JP5037742B2 - 銅合金のBi溶出防止方法 - Google Patents

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Description

本発明は、合金材料に含有されるBi(ビスマス)の溶出防止方法に関し、特に、バルブ・継手又はストレーナ等の配管器材の銅合金に含有されるBiの溶出を防止する銅合金のBi溶出防止方法に関する。
近年においては、例えば、水道用のバルブ、継手等の配管器材の材料となる銅合金からの鉛の溶出を防止しつつ、切削性などの特性を向上させるために、鉛の替わりにBiを含有させることが多い。Biは、比較的毒性が低いとされているが、このBiに対しても厳しい浸出基準が設けられており、浸出試験方法、製品の形状、サイズなどによってはこの浸出基準をクリヤできない製品もある。
また、鉛の浸出基準もますます厳しくなっており、例えば、鉛レス銅合金に不可避不純物として含まれる微量の鉛であっても浸出基準を満たせないことがある。
このような状況の下、水道用に使用される配管器材には、鉛の溶出を防止した上でBiの溶出を抑えることが重要になっている。
この種の有害物質の溶出を防止するようにした技術として、例えば、特許文献1の鉛溶出防止法が知られている。同文献1には、青黄銅配管器材の接水部から鉛を除去する技術が開示されており、具体的には、0.5〜7wt%の硝酸で配管器材の接液部を表面処理することで水道水への鉛の溶出を大幅に抑制することが可能になっている。
一方、特許文献2には、鉛含有銅合金をアルカリ性のエッチング液からなる洗浄液に浸漬して表面の鉛を除去しようとした鉛溶出低減処理方法が開示されている。
特許文献3の銅合金製材の再生処理方法においては、表2より、27wt%以下の硝酸濃度による化学研磨処理液によって銅合金を処理した場合に、接水部よりBiを除去できる可能性が示唆されている。
また、前述した鉛フリー銅合金には合金中にBiを含有させないようにしたものがあり、これによってBiの溶出を抑制しようとする技術がある。
特許第3345569号公報 特許第3182765号公報 特開2008−88526号公報
しかしながら、特許文献1の鉛溶出防止法は、鉛の溶出防止を目的としたものであってBiの溶出防止を対象としたものではない。この技術においては、硝酸濃度が低いことからBiの除去効果が高くはならず、この技術をBi溶出防止技術して利用することには適していない。同文献2の処理方法においては、アルカリ性のエッチング液を洗浄液と使用しているため、このアルカリ性洗浄液により貴金属元素であるBiを効果的に除去することができない。同文献3においては、銅とBiが極めて近い電位を持つために、硝酸は銅とBiとを同様に溶かすことが記載されており(0053段落参照)、Biの優先的な除去については開示されていない。ここで、同文献3の表3には、Biも除去する旨のデータが示されているが、このデータは砂型鋳物を対象としている。砂型鋳物は表面偏析がみられ、Biも表面に多く存在することから、合金表面からのCuやBiの除去を正確に把握するには、研磨面を有する供試品によるデータが必要である。従って、同文献3は、CuやBiなどの元素に関わらず、銅合金の表面を研磨する技術に留まる。
更に、Biを含有する銅合金において、鉛の溶出を抑えるために鉛の含有量を厳格化すると工場内等で発生するリターン材や市場から回収されるスクラップ材を溶解して再利用することが難しくなり、製品のコストアップが避けられなくなる。
一方、Biを含有しない鉛フリー銅合金は、被削性に劣り、このため、鉛含有銅合金用の量産設備ではこの鉛フリー銅合金を材料とした製品を加工することが難しくなるという問題がある。しかも、Siを含有する鉛フリー銅合金の場合、リサイクルが困難であり、具体的には、バルブなどの配管器材に用いられる85−5−5−5合金などは、Siが混入すると引巣が増加して機械的性質と耐久性とが著しく悪化する。Siの含有上限は、JIS規格では0.01mass%、ASTM規格では0.005mass%であるが、実際には0.003mass%の混入で悪影響が生じるためスクラップからのSiの混入は大きな問題となる。このように、Biを含有しない鉛フリー銅合金の場合には、銅合金としての別の問題が生じるため、結果的にBiを含有させることが望ましい。
本発明は、上述した実情に鑑み、鋭意検討の結果開発に至ったものであり、その目的とするところは、微量の鉛および所定量のBiを含有する鉛レス銅合金製の配管器材等からBiの溶出を防止するBi溶出防止方法を提供することにある。
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、少なくともBiを含有する銅合金の表面に存在するBiを、4〜20mass%の濃度の硝酸によりCu、Zn、Snなどからなるマトリクスの溶解を抑制させつつBiを優先的に溶解させてBiを選択除去するBi溶出防止方法である。
