JP3830841B2 - バルブ・管継手等の配管器材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、黄銅製の水道用バルブ、給水給湯用バルブや管継手、ストレーナ或はその他の配管器材を酸洗浄して水道水などの流体が接液しても鉛が溶出しないようにして鉛溶出基準を満たすようにした配管器材と耐脱亜鉛性にも優れている配管器材に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、水道用、給水給湯用の配管には、バルブ、管継手、ストレーナ或はその他の配管器材が設けられており、これらの配管器材は、鋳造性、機械加工性並びに経済性に優れた青銅や黄銅などの銅合金製のものが多く用いられている。
【0003】
特に、青銅や黄銅製のバルブや継手は、青銅にあっては鋳造性や機械加工性を、黄銅にあっては切削性や熱間鍛造性等の特性を良好にするため、鉛(Pb)を所定量添加した合金が使用されている。
しかし、このような鉛を含有した青銅・黄銅製のバルブに水道水などの流体を供給すると、バルブの接液部表面層に析出している鉛含有金属の鉛部分が水道水に溶出することが考えられる。
そこで、従来より飲用に供せられる水道水は、特定の方法によって行う評価検定方法によって、鉛溶出の水質基準が規定され、これに適合するものでなければならない。
【0004】
鉛は人体に有害な物質であることから、その溶出量は、極力少なくする必要があり、最近は、バルブ等の配管器材における鉛溶出の水質基準の規制が更に厳しくなりつつある。
【0005】
このような状況下において、これらの条件を満足するバルブ等の配管器材の開発が切望されているが、これまでは上記の課題点を有効に解消するような鉛溶出防止方法は提案されていない。
更に、鉛の新たな代替元素として、毒性が無いとされるビスマス(Bi)、又はテルル(Te)を少量添加し、上記特性を鉛含有の銅合金並みに向上させた技術も知られているが、希少金属であるため製造コストが高く、汎用的ではない。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みて鋭意研究の結果開発に至ったものであり、鉛を含有した銅合金製の配管器材の使用に際して、従来の基準と比較して鉛溶出量を大巾に削減することを低コストで可能とした技術を提供することを目的としたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、Cu 58.0 〜 63.0 %、Pb 0.5 〜 4.5 %、P 0.05 〜 0.25 %、Sn 0.5 〜 3.0 %、Ni 0.05 〜 0.30 %を含有し、残部がZnと不可避不純物からなる組成(以上重量%)を有し、かつ前記Pと前記Snの組成比をP(%)×10=(2.8〜3.98)(%)−Sn(%)となるように配分した銅合金であり、この銅合金製配管機材の少なくとも接液部を、硝酸にインヒビターを添加した洗浄液で洗浄して、当該接液部表面層の脱鉛化と共に、同表面層の銅表面に皮膜を形成して硝酸による腐食を抑制するようにしたバルブ・管継手等の配管機材である。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記インヒビターとして塩酸を用いた請求項1に記載のバルブ・管継手等の配管機材である。
請求項3に係る発明は、前記インヒビターとしてベンゾトリアゾールを用いた請求項1に記載のバルブ・管継手等の配管機材である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明における銅合金製配管器材をバルブに適用した実施の形態を図面に従って説明する。
図1は、バルブ3の酸洗浄を工程毎に示した図であり、単位時間当りN個のバルブ3がバルブ製造工程10より製造されると、N個のバルブ3は1ユニットとして、次工程の脱脂・洗浄工程11へ搬送される。
脱脂・洗浄工程11において、有機溶剤液が満たされた容器に1ユニットのバルブ3を浸漬し、超音波洗浄を行い、乾燥工程12でバルブ3の表面に付着した油脂分を取り除くことで、後述する酸洗の効果を高めている。
