文献1の黄銅材料は、Cu:57〜61%、Pb:1〜3.7%を含有し、Snの含有量を0.35%以下とし、常温でα+βの二相からなる黄銅であり、αの平均結晶粒径が15μm以下、β相の平均結晶粒径が10μm以下、α相の相比率が80%を超えるようにして耐応力腐食割れ性を向上させようとした黄銅である。
特許文献2は、常温でα+β+γの結晶組織を有し、常温においてα相の面積比率が40〜94%、β相及びγ相の面積比率が共に3〜30%、α相及びβ相の平均結晶粒径が15μm以下、γ相の平均結晶粒短径が8μm以下であり、γ相中に8%以上のSnを含有し、かつβ相をγ相が包囲した黄銅が提案されている。この黄銅も高Snの含有により耐応力腐食割れ性を向上しようとした黄銅であり、また、Pbを1.5〜2.4wt%含有している。
特開2006−9053号公報 特許第3303301号公報
しかしながら、特許文献1の黄銅材料は、特にフレアナットの材料として適用するもので、水道用配管器材の材料には不向きである。すなわち、この黄銅は、Pbを多く含んでおり、このようなPb含有の黄銅は人体に悪影響を及ぼし、水道用配管器材に適用することはできない。
ところで、本発明者等は、応力腐食割れが発生する条件によって試験を実施し、応力腐食割れが発生した従来のBi系鉛レス黄銅合金と鉛入り黄銅合金の割れ形態を観察した結果、黄銅における応力腐食割れの形態において、鉛含有黄銅は、微細な割れが分岐して生ずるのに対し、Bi系鉛レス黄銅は、比較的大きな割れが直線的に生ずることが明らかとなった(図1(a)、図1(b)参照)。
応力腐食割れによって生じる亀裂を鉛入り銅合金と鉛レス各銅合金で比較した場合、鉛入り黄銅合金の亀裂は、図1(b)に示すように、微細な割れが多数に分岐するように発生し、この分岐状の亀裂によってそれ以上の割れが進行し難くなって亀裂が浅くなる傾向がある。
一方、鉛レス黄銅合金(例えば、Bi系鉛レス黄銅合金)の亀裂は、図1(a)に示すように、比較的大きな1つの割れとなり、この1つの割れによって亀裂が深く進行している傾向が見られる現象を確認した。
この原因としては、鉛入り銅合金は、応力腐食割れの先端がすべり帯(金属の変形の際に金属原子がすべる面)に接したときに分岐が発生し易く、この分岐によって応力が分散される傾向にあり、一方、Bi系鉛レス銅合金は、すべり帯での分岐が起こり難く、直線的な割れを生じて応力集中が起こり易くなっていると考えられる。
このため、特に、Bi系鉛レス銅合金は、鉛入り黄銅合金とは異なる割れの対策が必要になり、具体的には、直線的な割れが生ずることに起因する、応力集中による割れの進行を妨げるような材料面での対策が必要となる。
上述の観察結果に基づいて、特許文献2における課題点を述べると、同文献(実施例)中に記載されているように、この黄銅合金は、全てPbを添加したものであって、鉛レスの黄銅合金にも対応できることについては積極的に記載されていない。
特許文献2中のα+γタイプ、α+β+γタイプにおいては、γ相を利用して耐応力腐食割れ性を改善したという記述があり、特に、このγ相の面積比率、組成、大きさについては定量的に説明がなされている。しかし、鉛レス銅合金のように割れが分岐することなく直線的に進行する場合には、割れの進行方向に対してγ相がどのように分布しているかが最も重要な課題となるが、この点については記載されておらず、応力腐食割れ対策としては不十分である。すなわち、この技術は、γ相を面積比率等の絶対量で特定する技術であって、γ相を分散させることにより鉛レス黄銅特有の直線的な割れを止めるという事項や技術思想の示唆はない。
この技術に基づいて、Snの含有量を増加することにより、γ相により結晶粒を包囲し尽すことや、割れ進行方向のγ相の絶対量を増加させることも考えられるが、この場合、却って、ざく巣などの鋳造欠陥が発生する可能性があるというあらたな問題を生ずるおそれがある。
また、特許文献2の銅合金は、Snを多く含有させることによりγ相を析出させ、このγ相により耐応力腐食割れ性を向上させようとするものがあるが、同文献2は、Pbを含有した黄銅にSnを多く添加しているため、次に示すように、却って、応力腐食割れ性の低下が確認された。
すなわち、ここにおける試験に用いる黄銅は、金型鋳造品による表1の化学成分値の供試材a〜hとし、試験方法は、各供試材a〜hのRc1/2ねじ加工部に9.8N・m(100kgf・cm)のトルクでステンレス製ブッシングをねじ込み、14%アンモニア雰囲気中に暴露して、最大48hまで所定の経過時間ごとに各供試材の割れの有無を目視にて観察して判定した。このときの供試材の例を図2と、応力腐食割れ試験に用いた試験装置の模式図を図3に示す。各供試材の化学成分値と(応力腐食割れ時間による)応力腐食割れの結果を表1に示し、各供試材のSnの含有量に対する応力腐食割れが生ずるまでの時間を図48にそれぞれ示した。なお、試験方法については、後述する耐応力腐食割れ性の評価基準において説明する。
Figure 0004397963
その結果、Snの含有量の増加に伴って応力腐食割れ時間が短くなり、耐応力腐食割れ性が低下していることが分かった。これにより、同文献2は、Pb含有の黄銅に対して、必ずしも耐応力腐食割れ性が向上するものではない以上、そのまま鉛レス黄銅合金に流用できる技術とはいえない。
本発明は、上記の課題点に鑑み、鋭意研究の結果開発に至ったものであり、その目的とするところは、鉛レス黄銅合金における耐応力腐食割れ性を向上させることにあり、具体的には、黄銅合金における腐食割れの進行速度を抑制することにより、鉛レス黄銅合金特有の直線的な割れを食い止め、結晶粒界に存在するγ相に割れが接触する確率を高め、もって、耐応力腐食割れ性の向上に寄与できる鉛レス黄銅合金を提供することにある。
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、質量比で、Cu59.5〜66.0%、Sn0.7〜2.5%、Bi0.5〜2.5%、Sb0.05〜0.6%と残部がZnと不可避不純物を含有したα+γ組織、或はα+β+γ組織を有する黄銅合金であり、前記黄銅合金成分中のSbをγ相に固溶させると共に、前記黄銅合金中のγ相が各結晶粒を包囲するときの各結晶粒に対するγ相の割合をγ相結晶粒包囲率とし、このγ相結晶粒包囲率の平均値であるγ相平均結晶粒包囲率を28%以上とすることにより、黄銅合金中腐食割れの進行速度を抑制させ、耐応力腐食割れ性を向上させた耐応力腐食割れ性に優れた鉛レス黄銅合金である。
請求項2に係る発明は、Se:0.01〜0.20質量%を含有した耐応力腐食割れ性に優れた鉛レス黄銅合金である
請求項1記載の発明によると、黄銅合金における腐食割れの進行速度を抑制することにより、鉛レス黄銅合金特有の直線的な割れの進行を遅らせ、もって、耐応力腐食割れ性を向上させた鉛レス黄銅合金を提供することができる。この場合、γ相中にSbを固溶させることにより、鉛入り六四黄銅等の鉛入り黄銅合金と同等もしくはそれ以上の耐応力腐食割れ性を確保できる耐応力腐食割れ性に優れた黄銅合金を得ることができる。
しかも、結晶粒界に存在するγ相の平均結晶包囲率を28%以上とすることによって、応力負荷方向が特定されていない場合、すなわち、割れの進行方向が特定されていない場合において、割れがγ相に接触する確率が高くなり、腐食割れの進行速度を遅くすることにより、Bi含有の鉛レス黄銅合金に特有の割れを食い止めることができ、もって、Bi含有の鉛レス黄銅合金における耐応力腐食割れ性の向上を図ることができる黄銅合金を提供することが可能となった。
請求項に係る発明によると、Snの含有に加え、Seを含有することにより耐応力腐食割れ性を更に向上させることができる。
黄銅合金の割れ状態を示した拡大写真である。(a)は、Bi系鉛レス黄銅合金の代表的な割れ状態を示した拡大写真である。(b)は、鉛入り黄銅合金の代表的な割れ状態を示した拡大写真である。 供試材の外観図である。 応力腐食割れ試験に用いた試験装置を示した模式図である。 評価基準に用いた供試材の応力腐食割れ時間の結果を示したグラフである。 黄銅合金のビレットから製造する、棒材の製造方法を示した説明図である。 棒材のミクロ組織を示した拡大写真である。 本発明の黄銅合金のγ相平均結晶粒包囲率と応力腐食割れ時間の関係を示したグラフである。 γ相包囲率測定数とγ相の結晶粒包囲率の関係を示したグラフである。 供試材の測定箇所を示した説明図である。(a)は、供試材における測定箇所を示した模式図である。(b)は、A部拡大図である。 γ相接触数と応力腐食割れ時間との関係を示したグラフである。 供試材の所定箇所におけるγ相の接触個数の測定状態を示した拡大写真である。 供試材の所定箇所におけるγ相の接触個数の測定状態を示した説明図である。 供試材の他の箇所におけるγ相の接触個数の測定状態を示した説明図である。 正規分布図における平均値−標準偏差の領域を斜線で示した説明図である。 本発明の黄銅合金の供試材のSn含有量と応力腐食割れ時間の関係を示した棒グラフである。 本発明の黄銅合金の供試材のSb含有量と応力腐食割れ時間の関係を示した棒グラフである。 本発明の黄銅合金の供試材のSb含有量と応力腐食割れ時間の関係を示した折れ線グラフである。 供試材3(α+β+γ組織)のEMPAマッピング分析結果を示した拡大写真である。 (a)は、供試材3(α+β+γ組織)のSEM−EDXによる測定結果を示した拡大写真である。(b)は、数字の分析箇所における組成を示した説明図である。 供試材4(α+γ組織)のEMPAマッピング分析結果を示した拡大写真である。 (a)は、供試材4(α+γ組織)のSEM−EDXによる測定結果を示した拡大写真である。(b)は、数字の分析箇所における組成を示した説明図である。 本発明の黄銅合金の供試材のCu含有量と応力腐食割れ時間の関係を示した折れ線グラフである。 供試材の外観と応力の測定箇所を示した概略図である。 本発明の黄銅合金の供試材のBi含有量と応力の関係を示したグラフである。 隙間噴流試験装置を示した概略説明図である。 1%Sn含有黄銅の状態図である。 評価係数と応力腐食割れ時間の関係を示したグラフである。 γ相の分布状態を示した拡大写真である。 棒材径(φ1)の基準値を変化させた場合のグラフである。 α化温度と応力腐食割れ性の破断時間との関係を示したグラフである。 抽伸の影響度合い(0.6)による変化を示したグラフである。 抽伸の影響度合い(0.4)による変化を示したグラフである。 抽伸の影響度合い(0.2)による変化を示したグラフである。 金属の腐食状態を示した概略断面図である。(a)は、全面腐食の状態を示した断面図である。(b)は、局部腐食の状態を示した断面図である。 合金のα相の縦横長さを表した概略平面図である。 引張SCC性試験における引張り方向と観察面を示した説明図である。 組織パラメータと引張SCC性試験時の破断時間の関係を示したグラフである。 腐食時間と最大腐食深さ/平均腐食深さの関係を示したグラフである。 腐食時間と変動係数の関係を示したグラフである。 本発明と比較例の黄銅材料の腐食試験前後のミクロ組織断面写真である。 本発明と比較例の黄銅材料の腐食前の表層組織を示した写真である。 本発明と比較例の黄銅材料の腐食後の表層組織を示した写真である。 ミクロ組織断面写真の拡大写真である 腐食時間と平均腐食深さの関係を示したグラフである。 腐食時間と最大腐食深さの関係を示したグラフである。 引張試験片の概略図である。(a)は、引張試験片の平面図である。(b)は、引張試験片の正面図である。 引張試験における負荷応力と破断時間の関係を示したグラフである。 Pb含有黄銅合金のSCC性試験時におけるSn含有量と割れが生ずるまでの時間との関係を示すグラフである。 Bi系、Bi−Se系鋳物のSn量とSCC性の関係を示したグラフである。
