以下に、本発明を実施するための形態(以下、実施形態と記す)について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態により、本発明が限定されるものではない。下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
まず、本実施形態に係る燃料噴射装置と、当該燃料噴射装置が適用される内燃機関の概略構成について、図1〜図5を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る燃料噴射装置が適用される内燃機関の燃料供給システムを示す模式図である。図2は、本実施形態に係る燃料噴射装置のノズルニードル駆動部の構成を示す断面図である。図3は、図2に示すノズルニードルの周辺構成を示す拡大断面図である。図4は、本実施形態に係る燃料噴射装置において噴射される副燃料の燃料量を調整する副燃料調量弁を駆動する調量弁駆動部の構成を示す断面図である。図5は、図4に示す絞りの周辺構成を示す拡大断面図である。なお、各図は、本発明に関連する要部のみを模式的に示している。
本実施形態に係る燃料噴射装置が適用される内燃機関は、図1に示すように、圧縮されて高温となった燃焼室内の雰囲気に、燃料を噴射することで、当該噴射燃料を自然着火させる圧縮着火式の内燃機関、すなわちディーゼル機関1である。当該ディーゼル機関1は、原動機として自動車(図示せず)に搭載される。本実施形態に係るディーゼル機関1は、複数の気筒9を有し、気筒9ごとに燃料噴射装置10(インジェクタ)を備え、各燃料噴射装置10が、燃料の種類ごとに、共通の燃料レール7,8から燃料の供給を受ける、いわゆるコモンレール式のディーゼル機関1である。自動車には、ディーゼル機関1に燃料を供給する燃料供給システム300(いわゆるコモンレールシステム)、燃料噴射装置10を含むディーゼル機関1を制御する制御手段として、ディーゼル機関1用の電子制御装置(以下、ECUと記す)330が設けられている。ECU330は、各種制御定数を記憶する記憶手段としてのROM(図示せず)が設けられている。当該燃料供給システム300は、ECU330により制御されて、以下に説明する2種類の燃料を、ディーゼル機関1の各気筒9に供給する。
ディーゼル機関1の各気筒9に供給される燃料には、2つの種類がある。一つは、着火性が比較的良好な、すなわちセタン価が比較的高い種類の燃料であり、燃料噴射装置10が燃料噴射を行うごとに、噴孔12から先に噴射される燃料(以下、副燃料と記す)である。もう一つは、着火性が比較的良好ではないすなわちセタン価が比較的低い種類の燃料であり、副燃料の噴射後に、当該副燃料に連続して、同一の噴孔12から噴射される燃料(以下、主燃料と記す)である。燃料供給システムにおいては、これら主燃料と副燃料がそれぞれ別個に、燃料噴射装置10に供給される。本実施形態において、主燃料には、エタノール(アルコール)が用いられ、副燃料には、鉱物油である原油を分留して作られたディーゼル燃料(以下、軽油と記す)が用いられている。
燃料供給システム300は、主燃料に対応して、各燃料噴射装置10に主燃料を分配し供給する主燃料分配管7aと、主燃料分配管7a内に形成された燃料室7(以下、主燃料レールと記す)に、昇圧した燃料を供給する高圧主燃料供給ポンプ5と、ディーゼル機関1に供給される主燃料を貯蔵する主燃料タンク310とを有している。給油された主燃料タンク310に貯蔵されている主燃料は、主燃料供給配管312を通して、高圧主燃料供給ポンプ5に吸入される。高圧主燃料供給ポンプ5により予め設定された燃料圧力に昇圧された主燃料は、主燃料レール7に送出される。主燃料レール7における燃料圧力、すなわち主燃料レール7から各燃料噴射装置10に供給される燃料圧力(以下、単に「主燃料圧力」と記す)は、例えば120MPaに設定されている。主燃料圧力は、高圧主燃料供給ポンプ5を介してECU330により制御される。各燃料噴射装置10は、後述する主燃料入口から、主燃料の供給を受ける。各燃料噴射装置10に供給された主燃料のうち、燃料噴射に用いられなかった余剰な主燃料は、後述する各リターン主燃料出口R12(図2参照)から、リターン主燃料配管314を通って、主燃料タンク310に戻される。
燃料供給システム300は、主燃料と同様に、副燃料に対応して、各燃料噴射装置10に副燃料を分配し供給する副燃料分配管8aと、副燃料分配管8a内に形成された燃料室8(以下、副燃料レールと記す)に、昇圧した燃料を供給する高圧副燃料供給ポンプ6と、ディーゼル機関1に供給される副燃料を貯蔵する副燃料タンク320とを有している。副燃料タンク320に貯蔵されている燃料は、副燃料供給配管322を通して、高圧副燃料供給ポンプ6に吸入され、高圧副燃料供給ポンプ6により予め設定された燃料圧力に昇圧されて、副燃料レール8に送出される。副燃料レール8における燃料圧力、すなわち副燃料レール8から各燃料噴射装置10に供給される燃料圧力(以下、単に「副燃料圧力」と記す)は、上述の「主燃料圧力」に比べて高い値、例えば、160MPaに設定されている。副燃料圧力は、高圧副燃料供給ポンプ6を介してECU330により制御される。各燃料噴射装置10は、後述する副燃料入口から、副燃料の供給を受ける。各燃料噴射装置10に供給された副燃料のうち、燃料噴射に用いられなかった余剰な副燃料は、後述する各リターン副燃料出口R112(図4参照)から、リターン副燃料配管324を通って、副燃料タンク320に戻される。
