JP5253365B2 - エレベータ用かご及びその製造方法 - Google Patents

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この発明は、表面が繊維強化複合材料からなるスキン材で覆われたパネルにより区画されたかご室を有するエレベータ用かご、及びその製造方法に関するものである。
従来のエレベータ用かごは、かご室やかご枠がスチールもしくはアルミニウム合金で作られているが、そのようなかごは重く、大きな駆動力を必要とするばかりか、慣性が大きいので運転に際して高度な制御を要する。
このような要求に対して、FRP板(Fiber Reinforced Plastic)をスキン材とし、発泡体をコア材としたサンドイッチパネル構造あるいはFRP板をスキン材及びストリンガとした中空断面パネル構造を採用したエレベータ用かごが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平9-295782号公報
このようなエレベータ用かごにおいて、FRP板のスキン材に難燃性を付与しようとした場合、補強繊維に難燃性樹脂を含浸することで難燃性スキン材を得ることができるものの、難燃性樹脂に例えばりん酸エステル系難燃剤が添加されていた場合、可塑剤としても作用するので、非難燃性スキン材に比べてスキン材の機械的強度が低下するという問題点があった。
この発明は上記のような問題点を解決することを課題とするものであって、軽量、難燃性を確保しつつ、剛性、曲げ強度等の機械的強度が向上したエレベータ用かご、及びその製造方法を得ることを目的とする。
この発明に係るエレベータ用かごは、繊維強化複合材料からなるスキン材で表面を覆ったパネルにより区画されたかご室を有するエレベータ用かごにおいて、
前記スキン材は、補強繊維に難燃性樹脂を含浸させた難燃層と、この難燃層に積層して設けられ補強繊維に非難燃性樹脂を含浸させた非難燃層とが一体化されて構成されている。
また、この発明に係るエレベータ用かごの製造方法は、補強繊維で構成された補強繊維体上に、剥離用のピールプライ及び樹脂拡散用のフローメディアを順次載置する工程と、
前記補強繊維体上をバギングフィルムで覆い、補強繊維体を外気と遮断する工程と、
前記バギングフィルム内を真空吸引するとともに、非難燃性樹脂または難燃性樹脂の一方をフローメディアを通じて補強繊維体に含浸させる工程と、
引き続き、前記バギングフィルム内を真空吸引するとともに、非難燃性樹脂または難燃性樹脂の他方をフローメディアを通じて補強繊維体に含浸させる工程と、
この後、前記非難燃性樹脂及び前記難燃性樹脂を硬化させる工程と、
前記ピールプライを剥離することでフローメディアを分離して非難燃層及び難燃層で構成されたスキン材を形成する工程とを備えている。
この発明に係るエレベータ用かごによれば、スキン材は、補強繊維に難燃性樹脂を含浸させた難燃層と、この難燃層に積層されて設けられ補強繊維に非難燃性樹脂を含浸させた非難燃層とが一体化されて構成されているので、軽量、難燃性を確保しつつ、補強繊維の全体が難燃性樹脂で含浸されたスキン材と比較して、剛性、曲げ強度等の機械的強度が向上する。
この発明の実施の形態1によるエレベータ用かごの斜視図である。 図1のエレベータ用かごのパネルを示す部分断面図である。 図1のエレベータ用かごのアングル示す平断面図である。 図1のエレベータ用かごのかご室を示す平断面図である。 図1のエレベータ用かごのかご室を示す分解斜視図である。 図2のパネルのスキン材をVaRTM法を用いて製造する真空含浸装置の構成図である。 この発明の実施の形態2によるエレベータ用かごのパネルを示す部分断面図である。 この発明の実施の形態3によるエレベータ用かごの金属枠を示す斜視図である。 この発明の実施の形態4によるエレベータ用かごの整風カバーを示す断面図である。
以下、この発明の各実施の形態について図に基づいて説明するが、各図において同一、または相当部材、部位については、同一符号を付して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるエレベータ用かごの斜視図である。
このかごは、床板1、側板2、天板3及び背板4からなるボックス状のかご室にかごドア5を取付けることで構成されている。
図2は、床板1、側板2、天板3及び背板4それぞれの構成部材であるパネル6を示す部分断面図である。
このパネル6は、コア材7と、このコア材7を両面で挟んだ接着されたスキン材8とから構成されている。
