JP5257500B2 - 密閉型圧縮機 - Google Patents

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Description

本発明は、冷媒として、炭化水素系冷媒を用いた密閉型圧縮機に関するものである。
従来、例えば空調用の密閉型圧縮機には、冷媒としてHCFC冷媒であるR22が一般的に用いられてきた。そして、冷凍機油としては、40℃における動粘性係数が大略32〜68cSt程度の鉱油(ナフテン油、パラフィン油など)、アルキルベンゼン油、およびこれらの混合油などが用いられてきた。
上記HCFC冷媒は、分子内に塩素基を有する為、冷媒が極圧剤としての効果を有し、図示しない圧縮機の摺動部が金属接触し、焼付きが発生し、圧縮機が運転不能になるのを未然に防ぐ作用をしていた。このため、HCFC冷媒を使用した圧縮機は摩耗量が少なく、軸受信頼性が高い。
しかしながら、HCFC冷媒は、分子内に塩素基を含む為、高いオゾン破壊係数を持ち、大気中に放出された場合、地球の上空を覆うオゾン層を破壊するため、フロン規制の対象になっている。このようなオゾン層破壊に対する対策として、分子内に塩素基を含まないHFC冷媒を使用する対策が一般的に行われ、実用化されている。
しかし、HFC冷媒は、オゾン層破壊を抑制する効果はあるものの、自然界に無い安定した物質であり、空気中に放出された後に分解されにくい性質を有するため、自然破壊が危惧され、新たなフロン規制の対象になりつつある。
また、HFC冷媒は、鉱油、アルキルベンゼン油などの従来HCFC冷媒で用いられてきた冷凍機油との相溶性が悪く、図示しない圧縮機への油戻りの悪化により、圧縮機内の油面低下を来して圧縮機の潤滑不良を招き、信頼性を低下させる問題がある。
また、冷媒の分子中に塩素基を含まない為、極圧剤としての効果が無く、一般的に、HCFC冷媒を使用した圧縮機に対して軸受信頼性は低下する。
この為、HFC冷媒と相溶性のあるエステル油、エーテル油等の合成油が用いられている。
しかし、HFC冷媒は、地球温暖化係数が高く、地球環境保護の観点より代替が検討され、オゾン破壊係数が0であり、地球温暖化も引き起こさない自然冷媒である炭化水素冷媒(メタン、エタン、プロパン等)が検討されている。
炭化水素冷媒は、HFC冷媒とは逆に、鉱油、アルキルベンゼン油との相溶性が高い為、油戻り悪化による問題は無いが、溶解性が高過ぎる為、冷凍機油に液冷媒が溶け込み、粘度が下がり、軸受信頼性上必要な粘度以下となり、潤滑不良から磨耗や焼付きを来すという課題があった。
なお、従来技術として、例えば特開平09−264619号公報には、高圧型圧縮機を用いて冷凍サイクルを構成する場合に、冷媒として炭化水素冷媒を用い、40℃における動粘度係数が46cSt以上の冷凍機油を用いる例が記載されている。しかしながら、40℃における動粘度係数が60cSt超える場合の特質については示唆されていない。
特開平09−264619号公報
以上のように、HFCに替わる冷凍サイクルを実現するための冷媒として環境にやさしい炭化水素系冷媒が注目されているが、この炭化水素系冷媒は冷凍機油への相溶性が高く、冷凍機油の動粘性係数が低下し過ぎるため軸受信頼性が低下するという課題があった。また炭化水素系冷媒は分子内に塩素基を含まない為、極圧剤としての効果が無く、鉱油、アルキルベンゼン油などの冷凍機油を使用したときに、摩耗量が増加し、軸受信頼性が低下するという課題もあった。
本発明は、オゾン破壊係数が0であり、地球温暖化も引き起こさない自然冷媒である炭化水素冷媒を使用した場合においても、圧縮機の潤滑不良を防ぎ、圧縮機の摺動部における焼き付きや、磨耗量の増加を防いだ信頼性の高い密閉型圧縮機を提供することを目的としている。
この発明の密閉型圧縮機は、電動要素、摺動部を有する圧縮要素、冷凍機油、及び冷媒を密閉容器内に収容する密閉型圧縮機において、上記冷媒として、炭化水素を主成分とする冷媒を用い、上記冷凍機油として、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油、およびアルキルベンゼン油から選ばれた単一物もしくは任意の2以上の混合油であって、40℃における動粘性係数が80〜200cStである冷凍機油を用い、上記冷凍機油が前記摺動部に供給されることを特徴とするものである。