燃料噴射装置10は、噴孔12が気筒9内に露出するようディーゼル機関1のシリンダヘッド(図示せず)に配設されており、当該噴孔12から気筒9内に直接、燃料(副燃料/主燃料)を噴射する。図2に示すように、燃料噴射装置10は、噴孔12が形成された弁座(以下、バルブシートと記す)14と、バルブシート14に当接することで当該噴孔12を塞ぎ、バルブシート14から離間するよう駆動されることで、噴孔12を開口させる針状(略円柱状)の弁体(以下、ノズルニードルと記す)20とを有している。
ノズルニードル20は、図3に示すように、先細の略円柱状をなす弁体であり、その軸心を図に一点鎖線Cで示す。以下の説明において、ノズルニードル20の軸心Cの延びる方向を、単に「軸方向」と記し、これに対して、ノズルニードル20の径方向を、単に「径方向」と記す。ノズルニードル20の表面のうちバルブシート14に当接する面を「シート当接面」と記す。これに対して、ノズルニードル20の表面のうち、外周(径方向外側)の壁面22を、以下に「ニードル外周壁」と記す。ノズルニードル20のうちシート当接面24が、バルブシート14に当接する、すなわちノズルニードル20がバルブシート14に着座すると、シート当接面24により噴孔12が塞がれる。ノズルニードル20が、後述するノズルニードル駆動部40により駆動されて、シート当接面24が、バルブシート14から離間すると、噴孔12が開放されて、当該噴孔12から燃料(副燃料/主燃料)が噴射される。
なお、以下の説明において、軸方向のうちノズルニードル20がバルブシート14から離間する向きを「上側」又は「上向き」と記し、ノズルニードル20がバルブシート14に当接する向きを「下側」又は「下向き」と記す。加えて、ノズルニードル20が、インジェクタボデーに対して軸方向上側に移動すること、即ちリフトすることを「上昇」又は「リフト」と記し、軸方向の下側に移動することを「下降」と記す。また、ノズルニードル20が下降し、バルブシート14に当接して噴孔12が塞がれた状態を、以下の説明において「燃料噴射装置10の閉弁時」と記し、ノズルニードル20が上昇して噴孔12が開放された状態を「燃料噴射装置10の開弁時」と記す。
燃料噴射装置10は、図2及び図4に示すように、上述したノズルニードル20と、当該ノズルニードル20を駆動するノズルニードル駆動部40と、燃料噴射装置10の燃料噴射1回あたりに噴射される副燃料の燃料量を調量するバルブ(以下、副燃料調量弁と記す)120と、当該副燃料調量弁120の弁体122を駆動する調量弁駆動部140とを有している。副燃料調量弁120と、調量弁駆動部140の詳細については、後述する。
ノズルニードル駆動部40は、ECU330により制御されて伸長するピエゾスタック50と、ピエゾスタック50の伸長に応じて変位する大径ピストン60と、ノズルニードル20の軸方向上側の端面26に当接して設けられ、大径ピストン60の変位に応じて増大する軸方向上向きの燃料圧力を受けて軸方向上側に変位する段付き小径ピストン70と、段付き小径ピストン70の軸方向上側の端面76に当接して設けられ、主燃料通路80に連通する燃料室であるバランス室92から軸方向下向きの主燃料圧力を受けるバランスピストン90とを有している。これら各部品と、ノズルニードル20は、燃料噴射装置10の外装をなすインジェクタボデーに収容されている。
インジェクタボデーは、7つのボデーから構成されており、詳細には、図2に示すように、ノズルニードル駆動部40の段付き小径ピストン70と、調量弁駆動部140の弁体122を収容する第1ボデーB1と、第1ボデーB1の軸方向下側に設けられ、ノズルニードル20を収容する第2ボデーB2と、ノズルニードル駆動部40において第1ボデーB1の軸方向上側に設けられ、バランスピストン90と大径ピストン60の一部を収容する第3ボデーB3と、ノズルニードル駆動部40において第3ボデーB3の軸方向上側に設けられ、大径ピストン60及びピエゾスタック50を収容する第4ボデーB4と、図4に示すように、調量弁駆動部140において第1ボデーB1の軸方向上側に設けられ、第2の段付き小径ピストン170、及び中間圧調圧弁200を収容する第5ボデーB5と、調量弁駆動部140において第5ボデーB5の軸方向上側に設けられ、第2のバランスピストン190と、第2の大径ピストン160の一部を収容する第6ボデーB6と、調量弁駆動部140において第6ボデーB6の軸方向上側に設けられ、第2の大径ピストン160及び第2のピエゾスタック150を収容する第7ボデーB7とを有している。第1ボデーB1は、ノズルニードル駆動部40と後述する調量弁駆動部140で共有されている。
ノズルニードル駆動部40の構成について図2及び図3を用いて説明する。ノズルニードル駆動部40においては、第2ボデーB2には、ノズルニードル20が、所定の嵌め合い隙間を以って挿入されており、ノズルニードル20は、第2ボデーB2に対して軸方向に摺動可能に構成されている。第2ボデーB2のうち軸方向下側の先端部分が、上述のバルブシート14を構成している。第2ボデーB2とノズルニードル20の嵌め合い隙間は、数μm程度に設定されている。
ノズルニードル20のニードル外周壁22と第2ボデーB2との間には、燃料噴射装置10の閉弁時において噴射燃料を一時的に貯留する燃料室(以下、ニードル外周燃料室と記す)30が形成されている。ニードル外周燃料室30は、ノズルニードル20と軸心が一致する筒状をなしており、ノズルニードル20が上昇して燃料噴射装置10が開弁すると、噴孔12と連通する。燃料噴射装置10の閉弁時において、ニードル外周燃料室30には、主燃料と副燃料が、予め設定された割合で充填される。