第一発明における鉛レス黄銅合金の好ましい実施形態を説明する。図1(a)に示すBi含有鉛レス黄銅合金は、腐食割れが直線的であり、以下に詳述するように、その腐食割れの進行速度を極力抑制することによって、耐応力腐食割れ性を向上させることを可能とした。
第一発明に係る黄銅合金は、Bi含有鉛レス黄銅合金(特に、六四黄銅)内にSnを含有させることにより、α+γ組織、或は、α+β+γ組織を形成させ、この組織内で析出させたγ相を一定の法則性に基づいて分布させることにより優れた耐応力腐食割れ性を発揮させる。
このときのγ相の一定の法則性として、この黄銅合金では、合金組織内において、γ相が各結晶粒を包囲するときの各結晶粒に対するγ相の割合をγ相結晶粒包囲率と定義づけ、このγ相結晶粒包囲率の平均値をγ相平均結晶粒包囲率とし、実施例において、このγ相平均結晶粒包囲率と耐応力腐食割れとの相関関係を導き出し、この相関関係より、所定の応力腐食割れ時間を満たすことができるときの平均結晶粒包囲率を確認したときに、γ相平均結晶粒包囲率は28%以上となった。これにより、この黄銅合金におけるγ相平均結晶粒包囲率が28%以上であることを導き出した。
また、γ相の他の一定の法則性として、第一発明における黄銅合金では、合金に応力負荷が加わるときに、応力腐食割れが生じ、この割れが接触するγ相を想定し、応力負荷の垂直方向における単位長さに存在するγ相の個数をγ相の接触個数とし、この接触個数の平均値及び標準偏差から算出する数値をγ相接触数と定義づけ、実施例において、このγ相接触数と応力腐食割れ時間との相関関係を導き出し、この相関関係より、所定の応力腐食割れ時間を満たすことができるときのγ相接触数を確認したときに、γ相接触数は2個以上となった。これにより、この黄銅合金におけるγ相接触数が2個以上であることを導き出した。
そこで、この銅合金におけるγ相平均結晶粒包囲率と、γ相接触数の詳細な定義、及びこれらの数値を導き出すために実施した実施例を説明するが、この説明に先立ち、第一発明の鉛レス黄銅合金と耐応力腐食割れの性能を比較するために必要な評価基準の黄銅合金や、この黄銅合金に含まれる元素とその組成範囲などを説明し、この黄銅合金が発揮できる耐応力腐食割れ性について説明する。
(耐応力腐食割れ性の評価基準)
第一発明の黄銅合金が発揮できる耐応力腐食割れ性を述べるにあたっては、その性能を比較するための評価基準が必要になる。そのため、先ず、一般的に幅広く使用されている耐応力腐食割れの問題の少ない5種類の鉛入り六四黄銅棒を用いてこの評価基準を設定する。
本実施形態における応力腐食割れ試験方法としては、a〜eまでの各供試材に対して、図2のようにRc1/2ねじ部(中空めねじ部品)に9.8N・m(100kgf・cm)のトルクでステンレス鋼製ブッシング(中空おねじ部品)をねじ込み、14%アンモニア雰囲気中に暴露して、最大試験時間48hrまで所定の経過時間毎(4、8、12、24、36、48hr毎)に、各供試材をデシケータ内から取り出して洗浄した後、各供試材の割れの有無を目視確認により判定する試験を行った。具体的には、図3に示すように、外径φ300mmの中板を収容したデシケータの底部に、濃度14%のアンモニア水を2L収容する一方、中板上面に円筒状の供試材を配置した。この供試材は、中空状のブッシングがねじ込まれた側を上方に向けて配置し、アンモニアの気体が、中板に設けた通気穴を介して、供試材の内部に接するよう、デシケータ内に収容した。なお、アンモニア水の上面と中板との距離tは約100mmであり、供試材はアンモニア水と非接触の状態である。
ここで、応力腐食割れは、一般的に、材料因子・環境因子・応力因子の3つの因子が同時に作用して発生することが知られており、そのメカニズムは複雑になっている。そのため、応力腐食割れ試験を実施するにあたっては、材料・加工・応力負荷・試験環境などの影響が試験結果にバラツキを生じさせる可能性があるため、試験条件を可能な限り同一となるように注意して試験を行った。
評価基準に用いた六四黄銅棒(供試材i〜mまで)の化学成分(mass%)と、各供試材における応力腐食割れ時間(hr)を表2に表す。
Figure 0004397963
この試験は、最大試験時間を48hrとして行い、図4に、表2より得られる各応力腐食割れ時間の結果をグラフ化したものを示す。最も短い応力腐食割れ時間は、供試材j、供試材lにおける12hrであったが、これらの供試材と略同じ成分で製造された実製品が、過去の使用実績において応力腐食割れをほとんど生じていないことから、本発明における基準Bとして12hrを採用した。また、より好ましい基準Aとして、供試材i〜mの平均値である26hrを採用した。
ここで、第一発明におけるBi含有鉛レスの黄銅合金に含まれる元素とその望ましい組成範囲、及びその理由を説明する。
前述したように、鉛入り黄銅合金の応力腐食割れによる割れ形態は、微細な割れが多数に分岐しそれ以上割れが進行しない。一方、鉛レス黄銅合金は、比較的大きな一つの割れが応力集中によって深く進行する。つまり、従来鉛入り黄銅合金と鉛レス黄銅合金では、図1(a)と図1(b)に示すように、根本的に応力腐食割れによる割れ形態が異なっており、特に、鉛レス黄銅合金の耐応力腐食割れに対しては、割れの進行を遅らせる対策が必須になる。
Sn:0.7〜2.5mass%
Snは、黄銅合金における耐脱亜鉛腐食性、耐エロージョン・コロージョン性を向上させる元素として周知であるが、第一発明においては、主として上記の耐応力腐食割れ性の向上に寄与する元素として含有する必須元素である。Snの含有によりγ相を析出し、後述において詳しく説明する法則性に基づいてγ相を合金組織中に分布することにより、合金の応力腐食割れの進行を抑制する。
Snの含有量として、前述の耐応力腐食割れ性の基準B(12h)を満たすためには上記のように0.7mass%以上が有効であり、更に、基準A(26h)を満たすためには、1.0mass%以上(より確実には、1.1mass%以上)が有効である。
一方、Snを過剰に含有すると鋳造品内部に欠陥(ざく巣)が発生することから、含有量を抑制しつつ基準Aを満たす耐応力腐食割れ性を得るためには2.5mass%以下とするのが好ましい。また、Snを過剰に含有すると切削加工性を低下させたり、或いは機械的性質(特に伸び)を低下させるので、2.0mass%以下の含有量とするのがよい。
Sb:0.05〜0.60mass%
Sbは、黄銅合金の耐脱亜鉛性を向上させる元素であり、第一発明においては、Snの含有に加えて、更に、耐応力腐食割れ性の向上を図る場合に含有する。Snを含有したBi+Sb系またはSnを含有したBi+Se+Sb系で、かつ、α+γ組織、或は、α+β+γ組織を有する黄銅合金の場合は、必須元素であり、その他の場合は、任意元素である。腐食初期段階において、Sbを固溶したγ相を含む表面層は全面腐食形態を取るため、応力腐食割れの起点となる割れの発生を抑制することができる。また、Sbはγ相に固溶し、γ相の硬さを増すことにより、割れが発生した場合でも、その割れの進行を抑制することができる。
Sbの含有により、耐応力腐食割れ性を向上するには、Sn:0.7〜2.5mass%の含有を前提として、0.05mass%以上(より確実には、0.06mass%以上)の含有が有効である。
一方、Sbを過剰に含有すると、却って耐応力腐食割れ性が低下することから、含有量を抑制しつつ基準B(12h)を満たす耐応力腐食割れ性を得るには、0.60mass%(より確実には、0.52mass%)を上限とするのがよい。また、基準A(26h)を確実に得られるSbの含有量として、0.06〜0.21mass%が最適である。
なお、耐脱亜鉛性を考慮する場合は、0.08mass%のSb含有により、ISO最大脱亜鉛深さは10μm以下に抑制され、これ以上のSb含有によっても抑制効果は飽和したことから、耐脱亜鉛性と耐応力腐食性割れ性(基準A)とを満たしつつ、必要最小限に抑制したSbの含有量として、0.08〜0.12mass%付近が最適である。
Cu:59.5〜66.0mass%
Cuは、Snの含有によりγ相を析出し、α+γ組織やα+β+γ組織からなる合金を得る前提として、59.5mass%以上の含有が必要であり、必須元素である。前述の耐応力腐食割れ性の基準B(12h)を満たすには、59.5mass%以上(より確実には、59.6mass%以上)のCuの含有が有効であり、更に、基準A(26h)を満たすには、60.0mass%以上(より確実には、60.6mass%以上)の含有が有効である。一方、Cuを過剰に含有すると、かえって耐応力腐食割れ性が低下することから、66.0mass%(より確実には、65.3mass%)を上限とするのがよい。
Bi:0.5〜2.0mass%
Biは、切削性を向上させるために含有する必須元素である。一般的な鉛レス黄銅と同等の切削性を得るには、0.5mass%以上の含有量が必要である。一方、Biを過剰に含有すると、引張強さ及び伸びを低下させることから、2.0mass%以下の含有が好ましい。
なお、本発明の課題である応力腐食割れの因子として、切削加工後の合金における残留応力があり、この残留応力を引張応力から圧縮応力に転換することにより、応力腐食割れを抑制する技術が知られている。前述の供試材(Rc1/2ねじ加工部品)を切削加工にて成形し、残留応力を測定した結果、Biを0.7mass%以上含有することにより、残留応力を圧縮応力とすることができたことから、耐応力腐食割れ性を重視する場合には、Biの含有量を0.7〜2.0mass%とするのが好ましい。
Se:0.00〜0.20mass%
Seは、合金中にZnSe、CuSeとして存在し、これがチップブレーカとして作用することにより、切削性を向上させる場合に含有する任意元素である。一般的な鉛レス黄銅と同等の切削性を得るには、Biの含有と合わせてSeを含有させることが有効であり、より確実には、0.01mass%以上含有させることが有効である。このとき、Seの含有量を増加するに伴って切削性は向上するが、過剰に含有すると、引張強さを低下させることから、0.20mass%以下の含有量とする。
また、後述する実施例によれば、Snの含有に加え、Seを含有することにより耐応力腐食割れ性が向上することから、Seは、耐応力腐食割れ性を更に向上する場合に含有する必須元素である。ただし、過剰に含有しても、その作用は頭打ちとなることから耐応力腐食割れ性を重視する場合の上限値は0.09mass%とする。なお、鉛レス黄銅合金のリサイクルによって、Seが少量(例えば、0.03mass%以上)含有されることになっても、耐応力腐食割れ性は向上する。
