JP2004068096A - 銅合金の切削性を改善するSe含有合金 - Google Patents
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Abstract
【課題】鉛レス青銅合金に、切削性を改善するSeを安全に取込むためのSe含有低融点合金を提供する。
【解決手段】Seと、Sn、Zn、Biのいずれか一種以上とのSe含有低融点合金。このSe含有低融点合金は、Seの発煙無しで製造することができ、さらにこのSe含有低融点合金は、Seの発煙を起こすことなく鉛レス青銅合金中に投入でき、鉛レス青銅合金に所望の量のSeを安全に添加し、その切削性を改善することができる。
【解決手段】Seと、Sn、Zn、Biのいずれか一種以上とのSe含有低融点合金。このSe含有低融点合金は、Seの発煙無しで製造することができ、さらにこのSe含有低融点合金は、Seの発煙を起こすことなく鉛レス青銅合金中に投入でき、鉛レス青銅合金に所望の量のSeを安全に添加し、その切削性を改善することができる。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、銅合金、例えばバルブ、コック等水道用器具の鋳造用材料として使用される銅合金に添加して、その鋳造性、切削性、耐圧性を改善するSe含有合金、特にSe含有低融点合金に関する。さらに詳細に言えば、従来水道用器具の鋳造用材料として使用されていた青銅合金に代わって使用される、鉛の水道水中への溶出を低減できる所謂鉛レス青銅合金に、従前の青銅合金に匹敵する鋳造性、切削性、耐圧性を付与するのに好適に使用できるSe含有合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、水道用器具の鋳造用材料としては、日本水道協会により、JIS H 5120のCAC406が標準仕様として指定されている。このCAC406の成分組成は、質量%でCu:83〜87%、Sn:4.0〜6.0%、Zn:4.0〜6.0%、Pb:4.0〜6.0%である。
【0003】
この青銅合金は、鋳造性、切削性、耐圧性に優れている。他方、水道用器具は一般に複雑な形状を有することからその製作は鋳造による必要があり、他の器材との連結部などを機械で後加工する必要があり、使用時には高い水圧に耐える必要があり、これらからこのCAC406に規定される材料がきわめて好適である。そして、上記成分のうち、Pbは特に切削性及び耐圧性を向上させるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、現行の水道水の水質基準では、Pbの溶出基準値は0.05mg/l以下と規定されており、現在使用されているCAC406の鋳造用青銅合金で十分対応できている。しかし、平成14年3月27日付け厚生労働省の「水質基準に関する省令の一部を改正する省令(厚生労働省令第43号)」によれば、平成15年4月1日以降は、Pb基準値が0.01mg/l以下に改定されることとなっている。この基準値を前記CAC406規格の鋳造用青銅材料でクリアすることは一般的には困難である。従って従来使用していたCAC406の材料に代わり得る、鋳造性、切削性、耐圧性に優れた材料の開発が求められている。
【0005】
上記目的を達成する新しい材料として、Pbの代替成分としてBi、Bi−Se、Bi−Sbを使用した銅合金が提案されており(例えば、米国特許第5614038号参照)、市販もされている。これらは鉛の溶出抑制の点で優れた効果を奏しており、新しいPb基準値をクリアできるものとして評価されている。
【0006】
ところで、上記のBi−Se系銅合金は、従来水道用器具に使用されていたCAC406規格の青銅合金に代わっての鋳造用材料として使用しようとするもので、先に説明したCAC406の青銅合金の成分中のPbに代えてBi、Seを含むものであり、銅中にこれらを他の成分と一緒に溶融混合して作るものである。
【0007】
Sn、Znを銅合金溶湯中へ単独で投入することは従前から一般的に行なわれており、なんら問題はない。またBiの銅溶湯中への取り込みにも何ら問題はない。しかし、Seの取込みに苦慮しているのが実情である。