ニードル外周燃料室30のうち噴孔12とは反対側(すなわち軸方向上側)には、主燃料溜まり33が設けられている。主燃料溜まり33は、ノズルニードル20の軸心を中心に環状に形成されており、ニードル外周燃料室30のうち軸方向上側を構成する部分である。主燃料溜まり33には、主燃料入口82からの主燃料をニードル外周燃料室30に向けて導く主燃料通路80が接続されている。当該主燃料通路80は、第3ボデーB3に形成された主燃料通路81を介して、主燃料入口82に連通している。上述の主燃料レール7から主燃料入口82に供給された主燃料は、主燃料通路80を経て、主燃料溜まり33からニードル外周燃料室30に導入される。
また、図3に示すように、ノズルニードル20の内部には、副燃料をニードル外周燃料室30に導く副燃料導入通路100が形成されている。副燃料導入通路100の一方側の開口102は、ニードル外周燃料室30のうち噴孔12側に接続されており、副燃料導入通路100の他方側の開口104は、ニードル外周壁22に形成された環状の溝(以下、副燃料環状溝と記す)106に接続されている。
副燃料環状溝106は、ニードル外周壁22のうち、主燃料通路80が連通する「主燃料溜まり33」に比べて軸方向上側に所定の間隔を空けて設けられている。副燃料環状溝106の溝底には、副燃料導入通路100の他方側の開口104が設けられている。副燃料導入通路100の一方側(噴孔12側)の開口102は、ニードル外周燃料室30に面して設けられている。副燃料環状溝106には、副燃料通路108から副燃料が供給される。
第2ボデーB2には、副燃料入口112(図4参照)からの副燃料を、副燃料環状溝106に導く副燃料通路108が形成されている。すなわち当該副燃料通路108のノズルニードル20側の開口107は、副燃料環状溝106に対向するよう設けられている。副燃料通路108は、副燃料調量弁120を介して副燃料入口112(図4参)に連通している。上述の副燃料レール8から副燃料入口112に供給された副燃料は、副燃料調量弁120、副燃料通路108,110、副燃料環状溝106、及び副燃料導入通路100を経て、ニードル外周燃料室30に導入される。副燃料調量弁120等の調量弁駆動部140の構成については、後述する。
また、ニードル外周壁22のうち、副燃料環状溝106に比べて軸方向上側には、主燃料が充填される環状の溝(以下、主燃料環状溝と記す)88が形成されている。主燃料環状溝88は、副燃料環状溝106から軸方向上側に所定の間隔を空けて設けられている。
第2ボデーB2には、上述の主燃料通路80から分岐して設けられ、主燃料環状溝88に燃料を導く燃料通路(以下、環状溝用主燃料通路と記す)86が形成されている。すなわち、環状溝用主燃料通路86のノズルニードル20側の開口は、主燃料環状溝88の溝底に対向するよう設けられている。環状溝用主燃料通路86から主燃料環状溝88に主燃料が導かれて、主燃料環状溝88には、主燃料溜まり33に作用するのと同じ値の「主燃料圧力」が作用することとなる。
第1ボデーB1には、ノズルニードル駆動部40においてノズルニードル20に軸方向上側から当接する段付き小径ピストン70が収容されている。当該段付き小径ピストン70は、軸心がノズルニードル20と略一致しており、且つ外径の異なる2つの略円柱状の部分が結合されて構成されている。段付き小径ピストン70は、軸方向上側に比べて軸方向下側の外径が小さく構成されており、以下の説明において、段付き小径ピストン70の軸方向下側の部分72を「小径部」と記し、段付き小径ピストン70の軸方向上側の部分74を「大径部」と記す。段付き小径ピストン70の小径部72は、ノズルニードル20の軸方向上側の端面(以下、ニードル上側端面と記す)26に当接して、ノズルニードル20の上昇(リフト)・下降を制御する。
第1ボデーB1のうち軸方向下側、すなわちノズルニードル20側には、ノズルニードル20と第2ボデーB2との嵌め合い隙間から軸方向上側に漏れ出た主燃料を受ける燃料室(以下、リターン主燃料室と記す)R10が形成されている。リターン主燃料室R10は、段付き小径ピストン70の小径部72の軸心を中心として、小径部72の外周を囲うように設けられており、隣接するニードル上側端面26に比べて外径が大きく設定されている。リターン主燃料室R10は、リターン主燃料通路R20を介してリターン主燃料出口R12と連通している。リターン主燃料室R10は、ノズルニードル20と第2ボデーB2との嵌め合い隙間から漏れ出た主燃料を受けて、リターン主燃料通路R20からリターン主燃料出口R12に向けて流すことが可能となっている。
第3ボデーB3には、ノズルニードル駆動部40において段付き小径ピストン70に軸方向上側から当接するバランスピストン90が収容されている。バランスピストン90は、軸心がノズルニードル20と略一致しており、略円柱状に構成されている。バランスピストン90は、その軸方向下側の端が、段付き小径ピストン70に当接する。一方、第3ボデーB3のうち、バランスピストン90の軸方向上側の端面(以下、バランスピストン上側端面96と記す)の軸方向上側には、当該バランスピストン上側端面96に主燃料圧力を作用させるための燃料室(以下、バランス室と記す)92が形成されている。バランス室92は、主燃料通路81を介して主燃料入口と連通しており、バランス室92には、主燃料圧力が作用している。