金属間化合物であるZnSeやCuSeは、結晶粒界に存在し、その硬いことから、Snの含有により析出するγ相と共に、合金の応力腐食割れの進行を効果的に抑制することができる。
その具体例として、後述する表3に記載のビレット2を用いて、図5に記載の方法Bで供試材(棒材)を製造し、この供試材のミクロ組織にみられるα相と金属間化合物ZnSeのマイクロビッカース硬さを、それぞれ5箇所測定した。その平均値は、α相が81、ZnSeが103であり、ZnSeがα相よりも硬いことが明らかとなった。従って、γ相に加えて、Seを含有する硬い金属間化合物を析出させることにより、割れの進行をさらに抑制することができる。
Ni:0.05〜1.5mass%
Niは、引張強さを向上する場合に含有する、任意元素である。0.05mass%以上の含有で効果がみられるが、含有量を多くし過ぎてもその効果が飽和することから、1.5mass%を上限とする。また、Niは、合金中にSeを含有する場合に、Seの歩留まりを向上する元素でもあり、Seの歩留まりを向上する場合、その含有量は、0.1〜0.3mass%とするのが好ましい。
P:0.05〜0.2mass%
Pは、Sbを含有しない合金において、耐脱亜鉛性を向上する場合の必須元素として含有する。Pは0.05mass%以上含有させることにより効果があり、含有量の増加に伴って耐脱亜鉛性は向上するが、引張強さの低下を生ずることから、0.2mass%を上限とする。なお、Sbを含有する合金においては、Pは任意元素であり、耐脱亜鉛性を更に向上する場合に含有する。
不可避不純物:Fe、Si、Mn
本発明における黄銅合金の実施形態の不可避不純物としては、Fe、Si、Mnが挙げられる。これらの元素を含有すると、硬い金属間化合物の析出により、合金の切削性が低下し、切削工具の交換頻度が上昇するなどの悪影響を生ずる。従って、Fe:0.1mass%以下、Si:0.1mass%以下、Mn:0.03mass%以下を、切削性への影響が低い不可避不純物として扱う。
その他、As:0.1mass%以下、Al:0.03mass%以下、Ti:0.01mass%以下、Zr:0.1mass%以下、Co:0.3mass%以下、Cr:0.3mass%以下、Ca:0.1mass%以下、B:0.1mass%以下が不可避不純物として挙げられる。
以上の元素に基づき、本発明のBi含有鉛レス黄銅合金が構成される。代表的な合金の組成は次のとおりである(成分範囲の単位はmass%である。Sb、Seは目的に応じて任意成分としてもよい)。
(合金1:「耐応力腐食割れ性の評価基準B(12h)を満足する合金」)
Sn:0.7〜2.5
Sb:0.06〜0.60
Cu:59.5〜66.0
Bi:0.5〜2.0
Se:0<Se≦0.20
残部:Zn及び不可避不純物
(合金2:「耐応力腐食割れ性の評価基準A(26h)を満足する最適な合金」)
Sn:1.0〜2.5
Sb:0.08〜0.21
Cu:60.0〜66.0
Bi:0.7〜2.0
Se:0.03〜0.09
残部:Zn及び不可避不純物
次に、上述した元素を含む黄銅合金において、一定の法則性に基づいてγ相を合金組織中に分布したときの耐応力腐食割れとの関係、具体的には、γ相平均結晶粒包囲率と耐応力腐食割れ性との関係、及び、γ相接触数と耐応力腐食割れ性との関係について述べる。
ここで、本発明合金におけるγ相とは、主たる元素として、Cu、Zn、Sn、またはCu、Zn、Sn、Sbにより構成されており、α相やβ相(いずれも主たる構成元素はCu、Zn)により形成される結晶粒の粒界に析出する。そして、このγ相は、α相に比して硬いことから、合金組織中に進行する応力腐食割れの先端がγ相に接触することにより、割れの進行速度を遅くすることができる。
従って、このγ相の量を増加したり、ばらつかせることにより、割れがγ相に接触する確率を高くすることができ、合金の耐応力腐食割れ性の向上が可能となる。
そこで、鉛レス銅合金の耐応力腐食割れ性を向上するために必要なγ相の量やバラツキ(これらを総称して「分布」という)を、「γ相平均結晶粒包囲率」、「γ相接触数」という指標を用いて特定した。以下、「γ相平均結晶粒包囲率」、「γ相接触数」の定義詳細と、耐応力腐食割れ性との相関について説明する。
まず、γ相平均結晶粒包囲率と耐応力腐食割れとの関係における実施例を詳述する。
「γ相平均結晶粒包囲率」とは、合金における任意の部位において、結晶粒界(結晶粒(α相)の粒界)の外周長さと、この外周上に存在するγ相の長さを測定し、この測定を複数行ったデータの平均値に基づき、次式にて定義される。
[式1]
γ相平均結晶粒包囲率[%]=(結晶粒界のγ相長さ/結晶粒界の外周長さ)×100
この「γ相平均結晶粒包囲率」は、γ相が結晶粒界に環状に分布する割合を示していることになる。従って、「γ相平均結晶粒包囲率」が高ければ、割れがγ相に接触する確率が高いものとなる。また、γ相が環状に分布する割合を示していることから、応力負荷方向が特定されていない場合、すなわち、割れの方向が特定されていない場合において、割れの進行抑制に必要なγ相の分布を示す値として適切な指標である。
次に、「γ相平均結晶粒包囲率」と耐応力腐食割れとの関係について、実測データに基づき説明する。
同一組成のビレット1〜3から3種類の製造方法で棒材を製造し、この棒材について耐応力腐食割れ試験を行った。また、γ相が結晶粒を包囲する割合であるγ相結晶粒包囲率をミクロ組織から解析し、耐応力腐食割れ性との相関を求めた。
表3に、試験に使用したビレットの成分値を示す。ビレットは、比較のために3種類の異なる組成からなるものとした。また、図5に各ビレットから製造する、棒材の製造方法を示す。図において、方法Aは、ビレットを押出し後、熱処理を行わない製造方法、方法Bは、ビレットを押出し後、耐脱亜鉛腐食性をもたせるためにα化熱処理を行う製造方法、方法Cは、ビレットを押出し後、α化熱処理を経た後、伸びを向上させるために歪取り焼鈍を行う製造方法であり、方法Dは、押出し、抽伸後に焼鈍を行う製造方法である。なお、供試材は、約φ35mmの棒材であり、各焼鈍条件は、300〜500℃にて約2〜4時間とした。
Figure 0004397963
次いで、表4のように、異なる方法A、B、Cによって製造した、成分の異なるビレット1〜3から製造した棒材を供試材1〜6とし、各供試材におけるγ相平均結晶粒包囲率(%)と、実験によって測定した応力腐食割れ時間(hr)の関係を比較する。
γ相の結晶粒包囲率は、光学顕微鏡で1000倍(縦100μm×横140μm)のミクロ組織写真を撮影し、コンピュータ上で結晶粒の外周長さ(結晶粒界の長さ)及び結晶粒界に存在するγ相長さを測定の上、式1により算出する。
Figure 0004397963
図6は、このときのミクロ組織写真の一例を示している。図6(a)においては、写真内における組織の説明を表している。また、図6(b)においては、このときの結晶粒界の外周を太線で示しており、図6(c)においては、γ相の長さを太線で示したものである。図6(b)、図6(c)において、結晶粒界の外周長さ(結晶粒界の長さ)、γ相の長さ(結晶粒界のγ長さ)を測定し、これを式1に当てはめて、γ相が各結晶粒を包囲するときの各結晶粒に対するγ相の割合であるγ相の結晶粒包囲率を算出する。
これを1枚のミクロ組織写真において、任意に20個の結晶粒を選定して測定し、その平均値をその合金のγ相の平均結晶粒包囲率とした。この方法により求めた各供試材のγ相平均結晶粒包囲率と、応力腐食割れ時間を表4に記している。また、表4より得られるγ相平均結晶粒包囲率と応力腐食割れ時間との関係をグラフ化したものを図7に示す。
図7より、γ相平均結晶粒包囲率と応力腐食割れ時間は、材質や製造方法の相違に係わらず、略直線関係にあり、γ相の結晶包囲率が増加するに従い、応力腐食割れ時間が長くなる傾向を示している。また、図中に示した関係式(y=0.8085x−10.695、R=0.9632)より、基準B(応力腐食割れ時間12hr)を満たすγ相平均結晶粒包囲率は28%以上であり、より好ましい基準A(応力腐食割れ時間26hr)を満たすγ相平均結晶粒包囲率は45%以上であることが分かった。ここで、上記関係式における「R」は、統計学上の「相関係数」であり、これを二乗した「R」を用いることにより、絶対値表示としている。そして、このRの値が1に近いほど、上記関係式が各データに近い状態、すなわちxとyとの相関が強い関係式であることを示す。
このγ相平均結晶粒包囲率は、表3に示すように、合金の成分の調整(例えば、CuやBiの含有量の調整)、或は、焼鈍の有無や焼鈍時間、温度等の調整により、適宜増加ないし減少させることができ、上記の関係式に示す応力腐食割れ時間との直線的な関係はそのままに、目的とする応力腐食割れ時間の基準に応じて設定することが可能である。
以上のように、γ相平均結晶粒包囲率を28%以上、又は45%以上確保することにより、割れがγ相に接触する確率が高くなり、このγ相平均結晶粒包囲率は、γ相が結晶粒界において環状に分布する割合を示していることから、応力負荷方向が特定されていない場合、すなわち、割れの方向が特定されていない合金において、所定の基準を満たす耐応力腐食割れ性を得ることができる。なお、γ相平均結晶粒包囲率の上限は、約75%、より好ましくは、供試材No.3における71%である。
ここで、γ相平均結晶粒包囲率の算出に必要なγ相包囲率の測定数、すなわち、測定対象の結晶数は任意の数値であるものの、本実施例における測定数を20個としたのは、測定値から算出される平均値が、一定の値に収束するのに必要最小限の測定数であることによる。平均値は、図8に示すように、測定数1の場合には、測定値a自体が平均値Aとなり、測定数2の場合には、測定値a、bの平均値B、測定数3の場合には、測定値a〜cの平均値Cとなる。本実施例においては、図に基づき、測定数15個付近で平均値が収束しており、測定誤差を考慮の上、測定数20個に基づくγ相の結晶粒包囲率の平均値を、γ相平均結晶粒包囲率として用いた。
このように、必要且つ最小限の測定値により、平均値のバラツキの影響を排除して、γ相平均結晶粒包囲率と耐応力腐食割れ性との相関を正しく把握することができる。
次に、γ相接触数と耐応力腐食割れとの関係における実施例を詳述する。
「γ相接触数」とは、合金における任意の部位において、応力負荷方向に対して垂直方向に設定した単位長さに対するγ相の接触個数を測定し、この測定を複数行ったデータの平均値及び標準偏差に基づき、次式にて定義される。
[式1]
γ相接触数[個]=「γ相の接触個数の平均値」−「γ相の接触個数の標準偏差」
従って、「γ相接触数」が高ければ、割れがγ相に接触する確率が高いものとなる。また、この「γ相接触数」は、γ相が応力負荷方向に対して垂直方向に分布する割合を示していることから、応力負荷方向が特定されている場合、すなわち、割れの方向が特定されている場合において、割れの進行抑制に必要なγ相の分布を示す値として、好適な指標である。
ここで、γ相が応力負荷方向に対して垂直方向に分布する割合に注目したのは、応力腐食割れが、応力負荷方向に対して垂直方向に進行する点にある。
前述したように、Bi系鉛レス銅合金は単一かつ直線的な割れが生じ易いことから、応力腐食割れの進行を遅らせるために、合金における応力負荷方向と垂直な方向にγ相を一定の法則に従って効率的に分布させることにより、耐応力腐食割れ性を改善するようにしたものである。