【0008】
すなわち、Seはその融点が217℃であり、沸点が686℃である。一方銅合金の溶湯温度は通常1100℃以上あり、Seの沸点をはるかに上回る。このため、Seを単独で銅合金溶湯中に投入すると、Seは激しく発煙し、この発煙物質は人体に有害とされている。これがために、Bi−Se系は鋳造性、切削性、耐圧性、機械的強度などで高い評価を受けているが、従前使用している設備、装置では実操業が非常に困難であり、その製造が敬遠されてきたのが実情である。 そして、必要な場合には、Seを含有している銅合金のインゴットを購入し、それを必要量だけ銅合金溶湯中に投入して所望のSe含有銅合金を製造していた。この場合においても、Se含有の銅合金のインゴットを製造して供給する側においては、安全面に配慮した高度な設備を備え、その管理、監視体制にも相当の費用を必要とする。なお、CAC406の鋳造用青銅合金で使用しているPbは、融点が327℃であるが、沸点は1620℃であり、合金製造に格別の配慮は必要ではなかった。
【0009】
本願発明は上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、従来使用していた設備を用いて、切削性を向上させる目的で銅合金にSeを、安全に添加することを可能とする手段を提供することをその課題とする。
【0010】
さらに具体的に言えば、従来切削性を付与するために添加されていたPbに代えて、BiとSeをその成分として含有する銅合金に、安全にSeを取込むことを可能とし、鉛レス銅合金の切削性を改善する手段を提供することをその課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、Seと、Sn、Zn、Biのいずれか一種以上からなることを特徴とする、銅合金の切削性を改善する低融点合金を提供する。
【0012】
また、本発明は、Se含有量が20%を越えない、Seと、Sn、Zn、Biのいずれか一種以上からなることを特徴とする、銅合金の切削性を改善する低融点合金を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る、銅合金を製造する際にこれに添加して、銅合金の切削性を改善するSe含有低融点合金について説明する。このSe含有低融点合金は、Seと、Sn、Zn、Biのいずれか一種以上からなるSe含有低融点合金である。ここで、前記各元素の融点及び沸点を示すと、表1のとおりである。
【0014】
【表1】
本実施の形態に係る、銅合金の切削性を改善するために添加するSeと、Sn、Zn、Biのいずれか一種以上の低融点合金は、通常の集塵設備のある溶解炉で、溶解された低融点元素であるSn、Zn、Biのいずれか一種以上からなる溶湯にSeを添加し、攪拌、沈静後、インゴットケースに注湯することにより行う。表1に示されるように、Seの融点は、Sn、Zn、Biのいずれの融点よりも低く、一方Seの沸点はSn、Zn、Biの融点よりもずっと高く、したがって、これらSn、Zn、Biの溶湯中にSeを単体で投入して溶融しても、Seの発煙は起こらない。
【0015】
そして、このようにして製造されたSeと、Sn、Zn、Biのいずれか一種以上からなるSe含有低融点合金を、銅合金中に投入しても発煙がほとんど生じないことが確認できた。
【0016】
ここで、本発明において採用された元素のうちSn、Znは、従来から水道器具鋳造用として使用されているCAC406の青銅合金に必要な機能を付与するために主要成分として含まれるものであり、またそれに代わって使用されるBi−Se系鉛レス青銅合金にもこれらは同様の機能を付与するために含まれるものであり、Biも切削性、耐圧性を改善するためにBi−Se系鉛レス青銅合金に当然含まれるものである。
【0017】