スキン材8は、コア材7の両面に接着された非難燃層9と、この非難燃層9の表面に設けられた難燃層10とから構成されている。
非難燃層9及び難燃層10は、ともにマトリックス樹脂及び補強繊維を有している。さらに、難燃層10は、難燃剤を含有している。
上記コア材7としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、エポキシ樹脂等のフォーム(発泡体)が用いられる。中でも、素材単体に難燃性のあるフェノール樹脂を用いることが好ましい。
また、アルミニウムフォーム等の無機質フォームやシンタクチックを用いることもできる。
さらに、アルミニウムハニカム、紙ハニカム、ポリアラミド繊維紙のハニカムにフェノール樹脂を含浸してなるハニカム体を用いることもできる。
上記マトリックス樹脂としては、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化樹脂が用いられる。
上記補強繊維としては、高強度、高弾性率で、軽量な、炭素繊維、ガラス繊維あるいは有機繊維が用いられる。特に軽量・高強度の点から炭素繊維が好ましい。
使用する補強繊維の形態としては平織が強度の異方性がない点で好ましいが、一方向に引き揃えた繊維、綾織を用いることもできる。
上記難燃剤としては、りん酸エステル系難燃剤、りん─窒素化合物系、金属水酸化物系等の添加型あるいは反応型難燃剤が用いられる。
また、難燃層10は、難燃剤を添加することなく、はじめから難燃化された難燃性樹脂を用いて形成してもよい。
図3は、床板1、側板2、天板3及び背板4間を連結するアングル22の平断面図、図4は、図1のかご室の平断面図、図5は、図1のかご室の分解斜視図である。
なお、図5では、対向したアングル22のうち内側のアングル22は省略されている。
この断面L字形状のアングル22も、パネル6のスキン材8と同じ材質のアングル用スキン材8Aで構成されており、非難燃層に難燃層が積層されたにアングル用スキン材8Aのうち、非難燃層には、各パネル6のコア材7が接着されている。
このアングル22は、コア材7を両面で接着することで、床板1、側板2、天板3及び背板4の相互が連結され、エレベータのかご室が形成される。
なお、エレベータ用かごの現地組立性を考慮し、かご室の容量にもよるが、輸送上、床板1、側板2、天板3及び背板4は、一面ではなく、短冊状に分割できる形状のものでもよい。
また、全てをスキン材8Aを有するアングル22とするのではなく、床板1、側板2、天板3及び背板4を相互に連結する複数のアングルのうち一部のアングルについては、金属製であってもよい。
なお、ドア5についても、パネル6のスキン材8と同じ材質のドア用スキン材を有しており、非難燃層に難燃層が積層されたにドア用スキン材のうち、非難燃層にはコア材が接着されている。
図6は、真空含浸法(Vacuum assisted Resin Transfer Molding:以下、VaRTM法と呼ぶ)を用いてスキン材8,8Aを製造する真空含浸装置の構成図である。
この真空含浸装置は、ベース11と、このベース11の上面に囲って設けられ上面が粘着性のシール材12と、シール材12の内側に先端部が臨んだ注入配管13と、この注入配管13の他端部が臨み、樹脂が貯留される樹脂タンク14と、シール材12の内側に先端部が臨んだ吸引配管15と、この吸引配管15の他端部に接続された真空ポンプ16と、シール材12と協働してシール材12の内部を密閉するバギングフィルム17とを備えている。
次に、この真空含浸装置を用いてスキン材8,8Aを製造する手順について説明する。
先ず、ベース11上に補強繊維体18を載置し、さらにこの補強繊維体18の上面に剥離用のピールプライ19及び樹脂拡散用のフローメディア20を載置する。
この補強繊維体18は、多層に積層された補強繊維で構成され、この層数により補強繊維体18の厚みが設定される。この補強繊維体18は、上下方向に沿った空隙率は高く、水平方向に沿った空隙率は低い。従って、補強繊維体18に対する樹脂の含浸速度は、上下方向が水平方向に対して著しく大きい。
また、フローメディア20は、上下方向に沿った空隙率は高く、従って補強繊維体18に対する樹脂の含浸は、主にフローメディア20を通じて補強繊維体18内に浸入し、ベース11に向けて進行する。
この後、補強繊維体18上にバギングフィルム17を覆い、バギングフィルム17の縁部をシール材12に接着し、シール材12の内部を外気と遮断する。