この発明は、以上説明したように構成しているので、以下のような効果を奏する。
冷媒として、炭化水素系冷媒を用い、冷凍機油として、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油、およびアルキルベンゼン油から選ばれた単一物もしくは任意の2以上の混合油であって、40℃における動粘性係数が80〜200cStの冷凍機油を用いたことにより、軸受信頼性と摺動損失の抑制を両立させた密閉型圧縮機を提供することができる。
この発明の実施の形態1に係わる密閉型圧縮機の断面図である。 この発明の実施の形態1に係わる冷凍機油について、冷媒溶解量と動粘性係数との関係を調べた結果を、従来例と比較して示す特性図である。 この発明の実施の形態1に係わる冷凍機油単体の40℃における動粘性係数に対する軸受磨耗量と摺動損失の関係を示す特性図である。 この発明の実施の形態3に係わる密閉型ロータリ圧縮機の断面図である。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1である密閉型圧縮機を示す縦断面図である。図において、1は密閉容器、2は電動要素、3は冷凍機油、4は回転軸であるクランクシャフト、5、6はこのクランクシャフト4を支承する軸受、7はベーン、8はローリングピストンである。前記軸受5、及び軸受6は互いに対向するフランジ面部を有し、前記ベーン7、及びローリングピストン8はクランクシャフト4の回転により、いずれも軸受5、6のフランジ面部と摺動する。また、ベーン7はローリングピストン8に対して摺動する。9は各摺動部へ冷凍機油3を供給するオイルポンプである。
なお、上記回転軸であるクランクシャフト4は、電動要素2の出力軸を兼ねている。また、クランクシャフト4、軸受5、6、ベーン7、ローリングピストン8、及びオイルポンプ9によって圧縮要素10が構成されている。
上記のように構成された密閉型圧縮機は、何れも図示を省略する配管により凝縮器、膨張機構、蒸発器に順次接続され、更に前記蒸発器から密閉型圧縮機に戻る循環路が形成され、循環路内に冷媒が封入されて冷凍サイクルシステムを構成する。
圧縮機運転中、クランクシャフト4は回転し、その回転力により、オイルポンプ9より各摺動部へ冷凍機油3が送給され、クランクシャフト4、軸受5、6、ベーン7、ローリングピストン8の各摺動部は、冷凍機油を介して摺動する事により、磨耗量が最小限に抑制される。
上記本発明の実施の形態1において、冷媒は、オゾン破壊係数が0であり、地球温暖化も引き起こさない自然冷媒である炭化水素系冷媒(メタン、エタン、プロパン等)が使用され、冷凍機油3として、40℃における動粘性係数が80〜200cStの油が使用される。
なお、本発明者らは上記した課題を解決する為に、炭化水素系冷媒を用いた系における冷凍機油の動粘性係数、添加剤の添加量等の特性について実験により鋭意検討を重ねた結果、冷凍機油単品の40℃における動粘性係数が80〜200cStの冷凍機油を用いることで、圧縮機運転時に、優れた軸受信頼性と、低い摺動損失を両立することができることを見い出し、この発明を完成させたものである。
図2は、冷凍機油に冷媒が溶解した場合の冷媒溶解量に対する40℃における動粘性係数の関係を調べた結果を示す特性図である。図2において、曲線aは参考例、曲線bは比較例、曲線c〜fはこの発明の実施の形態1における実施例を示し、各曲線の内容を表1に示す。なお、表1に示す粘度(cSt)は何れの場合も冷凍機油に冷媒が溶解していない状態、即ち、冷媒溶解量=0wt%(重量パーセント)における値である。
Figure 0005257500
図2の曲線aと、曲線bとから明らかなように、冷媒溶解量が0wt%(重量%)時の動粘性係数は同じ(56cSt)でも、冷媒溶解量の増加に伴う動粘性係数の低下量は、曲線aで示す従来のR22(HCFC冷媒)に比べ、曲線bにて示すR290(炭化水素冷媒)の変化量は約2倍大きいので、冷媒溶解量が例えば20wt%の場合は、曲線aの9.6cStに対し、曲線bでは4.8cStと、粘度が半減する。