従って、これらのSe含有低融点合金を製造する際に各成分の比率を、そのSe含有低融点合金を用いて製造しようとする鉛レス青銅合金中のそれら元素の成分比率を考慮して決定すれば、適宜計算をして算出した量だけこのSe含有低融点合金を添加すればよく、別途それらの成分を単体として添加する必要はない。すなわち本発明者は、従来のCAC406の青銅合金及びそれに代わって使用されるBi−Se系鉛レス青銅合金にはいずれもSn、Znが含まれること、Biが切削性及び耐圧性を付与するためにBi−Se系鉛レス青銅合金に添加されるものであること、さらにこれら元素の融点がSeの融点に比較的に近い低融点であること、またこれらの元素の融点がSeの沸点よりはるかに低いことに着目し、各種実験を行なった結果、Seの発煙を起こすことなくこれら低融点合金の製造が可能であること、この合金をSeの沸点より高い温度の溶融温度を有する銅合金中に投入しても、Seの発煙が起こらないことを見出し、本発明に至ったものである。
【0018】
本発明のSe含有低融点合金のSe含有量は、最大20%であることが望ましい。いかに合金化して銅合金中に取込むとはいっても、Seの量が少ない方が銅合金溶湯中に投入した際のSeの発煙の可能性はさらに低くなるからである。
【0019】
後述するように、本発明者による実験と測定の結果によれば、Bi−Se系鉛レス青銅合金としては、Seの含有量は僅かでよいことが確認されており、従って、その製造に使用するSe含有低融点合金中のSeの含有量も数%で良く、このようなSeの含有量の少ない合金として銅合金溶湯中に添加されるので、発煙等の環境の悪化は起こらず、Se分の損失もほとんど無い状態で合金化され、最終合金成分の調整も容易に行うことができる。
【0020】
例えば具体的な例としてSn−Se合金について説明すると、これを製造する場合、Snの融点232℃プラス30℃の範囲に安定して保てる溶解炉で所望量のSnを溶解する。次いで例えばフレーク状のSeを目的含有量となるように静かに投入し、溶融Sn中に均一に分布するように炭素棒等で攪拌し、沈静後インゴットケースに注湯し、Sn−Se合金塊を作製する。
【0021】
本発明に係るSe含有低融点合金を使用して、出願人は、代表的な成分組成範囲が質量%で、Sn:4.0〜6.0%、Zn:4.0〜7.0%、Bi:1.5〜3.0%、Se:0.1から0.3%、残部Cu及び残余成分としたSe含有即ちBi−Se系鉛レス青銅合金(セイフアロイ:商標登録第4580976号)を製造した。この合金は、Seの量が先に例として説明したBi−Se系鉛レス銅合金よりSeの量が少ないが、鋳造性、切削性、耐圧性、機械的強度も水道用器具の鋳造用材料として十分であることが確認された。
【0022】
【実施例】
次に実施例として、主要成分がSn4.5%、Zn5.0%、Bi2.5%、Se0.2、残部Cu及び残余成分である鉛レス青銅合金を製造する場合について説明する。この場合、湯口、湯道など、同じ成分比率のリターン材を全重量の45%分使用し、100kg製造するとする。
【0023】
このリターン材から得られるSn、Zn、Bi、Seの量は、次のとおりとなる。
Sn 45kg×0.045=2.025kg
Zn 45kg×0.050=2.25kg
Bi 45kg×0.025=1.125kg
Se 45kg×0.0002=0.09kg
【0024】
上記の各成分比の鉛レス青銅合金100kgの製造するために、新たに投入すべき上記各成分の量は以下の通りである。
Sn 4.5kg−2.025kg=2.475kg
Zn 5.0kg−2.25kg=2.75kg
Bi 2.5kg−1.125kg=1.375kg
Se 0.2kg−0.09kg=0.11kg
【0025】
そこで上記割合のSn−Se、Zn−Se、Bi−Seのそれぞれ二元化合金を以下のように製造する。
Sn−Se合金 全重量2.585kg Seの割合4.3%
Zn−Se合金 全重量2.86kg Seの割合3.8%
Bi−Se合金 全重量1.485kg Seの割合7.4%
【0026】
上記のように、合金一個の重量は軽く、Seの割合は非常に低い。上記のうち、例えばSn−Se合金について説明すると、これを製造する場合、Snの融点232℃プラス30℃の範囲に安定して保てる溶解炉で2.475kgのSnを溶解する。次いで例えばフレーク状のSeを0.11kgを静かに投入し、溶融Sn中に均一に分布するように炭素棒等で攪拌し、沈静後インゴットケースに注湯し、2.585kgのSn−Se合金塊を作製する。実操業では当然歩留まりを考慮して配合、投入を行う。
【0027】