次いで、「γ相接触数」と耐応力腐食割れ性との関係について、実測データに基づき説明する。
実施例1と同様に、同一組織のビレット1〜3から3種類の製造方法で棒材を製造し、耐応力腐食割れ試験を行った。また、単位長さあたりのγ相の存在個数であるγ相接触数をミクロ組織から解析し、耐応力腐食割れ性との相関を求めた。
「γ相の接触個数」は、図9のように、応力負荷方向と平行な面で円柱状の供試材をカットし、カット面における任意の部位で、光学顕微鏡を用いて倍率400倍(観察面:縦400μm×横480μm)にて金属組織を撮影し、この写真上に応力負荷方向と垂直な方向に長さ400μmの直線を20μm間隔で24本引き、その直線上で接触するγ相の接触個数を24本の各線において測定し、その24本におけるγ相への接触個数の平均値及び標準偏差から平均値−標準偏差を算出し、これを「γ相接触数」と定義した。
ここで、測定を20μmおきに行ったのは、供試材の平均結晶粒径が14〜16μmであり、同一の結晶粒における複数回の測定を回避することによる。また、単位長さを400μmに設定したのは、上記ミクロ組織の観察・測定が容易な倍率が400倍であり、この倍率における視野の短辺が400μmであることによる。
表5に、各供試材1〜6における、γ相接触数(個)と、実験によって測定した応力腐食割れ時間(hr)を表す。また、表5より得られるγ相接触数と応力腐食割れとの関係をグラフ化したものを図10に示す。
Figure 0004397963
図10より、ビレット2、ビレット3について、γ相接触数と応力腐食割れ時間は直線関係にあり、γ相接触数の増加に従い、応力腐食割れ時間が長くなる傾向を示した。また、図中に記載した関係式である、y=5.9243x−2.637、R=0.9853より、基準B(応力腐食割れ時間12hr)を満たすγ相接触数は2〜80個であり、より好ましい基準A(応力腐食割れ時間26hr)を満たすγ相接触数は4〜80個である。また、ビレット1についても、6個以上のγ相接触数により、基準Aを満たすことができる。
ここで、通常生産される黄銅棒の結晶粒度は、微細な場合には約5μm程度である。これにより、400μmの測定長さ中には、最大で80個の結晶が存在することになる。1つの結晶粒の周囲には、1つのγ相が存在しているため、γ数接触数の上限値を80個に設定している。
このγ相接触数は、表4に示すように、合金の成分の調整(例えば、CuやBi、Sbの含有量の調整)、或は、焼鈍の有無や焼鈍時間、温度等の調整により、適宜増加ないし減少させることができ、上記の関係式に示す応力腐食割れ時間との直線的な関係はそのままに、目的とする応力腐食割れ時間の基準に応じて設定することが可能である。
なお、実施例1における「γ相平均結晶粒包囲率と応力腐食割れ時間との関係」では、図7のグラフからはSbの含有が耐応力腐食割れ性にもたらす影響を把握できないが、実施例2における「γ相接触数と応力腐食割れ時間との関係」の図10を分析することにより、Sbの含有と耐応力腐食割れ性との関係を定量的に把握することができる。
すなわち、図10において、Sbを含有しているビレット2(供試材3、4、5)、ビレット3(供試材6)のデータは、式y=5.9243x−2.637にほぼ沿うようにグラフ上に表われるのに対して、Sbを含有しないビレット1(供試材1、2)のデータは、直線から外れるように表われ、同じγ相接触数の場合、Sbを含有させた方が、させないよりも応力腐食時間が向上している。これにより、少ないγ相接触数でも、耐応力腐食割れ時間が長くなるという点で、Sbを含有させた方が良いということが見出された。
以上のように、γ相接触数を2個以上、又は4個以上(Sbを含有しない場合は6個以上)確保することにより、割れがγ相に接触する確率が高くなり、しかもγ相接触数は、γ相が応力負荷方向に対して垂直方向に分布する割合を示していることから、応力負荷方向が特定されている場合、すなわち、割れの方向が特定されている合金において、所定の基準を満たす耐応力腐食割れ性を得ることができる。
ここで、「γ相平均結晶粒包囲率」や「γ相接触数」は、いずれも合金の部分的な測定データに基づく数値であるものの、後述のように、合金(供試材)の耐応力腐食割れ性との明確な相関関係が得られた。
この相関関係に基づき、「γ相平均結晶粒包囲率」や「γ相接触数」を、適切に設定することにより、γ相が合金中において一定の割合で分布した状態とすることができ、割れに対してγ相に接触する確率を高いものとして、割れの進行速度を遅くし、耐応力腐食割れ性を向上することができる。
そして、供試材の「γ相平均結晶粒包囲率」や「γ相接触数」を算出するのみで、その都度、応力腐食割れ試験を行うことなく、供試材の耐応力腐食割れ性を評価することも可能となる。
なお、「γ相接触数」は、割れがγ相に接触する確率が高いことを示す数値としての妥当性を、統計学上でも裏付け可能な指標である。
「γ相接触数」は、上述のように、複数の単位長さに対して測定した、γ相の接触個数の平均値及び標準偏差により算出される指標である。
平均値のみの指標では、図11(a)、図12(a)のように、単位長さに対して平均的にγ相が存在する合金、或は、図11(b)、図12(b)のように、単位長さに対してγ相がばらついて存在する合金の双方とも、同じ数値を示してしまい、割れの速度を抑制するために必要なγ相の分布を適切に表すことができない。
また、データのバラツキを示す、標準偏差のみの指標では、図13(a)、図13(b)のように、平均値の大なる合金、小なる合金の双方とも、同じ数値を示してしまい、やはり、割れの速度を抑制するために必要なγ相の分布を適切に表すことができない。
本発明に係る黄銅合金では、割れの速度を抑制するために必要なγ相の存在状態を適切に表す指標として、γ相の接触個数の平均値と標準偏差を組み合わせた指標を用いた。これにより、前述のように応力腐食割れ時間との相関を見出すことができ、直線的な割れを呈する合金である、Bi系鉛レス黄銅の耐応力腐食割れの確保に必要なγ相の分布を特定し得たことにより、割れがγ相に接触する確率が高いことを示す数値としての妥当性が確認された。
また、「γ相接触数」は、「平均値(μ)−標準偏差(σ)」にて表される数値であることから、図14の正規分布図における斜線領域の下限値に該当する数値である。図14の正規分布図は、横軸にはγ相接触数を、縦軸には各測定データが前記γ相接触数を呈する頻度を示している。
統計学では、対象物の部分的な測定データ(統計学上、「標本」という。)に基づいて、対象物全体のデータ(統計学上、「母集団」という。)を推測する手段として、多くの自然現象のデータ分布を共通的に表示し得る「正規分布」が用いられる。本発明合金では、観察部位における24本の測定データに基づき、観察部位全体におけるγ相の分布を推測する必要があることから、上記正規分布図が適用され得る。
この正規分布によれば、観察部位の任意位置における測定データである、単位長さに対するγ相の接触個数が、「γ相接触数」以上の数値を呈する確率は、図14の正規分布図における斜線領域に相当する、約84%であることを示している。
従って、本発明における黄銅合金において、「2個以上のγ相接触数」とは、単位長さに対するγ相の接触個数を、24本の単位長さについて測定した場合に、γ相の接触個数が2個以上となる単位長さが20本以上存在することを意味する。
以上のように、「γ相接触数」は、割れがγ相に接触する確率が高いことを示す数値でとしての妥当性を、統計学上でも裏付け可能な指標であり、しかも、前述のように合金全体(供試材)の耐応力腐食割れ性との明確な相関が得られたことから、Bi系鉛レス黄銅の耐応力腐食割れの確保に必要なγ相の分布を示す指標として、妥当性のある数値である。
次に、本発明におけるBi系の鉛レス黄銅合金のSn含有量と耐応力腐食割れ性との関係を調査し、耐応力腐食割れ性に対する上記のSnの最適添加範囲(含有量)を証明するために、実施例3の試験を行った。
本発明における供試材7〜16の製造方法としては、原材料を高周波炉にて溶解し、1010℃にて金型に注湯し、φ32×300(mm)の金型鋳造鋳物を製造した。
応力腐食割れ試験方法としては、評価基準の試験の場合と同様に、図2のような各供試材のRc1/2ねじ部に、シールテープを巻いたステンレス鋼製ブッシングを9.8N・mのトルクでねじ込み、試験時間4〜48hrにおいてアンモニア濃度14%のアンモニア水を入れたデシケータ内に入れることにより試験を行った。続いて、所定の経過時間毎(4、8、12、24、36、48hr毎)にデシケータ内から各供試材を取り出して洗浄した後に、目視確認により割れ有無の評価を行った。
実施例3において、製造した鋳物(供試材7〜16まで)の化学成分(mass%)と、各供試材における応力腐食割れ時間(hr)の結果を表6に示す。
Figure 0004397963
図15に、表6より得られる供試材7〜14(Biは約1.8%)におけるSn含有量と応力腐食割れ時間との関係をグラフ化したものを示す。
図15の結果より、Snを1.1mass%以上添加した水準の全てで、前記において決定した評価基準A(26h)をクリアする傾向を示した。しかし、Snを過剰に添加すると、鋳物にざく巣が発生することや、加工性が損なわれるため、Snの最適添加範囲は、1.0〜2.0mass%とするのがよい。一方、前述したように、本発明におけるSnの含有量は、0.7〜2.5mass%であるが、この含有量において基準Bをクリアしている。なお、上記の傾向は、Biを約1.3mass%含有した供試材15,16においても表6に示すように再現される。
次いで、本発明におけるBi−Se系の鉛レス黄銅合金のSn含有量と耐応力腐食割れ性との関係を調査した。
表7に示す各供試材No.17−No.28の水準の金型鋳造鋳物を製作し、ねじ込みSCC性試験を行った。試験条件は前述のBi系黄銅の試験と同様とし、ねじ込みトルク9.8Nm、アンモニア濃度14%で4〜48時間、n=4とする。また、Seの効果についても確認するため、供試材No.25、No.26に示すようにSe:0.09%、0.12%で試験を行った。その結果を表7に、また供試材No.17〜26の結果を図49にも示した。なお、Bi系黄銅に試験結果と、Bi−Se系黄銅の試験結果とを、同一条件で評価するため、夫々の試験時に、基準供試材(Cu:62.6、Sn:0.3、Pb:2.8、P:0.1、Zn:残部、数値単位はmass%)の応力腐食割れ時間を評価した。その結果、基準供試材の応力腐食割れ時間は、Bi系黄銅の試験時においては48h、Bi−Se系黄銅の試験時間においては42hであることから、Bi−Se系黄銅の各供試材における試験結果(応力腐食割れ時間)に、補正値として48/42=1.14を乗じ、これを「補正後の値」として表示した。
この試験の結果、Snの含有に加えてSeを含有すると、耐応力腐食割れ性がやや向上することが判明した。なお、供試材No.20、No.25、No.26のように、Seの含有量を増加させていくと、供試材No.26(Se=0.12%)では、耐応力腐食割れ性がやや低下し、頭打ちとなる。なお、上記の傾向は、Biを約1.3%含有した供試材27,28においても、表7に示すように略再現されている。