バランスピストン90及びバランス室92の軸方向に直交する断面の断面積は、ノズルニードル20の軸方向上側部分の断面積(すなわちニードル上側端面26の面積)と略同一となるよう設定されている。このため、ノズルニードル20が上昇してバルブシート14から離間した状態、すなわち燃料噴射装置10の開弁時においては、シート当接面24が主燃料圧力を受けることにより、ノズルニードル20に軸方向上向きの力(以下、燃圧上昇力と記す)が作用すると共に、バランスピストン上側端面96が主燃料圧力を受けることにより、当該燃圧上昇力と同じ値の軸方向下向きの力(以下、燃圧下降力と記す)が、バランスピストン90に作用して、段付き小径ピストン70を介してノズルニードル20に伝達される。このように燃料噴射装置10の開弁時において、燃圧上昇力と燃圧下降力とをつり合わせている。
また、第3ボデーB3のうち段付き小径ピストン70側(軸方向下側)には、ノズルニードル駆動部40の段付き小径ピストン70を、ノズルニードル20がバルブシート14に当接する向き(軸方向下向き)に付勢する付勢部材としてのコイルばね(以下、ニードル付勢用スプリングと記す)98が設けられており、且つ当該ニードル付勢用スプリング98を収容する燃料室(以下、小径側スプリング収容室99と記す)が形成されている。小径側スプリング収容室99は、バランスピストン90の外周を囲うよう形成されており、リターン主燃料通路R20を介して、リターン主燃料出口R12に連通している。小径側スプリング収容室99は、バランスピストン90と第3ボデーB3との嵌め合い隙間から漏れ出た主燃料を受けて、リターン主燃料出口R12に向けて流す。ニードル付勢用スプリング98は、バランスピストン90を中心にその径方向外側に巻回されており、軸方向上側の端が第3ボデーB3の小径側スプリング収容室99を規定する壁面に当接しており、軸方向下側の端が段付き小径ピストン70の大径部74に当接している。
ノズルニードル20が上昇した状態、すなわち燃料噴射装置10の開弁時においては、上述の燃圧上昇力と燃圧下降力が釣り合っているため、ノズルニードル20に作用する軸方向下向きの力は、ニードル付勢用スプリング98による付勢力のみとなる。段付き小径ピストン70が後述する小径側変位拡大室78から、この付勢力以上の値の軸方向上向きの力を受けていない場合、ノズルニードル20は、バルブシート14に当接した状態、すなわち燃料噴射装置10の閉弁時となる。
また、第4ボデーB4には、ECU330により制御されて所定方向に伸長するピエゾスタック50と、当該ピエゾスタック50の伸長を受けて変位する大径ピストン60が収容されている。加えて、第3ボデーB3には、大径ピストン60に面して、当該大径ピストン60の変位により容積が変化する燃料室(以下、大径側変位拡大室と記す)66が形成されている。ピエゾスタック50は、複数の圧電素子が積層されて構成されており、ECU330により印加される電圧が制御されて、第3ボデーB3に対して軸方向下向きに伸長可能に構成されている。大径ピストン60は、ピエゾスタック50が伸長する方向に軸心が延びる略円柱状をなしている。大径ピストン60の一方側(軸方向上側)の端面61は、ピエゾスタック50に接しており、他方側(軸方向下側)の端面65は、大径側変位拡大室66に面している。つまり、大径ピストン60は、ピエゾスタック50の伸長に応じて大径側変位拡大室66の側に変位する。ピエゾスタック50が伸長するに従って、大径ピストン60は、大径側変位拡大室66の側(軸方向下側)に押し下げられて、大径側変位拡大室66の容積を減少させる。ピエゾスタック50の伸長量、すなわち大径ピストン60の変位は、ECU330により制御される。
大径側変位拡大室66は、第3ボデーB3及び第1ボデーB1に形成された燃料通路(以下、変位拡大通路と記す)68を介して後述する小径側変位拡大室78と連通している。また、大径側変位拡大室66には、ピエゾスタック50が伸長しておらず大径ピストン60が変位していない場合であっても、後述する調量弁駆動部140からの所定圧力(以下、中間圧と記す)の副燃料が供給されている。中間圧が、例えば、1MPaに設定されている。第1ボデーB1には、ノズルニードル駆動部40の大径側変位拡大室66と、後述する調量弁駆動部140の中間圧室210(図4参照)とを連通させる燃料通路(以下、中間圧通路と記す)220が形成されており、当該中間圧通路220の途中には、中間圧室210からノズルニードル駆動部40の大径側変位拡大室66に向かう方向のみに副燃料の流れを許すチェック弁(逆止弁)222が設けられている。これにより、大径側変位拡大室66の圧力が中間圧を下回る場合に、中間圧室210から副燃料が供給されて、大径側変位拡大室66と、これに連通する小径側変位拡大室78の燃料圧力が中間圧に保たれる。
また、第4ボデーB4には、大径ピストン60をピエゾスタック50側(軸方向上側)に付勢する付勢部材としてのコイルばね(以下、大径ピストン付勢用スプリングと記す)63が設けられており、且つ当該大径ピストン付勢用スプリング63を収容する燃料室(以下、大径側スプリング収容室と記す)64が形成されている。大径側スプリング収容室64は、大径ピストン60の外周を囲うように形成されており、リターン主燃料通路R22、及びリターン主燃料通路R24を介して、リターン主燃料出口R12に連通している。大径ピストン60の外周と第4ボデーB4との間には、Oリング62が設けられており、大径側スプリング収容室64にある主燃料が、ピエゾスタック50側に浸入することを防止している。