このように上記の鉛レス青銅合金を100kg製造するに当たり、リターン材を45%使用し、さらに必要なSeの取込みをSn−Se合金を用いて行うとすれば、上記の如く製造した総重量2.285kgのSn−Se合金を一個投入添加すれば、Sn4.5%、Se0.2%の鉛レス青銅合金が得られる。この場合、他のZn、Biについては従来どおり必要量だけZn、Biをそれぞれ含む合金或はZn、Bi単独で投入し、成分調整すれば良い。
【0028】
通常青銅鋳物は規模により200kgるつぼ、300kgるつぼ、400kgるつぼ、大きくは1トン炉等で量産される。従って、例えば400kgを製造しようとする場合、前述の如く製造したSn−Se合金4個を投入すれば、Sn、Seの必要量は得られることとなる。
【0029】
他のリターン材を使用する場合も、そのリターン材の成分割合及び使用量をもとにして同様の計算を行ない、容易に製造することができる。
【0030】
【発明の効果】
上記説明から明らかなとおり、本願発明によれば、従来問題とされていたSeの銅合金への取込みを安全容易に行うことができ、従前のCAC406の鋳造用青銅合金に対して鋳造性、切削性、耐圧性、機械的強度の点などで遜色のない鉛レス青銅合金を、従来使用している設備を用いて製造することが可能となる。
【産業上の利用分野】
本発明は、銅合金、例えばバルブ、コック等水道用器具の鋳造用材料として使用される銅合金に添加して、その鋳造性、切削性、耐圧性を改善するSe含有合金、特にSe含有低融点合金に関する。さらに詳細に言えば、従来水道用器具の鋳造用材料として使用されていた青銅合金に代わって使用される、鉛の水道水中への溶出を低減できる所謂鉛レス青銅合金に、従前の青銅合金に匹敵する鋳造性、切削性、耐圧性を付与するのに好適に使用できるSe含有合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、水道用器具の鋳造用材料としては、日本水道協会により、JIS H 5120のCAC406が標準仕様として指定されている。このCAC406の成分組成は、質量%でCu:83〜87%、Sn:4.0〜6.0%、Zn:4.0〜6.0%、Pb:4.0〜6.0%である。
【0003】
この青銅合金は、鋳造性、切削性、耐圧性に優れている。他方、水道用器具は一般に複雑な形状を有することからその製作は鋳造による必要があり、他の器材との連結部などを機械で後加工する必要があり、使用時には高い水圧に耐える必要があり、これらからこのCAC406に規定される材料がきわめて好適である。そして、上記成分のうち、Pbは特に切削性及び耐圧性を向上させるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、現行の水道水の水質基準では、Pbの溶出基準値は0.05mg/l以下と規定されており、現在使用されているCAC406の鋳造用青銅合金で十分対応できている。しかし、平成14年3月27日付け厚生労働省の「水質基準に関する省令の一部を改正する省令(厚生労働省令第43号)」によれば、平成15年4月1日以降は、Pb基準値が0.01mg/l以下に改定されることとなっている。この基準値を前記CAC406規格の鋳造用青銅材料でクリアすることは一般的には困難である。従って従来使用していたCAC406の材料に代わり得る、鋳造性、切削性、耐圧性に優れた材料の開発が求められている。
【0005】
上記目的を達成する新しい材料として、Pbの代替成分としてBi、Bi−Se、Bi−Sbを使用した銅合金が提案されており(例えば、米国特許第5614038号参照)、市販もされている。これらは鉛の溶出抑制の点で優れた効果を奏しており、新しいPb基準値をクリアできるものとして評価されている。
【0006】
ところで、上記のBi−Se系銅合金は、従来水道用器具に使用されていたCAC406規格の青銅合金に代わっての鋳造用材料として使用しようとするもので、先に説明したCAC406の青銅合金の成分中のPbに代えてBi、Seを含むものであり、銅中にこれらを他の成分と一緒に溶融混合して作るものである。
【0007】