乾燥工程12では、脱脂・洗浄工程11で脱脂後のバルブ3を自然乾燥、或は強制乾燥を行い、有機溶剤を充分揮発させる。これは、後段の酸洗浄工程13に有機溶剤が混入することで、バルブ3の表面に疎水性の油膜が残り、部分的に鉛溶出除去を阻害したり、酸濃度を変化させ適切な酸洗浄が行われなくなることを防止するためである。なお、脱脂・洗浄工程11の終了後、有機溶剤がただちに揮発するのであれば、この工程は省略できる。
【0010】
次に、酸洗浄工程13では、1ユニットのバルブ3を酸洗し、表面の鉛を除去するもので、これについては後述する。
酸洗浄工程13で鉛を除去した後に、水洗工程14で1ユニットのバルブ3に付着している酸を洗い流す。なお、本工程は、水洗のかわりに酸を中和させる薬剤を使用した中和工程であっても同様な効果を奏する。
そして、1ユニット分の水洗が終了したタイミングで、バルブ製造工程10では、次の1ユニットのバルブ3が製造され、以後、上述した工程を繰り返す。
このように、バルブ3の表面の鉛を除去する鉛侵食工程15の各工程は、1ユニットを同時に処理するバッチ処理を行っている。特に、酸洗浄工程13では、N個分のバルブ3を一度に浸漬する大容量容器を設けているため、洗浄液2の濃度バラツキが少なくなり、品質を一定にすることが可能となる。
また、鉛侵食工程15のバッチ処理は、バルブ製造工程の生産能力や表面鉛の除去程度に応じて調整されている。調整の対象としては、例えば、1ユニットのN個数や酸洗浄工程13の洗浄時間である。
【0011】
次に、酸洗浄工程13について、図2乃至図5を用いて以下に詳述する。
図2は、バッチ式酸洗浄を示す概略工程図である。同図において、容器1内に酸を含有する洗浄液2(以下、単に洗浄液という)を入れ、一対の棒状のバルブ保持部材5に1ユニット分の鉛を含有した青銅・黄銅製のバルブ3のハンドル部を掛止し、更に、バルブ保持部材5の両端部を容器1の両壁に掛止することで、洗浄液2内に浸漬する。この状態で、バルブ3はハンドル及びステムの一部を除いて殆どが液中に浸漬するように洗浄液2の液面高さを調整している。
【0012】
この場合、洗浄液2を入れた容器1内で超音波洗浄4、或いはバブリング(図示せず)を行って、鉛の侵食を促進させる。
そして、予め設定された時間の酸洗浄が終了すると、バルブ保持部材5を引き上げて1ユニット分のバルブ3を洗浄液2から取り出し、次工程へ搬送する。
【0013】
本実施形態によれば、バルブ3の完成品を酸洗浄するため、既存するバルブについても対応可能で、新しい鉛溶出基準に準拠した変更も低コストでできる。また、一度に1ユニット分のバルブ3を同時に酸洗浄するので、製品バラツキがないという利点がある。
なお、本実施形態では、パッキンやガスケット等金属以外の部品も洗浄液2に浸漬されるため、酸洗浄時間や酸濃度によっては、上記部品の劣化も考慮され、その場合にはフッ素ゴム等の耐薬品性材質の部品を用いれば良い。
【0014】
使用済み洗浄液2のメンテナンスは、以下のように行われる。
容器1内の使用済み洗浄液2を一定量抜き取り、加熱処理を行い濃縮状態にすることで硝酸鉛(Pb(NO3)2)等の鉛化合物を沈殿させ、フィルタ等で濾過して固体の硝酸鉛を産業廃棄物として処理する。一方、濾過後の洗浄液2に水道水或いは純水と共に硝酸を加えて設定濃度及び設定液量に調整し、新規の洗浄液2として容器1内へ戻して次の酸洗浄に備える。
【0015】
このように、酸洗浄の都度或いは定期的に一定量の洗浄液2をメンテナンスして、洗浄液を品質管理する。この方法によれば、洗浄液2をリサイクルできるので、製造コストを安価にできるほか、産業廃棄物を大幅に少なくすることができる。
【0016】
図3は、バッチ式酸洗浄の他の実施形態を示している。同図において、図2と同じ構成については、同符号を記している。
本実施形態では、バルブ製造工程10内で製造されたバルブ3を構成する接液部品、例えば、ボディ3a、ボンネット3b等を仕切りのあるカゴ6に入れ、洗浄液2内に浸漬して酸洗浄する。そして、予め設定された時間の酸洗浄の後、カゴ6を引き上げて1ユニット分の接液部品を洗浄液2から取り出し、一連の鉛侵食工程15の終了の後、最後にバルブ3を組み立てる。
これによれば、バルブ3内に組み込まれる標準ゴム材質のNBRやEPDMで形成されたパッキンやガスケットの酸洗浄による劣化を一切考慮することがなく、品質管理が容易になる利点がある。
