以下、本発明を実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る渋滞情報生成装置100を備えた渋滞情報生成システムの設置例を示す模式図であり、図2は本発明に係る渋滞情報生成装置100を備えた渋滞情報生成システムの構成の一例を示す説明図である。図1に示すように、4つの流入路で構成される交差点の所定位置に信号灯器4を設置してあり、各信号灯器4は、信号制御装置3で制御される。交差点の所定位置には、所定方向の道路、交差点付近を撮像することができる画像センサ5を設置してある。画像センサ5は、対向車両の交通量、横断歩道の歩行者、交差点内、交差点付近の車両の走行挙動を撮像することができる。
交差点の上流の所定地点(例えば、停止線から500m〜1000m程度の地点)には、車両感知器1を設置してあり、車両感知器1の感知領域を通過する車両を検出する。車両感知器1は、例えば、光ビーコン、超音波感知器、ループ式感知器、画像感知器、遠赤外線感知器又は赤外線感知器などであり、交通量を計測することができる。交通量は単位時間当たりの車両通過台数であるが、単位時間当たりの占有時間を含むものとする。占有時間は、単位時間当たりに車両感知器1の感知領域を車体が通過した時間の総和である。
また、交差点付近の所定位置には、光ビーコン等の通信装置2を設置してあり、通信装置2は、交差点上流から交差点に向かって流入路を走行するプローブ車両が交差点を流出した時点で、プローブ車両で収集したプローブ情報を取得することができる。なお、プローブ情報は、通信装置2を介さずに直接、プローブ車両から広域無線で渋滞情報生成装置100へ送信することもできる。
また、流入路の所定位置には、通信装置6を設置してあり、通信装置6は、交差点上流から交差点に向かって流入路を走行する一般車両(プローブ車両を含んでもよい)に対して、信号待ち行列に関する情報を送信する。
渋滞情報生成装置100は、交差点付近に路側装置として設置してもよく、あるいは、交通管制センタ内のセンタ装置として遠方に設置することもできる。渋滞情報生成装置100は、車両感知器1、通信装置2、信号制御装置3、画像センサ5、通信装置6との間で、例えば、無線LANにより通信可能に構成してある。なお、無線LANに限定されるものではなく、狭域通信、中域通信、広域通信などを用いることもできる。
図2に示すように、プローブ車両は、通信装置2を介して収集したプローブ情報(位置、速度、時刻)を渋滞情報生成装置100へ送信する。なお、プローブ情報は、路車間通信で取得する構成に限定されるものではなく、車々間通信で車両同士が通信したプローブ情報を通信装置2で傍受する構成でもよい。
車両感知器1は、計測した交通量(単位時間当たりの車両通過台数、占有率など)を渋滞情報生成装置100へ送信する。また、画像センサ5は、交差点に向かって走行してくる対向車両の交通量、横断歩道の歩行者又は交差点内若しくは交差点付近の車両の走行挙動などの交差点付近情報を渋滞情報生成装置100へ送信する。また、信号制御装置3は、赤信号開始時点、青信号開始時点などの信号切り替えタイミングを含む信号情報を渋滞情報生成装置100へ送信する。
渋滞情報生成装置100は、車線毎の信号待ち行列の末尾位置を算出する。なお、算出する末尾位置は、過去のデータ、将来のデータの両者を含む。渋滞情報生成装置100は、算出した末尾位置に基づいて、信号待ち行列の行列末尾の予測情報を信号制御装置3へ送信する。これにより、交通安全のための信号制御や情報提供に役立てることができる。なお、1車線の場合には当該車線の信号待ち行列情報を生成し、複数車線の場合には、一部又はすべての車線の信号待ち行列情報を生成することができる。
渋滞情報生成装置100は、算出した末尾位置を用いて、車線毎の平均旅行時間、平均信号待ち回数、渋滞確率などの少なくとも1つを含む渋滞情報を生成する。渋滞情報生成装置100は、通信装置6を介して生成した渋滞情報を車両へ送信する。車線毎の信号待ち行列の末尾位置(すなわち、行列長)を算出することにより、車線毎の旅行時間、信号待ち回数、渋滞確率などの渋滞情報を精度良く生成することができる。なお、車両では、受信した渋滞情報を用いて、目的地までの最適経路の計算や、経路誘導などを行う。
また、渋滞情報生成装置100が、交通管制センタ内のセンタ装置等である場合、渋滞情報生成装置100は、車線毎の平均旅行時間、平均信号待ち回数、渋滞確率などの渋滞情報を用いて、経路計算を行って最適経路の誘導情報を液晶ディスプレイ等の表示装置に表示することもできる。なお、車線毎の平均旅行時間、平均信号待ち回数、渋滞確率などの算出方法は後述する。
図3は本発明に係る渋滞情報生成装置100の構成の一例を示すブロック図である。渋滞情報生成装置100は、装置全体を制御する制御部10、交通量取得手段としての通信部11、車線交通量算出部12、所定の情報(例えば、プログラムコード、設定値あるいは処理結果など)を記憶する記憶部13、プローブ車両情報特定部14、行列末尾情報生成部15、旅行時間算出部16、信号待ち回数算出部17、渋滞確率算出部18などを備える。
通信部11は、車両感知器1、通信装置2、信号制御装置3、画像センサ5、通信装置6との間で通信を行う通信機能を備えている。なお、通信機能は、各装置の設置条件に合わせて、狭域通信機能、UHF帯若しくはVHF帯などの無線LAN等の中域通信機能、又は携帯電話、PHS、多重FM放送若しくはインターネット通信などの広域通信機能のいずれか、あるいはこれらを組み合わせた構成とすることができる。
車線交通量算出部12は、通信部11を介して車両感知器1から取得した交通量を用いて、車線毎の到着交通量を算出する。なお、車線毎の到着交通量の算出については後述する。
プローブ車両情報特定部14は、通信部11を介してプローブ車両から取得したプローブ情報(車両に位置、速度、時刻)を用いて、プローブ車両が車両感知器1の感知領域(所定の地点)を通過した時刻、プローブ車両が信号待ち行列の末尾に到達した時刻(プローブ車両末尾時点)と到達位置(プローブ車両位置)を特定する。ここで、プローブ車両が信号待ち行列の末尾に到達した時刻とは、プローブ車両自身が信号待ち行列の末尾になった時刻をいう。また、到達位置とは、プローブ車両自身が信号待ち行列の末尾になった時刻でのプローブ車両自身の位置である。到達位置は、プローブ車両を含む信号待ち行列の長さで特定することができる。なお、プローブ車両が信号待ち行列の末尾に到達したか否かは、例えば、交差点の手前でプローブ車両の速度が所定の閾値より小さくなったことで判定することができる。
行列末尾情報生成部15は、プローブ車両が車両感知器1の感知領域を通過した時刻、プローブ車両が信号待ち行列の末尾に到達した時刻と到達位置を用いて、車線毎に、任意の時刻に車両感知器1の感知領域を通過した車両が信号待ち行列の末尾となる時刻、末尾となったときの信号待ち行列の末尾位置(信号待ち行列の長さ)を算出する。なお、道路が複数の車線を有している場合、所要の車線のみ末尾位置(信号待ち行列情報)を算出し、すべての車線について末尾位置を算出しなくてもよい。
また、行列末尾情報生成部15は、信号待ち行列が最長になる時点、その時点の信号待ち行列の長さ(最長末尾位置)を算出する。なお、信号待ち行列が最長になるとは、1サイクルにおける信号待ち行列が最長になるということである。また、行列末尾情報生成部15は、信号待ち行列の行列長が移動行列長から停止行列長に移行する時点、その時点の信号待ち行列の長さ(移行末尾位置)を算出する。ここで、信号待ち行列には、完全に停止している停止車両による行列長の時間的変化を示す領域である停止行列長領域と、移動又は移動停止を繰り返している車両による行列長の時間的変化を示す領域である移動行列長領域との2種類の領域がある。移動行列長領域では、信号待ち行列の行列長は移動行列長であり、停止行列長領域では、信号待ち行列の行列長は停止行列長である。
また、行列末尾情報生成部15は、プローブ車両が車両感知器1の感知領域を通過した時刻、プローブ車両が信号待ち行列の末尾に到達した時刻と到達位置を用いて、任意の時刻での信号待ち行列の末尾の位置(信号待ち行列の長さ)を算出する。