大径ピストン付勢用スプリング63は、大径ピストン60を中心にその径方向外側に巻回されており、軸方向上側の端が大径ピストン60に当接しており、軸方向下側の端が大径側スプリング収容室64を規定する壁面に当接している。大径ピストン付勢用スプリング63は、ピエゾスタック50が伸長していない場合には大径側変位拡大室66の容積が増大するよう、大径ピストン60をピエゾスタック50側(軸方向上側)に付勢している。
一方、第1ボデーB1と段付き小径ピストン70との間には、大径側変位拡大室66に連通する燃料室(以下、小径側変位拡大室78と記す)が形成されている。小径側変位拡大室78は、大径部74の軸方向下側であって小径部72の径方向外側に、環状に設けられており、変位拡大通路68を介して大径側変位拡大室66に連通している。小径側変位拡大室78は、軸方向に直交する断面の断面積(以下、単に「小径側変位拡大室78の断面積」と記す)が、大径側変位拡大室66の大径ピストン60が変位する方向(本実施形態においては軸方向)に直交する断面の断面積(以下、単に「大径側変位拡大室66の断面積」と記す)に比べて、小さくなるように構成されている。大径側変位拡大室66の断面積と、小径側変位拡大室78の断面積との比率を、以下に「変位拡大率」と記す。小径側変位拡大室78、大径側変位拡大室66、及びこれらを接続する変位拡大通路68には、圧力伝達媒体として副燃料が充填されている。
以上のように構成されたノズルニードル駆動部40は、ECU330により制御されてピエゾスタック50が伸長して大径ピストン60を軸方向下側に変位させると、大径側変位拡大室66内の副燃料が加圧され、当該圧力が小径側変位拡大室78に伝達されて、段付き小径ピストン70に軸方向上向きの力が作用する。すなわち大径ピストン60を軸方向下側に変位させると、大径側変位拡大室66の容積が減少した分、小径側変位拡大室78の容積が増大して、段付き小径ピストン70を軸方向上側に変位させることができる。つまり、ノズルニードル駆動部40は、変位拡大率の分だけ、段付き小径ピストン70の変位すなわちノズルニードル20の変位を、大径ピストン60の変位すなわちピエゾスタック50の伸長量に比べて増大させることが可能となっている。
次に、副燃料調量弁120、及び調量弁駆動部140の構成について図4及び図5を用いて説明する。第1ボデーB1には、副燃料調量弁120の弁体122が収容されており、当該弁体122が当接(着座)する副燃料調量弁120の弁座124が形成されている。第1ボデーB1には、副燃料調量弁120の弁体122を収容し、副燃料入口112から燃料が供給される燃料室(以下、調量弁燃料室と記す)126が形成されている。調量弁燃料室126を規定する壁面のうち、弁体122の先端と対向する面が弁座124となっている。副燃料調量弁120の弁体122は、略円柱状をなしており、調量弁燃料室126内を軸方向に摺動可能に構成されている。なお、以下の説明において、副燃料調量弁120の弁体122が、弁座124から離間する向きを「軸方向上側」と記し、弁体122に当接する向きを「軸方向下側」と記す。
調量弁燃料室126は、弁体122が弁座124から離間している、すなわち副燃料調量弁120が開弁している場合、第1ボデーB1に形成された副燃料通路110を介して、上述したノズルニードル20(図3参照)の副燃料導入通路100、及びニードル外周燃料室30と連通する。一方、「燃料噴射装置10の閉弁時」において、副燃料調量弁120が閉弁すると、ニードル外周燃料室30に充填されている副燃料の燃料量は、略一定に維持される。
副燃料調量弁120の調量弁燃料室126と、ノズルニードル20内の副燃料導入通路100とを連通させる副燃料通路108,110、詳細には、副燃料通路110のうち調量弁燃料室126の直下流側には、図5に二点鎖線で囲うように、副燃料調量弁120からノズルニードル20の副燃料導入通路100に向かう副燃料の流れを絞ることにより、副燃料の流量を制限する「絞り」130が設けられている。当該絞り130は、副燃料通路110において流路断面積が減少する部位であり、当該副燃料通路110を流れる副燃料の流れに流路抵抗を生じさせる。この「絞り」130を設けたことによる作用・効果については、後述する。
調量弁駆動部140は、副燃料調量弁120の弁体122を駆動するアクチュエータとして設けられており、上述したノズルニードル駆動部40と同様に、ECU330によりにより制御されて伸長する第2のピエゾスタック150と、第2のピエゾスタック150の伸長に応じて変位する第2の大径ピストン160と、副燃料調量弁120の弁体122の軸方向上側の端面128に当接して設けられ、第2の大径ピストン160の変位に応じて増大する軸方向上向きの燃料圧力を受けて、軸方向上側に変位可能な第2の段付き小径ピストン170と、第2の段付き小径ピストン170の軸方向上側の端面176に当接して設けられ、副燃料入口112に連通する燃料室である第2のバランス室192から軸方向下向きの副燃料圧力を受ける第2のバランスピストン190と、を有している。さらに、第2の大径ピストン160を第2のピエゾスタック150側に付勢する第2の大径ピストン付勢用スプリング162と、第2の段付き小径ピストン170を、副燃料調量弁120の弁体122が弁座124に当接するよう付勢するコイルばね(以下、弁体付勢用スプリングと記す)198とを有している。第2のピエゾスタック150、第2の大径ピストン160、第2の段付き小径ピストン170、第2のバランスピストン190の構成については、それぞれ、上述したノズルニードル駆動部40のピエゾスタック50、大径ピストン60、段付き小径ピストン70、及びバランスピストン90と略同一であるので、説明を適宜省略する。