請求項2に係る発明は、硝酸濃度を10〜20mass%とすることにより、Pbの溶出も抑制したBi溶出防止方法である。
請求項3に係る発明は、少なくともBiを含有する銅合金の表面に存在するBiを硝酸により除去した後、銅合金の表面にショットブラストを施すことにより、硝酸により生じた酸化物などの腐食性生物を除去し、且つ表面の光沢化を図ることができるBi溶出防止方法である。
請求項4に係る発明は、硝酸によるBi除去により銅合金表面に形成された空隙部の深さ範囲内でショットブラストを施すことにより、銅合金の内方に存在するBiの露出を抑制したBi溶出防止方法である。
請求項5に係る発明は、硝酸によるBi除去により、銅合金表面に形成された空隙部をショットブラストを施して閉塞することにより、銅合金の内方に存在するBiの露出を抑制したBi溶出防止方法である。
請求項1に係る発明によると、特に、鉛の代替としてBiを含有させて微量の鉛およびBiを含有する鉛レス銅合金製の配管器材の接水部から、硝酸によってBiを除去してこのBiの溶出を防止することができ、さらには、接水部に存在する鉛もこの酸洗浄により除去できる。
請求項2に係る発明によると、BiとPbとの双方を効果的に溶出防止することができ、銅合金の鋳造性などの機械特性を向上させつつ、人体に有害な物質の溶出を防いで安全性の高い配管器材等の製品を設けることが可能になる。
請求項3に係る発明によると、特に、鉛の代替としてBiを含有させて微量の鉛およびBiを含有する鉛レス銅合金製の配管器材から、硝酸によってBiを除去してこのBiの溶出を防止しつつ、ショットブラストを施すことで酸化物等の腐食性物質を材料表面から除去して表面の光沢化を図ることができ、硝酸の酸洗浄による変色を改善することができる。
請求項4に係る発明によると、硝酸によるBi除去により銅合金表面に形成された空隙部の深さ範囲を、ショットブラスト深さとすることで、Biの溶出基準を満足するためのショットブラストの限界条件を最適な条件に設定でき、この条件内でショットブラストを実施することで、Bi除去後の金属表面からショットブラスト後にBiが溶出することを防ぎつつ、金属表面の最低限の深さをショットブラスト処理することで光沢化を図ることが可能になる。
請求項5に係る発明によると、硝酸処理後の金属表面をショットブラストにより閉塞させることで、Bi除去により生じた空隙の開口部を塞ぐことが可能になり、Biの露出を抑制して硝酸処理によってBiの溶出を抑えた金属表面からのBi溶出防止効果を更に高めることができる。
銅合金の表面付近を示した模式図である。 合金表面からの深さとBi含有量との関係を示すグラフである。 本発明のBi溶出防止方法の処理工程の一例を示すフローチャートである。 硝酸濃度とBi、Pbとの関係を示すグラフである。 ショット時間と質量減量・研削厚さの関係を示したグラフである。 ショットブラスト後の銅合金の断面を示した顕微鏡写真である。 (a)、(b)、(c)は、銅合金の表面を示した顕微鏡写真である。 (a)、(b)、(c)は、銅合金の断面組織を示した顕微鏡写真である。 銅合金の表面を示した顕微鏡写真である。 銅合金の表面を示した顕微鏡写真である。 銅合金の表面を示した顕微鏡写真である。 銅合金の表面を示した顕微鏡写真である。 銅合金の表面を示した顕微鏡写真である。 銅合金の表面を示した顕微鏡写真である。 銅合金の表面を示した顕微鏡写真である。 銅合金の表面を示した顕微鏡写真である。
以下に、本発明におけるBi含有銅合金のBi溶出防止方法を実施形態に基づいて詳細に説明する。
このBi溶出防止方法の第1の方法は、少なくともBiを含有し、例えば、微量の鉛およびBiを含有する水道用の銅合金製のバルブや継手などの表面に存在するBiを、4〜20mass%の硝酸によりCuの溶解を抑制させつつBiを優先的に溶解させてBiを除去するようにしている。ここにおいて、優先的な溶解除去とは、銅合金のマトリクスを構成する主要元素(例えばCu)の溶解割合に比して、Biの溶出割合が多いことをいう。この場合、硝酸濃度を10〜20mass%とすることがより好ましく、このときにはBiとPbとの双方の溶出を効果的に抑制し、これらの溶出防止を図ることが可能になる。その際、表面処理時間は、5min以上が好ましい。
ここで、本実施形態における硝酸濃度に関して、例えば、20mass%硝酸とは、60mass%濃硝酸を5倍に希釈して得られる硝酸のことである。同じ20%硝酸であっても、特許文献3のように、67%濃硝酸を5倍に希釈して得られる20%硝酸もあるが、本実施形態における硝酸濃度は、同じ20%硝酸でもこの濃度とは異なる。
これは、例えば、同文献3(明細書段落21参照)の発明において、67%濃硝酸を用いて20〜27wt%濃度の硝酸を設ける場合、これを60%濃硝酸を用いた場合に換算すると、22.3〜30.2wt%濃度の硝酸になるからである。