旅行時間算出部16は、行列末尾情報生成部15で算出された信号待ち行列の末尾位置を用いて、車線毎の平均旅行時間を算出する。平均旅行時間は、2点間を走行する(例えば、隣接する上流交差点の出口を通過した車両が、交差点を流出する)のに要した旅行時間の平均値である。なお、上流交差点の出口に代えて、車両感知器1の感知領域を旅行時間算出の起点としてもよい。
信号待ち回数算出部17は、行列末尾情報生成部15で算出された信号待ち行列の末尾位置を用いて、車線毎の平均信号待ち回数、信号待ちの確率を算出する。
渋滞確率算出部18は、行列末尾情報生成部15で算出された信号待ち行列の末尾位置を用いて、車線毎の渋滞確率を算出する。なお、渋滞は、交差点を流出するまでの信号待ち回数が2回以上である状態をいい、渋滞確率は、信号待ち回数が2回以上となる確率である。
信号待ち行列に関する情報を算出する場合、交差点に交差する流入路が1車線のみの場合には、車両が走行する車線は1つに限定されるので、流入路に対して1つの信号待ち行列を求めることができる。しかし、通常の道路、特に交通安全上問題となる交通量の多い道路では、複数の車線がある場合が多く、車両がいずれの車線を走行するに応じて車線毎に信号待ち行列が異なる。このため、信号待ち行列に関する情報を精度良く求めるためには、車線を考慮する必要がある。
図4は進路別の道路標識の一例を示す説明図である。図4の例では、交差点への流入路は3車線あり、車線1は左折・直進車線であり、車線2は直進車線であり、車線3は右折車線である。なお、車線と道路標識は一例であって、これに限定されるものではない。例えば、左折車線、右折・直進車線などがあってもよい。
図5は複数車線を有する流入路での車両の走行例を示す説明図である。図5(a)では、車両感知器1を通過する時点で車線2を走行していた車両が、その後車線1へ車線変更して交差点へ進入する例である。例えば、交差点で左折するために直進車線から左折・直進車線に変更する場合、直進車線が信号待ちで渋滞しているため左折・直進車線に変更して交差点を直進する場合などである。
図5(b)では、車両感知器1を通過する時点で車線1を走行していた車両が、その後車線2へ車線変更して交差点へ進入する例である。例えば、左折・直進車線が信号待ちで渋滞しているため左折・直進車線から直進車線に変更して交差点を直進する場合などである。
図5(c)では、車両感知器1を通過する時点で車線2を走行していた車両が、その後車線3へ車線変更して交差点へ進入する例である。例えば、交差点で右折するために直進車線から右折車線に変更する場合などである。
図5(d)では、車両感知器1を通過する時点で車線3を走行していた車両が、その後車線2へ車線変更して交差点へ進入する例である。例えば、交差点で直進するために右折車線から直進車線に変更する場合などである。
図5で説明したように、仮に車両感知器1を通過する時点で車両の走行車線が特定できたとしても、その後車両がどの車線を走行するかで、交差点に到着する到着交通量は車線毎に異なる。このため、精度良く信号待ち行列に関する情報を求めるためには、車線別の到着交通量を算出することが重要であることが分かる。また、車両感知器1を通過する時点で車両が走行する車線を特定できない場合には、一層車線別の到着交通量を算出することが重要である。
次に、本実施の形態で信号待ち行列に関する情報を求めるために必要となる交通流挙動パラメータについて説明する。交通流挙動パラメータには、例えば、自由流速度Vf、右左折直進率Pi(i=r、l、s、右折率Pr、左折率Pl、直進率Ps)、到着交通量率R、進行方向別車線利用率Uij{進行方向i(i=r:右折、l:左折、s:直進)、車線j(3車線の場合、j=1:左、2:中央、3:右)}、発進波伝搬速度Vw、停止波伝搬速度Vs、行列内走行速度Vq、停止行列内の平均車頭間隔Lhなどである。なお、交通流挙動パラメータは、上述のものに限定されるものではない。
交通流挙動パラメータは、信号待ち行列に関する情報を求める前に、所定期間に亘って取得したプローブ情報、車両感知器1や画像センサ5などから取得した情報などを用いて、予め算出しておくことができる。交通流挙動パラメータは、直接算出してもよく、あるいは、直接算出することができない場合には、交通流挙動パラメータと相関関係がある交通環境(例えば、交通量、歩行者等の情報、曜日、時間帯、天候等に関する情報など)に関するデータを十分に収集して相関関係を予め算出しておき、信号待ち行列に関する情報を求める際の交通環境から間接的に交通流挙動パラメータを求めることもできる。
以下、個々の交通流挙動パラメータの算出例について説明する。自由流速度Vfは、交差点の上流の車両感知器1での感知時点(計測時点)から信号待ち行列末尾に到着するまでの交通流の速度と定義することができ、感知時点から行列末尾に到着するまでの時間遅れである。
すなわち、自由流速度Vfは、交差点の十分上流から、行列末尾までの平均的な速度であり、道路や交通状況に依存する。閑散時には、一定速度(例えば、60km/h)としてもよいが、渋滞に向かって、道路全体の交通密度が次第に大きくなると、これに比例して自由流速度Vfも低下する。従って、このような場合には、交通密度に見合った自由流速度Vfを算出して用いる必要がある。
自由流速度Vfの算出方法として、例えば、以下の方法がある。(1)直前の所定期間(例えば、15分)のプローブ情報から、自由流速度Vfを算出する。(2)過去のプローブ情報から取得した自由流速度Vfと、その時の空間密度、占有率、交通量、あるいはその他の交通環境(車両感知器1、画像センサ5等で取得した情報、曜日、時間帯、天候等)との相関関係を統計解析して算出しておき、この相関関係と、信号待ち行列に関する情報を求める時点での交通環境とから、自由流速度Vfを決定する。
例えば、自由流速度Vfと空間密度又は占有率との相関関係は1次式(直線)で近似することができ、空間密度又は占有率が増加するに応じて、自由流速度Vfは小さくなる。
次に、到着交通量率Rについて説明する。交差点の上流において車両感知器1で計測した交通量が全て交差点に到着するとは限らず、途中で道路から流出したり、あるいは道路の途中から流入したりする。このため、交差点の流入路の途中で流出又は流入する交通量を考慮して計測した交通量を補正する必要がある。到着交通量率Rは、交差点に到着する到着交通量を、上流の車両感知器1で計測した交通量で除算した値と定義する。
特定の車線を走行する2台の車両間における、車両感知器1の設置位置での車両数と、交差点付近での車両数とが分かれば、その比を統計処理することにより、到着交通量率Rがある程度推定可能である。しかし、一般に、道路が複数車線の場合、進路によっては、車両が複数の車線を利用できることがある。このため、本実施の形態では、以下のような方法を用いる。
すなわち、(1)車両に画像センサやGPS受信機等を搭載している場合、車両がどの車線を走行するかを検出することができる可能性が高いので、このような場合には、プローブ情報に走行中の車線情報を含めるようにして、プローブ情報から車線情報を取り出すことができる。(2)利用可能な車線が1つに限定される進路(例えば、左折のみの車線、直進のみの車線、右折のみの車線など)についての交通量のみを利用する。
図6は到着交通量率Rの算出方法の一例を示す説明図である。2台の車両C1、C2が光ビーコン等の通信装置と交信し、この間に通過した断面交通量を車両感知器1で計測するとする。さらに、2台の車両C1、C2が共に、同一の自由流速度Vfで信号待ち行列に連なり、同一の青信号で交差点を同一方向(左折、直進、右折)に流出したとする。
車両感知器1で計測された、この2台の車両C1、C2間の断面交通量をQ、2台の車両C1、C2が信号待ち行列に加わり、停止した位置での車頭間距離をL、停止行列内の平均車頭間隔をLhとする。到着交通量率Rは、R=Q2/Q1で算出することができる。ここで、Q1=Q/3(3車線あるので計測した断面交通量Qを3で除算)、Q2=L/Lh−1である。