調量弁駆動部140において、第6ボデーB6のうち第2のバランスピストン190の上側に面して形成された「第2のバランス室」192は、第6ボデーB6に形成された副燃料通路116を介して副燃料入口112と連通している。第1ボデーB1に形成された調量弁燃料室126は、第1ボデーB1及び第5ボデーB5に形成された副燃料通路111と、第6ボデーB6に形成された副燃料通路116とを介して副燃料入口112と連通している。当該第2のバランス室192と調量弁燃料室126には、副燃料圧力の副燃料が供給されている。
また、第6ボデーB6には、弁体付勢用スプリング198を収容する「第2の小径側スプリング収容室」199が形成されており、当該第2の小径側スプリング収容室199は、リターン副燃料通路R113を介してリターン副燃料出口R112に連通している。第2の小径側スプリング収容室199は、第2のバランスピストン190と第6ボデーB6との嵌め合い隙間から漏れ出た副燃料を受けてリターン副燃料出口R112に向けて流す。
また、第7ボデーB7には、第2の大径ピストン160を第2のピエゾスタック150側に付勢する「第2の大径ピストン付勢用スプリング」162が設けられており、当該第2の大径ピストン付勢用スプリング162を収容する「第2の大径側スプリング収容室」164が形成されている。第2の大径側スプリング収容室164は、リターン副燃料通路R111を介してリターン副燃料出口R112に連通している。第2の大径ピストン160の外周と第7ボデーB7との間には、Oリング162が設けられており、第2の大径側スプリング収容室164にある副燃料が、第2のピエゾスタック150側に浸入することを防止している。
第5ボデーB5のうち副燃料調量弁120側には、副燃料調量弁120の弁体122と第1ボデーB1との嵌め合い隙間から漏れ出た副燃料を受ける「リターン副燃料室」R110が形成されている。リターン副燃料室R110は、隣接する副燃料調量弁120の弁体122に比べて外径が大きく設定されており、リターン副燃料通路R111を介してリターン副燃料出口R112に連通している。リターン副燃料室R110は、副燃料調量弁120の弁体122と第1ボデーB1との間から漏れ出た副燃料を受けてリターン副燃料出口R112に向けて流す。また、リターン副燃料室R110は、リターン副燃料通路R114を介して後述する中間圧調圧弁200の低圧室R120に連通している。
第6ボデーB6には、第2の大径ピストン160に面して、第2の大径ピストン160の変位に応じて容積が変化する「第2の大径側変位拡大室」166が形成されており、一方、第5ボデーB5と第2の段付き小径ピストン170の間には、「第2の小径側変位拡大室」178が形成されている。第2の小径側変位拡大室178と、第2の大径側変位拡大室166は、第2の変位拡大通路168を介して連通している。ノズルニードル駆動部40と同様に、第2の小径側変位拡大室178は、第2の段付き小径ピストン170の大径部174の下側であって、小径部172の径方向外側に環状に設けられている。第2の小径側変位拡大室178の断面積は、第2の大径側変位拡大室166の断面積に比べて小さく設定されている。
以上のように構成された調量弁駆動部140は、第2のピエゾスタック150を伸長させて第2の大径ピストン160を下側に変位させると、第2の大径側変位拡大室166内の副燃料が加圧され、当該圧力が第2の小径側変位拡大室178に伝達されて、第2の段付き小径ピストン170に軸方向上向きの力が作用する。調量弁駆動部140は、ニードル駆動部40と同様に、第2の段付き小径ピストン170の変位、すなわち副燃料調量弁120の弁体122の変位を、第2の大径ピストン160の変位すなわち第2のピエゾスタック150の伸長量に比べて増大させることが可能となっている。
また、調量弁駆動部140には、その第2の大径側変位拡大室166及び第2の小径側変位拡大室178の圧力を、所定圧力(中間圧)に調圧するための圧力制御弁である「中間圧調圧弁」200が第5ボデーB5に設けられており、第6ボデーB6には、当該中間圧調圧弁200により中間圧に保たれる「中間圧室」210が形成されている。当該中間圧調圧弁200は、中間圧室210の反対側に設けられてリターン副燃料出口R112に連通する低圧の燃料室(以下、低圧室と記す)R120と、当該低圧室R120内に収容されたスプリング206、スプリングガイド204、及び弁球202から構成されている。中間圧調圧弁200の低圧室R120は、リターン副燃料通路R114、及びリターン副燃料室R110を介して、リターン副燃料出口R112に連通している。中間圧室210の燃料圧力が所定の中間圧を上回ると、中間圧調圧弁200が開弁する。