本発明におけるBi含有銅合金のBi溶出防止方法を実生産の製品に適用する際に、最も好適な硝酸濃度となる管理濃度は、60mass%濃硝酸を用いて硝酸濃度15〜20mass%としたときであり、この場合には、特許文献3の硝酸濃度22.3〜30.2wt%と硝酸濃度が重なることはない。また、仮に、同文献3の硝酸濃度の範囲と本発明のBi溶出防止方法の硝酸濃度の範囲とが重なっていたとしても、前述したとおり同文献3にはBiを銅よりも優先的に処理することが記載されていないため、Bi溶出防止効果は期待できない。
一方、同文献1に示されている硝酸の濃度範囲についても、60%硝酸に換算した場合には0.6〜8.0%硝酸となるため、本実施形態における硝酸の濃度範囲が同文献1と重なることはない。
Bi溶出防止方法の第2の方法は、少なくともBiを含有する銅合金の表面に存在するBiを硝酸により除去した後、銅合金の表面にショットブラストを施すことにより、硝酸により生じた酸化物などの腐食性生物を除去し、且つ表面の光沢化を図るようにしたものである。
ショットブラストを銅合金表面に施す際には、硝酸によるBi除去により銅合金表面に形成された空隙部の深さ範囲内で施すことにより、銅合金の内方に存在するBiの露出を抑制するとよい。
更に、硝酸によるBi除去により、銅合金表面に形成された空隙部をショットブラストにより閉塞することにより、銅合金の内方に存在するBiの露出を抑制するようにしている。
ショットブラストを行なうための設備としては、たとえば、エプロン型、ハンガー型、ドラム型などの方式があるが、これらのうちの適宜の方式を材料の組成や製品の種類、使用目的などに応じて選択すればよい。また、ショット玉の材質も、例えば、鋼、ステンレス、ガラス、砂などの各種の材料があるが、これらの中から適宜選択して使用できる。その場合、研削量が多くなるとワーク表面にあらたなBiが露出するため、ワーク表面との衝突エネルギーを少なくするために小径のショット玉を用いたり、ワーク表面を削らずに圧縮する効果を得るために、なるべく球形のショット玉を使用することが望ましい。
ショットブラストのショット玉は、例えば、φ0.1〜0.6mm、より好ましくはφ0.3〜0.6mmの径とすることがよく、これにより酸化スケールによる変色を効果的に除去できる。
ショットブラストを施す場合には、合金中に分散して存在するBi相の平均結晶粒径をR(μm)、Bi含有量をX(mass%)としたときに、ショットブラストによる研磨によって除去される合金の厚さTとしては、厚さT=0.1〜0.65R/X(μm)とすることでBi溶出を抑制可能になる。このとき銅合金からのBiの浸出量を100ppb未満に抑えることが可能になる。
ショットブラストに関して、Biの溶出量を抑制するための条件をより詳しく述べる。図1においては、CAC911からなる銅合金の表面付近の模式図を表しており、このCAC911は、表1の化学成分値よりなっている。
Figure 0005037742
図1において、硝酸による表面処理の後工程となるショットブラストによる研磨量(深さ)は、大きくなるほど表面に露出するBiの面積比が大きくなる。ショットブラストのショット玉は、図において合金の表面の斜線に示した範囲に当たることになる。
この場合、合金表面からの深さDと合金中におけるBi含有量との関係は、図2の傾斜に示すように、合金表面からの深さが深くなるにつれてBi含有量が少なくなり、この傾斜には、逆偏析と呼ばれるBiが合金表面に偏析していることが反映されている。
この図2において、ショットブラストで合金表面を削るときの最大深さDmaxを、硝酸によりBiが除去された後の合金表面からの深さtよりも小さくすることにより、硝酸にでBiを除去した後に、ショットブラストの研磨によりあらたにBiが銅合金表面に表出することを防ぐことができる。図2において、2点鎖線は、硝酸による処理を施さない場合の仮想線を示している。
具体的には、Bi相の結晶粒径をR(μm)としたときに、マトリクスの腐食を無視した場合、硝酸による最大腐食深さはR(μm)である。よって、研磨量がR(μm)を超えると、新たなBi相が合金表面に完全に露出することになる。また、Bi相の結晶粒径Rが小さいほど研磨量を小さく抑える必要があるので、エネルギーの小さい研磨方法を選択する必要がある。
例えば、公衆安全衛生に関する規格であるNSF浸出試験におけるBi溶出量の基準値は100ppbであり、硝酸による表面処理後の製品(以下、表面処理製品という)の場合にはおよそ100〜150ppbとなる。従って、この溶出量を50%程度(50〜75ppb)に抑制すれば十分に基準値を満足することができる。換言すると、合金表面のBiの面積比率を50%にすれば基準値を満足することが可能になり、そのためにはショットブラストによる研磨量をR/2未満にすれば良い。
また、Biの浸出量に影響を与える因子として、合金のBi含有量があげられる。合金のBi含有量とBi溶出量とは比例の関係にあるので、Bi含有量が1.3(mass%)であるCAC911を基準にすると、Bi含有量がXである合金のBi溶出量はX/1.3倍となる。従って、ショットブラストにより研磨できる量は、1.3/X倍となる。