Sn、Znを銅合金溶湯中へ単独で投入することは従前から一般的に行なわれており、なんら問題はない。またBiの銅溶湯中への取り込みにも何ら問題はない。しかし、Seの取込みに苦慮しているのが実情である。
【0008】
すなわち、Seはその融点が217℃であり、沸点が686℃である。一方銅合金の溶湯温度は通常1100℃以上あり、Seの沸点をはるかに上回る。このため、Seを単独で銅合金溶湯中に投入すると、Seは激しく発煙し、この発煙物質は人体に有害とされている。これがために、Bi−Se系は鋳造性、切削性、耐圧性、機械的強度などで高い評価を受けているが、従前使用している設備、装置では実操業が非常に困難であり、その製造が敬遠されてきたのが実情である。 そして、必要な場合には、Seを含有している銅合金のインゴットを購入し、それを必要量だけ銅合金溶湯中に投入して所望のSe含有銅合金を製造していた。この場合においても、Se含有の銅合金のインゴットを製造して供給する側においては、安全面に配慮した高度な設備を備え、その管理、監視体制にも相当の費用を必要とする。なお、CAC406の鋳造用青銅合金で使用しているPbは、融点が327℃であるが、沸点は1620℃であり、合金製造に格別の配慮は必要ではなかった。
【0009】
本願発明は上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、従来使用していた設備を用いて、切削性を向上させる目的で銅合金にSeを、安全に添加することを可能とする手段を提供することをその課題とする。
【0010】
さらに具体的に言えば、従来切削性を付与するために添加されていたPbに代えて、BiとSeをその成分として含有する銅合金に、安全にSeを取込むことを可能とし、鉛レス銅合金の切削性を改善する手段を提供することをその課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、Seと、Sn、Zn、Biのいずれか一種以上からなることを特徴とする、銅合金の切削性を改善する低融点合金を提供する。
【0012】
また、本発明は、Se含有量が20%を越えない、Seと、Sn、Zn、Biのいずれか一種以上からなることを特徴とする、銅合金の切削性を改善する低融点合金を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る、銅合金を製造する際にこれに添加して、銅合金の切削性を改善するSe含有低融点合金について説明する。このSe含有低融点合金は、Seと、Sn、Zn、Biのいずれか一種以上からなるSe含有低融点合金である。ここで、前記各元素の融点及び沸点を示すと、表1のとおりである。
【0014】
【表1】
本実施の形態に係る、銅合金の切削性を改善するために添加するSeと、Sn、Zn、Biのいずれか一種以上の低融点合金は、通常の集塵設備のある溶解炉で、溶解された低融点元素であるSn、Zn、Biのいずれか一種以上からなる溶湯にSeを添加し、攪拌、沈静後、インゴットケースに注湯することにより行う。表1に示されるように、Seの融点は、Sn、Zn、Biのいずれの融点よりも低く、一方Seの沸点はSn、Zn、Biの融点よりもずっと高く、したがって、これらSn、Zn、Biの溶湯中にSeを単体で投入して溶融しても、Seの発煙は起こらない。
【0015】
そして、このようにして製造されたSeと、Sn、Zn、Biのいずれか一種以上からなるSe含有低融点合金を、銅合金中に投入しても発煙がほとんど生じないことが確認できた。
【0016】
ここで、本発明において採用された元素のうちSn、Znは、従来から水道器具鋳造用として使用されているCAC406の青銅合金に必要な機能を付与するために主要成分として含まれるものであり、またそれに代わって使用されるBi−Se系鉛レス青銅合金にもこれらは同様の機能を付与するために含まれるものであり、Biも切削性、耐圧性を改善するためにBi−Se系鉛レス青銅合金に当然含まれるものである。
【0017】