次に、真空ポンプ16を駆動して、バギングフィルム17の内部の空気を吸引配管15を通じて吸引する。
この空気の吸引とともに、注入配管13を通じて、樹脂タンク14内のマトリックス樹脂21をシール材12の内部に浸入させ、引き続きフローメディア20を通じて補強繊維体18の内部に含浸させる。
この後、真空ポンプ16を再度駆動して、別途設置されマトリックス樹脂21に難燃剤が混合された樹脂タンク(図示せず)から注入配管13を通じて、難燃剤入りのマトリックス樹脂をシール材12の内部に浸入させ、フローメディア20を通じて先に浸入していたマトリックス樹脂21を補強繊維体18の下部に押しやり、補強繊維体18の上部に含浸させる。
この後、数時間自然放置してマトリックス樹脂21を硬化させた後、ピールプライ19を剥離することでフローメディア20を補強繊維体18から分離することで、上部が難燃層10で下部が非難燃層9で構成されたスキン材8,8Aが完成する。
このVaRTM法による方法は、オートクレーブ(加圧炉)等の大掛かりな設備が不要で、低コストでスキン材8,8Aを成形することができる。
また、この方法によりスキン材8,8Aを成形する場合、フローメディア20、ピールプライ19、補強繊維体18への樹脂の透過性の点で樹脂が低粘度である必要性があるものの、設備の規模の制約を受けることなく、容積の大きなスキン材8,8Aも成形することができる。
また、樹脂に添加される触媒の添加量を調整することで、樹脂の硬化速度を調節することができ、補強繊維体18の内部に樹脂が浸入する際に、途中で硬化した樹脂で浸入が妨げられることなく、補強繊維体18の全体に樹脂が行き渡り、かつ短時間で樹脂を硬化させることができる。
以上説明したように、この実施の形態のエレベータ用かごによれば、スキン材8,8Aは、補強繊維に難燃性樹脂を含浸させた難燃層10と、この難燃層10に積層して設けられ補強繊維に非難燃性樹脂を含浸させた非難燃層9とが一体化されて構成されているので、軽量、難燃性を確保しつつ、補強繊維の全体が難燃性樹脂で含浸されたスキン材と比較して、剛性、曲げ強度等の機械的強度が向上する。
また、一対のスキン材8,8A間には、両面が非難燃層9に接着されたコア材7が設けられているので、繊維強化複合材料のみでかごのパネルを製造した場合と比較して製造コストが低減される。
また、補強繊維として、炭素繊維を用いた場合には、かごが軽量化され、かつ機械的強度が向上する。
また、隣接したパネル6間を連結したアングル22のアングル用スキン材8Aは、パネル6のスキン材8と同じ材質であり、パネルを軽量かつ高強度に固定することができる。
また、ドア5のドア用スキン材は、パネル6のスキン材8と同じ材質であり、剛性、曲げ強度等の機械的の低下を抑制しながら、軽量で難燃性のドアを得ることができる。
実施の形態2.
図7は、この発明の実施の形態2のパネル6Aを示す部分断面図である。
この実施の形態では、難燃層10の表面に不燃層23が形成されている。
この不燃層23は、金属箔または、不燃のシートあるいは壁紙を難燃層10の表面に貼り付けることにより形成される。また、不燃塗装により形成してもよい。
なお、金属箔等を貼り付ける際には、無機系の接着剤を使用するのが好ましいが、マトリックス樹脂21を接着剤として用いることもできる。このマトリックス樹脂21を用いた場合には、発煙が抑制できるという点でハロゲン系難燃剤を添加してもよい。
また、該表面に貼り付ける不燃層23によっては、接着剤に難燃剤を添加しなくてもよい。
なお、他の構成は、実施の形態1のエレベータ用かごと同じである。
この実施の形態のエレベータ用かごによれば、不燃層23を金属箔、あるいは塗装で形成することでも、パネル6Aの難燃性を向上させることができる。
また、不燃層23を不燃性シートあるいは壁紙で形成することで、パネル6Aの難燃性に加えて意匠性も向上させることができる。
実施の形態3.
図8は、この発明の実施の形態3のエレベータ用かごの金属枠24を示す斜視図である。
この実施の形態では、各辺部26が連結して立方体形状の金属枠24が形成されている。
各辺部26の端面にはパネル6の端面が接着して、隣接したパネル6同士は金属枠24を介して連結されている。
他の構成は、実施の形態1のエレベータ用かごと同じである。
この実施の形態のエレベータ用かごによれば、かご室を形成する、床板1、側板2、天板3及び背板4は、金属枠24により強固に連結される。
また、かご室を組立てる際に、床板1、側板2、天板3及び背板4を各辺部26間に組み入れればよく、組立作業性がよい。
実施の形態4.
