JP5256475B2 - 対向ターゲット式スパッタ装置及び対向ターゲット式スパッタ方法 - Google Patents

対向ターゲット式スパッタ装置及び対向ターゲット式スパッタ方法 Download PDF

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本発明は、成膜速度を向上させた対向ターゲット式スパッタ装置及び対向ターゲット式スパッタ方法に関する。特には、有機化合物を用いた有機EL発光素子等、基材がプラズマ、熱等に弱い材料からなっている場合に適した薄膜製造方法に関し、基材のダメージが少なく、しかも高速に成膜できる対向ターゲット式スパッタ装置及び対向ターゲット式スパッタ方法に関する。
従来よりガラス、プラスチック等の基板に真空で成膜する技術には、主なものとしてスパッタリング、真空蒸着、CVD(chemical vapor deposition)法等があり、その特徴をうまく利用して、各々の機能を出す為の成膜を行なってきた。
近年、軽くて、壊れず、しかも透明であることからプラスチック樹脂基板が多く使われるようになった。さらに有機ELの封止工程に必要な保護膜のように、基板がプラズマ、熱に非常に弱くしかも透明で厚い膜を必要とするもののニーズが大きくなってきている。
真空蒸着は、成膜スピードは速いが、ディスプレーのような大面積の基板に成膜する場合は、膜厚均一性を良くすることが難しい。CVD法は化学反応により膜を形成する為に、プラズマあるいは熱を使うが、基板の温度が上げられない場合には緻密な膜を形成することが難しい。スパッタリング法はその膜の緻密性、大面積基板での膜厚均一性から上記のニーズに対してプロセス的に有望視されて来ている。
スパッタリング法では、永久磁石を用いるマグネトロンスパッタが主流となっており、その中には、ターゲットに膜と同じ材料の絶縁物を用いてRF電源を使う方法、ターゲットに金属、半金属の導電性材料を用いてDC電源を使う方法がある。通常はターゲットに面して基板が置かれ、スパッタした膜が積層される。
これに対して対向ターゲット式スパッタ装置は、ターゲットが向かい合っており、それぞれの背後にマグネトロンを配し、磁場が向かい合ったターゲットの空間に閉じ込められ、基板が側面に配置されているのが特徴であり、基板が、プラズマや、熱のダメージに弱い場合に大変有利であることから、注目を浴びている技術である(特許文献1参照)。
しかしながら、前記のスパッタリング法は、真空蒸着、CVDと比べて成膜スピードが遅いという難点があった。特に、対向ターゲット式スパッタ装置は、基板がターゲットの側面にあることから、通常のマグネトロン方式のスパッタ装置に比べて反応性膜の成膜スピードが遅い。このため、対向ターゲット式スパッタ装置は、工業的に発展するのが遅れており、生産設備としては磁性膜等の金属膜の成膜に限られている。
特開2001−226770号公報(第4段落〜第7段落、図5)
対向ターゲット式スパッタ装置の欠点である成膜スピードを改善し、高速でスパッタできる方法を付加することによって、工業的に利用可能とすることが求められている。高速でスパッタできれば、酸化物膜、窒化物膜、炭化物膜等の種々の反応性膜をプラズマ、熱に弱い基板に対してダメージを与えずに効率良く成膜できると考えられる。
本発明は上記のような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、成膜速度を向上させた対向ターゲット式スパッタ装置及び対向ターゲット式スパッタ方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明に係る対向ターゲット式スパッタ装置は、基板上に反応性膜をスパッタリングにより成膜する対向ターゲット式スパッタ装置であって、
対向する一対のターゲットと、
前記一対のターゲットの側面側に配置された基板を載置する載置台と、
前記一対のターゲット及び前記基板が収容される真空容器と、
前記ターゲットの背面に対しほぼ垂直方向に磁界を発生させる磁界発生手段と、
前記真空容器内に反応性ガスを導入するガス導入機構と、
前記一対のターゲットに電力を印加する電源と、
前記ターゲットから発生する発光を読み取るプラズマ・エミッション・モニタと、
前記電源によって前記ターゲットに電力を印加して放電させ、前記ターゲットから発生する発光を前記プラズマ・エミッション・モニタによって読み取り、前記発光が所定の発光量になるように前記反応性ガスの流量を制御する制御部と、
を具備することを特徴とする。