従って、これらのSe含有低融点合金を製造する際に各成分の比率を、そのSe含有低融点合金を用いて製造しようとする鉛レス青銅合金中のそれら元素の成分比率を考慮して決定すれば、適宜計算をして算出した量だけこのSe含有低融点合金を添加すればよく、別途それらの成分を単体として添加する必要はない。すなわち本発明者は、従来のCAC406の青銅合金及びそれに代わって使用されるBi−Se系鉛レス青銅合金にはいずれもSn、Znが含まれること、Biが切削性及び耐圧性を付与するためにBi−Se系鉛レス青銅合金に添加されるものであること、さらにこれら元素の融点がSeの融点に比較的に近い低融点であること、またこれらの元素の融点がSeの沸点よりはるかに低いことに着目し、各種実験を行なった結果、Seの発煙を起こすことなくこれら低融点合金の製造が可能であること、この合金をSeの沸点より高い温度の溶融温度を有する銅合金中に投入しても、Seの発煙が起こらないことを見出し、本発明に至ったものである。
【0018】
本発明のSe含有低融点合金のSe含有量は、最大20%であることが望ましい。いかに合金化して銅合金中に取込むとはいっても、Seの量が少ない方が銅合金溶湯中に投入した際のSeの発煙の可能性はさらに低くなるからである。
【0019】
後述するように、本発明者による実験と測定の結果によれば、Bi−Se系鉛レス青銅合金としては、Seの含有量は僅かでよいことが確認されており、従って、その製造に使用するSe含有低融点合金中のSeの含有量も数%で良く、このようなSeの含有量の少ない合金として銅合金溶湯中に添加されるので、発煙等の環境の悪化は起こらず、Se分の損失もほとんど無い状態で合金化され、最終合金成分の調整も容易に行うことができる。
【0020】
例えば具体的な例としてSn−Se合金について説明すると、これを製造する場合、Snの融点232℃プラス30℃の範囲に安定して保てる溶解炉で所望量のSnを溶解する。次いで例えばフレーク状のSeを目的含有量となるように静かに投入し、溶融Sn中に均一に分布するように炭素棒等で攪拌し、沈静後インゴットケースに注湯し、Sn−Se合金塊を作製する。
【0021】
本発明に係るSe含有低融点合金を使用して、出願人は、代表的な成分組成範囲が質量%で、Sn:4.0〜6.0%、Zn:4.0〜7.0%、Bi:1.5〜3.0%、Se:0.1から0.3%、残部Cu及び残余成分としたSe含有即ちBi−Se系鉛レス青銅合金(セイフアロイ:商標登録第4580976号)を製造した。この合金は、Seの量が先に例として説明したBi−Se系鉛レス銅合金よりSeの量が少ないが、鋳造性、切削性、耐圧性、機械的強度も水道用器具の鋳造用材料として十分であることが確認された。
【0022】
【実施例】
次に実施例として、主要成分がSn4.5%、Zn5.0%、Bi2.5%、Se0.2、残部Cu及び残余成分である鉛レス青銅合金を製造する場合について説明する。この場合、湯口、湯道など、同じ成分比率のリターン材を全重量の45%分使用し、100kg製造するとする。
【0023】
このリターン材から得られるSn、Zn、Bi、Seの量は、次のとおりとなる。
Sn 45kg×0.045=2.025kg
Zn 45kg×0.050=2.25kg
Bi 45kg×0.025=1.125kg
Se 45kg×0.0002=0.09kg
【0024】
上記の各成分比の鉛レス青銅合金100kgの製造するために、新たに投入すべき上記各成分の量は以下の通りである。
Sn 4.5kg−2.025kg=2.475kg
Zn 5.0kg−2.25kg=2.75kg
Bi 2.5kg−1.125kg=1.375kg
Se 0.2kg−0.09kg=0.11kg
【0025】
そこで上記割合のSn−Se、Zn−Se、Bi−Seのそれぞれ二元化合金を以下のように製造する。
Sn−Se合金 全重量2.585kg Seの割合4.3%
Zn−Se合金 全重量2.86kg Seの割合3.8%
Bi−Se合金 全重量1.485kg Seの割合7.4%
【0026】
上記のように、合金一個の重量は軽く、Seの割合は非常に低い。上記のうち、例えばSn−Se合金について説明すると、これを製造する場合、Snの融点232℃プラス30℃の範囲に安定して保てる溶解炉で2.475kgのSnを溶解する。次いで例えばフレーク状のSeを0.11kgを静かに投入し、溶融Sn中に均一に分布するように炭素棒等で攪拌し、沈静後インゴットケースに注湯し、2.585kgのSn−Se合金塊を作製する。実操業では当然歩留まりを考慮して配合、投入を行う。