到着交通量率Rは、信号待ち行列内の車両の車種(例えば、小型車、普通車、大型車など)に応じて変動する可能性があるが、大量のデータで統計解析すれば、平均的な行列末尾での到着交通量率Rを求めることができる。なお、交通環境(曜日、時間帯等)で区別してもよい。また、車両感知器1の位置から、交差点までの道路が車線変更禁止、あるいは、ほとんど車線変更がなされない場合には、断面交通量による平均ではなく、当該走行車線の交通量だけを用いてもよい。これにより、交差点上流と交差点との間で流出する車両や流入する車両が存在する場合でも、交差点に到着する到着交通量を補正することができる。
次に、右左折直進率Pi及び進行方向別車線利用率Uijについて説明する。図5の例で説明したように、車線別の到着交通量を算出することが重要である。通常の一般的な複数車線の道路では、交差点をどの方向に流出するかで走行車線が決まるため、少なくとも、右折車線とそれ以外の車線等、車線ごとに信号待ち行列長等を予測する必要がある。このためには、上流からの交通量が各車線をどのような割合で利用するかを決定する必要がある。そこで、この基準として、交差点での右左折直進率Piが重要となる。
また、幹線道路では、交差点を右左折直進する場合、その進行方向に対応する車線が複数ある場合がある。このためには、上流からの交通量が進行方向別にどの車線を利用するかを決定する必要がある。そこで、この基準として、進行方向別車線利用率Uijが重要となる。
図7は右左折直進率Pi及び進行方向別車線利用率Uijを示す説明図である。交差点の右左折直進率Pi(i=r、l、s、Pr:右折率、Pl:左折率、Ps:直進率)は、時間帯、催し物の有無、交通状況等により変化する。従って、例えば、以下のような方法で算出することができる。
すなわち、(1)直前の所定期間(例えば、30分)のプローブ情報、あるいは、交差点に設置した画像センサ5で交差点を流出する車両を撮像し、得られた情報から、右左折直進率を算出する。(2)過去のプローブ情報から取得した右左折直進率を、曜日、時間帯、天候、催し物の有無等の交通環境との相関関係で整理して算出しておき、この結果と信号待ち行列に関する情報を求める時点での交通環境とに基づいて、右左折直進率Piを決定する。
また、進行方向別車線利用率Uijは、進行方向i(i=r:右折、l:左折、s:直進)、及び車線j(3車線の場合、j=1:左、2:中央、3:右)毎に決定することができる。進行方向別車線利用率Uijは、人手による調査等で決定してもよいが、所要のデータを収集して統計的に分析することにより、自動的に算出しておくことが望ましい。本実施の形態では、例えば、以下のような方法を用いることができる。
すなわち、(1)画像センサ5を利用する。例えば、交差点に設置した画像センサ5により、交差点手前で各車両が利用した車線、及び当該車両が交差点を流出する方向を取得することにより、直接、交差点出口の進行方向i(i=r:右折、l:左折、s:直進)別の車線j(3車線の場合、j=1:左、2:中央、3:右)利用率Uijを計測する。(2)プローブ情報を利用する。例えば、車両の位置検出精度が高精度化し、利用している車線の情報も検出できるようになると、この情報と交差点での進行方向から、進行方向i別の車線j利用率Uijを計測することができる。
上述の断面交通量Q、到着交通量率R、右左折直進率Pi及び進行方向別車線利用率Uijを用いて、車線毎の到着交通量Qjは、式(1)で算出することができる。なお、Σは、進行方向iに対する和を示す。
例えば、図7において、右折率Prを10%、左折率Plを20%、直進率Psを70%、直進(s)車両が左車線1を利用する進行方向別車線利用率Us1を30%、直進(s)車両が中央車線2を利用する進行方向別車線利用率Us2を70%とすると、各車線j(j=1:左、2:中央、3:右)の到着交通量Q1、Q2、Q3は、Q1=Q・R・(0.2+0.3×0.7)=0.41Q・R、Q2=Q・R・(0.7×0.7)=0.49Q・R、Q3=0.1Q・Rとなる。これにより、車線が複数存在する場合、車線毎の到着交通量を精度良く求めることができる。
次に、停止波伝搬速度Vs及び発進波伝搬速度Vwについて説明する。交差点の上流側から進入する交通量がある場合、信号待ちで停止する停止車両が赤信号開始時点以降増加し、停止車両の末尾は時間の経過とともに上流側に延びる。このため、停止車両の末尾位置は、ある伝搬速度で上流側へ移動する。これを停止波伝搬速度Vsと定義することができる。また、その後、青信号開始時点で信号待ち行列内の停止車両の先頭側から発進するので、発進車両の位置は、時間の経過とともに上流側に延びる。このため、発進車両の位置は、ある伝搬速度で上流側へ移動する。これを発進波伝搬速度Vwと定義することができる。すなわち、発進波伝搬速度Vwは、赤信号で信号待ちしていた行列内の車両が、青信号で発進するまでには、当該車両の前方に停止していた車両の数(又はそれまでの行列の距離)に依存する時間遅れ(発進波伝搬速度に関連する発進遅れ)がある。
プローブ情報と信号切り替えタイミングの情報から、行列待ち時の停止位置から交差点の停止位置までの距離L、青信号開始(右折の場合の青矢開始を含む)から当該車両が移動を開始するまでの時間遅れをTとすると、発進波伝搬速度Vwは、Vw=L/Tで算出することができる。発進波伝搬速度Vwは、信号待ち行列内の車両の車種(例えば、小型車、普通車、大型車など)に応じて変動する可能性があるが、大量のデータで統計解析すれば、平均的な発進波伝搬速度Vwを求めることができる。なお、交通環境(曜日、時間帯等)で区別してもよい。また、発進波伝搬速度Vwは、車線により異なる場合もあることから、車線毎に算出しておくことが望ましい。また、信号待ちで停止しようとする車両の速度と、青信号で発進し始めた車両の速度とは、同程度と考えられるので、停止波伝搬速度Vsと発進波伝搬速度Vwとが等しいと仮定することができる場合がある。
次に、行列内走行速度Vqについて説明する。行列内走行速度Vqは、信号待ち行列内の車両が発進した後の走行速度である。より具体的には、車線毎に交差点を流出するまで、あるいは赤信号で停止に向かうまでの行列内での平均的な車両の走行速度である。なお、行列内走行速度Vqは、当該車線の捌け交通量で決定される。例えば、渋滞による先詰まり(交差点を流出した先が渋滞していること)がなければ、一般的な信号現示の場合、右折では青信号時の捌け交通量(対向車両の多さ、横断歩道での歩行者の多さと関連)、及び右折青矢で捌ける交通量で決定される。また、左折では青信号時の捌け交通量(横断歩道での歩行者の多さと関連)で決定される。さらに、直進では、青信号時の捌け交通量(飽和交通流率と関連)で決定される。
行列内走行速度Vqは、右左折直進毎、あるいは車線毎に算出することができる。
まず、直進のみの場合には、飽和交通流率(交差点流入部において、交通需要が十分に存在する状態で、単位時間・一車線当たりに停止線を通過し得る最大の車両数である。通常は青1時間当たりの通過台数で表わされる。)と関係し、先詰まりがない限り、交差点で決定される指標である。従って、過去の直進のプローブ情報から統計処理で算出しておけば、十分である。但し、勿論、直前の所定期間(例えば、15分)の直進のプローブ情報から行列内走行速度Vqを算出してもよい。
左折のみの場合には、左折後に横断歩道を渡る人がいるか否かで異なる。まず、左折後に横断歩道を渡る人がいる場合、(1)直前の所定期間(例えば、15分)の左折のプローブ情報から行列内走行速度Vqを算出する。(2)横断歩道を渡る人の状況が画像処理等で分かる場合には、例えば、過去の左折のプローブ情報から取得した行列内走行速度Vqと、その時の横断歩道を渡る人数との相関関係を統計解析しておき、この相関関係と信号待ち行列に関する情報を求める時点での横断歩道を渡る人数とに基づいて行列内走行速度Vqを算出する。
そして、左折後に横断歩道を渡る人がいない場合には、行列内走行速度Vqは道路構造等に依存し、先詰まりがない限り、交差点で決定される指標である。従って、過去の左折のプローブ情報から統計処理で算出しておけば十分である。但し、勿論、直前の所定期間(例えば、15分)の左折のプローブ情報から行列内走行速度Vqを算出してもよい。