上記対向ターゲット式スパッタ装置によれば、発光が所定の発光量になるように反応性ガスの流量を制御する。これにより、対向ターゲット式スパッタ装置であっても、成膜速度を飛躍的に向上させることができる。
また、本発明に係る対向ターゲット式スパッタ装置において、前記所定の発光量は遷移領域のスパッタ時に相当するものであることが好ましい。
本発明に係る対向ターゲット式スパッタ装置は、基板上に反応性膜をスパッタリングにより成膜する対向ターゲット式スパッタ装置であって、
対向する一対のターゲットと、
前記一対のターゲットの側面側に配置された基板を載置する載置台と、
前記一対のターゲット及び前記基板が収容される真空容器と、
前記ターゲットの背面に対しほぼ垂直方向に磁界を発生させる磁界発生手段と、
前記真空容器内に反応性ガスを導入するガス導入機構と、
前記一対のターゲットに電力を印加する電源と、
前記電源によって前記ターゲットに電力を印加して放電する際の放電電圧を読み取り、前記放電電圧が所定の電圧になるように前記反応性ガスの流量を制御する制御部と、
を具備することを特徴とする。
上記対向ターゲット式スパッタ装置によれば、放電電圧が所定の電圧になるように反応性ガスの流量を制御する。これにより、対向ターゲット式スパッタ装置であっても、成膜速度を飛躍的に向上させることができる。
また、本発明に係る対向ターゲット式スパッタ装置において、前記所定の電圧は遷移領域のスパッタ時に相当するものであることが好ましい。
また、本発明に係る対向ターゲット式スパッタ装置において、前記電源は、パルス波を印加する電源、非対称パルス波を印加する電源及びサイン波を印加する電源のうちいずれかであることが好ましい。
本発明に係る対向ターゲット式スパッタ方法は、対向する一対のターゲットを真空容器内に配置し、前記一対のターゲットに電力を印加して放電させ、前記ターゲットから発生する発光が所定の発光量になるように反応性ガスの流量を制御しながらスパッタリングにより反応性膜を成膜するものである。
本発明に係る対向ターゲット式スパッタ方法は、対向する一対のターゲットを真空容器内に配置し、前記一対のターゲットに電力を印加して放電させ、前記放電させた際の放電電圧が所定の電圧になるように反応性ガスの流量を制御しながらスパッタリングにより反応性膜を成膜するものである。
以上説明したように本発明によれば、成膜速度を向上させた対向ターゲット式スパッタ装置及び対向ターゲット式スパッタ方法を提供することができる。
本発明に係る実施の形態による対向ターゲット式スパッタ装置の概略を示す構成図である。 代表的な材料としてのTiの反応性スパッタを行なう時に生じるヒステリシスカーブを示す図である。 スパッタした場合にターゲットから発生する発光を示しており、Tiの例での発光スペクトルを示す図である。 酸素ガスの流量が0sccm、14sccm、18sccm及び22sccmそれぞれの場合の波長と発光強度との関係を示す図である。 発光スペクトルを取り出して、反応性ガスをフィードバックするための系統図である。 小型の対向ターゲットの場合の反応性ガスをフィードバックするための系統図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明に係る実施の形態による対向ターゲット式スパッタ装置の概略を示す構成図である。この対向ターゲット式スパッタ装置は、基板上に酸化物膜、窒化物膜、炭化物膜等の反応性膜をスパッタリングにより高速で成膜する装置である。
この対向ターゲット式スパッタ装置は対向ターゲットを備えており、この対向ターゲットは所定の空間を隔てて並行に対向する一対のターゲット1,2である。ターゲット1,2は金属あるいは半金属の導電性を持つ材料を使うことが好ましい。ターゲット1,2それぞれの背面側には磁界発生手段である永久磁石3,4が配置されている。この磁界発生手段は、前記ターゲット1,2の背面に対しほぼ垂直方向に磁界を発生するものであって、ターゲット1とターゲット2との間に磁界が生じるように構成されている。また、対向ターゲットの側面側には基板5を載置する載置台(図示せず)が配置されている。
また、対向ターゲット式スパッタ装置はシールド板(図示せず)を備えており、このシールド板は前記ターゲット1,2の対向する面以外を覆い、基板5側には開口部が設けられたものである。前記対向ターゲット、磁界発生手段及び基板5は真空容器6内に配置されている。
対向ターゲットにはパルス波を印加するパルス電源7が接続されており、このパルス電源7によって対向ターゲットにパルス波による電力を印加するようになっている。尚、電源としては、パルス電源に限られず、他の電源、例えば非対称パルス波を印加する電源、サイン波を印加する電源などを用いることも可能である。