【0017】
次に、個別式酸洗浄の実施形態を説明する。
個別式酸洗浄は、バルブ製造工程10で順次製造されるバルブ3を1ユニット分蓄積することなく、そのまま鉛侵食工程15で処理するものである。図4は、酸洗浄工程13の概略工程図であるが、他の工程も基本的に同様の構造である。
同図において、矢線方向に送り出されるバルブ保持ベルト7にバルブ3が釣り下げられて搬送され、容器1内の洗浄液2に順次浸漬され、予め設定された時間の酸洗浄が行われる。即ち、バルブ下面が浸漬してから最後に引き上げられるまでの時間が酸洗浄時間となるよう調整されている。
なお、容器1は容量を十分に大きなものとするか、或いは常時、洗浄液2のメンテナンスをすることで洗浄液2の厳密な濃度管理を行っている。
【0018】
図5は、個別式酸洗浄の他の実施形態を示している。同図において、左方のバルブ搬送ベルト9によって搬送されてきたバルブ3が、取り付け位置で一対のバルブ保持部材8aに取り付けられると、ハブ8から配管8bを通して供給される洗浄液2がバルブ保持部材8aを介してバルブ3の流体流路を流れて内面の接液部分のみを酸洗浄する。
ハブ8は、所定の角速度で矢印方向に回転し、取り外し位置に達すると、そこでバルブ3はバルブ保持部材8aから取り外され、右方にあるバルブ搬送ベルト9で次工程へ搬送される。ここで、バルブ3が取り付けられてから取り外されるまでの1サイクル時間は、酸洗浄時間となるよう調整され、ハブ8の角速度もこの時間によって規定されている。
なお、バルブ保持部材8aはフッ素ゴムを使用し、配管8bはテフロン(登録商標)ライニングされ、耐酸性となっている。
【0019】
本実施形態によれば、酸洗浄工程13の省スペース化を図ることが可能となるほか、バルブ3の流体流路の接液部分のみを酸洗浄することができるので、製造コストを低減し、かつ廃液量も極力少なくできる利点がある。また、酸洗浄によって変色が生じても美観を損なわず、後述するインヒビターを不要とすることができ、その場合は、一層のコスト低減を図ることができる。
以上説明した実施形態は、製造コストや品質管理等の製造条件、或いは産業廃棄物処理等の外部環境への対応を総合的に勘案して適宜選択するか組み合わせることが可能である。
【0020】
ここで、超音波洗浄4、或はバブリングによる鉛の溶出の促進作用について説明する。
バブリングは、例えば二酸化炭素(CO2)や酸素(O2)の気泡を洗浄液2内で発生させるものであり、酸洗浄によって生じるPb(NO3)2)、PbO2の他にPbOやPbCO3としてもバルブ3の表面から鉛を溶出させているため、洗浄液2の有効濃度の持続に貢献する。また、超音波洗浄4は、洗浄液2中の反応で生じた種々の鉛化合物をバルブ表面から速やかに除去させる効果があり、バブリングと並用すると良い。
特に、洗浄液2中の溶存酸素濃度を高めることで、鉛との化合物を形成して鉛が溶出し易くなり、また、紫色光から遠紫外光の波長領域の電磁波を照射する等して、酸素を原子化するとその効果が促進され好ましい。
【0021】
本例におけるバルブ3は、青銅製はBC6のゲートバルブとBC6のグローブバルブを用い、黄銅製はC3771のゲートバルブとC3771のグローブバルブを用いた。
この洗浄液2は、硝酸や酢酸等の鉛を侵食する酸を水道水或いは純水に混入したものを使用したり、又は、硝酸にインヒビター効果をもつ塩酸を混合した混酸を水道水或いは純水に混入したものを使用する。この場合、塩酸のCl−イオンが銅表面に均一に膜を作りながら侵食するので、光沢面を保持しながら侵食する。このとき鉛部分では、塩酸鉛、硝酸鉛が形成され、そしてこれらはともに混酸に溶解性であるから、侵食が持続する。
【0022】
次に、洗浄液2に含まれる酸について説明する。
一般に酸は、鉛を腐食(酸化)させることが知られているが、鉛は酸との反応で酸化皮膜を形成し易いため、連続的な腐食をおこしにくい。しかし、硝酸、塩酸及び有機酸等の酢酸は鉛を連続的に腐食し、中でも硝酸(HNO3)の腐食速度が最も高い値を示す。