Figure 0004397963
次に、本発明におけるBi系の鉛レス黄銅合金のSb含有量と耐応力腐食割れ性との関係を調査し、耐応力腐食割れ性に対する上記のSbの最適添加範囲(含有量)を証明するために、実施例5の試験を行った。このときの供試材29〜38までの製造方法は、実施例3と同様である。
応力腐食割れ試験方法としては、評価基準の試験の場合と同様に、図2のような各供試材のRc1/2ねじ部に、シールテープを巻いたステンレス鋼製ブッシングを9.8N・mのトルクでねじ込んだものを、アンモニア濃度14%のアンモニア水を入れたデシケータ内に入れ、試験時間4、8、12、24、36、48hrが経過する毎にデシケータ内から各供試材を取り出して洗浄した後に、目視確認により割れ有無の評価を行った。
実施例5において、製造した鋳物(供試材29〜38まで)の化学成分(mass%)と、応力腐食割れ時間(hr)の結果を表8に示す。
Figure 0004397963
図16、図17に、表8より得られるSb含有量と応力腐食割れ時間との関係をグラフ化したものを示す。図16は、Sbの含有量が少ない供試材の試験結果を詳細に示すために、各供試材の試験結果を等間隔に棒グラフで示したものであり、図17は、Sbを含有した供試材の全体的な傾向を示すために、各供試材の試験結果を、Sbの含有量に基づきつつ、曲線グラフで示したものである。
図16、図17の結果より、Sbを0.06〜0.60mass%(より確実には、0.06〜0.51mass%)含有することにより、基準Aを満たす耐応力腐食割れ性を発揮する。一方、前述したように、本発明におけるSbの含有量は、0.06<Sb≦0.60mass%であるが、この含有量において基準Bをクリアしている。なお、供試材30(Sb:0.02mass%)、供試材31(Sb:0.04mass%)では、Sb含有による効果は得られなかった。
ここで、本発明合金におけるSbの含有は、Sn:0.7〜2.5mass%の含有を前提としている。上記との比較例として、Snの含有量を0.5mass%と低くした合金について同様に試験を行った結果を表9に示す。これらの合金において、Sbの含有量を0.1mass%、0.3mass%と上げても、耐応力腐食割れ性の向上は確認されなかった。
Figure 0004397963
なお、本発明におけるBi−Se系の鉛レス黄銅合金のSb含有量と耐応力腐食割
れ性との関係について、Bi系の供試材と同様に試験を行った。
Figure 0004397963
表10の結果より、Bi−Se系の鉛レス黄銅合金においても、Bi系と同様の傾向が再現されている。
続いて、本発明におけるBi系の鉛レス黄銅合金のCu含有量と耐応力腐食割れ性との関係を調査し、耐応力腐食割れ性に対するCuの最適添加範囲を見極めるために、実施例6の試験を行った。このときの供試材41〜45までの製造方法は、実施例3と同様である。
応力腐食割れの試験方法としては、実施例4の場合と同様に行い、試験時間4、8、12、24、36、48hr毎にデシケータ内から供試材を取り出して洗浄した後に、目視確認により割れ有無の評価を行った。
実施例6において、製造した鋳物(供試材41〜45)の化学成分(mass%)と、応力腐食割れ時間(hr)の結果を表11に示す。
Figure 0004397963
図22に、表11より得られるCu含有量と応力腐食割れ時間との関係をグラフ化したものを示す。図22の結果より、耐応力腐食割れ性の基準B(12h)を満たすには、59.5mass%以上(より確実には、59.6mass%以上)のCuの含有が有効であり、更に、基準A(26h)を満たすには、およそ60.0mass%以上(より確実には、60.6mass%以上)の含有が有効であることが確認された。
応力腐食割れの発生要因のひとつに供試材の加工後に残留する引張応力がある。この引張応力が残存していると腐食環境と相まって耐応力腐食割れ性が悪化する恐れがある。Biは、切削性に寄与する元素であるため、加工後に残存する供試材の応力に影響を与える。よって、Bi含有量と供試材の加工後の応力を調査し、引張応力が残存しないBi添加量を見極める。このときの、供試材46〜50の製造方法は、実施例3と同様である。
供試材の応力の測定は、X線応力測定法により行う。ここで、外部からの応力は、材料を構成する格子面間隔に影響を及ぼし、応力によって歪んだ格子は、入射X線に対する回折X線の角度に影響する。金属材料は多結晶からなり、これに応力が加わると一般に力の方向に伸び、直角方向に縮む。したがって結晶格子面間距離の伸縮などの変化をX線回折法で測定することで内部応力を求めることができる。
実施例7において、製造した鋳物(供試材46〜50まで)の外観と応力の測定箇所を図23に示し、化学成分(mass%)と測定した応力値(MPa)を表12に表す。なお、鋳物の形状は、図2に示す、円筒状の供試材と同様である。
Figure 0004397963
(+は引張応力、−は圧縮応力を意味する)
図24に、表12より得られるBi含有量と応力との関係をグラフ化したものを示す。図24の結果より、Bi含有量が増加するに従い、応力が低下する傾向を示した。データを直線で結んだ回帰式より、Bi含有量が約0.7mass%以上で、供試材の加工後の残留応力が圧縮応力に変化することがわかった。
なお、各実施例における応力腐食割れ試験は、特に記載しない限り、約20℃の環境下で行っている。
次に、合金中のSbの分布について詳しく説明する。
実施例5として、供試材3(α+β+γ組織)をEPMA(電子線マイクロアナライザー)によってマッピング分析し、この結果を図18に示した。このとき、供試材は、図5における方法Aによって製造した。マッピング分析は、図18(a)〜図18(f)において、それぞれCu、Zn、Sn、Bi、Sb、Niの6元素について行った。
図18(e)のSbのマッピング画像に着目すると、所々で白色の箇所がみられ、低濃度ではあるがSbが検出された。これを他の5元素と照らし合わせると、Sbの白色の箇所は、その大部分が図18(c)におけるSnのマッピング画像の白色に囲まれた黒色部分と対応している。つまり、Sbは、Snと同じ場所に存在することを意味している。
続いて、合金中におけるα相、β相、γ相の定量分析をSEM−EDX(エネルギー分散型X線分析法)にて行った。その結果を図19に示す。図19(b)は、図19(a)における数字の分析箇所の組成を示したものである。
測定箇所(1)〜(3)は、γ相について分析を行った結果である。γ相は、主に、Cu、Zn、Sn、Sbから構成されており、Snが約10mass%と高濃度になっており、また、Sbが3mass%固溶している。
次に、供試材4(α+γ組織)のEPMAによるマッピング分析結果を図20に示す。供試材は、図5における方法Bによって製造した。マッピング分析は、図20(a)〜図20(f)において、それぞれCu、Zn、Sn、Bi、Sb、Niの6元素について行った。
図20(e)のSbマッピング画像に着目すると、所々で(薄い)白色の箇所がみられ、低濃度ではあるがSbが検出された。これを他の5元素と照らし合わせると、Sbの白色の部分は、その大部分が図20(c)におけるSnのマッピング画像の白色に囲まれた黒色部分と対応している。つまり、α+β+γ組織と同様に、SbはSnと同じ箇所に存在することを意味している。
続いて、合金中におけるα相、β相、γ相の定量分析をSEM−EDXにて行った。その結果を図21に示す。図21(b)は、図21(a)における数字の分析箇所の組成を示したものである。
測定箇所(3)〜(6)は、γ相について分析を行った結果である。γ相は、主に、Cu、Zn、Sn、Sbから構成されており、Snが約10mass%と高濃度になっており、また、Sbが2〜3mass%固溶している。このように、α+γ組織のγ相は、α+β+γ組織にみられたγ相とほぼ同様の結果となった。
以上のEPMA及びSEM−EDX分析の結果により、α+β+γ組織、α+γ組織を有する黄銅合金中のSbは、γ相に固溶しているといえる。
次に、ビレット1、ビレット2を方法Bで製造した、供試材1、3のミクロ組織にみられるγ相のマイクロビッカース硬さを5箇所測定した、その平均値は、供試材1のγ相は158、供試材3のγ相は237であり、ビレット2に析出したγ相の方が硬いことが明らかとなった。これは、EPMAやSEM−EDXによる分析結果で説明したように、添加したSbがγ相に固溶したことによるものと考えられる。本実施例では、このSbが固溶したγ相を、ビレット1のように黄銅合金にSnを含有し、Sbを含まない合金のγ相と区別して、「硬化γ相」と定義する。
Bi含有鉛レス黄銅合金の応力腐食割れ性は、直線的に進行する割れに対して、いかに多くのγ相を接触させるかが重要である。また、図10に示すγ相接触数と応力腐食割れ時間の関係から、Sbを含有した棒材の方がSbを含有していない棒材よりも耐応力腐食割れ時間が長く、少ないγ相接触数でも応力腐食割れ時間が長くなる結果となっている。これは、直線的に進行する割れに対して、「γ相」よりも「硬化γ相」の方が割れの進行を妨げるのに、より効果的であることを意味している。
次に、供試材3、4を対象として、耐脱亜鉛腐性、及び耐エロージョン・コロージョン性を評価するために、耐脱亜鉛腐食試験、及び隙間噴流試験を行った。
(1)耐脱亜鉛腐食試験
耐脱亜鉛腐食試験は、ISO6509−1981に規定された、黄銅の脱亜鉛腐食試験方法に基づいて行った。具体的には、表面をエメリー紙No.1500にて研磨した試験片を、1%塩化第二銅水溶液を75℃に保持した試験槽に24時間浸漬し、試験槽から取り出した試験片断面の腐食深さと腐食形態とを、顕微鏡により測定・観察した。合否判定基準は、最大脱亜鉛深さが200μm以下を合格(表中において◎)、200μmを超え400μm以下を合格(○)、400μmを超えるものを不合格(×)とした。
表13に示すように、いずれの供試材においても合格となった。
Figure 0004397963
(2)隙間噴流試験
耐エロージョン・コロージョン性は、隙間噴流試験により評価した。具体的には、腐食液に対して暴露面積を64πmm(φ16mm)に加工した試験片を鏡面研磨し、図25に示すように配置する。次いで、この試験片表面より0.4mmの高さに配置した噴射ノズル(ノズル径:φ1.6mm)から試験溶液(1%塩化第二銅水溶液)を0.4リットル/minにて噴射する。試験溶液を5時間噴射した後、質量を測定して質量損失及び腐食深さを求め、腐食形態を観察する。合否判定基準は、比較材である青銅鋳物に比して局部的な腐食が見られない供試材を合格(表中において○)、局部的な腐食が見られる供試材を不合格とした。
表14に示すように、いずれの供試材においても合格となった。
Figure 0004397963
以上のように、第一発明の黄銅合金は、表3のビレット2のようにSbを含有させ、これを図5における方法Bによってα化焼鈍の熱処理を加えることによって、耐応力腐食割れ性を向上させることができた。また、このとき、黄銅合金の特性である優れた耐脱亜鉛腐食性や耐エロージョン・コロージョン性を確保することができた。
