JP5252670B2 - 溶融金属撹拌用インペラおよびそれを備える溶融金属撹拌装置 - Google Patents

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Description

本発明は、たとえば溶融金属より比重の小さい添加物と溶融金属との混合に用いられ、溶融金属に浸漬され回転して撹拌する溶融金属撹拌用インペラおよびそれを備える溶融金属撹拌装置に関する。
従来、溶融金属の不純物を低減する精錬は、溶融金属にフラックスを添加してもしくはフラックスを添加しながら気体吹込撹拌または機械撹拌している。精錬反応は、溶融金属とフラックスとの界面で進行するので、溶融金属を撹拌してフラックスを溶融金属中に巻込み、溶融金属とフラックスとの反応界面を広くすることが反応促進にとって好ましい。フラックスは、溶融金属に比べて比重が小さく、添加しただけでは溶融金属の表面に浮くので、溶融金属とフラックスとを混合して反応界面を広くするために気体吹込撹拌または機械撹拌が行なわれる。
気体吹込撹拌と機械撹拌とを比べると、機械撹拌の方が、溶融金属に巻込まれた後に浮上するフラックスを繰返し巻込みやすいので、より効果的に精錬反応を進行させることができる。このことから、たとえば溶鋼の脱硫では、取鍋内の溶鋼に脱硫フラックスを添加し、インペラと呼ばれる撹拌羽根を有する回転体が、溶鋼に浸漬され回転して撹拌する機械撹拌式脱硫法が行なわれている。
インペラを用いて機械撹拌する溶鋼の脱硫では、効率的な脱硫を実現するべく種々の提案がなされている。たとえば、インペラの回転数を増して脱硫率の温度依存性を小さくし、低温操業で脱硫速度を向上することが提案されている(非特許文献1参照)。しかし、インペラの回転数を増すと、インペラの寿命が短くなり、溶鋼の飛散が多くなり、回転による振動が大きくなるという問題がある。
また、溶鋼を入れる容器内にじゃま板を設けることによって、撹拌時の溶鋼に不規則な上下流を生成し、フラックスを効率的に巻込んで脱硫率を向上することが提案されている(非特許文献2参照)。しかし、溶鋼は温度が高いので、溶鋼中に設けられるじゃま板は、熱および溶鋼の流動によって損傷するおそれが高く、損傷によって溶鋼に混入したじゃま板の砕片が非金属介在物の生因になるという問題がある。
また溶鋼を入れる容器の中心線に対してインペラの軸線がずれるように偏心させて回転することにより、溶鋼の流れを不規則化し撹拌能力を向上することが提案されている(非特許文献3参照)。しかし、インペラを偏心配置して回転すると、振動を助長する。偏心量を少なくすれば振動を問題ない程度に低減し得るが、少ない偏心量では、偏心による撹拌能力向上効果を期待することができないという問題がある。
そこで、インペラの撹拌羽根の形状を工夫し、容器内の溶鋼に上下流を形成して撹拌能力を向上することが提案されている(たとえば、特許文献1および特許文献2参照)。特許文献1および2では、インペラの撹拌羽根の形状を工夫することで撹拌能力を高め、低速回転でも脱硫時間の短縮効果が得られるとする。
CAMP−ISIJ、社団法人日本鉄鋼協会、2002年、Vol.15、p.873 鉄と鋼、社団法人日本鉄鋼協会、2004年、Vol.90、No.6、p.329−333 鉄と鋼、社団法人日本鉄鋼協会、2002年、Vol.88、No.1、p.1−7 実開平05−27044号公報 実開平07−41400号公報
特許文献1および2では、普通炭素鋼の溶鋼を脱硫精錬の対象とする。しかし、溶融金属の精錬では、普通炭素鋼の脱硫に比べてより強い撹拌をしなければ効率よく精錬できない場合がある。たとえば、ステンレス溶鋼の脱硫である。ステンレス溶鋼は、耐食性をよくするためにCrを多く含有する。CrがSの活量を低下させる元素であるため、Crを含有するステンレス鋼では脱硫反応が進行しにくい。したがって、ステンレス溶鋼の脱硫では、普通炭素鋼の脱硫に比べてより強い撹拌が必要になる。特許文献1および2に開示される撹拌羽根形状を有するインペラによって普通炭素鋼で達成される程度の撹拌能力では、ステンレス溶鋼の脱硫にとって十分でない。
本発明の目的は、撹拌能力に優れる溶融金属撹拌用インペラおよびそれを備える溶融金属撹拌装置を提供することである。