これらのことから、平均結晶粒径がR(μm)、Bi含有量がX(mass%)の合金における表面処理製品のBi含有量を50〜75ppbに抑制するためのショットブラストによる研磨量は、R/2×1.3/X=0.65R/Xと表され、これが研磨量の上限値となる。
研磨量の下限値は、変色が除去できるショットブラスト条件における研磨量とすればよい。量産での仕上がりムラを考慮すると最低1minのショット時間が必要であるため、φ0.3mmステンレスショットで、1minのショット時間における研磨量0.1μmを下限に設定する。
以上のことより、研磨により除去される厚さTを前述の0.1〜0.65R/X(μm)とすることで、NSF浸出試験をクリヤでき、Biの溶出量を抑えた製品を提供することが可能になる。
ショットブラストを施す際に、Biの溶出防止に加えてPbの溶出を抑制する場合には、合金中に分散して存在するBi相の平均結晶粒径をR(μm)、Bi含有量をY(mass%)としたときに、研削により除去される厚さTを、厚さT=0.1〜0.141R/Y(μm)としてPb溶出を抑制する。この場合、銅合金からのPbの浸出量を15ppb未満に抑えることが可能になる。
Pbの溶出量を抑制するためのショットブラスト条件を更に詳しく述べる。Pbを0.47(mass%)含有する場合の表面処理製品のPb溶出量は50ppb程度になり、Pbの基準値は15ppbであるので、このPb溶出量を15/50にする必要がある。また、Pbは合金中でBi相と合金化しているので、仮に、Pb相の平均結晶粒径を示すとすれば、Bi相の平均結晶粒径Rと同様に表される。このため、Pbの露出を15/50に抑制するためには、ショットブラストによる研磨量を15/50×R未満にすれば良い。
また、Biの場合と同様に、Pb溶出量はその含有量に比例するので、Pb含有量が0.47(mass%)であるCAC911を基準にすると、Pb含有量がYである合金のPb溶出量はY/0.47倍となり、ショットブラストにより研磨できる量は0.47/Yとなる。
これらのことから、Biの平均結晶粒径がR(μm)、Pb含有量がY(mass%)の合金における処理後製品のPb溶出量を15ppb未満に抑制するためのショットブラストによる研磨量は、15/50×R×0.47/Y=0.141R/Yと表され、これが研磨量の上限値となる。
研磨量の下限値は、Bi溶出防止を図る場合と同様に、φ0.3mmステンレスショットで、1minのショット時間における研磨量0.1μmを下限に設定する。
以上のことより、研磨により除去される厚さTを前述の0.1〜0.141R/Y(μm)とすることで、NSF浸出試験をクリヤでき、Pbの溶出量を15ppb未満に抑えた製品を提供することが可能になる。
更に、研磨により除去される厚さとして、合金の厚さT=0.1〜0.047R/Y(μm)としてPb溶出を抑制することで、銅合金からのPbの浸出量をより低い5ppb未満に抑えることもできる。
これは、例えば、Pbの溶出基準がより厳しい場合に対応させたものである。この場合のBiの平均結晶粒径がR(μm)、Pb含有量がY(mass%)の合金の表面処理製品のPb溶出量を5ppb未満に抑制するためのショットブラストによる研磨量を前記と同様に表すと、5/50×R×0.47/Y=0.047R/Yと表され、これが研磨量の上限値となる。
よって、研磨により除去される厚さTを0.1〜0.047R/Y(μm)とすることで、NSF浸出試験をクリヤでき、Pbの溶出量を5ppb未満に抑えた製品を提供することが可能になる。
本発明のBi溶出防止方法により鉛レス銅合金の表面処理をおこなう場合、具体的には、例えば、図3のフローチャートに示した処理工程により銅合金製の配管器材等を処理することが望ましい。この場合、図に示すように、本発明のBi溶出方法における表面処理工程とショットブラスト工程とに加えて、本発明が対象とする処理工程として、水洗工程、洗浄工程、乾燥工程を含んでおり、水洗工程、表面処理工程、洗浄工程、乾燥工程、ショットブラスト工程の順序により銅合金の表面処理をおこなうようにする。本発明のBi溶出防止方法を、図3のフローチャートに示した順序以外の処理工程で実施するようにしてもよく、また、適宜の処理工程を追加したり、処理工程を省略することもできる。
水洗工程は、銅合金の表面処理を実施する前に、この金属表面から埃や塵などを除去するためにおこなわれる。水洗工程としては、例えば、銅合金製配管器材を図示しない槽内に投入し、手動にて揺動させた後に浸漬することによりおこなうようにすればよい。銅合金の鋳肌表面の凹凸が激しく、一度の水栓工程では除去が十分でない場合には表面にこびりついた埃、塵等が以降の表面処理工程で反応むらや表面処理液の劣化を引き起こす原因となることがある。このため、必要に応じて、水栓工程を再度実施したり、超音波洗浄との並用や脱脂剤を使用してもよい。