次に、第二発明における耐応力腐食割れ性に優れた鉛レス黄銅合金中の好ましい実施形態を詳述する。第二発明の鉛レス黄銅合金は、Bi系鉛レス黄銅合金内にSnを含有することによりγ相を析出させ、このγ相を金属組織中において均一に分散させ、このγ相が優先的に腐食する部位となることで、合金表面の局部的な腐食を抑制することにより、耐応力腐食割れ性の向上を図った鉛レス黄銅合金である。
第二発明における鉛レス黄銅合金に含まれる元素とその望ましい組成範囲は、前記第一発明における組成範囲とその理由についても同様であるから、その説明を省略する。γ相を均一に分散させるには、図5に示す製造方法A〜Dの中から、適宜の好ましい製造方法を用いて製造することにより、図26の状態図において、クロスハッチングで示されるα+γの組織(範囲S参照)、またはハッチングで示されるα+β+γの組織(範囲R参照)を得るようにする。特に、方法B〜Dのように、α化焼鈍を行ってβ相を抑制することにより、耐脱亜鉛性を有しつつ、γ相を均一に分散させ、耐応力腐食割れ性を向上することが可能となる。
ここで、第二発明における鉛レス黄銅合金中のγ相の均一分散に要する、適宜の好ましい製造方法を選択する手段として、「評価係数」を用いた評価方法について述べる。
「評価係数」とは、鉛レス黄銅合金製の棒材の製造方法において、抽伸や熱処理等の製造工程(因子)が耐応力腐食割れ性に与える影響を、統計的手段を用いて数値化(重み付け)し、これら数値化した各因子の積で表された値のことをいう。
例えば、「押し出し」「α化焼鈍(温度470℃)」の工程を経て製作した直径φ32の棒材を用い、この棒材から「抽伸」を行うことなく、且つ「抽伸前後の両方に熱処理」を行うことなく製作した供試品の評価係数が、基準値として1となるよう算出する例として、評価係数は次式で表すことができる。
[式2]
「評価係数」=棒材径の影響×α化温度の影響×抽伸の影響×抽伸前後の両方に熱処理を行うことの影響=a/32(1+|470−t|/100)×(抽伸を行う:0.8)×(抽伸前後の両方に熱処理を行う:0.3)
なお、aは棒材直径(単位mm)、tはα化温度(℃)であり、評価係数は無次元数である。また、α化焼鈍を行わない場合には、α化温度の影響(1+|470−t|/100)を1とする。
表15に示す化学成分を有するビレットを用い、表16に示す製造工程(抽伸前焼鈍、抽伸、抽伸後焼鈍)を経て、各棒材径の供試品51〜73を製作の上、第一発明における実施例3と同様の応力腐食割れ試験を行い、式2を用いて評価係数を算出した。応力腐食割れ試験の結果である応力腐食割れ時間(SCC時間)、及び算出した評価係数を表16に示すと共に、評価係数に対する応力腐食割れ時間との関係を図27のグラフに示す。
Figure 0004397963
Figure 0004397963
図27より、評価係数と応力腐食割れ時間は、右肩上がりの略直線関係にあり、評価係数が増加するに従い、SCC時間が長くなる傾向を示している。また、図中に示した関係式(y=39.657x×−6.2186、R=0.9113)により、評価係数とSCC時間との相関が高いことが示されている。この図27によると、基準B(応力腐食割れ時間12hr)を満たす評価係数は0.46以上であり、基準A(応力腐食割れ時間26hr)を満たす評価係数は、0.81以上である。
図28に、表16における供試品No.60,No.69,No.70のミクロ組織写真(200倍と1000倍で観察)を示す。各供試品における評価係数と応力腐食割れ時間は、1.50−46hr,0.78−26hr,0.23−3.3hrであり、これらは図27のグラフにおける、(ア)、(イ)、(ウ)領域に対応する。
ミクロ組織の観察部位は、図2に示す応力腐食割れ試験の供試材のRc1/2めねじ部付近における、応力腐食割れ試験後の縦断面組織である。この組織は、棒材における押出長手方向のミクロ組織を示しており、結晶粒を包囲するように存在するγ相が写真縦方向に整列した状態で分布するほど、応力腐食割時間が短くなることを示している。
供試品No.60は、α化処理を、後述する最適な温度から外れた425℃で行っており、β相が残存していることから、γ相の分布が良好で、応力腐食割れ時間も長く、耐応力腐食割れ性に優れている。
供試品No.69は、α化処理を、最適な温度に近い450℃で行っており、β相の残存がほとんど見られないことから、γ相が縦方向に整列する傾向が見られるものの、耐応力腐食割れ性は良好である。
供試品No.70は、抽伸前後の両方に熱処理を行っており、γ相が縦方向に整列する傾向が更に進み、応力腐食割れ時間も短いものとなっている。
次に、評価係数の各因子について説明する。
(1)棒材径の影響(式2における基準値:φ32)
「棒材径の影響」は、評価係数の相対的な値を増減する因子であり、評価係数と応力腐食割れ時間との関係に直接影響を与えるものではない。例えば、棒材径の基準値をφ1とした場合、すなわち、棒材径の影響をa/1とした場合の評価係数と応力腐食割れ時間との関係を、図29のグラフに示す。すると、基準値をφ1とした場合は、基準値をφ32とした場合のグラフ30と比較して、評価係数の値が大きいものとなり、グラフの傾きと切片は変化しているものの、評価係数と応力腐食割れ時間との相関を示す「相関係数R」の値は変化していない。
したがって、「棒材径の影響」は、評価係数と応力腐食割れ時間との関係に直接影響を与えるものではなく、評価者が目的に応じて適宜選択し得る数値であり、「評価係数」において任意の因子である。
(2)α化温度の影響(式2における基準値:470℃)
「α化温度の影響」は、評価係数の実質的な値を増減する因子であり、評価係数と応力腐食割れ時間との関係にやや影響を与える。本発明における鉛レス黄銅合金では、α化温度に最適な455℃<t<475℃(より確実には485℃)において、耐脱亜鉛性が向上する反面、γ相の分布が悪くなり、耐SCC性が低下する傾向がある。
具体例として、表15に示す化学成分値を有するビレットを用い、押出しにより棒材径φ33の供試品を作製の上、第一発明における実施例3と同様の応力腐食割れ試験を行った結果を、α化温度と応力腐食割れ時間との関係をグラフとして図30に示す。各データに多少のバラツキはあるものの、応力腐食割れ時間(SCC時間)が最も短いのは、470℃のデータであることから、γ相の均一分散に要する適宜の好ましい製造方法として、α化処理を470℃よりも高い温度や低い温度で行うことにより、耐応力腐食割れ性の低下を抑制することができる。耐応力腐食割れ性と耐脱亜鉛性とのバランスを考慮すると、α化処理を425℃〜455℃で行うのが最適である。
したがって、「α化温度の影響」は、評価係数と応力腐食割れ時間との関係にやや影響を与えるものであり、「評価係数」において任意の因子である。
(3)抽伸の影響(影響度合い:0.8)
「抽伸の影響」は、評価係数の実質的な値を増減する因子であり、評価係数と応力腐食割れ時間との関係に影響を与える。一般に、抽伸により引張強さや耐力が高くなることで、黄銅合金の耐応力腐食割れ性が向上するといわれるが、伸びや衝撃などの靱性は低下する傾向にあることから、抽伸工程を経た棒材が、腐食によってその表面に切り欠きが発生した際には、割れが早く進むおそれがある。
抽伸の影響度合いを0.6とした他の例を、図31に示す。このグラフにおいて相関係数は、R=0.8942であることから、抽伸の影響度合いを0.8とした図27の場合に比して、評価係数とSCC時間との相関がやや低下したものとなる。相関係数を0.9以上とするためには、抽伸の影響度合いを0.6〜0.9の間で設定するのが良い(例:抽伸の影響度合いを0.9とした場合の相関係数はR=0.8997であった)。
γ相の均一分散に要する適宜の好ましい製造方法として、抽伸を行わずにα化処理等の次工程に進むことにより、耐応力腐食割れ性を向上することができる。
したがって、「抽伸の影響」は、評価係数と応力腐食割れ時間との関係に影響を与えるものであり、「評価係数」において必須の因子である。
(4)抽伸前後の両方に熱処理を行うことの影響(影響度合い:0.3)
「抽伸前後の両方に熱処理を行うことの影響」は、評価係数の実質的な値を増減する因子であり、評価係数と応力腐食割れ時間との関係に大きな影響を与える。
図32、図33は、抽伸前後の両方に熱処理を行うことの影響度合いによる変化を示したグラフであり、図32の影響度合いは、0.4以下、ベストが0.3、図27は、0.3、図33は0.2である。同図から明らかなように、影響度合いを小さくすることで、相関係数は高くなる。以下の表17は、評価係数各因子の上下限の組合せと評価係数境界値を示す。
Figure 0004397963
表17は、耐応力腐食割れ性に影響を及ぼす各因子の上下限値と基準A、Bに対応する評価係数を示す。同表から評価係数各因子を変化させることで基準Aに対する評価係数は0.70〜0.89、基準値Bに対する評価係数は0.29〜0.58の値を取り得る。これは棒材の製造設備、製造条件の違いやばらつき、さらには応力腐食割れ試験結果のばらつきなどによって変化することを示すが、概ね、各因子の最適値とすることでγ相の分布が良好で耐応力腐食割れ性に優れた合金が得られ、このときの基準Aに対応する評価係数は0.81、基準Bは0.46となる。
図32、図33、表17において、材料の残留応力が高い状態で熱処理を行うと相変態が容易に進行し、本発明における黄銅合金の場合、押出→α化焼鈍→抽伸→歪取り焼鈍などの高歪加工と熱処理を2回繰返すことで、γ相の分布が悪くなり耐SCC性が低下する可能性が極めて高くなる。
抽伸前後の両方に熱処理を行うことの影響は、評価係数と応力腐食割れ時間を示すグラフの回帰線の相関係数から設定することが可能である。高い相関が得られる範囲(相関係数R2が0.9以上)での設定を基準にすると、抽伸前後の両方に熱処理を行うことの影響を0.4以下とするのが好ましい(図32参照)。また、抽伸前後の両方に熱処理を行うことの影響を0に近づけることで高い相関係数が得られるが、このときの表14におけるNo.54、55、56、57、67、70、72、73の評価係数は0に近くなり応力腐食割れ時間が0.0hr付近になることを示す。ここで、表14におけるNo.54、57は応力腐食割れ時間が0.0hrとなっているが、実際には4hr未満で全ての試験片が割れたこと意味する。つまり応力腐食割れ時間が0.0hrになることは矛盾するので、抽伸前後の両方に熱処理を行うことの影響を0付近にするのは好ましくない。以上より、抽伸前後の両方に熱処理を行うことの影響の下限は0.2とするのが好ましい(図33参照)。また、抽伸前後の両方に熱処理を行うことの影響を0.3にするのが最も当てはまりが良い(図27参照)。
また、γ相の均一分散に要する適宜の好ましい製造方法として、図5における製造方法B、Dに示すように、熱処理を施す場合には、抽伸前か、抽伸後のいずれか1回に留めることにより、耐応力腐食割れ性を向上することができる。
したがって、「抽伸前後の両方に熱処理を行うことの影響」は、評価係数と応力腐食割れ時間との関係に大きな影響を与えるものであり、「評価係数」において必須の因子である。