本発明の溶融金属撹拌用インペラは、容器内の溶融金属に上方から浸漬され、かつ回転して回転軸の下端部付近から径方向に突出する複数の撹拌羽根で溶融金属を撹拌することに用いられる。撹拌羽根は、それぞれ大略的に、上面、下面、前面、後面および外側面を有する角柱状に形成され、前面が回転方向前方側であり、後面が回転方向後方側であり、外側面が径方向外側である。撹拌羽根は、さらに、上面から後面にかけて角部を切欠いた傾斜面となる後部上切欠面と、前面から外側面にかけて角部を切欠いた傾斜面となる前部外切欠面と、下面から前面にかけて角部を切欠いた傾斜面となる前部下切欠面とを有することを特徴とする。
また本発明で、前記前部外切欠面は、回転方向後方へ向うにつれて下方に傾斜するように形成されることを特徴とする。
また本発明で、前記撹拌羽根は、下面から後面にかけて角部を切欠いた傾斜面となる後部下切欠面を有することを特徴とする。
また本発明で、前記撹拌羽根は、下面に対して後面の成す角度が90度未満であることを特徴とする。
さらに本発明は、前記いずれかの溶融金属撹拌用インペラと溶融金属を入れる容器とを備え、容器の中心線に対して回転軸の軸線がずれて偏心するように溶融金属撹拌用インペラが配置されることを特徴とする溶融金属撹拌装置である。
本発明によれば、撹拌羽根の後部上切欠面が溶融金属を下方に引込む流れを作り、前部外切欠面が溶融金属を回転軸の径方向外方へ押出す流れおよび下方に押出す流れを作り、前部下切欠面が溶融金属を下方に押出す流れを作る。このように撹拌羽根に切欠面を形成することによって、容器内の溶融金属に外方向および上下方向に強い流れを作ることが可能になるので、撹拌能力に優れる溶融金属撹拌用インペラを提供することができる。
また溶融金属撹拌用インペラに後部下切欠面を形成することによって、インペラ側に向う上方向の流れを作る。インペラ後面側は流れの停滞する澱みが生じ易いが、後部下切欠面により、流れの停滞が緩和され、インペラ前面により多くの体積を供給することができるので、一層撹拌能力に優れる溶融金属撹拌用インペラを提供することができる。
また後部上切欠面に連なる後面が下面に対して成す角度を90度未満にすることによって、後部上切欠面で下方に引込まれる溶融金属を、後面に沿って円滑に下方へ向って流すことができるので、一層撹拌能力に優れる溶融金属撹拌用インペラを提供することができる。
さらに本発明の溶融金属撹拌装置によれば、撹拌能力に優れる溶融金属撹拌用インペラは、容器の中心線に対して回転軸の軸線がずれて偏心するように配置されて回転する。溶融金属撹拌用インペラが偏心配置されて回転することで溶融金属に不規則で複雑な流れを作ることができる。また撹拌能力に優れる溶融金属撹拌用インペラは、小さい偏心量で十分に強く撹拌することができるので、偏心に起因する装置の振動が抑制される。このようにして撹拌能力に優れる溶融金属撹拌装置を提供することができる。
図1は、本発明の一つの実施形態である溶融金属撹拌用インペラ1の構成を示す。溶融金属撹拌用インペラ1は、容器内の溶融金属に上方から浸漬され、かつ矢符10で示す時計まわりに回転して回転軸2の下端部4付近から径方向に突出する複数の撹拌羽根5で溶融金属を撹拌することに用いられる。本実施形態では、4つの撹拌羽根5を有する溶融金属撹拌用インペラ1について例示する。以後、溶融金属撹拌用インペラを単にインペラと略記する。
撹拌羽根5は、それぞれ大略的に、上面11、下面12、前面13、後面14および外側面15を有する角柱状に形成される。ここで、前面13は回転方向前方側であり、後面14は回転方向後方側であり、外側面15は径方向外側である。また下面12は、回転軸2の軸線3に対して垂直になるように形成される。
撹拌羽根5は、さらに、上面11から後面14にかけて角部を切欠いた傾斜面となる後部上切欠面16と、前面13から外側面15にかけて角部を切欠いた傾斜面となる前部外切欠面17と、下面11から前面13にかけて角部を切欠いた傾斜面となる前部下切欠面18と、下面12から後面14にかけて角部を切欠いた傾斜面となる後部下切欠面19とを有する。また前部外切欠面17は、回転方向後方へ向うにつれて下方に傾斜するように形成される。
撹拌羽根5は、下面12に対して後面14の成す角度θが90度未満になるように形成される。θの下限は特に限定しないが、好ましくは60度以上である。θを60度未満にすると、撹拌羽根5の回転方向の厚みが薄くなり、強度低下が懸念されるからである。