これに対し、40℃における動粘性係数を80〜200cStに調整した冷凍機油を用いた場合は、曲線c、d、e、及びfに示すように、R22冷媒を用いた曲線aの場合よりも粘度の低下量が若干大きいものの、R22とほぼ同程度の動粘性係数を維持できる。
即ち、曲線c、d、e、及びfは、表1に示すように冷凍機油単体の40℃における動粘性係数が、それぞれ200、150、90、及び80cStに調整されたパラフィン系鉱油を用いた場合であるが、該冷凍機油に対するR290(プロパン)の溶解量が例えば20wt%時の動粘性係数は、それぞれ約16、13、8.0、及び7.4cStであり、優れた軸受信頼性と、低い摺動損失を両立させた圧縮機を得ることができた。
図3は、この発明の実施の形態1における構成について、40℃における動粘性係数が異なる冷凍機油を用い、軸受磨耗量と、摺動損失との関係を実験によって求めた特性図である。なお、図3は冷媒としてR290(プロパン)、冷凍機油としてパラフィン系鉱油を用いた場合の例を示すが、これらに限定されるものではなく、冷媒としては炭化水素系の他の冷媒、例えばR50(メタン)、R170(エタン)、RC270(シクロプロパン)などを用い、あるいは冷凍機油として、例えばアルキルベンゼン、ナフテン系鉱油などを好ましく用いることができ、またこれらの任意の組み合わせとしても同様の効果が得られる。
図2及び図3から明らかなように、実施の形態1による炭化水素系冷媒を用いた冷凍システムにおいては、40℃における動粘性係数が80〜200cStの冷凍機油を用いることで軸受など摺動部の摩耗量が少なく、且つ摺動損失の小さい信頼性の高い密閉型圧縮機を得ることができる。なお、40℃における動粘性係数が80cStより小さいと軸受摩耗量が大きくなり、また200cStより大きくなると摺動損失が急上昇し、圧縮機に発生する入力値が上昇し、製品の電力量が上昇するので、80〜200cStの範囲とすることが好ましい。なお、前記動粘性係数が90〜150cStの冷凍機油を用いた場合にはさらに信頼性の高い密閉型圧縮機を得ることができる。しかして軸受信頼性と摺動損失抑制を両立した密閉型圧縮機を得ることができる。
発明の実施の形態2.
冷凍機油に対し、極圧添加剤、または油性剤を0.5〜90重量%の割合で配合したほかは上記実施の形態1と同様の構成の密閉型圧縮機を得た。なお、ここで例えば冷凍機油に対し、添加剤を90重量%配合する場合においては、冷凍機油10gに対し、添加剤が90gの割合で配合される。
なお、上記極圧添加剤としては、例えば公知のオレフィンポリサルファイド、硫化油脂、塩素化パラフィン、及びアルキルりん酸エステルの1種、または任意の2種以上の混合物などを挙げることができるが、これらのみに限定されるものではない。
また、上記油性剤としては、公知の例えばステアリン酸系油性剤、脂肪族アミン系油性剤、エステル系油性剤などを好ましく用いることができるが、これらのみに限定されるものではない。
炭化水素冷媒は、塩素基による極圧効果が無い為、冷凍機油の中に極圧添加剤及び油性剤などの添加剤を配合して用いることにより、軸受耐力を改善できることが知られている。従来の構成で十分な極圧効果を継続的に得るには、冷凍機油に対し極圧添加剤の量を0.5重量%以上添加する必要がある。その一方で、HCFC冷媒やHFC冷媒の場合、極圧添加剤の量を多くすると、スラッジの生成量が多くなり、生成したスラッジが冷媒回路内の毛細管やドライヤーを閉塞させ冷却不良を引き起こす恐れがあり添加剤の量を0.5重量%以上にするのは困難であったものである。
しかしながら、この発明の実施の形態2によれば、上記のように従来の一般的な添加剤の配合量から逸脱した多量の添加剤を加えてもスラッジの生成が認められず、圧縮機運転時に更に優れた軸受信頼性と、スラッジの不生成による信頼性確保を両立した密閉型圧縮機を得ることが出来た。