以上のように、「評価係数」を用いて評価することにより、第二発明における鉛レス黄銅合金中のγ相の均一分散に要する、好ましい製造方法を選択することが容易になり、所望の耐応力腐食割れ性を有する鉛レス黄銅合金を、効率よく得ることができる。
次に、第二発明における腐食について説明する。第二発明における腐食とは、金属が環境中の水や酸素等と反応してさび、表面が変色し損耗することをいい、全面(均一)腐食と局部腐食に分類される。
全面腐食は、図34(a)に示すように、金属表面の損耗(腐食)が均一に進行するものであり、この全面腐食時においては、アノード反応とカソード反応がともに金属表面で均一に進行するようになっている。
一方、局部腐食は、図34(b)のように、合金成分中の一成分が選択的に溶解される腐食形態であり、アノード反応が金属表面のある部位で集中して起こるときにこの形態となる。このとき、カソード部位は、金属溶解のほとんど進行しない不動態状態にあり、この部位では酸素のカソード還元反応のみが進行する。一方、アノード部位は、金属溶解の起こりやすい活性状態にあって、この部位ではアノード反応のみが進行する。その際、通常、アノード部位の面積は、カソード部位の面積に比べて極めて小さくなるため、アノード部位での腐食電流密度が極めて大きくなり、これにより、激しい局部腐食が進行することになる。
このとき、局部腐食の状態では、著しく腐食された箇所に応力が集中し易くなっており、亀裂発生までの時間は短くなる。一方、全面腐食の場合は、合金表面が均一に腐食して応力集中を緩和するため、亀裂発生までの時間は局部腐食に比較して長くなる。
すなわち、応力集中を緩和するためには全面腐食の形態をとることが重要であり、そのためにアノード部位となりうる介在相の分布や存在量、形状等を制御することが重要になっている。これらを制御するためのパラメータとして、(1)介在相の分散度、(2)介在相の円形度、(3)α相アスペクト比を用いた。以下に、各パラメータを説明する。
ここで、介在相とは、α相やβ相に固溶しない成分や金属間化合物をいい、例えば、Bi相、Pb相、γ相、ZnSe相が挙げられる。特に、以下に示すパラメータの説明においては、α相と比較して優先的に腐食されるγ相、又はPb相をいう。
なお、応力腐食割れは、腐食深さが特定の深さ(図34(b)の寸法L参照)に達すると生ずる現象であることから、この腐食が金属表面の全面で均一的に徐々に進行する、いわゆる全面腐食の形態をとることにより、腐食が特定深さに達するまでの時間を遅らせることができ、割れの発生を抑制することができる。この特定深さの一例としては、後述する実施例17の表24における本発明品の最大腐食深さ(例:腐食時間144hにおける最大腐食深さ=約59.4μm)が該当する。
(1)介在相の分散度
介在相の分散度をもとめるために、本例では、所定範囲として、400倍のミクロ組織写真上に、19×19のマス目(1マスは13μm×17μm)を描き、(介在相が存在するマス数)/(全マス数361)の値を測定し、n=5としてこの平均値を算出した。この算出結果を介在相の分散度とし、介在相の分散度は、介在相がどの程度分散して存在しているのかを表すための指標であり、1に近いほどよく分散していることを意味している。また、介在相の存在量が少ないときには分散度が低くなるので、介在相の存在量の要素も含むものである。
(2)介在相の円形度
介在相の円形度は、球状黒鉛鋳鉄における黒鉛の球状化率の測定原理を用いて黒鉛形状係数法により測定した。本例では、n=30として測定し、この平均値を算出した。介在相の円形度は、介在相の形状を表した指標であり、1に近いほど真円となり、遠ざかるほど真円から遠い形状であることを意味している。また、介在相の存在量がごくわずかであると真円に近くなることから、介在相の量の要素も含むものである。
(3)α相アスペクト比
α相アスペクト比は、合金表面のα相の縦横比を測定し、この測定結果とした。本例では、n=30として測定し、この平均値を算出した。図35に示すように、α相の縦の長さをa、横の長さをbとすると、α相アスペクト比a:bが1に近い場合はα相が図35(b)のように真円となり、1から遠ざかるほど図35(a)のように縦長形状になる。更に、α相アスペクト比が1に近い場合、介在相は、α相粒界を包囲するように分布する。一方、アスペクト比が大きい場合、γ相は縦方向に並んで存在する傾向を示す。つまり、α相アスペクト比は、介在相の分散度や形状の要素を含むものである。
続いて、介在相の分散度、介在相の円形度、α相アスペクト比の3つのパラメータと、耐応力腐食割れ性の関係を導き出す。パラメータと耐応力腐食割れ性の関係を導くために、第二発明の黄銅合金の各パラメータを実測する。また、この発明の黄銅合金と比較するために、別の化学成分値からなる黄銅合金についても同様に実測する。
第二発明における黄銅合金は、一例として、表18の化学成分値により設けた黄銅合金(以下、「本発明品」という。)である。また、比較するための黄銅合金(以下、「比較例」という。)1、3、4も同様に表18の化学成分値によりそれぞれ設けた。
Figure 0004397963
本発明品(第二発明)、比較例について、介在相の分散度、介在相の円形度、α相アスペクト比を素材径φ32のサンプルを用いて測定し、また、引張SCC性試験として、14%アンモニア雰囲気のデシケータ内で、各サンプルに50MPaの引張力を加えたときの破断に至るまでの時間を調べ、この結果を表19に示す。この引張SCC性試験の試験方法は、後述する実施例に同じである。
ここで、各サンプルにおいて測定対象となる介在相は、本発明品及び比較例3はγ相、比較例1はPb相、比較例4はγ相及びPb相である。
また、表19における「引張り方向」、「観察面」とは、図36に示すように、棒材から抽出した供試品に対して引張力を加える方向、パラメータの測定面をいう。なお、本実施例において、本発明品は、表5における製造方法Aにより製作されたものであり、以下、比較例1は製造方法B、比較例2(表20参照)は製造方法A、比較例3は製造方法C、比較例4は製造方法Aにより製作されたものである。
Figure 0004397963
※x:分散度/(介在相円形度×アスペクト比)
続いて、表19のx(介在相の分散度/(介在相の円形度×α相アスペクト比))をX軸、引張SCC性試験における破断時間をY軸とし、各サンプルの測定結果をプロットした。その結果を組織パラメータと引張SCC性試験結果(破断時間)の関係として図37に示す。
図37より、本発明品15、16は、比較例13を基準としてx(介在相の分散度/(介在相の円形度×α相アスペクト比)を0.5以上としたときに、他の比較例よりも優れた耐応力腐食割れ性(破断時間)を有していると判断できる。すなわち、プロットした測定結果の回帰直線Lより、X≧0.5、Y≧135.8X−19の関係式を満たす合金が比較例13と同等以上の耐応力腐食割れ性を発揮できることが確認された。さらに、より好ましくは、本発明品15のxの値である1.09以上の値、すなわち、X≧1.09の関係式を満たす介在相の分散度/(介在相の円形度×α相アスペクト比)の組織パラメータを具備する黄銅合金(図37においてハッチングで表される領域の黄銅合金)であることがより望ましい。
なお、図中、比較例14も上記の関係式を満たす位置にプロットされてはいるが、この比較例14(比較例13)は表18の比較例1であるためSnの含有量が低く、本発明の前提である高Sn含有の前提から外れている。
以上のように、介在相の分散度/(α相アスペクト比×介在相の円形度)と引張SCC破断時間には高い相関関係にあることが見出され、γ相の均一な分散を示すパラメータとしてこの関係を見出すことができた。このパラメータは、適切な値に設定することにより、合金中のアノード部位とカソード部位をバランスよく分布でき、γ相を均一に分散させることが可能になる。
これにより、本発明の鉛レス黄銅合金は、γ相を合金組織中に均一に分散し、アノード部位として反応するγ相とカソード部位として反応するα相によって、アノード・カソード反応を合金表面で略均一に進行するようにしている。
「最大腐食深さ/平均腐食深さ、による評価」
次に、腐食の状態の点から本発明における黄銅合金の耐応力腐食割れ性を分析する。例として、表20のような化学成分値の黄銅合金を設け、この本発明品と比較例1、2、4の腐食後における最大腐食深さと平均腐食深さを後述する実施例11において実測し、これらを最大腐食深さ/平均腐食深さの比であらわして数値化し、局部的な腐食の抑制状態をあらわした。表20の本発明品と比較例1、2、4の最大腐食深さと平均腐食深さの比を表21及び図38に示す。ここに、本発明品の結晶組織は、(α+β+γ)+Biとし、また、比較例1は鉛入り耐脱亜鉛黄銅でその結晶組織が(α)+Pb、比較例2は鉛入り快削黄銅であり、その結晶組織が(α+β)+Pb、比較例4は鉛入り耐脱亜鉛黄銅であり、その結晶組織が(α+β+γ)+Pbとした。
Figure 0004397963
Figure 0004397963
表21において、最大腐食深さ/平均腐食深さの比は、1に近いほど全面腐食を呈していることを示している。本発明品は、この比が小さい値であり、また、腐食時間の経過によるバラつきも少なくなっている。一方、比較例1、2、4は、この比が比較的大きい値になり、腐食時間の経過によるバラつきも大きい。これらの傾向から、本発明品は、全面腐食を呈し、腐食時間の経過による腐食形態の変化がないことを示している。
また、14%アンモニア雰囲気、負荷応力50MPaにて、後述する実施例12と同様の引張SCC性試験を実施したところ、表21のように、本発明品:157.3h、比較例1:41.7h、比較例2:21.3h、比較例4:33.2hで破断した。この結果より、比較例は、腐食時間24h頃までの初期の腐食状態が破断時間に関係していると考えられる。これにより、腐食時間24hまでの最大腐食深さ/平均腐食深さの値を比較すると、本発明品が3.8〜4.2であるのに対して、比較例1、2、4は、何れもこの値を上回っている。このうち、破断時間の最も長い比較例1を比較対象とすると、この比較例1は腐食時間24hで最大腐食深さ/平均腐食深さの比が1〜8.6となっている。この初期段階での腐食は、割れの起点になりやすい。また、長時間経過後では腐食が平均的に大きくなってしまうので、判断がつきにくい。したがって、24hまでの初期段階における比較により、各供試材の評価を正しく行うことができる。
従って、本発明の黄銅合金は、腐食時間24hまでの間で、最大腐食深さ/平均腐食深さが1〜8.6の範囲となる全面腐食状態であれば、14%アンモニア雰囲気、負荷応力50MPaの条件で、比較例と同等以上の耐応力腐食割れ性を具備することができる。
更に、より好ましくは、最大腐食深さ/平均腐食深さを本発明品の24hの試験結果の範囲である1〜3.8とする全面腐食状態がよい。また、破断するまでの時間を評価の対象とした場合、表21の結果より、最大腐食深さ/平均腐食深さを1から最大値である6.4までを含めるのがよい。
なお、腐食時間144h内における最大腐食深さ/平均腐食深さの変動率(最大値/最小値)×100を計算すると、表21において本発明品は110%であり、一方、比較例1は約163%、比較例2は166%、比較例4は約212%であり、本発明品は、比較例に比べて小さい値になっている。しかも、24hまでの初期の腐食状態における最大腐食深さ/平均腐食深さの値は、4つの試験片中で最も小さい。従って、本発明品は、変動率110%以下の全面腐食状態であり、時間が進行しても最大腐食深さが小さい状態を継続しており、局部的な腐食が抑制される。