インペラ1の材料としては、たとえば耐火モルタルなどの不定形耐火物が好適に用いられる。不定形耐火物を所望の形状に成形し焼成してインペラ1を製造することができる。
図2は、撹拌羽根5で形成される溶融金属の流れの状態を示す。撹拌羽根5はそれぞれ同じ形状をしているので、図2では流れの状態を判りやすくするために1つの撹拌羽根5のみを示す。容器に入れた溶融金属に撹拌羽根5の全部または一部を上方から浸漬し、インペラ1を軸線3まわりに回転させるのに伴い、撹拌羽根5が軸線3を中心として周回運動する。撹拌羽根5の周回運動によって、撹拌羽根5に形成される各切欠面16,17,18,19は、溶融金属に次のような流れを作る。
後部上切欠面16は、溶融金属を下方に引込む流れ21を作る。前部外切欠面17は、溶融金属を回転軸2の径方向外方および周方向に押出す流れ22と、溶融金属を下方に押出す流れ23とを作る。前部下切欠面18は、溶融金属を下方に押出す流れ24を作る。
また後部下切欠面19は、インペラ側に向う上方向の流れ25を作る。インペラ後面側は、流れの停滞するよどみが生じ易く、インペラ前面により押出され得る溶融金属の体積を減少させる。流れ25によってインペラ後面側の澱みが解消され、より多量の溶融金属をインペラ前面から吐出させることができる。
撹拌羽根5の各切欠面16,17,18,19が、溶融金属を引込みかつ押出して容器内の溶融金属に外方向および上下方向の不規則で複雑な強い流れを作り、撹拌能力を向上する。このように切欠面を有する形状の撹拌羽根5とすることによって、溶融金属の撹拌能力に優れるインペラ1を提供することができる。
なお、インペラ1の撹拌能力向上は、主として、前部外切欠面17が溶融金属を回転軸2の径方向および周方向に押出し、前部下切欠面18が溶融金属を容器の底面に向けて下方に押出し、後部上切欠面16が溶融金属表層の流れを下方に引込むという循環する流れによって達成される。後部下切欠面19は、上記の循環する流れの中で形成されがちな澱みを解消することによって、撹拌能力のさらなる向上に寄与していると考えられる。
図3は、本発明の他の実施形態である溶融金属撹拌装置31の構成を簡略化して示す。溶融金属撹拌装置31は、インペラ1と溶融金属32を入れる容器33とを備え、容器33の中心を通り鉛直方向に延びる線34に対して、回転軸2の軸線3がずれて偏心するようにインペラ1と容器33とが相対配置される。ここで、容器33の中心を通り鉛直方向に延びる線34を中心線34と呼ぶ。なお、図3では図示を省略するが、溶融金属撹拌装置31は、容器33の周辺にインペラ1を回転させるモーターならびにモーターおよびインペラ1を取付ける枠体を含む。
容器33は、底付き円筒形状であり、鉄製の外殻35および外殻35に内張りされる耐火物36で構成される。このような容器33には、たとえば溶融金属32としてステンレス溶鋼を入れる取鍋などがある。
インペラ1は、溶融金属32に浸漬されて撹拌するとき、その特徴的な形状により、優れた撹拌能力を発揮する。溶融金属撹拌装置31は、インペラ1の軸線3を中心線34から偏心させることによって、一層優れた撹拌能力を発揮することができる。インペラ1の軸線3と容器中心34との偏心量をEcで表す。
図4は、溶融金属撹拌装置31における溶融金属32の流れの状態を簡略化して示す。図4(a)は横断面から見た状態を示し、図4(b)は平面から見た状態を示す。中心線34に対して偏心配置されるインペラ1の回転によって容器33内の溶融金属32に形成される流れを図4中に矢符で示す。
溶融金属32の流れについて以下に説明する。上下方向については、偏心により容器33の内壁までの距離が狭まっている側で、下方に押出された溶融金属が、容器33の底面に衝突し反射して上方に向きを変え、さらにインペラ1によって引込まれるという極めて不規則かつ複雑な流れを形成する。また周方向については、偏心により容器33の内壁までの距離が広まっている側で、前部外切欠面17によって径方向外方へ向って押出される溶融金属が、周方向の流れを霍乱して不規則な流れを形成する。
強い撹拌力を発揮するインペラ1を備え、インペラ1の軸線3と中心線34とをわずかに偏心させることで、装置の振動を助長することなく、インペラ1によって形成される溶融金属の流れの不規則さおよび複雑さを増幅することができる。このことによって、一層優れた撹拌能力を有する溶融金属撹拌装置を提供することが可能になる。