また、対向ターゲット式スパッタ装置は、プラズマ・エミッション・モニタ(PEM)8、ガス導入機構、コントローラ9及びパソコン(PC)10を備えている。前記ガス導入機構はマスフローコントローラ(MFC)11を有している。このMFC11はコントローラ9に接続されており、コントローラ9はパソコン10に接続されている。また、コントローラ9はPEM8及びパルス電源7に接続されており、パソコン10はパルス電源7に接続されている。
前記PEM8は光ファイバーを有している。前記光ファイバーは、真空容器6内に配置され、対向ターゲットの内側で発生するプラズマからの発光を読み取るものである。読み取られた発光からの情報はコントローラ9で処理され、コントローラ9からガス導入機構にフィードバックされ、ガス導入機構のマスフローコントローラ10によって真空容器6内に導入する反応性ガスの流量が調整されるようになっている。
また、前記パルス電源7から対向ターゲットに電力が印加され、カソードに係る電圧はコントローラ9で処理され、コントローラ9からガス導入機構にフィードバックされ、ガス導入機構のマスフローコントローラ10によってカソードにかかる電圧が所定の電圧になるように真空容器6内に導入する反応性ガスの流量が調整されるようになっている。
次に、上記対向ターゲット式スパッタ装置の動作について説明する。
まず、基板5を載置台に載置し、ガス導入機構によって真空容器6内にガスをマスフローコントローラ11によって流量を調整して導入しながら、真空容器6の内部を所定の圧力まで減圧して真空状態にする。
次いで、パルス電源7から所定の電力を対向ターゲットに加え、ターゲット1とターゲット2との間で放電させ、磁界発生手段によりプラズマをターゲット間で閉じ込めながらスパッタリングを行なう。この際、対向ターゲットから発生する発光をプラズマ・エミッション・モニタ8で読み取り、その発光量を所定量となるように反応性ガスの流量を制御する。
詳細には、対向ターゲットから発生する発光をプラズマ・エミッション・モニタ8で読み取り、その読み取られた発光からの情報をコントローラ9で処理し、コントローラ9からマスフローコントローラ11にフィードバックする。つまり、前記発光を読み取った時のスパッタ現象が遷移領域からどれだけずれているかのずれ量を前記発光からの情報としてコントローラ9で取得し、そのずれ量から反応性ガスの流量をどれだけ調整すれば遷移領域のスパッタ現象となるかを演算し、その演算結果を信号としてマスフローコントローラ11にフィードバックする。そして、マスフローコントローラ11によって反応性ガスの流量を前記信号に基づいて制御することにより、対向ターゲットのスパッタ現象を遷移領域となるように制御する。
このような制御を行ないながら、スパッタリングにより基板5上に反応性膜を成膜する。このようにスパッタ現象のなかで遷移領域の制御を行なうことにより、成膜スピードを高速化することができる。尚、遷移領域については後述する。
また、上記対向ターゲット式スパッタ装置の他の動作について説明する。
基板5を載置台に載置し、ガス導入機構によって真空容器6内にガスを導入しながら、真空容器6の内部を減圧して真空状態にし、ターゲット1とターゲット2との間で放電させてスパッタリングを行なう。この際、カソードに係る電圧、即ちパルス電源7から対向ターゲットに印加されている電圧をパソコン10で読み取り、その電圧が所定電圧となるように反応性ガスの流量を制御する。
詳細には、パルス電源7から対向ターゲットに印加されている電圧をパソコン10で読み取り、その電圧を信号に変換し、その信号をコントローラ9に送り、この信号からの情報をコントローラ9で処理し、コントローラ9からマスフローコントローラ11にフィードバックする。つまり、前記電圧を読み取った時のスパッタ現象が遷移領域からどれだけずれているかのずれ量を前記電圧からの情報としてコントローラ9で取得し、そのずれ量から反応性ガスの流量をどれだけ調整すれば遷移領域のスパッタ現象となるかを演算し、その演算結果を信号としてマスフローコントローラ11にフィードバックする。そして、マスフローコントローラ11によって反応性ガスの流量を前記信号に基づいて制御することにより、対向ターゲットのスパッタ現象を遷移領域となるように制御する。
このような制御を行ないながら、スパッタリングにより基板5上に反応性膜を成膜する。このようにスパッタ現象のなかで遷移領域の制御を行なうことにより、成膜スピードを高速化することができる。