右折のみの場合には、青信号時の行列内走行速度Vqと、右折青矢時の行列内走行速度Vqの2種類がある。まず、青信号時の行列内走行速度Vqの場合、対向直進交通量、横断歩道を渡る人数(横断歩道がある時)に依存する。この場合の算出方法は、例えば、以下の方法がある。すなわち、(1)直前の所定期間(例えば、15分)の右折のプローブ情報から、行列内走行速度Vqを算出する。(2)過去の右折のプローブ情報から取得した行列内走行速度Vqと、その時の対向直進交通量、横断歩道を渡る人数(横断歩道がある時)との相関関係を統計解析しておき、この相関関係と信号待ち行列に関する情報を求める時点での対向直進交通量、横断歩道を渡る人数(横断歩道がある時)とに基づいて行列内走行速度Vqを算出する。
そして、右折青矢の行列内走行速度Vqの場合、行列内走行速度Vqは、道路構造等に依存し、先詰まりがない限り、交差点で決定される指標である。従って、過去の右折のプローブ情報から統計処理で算出しておけば十分である。但し、勿論、直前の所定期間(例えば、15分)の右折のプローブ情報から行列内走行速度Vqを算出してもよい。
左折・直進の混合する車線の場合には、左折後に横断歩道を渡る人がいるか否かで異なる。左折後に横断歩道を渡る人がいる場合、直進車両は、左折車両に追従するしかないため、行列内走行速度Vqは、左折のみの場合と同様になると考えられる。但しデータとしては、直進と左折の両方が利用できる。
そして、左折後に横断歩道を渡る人がいない場合、行列内走行速度Vqは、ほぼ道路構造に依存し、先詰まりがない限り、交差点で決定される指標である。従って、過去の直進及び左折のプローブ情報から、統計処理で算出しておけば十分である。なお、勿論、直前の所定期間(例えば、15分)の左折と直進のプローブ情報から行列内走行速度Vqを算出してもよい。
右折・直進の混合する車線の場合、直進車両は、右折車両に追従するしかないため、右折のみの場合と同様になると考えられる。但しデータとしては、直進と右折の両方が利用できる。
次に、信号待ち行列がどのように発生し、どのように解消するかを説明する。図8は信号待ち行列の推移を示す説明図である。図8において、横軸は時刻を示し、縦軸は信号待ち行列の行列長を示す。行列長は総遅れ時間に依存し、総遅れ時間は、交差点の上流から流れて来て行列末尾に到着する到着交通量と交差点での青信号による捌け交通量との差の積分で決定される。最初の赤信号開始時刻tr1で信号待ちの車両がないとする。また、赤信号開始直後、上流から交通量が自由流速度Vfで流入すると仮定する。
図8に示すように、赤信号開始時刻tr1で交差点の上流側から進入する交通量がある場合、信号待ちで停止する停止車両が赤信号開始時刻tr1以降増加し、停止車両の末尾(行列長)は時間の経過とともに上流側に延びる。このため、停止車両の末尾位置は、停止波伝搬速度Vsで移動する。これにより、信号待ち行列の末尾の位置は、交差点の上流側に延びる(信号待ち行列長が長くなる)。
その後、青信号開始時刻tgで信号待ち行列内の停止車両のうち先頭側の車両から発進するので、発進車両の位置は、時間の経過とともに上流側に延び、発進車両の位置は、発進波伝搬速度Vwで移動する。発進車両の位置と停止車両の位置とが一致する時刻で行列長が最長となる(図8の点M参照)。
信号待ち行列の長さが最長になった時点で、信号待ち行列中の停止車両が存在しなくなり、その後は、信号待ち行列内のすべての車両が移動又は移動停止を繰り返し、信号待ち行列の長さは次第に短くなる。青信号中、すなわち、次の赤信号開始時刻tr2までに信号待ち行列内の車両がすべて交差点から流出できた場合、捌け残りがなくなり信号待ち行列は解消する。
次に、上述の信号待ち行列の推移を車両の進行方向別に説明する。図9は直進車両のみの車線の場合の信号待ち行列の推移を示す説明図である。図9において、横軸は時刻を示し、縦軸は信号待ち行列の行列長を示す。交差点上流の車両感知器1を通過した車両の大部分は、信号待ち行列のない領域では、自由流速度Vfで走行し、信号待ち行列の行列末尾に到着して停止する。その後、信号が青に切り替わり、信号待ち行列の先頭が走行を開始すると発進車両の位置が発進波伝搬速度Vwで上流に伝わる。発進開始後は、車両は行列内走行速度Vqで平均的に走行する。信号待ち行列長が信号1回待ち以内であれば、待ち行列内にあった車両は全て交差点を通過できるが、信号待ち行列長がこれを越えた場合には、待ち行列の後ろの方にあった車両は、再度赤信号で交差点を通過できず、捌け残りが起こる。
なお、赤信号開始時刻で捌け残りがある場合、信号待ち行列には、完全に停止している停止車両の末尾(停止行列長領域の行列末尾)と、移動又は移動停止を繰り返している車両の末尾(移動行列長領域の末尾)との2種類の行列末尾が存在する。
図10は左折車両のみの車線の場合の信号待ち行列の推移を示す説明図である。図10において、横軸は時刻を示し、縦軸は信号待ち行列の行列長を示す。この場合は、上述の図9の場合と同様の形態になるが、左折後に横断歩道があり、横断歩道を渡る人数が多い場合には、図10に示すように行列内走行速度Vqが大幅に低下し、発進も不規則となる。横断歩道がない場合でも、発進波伝搬速度Vw、行列内走行速度Vqは、図9の場合と異なると考えられる。
なお、図9の場合と同様に、赤信号開始時刻で捌け残りがある場合には、信号待ち行列には、完全に停止している停止車両の末尾(停止行列長領域の行列末尾)と、移動又は移動停止を繰り返している車両の末尾(移動行列長領域の末尾)との2種類の行列末尾が存在する。ここで、行列内走行速度Vqが小さく左折する交通量が多い場合には、移動又は移動停止を繰り返している車両の末尾(移動行列長領域の末尾)が上流側に延びて行列長が長くなる場合もある。
図11は右折車両のみの車線の場合の信号待ち行列の推移を示す説明図である。図11において、横軸は時刻を示し、縦軸は信号待ち行列の行列長を示す。この場合、行列内走行速度Vqは、信号が青で対向の直進車両があり、あるいは、人が横断歩道を渡っており、避けて右折する場合と右折青矢になってから右折する場合との2種類ある。行列内走行速度Vqは、後者の方が大きい。
なお、図9の場合と同様に、赤信号開始時刻で捌け残りがある場合には、信号待ち行列には、完全に停止している停止車両の末尾(停止行列長領域の行列末尾)と、移動又は移動停止を繰り返している車両の末尾(移動行列長領域の末尾)との2種類の行列末尾が存在する。ここで、行列内走行速度Vqが小さく右折する交通量が多い場合には、移動行列長領域でも行列長が長くなる場合もある。
直進車両、左折車両、右折車両等が混合する車線の場合、すなわち、図4で示したように、同一車線に複数の進路がある場合には、各車線の信号待ち行列の推移は、発進波伝搬速度Vwや行列内走行速度Vqなどが遅い方の進路の形態に近くなる。例えば、左折車両と直進車両とが混合する場合には、左折車両のみの場合の形態に近くなり、右折車両と直進車両とが混合する場合には、右折車両のみの場合の形態に近くなり、単一車線の道路の場合には、左折車両又は右折車両のみの場合の形態に近くなる。
次に、プローブ情報を用いた車線毎の信号待ち行列の末尾の予測方法について説明する。以下では、ある時刻に車両感知器1の感知領域を通過した車両が信号待ち行列の末尾に到着する時刻とその車両の末尾の位置を予測する場合と、任意の時刻における信号待ち行列の末尾の位置を予測する場合について説明する。まず、ある時刻に車両感知器1の感知領域を通過した車両が信号待ち行列の末尾に到着する時刻とその車両の末尾の位置を予測する場合について説明する。なお、プローブ情報に車線情報が含まれているとし、車線情報として、例えば、車線、路側からの距離などの走行方向に対して横方向の位置の情報が含まれているとする。これにより、プローブ車両が走行している車線が分かる。
まず、プローブ情報に基づいて、プローブ車両が信号待ち行列の末尾に到達した時刻と到達位置を特定する方法について説明する。交差点の上流から流入路を走行するプローブ車両の位置、速度、時刻などのプローブ情報を通信装置等で取得できた場合、プローブ車両が信号待ち行列の末尾に到達したか否かを、例えば、交差点の手前で車速が所定の閾値より小さくなったことで判定することができる。これにより、プローブ車両が信号待ち行列の末尾に到達した時刻と到達位置を特定することができる。