一方、塩酸(HCl)は、硝酸に比して鉛の腐食速度は遅いものの、銅との化合力が高いため、硝酸との混酸で酸洗した場合、硝酸と銅が化学反応して酸化銅(Cu2O又はCuO)を形成する以前に、バルブ3の表面に塩化銅(CuCl)皮膜を形成し、硝酸による銅の腐食を抑制するいわゆるインヒビター効果を奏する。従って、塩酸が含まれることで、バルブ3の表面の銅の酸化が無くなり、黒く変色するといった不具合を防止して、金属の光沢を維持できる。
硝酸と塩酸の混酸で酸洗浄した場合のテストピース表面の鉛分を測定した結果は、次の通りである。なお、この測定には、蛍光X線分析法を使用しているため、約0.1mmの分析面積直径で最大10μm程度の分析深さの鉛のwt%を求めている。
【0023】
【表1】
BC6の混酸洗浄後の鉛成分測定結果
(wt%)
【0024】
【表2】
C3771の混酸洗浄後の鉛成分測定結果
(wt%)
【0025】
この測定により以下のことが判明した。
変色に関し、BC6及びC3771とも硝酸濃度が7wt%以上のテストピースについて多く確認されている。また、硝酸濃度7wt%以上としても鉛除去度合は、大きく向上しないことから、洗浄液2のコストや量産性等工業条件を考慮すれば、硝酸濃度は7wt%未満が好ましい。
また、硝酸濃度が7wt%以下であれば、変色を抑制でき、少量の塩酸の混入によりインヒビター効果を奏し、一層変色を抑制できる。しかしながら、硝酸濃度に対する塩酸濃度の比率が5%より低いものでは変色が確認されたものがあった。これは、インヒビター効果が減少したためである。
一方、塩酸濃度が高くなりすぎると、応力腐食割れを生じることが確認されていることから、塩酸濃度の比率は下限値を0.05%とし、応力腐食割れを考慮した上限値の間が適正範囲である。
また、上記のように硝酸等の鉛を侵食する酸を単独に使用する場合、インヒビターとして塩酸の代わりにベンゾトリアゾール(benzotriazole,BTA)などを混入しても良い。
ベンゾトリアゾールは、特に一価の状態にある銅及び銀に対するキレート試薬であり、これら金属の変色及び腐食の抑制に用いられている。
なお、鉛の侵食に酢酸を用いる場合には、酢酸は銅と化学反応しないので、インヒビターは混入しなくてよい。
【0026】
次いで、上記の洗浄における具体例と試験結果について説明する。
バルブ3をアルコール等の有機溶媒で脱脂後、図2に示す洗浄液2内にバルブ3を浸漬すると共に、超音波洗浄4により洗浄した。
なお、本例の洗浄液は、純水に混入したもので、単位はwt%である。この場合の洗浄液とバルブ材料の種類は、次の通りである。
【0027】
【表3】
【0028】
図8のグラフに示すように、BC6への酸洗浄で、▲2▼の場合(4wt%硝酸+1wt%ベンゾトリアゾール)による酸洗浄の表面鉛除去は、当初、表面鉛含有量4.6wt%であったものが、20分の洗浄で極減し、その後、40分、60分の酸洗浄で除減することが確認された。
また、▲3▼の場合、(4wt%硝酸+0.4wt%塩酸)による酸洗浄の表面鉛除去は、当初4.6wt%であったものが、同様な特性を示しながら除減することが確認された。当初の表面鉛含有量が▲2▼と▲3▼で異なるのは、BC6のテストピースが異なる理由による。これら表面鉛含有量は蛍光X線分析法により測定している。
【0029】
また、図9のグラフに示すように、C3771への酸洗浄で、▲2▼の場合(2wt%硝酸+1wt%ベンゾトリアゾール)による酸洗浄の表面鉛除去は、当初、表面鉛含有量2.4wt%であったものが、10分の洗浄で極減し、その後、30分、60分の酸洗浄で除減することが確認できた。
▲3▼の場合(2wt%硝酸+0.2wt%塩酸)による酸洗浄の表面鉛除去は、当初2.4wt%から同様な特性を示しながら除減することが確認された。
なお、C3771は、図に示すように酸洗浄後の表面鉛含有量が0.84wt%までしか減少していない。これは、蛍光X線分析法では、深さ10μm程度中に存在する鉛量を評価するのに対し、今回テストに用いたC3771は、BC6に比して鉛が非常に微細(10μm以下)に分散しているため、表面に存在する鉛を除却しても、更に深いところに存在する鉛を分析してしまうためである。
【0030】
また、上記の方法で洗浄したサンプルをAS(オーストラリア)規格に基づいて実施した鉛の評価検定の溶出結果を示す。