表面処理工程は、前述したとおり、硝酸により銅合金表面のBi、Pbを除去するためにおこなわれ、この場合、硝酸濃度を4〜30mass%、より望ましくは10〜20mass%の硝酸濃度とすることで、Bi、Pbの溶出防止効果を高めることが可能になっている。
洗浄工程は、水洗により実施され、この水洗により銅合金の表面を処理した硝酸はもとより、この表面処理により銅合金表面に生じた腐食性生成物、例えば、黒色の酸化物が取り除かれる。洗浄工程は、ショットブラスト工程の前処理工程であり、腐食生成物をできる限り取り除いておく必要があることから、超音波を併用した水洗とすることが好ましい。洗浄工程後の銅合金表面は、銅本来の光沢が無く、茶色に変色した状態になる。
洗浄工程後には、図3に示すように、乾燥工程において洗浄液を拭き取るようにする。この乾燥工程は、必ずしも加熱手段は必要なく、自然乾燥程度でよい。
続いて、ショットブラスト工程において、銅合金表面の腐食生成物を除去し、且つ、茶色の変色を除去して、表面処理前における銅合金の光沢に近づける。Biが除去された後の空隙部は、その開口部がショット玉により閉塞される。
なお、加工工程では、例えば、銅合金製のバルブ等の製品であれば、管接続部のねじ加工や弁座部の切削加工などの適宜の加工などを実施する。
本発明のBi溶出防止方法により、BiやPbを効果的に溶出防止できる材料としては、例えば、青銅系のBiを含有する鉛フリー銅合金として、CAC901、CAC902、CAC903B、CAC904、CAC911、CAC912などがある。また、青銅系の鉛フリー銅合金で、Biを含有せずPbのみを効果的に溶出防止できる合金としては、CAC411、CAC804などがあり、更に、連続鋳造合金として、CAC411C、CAC804C、CAC901C、CAC902C、CAC903C、CAC904C、CAC911Cなどにも適用できる。具体的な成分範囲として、例えば、JIS H5120におけるCAC901、CAC902、CAC903Bを対象とする一例として、Cu:83.5〜90.6質量%、Sn:4.0〜6.0質量%、Zn:4.0〜8.0質量%、Bi:0.4を超え3.5以下質量%、及び不可避不純物から構成されるものを対象とする。
また、JIS H5120におけるCAC911を対象とする一例として、Cu:83.0〜90.6質量%、Sn:3.5〜6.0質量%、Zn:4.0〜9.0質量%、Bi:0.8〜2.5質量%、Se:0.1〜0.5質量%、及び不可避不純物から構成されるものを対象とする。
また、JIS H5120におけるCAC912を対象とする一例として、Cu:83.3〜90.4質量%、Sn:2.5〜5.5質量%、Zn:5.0〜9.0質量%、Bi:0.8〜1.5質量%、Se:0.1〜0.5質量%、Ni:0.2〜1.0質量%、P:0.1〜0.25質量%、及び不可避不純物から構成されるものを対象とする。
更に、アメリカCDA規格におけるC89325を対象とする一例として、Cu:84.0〜88.0質量%、Fe:0.02〜0.2質量%、Sn:9.0〜11.0質量%、Zn:1.0〜5.0質量%、Bi:2.7〜3.7質量%、Ni:0.3〜1.0質量%、Sb:0.1〜0.5質量%及び不可避不純物から構成されるものを対象とする。
また、アメリカCDA規格におけるC89837を対象とする一例として、Cu:84.0〜88.0質量%、Fe:0.2〜0.5質量%、Sn:3.0〜4.0質量%、Zn:6.0〜10.0質量%、Bi:0.7〜1.2質量%、Ni:0.3〜1.0質量%、Sb:0.1〜0.5質量%及び不可避不純物から構成されるものを対象とする。
また、本発明のBi溶出防止方法により、BiやPbを効果的に溶出防止できる黄銅系の材料としては、例えば、C6803等のBi−Se系鉛フリー黄銅材料、C6801等のBi系鉛フリー黄銅材料などがある。
単体のBiや銅は、酸化性の酸である硝酸に溶けることが知られているが、本発明のBi溶出防止方法で処理することにより、適正な濃度の硝酸において近い電位を有する銅とBiとを処理するにもかかわらず、Biを優先的に溶解できた。更に、本発明により表面処理を施した銅合金は、目的とする浸出基準値を十分に満足することが確認された。
その際、硝酸のみによる表面処理を施した銅合金は、CuOの酸化スケールにより黒褐色に変色し、そのままでは製品としては使用することが難しい。この酸化スケールは、超音波洗浄と化学研磨とにより除去することは可能ではあるが、化学研磨を施したワーク表面は秀麗にはなるがショットブラストを最終工程とする通常の製品とは色合いが異なることに加え、表面が非常に活性であることから手垢などにより容易に変色して取り扱いが非常に困難になるという問題がある。
そこで、表面処理後にショットブラストを実施することにより変色を防止し、その後、加工を行なうことで、鉛およびBiの浸出基準を満足させると同時に、秀麗かつ安定な表面皮膜を有する鉛レス銅合金製の配管器材等を得ることが可能になる。