この場合、プローブ情報を送信するための通信機能の車両への搭載率に影響を受ける。 例えば、搭載率が5%程度であるとする。仮に、停止線から車両感知器1の設置位置までの距離を1000m、渋滞による信号待ち行列長を200m、信号待ち行列内の車頭間隔を10m、信号待ちのない自由走行領域での車両速度を20m/秒、自由走行領域での車頭間隔を40m(車頭時間は2秒)とする。また、一車線当たり、自由走行領域800m(1000m−200m)内には20台の車両が存在し、信号待ち行列内には20台の車両が存在するとする。
この条件では、40秒に1台の車両の割合で車線毎にプローブ情報が得られ、瞬間的には、自由走行領域に1台、信号待ち行列内に1台のプローブ車両のプローブ情報が得られるだけである。従って、プローブ車両が信号待ち行列末尾に到着した時刻における行列末尾のみが結果的に検出できるだけである。すなわち、上記の数値例では、40秒経過の都度に行列末尾が得られることになる。
図12は停止行列長領域の行列末尾の予測方法の一例を示す説明図である。以下、直進車線の場合を示すが、他の車線についても同様である。停止行列長領域は、上述したとおり、信号待ち行列内で完全に停止している停止車両で構成される行列領域である。取得したプローブ情報を用いて、プローブ車両の位置情報の軌跡を追跡すると、プローブ車両が交差点上流の車両感知器1の感知領域を通過した時刻t0が分かり、このプローブ車両が当該走行車線の行列末尾に到着した時刻t1とその位置(到達位置、図12で点A)が分かる。
時刻t0以降に車両感知器1を通過した断面交通量Qを計測することができるので、任意の時刻t(第2時点、t>t0)に車両感知器1を通過した車両が行列末尾に到着する時刻T、及び到達位置(図12で点X)は、上述の交通流挙動パラメータ(自由流速度Vf、右左折直進率Pi、到着交通量率R、進行方向別車線利用率Uij、停止行列内の平均車頭間隔Lh、発進波伝搬速度Vw、停止波伝搬速度Vs、行列内走行速度Vq等)、信号切り替えタイミング(赤信号開始時刻tr、青信号開始時刻tg等)を既知とすると、車両が到達する車線ごとに予測することができる。
例えば、時刻t0から時刻tまでの間に車両感知器1で計測された断面交通量をQ(t0、t)とする。時刻tに車両感知器1の感知領域を通過した車両が、停止行列長領域の車線jの行列末尾に到着する時刻T、及びその時の行列末尾の位置L(T)は、それぞれ式(2)、式(3)で求めることができる。ただし、式(4)が成立するものとする。式(4)が成立する場合は、信号待ち行列内に完全に停止している車両が存在する。これにより、最長末尾位置及び時点までは、信号待ち行列の末尾を停止車両の行列末尾として求めることができる。
図13は信号待ち行列が最長となる場合の行列末尾の予測方法の一例を示す説明図である。図13に示すように、信号待ち行列が最長となる時刻をTmとし、その時の末尾位置をL(Tm)とする(図13の点M)。また、時刻tmに車両感知器1の感知領域を通過した車両が信号待ち行列に到達したときに信号待ち行列が最長になったとする。この場合、Tm、L(Tm)は、それぞれ式(5)、式(6)で求めることができる。なお、この場合、式(7)が成立するものとする。任意の時刻tに車両感知器1の感知領域を通過した車両に対して、式(2)及び式(3)から求めた時刻T及びその時の行列末尾のL(T)を、式(5)及び式(6)のTm、L(Tm)に代入した場合に、当該式(5)及び式(6)の等号が成立するか否かを判定し、成立した場合、信号待ち行列が最長になったことを示す。
図14は移動行列長領域の行列末尾の予測方法の一例を示す説明図である。移動行列長領域は、上述したとおり、信号待ち行列内で移動又は移動停止を繰り返している車両で構成される行列領域である。この場合、任意の時刻tに車両感知器1の感知領域を通過した車両が、移動行列長領域の車線jの行列末尾に到着する時刻T、及びその時の行列末尾の位置L(T)は、それぞれ式(8)、式(9)で求めることができる。ただし、式(10)が成立するものとする。また、任意の時刻tは、時刻tm以降の時刻である。これにより、信号待ち行列内の車両が移動又は移動停止を繰り返し、信号待ち行列長が減少している場合であっても、渋滞時等の信号待ち行列に関する情報を車線に対応させて精度良く予測することができる。
図15は信号待ち行列が移動行列長領域から停止行列長領域に移行する場合の行列末尾の予測方法の一例を示す説明図である。図15に示すように、信号待ち行列が移動行列長領域から停止行列長領域に移行する(すなわち、信号待ち行列の行列長が移動行列長から停止行列長に移行する)時刻をTnとし、その時の末尾位置をL(Tn)とする(図15の点N)。また、時刻tnに車両感知器1の感知領域を通過した車両が信号待ち行列に到達したときに信号待ち行列が移動行列長領域から停止行列長領域に移行したとする。この場合、Tn、L(Tn)は、それぞれ式(11)、式(12)で求めることができる。式(12)が成立する場合は、捌け残りがある場合である。
あるいは、Tn、L(Tn)は、それぞれ式(13)、式(14)で求めることができる。式(14)が成立する場合は、捌け残りがない場合である。この場合、信号待ち行列の行列長は0となる。
時刻Tn以降の次の停止行列長領域の行列末尾の予測、すなわち、時刻tn以降の時刻tに車両感知器1の感知領域を通過した車両が、停止行列長領域の車線jの行列末尾に到着する時刻T、及びその時の行列末尾の位置L(T)は、それぞれ式(15)、式(16)で求めることができる。ただし、式(17)が成立するものとする。式(17)が成立する場合は、捌け残りがある場合を示す。
あるいは、T、L(T)は、それぞれ式(15)、式(18)で求めることができる。ただし、式(19)が成立するものとする。式(19)が成立する場合は、捌け残りがない場合を示す。これにより、青信号で信号待ちが解消せずに捌け残りがあり、信号待ち行列長が増加している場合であっても、渋滞時等の信号待ち行列に関する情報を車線に対応させて精度良く予測することができる。
上述の図12〜図15の例は、直進車線の場合であるが、左折車線や右折車線の場合も同様に信号待ち行列の末尾の情報を求めることができる。
新たなプローブ車両のプローブ情報が得られて、信号待ち行列の末尾が正確に把握できれば、これを考慮して信号待ち行列の末尾を予測することになる。上述の数値例で示したように、40秒経過の都度、新たなプローブ情報を取得することができるとすれば、信号待ち行列の予測を行う間隔は、高々40秒程度で十分であり、40秒程度先までの時間範囲内での信号待ち行列を予測すればよいといえる。ただし、プローブ車両の比率が大きくなればなる程、予測を行う間隔を短くすることができるので、予測の時間範囲が短くなり、それだけ予測精度が高くなる。予測した後に、信号切り替えタイミングに変更が生じた場合には、これを考慮して即座に予測値を変更すればよい。
なお、停止行列長領域での行列末尾は、青信号で発進波が伝搬し、行列末尾が移動を開始した時点(例えば、図13における点M)で、移動行列長領域での行列末尾に切り替わる。後者の行列末尾は、図13に示すように、行列内走行速度Vqと流入してくる交通量に依存するが、停止時の最長行列末尾(点M)が行列内走行速度Vqで移動したものと殆ど変わらないため、これに近似して行列末尾を予測することもできる。
上述の実施の形態では、プローブ車両が信号待ち行列の末尾に到達した到達時刻と到達位置を利用して、任意の時刻に車両感知器1の感知領域を通過した車両が、信号待ち行列の末尾に到達する時刻とその時刻での行列末尾の位置を求めるものであったが、プローブ車両の走行軌跡中の他の位置及び時刻を利用することもできる。
図16はプローブ車両の走行軌跡の利用の例を示す説明図である。図16に示すように、プローブ車両は、時刻t1で信号待ち行列の末尾に到達する(点A参照)。その後信号待ちで停止を続け、時刻t2で発進を開始する(点B参照)。そして、時刻t2以降は、行列内走行速度Vqで交差点に向かって走行し、時刻t3で交差点から流出する(点C)。
この場合、プローブ車両が行列末尾(図16の点A)に到着したときの情報を利用する代わりに、プローブ車両が行列内で停止した後に動き始めた点B、あるいは、交差点を流出した点Cの情報を利用して、それまでに予測した行列末尾の予測値を補正することもできる。