図2は、代表的な材料としてのTiの反応性スパッタを行なう時に生じるヒステリシスカーブを示す図である。図2を用いて遷移領域について説明する。
図2において、縦軸はスパッタした時の成膜スピード(スパッタリング成膜速度)を示し、横軸は反応性ガスの流量を示している。
このヒステリシスカーブにて、反応性ガスが0の時、即ちスパッタガスとしてアルゴンガスのみの場合は、ターゲットはその材料がそのままスパッタされるのでTiのまま基板に成膜され、吸収膜となり最も早い積層スピードとなる。この状態を金属モードと呼ぶ。また反応性ガスが多量に入った場合、図2では反応性ガスとして酸素約6sccm以上の場合は、成膜スピードが非常に遅く基板へ積層した膜は透明な酸化物膜となり、この状態を酸化物モードと呼ぶ。この場合は、酸素ガス量の多少の変動が合っても、成膜スピードが変わらないという利点はあるが、成膜スピードが遅いのが大きな欠点である。
従来は、金属モードと酸化物モードのどちらかで成膜を行なっていた。遷移モード(遷移領域)というのは、点線で囲った部分であり、金属モードと、酸化物モードの中間にあり、成膜スピードは金属モードに近づけて、積層した膜は透明な酸化膜となるようなものである。つまり、遷移領域となるようにスパッタ現象を制御することにより、高い成膜スピードで酸化物を成膜することが可能となる。
図3は、スパッタした場合にターゲットから発生する発光を示しており、Tiの例での発光スペクトルを示す図である。横軸が波長を示し、縦軸が発光強度を示している。このように各波長から発光スペクトルが出ているが、500nmに見られる強い発光スペクトルを選び、それを使えば、安定した制御を行なうことが可能となる。
図4は、酸素ガスを入れた場合の制御の方向を示しており、酸素を入れることにより発光が小さくなることを示している。つまり、図4は、酸素ガスの流量が0sccm、14sccm、18sccm及び22sccmそれぞれの場合の波長と発光強度との関係を示す図である。酸素を入れることにより発光が小さくなることを利用すれば、金属モードに対してどれだけの酸素が入れば、ヒステリシスの中での位置がどこになるかを実験的に知ることができ、その微量酸素をコントロールしてやることができれば、ヒステリシス上の欲しい位置である遷移領域にプロセスを維持できることになる。同様に酸化物以外でも窒化物の場合は、反応性ガスとして窒素を使い、炭化物の場合は、メタン、プロパン等の有機ガスあるいは炭酸ガスのような無機ガスを使うことができる。
遷移領域を維持するのに、この発光スペクトルのフィードバック以外に、電圧をコントロールすることで、酸素流量をフィードバックする方法がある。図2に示すヒステリシスと同様な曲線が電圧でもヒステリシスカーブとして得られるので、このなかの欲しい位置(即ち遷移領域)になるように、酸素ガスを制御してやれば、発光スペクトルをフィードバックする場合と同じ事が可能となる。
図5は、発光スペクトルを取り出して、反応性ガスをフィードバックするための系統図である。ターゲットのそばに置いたプラズマ・エミッション・モニタ8a,8b,8cそれぞれのセンサーヘッドから光ファイバーで発光スペクトルの信号を取り出し、本体にある光電子増倍管により電気信号に変え、それをマスフローコントローラ11a,11b,11cそれぞれにより反応性ガスの流量にフィードバックしている。図5のように大型の対向ターゲットの場合は、たとえば3点にセンサーを置き、3チャンネルで別々に反応性ガスをコントロールすることが好ましい。これにより、大型基板でも、容易に膜厚分布を均一に制御することが可能となる。
図6は、小型の対向ターゲットの場合の反応性ガスをフィードバックするための系統図である。ターゲットのそばに置いたプラズマ・エミッション・モニタ8のセンサーヘッドから光ファイバーで発光スペクトルの信号を取り出し、本体にある光電子増倍管により電気信号に変え、それをマスフローコントローラ11により反応性ガスの流量にフィードバックしている。図6のように小型の対向ターゲットの場合は、1点にセンサーを置き、1チャンネルで反応性ガスをコントロールしても、容易に膜厚分布を均一に制御することが可能となる。
上記実施の形態によれば、遷移領域のスパッタ現象となるように反応性ガスの流量を制御する。これにより、基板がターゲットの側面にあることから、通常のマグネトロン方式のスパッタ装置に比べて反応性膜の成膜スピードが遅い対向ターゲット式スパッタ装置であっても、成膜速度を飛躍的に向上させることができる。従って、量産性に耐え得る対向ターゲット式スパッタ装置を実現でき、工業的に利用することが可能となる。