なお、特許文献1〜3の先行技術は、配管器材における加工済部品、例えば、鋳物素材にねじ加工を施したバルブを対象としているのに対し、本発明は、加工を施す前の部品、すなわち配管器材に用いる鋳物や鋳造直後の素材を対象としている点で、処理対象が異なっている。本発明のBi溶出防止方法は、例えば、バルブ、継手、管、水栓、給水・給湯用品等の水接触製品に適している。その他、本発明のBi溶出防止方法に好適な部材・部品は、特に、バルブや水栓等の水接触部品、即ち、ボールバルブ、ボールバルブ中の空用ボール、バタフライバルブ、ゲートバルブ、グローブバルブ、チェックバルブ、給水栓、給湯器や温水洗浄便座等の取付金具、給水管、接続管及び管継手、冷媒管、電気温水器部品(ケーシング、ガスノズル、ポンプ部品、バーナなど)、ストレーナ、水道メータ用部品、水中下水道用部品、排水プラグ、エルボ管、ベローズ、便器用接続フランジ、スピンドル、ジョイント、ヘッダー、分岐栓、ホースニップル、水栓付属金具、止水栓、給排水配水栓用品、衛生陶器金具、シャワー用ホースの接続金具、サヤ管ヘッダー用アダプタ、水道メーター部品、その他の部材・部品に広く応用することができる。
鉛とBiを効果的に除去できる硝酸濃度と処理時間とを確認するために、前述の表面処理工程において硝酸濃度と処理時間を変えて銅合金の鋳肌表面に表面処理を施し、その結果を確認した。使用する銅合金を供試品1とし、この供試品1の化学成分値を表2に示す。供試品1は、表に示すようにPbを0.47mass%と高くしており、これによってCAC911の組成範囲から外れている。通常、CAC911のPbは、0.05〜0.1mass%と微量であるが、Pbを高い含有割合にすることによってPbの除去状態の傾向をつかみやすくなる。このため、この供試品1のPbの含有割合を高くした。
Figure 0005037742
表面処理後のXGT(蛍光X線分析装置)による供試品1の鋳肌表面におけるBiの測定結果を表3、Pbの測定結果を表4にそれぞれ示し、これらを図4のグラフに示す。表3、表4中におけるBi、Pbの含有量の割合を示す数字の単位はmass%である。
Figure 0005037742
表3の結果より、Biを除去できる硝酸濃度は4〜40mass%であり、より好ましくは10〜25mass%であることが確認された。このときの処理時間は、5min以上、より好ましくは10min以上であるとよく、この条件で表面処理を実施することでBiを効果的に除去できることが確認された。
Figure 0005037742
表4の結果より、硝酸によりPbを除去できることが確認された。
Pbの除去に関しては、硝酸濃度が低いほうが好適であることが従来より知られているため、PbとBiとの両者を含有する銅合金の場合にBiを効果的に除去するためには、表1、表2の結果より、硝酸濃度を10〜20mass%、処理時間を10min以上とする条件によって表面処理を実施することが望ましいことが確認された。
次に、CuやZnなどの組成からなる銅合金の硝酸による処理データを表5、表6に示し、BiとPbを含有する銅合金の表面に存在するBi、Pbを優先的に溶解させてBi、Pbを除去する点を確認する。表5、表6は、銅合金の組成における硝酸濃度と処理時間のデータを示す。
Figure 0005037742
Figure 0005037742
表5、表6におけるXGTによるデータによると、BiとPbが優先的に溶解されてBiとPbが選択除去されていることが確認された。表5において、Cuの値は、未処理(硝酸濃度0%、処理時間0min)における87.8wt%に対し、硝酸濃度を4%、6%と上げて処理しても、Cuは88.8wt%、88.1wt%と大きな変化は無い(数値が若干上がっているのは、XGT分析における測定誤差である。)。これに対し、Biの値は、未処理(硝酸濃度0%、処理時間0min)における1.06wt%に対し、硝酸濃度を4%、6%と上げて処理すると、Biは0.34wt%、0.34wt%と減っており、Biが優先的に除去されている状態が示されている。
また、Pbの値も、未処理(硝酸濃度0%、処理時間0min)における0.41wt%に対し、硝酸濃度を4%、6%と上げて処理すると、Pbは0.08wt%、0.08wt%と減っており、Pbも優先的に除去されている状態が示されている。
硝酸濃度が25%以上となると、Pbが0.14wt%と増え、Pbの溶解性能が低下する傾向を示す。また、硝酸濃度が30%以上となると、Biが0.39wt%と増え、Biの溶解性能も低下する傾向を示す。
また、Biを選択除去するための硝酸濃度を4〜30mass%とする根拠について表3乃至表6に基いて説明する。
NSF浸出試験におけるBi溶出量の基準値は100PPbであり、硝酸による表面処理前の製品の場合は、およそ100〜150PPbとなる。したがって、この溶出量を50%程度(50〜75PPb)に抑制すれば十分に基準値を満足することができる。よって、Biの面積率は、表3において、1.06%であるからBiの面積率を50%以下にすれば良いことが理解されるので、Biの面積比率の上限は0.53%以下となる。