図9は、この発明の実施の形態4のエレベータ用かごの整風カバー25を示す斜視図である。
この実施の形態の整風カバー25は、かごの上部、及び下部に設けられており、高速エレベータにおけるかごの昇降時の空気抵抗を減ずるものである。
この整風カバー25も、実施の形態1のパネル6と同一の材料、即ちコア材7の両面にスキン材8が接着されて構成されている。
他の構成は、実施の形態1のエレベータ用かごの構成と同じである。
この実施の形態のエレベータ用かごによれば、整風カバー25も、実施の形態1のパネル6と同じ材料であり、剛性、曲げ強度等の機械的強度の低下を抑制しながら、難燃性が得られる。
なお、上記各実施の形態では、コア材7を有するパネル6について説明したが、コア材7を有することなく、非難燃層9及び難燃層10の2層で形成されたパネルであってもよい。
1 床板、2 側板、3 天板、4 背板、5 ドア、6 パネル、7 コア材、8 スキン材、8A アングル用スキン材、9 非難燃層、10 難燃層、11 ベース、12 シール材、13 注入配管、14 樹脂タンク、15 吸入配管、16 真空ポンプ、17 バギングフィルム、18 補強繊維体、19 ピールプライ、20 フローメディア、21 マトリックス樹脂、22 アングル、23 不燃層、24 金属枠、25 整風カバー、26 辺部。

Claims (10)

  1. 繊維強化複合材料からなるスキン材で表面を覆ったパネルにより区画されたかご室を有するエレベータ用かごにおいて、
    前記スキン材は、補強繊維に難燃性樹脂を含浸させた難燃層と、この難燃層に積層して設けられ補強繊維に非難燃性樹脂を含浸させた非難燃層とが一体化されて構成されていることを特徴とするエレベータ用かご。
  2. 前記スキン材の表面には不燃層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ用かご。
  3. 一対の前記スキン材間には、両面が前記非難燃層に接着されたコア材が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のエレベータ用かご。
  4. 前記補強繊維は、炭素繊維であることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載のエレベータ用かご。
  5. 隣接した前記パネル間には、断面Lの字形状のアングルが設けられ、このアングルは、前記スキン材と同じ材質のアングル用スキン材で構成されているとともに、前記コア材に接着して隣接した前記パネル間同士を連結していることを特徴とする請求項3に記載のエレベータ用かご。
  6. 隣接した前記パネル間には、断面Lの字形状のアングルが設けられ、このアングルは、金属で構成されているとともに、前記コア材に接着して隣接した前記パネル間同士を連結していることを特徴とする請求項3に記載のエレベータ用かご。
  7. 各辺部が連結して形成された立方体形状の金属枠は、各辺部が前記パネルに接着して、隣接した前記パネル同士が連結されていることを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載のエレベータ用かご。
  8. 前記かご室に取付けられかご室を開閉するドアは、前記スキン材と同じ材質のかご用スキン材で構成されていることを特徴とする請求項1ないし7の何れか1項に記載のエレベータ用かご。
  9. 上部及び下部にそれぞれ設けられ昇降時の空気抵抗を減ずる整風カバーは、前記スキン材と同じ材質のカバー用スキン材を有することを特徴とする請求項1ないし8の何れか1項に記載のエレベータ用かご。
  10. 請求項1ないし請求項9の何れか1項に記載のエレベータ用かごの製造方法であって、
    前記補強繊維で構成された補強繊維体上に、剥離用のピールプライ及び樹脂拡散用のフローメディアを順次載置する工程と、
    補強繊維体上をバギングフィルムで覆い、補強繊維体を外気と遮断する工程と、
    前記バギングフィルム内を真空吸引するとともに、非難燃性樹脂または難燃性樹脂の一方をフローメディアを通じて補強繊維体に含浸させる工程と、
    引き続き、前記バギングフィルム内を真空吸引するとともに、非難燃性樹脂または難燃性樹脂の他方をフローメディアを通じて前記補強繊維体に含浸させる工程と、
    この後、前記非難燃性樹脂及び前記難燃性樹脂を硬化させる工程と、
    前記ピールプライを剥離することでフローメディアを分離して前記非難燃層及び前記難燃層で構成された前記スキン材を形成する工程と
    を備えたことを特徴とするエレベータ用かごの製造方法。
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