次に、任意の時刻における信号待ち行列の末尾の位置を予測する場合について説明する。図17は任意の時刻における信号待ち行列の末尾の位置を算出する例を示す説明図である。任意の時刻tとプローブ車両が信号待ち行列の末尾に到達した到達時刻t1との時間差Δt(例えば、Δt=t−t1)を算出し、そのプローブ車両が車両感知器1の感知領域を通過した時刻t0(第1時点)から時間差Δtの間の所定車線の到着交通量及びプローブ車両の到達位置L(t1)を用いて、任意の時刻tの信号待ち行列の末尾の位置L(t)を算出することができる。
なお、この場合、上述の式(2)、式(3)、式(8)、式(9)、式(15)、式(16)、式(18)を逐次求めていくことにより算出できる。これにより、プローブ情報を取得した後であれば、任意の時点での信号待ち行列の末尾の位置を車線毎に逐次求めることができる。
ここで、上記の任意の時刻が、現在又は過去のとき推定、将来のとき予測と区別することにすると、将来の行列末尾の予測では、図17から明らかなように、現在時刻から、車両感知器1の位置から行列末尾までの自由走行時間先の予測までが可能である。それ以後は、車両感知器1で交通量が計測されていないためである。なお、本実施の形態では、上記推定、予測を区別せず、両方の概念を含めて予測という表現を用いることにする。
プローブ情報に、車線又は路側からの距離等の横方向の位置の情報が含まれていない場合には、少なくとも交差点を流出する時点までは、プローブ車両がどの車線を走行しているかが分からない。また、プローブ車両が交差点を流出した場合でも、1つの進行方向に対して複数の車線が利用できるときは、流出先の進行方向のみでは、プローブ車両が走行した車線を特定することができない。このような場合には、以下の方法で対応することができる。
まず、交差点を流出した時点での車線を特定する場合について説明する。プローブ車両が、交差点を流出した時点で、当該進行方向に対して利用できる車線が特定できる場合には、この時点で、そのプローブ車両のプローブの情報(例えば、図16の点A、点B、点Cでの情報)を利用して、当該車線の行列末尾を予測する。特に、右折の場合には、特定できる場合が多く、かつ予測結果の利用価値も高いので、本方式は有意義である。
次に、車線毎の行列末尾の差異を利用する場合について説明する。例えば、直進車線と右折車線とでは、行列末尾(例えば、長さ)に大きな差があることが多い。従って、プローブ車両が行列末尾に到着した時刻の行列末尾が、それまでに予測していた当該時刻の行列末尾と異なる場合には、その車線ではないと判定することができる。このため、必ずしも、プローブ車両が交差点を流出するまで待たなければ利用できないということはない。
次に、複数利用可能な車線の行列末尾の同一性を利用する場合について説明する。例えば、1つの進行方向に対して、複数の車線が利用できる場合、直進方向の車線が2車線ある場合、左折方向の車線が2車線ある場合に、どちらの車線の行列末尾(例えば、信号待ち行列の長さ)もあまり変わらないと考えることもできる。従って、この場合には、どちらも同じ行列末尾であると判定して、両方の車線における行列末尾の予測に対して、当該プローブ情報を利用する。なお、上記のようにして予測した行列末尾は、時間が経過し過ぎると精度が低下するので、有効期限(例えば、1分)を設定しておく必要がある。
上述のようにして求めた信号待ち行列の末尾位置を用いて、渋滞情報を求める方法について説明する。まず、平均旅行時間の算出方法について説明する。赤信号開始(又は青信号開始)から次の赤信号開始(又は次の青信号開始)までのように、信号周期における平均旅行時間の算出にあたっては、全車両の旅行時間を平均する。この場合、次の2通りの方法を用いることができる。
まず、第1の方法(直接的算出方法)は、全車両の旅行時間を直接的に算出する方法である。すなわち、各車両が、当該信号周期内に道路の最上流地点(例えば、隣接する上流側交差点の出口など)を通過した後、交差点を流出するまでの旅行時間を算出し、算出した各車両の旅行時間を平均することにより、平均旅行時間を算出する。
この直接的算出方法では、信号待ち行列の末尾位置、青信号による発進波伝搬速度Vw、自由流速度Vf、行列内走行速度Vqを利用することができる。なお、道路の最上流地点と車両感知器1の感知領域とが接近している場合、旅行時間の算出起点を車両感知器1の感知領域で代用することもできる。なお、本実施の形態では、信号周期は、分かり易く表現するため、赤信号開始から次の赤信号開始までの時間としたが、これに限定されるものではなく、1周期の期間であれば、青信号開始から次の青信号開始までの時間等、どのように定義してもよい。
以下、直接的算出方法を具体的に説明する。図18は車両が停止行列長領域に到着するタイミングでの旅行時間を算出する一例を示す説明図であり、図19は車両が移動行列長領域に到着するタイミングでの旅行時間を算出する一例を示す説明図である。停止行列長領域は、上述したとおり、信号待ち行列内で完全に停止している停止車両で構成される行列領域である。また、移動行列長領域は、上述したとおり、信号待ち行列内で移動又は移動停止を繰り返している車両で構成される行列領域である。図において、点D1〜D5、点E1〜E7、点F1〜F6は、それぞれ異なる車両の走行軌跡(時間と位置の関係)を示している。また、tr1は赤信号開始時刻であり、tr2は次の赤信号開始時刻である。また、tg1は青信号開始時刻であり、tg2は次の青信号開始時刻である。
各車両の旅行時間は、停止行列長領域の行列末尾(直線AB、曲線BM、直線GN、曲線NJ)、移動行列長の行列末尾(曲線MN)、青信号による発進波(直線CM、直線HJ)が決まれば、一意的に算出できる。ここで、行列末尾BM、MN、NJは、車両感知器1の交通量及びプローブ情報等で算出可能(行列末尾は、予測値、又は過去に遡って予測値を修正したデータ)であり、発進波である直線CM、直線HJの傾きは、青開始時刻tg1、tg2と発進波伝搬速度Vwで決定され、停止行列長領域の直線AB、直線GNの傾きもVwである。
図18では、車両D、Eが停止行列長領域の行列末尾D3、E3に到着するタイミングであることを示している。この場合、車両Dは、信号待ちをした後、交差点を通過するが(走行軌跡がD1〜D5)、車両Eは、2回信号待ちとなっている(走行軌跡がE1〜E7)。車両D、Eが車両感知器1を通過した時刻と位置(それぞれ、点D2、E2で示される)が分かれば、自由走行(信号待ち状態でない走行状態)を示す直線を決定することができる。そして、道路最上流地点を通過した時刻と位置(それぞれ、点D1、E1)を決定することができる。
そして、直線D1D2及び直線E1E2と曲線BMとの交点が、それぞれD3、E3となる。このD3、E3の位置(行列長)に対応する発進波の直線CM上の位置がD4及びE4である。この点D4、E4以降、車両D、Eは、行列内走行速度Vqで走行し、車両Dは、交差点位置D5に到着する。一方、車両Eは、信号待ち行列の末尾位置の直線GN上の点E5に達する。この点E5の位置(行列長)に対応する発進波の直線HJ上の位置がE6である。この点E6以降、車両Eは、行列内走行速度Vqで走行し、交差点位置E7に到着する。
以上より、車両Dの旅行時間は、D5での時刻とD1での時刻との時間差で算出することができ、車両Eの旅行時間は、E7での時刻とE1での時刻との時間差で算出することができる。
図19では、車両Fが移動行列長領域の行列末尾F3に到着するタイミングであることを示している。この場合、車両Fは、1回信号待ちとなっている(走行軌跡がF1〜F6)。車両Fが車両感知器1を通過した時刻と位置(F2で示される)が分かれば、自由走行(信号待ち状態でない走行状態)を示す直線を決定することができる。そして、道路最上流地点を通過した時刻と位置(F1)を決定することができる。なお、本実施の形態において、信号待ちは、信号待ちにより車両が完全停止している状態における、異なる赤信号の回数をいう。
そして、直線F1F2と移動行列末尾の曲線MNとの交点がF3となる。このF3以降、車両Fは、行列内走行速度Vqで走行し、信号待ち行列の末尾位置の直線GN上の点F4に達する。この点F4の位置(行列長)に対応する発進波の直線HJ上の位置がF5である。この点F5以降、車両Fは、行列内走行速度Vqで走行し、交差点位置F6に到着する。