そこで、Biの溶出基準値が硝酸濃度3%の場合は、0.65%となり、硝酸濃度40%の場合は、0.68%となるため、不合格である。一方、Biの溶出基準が硝酸濃度4%の場合は0.34%であり、硝酸濃度30%の場合は、0.39%であるから、何れも合格である。したがって、Biを優先的に溶解させてBiを選択除去する硝酸を4〜30mass%の濃度にすることが必要である。表7と図9におけるCAC911 20%硝酸10min処理前後のMini−SEM観察結果によって、Biが選択除去されていることが確認できた。
Figure 0005037742
表7の調査方法は、20%硝酸200mLにCAC911(研磨面を有する供試品の表面積32.4cm)を10min間浸漬した。表面処理後のSn、Zn、Bi、Se、Pb、Cuの溶出量を分析し、これを百分率に換算して各元素の溶出割合を求めた。念のため、処理前の20%硝酸液(ブランク)の分析値も確認した。
表7の調査結果によると、ブランクにコンタミネーションは見られない。供試材の化学成分値と比較して、表面処理後の20%硝酸ではCuの溶出割合よりもBiとPbの溶出割合が高く、BiとPbが優先的に溶解されてBiとPbが選択除去されていることを確認した。これによると、従来は硝酸はCuとBiを略同様に溶解すると考えられていたが、硝酸の濃度を4〜20mass%、より好ましくは10〜20mass%とすることにより、Cuの溶解を抑制させつつ、Biを優先的に溶解できることがわかる。また、表7又は図9に示すように、Se、Znは硝酸にはほとんど溶けないことがわかる。
ショットブラスト時における最適なショットブラスト時間、ショット玉の径を測定するために、表5に示した化学成分値より成るCAC911鋳物を供試品2とし、この供試品2に20mass%硝酸で10min処理した後に、表6に示した条件にてショットブラスト加工を施し、ショット肌表面のBiとPbをXGTにより分析した。供試品2の化学成分値を表5、ショットブラストの条件とショットブラスト後のBi、Pbの測定結果を表6にそれぞれ示す。
Figure 0005037742
Figure 0005037742
表6の結果より、ショットブラスト時間の増加とともにBiが増加する傾向がみられた。このとき、XGTは、表面以下の数μmに存在するBiを検出するため、ショットブラストによりBiが表面に露出したか否かは確認されなかった。また、ショット玉の粒径や材質の違いによる傾向は確認されなかったが、衝突エネルギーがより小さい小径のショット玉が、ショットブラストの条件としてはより好ましいと言える。
続いて、表2の化学成分値の供試品1に対して浸出試験を行い、ショットブラスト時間の増加とともにBiが増加する傾向が浸出性能に及ぼす影響を検証した。供試品1に対して実施したショットブラストの処理時間と、浸出試験によるBi、Pbの浸出量との関係を表7に示す。
Figure 0005037742
表7に示した1LあたりのBi、Pbの浸出量の結果より、少なくともショットブラスト時間が5minまでの間においては、ショットブラスト時間の増加によりBiおよびPbの浸出量が増加することはないことが確認された。
表7の結果においては、Pbの浸出量が高くなっているが、これは、前述したように供試品1のPbの含有割合を高く設定したためである。そのため、表8に示すように、Pbの含有割合を供試品1よりも低減させた銅合金を供試品3とし、この供試品3に対して上記と同様の浸出試験を行ったところ、Pbの浸出量が1.3ppbとなり、5ppb以下の望ましい浸出量に低減することができた。この場合、Biの浸出量は、25.4ppbであり、供試品1の場合と同様にその浸出量が低くなっている。
Figure 0005037742
ショットブラスト処理後の銅合金の質量減量を測定することにより、ショットブラストにより削り取られた鋳肌表面の厚みを推測する。このときの銅合金としては供試品1を用い、その個数を84個、表面積を112.95cm、比重を8.75とした。一方、ショットブラスト時におけるショット玉は、φ0.3mmステンレスショット、φ0.6mmスチールショットとした。このとき、ショットブラストによる研削厚さ(μm)=質量減量(g)/(銅合金の表面積×比重)×10000となり、この式によるショットブラスト時のショット時間と質量減量・研削厚さの関係を図5に示す。
図5より、例えば、φ0.3mmステンレスショットを3min施したときの研削厚さ(研削量)は、少なくとも0.5μm以下になる計算となる。しかし、実際に供試品1の表面を観察すると、図6の写真に示すように、表面がおよそ5μm程度削られた結果となり、質量減量からの計算値とは異なる傾向を示した。これは、ショットブラストにより材料表面を押し潰す作用が働いたためと考えられ、その結果、材料表面を研削するときの研削厚さよりも大きく削っているように見えるものと考えられる。このように、ショットブラストによる研削量を実際に測定することは困難であるが、上記したように、質量減量により予測することは可能である。