また、本実施の形態では、遷移領域のスパッタ現象を用いているため、基板上に成膜される反応性膜の結晶性を制御することができる。例えば、基板上にTiOx膜を成膜する場合のxの値を制御することが可能となる。つまり、遷移領域の中で特定の領域を用いることにより、成膜されるTiOx膜の結晶性を制御することができる。
また、本実施の形態では、対向するターゲット間に磁界発生手段によってプラズマを閉じ込めながらスパッタリングを行なう対向ターゲット式スパッタ装置を用いている。これにより、酸化物膜、窒化物膜、炭化物膜等の種々の反応性膜をプラズマ、熱に弱い基板に対してダメージを与えずに効率良く成膜することができる。つまり、本実施の形態による対向ターゲット式スパッタ装置では、基板のダメージが少なく、しかも高速に成膜できるため、有機化合物を用いた有機EL発光素子等、基板がプラズマ、熱等に弱い材料からなっている場合に適している。
また、本実施の形態による対向ターゲット式スパッタ装置及び対向ターゲット式スパッタ方法によれば、緻密で基板に対して密着性の良い反応性膜が、基板にダメージを与えずに成膜できる。また、スパッタ技術であるため、基板の大型化に対してもターゲットサイズを大型にすることは容易であり、従来行なわれていた真空蒸着、CVD等では、この大型化が大きな課題であったが、本発明によればこれが解消し、膜厚均一性を保持しながら、膜質を向上することが可能となる。
尚、本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。
以下、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
本実施例では、図1に示した構成の対向ターゲット式スパッタ装置を用い、ターゲット1,2にはTiターゲットを用い、基板5には1mm厚のPC(ポリカーボネート)基板を用いた。ターゲット間の中央の磁束密度は200ガウス程度に調整した。真空容器6内を、排気ポンプによって1×10−3Pa以下の真空状態とし、その後、Arガスを導入し、真空容器内の圧力を5×10−1Paとした。
次に、高周波電源によって300W、20秒間の高周波電力を基板5に印加して放電し、プリトリートメントを行った。その後、対向ターゲットに40KHz、2KWのパルス波電力を掛けた。Ar25ccを加え、その時の500nm波長での放電の発光を測定し、電子増倍管にて電気信号に変換したら、6000mVであった。これをキャリブレーションにて100%とし、次に酸化物モードの数値を測定するため、酸素を30cc加え、その時の500nm波長での放電の発光を測定し、電子増倍管にて電気信号に変換したら、500mVであったので、これを0%とした。20%の遷移領域モードで10分間のスパッタを行なった結果、TiOx膜の膜厚は470nmであった。同様にして、25%の遷移領域モードで10分間のスパッタを行なった結果、TiOx膜の膜厚は600nmとなり、共に透明な膜が形成できた。
比較のために、完全な酸化物モードで10分間のスパッタを行なった。その結果、TiOx膜の膜厚は85nmであった。このことから、遷移領域モードの成膜速度は酸化物モードに比べて約6〜7倍となることが確認された。
また、遷移領域モードの%の数字を変えて調整することにより、波長550nmでのTiOx膜の屈折率を2.41〜2.50の間で変えられることを確認した。このことから、膜の緻密性及びそれに関連して結晶性を調節することが可能であることを見出した。
(実施例2)
実施例1で用いた対向ターゲット式スパッタ装置において、対向ターゲットの材料をSiに変えて実施例1と同様の実験を行なった。この場合は、遷移領域の調節手段として、放電している電圧を検出し、Ar30ccのみの場合を金属モードとし、さらに酸素ガスを30cc入れた場合を酸化物モードとした。その時の金属モードの放電電圧値は600Vであり、酸化物モードの放電電圧値は420Vであった。前記金属モードをキャリブレーションとして100%とし、前記酸化物モードを0%とした場合に、25%となるように酸素ガスを調節し、1KW、3分間のスパッタを行なった。その結果、膜厚が420nmのSiOx膜が得られた。これは、同一装置で酸素ガスを多くした酸化物モードで成膜した場合にSiOx膜の膜厚が69nmであったのに比べて、約6倍の成膜速度であった。
(実施例3)