先ず、酸洗浄したバルブ3を取り出して、バルブ3の両端にステンレス継手の栓をした状態で蒸留水を入れ、手でこれを振って洗浄を3回行って、試験前の調整をする。
次いで、抽出テストを行うには、上記のバルブ3の両端接続部にステンレス継手をして密閉した状態で、上記と同様に蒸留水を入れて24時間以上放置し、これを4回繰り返して6日間経過させる。
その後、このステンレス継手を外してバルブ3内の蒸留水を捨て、新しい蒸留水を満たして再び両端部にステンレス継手をして24時間以上放置した後に、継手を外して取り出した蒸留水を分析水として評価する。
【0031】
この抽出テストによる分析結果を図6及び図7における「酸洗浄による鉛溶出防止効果」のグラフに示す。
図6はBC6による評価結果であり、図7はC3771による評価結果のバルブによる。
図6によると、本発明における酸洗浄処理をしなかった場合、鉛溶出量は2500μg/lであり、表2における洗浄液▲1▼の場合、120μg/lで、洗浄液▲2▼の場合、760μg/lであり、洗浄液▲3▼の場合は、330μg/lであった。
BC6が上述したように、一定の表面鉛除去効果があったにもかかわらず、AS規格の基準(分析水中の鉛許容濃度50μg/l)を満たさなかったのは、そもそも鉛の含有量がC3771に比して非常に多いためで、酸洗浄の時間を長く設定すれば、更なる鉛除去を期待できる。
【0032】
但し、その一方で酸洗浄の長時間化で鉛除去がバルブ3表面にとどまらず、深層部にも至り、バルブ3自体の強度が低下し、高圧流体の封止機能を損なうおそれがある。この問題に対しては、例えば、金属材料の製造過程で結晶微細化剤(ホウ素、チタン等)を混入する等して、C3771のように金属結晶が微細で、しかも鉛が分散する金属組織のバルブ3とすれば深層部での鉛溶出を極減させることが可能となる。
【0033】
図7によると、酸洗浄処理をしない場合、鉛溶出量は370μg/lであり、表1における洗浄液▲1▼の場合は14μg/lで、▲2▼の場合は84μg/l、▲3▼の場合は45μg/lであった。
この処理条件によると、洗浄液▲1▼と▲3▼の例が、上記のAS規格の基準(分析水中の鉛許容濃度50μg/l)を満たすものであった。
【0034】
図6と図7における硝酸にインヒビターとして塩酸を添加すると、バルブの表面の変色もなく、実用上極めて有効であることを確認した。
加えて、ベンゾトリアゾールに比して、厳密な洗浄条件(濃度、洗浄時間、洗浄液温等)の管理を要しないため、量産性の点からも塩酸の方が好適である。
このように、C3771は鉛溶出防止について、極めて良好な特性を示し、また、製造コストについても本実施形態による酸洗浄処理を行っても、処理を行わないBC6よりも更に安価であり、最も適した材料である。
【0035】
しかし、C3771には脱亜鉛腐食を起こす欠点があるため、本願出願人が開発した銅基合金(特開平7−207387号)を用いることで、耐脱鉛及び耐脱亜鉛特性を有するバルブ3を提供することができる。この銅基合金は、Cu59.0〜62.0%、Pb0.5〜4.5%、P0.05〜0.25%、Sn0.5〜2.0%、Ni0.05〜0.30%を含有し、残りがZnと不可避不純物からなる組成(以上重量%)を有することを特徴とする耐食性及び熱間加工性に優れた銅基合金であり、又は、Cu59.0〜62.0%、Pb0.5〜4.5%、P0.05〜0.25%、Sn0.5〜2.0%、Ni0.05〜0.30%、Ti0.02〜0.15%を含有し、残りがZnと不可避不純物からなる組成(以上重量%)を有し、α+β組織を均一に細分化することを特徴とする耐食性及び熱間加工性に優れた銅基合金である。
【0036】