ここで、ショットブラストのショット玉が材料表面を押し潰す作用が浸出性能に与える影響を考察する。図7においては、供試品1の表面を拡大した顕微鏡写真を示しており、図7(a)においては、鋳放し表面、図7(b)においては、図7(a)を20mass%硝酸で10min処理した状態、図7(c)は、図7(b)をφ0.3mmのステンレスショットで5min処理した状態を示している。
図7(a)では、白色で示されるBiが多く存在することが確認された。図7(b)においては、20mass%硝酸による表面処理で白色部が消失してBiが除去され、また、同時に、ショット肌が除去されてショット肌直下の無垢の合金層が見られる。図7(c)においては、ショットにより図7(b)の表面が潰されてショット肌に戻ってはいるものの白色部はほとんど見られない。この図7(c)に見られる白色物の多くはSEM(電子顕微鏡)特有のエッジ効果により見られるものや、Biとは異なる付着物などである。
このように、ショットブラストにより1μm程度表面が削り取られた場合、露出するBi以上のBiの存在は無く、5μm程度の表面押し込みによりBiが表面に露出することは無いことが確認された。
図8においては、供試品1の顕微鏡写真の断面組織を示しており、図8(a)においては、20mass%硝酸で表面処理した断面組織、図8(b)、図8(c)においては、図8(a)をφ0.2mmのステンレスショットで3min処理した後に、異なる位置で測定した断面組織を示している。
図8(a)においては、上部に黒色の穴が見られる。これは、もともとBiが存在していた箇所であり、このBiが20mass%硝酸により除去されたものである。この場合、Biの存在形態によっては硝酸が浸透しづらくなって穴の奥に硝酸により溶け切れないBiが残存する可能性もある。しかし、図8(b)、図8(c)に示すように、ショットブラスト後の表面にはBiが存在していた穴の存在がほとんど確認されなかった。これは、ショットブラストで合金表面を圧縮することにより穴の開口部が塞がれたものと考えられる。
このように、本来は変色除去を主目的とするショットブラストには、穴の奥底に残存するBiの溶出を抑制する役割も確認された。ただし、ショットブラストの時間を長くすると、表面が削られて新たなBiが露出するため、変色を除去できる程度にショット時間を短くすることが好ましい。
本発明を対象とする各種の銅合金を確認するため、以下の実験を実施した。
テストピースの表面積は60mmであり、試験条件は、硝酸濃度20%、処理時間10min、テストピースの表面を分析した。BiとPbの存在をXGT分析(X線分析)で行った。その結果を表12〜表14に示す。
Figure 0005037742
Figure 0005037742
Figure 0005037742
表11、表12、表13によると、全ての組成でビスマスと鉛が除去されることが確認された。従って本発明は、少なくとも以下の成分範囲を含有する対象合金であることが理解できる。
Cu:57.7〜90.1
Sn:0.00〜9.40
Zn:0.12〜40.55
Bi:0.28〜4.55
Se:0.00〜0.78
Sb:0.00〜0.21
P:0〜1380ppm
Pb:0.01〜0.36
Ni:0.00〜22.07
Fe:0.00〜0.87
Si:0.00〜3.09
Al:0.00〜0.72
B:0〜16ppm
Mm:0〜13ppm
一方、合金によって、Biの除去率に差があることから、表面のBiの分布をMini-SEM(走査型電子顕微鏡)により定性的に確認した(図10〜16参照)。この結果によると、全ての銅合金の組成でBiとPbが除去されることが確認された。

Claims (5)

  1. 少なくともBiを含有する銅合金の表面に存在するBiを、4〜20mass%の濃度の硝酸によりCuの溶解を抑制させつつBiを優先的に溶解させて当該Biを選択除去することを特徴とする銅合金のBi溶出防止方法。
  2. 前記硝酸濃度を10〜20mass%とすることにより、BiとPbの溶出を選択除去した請求項1に記載の銅合金のBi溶出防止方法。
  3. Biを含有する銅合金の表面に存在するBiを硝酸により除去した後、銅合金の表面にショットブラストを施すことにより、硝酸により生じた酸化物などの腐食性生物を除去し、且つ表面の光沢化を図ることを特徴とする請求項1又は2記載の銅合金のBi溶出防止方法。
  4. 硝酸によるBi除去により銅合金表面に形成された空隙部の深さ範囲内で前記ショットブラストを施すことにより、銅合金の内方に存在するBiの露出を抑制した請求項3に記載の銅合金のBi溶出防止方法。
  5. 硝酸によるBi除去により、銅合金表面に形成された空隙部をショットブラストを施して閉塞することにより、銅合金の内方に存在するBiの露出を抑制した請求項4に記載の銅合金のBi溶出防止方法。
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