【0027】
このように上記の鉛レス青銅合金を100kg製造するに当たり、リターン材を45%使用し、さらに必要なSeの取込みをSn−Se合金を用いて行うとすれば、上記の如く製造した総重量2.285kgのSn−Se合金を一個投入添加すれば、Sn4.5%、Se0.2%の鉛レス青銅合金が得られる。この場合、他のZn、Biについては従来どおり必要量だけZn、Biをそれぞれ含む合金或はZn、Bi単独で投入し、成分調整すれば良い。
【0028】
通常青銅鋳物は規模により200kgるつぼ、300kgるつぼ、400kgるつぼ、大きくは1トン炉等で量産される。従って、例えば400kgを製造しようとする場合、前述の如く製造したSn−Se合金4個を投入すれば、Sn、Seの必要量は得られることとなる。
【0029】
他のリターン材を使用する場合も、そのリターン材の成分割合及び使用量をもとにして同様の計算を行ない、容易に製造することができる。
【0030】
【発明の効果】
上記説明から明らかなとおり、本願発明によれば、従来問題とされていたSeの銅合金への取込みを安全容易に行うことができ、従前のCAC406の鋳造用青銅合金に対して鋳造性、切削性、耐圧性、機械的強度の点などで遜色のない鉛レス青銅合金を、従来使用している設備を用いて製造することが可能となる。
Claims (2)
- Seと、Sn、Zn、Biのいずれか一種以上からなることを特徴とする銅合金の切削性を改善する低融点合金。
- Se含有量が20%を越えない、請求項1記載の銅合金の切削性を改善する低融点合金。
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JP2002230018A JP2004068096A (ja) | 2002-08-07 | 2002-08-07 | 銅合金の切削性を改善するSe含有合金 |
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JP2002230018A JP2004068096A (ja) | 2002-08-07 | 2002-08-07 | 銅合金の切削性を改善するSe含有合金 |
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002230018A Pending JP2004068096A (ja) | 2002-08-07 | 2002-08-07 | 銅合金の切削性を改善するSe含有合金 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004068096A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008208433A (ja) * | 2007-02-27 | 2008-09-11 | Kitz Corp | 鉛レス青銅鋳物合金 |
US7819992B2 (en) | 2005-06-21 | 2010-10-26 | Kurimoto, Ltd. | Copper alloy water supply member |
JP2015152066A (ja) * | 2014-02-13 | 2015-08-24 | 前澤給装工業株式会社 | パッキン一体型逆止弁とその製造方法 |
-
2002
- 2002-08-07 JP JP2002230018A patent/JP2004068096A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7819992B2 (en) | 2005-06-21 | 2010-10-26 | Kurimoto, Ltd. | Copper alloy water supply member |
JP2008208433A (ja) * | 2007-02-27 | 2008-09-11 | Kitz Corp | 鉛レス青銅鋳物合金 |
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