このように、溶融金属撹拌装置31は、極めて優れた撹拌能力を有するので、強い撹拌力を必要とするたとえばステンレス溶鋼の脱硫装置として好適である。ステンレス溶鋼にフラックスを添加し、溶融金属撹拌装置31で撹拌すると、その強い撹拌力によって、フラックスをステンレス溶鋼中へ強く巻込み、また巻込み後一旦浮上しても繰返し巻込むことができるので、ステンレス溶鋼とフラックスとの反応界面の面積を広くすることができる。
(実施例)
以下、本発明の実施例について説明する。
図5は、撹拌能力の試験に用いた試験装置41の構成を簡略化して示す。試験装置41は、インペラを備える溶融金属撹拌装置を模した水モデル機41である。インペラを備える溶融金属撹拌装置の実機としては、溶融金属にステンレス溶鋼、フラックスに脱硫フラックス、容器に取鍋を用いる機械撹拌式脱硫装置を想定した。水モデル機41では、ステンレス溶鋼の代わりに水42、脱硫フラックスの代わりにシリカ系中空球体、取鍋の代わりにアクリル樹脂製の容器43を用いた。以後、シリカ系中空球体をトレーサーと呼ぶ。
本実施例では、実機の約1/3サイズの水モデル機41により撹拌能力を試験した。水モデル機41は、容器43の直径dmを920mm、静止状態の水深さdwを660mm、インペラを浸漬したときのインペラ下端部の容器底面からの高さである浸漬深さdeを270mmに設定した。
試験に用いたインペラのサイズも、実機の約1/3の寸法に設定した。インペラには、実施例を1種類、比較例を3種類使用した。実施例には、図1に示す形状のインペラ1を使用した。3種類の比較例1〜3には、実施例に形状が類似し、実施例に比べていずれかの切欠面を有していないインペラ44a,44b,44cを使用した。比較例1〜3のインペラを総称するときは参照符号44で表記する。なお、水モデル機41に使用したインペラ1,44は鋼製である。
図6は、比較例1のインペラ44aの構成を簡略化して示す。比較例1のインペラ44aは、下面12aと後面14aとの成す角度θが85度に設定されているが、切欠面を有していない。
図7は、比較例2のインペラ44bの構成を簡略化して示す。比較例2のインペラ44bは、前部下切欠面18bおよび後部下切欠面19bを有し、下面12bと後面14bとの成す角度θが85度に設定されているが、前部外切欠面および後部上切欠面を有していない。
図8は、比較例3のインペラ44cの構成を簡略化して示す。比較例3のインペラ44cは、前部外切欠面17c、前部下切欠面18cおよび後部下切欠面19cを有し、下面12cと後面14cとの成す角度θが85度に設定されているが、後部上切欠面を有していない。
図9は、水モデル機41に使用したインペラ1,44の形状に関する各部の寸法測定位置を示す。寸法測定位置を以下に説明し、実測値を表1に示す。
A:撹拌羽根が突出する方向での撹拌羽根上端部のインペラの径
B:撹拌羽根が突出する方向での撹拌羽根下端部のインペラの径
C:撹拌羽根の回転方向の厚み
D:インペラ回転時の最大外周径
H:撹拌羽根の上下方向の長さである幅
θ:下面と後面との成す角度
Figure 0005252670
想定する実機との相似則を考慮し、フルード数および単位容量の撹拌動力を同一として、式(1)および式(2)により、水モデル機41のインペラ1,44の回転数ならびにトレーサーの大きさおよびかさ比重を定めた。
=N(D/D2/3 ・・・(1)
ここで、N:実機のインペラの回転数
:水モデル機のインペラの回転数
: 実機のインペラ回転時の最大外周径
:水モデル機のインペラ回転時の最大外周径
/r=(N/N
×√{(1−ρs1/ρl1)/(1−ρs2/ρl2)}・・・(2)
ここで、r:フラックスの径
:トレーサーの径
ρs1:フラックスのかさ比重
ρs2:トレーサーのかさ比重
ρl1:ステンレス溶鋼の比重
ρl2:水の比重
なお、トレーサーは、式(2)から平均粒径120μm、かさ比重0.29が得られたので、これに基づいて撹拌の予備試験をしたが、撹拌によりトレーサーが水中に分散する時間が極めて短く、挙動を十分に観察することができなかった。そこで、観察に適する平均粒径が10mm、かさ比重が約0.8のトレーサーに変更して試験した。