本発明者らの実験によれば、炭化水素冷媒は生成されたスラッジを溶解する特性に優れており、この実施の形態2のように冷凍機油に多量の添加剤を配合して用いた場合においても、生成されるはずのスラッジが析出されないことが確認されたものである。なお、冷凍機油に対する添加剤の配合量を90重量%以上添加することは、実用上、生産性が難しい。
冷凍機油に対する上記極圧添加剤または油性剤からなる添加剤の好ましい配合量は、0.5〜90重量%であるが、前記配合量を2〜50重量%とした場合には、さらに信頼性の高い密閉型圧縮機を得ることができる。ここで、前記配合量を2重量%以上とした場合には、極圧効果の継続的な持続と、スラッジの不生成による信頼性確保を両立させることが、より確実となり、また、前記配合量を50重量%以下とすることにより、実用上の溶解性が良好で、生産性をさらに好ましく確保できる。
発明の実施の形態3.
図4はこの発明の実施の形態3である密閉型ロータリー圧縮機を示す断面図である。図において、11はクランクシャフト4を支承する軸受メタルである。その他の符号は図1に示す実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
なお、この実施の形態3において、冷媒としては炭化水素系冷媒、特に好ましくはプロパンなどが用いられ、冷凍機油3としては40℃における動粘性係数が80〜200cStである冷凍機油、特に好ましくは40℃における動粘性係数が90〜150cStのパラフィン系鉱油が用いられる。
図4のように構成された本発明の実施の形態3に係る密閉型ロータリー圧縮機においては、冷凍機油3として、40℃における動粘性係数が80〜200cStである冷凍機油を用い、かつ回転軸4の軸受に軸受メタル11を使用しているので、冷媒として極圧効果のない炭化水素冷媒を使用し、冷凍機油への冷媒の溶け込み量が多くなって低粘度になった場合でも、境界潤滑での優れた軸受特性を有し、メカロックによる圧縮機の破損を未然に防いだ軸受信頼性に優れた信頼性の高い密閉型圧縮機を提供することができる。
なお、上記メタル軸受11としては、例えばアルミ、銅などを材料とした一般的な軸受メタルを用いることができる。
発明の実施の形態4.
上記実施の形態1ないし3では、この発明をロータリー型圧縮機に用いる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えばスクロール圧縮機、レシプロ式圧縮機など他の方式の圧縮機でも同様の効果が期待できる。
たとえば、実施の形態3における軸受メタル11はロータリ圧縮機でなくても同様の効果が期待できる。
さらに、上記冷凍機油に所望により公知の酸化防止剤、粘度指数向上剤などを加えても差し支えない。
また、この発明の密閉型圧縮機を空調装置に用いる場合について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、ヒートポンプシステムを利用するものであれば、他の装置、システム、例えば除湿機、パネルクーラー、冷蔵庫、冷凍庫等に用いることができることは当然である。
1 密閉容器
2 電動要素
3 冷凍機油、
4 クランクシャフト、
5 軸受、
6 軸受、
10圧縮要素、
11 軸受メタル、

Claims (2)

  1. 電動要素、摺動部を有する圧縮要素、冷凍機油、及び冷媒を密閉容器内に収容する密閉型圧縮機において、上記冷媒として、炭化水素を主成分とする冷媒を用い、上記冷凍機油として、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油、およびアルキルベンゼン油の中から選ばれた単一物もしくは任意の2以上の混合油であって、40℃における動粘性係数が80〜200cStである冷凍機油を用い、上記冷凍機油が前記摺動部に供給されることを特徴とする密閉型圧縮機。
  2. 電動要素または圧縮要素は、回転軸を支承する軸受を備え、この軸受として、軸受メタルを用いてなることを特徴とする請求項1に記載の密閉型圧縮機。
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