以上より、車両Fの旅行時間は、F6での時刻とF1での時刻との時間差で算出することができる。なお、上述の例では、行列末尾に対応する曲線を既知としているが、実際には、各車両が車両感知器1を通過する都度、その車両の軌跡を求め、行列末尾を決定して旅行時間を算出するという手順を用いることもできる。
次に、旅行時間の算出例として第2の方法(間接的算出方法)について説明する。間接的算出方法は、いわゆる信号待ちによる遅れ時間を利用して旅行時間を間接的に求める方法である。例えば、赤信号で停止しているすべての車両に対して、当該信号周期内における総遅れ時間を累計する。ここで、信号周期は、第1の方法と同様に赤信号開始(又は青信号開始)から次の赤信号開始(又は次の青信号開始)までの時間とすることができるが、これに限定されるものではない。
図20は遅れ時間を利用して旅行時間を算出する一例を示す説明図である。図20において、tr1は赤信号開始時刻であり、tr2は次の赤信号開始時刻である。また、tg1は青信号開始時刻であり、tg2は次の青信号開始時刻である。また、図20では、当該信号周期を赤信号開始tr1から次の赤信号開始tr2までとしているが、これに限定されるものではない。
信号待ち行列内のすべての車両の遅れ時間の合計である総遅れ時間DTは、停止行列長領域(図20でS1の領域)で信号待ちをしている全車両の停止時間の累計DT1と、移動行列長領域(図20でS2の領域)で信号待ちをしている全車両の自由走行時間からの増分時間(自由走行時間よりも遅い時間分)の累計DT2との和(DT1+DT2)で算出することができる。
停止行列長領域の行列長の時間積分、すなわち、停止行列長領域の面積をS1として表わし、移動行列長領域の行列長の時間積分、すなわち、移動行列長領域の面積をS2として表わす。この場合、DT1は、式(20)で算出することができ、DT2は、式(21)及び式(22)で算出することができる。なお、式(21)の算出の詳細は後述する。
そして、車両1台当たりの遅れ時間DT0は、式(23)で算出することができ、平均旅行時間DTsは、式(24)で算出することができる。ここで、Lupは、道路最上流地点の位置であり、Lup/Vfは道路最上流地点から交差点までの自由走行時間に相当する。なお、DT1≫DT2である場合、あるいは、Vq≒Vfである場合、DT2≒0としてDT2を無視することもできる。
移動行列長領域で信号待ちをしている全車両の自由走行時間からの増分時間の累計DT2の算出方法について説明する。図21は移動行列長領域S2を示す説明図である。四辺形の面積S2は、式(25)で求めることができる。
この間の総走行時間DT21は、式(26)で求めることができる。この間の距離を自由流速度Vfで走行した場合、その総走行時間DT22は、式(27)で求めることができ、総遅れ時間DT2は、式(28)により、上述の式(21)を得ることができる。
所定期間TN(例えば、TNは、2.5分、5分、10分、15分等)の平均旅行時間DTnは、上述の例で算出した、信号周期S(=tr2−tr1)の平均旅行時間をDTsとして、DTn=DTs・(TN/S)により算出することができる。ここで、所定期間TN毎に、直接旅行時間を算出する方式も考えられるが、信号による算出データのバラツキが発生するため、上式に基づいて算出する方が望ましい。
次に、車線毎の平均信号待ち回数及び渋滞確率の算出方法について説明する。各車両の走行軌跡を追跡して平均旅行時間を算出(直接的算出方法)したのと同様に、各車両の走行軌跡を追跡することにより、信号待ち回数を直接的に算出することができる。例えば、図18の例では、車両Dは信号待ち回数が1回であり、車両Eは信号待ち回数が2回である。
そして、当該信号周期内に道路の最上流地点を通過した全車両の信号待ち回数を加算して通過台数で除算することにより、平均信号待ち回数を算出することができる。なお、通常、信号待ちが2回以上の場合に渋滞と定義され、また、信号待ち回数が3回以上の場合には、信号待ち行列が乱れる可能性が高い。従って、信号待ち回数が0回、1回、2回以上に分けてデータを取得し、2回以上となる確率を渋滞確率として算出することが望ましい。
また、各車両の走行軌跡を用いる代わりに、信号待ち行列の末尾位置の時間的推移、すなわち、信号待ち行列の末尾位置の時間積分により遅れ時間を利用して平均旅行時間を算出(間接的算出方法)したのと同様に、信号待ち行列の末尾位置を用いて、信号待ち確率を算出することができる。例えば、信号待ち行列の最長末尾位置Mにおける行列長をL(M)、移行末尾位置Nにおける行列長をL(N)とする。信号待ち回数が1回の確率p1は、{L(M)−L(N)}/L(M)で求めることができる。これにより、車線毎にどの程度信号待ちに遭遇するかの情報を高精度に求めることができる。
また、信号待ち確率を用いて、信号待ち回数が所定値以上となる渋滞確率を算出することができる。渋滞確率、すなわち、信号待ち回数が2回以上の確率p2は、1−p1で求めることができる。ここで、p1は信号待ち回数が1回の確率である。これにより、車線毎の渋滞確率を高精度に求めることができる。
所定期間TN(例えば、TNは、2.5分、5分、10分、15分等)の平均信号待ち回数や渋滞確率は、上述の例で算出した、信号周期S(=tr2−tr1)の平均信号待ち回数や渋滞確率に対して(TN/S)を積算して算出することができる。
平均旅行時間、平均信号待ち回数、渋滞確率の各データを信号周期に基づいて算出する場合、これに用いる信号待ち行列の末尾位置は、できるだけ最新でかつ確実なものが好ましい。例えば、図18又は図19において、現在時刻が青信号開始時刻tg1近辺である場合には、当該信号周期内に道路の最上流地点を通過したほとんどの車両の行列末尾を精度良く算出することが可能である。これに対して、現在時刻が赤信号開始時刻tr2以降であるような場合には、プローブ車両位置(プローブ車両が行列末尾となったときの位置)に基づいて、過去の末尾位置の軌跡を補正し、補正後の末尾位置を用いて赤信号開始時刻tr1から次の赤信号開始時刻tr2までの信号周期内の平均旅行時間、平均信号待ち回数、渋滞確率などの渋滞情報を算出してもよい。この場合には、算出された渋滞情報は、若干過去のものになるが、車載ナビゲーションでの情報提供を目的とするような場合には、全く問題にならないと考えられる。
図22は渋滞情報の提供の一例を示す説明図である。上述したように、従来の技術では、ほとんどの道路で車線毎の情報はなく、すべての車線を一括した情報のみである。したがって、図22に示すように、右折待ちのため右折車線のみが渋滞して信号待ち行列が発生している場合、従来の技術では、これが無視されてしまう場合がある。このため、従来の経路計算、経路誘導では、渋滞している車線を選定する可能性があり(例えば、現在位置から交差点W1、W2、W3を経由するルート)、結果として最適な経路が得られないという問題、あるいは、右折渋滞に巻き込まれてから、慌てて車線変更して危険な走行を強いるという問題があった。
しかし、本実施の形態の渋滞情報は、車線毎の情報が精度よく得られるので、図22で例示するように、右折車線のみが渋滞しているような場合、直進車線と右折車線との間で平均旅行時間、平均信号待ち回数、あるいは渋滞確率などのデータを比較することが容易になり、交差点で右折進行ではなく直進進行をする方(例えは、現在位置から交差点W1、W4、W3を経由するルート)が目的地までの最適経路であるということを容易に判定することができる。また、本実施の形態のように、車線ごとの情報が得られれば、道路(リンク)の本線の情報だけでなく、道路と道路との接続(アーク)の差異に関する情報が得られることになるため、最初から最適な経路で誘導が可能となる。
また、ディスプレイ等に渋滞情報を表示する場合、車線毎に平均旅行時間、平均信号待ち回数や渋滞確率を表示することが望ましい。ただし、左折・直進がほぼ同じで、右折のみが大きく異なるような場合には、左折直進と右折の2種類に分けて表示しても良い。