調量弁駆動部140において、第5ボデーB5及び第6ボデーB6には、中間圧室210と第2の大径側変位拡大室166とを連通させる「中間圧通路」231,232が形成されている。当該中間圧通路231と中間圧通路232との間には、中間圧室210から第2の大径側変位拡大室166に向かう方向のみに副燃料の流れを許すチェック弁234(逆止弁)が設けられている。これにより、第2の大径側変位拡大室166の圧力が中間圧を下回る場合に、中間圧室210から副燃料が供給されて、調量弁駆動部140の第2の大径側変位拡大室166と、これに連通する第2の小径側変位拡大室178の燃料圧力が中間圧に保たれる。
中間圧室210には、第6ボデーB6に形成された副燃料通路118から燃料が供給される。当該副燃料通路118は、調量弁駆動部140の第2のバランス室192を介して副燃料入口112に連通している。当該副燃料通路118には、中間圧ピン218が嵌挿されており、中間圧より高圧に設定された副燃料通路118の副燃料は、第6ボデーB6と中間圧ピン218との嵌め合い隙間を通って中間圧室210に流入する。このようにして中間圧室210に供給された燃料により、中間圧室210の燃料圧力が所定の中間圧を上回ると、中間圧調圧弁200が開弁して、中間圧室210内にある余剰な副燃料を、リターン副燃料出口R112に向けて流す。これにより、中間圧室210の燃料圧力は、中間圧に保たれる。
一方、中間圧室210の中間圧に保たれた副燃料は、図2を用いて上述したように、ノズルニードル駆動部40に向けて延びる中間圧通路220を介して、ノズルニードル駆動部40の大径側変位拡大室66にも供給される。
以上のように構成された燃料噴射装置10の動作について、図1〜図5を用いて説明する。燃料噴射装置10の閉弁時、すなわち図2に示すノズルニードル20がバルブシート14に当接している間において、ニードル外周燃料室30には、主燃料入口82からの主燃料が、ニードル外周燃料室30の軸方向上側にある主燃料溜まり33からニードル外周燃料室30に供給される。このとき、ニードル外周燃料室30の燃料圧力は、上述した主燃料圧力(例えば、120MPa)となっている。これに対して、副燃料の燃料圧力である副燃料圧力は、ECU330により制御されて主燃料圧力に比べて高い値(例えば、主燃料圧力に比べて40MPa高い値)に設定されており、当該「副燃料圧力」の副燃料は、副燃料入口112から、閉弁状態にある副燃料調量弁120の調量弁燃料室126に供給されている。
燃料噴射装置10の閉弁時において、副燃料調量弁120を開弁すると、調量弁燃料室126にある副燃料は、ノズルニードル駆動部40に向かう副燃料通路に流入し、絞り130を通過して、ノズルニードル20に形成された副燃料環状溝106及び副燃料導入通路100を介して、ニードル外周燃料室30に、その軸方向下側から供給される。「絞り130」に比べて副燃料の流動方向下流側(以下、単に「下流側」と記す)においては、副燃料圧力に比べて燃料圧力が低下しているものの、ニードル外周燃料室30においては、それまで充填されていた主燃料の主燃料圧力に比べて、副燃料導入通路100から導入される副燃料の副燃料圧力の方が高く、ニードル外周燃料室30に充填されていた主燃料が、軸方向下側から導入される副燃料によって軸方向上側に押し戻される。ECU330により副燃料調量弁120の開弁時間を制御することで、ディーゼル機関1の運転状態に応じて予め設定された量の副燃料を、ニードル外周燃料室30の軸方向下側から充填する。
副燃料通路110には、副燃料調量弁120から副燃料導入通路100に向かう副燃料の流れを絞る「絞り」130が形成されているため、所望量の副燃料をニードル外周燃料室30に充填するにあたって、当該絞り130を有しない場合に比べて、ニードル外周燃料室30に充填される副燃料の(単位時間あたりの)燃料流量を小さくすることができる。すなわち、同一の量の副燃料をニードル外周燃料室30に充填する場合であっても、絞り130を有しない場合に比べて、副燃料調量弁120の開弁時間を比較的長いものにすることができる。これにより、ニードル外周燃料室30に充填される副燃料の燃料量を、副燃料調量弁120により高い精度で調量することができる。
このとき、ニードル外周燃料室30の軸方向上側の部分である主燃料溜まり33と、主燃料溜まり33より軸方向上側に所定の間隔を空けて設けられた主燃料環状溝88には、主燃料圧力が作用しているため、ニードル外周燃料室30にある主燃料は、ノズルニードル20と第2ボデーB2との嵌め合い隙間に比べて、より流路抵抗の小さい主燃料通路80を通って押し戻される。このとき、ニードル外周燃料室30の主燃料溜まり33と主燃料環状溝88との間に設けられた副燃料環状溝106には、その軸方向の上側と下側の両側から主燃料圧力が作用しているため、副燃料環状溝106にある副燃料が、ノズルニードル20と第2ボデーB2の嵌め合い隙間を通ってリターン主燃料室R10に漏れ出ることを防止することができる。つまり、リターン主燃料室R10に流入する燃料を、主燃料環状溝88からノズルニードル20と第2ボデーB2の嵌め合い隙間を通って漏れ出る主燃料のみにすることができる。これにより、副燃料の噴孔12からの噴射量を、精度の高いものにすることができる。
その後、ノズルニードル20が軸方向上側に上昇する(リフトする)、すなわち燃料噴射装置10が開弁すると、ニードル外周燃料室30のうち軸方向下側に充填されている副燃料が、まず、噴孔12から噴射される。副燃料が噴孔12から噴射された後、当該副燃料に連続して、ニードル外周燃料室30のうち軸方向上側に充填されていた主燃料が、同一の噴孔12から噴射される。副燃料として主燃料に比べて着火性の良好なものを用いることで、ディーゼル機関1の気筒9内において主燃料を良好に着火・燃焼させることができる。