インペラ1,44の回転については、容器33の中心線34とインペラ1,44の軸線3とを一致させた偏心なしの場合と、ずらして偏心させた場合とについて試験した。偏心量Ecは、25mm、50mmおよび75mmの3段階に変化させた。
図5に戻って撹拌能力の評価方法について説明する。インペラ1,44が回転し撹拌している状態での評価要素には、水面盛上り高さhi、渦中心位置深さhwおよびトレーサー侵入深さheの3つがある。水面盛上り高さhiとは、インペラ1,44が回転して容器43内の水面が静止水面よりも高くなったとき、その水面が最も高くなった位置の容器底面からの高さをいう。渦中心位置深さhwとは、インペラ1,44が回転して渦が形成され、渦の中心で静止水面よりも水面が低くなったとき、その水面が最も低くなった位置の容器底面からの高さをいう。トレーサー侵入深さheとは、水に巻込まれたトレーサーが容器43の中で達することができた最も深い位置の容器底面からの高さをいう。
水面盛上り高さhiおよび渦中心位置深さhwは、ともに流れの強さの指標になるが、必ずしも水とトレーサーとが撹拌され混合されている状態を表すものではない。トレーサー侵入深さheは、トレーサーが侵入した深さが深いほど浮上するまでに時間を要するので、トレーサーが水中に滞在している時間を表していると言える。トレーサーが水中に滞在している時間が長いと、同じ機会に水中に存在し得るトレーサーの量が多くなるので、水とトレーサーとの接触界面すなわち反応界面の面積が広いと解することができる。そこで、トレーサー侵入深さheで撹拌能力を評価した。トレーサー侵入深さheが小さいほど、すなわちトレーサーがより深い位置まで侵入するほど撹拌能力が優れると判定した。
以下、試験結果について説明する。
図10は、偏心なしの場合における比較例1および比較例2について回転数とトレーサー侵入深さとの関係を示す。図11は、偏心なしの場合における比較例3および実施例について回転数とトレーサー侵入深さとの関係を示す。
実施例および比較例1〜3のいずれにおいても、回転数の増加に伴いトレーサー侵入深さheが減少した。回転数100rpmの場合、実施例、比較例2および比較例3では、トレーサー侵入深さheが50mm未満まで達したのに対して、比較例1では、トレーサー侵入深さheが450mmまでしか達することができなかった。
回転数が150rpm以上の場合、実施例、比較例2および比較例3ではトレーサー侵入深さheが0mm、すなわちトレーサーが容器底面まで達したのに対して、比較例1ではトレーサー侵入深さheが約180mmまでしか達することができなかった。このことから、切欠面を有する実施例および比較例2,3は、切欠面を有していない比較例1よりも撹拌能力が優れていることが判る。
さらに、回転数が50rpmの低速回転の場合、実施例のみトレーサー侵入深さheが600mm未満に達したが、比較例1〜3では、トレーサー侵入深さheが600mm超えであった。このように、前部外切欠面、前部下切欠面、後部上切欠面および後部下切欠面を有する実施例は、前部外切欠面および後部上切欠面を有していない比較例2および後部上切欠面を有していない比較例3に比べて撹拌能力の高いことが判る。
次に、インペラ1,44の軸線3と中心線34とが偏心量Ecを有する場合の試験結果を説明する。偏心ありの試験は、偏心なしの場合に切欠面の効果が認められた実施例および比較例2,3のインペラについて行なった。図12は、偏心量Ecが25mmの場合における比較例2、比較例3および実施例について回転数とトレーサー侵入深さとの関係を示す。図13は、偏心量Ecが50mmの場合における比較例2、比較例3および実施例について回転数とトレーサー侵入深さとの関係を示す。図14は、偏心量Ecが75mmの場合における比較例2、比較例3および実施例について回転数とトレーサー侵入深さとの関係を示す。
偏心量Ecが75mmと大きい場合、回転数が100rpm以上では、実施例、比較例2および比較例3のいずれもトレーサーが容器底面まで達して差が生じなかった。回転数が50rpmの低速回転でも、実施例および比較例2のトレーサー侵入深さheが100mm、比較例3のトレーサー侵入深さheが150mmであり、3者の間に大きな差が生じなかった。