「変動係数による評価」
続いて、腐食深さのバラつきが小さいときに全面腐食形態となると考えたときに、本発明品と各比較例の腐食深さと平均値に対するデータのバラつきを示す標準偏差を求め、変動係数による評価に関し、これを分析する。ただし、別々の集団の標準偏差は単純に比較できないため、変動係数を用いて腐食深さのバラつきを比較した。変動係数は所定範囲内における腐食深さの標準偏差をその範囲内の平均腐食深さの値で除した値とし、合金を比較するときの腐食深さの基準を備えることができる。よって、この変動係数を比較することで異なった集団である本発明品と各比較例の腐食深さのバラつきを比較した。
本発明品と比較例1、2、4について、腐食深さをn=30で測定したときの標準偏差を平均腐食深さの値で割り、求めた変動係数を表22及び図39に示す。
Figure 0004397963
表22及び図39において、上記の最大腐食深さ/平均腐食深さを比較した場合と同様に、腐食時間が24hまでの変動係数の値は、本発明品:0.77〜0.79であり、このように変動係数のバラつきが小さいことにより腐食深さのバラつきも小さく、腐食が均一に進行していることになる。
一方、比較例においては、その変動係数が、比較例1:1.70〜1.81、比較例2:1.18〜1.39、比較例4:1.25〜1.39となり、本発明品と比較してバラつきが大きく、これにより、局部腐食の態様になっていると判断できる。上記と同様に、比較例2を比較対象とすると、この比較例2は、腐食時間24hで変動係数が1.18となっている。従って、本発明の黄銅合金は、腐食時間24hまでの間で、変動係数が0より大きく1.18以下の値をとるような腐食形態であれば、14%アンモニア雰囲気、負荷応力50MPaの条件で、比較例と同等以上の耐応力腐食割れ性を有することができる。
更には、より好ましくは、変動係数を本発明品の24hの試験結果の範囲である0.77以下とするのがよい。また、破断するまでの時間を評価の対象とした場合、表22の結果より、変動係数の最大値を0.62とするのがよい。
以上のように、最大腐食深さ/平均腐食深さと変動係数により腐食状態を数値化でき、これらの異なる比較手段によって腐食状態を数値化して比較することが可能になっている。
次に、第二発明における耐応力腐食割れ性に優れた黄銅合金の腐食形態の評価試験や応力腐食割れ試験について各実施例を図面に従って説明する。
先ず、本発明の黄銅合金と従来の黄銅合金の応力腐食下における腐食形態の違いを検証する。応力腐食割れ環境下における各黄銅材料の腐食形態の違いを調べるため、表20の本発明品、及び比較例1、2、4を14%アンモニア雰囲気のデシケータ内に24時間設置し、その後、各断面のミクロ組織を倍率200倍にて観察した。腐食試験前後のミクロ組織断面を図40に示す。
この結果、本発明品の腐食形態は、局部的な腐食が抑えられ、表層全面にわたって腐食している様子がみられることから均一腐食であるとことが確認された。一方、比較例1、2は、局所的に腐食していることから局部腐食と判断できる。また、比較例4は、均一に腐食されてはいるものの、部分的に深い腐食が存在し、局部腐食に近い状態になっている。
実施例10より、化学成分値の違いによる腐食形態の差異を確認したが、次に、応力腐食割れ環境下において、優先的に腐食される介在相を特定するため、(α+β+γ)の組織形態であるBi入り黄銅(本発明品)、Pb入り黄銅(比較例4)について腐食試験を行った。
試験は、本発明品と比較例4を14%アンモニア雰囲気中に24時間設置し、腐食前後の表面を観察した。このとき、腐食される介在相を特定するため、マイクロビッカース試験機により圧痕をつけ、腐食前後で同じ箇所を観察できるようにした。倍率1000倍で撮影した腐食前の写真を図41、腐食後の写真を図42に示す。この結果、本発明品についてはγ相、比較例4についてはγ相およびPbが腐食している様子がみられた。一方、β相およびBi相は腐食がみられなかった。これにより、α相と比較して優先的に腐食される介在相は、γ相、Pb相であることが確認された。特に、γ相は、Pb相に比しても優先的に腐食されることが確認された。
更に、本発明品及び比較例1、2、4について、倍率400倍で腐食前後のミクロ組織断面を撮影した。この結果を図43に示す。本発明品の腐食前の組織は、表層にγ相が均一に分布している。一方、比較例1、2は、表層付近にPbが分布しており、比較例4は、γ相とPbが分布している。また、腐食後の本発明品は、表層付近のγ相が均一に腐食している。一方、比較例1、2は、表層付近のPbが局部的に腐食されており、比較例4は、均一腐食であるが、γ相とPbが腐食されているため腐食深さが深くなっている。
これにより、Pbを含有せず、γ相を均一に分散することが、黄銅合金の局部的な腐食を防ぎ、均一に腐食させるための解決手段となることが実証された。
本発明品と比較例1、2、4について、耐応力腐食割れ環境下における腐食時間と腐食深さの関係を検証するために、腐食試験を行って局部腐食の有無を確認した。試験は、各試験片を14%アンモニア雰囲気中に設置し、試験開始から8時間後、24時間後、86時間後、144時間後に取り出し、その腐食深さを測定した。腐食深さの測定は、脱亜鉛腐食深さ測定方法を用いて行った。この測定方法として、平均腐食深さは、腐食試験後のサンプル(n=3)のミクロ組織を倍率200倍で6箇所撮影し、1箇所当たり等間隔に5点腐食深さを測定し、30点の平均値を求めた。最大腐食深さは、撮影したミクロ組織画像の腐食深さが最大となる点を測定した。
各合金の腐食時間と平均腐食深さの関係を表23及び図44に、腐食時間と最大腐食深さの関係を表24及び図45に示す。いずれの合金も時間の経過とともに徐々に平均腐食深さが大きくなっており、特に、比較例4の腐食深さが大きくなっている。また、比較例1、2、4の最大腐食深さは、時間の経過とともに大きくなるが、本発明品の最大腐食深さは144時間まで一定の腐食深さで推移している。従って、本発明品は、応力腐食割れ環境下において、時間の経過とともに平均腐食深さは徐々に大きくなるが、最大腐食深さは一定の腐食深さで推移するため、腐食時間24h以降においても局部的な腐食が防がれ、応力腐食割れの起点となる亀裂が発生しにくい材料であることが証明された。
Figure 0004397963
Figure 0004397963
応力腐食割れ性を定量的に評価するため、合金が破断に至るまでの時間を比較した。試験方法は、図46に示すような試験片を作成し、この試験片の両端側凹部eを図示しない取付け治具で挟み、これをバネ定数が150N/mmのバネを有する図示しない引張装置により引張負荷を与えて破断まで負荷を持続させ、図46(a)の斜線領域において破断が発生したときの時間を測定した。この破断時間は、デシケータ内に設置した治具をCCDカメラにより撮影し、ビデオ録画によって確認して計測した。試験条件としては、アンモニア濃度14%、負荷応力を50MPa、125MPa、200MPaとした。試験片として、表18の化学成分値の本発明品と比較例1、2を用いた。この試験結果を図49に示す。
図47より、負荷応力125MPa、200MPaではいずれの合金もほぼ同等の破断時間を示しているが、負荷応力50MPaでは、本発明品の破断時間が比較例1、2に比べて長くなっており、耐応力腐食割れ性が向上していると判断できる。このとき、負荷応力125MPa、200MPaでは腐食により亀裂が発生すると、応力の影響が大きく亀裂が進行し破断に至るため、材質の差が出ないと考えられ、一方、負荷応力50MPaでは応力の影響が小さく、腐食の形態により亀裂発生までの時間に大きな影響を与えると考えられる。
本発明品は、腐食時間24h以降で最大腐食深さが一定となり、局部腐食が抑制されている。
このように、本発明品は、表層付近のγ相が均一に腐食し、応力集中を緩和する腐食形態をとるため亀裂の発生が遅くなり、腐食の影響が大きくなる50MPa程度の負荷応力であれば応力腐食割れ性を大幅に向上することができる。また、試験後の破断面のミクロ組織観察を行ったところ、本発明品の表層は均一腐食を呈し、比較例1、2は局部腐食を呈しており、視覚的にも耐応力腐食割れ性の優劣を確認することができた。
本発明の耐応力腐食割れ性に優れた黄銅合金は、耐応力腐食割れ性はもとより、切削性、機械的性質(引張強さ、伸び)、耐脱亜鉛性、耐エロージョン・コロージョン性、耐鋳造割れ性、更には耐衝撃性も要求されるあらゆる分野に広く適用することが可能である。また、本発明の黄銅合金を用いて鋳塊(インゴット)を製造し、これを中間品として提供したり、本発明の合金を加工成形して、接液部品、建築資材、電気・機械部品、船舶用部品、温水関連機器等を提供することができる。
本発明の耐応力腐食割れ性に優れた黄銅合金を材料として好適な部材・部品は、特に、バルブや水栓等の水接触部品、即ち、ボールバルブ、ボールバルブ用中空ボール、バタフライバルブ、ゲートバルブ、グローブバルブ、チェックバルブ、バルブ用ステム、給水栓、給湯器や温水洗浄便座等の取付金具、給水管、接続管及び管継手、冷媒管、電気温水器部品(ケーシング、ガスノズル、ポンプ部品、バーナなど)、ストレーナ、水道メータ用部品、水中下水道用部品、排水プラグ、エルボ管、ベローズ、便器用接続フランジ、スピンドル、ジョイント、ヘッダー、分岐栓、ホースニップル、水栓付属金具、止水栓、給排水配水栓用品、衛生陶器金具、シャワー用ホースの接続金具、ガス器具、ドアやノブ等の建材、家電製品、サヤ管ヘッダー用アダプタ、自動車クーラー部品、釣り具部品、顕微鏡部品、水道メーター部品、計量器部品、鉄道パンタグラフ部品、その他の部材・部品に広く応用することができる。更には、トイレ用品、台所用品、浴室品、洗面所用品、家具部品、居間用品、スプリンクラー用部品、ドア部品、門部品、自動販売機部品、洗濯機部品、空調機部品、ガス溶接機用部品、熱交換器用部品、太陽熱温水器部品、金型及びその部品、ベアリング、歯車、建設機械用部品、鉄道車両用部品、輸送機器用部品、素材、中間品、最終製品及び組立体等にも広く適用できる。

Claims (2)

  1. 質量比で、Cu59.5〜66.0%、Sn0.7〜2.5%、Bi0.5〜2.5%、Sb0.05〜0.6%と残部がZnと不可避不純物を含有したα+γ組織、或はα+β+γ組織を有する黄銅合金であり、前記黄銅合金成分中のSbをγ相に固溶させると共に、前記黄銅合金中のγ相が各結晶粒を包囲するときの各結晶粒に対するγ相の割合をγ相結晶粒包囲率とし、このγ相結晶粒包囲率の平均値であるγ相平均結晶粒包囲率を28%以上とすることにより、黄銅合金中腐食割れの進行速度を抑制させ、耐応力腐食割れ性を向上させたことを特徴とする耐応力腐食割れ性に優れた鉛レス黄銅合金。
  2. Se:0.01〜0.20質量%を含有した請求項1に記載の耐応力腐食割れ性に優れた鉛レス黄銅合金。
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