以上に説明したように本実施形態に係る燃料噴射装置10は、内燃機関(例えば、コモンレール式ディーゼル機関1)に用いられ、ノズルニードル20を軸方向上側に上昇させることにより、主燃料と副燃料との2種類の燃料を同一の噴孔12から連続して噴射可能な燃料噴射装置10であって、ノズルニードル20の外周壁22とインジェクタボデー(第2ボデーB2)との間に設けられ、主燃料と副燃料とを充填可能な燃料室であるニードル外周燃料室30と、ノズルニードル20の内部に設けられ、副燃料をニードル外周燃料室30に導入可能な燃料通路である副燃料導入通路100と、副燃料導入通路100からニードル外周燃料室30に導入される副燃料を調量可能な副燃料調量弁120とを有し、副燃料調量弁120と副燃料導入通路100とを連通させる副燃料通路110には、副燃料の流れを絞る絞り130が設けられているものとした。所望量の副燃料をニードル外周燃料室30に充填するにあたって、当該絞り130を有しない場合に比べて、ニードル外周燃料室30に充填される副燃料の(単位時間あたりの)燃料流量を比較的小さくし、副燃料調量弁120の開弁時間を比較的長いものにすることができる。これにより、ニードル外周燃料室30に充填される副燃料の燃料量を副燃料調量弁120により精度よく調量することができ、燃料噴射1回あたりの副燃料の噴射量を、精度の高いものにすることができる。
また、本実施形態に係る内燃機関用燃料噴射装置10において、ニードル外周燃料室30のうち軸方向上側からは、予め設定された主燃圧で主燃料が充填され、副燃料調量弁120を開弁させることにより、ニードル外周燃料室30のうち軸方向下側からは、主燃圧に比べて高い燃料圧力で副燃料が充填されるものとした。ノズルニードル20を上昇させることにより、噴孔12から、まず副燃料を噴射し、当該副燃料に連続して主燃料を噴射可能な燃料噴射弁10の閉弁時において、高い精度で副燃料の調量を行うことができる。
また、本実施形態に係る内燃機関用燃料噴射装置10において、インジェクタボデー(第2ボデーB2に形成され、主燃料入口82から供給された主燃料を、ニードル外周燃料室30に向けて導く燃料通路である主燃料通路80と、ノズルニードル20の外周壁22に環状に形成され、副燃料導入通路100と連通する副燃料環状溝106と、ノズルニードル20の外周壁のうち副燃料環状溝106より軸方向上側において環状に形成され、主燃料通路80に連通する主燃料環状溝88とを有するものとした。ニードル外周燃料室30の軸方向上側の部分と、当該部分より軸方向上側に所定の間隔を空けて設けられた主燃料環状溝88には、主燃料圧力が作用しているため、ニードル外周燃料室30にある主燃料は、ノズルニードル20とインジェクタボデー(第2ボデーB2)との嵌め合い隙間に比べて、より流路抵抗の小さい主燃料通路80を通って押し戻される。ニードル外周燃料室30の主燃料溜まり33と主燃料環状溝88との間に設けられた副燃料環状溝106には、その軸方向の上側と下側の両側から主燃料圧力が作用しているため、副燃料環状溝106にある副燃料が、ノズルニードル20とインジェクタボデー(第2ボデーB2)の嵌め合い隙間を通って漏れ出ることを防止することができる。
また、本実施形態に係る内燃機関1は、コモンレール式のディーゼル機関1であり、燃料噴射装置10において、ノズルニードル20を駆動するノズルニードル駆動部40は、電子制御装置により制御されて伸長するピエゾスタック50と、ピエゾスタック50の伸長に応じて変位する大径ピストン60と、ノズルニードル20の軸方向上側の端面26に当接して設けられ、大径ピストン60の変位に応じて増大する軸方向上向きの燃料圧力を受けて軸方向上側に変位する段付き小径ピストン70と、段付き小径ピストン70の軸方向上側の端面76に当接して設けられ、主燃料通路80に連通する燃料室であるバランス室92から軸方向下向きの主燃料圧力を受けるバランスピストン90と、を有し、副燃料調量弁120の弁体122を駆動する調量弁駆動部140は、ECU(電子制御装置)330により制御されて伸長する第2のピエゾスタック150と、第2のピエゾスタック150の伸長に応じて変位する第2の大径ピストン160と、副燃料調量弁120の弁体122の軸方向上側の端面128に当接して設けられ、第2の大径ピストン160の変位に応じて増大する軸方向上向きの燃料圧力を受けて、軸方向上側に変位可能な第2の段付き小径ピストン170と、第2の段付き小径ピストン170の軸方向上側の端面176に当接して設けられ、副燃料入口112に連通する燃料室である第2のバランス室192から軸方向下向きの副燃料圧力を受ける第2のバランスピストン190と、を有するものとした。コモンレール式のディーゼル機関1に必要な噴射圧力(例えば、120MPa)で、副燃料に連続して主燃料を噴射する燃料噴射装置10を、2つのピエゾスタック50,150の伸長を制御し、これら伸長量を拡大させることで、容易に実現することができる。
なお、本実施形態において、主燃料にはエタノールを用いられ、副燃料には、軽油が用いられるものとしたが、用いられる主燃料と副燃料との組み合わせは、これに限定されるものではない。例えば、主燃料には、軽油が用いられ、副燃料には、軽油に比べて着火性(セタン価)の高い脂肪酸メチルエステル(いわゆるバイオディーゼル燃料)を用いるものとしても良い。