更に、同出願人が開発した銅基合金(特願平9−105312号)を用いれば、上記特性の他、熱間加工性及び耐応力腐食割れ特性を有するバルブ3を提供することができる。この銅基合金の特徴は、Cu58.0〜63.0%、Pb0.5〜4.5%、P0.05〜0.25%、Sn0.5〜3.0%、Ni0.05〜0.30%を含有し、残部がZnと不可避不純物からなる組成(以上重量%)を有し、α+β組織を均一に細分化して耐食性及び熱間加工性に優れた銅基合金であり、更に、適切な抽伸加工及び熱処理を施すことにより、引張り強さ、耐力、伸び等の機械的性質を向上させ、かつ十分な内部応力を除去することにより、耐応力腐食割れ性にも優れた性質を有する合金であり、又は、Cu58.0〜63.0%、Pb0.5〜4.5%、P0.05〜0.25%、Sn0.5〜3.0%、Ni0.05〜0.30%、Ti0.02〜0.15%を含有し、残部がZnと不可避不純物からなる組成(以上重量%)を有し、α+β組織を均一に細分化して耐食性及び熱間加工性に優れた銅基合金であり、更に、適切な抽伸加工及び熱処理を施すことにより、引張り強さ、耐力、伸び等の機械的性質を向上させ、かつ十分な内部応力を除去することにより、耐応力腐食割れ性にも優れた性質を有する合金であることを特徴とする銅基合金であり、また、上記銅基合金でPとSnの組成比をP(%)×10=(2.8〜3.98)(%)−Sn(%)となるように配分した銅基合金である。
【0037】
また、図10〜図13は、本発明における酸洗浄の前後を、バルブと同材であるBC6の板で比較した写真である。
図10は、板表面の洗浄前の顕微鏡写真(×1000)であり、図11は同上の洗浄後の写真であり、板表面の鉛が侵食され、鉛が除去されていることが確認できた。
【0038】
図12は、板表面の洗浄前のEPMA(X線マイクロアナライザ)による鉛の分布を示したもので、図13は同上の洗浄後の鉛の分布を示したもので、板表面層の鉛が侵食されていることが確認された。
【0039】
また、上記に示した洗浄液は、硝酸以外の単酸或は混酸、又は酸とインヒビターとしての反応制御剤との混合により鉛の溶出防止と金属の変色防止が可能となることが確認された。
【0040】
【発明の効果】
以上のことから明らかなように、本発明によると、バルブ・管継手等の銅合金製配管器材の鉛溶出量を大巾に削減することが可能となり、また、金属面の変色もなく、鉛溶出量が削減され、しかも、優れた耐脱亜鉛腐食特性を得ることが可能となり、本発明は、配管器材としてその実用的価値が極めて高く、しかも、現状の製品に本発明をそのまま適用することができる等の有用な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における鉛侵食工程を示す工程説明図である。
【図2】本発明の酸洗浄をバルブに適用した状態を示す説明図である。
【図3】バッチ式酸洗浄の他の実施形態を示す説明図である。
【図4】酸洗浄工程の概略図である。
【図5】個別式酸洗浄の他の実施形態を示す説明図である。
【図6】BC6の酸洗浄による鉛溶出防止効果を示すグラフである。
【図7】C3771の酸洗浄による鉛溶出防止効果を示すグラフである。
【図8】硝酸とインヒビター洗浄による表面鉛除去(BC6の洗浄)のグラフである。
【図9】硝酸とインヒビター洗浄による表面鉛除去(C3771の洗浄)のグラフである。
【図10】洗浄前の銅合金板の顕微鏡写真(×1000)である。
【図11】図10の洗浄後の顕微鏡写真である。
【図12】洗浄前の銅合金製の鉛分布をEPMAによって示した写真である。
【図13】図12の洗浄後の写真である。
【符号の説明】
1 容器
2 洗浄液
3 バルブ
4 超音波洗浄
10 バルブ製造工程
11 脱脂・洗浄工程
12 乾燥工程
13 酸洗浄工程
14 水洗工程
15 鉛侵食工程
Claims (3)
- Cu 58.0 〜 63.0 %、Pb 0.5 〜 4.5 %、P 0.05 〜 0.25 %、Sn 0.5 〜 3.0 %、Ni 0.05 〜 0.30 %を含有し、残部がZnと不可避不純物からなる組成(以上重量%)を有し、かつ前記Pと前記Snの組成比をP(%)×10=(2.8〜3.98)(%)−Sn(%)となるように配分した銅合金であり、この銅合金製配管機材の少なくとも接液部を、硝酸にインヒビターを添加した洗浄液で洗浄して、当該接液部表面層の脱鉛化と共に、同表面層の銅表面に皮膜を形成して硝酸による腐食を抑制するようにしたことを特徴とするバルブ・管継手等の配管機材。
- 前記インヒビターとして塩酸を用いた請求項1に記載のバルブ・管継手等の配管機材。
- 前記インヒビターとしてベンゾトリアゾールを用いた請求項1に記載のバルブ・管継手等の配管機材。
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