しかし、偏心量Ecを75mmよりも小さくすると、実施例と比較例2および比較例3とでトレーサー侵入深さheに差が生じた。特に偏心量Ecが小さい25mmの場合、回転数50rpmの低速回転では、実施例のトレーサー侵入深さheが150mmまで達することができたのに対して、比較例2では300mm、比較例3では350mmにしか達しなかった。
偏心量Ecを大きくすると、比較例2および比較例3でもトレーサー侵入深さheは小さくなり撹拌能力が向上するが、装置の振動が懸念される。しかし、切欠面を有して高い撹拌能力を発揮し得る実施例のインペラを使用し、小さな偏心量に設定することにより、振動の問題がなく、かつ優れた撹拌能力を有する溶融金属撹拌装置を実現することができる。
本発明の一つの実施形態である溶融金属撹拌用インペラ1の構成を示す図である。 撹拌羽根5で形成される溶融金属の流れの状態を示す図である。 本発明の他の実施形態である溶融金属撹拌装置31の構成を簡略化して示す断面図である。 溶融金属撹拌装置31における溶融金属32の流れの状態を簡略化して示す図である。 撹拌能力の試験に用いた試験装置41の構成を簡略化して示す断面図である。 比較例1のインペラ44aの構成を簡略化して示す図である。 比較例2のインペラ44bの構成を簡略化して示す図である。 比較例3のインペラ44cの構成を簡略化して示す図である。 水モデル機41に使用したインペラ1,44の形状に関する各部の寸法測定位置を示す図である。 偏心なしの場合における比較例1および比較例2について回転数とトレーサー侵入深さとの関係を示すグラフである。 偏心なしの場合における比較例3および実施例について回転数とトレーサー侵入深さとの関係を示すグラフである。 偏心量Ecが25mmの場合における比較例2、比較例3および実施例について回転数とトレーサー侵入深さとの関係を示すグラフである。 偏心量Ecが50mmの場合における比較例2、比較例3および実施例について回転数とトレーサー侵入深さとの関係を示すグラフである。 偏心量Ecが75mmの場合における比較例2、比較例3および実施例について回転数とトレーサー侵入深さとの関係を示すグラフである。
符号の説明
1,44 インペラ
2 回転軸
3 軸線
5 撹拌羽根
11 上面
12 下面
13 前面
14 後面
15 外側面
16 後部上切欠面
17 前部外切欠面
18 前部下切欠面
19 後部下切欠面
31 溶融金属撹拌装置
32 溶融金属
33 容器
34 中心線
41 水モデル機

Claims (5)

  1. 容器内の溶融金属に上方から浸漬され、かつ回転して回転軸の下端部付近から径方向に突出する複数の撹拌羽根で溶融金属を撹拌する溶融金属撹拌用インペラにおいて、
    撹拌羽根は、
    それぞれ大略的に、上面、下面、前面、後面および外側面を有する角柱状に形成され、前面が回転方向前方側であり、後面が回転方向後方側であり、外側面が径方向外側であり、
    さらに、上面から後面にかけて角部を切欠いた傾斜面となる後部上切欠面と、
    前面から外側面にかけて角部を切欠いた傾斜面となる前部外切欠面と、
    下面から前面にかけて角部を切欠いた傾斜面となる前部下切欠面と、
    を有することを特徴とする溶融金属撹拌用インペラ。
  2. 前記前部外切欠面は、
    回転方向後方へ向かうにつれて下方に傾斜するように形成されることを特徴とする請求項1記載の溶融金属撹拌用インペラ。
  3. 前記撹拌羽根は、
    下面から後面にかけて角部を切欠いた傾斜面となる後部下切欠面を有することを特徴とする請求項1または2記載の溶融金属撹拌用インペラ。
  4. 前記撹拌羽根は、
    下面に対して後面の成す角度が90度未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の溶融金属撹拌用インペラ。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1つの溶融金属撹拌用インペラと、
    溶融金属を入れる容器と、を備え、
    容器の中心線に対して回転軸の軸線がずれて偏心するように溶融金属撹拌用インペラが配置されることを特徴とする溶融金属撹拌装置。
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