次に、本発明に係る渋滞情報生成装置100の動作について説明する。図23、図24、図25、図26及び図27は渋滞情報の生成処理手順を示すフローチャートである。制御部10、車線交通量算出部12、プローブ車両情報特定部14、行列末尾情報生成部15、旅行時間算出部16、信号待ち回数算出部17、渋滞確率算出部18などを、これら各部の機能を実現するプログラムコードをCPU(不図示)にロードして実行させる構成とすることができる。以下、渋滞情報の生成処理手順をCPUが行うものとして説明する。
CPUは、交差点上流の交通量、プローブ車両のプローブ情報を取得し(S11)、交差点付近の対向車両の交通量、横断歩道の歩行者、交差点内の車両走行挙動を取得する(S12)。
CPUは、プローブ車両から信号待ち行列の末尾を検出することができたか否かを判定し(S13)、検出できない場合(S13でNO)、ステップS11以降の処理を続け、検出できた場合(S13でYES)、全ての交通流挙動パラメータを算出済みであるか否かを判定する(S14)。
全ての交通流挙動パラメータを算出済みである場合(S14でYES)、CPUは、プローブ車両の走行車線を特定することができたか否かを判定し(S15)、走行車線を特定することができた場合(S15でYES)、過去に予測した信号待ち行列の末尾が有効であるか否かを判定する(S16)。有効であるか否かの判定は、例えば、予測後の経過時間が所定時間(例えば、1分など)を超えたか否かで行うことができる。
過去に予測した信号待ち行列の末尾が有効でない場合(S16でNO)、CPUは、取得した交通量、交通流挙動パラメータから所定の車線への到着交通量を算出し(S17)、所定の車線の信号待ち行列末尾を算出する(S18)。この場合、ある時刻に車両感知器1の感知領域を通過した車両が信号待ち行列の末尾に到着する時刻とその車両の末尾の位置を算出してもよく、あるいは、任意の時刻における信号待ち行列の末尾の位置を算出してもよい。
CPUは、算出した信号待ち行列末尾(末尾位置)を用いて、所定の車線の平均旅行時間を算出し(S19)、所定の車線の平均信号待ち回数を算出し(S20)、所定の車線の渋滞確率を算出する(S21)。なお、渋滞情報として、平均旅行時間、平均信号待ち回数、渋滞確率のすべてを算出してもよく、これらの一部のみを算出してもよい。また、信号待ち確率を算出してもよい。
CPUは、経路計算を車両の車載機で実施するか否かを判定し(S22)、車載機で実施する場合(S22でYES)、渋滞情報の車両への送信タイミングであるか否かを判定する(S23)。
車両への送信タイミングである場合(S23でYES)、CPUは、渋滞情報、すなわち、平均旅行時間、平均信号待ち回数、渋滞確率を車両へ送信し(S24)、処理を終了する。車両への送信タイミングでない場合(S23でNO)、CPUは、ステップS24の処理を行わずに処理を終了する。
経路計算を車両の車載機で実施しない場合(S22でNO)、CPUは、出発地点又は現在位置と目的地との2地点間の経路計算を行い(S25)、最適経路を特定し(S26)、最適経路を表示し(S27)、処理を終了する。
過去に予測した信号待ち行列の末尾が有効である場合(S16でYES)、CPUは、所定の車線に対し、過去に予測した信号待ち行列末尾とプローブ車両の信号待ち行列末尾とが所定の誤差範囲内で一致するか否かを判定し(S28)、一致する場合(S28でYES)、所定の車線の信号待ち行列末尾をプローブ車両の信号待ち行列末尾に補正し(S29)、ステップS19の処理を行う。一致しない場合(S28でNO)、CPUは、ステップS17の処理を行う。
全ての交通流挙動パラメータを算出済みでない場合(S14でNO)、CPUは、交通流挙動パラメータを直接算出することができるか否かを判定し(S30)、算出することができない場合(S30でNO)、交通流挙動パラメータと交通環境との相関関係が算出済みか否かを判定する(S31)。
相関関係が算出済みでない場合(S31でNO)、CPUは、相関関係の算出に十分なデータがあるか否かを判定し(S32)、十分なデータがある場合(S32でYES)、相関関係を算出する(S33)。
CPUは、全ての交通流挙動パラメータを処理済みであるか否かを判定し(S36)、処理済みでない場合(S36でNO)、ステップS30の処理を行い、処理済みである場合(S36でYES)、ステップS11以降の処理を行う。
交通流挙動パラメータを直接算出することができる場合(S30でYES)、CPUは、交通流挙動パラメータを算出し(S34)、ステップS36の処理を行う。相関関係が算出済みである場合(S31でYES)、CPUは、現在の交通環境から、交通流挙動パラメータを決定し(S35)、ステップS36の処理を行う。相関関係の算出に十分なデータがない場合(S32でNO)、CPUは、ステップS36の処理を行う。
プローブ車両の走行車線を特定することができない場合(S15でNO)、CPUは、過去に予測した信号待ち行列の末尾が有効であるか否かを判定し(S37)、有効である場合(S37でYES)、過去に予測した各車線の信号待ち行列末尾とプローブ車両の信号待ち行列末尾とを比較する(S38)。
CPUは、プローブ車両の信号待ち行列末尾で車線を特定することができるか否かを判定し(S39)、車線を特定することができない場合(S39でNO)、プローブ車両が交差点を流出したか否かを判定する(S40)。
プローブ車両が交差点を流出した場合(S40でYES)、CPUは、プローブ車両の進行方向からプローブ車両の走行車線を特定することができるか否かを判定し(S41)、走行車線を特定することができない場合(S41でNO)、進行方向に対応する複数の車線を特定し(S42)、ステップS16の処理を行う。
過去に予測した信号待ち行列の末尾が有効でない場合(S37でNO)、CPUは、ステップS40の処理を行う。プローブ車両の信号待ち行列の末尾で車線を特定することができる場合(S39でYES)、CPUは、ステップS16の処理を行う。
プローブ車両が交差点を流出していない場合(S40でNO)、CPUは、ステップS11以降の処理を行う。プローブ車両の進行方向からプローブ車両の走行車線を特定することができる場合(S41でYES)、CPUは、ステップS16の処理を行う。
以上説明したように、本発明によれば、車線毎の旅行時間、信号待ち回数、渋滞確率などの渋滞情報を精度良く求めることができる。
上述の実施の形態では、車線毎の到着交通量を用いて渋滞情報を生成する構成であったが、これに限定されるものではなく、任意の車線について到着交通量を用いて渋滞情報を生成することもできる。また、本発明は、複数の車線を有する道路のみならず、1車線の道路についても適用することができる。
上述の実施の形態では、渋滞情報生成装置を路側装置として実現した例であるが、これに限定されず、路側装置と交通管制センタ等のセンタとの有線通信、車々間通信、携帯電話等による車両とセンタとの広域無線通信を利用する等して、各種情報を交通管制センタ等のセンタに集め、センタで情報処理しても良い。また、算出した平均旅行時間、平均信号待ち回数、渋滞確率をディスプレイに表示し、これらの情報に基づいて経路計算を行って経路誘導する形態としては、例えば、車載のナビゲーション装置で実施して運転者に対して運転を支援する場合、交通管制センタ等のセンタで実施して交通管理に役立てる場合、センタで実施してサーバに記憶し、車両や机上の装置、携帯電話等に対してインターネット等で情報を配信する場合等、種々考えられる。
上述の実施の形態において、制御部10、車線交通量算出部12、プローブ車両情報特定部14、行列末尾情報生成部15、旅行時間算出部16、信号待ち回数算出部17、渋滞確率算出部18などは、ハードウェア回路で構成することもでき、あるいは、これらの機能を実現するプログラムコードをCPUにロードして実行させる構成とすることもできる。また、前述のプログラムコードをコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体(例えば、CD−ROMやDVDなどの光ディスク、磁気ディスク、半導体メモリなど)として構成することもできる。
開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。