実施例1で用いた対向ターゲット式スパッタ装置において、対向ターゲットの材料をIT(インジウム90%、スズ10%合金)に変えて実施例1と同様の実験を行なった。実施例1と同様に放電の発光を測定して、遷移領域を調節する方法で実験を行なった。
Ar30ccの場合を金属モードとし、その時の波長452nmでの発光強度を測定し、これをキャリブレーションとして100%とし、さらに酸素ガスを30cc加えることで酸化物モードとし、その時の波長452nmでの発光強度を測定し、これをキャリブレーションとして0%とした。そして、33%となるように酸素ガスを調節し、1KW、3分間のスパッタを行なった。その結果、膜厚が400nmのITO膜が成膜された。このITO膜の可視光透過率は80%でシート抵抗は9Ω/□であった。前記酸化物モードでITO膜を成膜した場合の膜厚は60nmであった。従って、遷移領域モードでの成膜速度は酸化物モードに比べて約7倍の成膜速度であった。
また、遷移領域モードの%の数字を変えて調整することにより、成膜速度だけでなく結晶性も変えることができ、その結果、酸性溶液に浸漬したときにおけるITO膜の耐久性が変わることが確認できた。
(実施例4)
実施例1と同様にTiターゲットを用いた対向ターゲット式スパッタ装置において、反応性ガスを窒素に変えて実施例1と同様の実験を行なった。実施例1と同様に放電の発光を測定して、遷移領域を調節する方法で実験を行なった。
Arガス30ccの場合を金属モードとし、その時の波長500nmでの発光強度を測定し、これをキャリブレーションとして100%とし、さらに窒素ガスを30cc加えることで窒化物モード(反応性モード)とし、その時の波長500nmでの発光強度を測定し、これをキャリブレーションとして0%とした。そして、遷移領域を52%となるように窒素ガスを調節し、1KW、3分間のスパッタを行なった。その結果、膜厚が125nmで金色の窒化チタン膜が成膜された。この窒化チタン膜のシート抵抗は15Ω/□であった。前記窒化物モードで窒化チタン膜を成膜した場合の膜厚は60nmであった。従って、遷移領域モードでの成膜速度は窒化物モードに比べて約2倍の成膜速度であった。
1,2…ターゲット
3,4…永久磁石
5…基板
6…真空容器
7…パルス電源
8,8a,8b,8c…プラズマ・エミッション・モニタ(PEM)
9…コントローラ
10…パソコン(PC)
11,11a…マスフローコントローラ(MFC)

Claims (3)

  1. 基板上に反応性膜をスパッタリングにより成膜する対向ターゲット式スパッタ装置であって、
    対向する一対のターゲットと、
    前記一対のターゲットの側面側に配置された基板を載置する載置台と、
    前記一対のターゲット及び前記基板が収容される真空容器と、
    前記ターゲットの背面に対しほぼ垂直方向に磁界を発生させる磁界発生手段と、
    前記真空容器内に反応性ガスを導入するガス導入機構と、
    前記一対のターゲットに電力を印加する電源と、
    前記電源によって前記ターゲットに電力を印加して放電する際の放電電圧を読み取り、前記放電電圧が遷移領域の電圧になるように前記反応性ガスの流量を制御する制御部と、
    を具備し、
    前記遷移領域は、前記反応性ガスの流量が0の時に前記一対のターゲットの材料がそのままスパッタリングされる最も早い成膜スピートの領域と、前記一対のターゲットの材料を前記反応性ガスによって反応させて前記反応性膜が成膜される領域であって前記反応性ガスの流量が変動しても成膜スピードが変わらない領域との中間にあることを特徴とする対向ターゲット式スパッタ装置。
  2. 請求項1において、前記電源は、パルス波を印加する電源、非対称パルス波を印加する電源及びサイン波を印加する電源のうちいずれかであることを特徴とする対向ターゲット式スパッタ装置。
  3. 対向する一対のターゲットを真空容器内に配置し、前記一対のターゲットに電力を印加して放電させた際の放電電圧が遷移領域の電圧になるように、反応性ガスの流量を制御しながらスパッタリングにより反応性膜を成膜する対向ターゲット式スパッタ方法であって、
    前記遷移領域は、前記反応性ガスの流量が0の時に前記一対のターゲットの材料がそのままスパッタリングされる最も早い成膜スピートの領域と、前記一対のターゲットの材料を前記反応性ガスによって反応させて前記反応性膜が成膜される領域であって前記反応性ガスの流量が変動しても成膜スピードが変わらない領域との中間にあることを特徴とする対向ターゲット式スパッタ方法。
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