JP5252199B2 - 浮体ビオトープ - Google Patents

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本発明は浮体ビオトープに係り、限られたスペースや自然環境が実現しにくい場所において、簡易な構造体の組み合わせにより、ビオトープの形成・維持が容易に行えるようにした浮体ビオトープに関する。
近年、都市部において深刻化しているヒートアイランド現象や、異常気象の発生等により、都市環境を改善するための種々の対策が実施されている。その対策の一つとして、生態関連を持った生物(動植物)群集を生息させるビオトープ(訳語の一例として「生物群集の生息空間」と呼ばれる。)を整備して、身近な生活空間の中に豊かな自然の営みを創出するという取り組みが行なわれている。
ビオトープの一つとして、水辺環境を整備し、そこに動植物の生息空間を形成する湿地ビオトープがある。都市部においても、池などの水を利用して湿地ビオトープを形成する取り組みがなされている。また、特許文献1には、植栽を有する浮島に関する技術が開示されており、この浮島を水面に浮かばせることにより、湿地ビオトープを実現できると考えられる。
特開2007−20513号公報
しかしながら、都市部において湿地ビオトープを形成する場合には、スペースが限られていたり、自然に近い環境の実現が難しい上、その後の湿地環境の維持において、給排水装置などに多大な費用がかかるとなるという問題があった。また、特許文献1に開示された浮島を人工池などに浮かべてビオトープを形成した場合、湿地環境の形成に大量の水が必要となり、また蚊等の不快生物が発生するという問題がある。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、安価で、容易に湿地環境を維持管理できる浮体ビオトープを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、 植生基盤を浮体上面から充填可能な凹部と、該凹部の底部と浮体底面とを貫通する複数個の通水孔が形成され、水面に浮いた状態で前記通水孔を介して前記凹部に浸水した水の水面が前記植生基盤の下部に達する喫水を有する浮体ユニットと、前記浮体ユニットの喫水が確保される以上の深さと、前記浮体ユニットを複数個配列可能な平面積とを有する水槽と、該水槽に浮かべられた隣接する前記浮体ユニットの水面上での揺動に追従可能なジョイント部を有する連結板と、を備え、前記水槽内に給水し、複数個配列した前記浮体ユニットを浮かせて前記植生基盤の下部を浸漬させ、前記浮体ユニット間の隙間を、前記ジョイント部を介して前記連結板により連結し、前記植生基盤表面に植物を植栽してなることを特徴とする。
さらに、前記連結板のジョイント部を介して、前記浮体ユニットと前記水槽の内周縁部との隙間を連結することが好ましい。
また、前記植物として湿生植物を植栽し、生育させることが好ましい。
以上のように本発明によれば、狭い場所や、自然環境の実現しにくい場所において、安価で、容易に湿地環境を維持管理ができる浮体ビオトープを提供することができる。
以下、本発明の浮体ビオトープを、図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る浮体ビオトープの斜視図、図2は、図1中の矢視II−IIで示した断面図を示している。
図1に示すビオトープ1は、内部に水が溜められた水槽10と、互いに連結され水槽10内の水に浮かべられた複数の浮体ユニット20と、隣接する浮体ユニット20間、及び水槽10と浮体ユニット20とを連結する連結板30とを備えている。図に示すように、水槽10の内部には後述するように所定の高さ位置まで水が溜められ、連結板30により連結された9つの浮体ユニット20は水槽10内の水に浮かべられている。また、連結された9つの浮体ユニット20の外周は、連結板30を介して水槽10の内周縁部と連結されている。なお浮体ユニット20には植生基盤22が充填、収容されており、植栽された湿生植物からなる植栽40が生長した状態が示されている。連結板30で連結された各浮体ユニット20は、水面の揺動により隣接した浮体ユニット20間に高さの差(位相差)が生じる。このとき、連結板30と浮体ユニット20との間にはヒンジ状のジョイント部31が設けられており、このジョイント部31で各浮体ユニット20間の位相差に追従することができ、連結板30や浮体ユニット20の連結箇所に位相差による想定外の外力が生じないようになっている。
水槽10は、例えば鉄筋コンクリート製で、内部に溜められた水が漏れ出さないように内表面に防水処理が施されている。また、水槽10には、図2に示すように、水槽10内に水を給水するための給水管11と、水位が所定の高さ以上となると外部に水を排出するオーバーフロー吐水口12と、水替えや清掃のために水槽10内の水を排出する排水管13が設けられている。給水管11には図示しない給水装置が取り付けられており、給水装置は常時、あるいは必要に応じて水槽10内に給水するように設定されている。この給水管11にフロート弁(図示せず)を取り付けることで、簡易に水槽10内の水位を所定水位以下にならないようにすることができる。また、排水管13は水槽10の下方に取り付けられており、バルブ13aが開放されることで内部の水が自然に排水される。なお、オーバーフロー吐水口12と排水管13は、近傍に設置された排水設備(不図示)に接続されている。なお、本実施例ではオーバーフロー吐水口12は、浮体ユニット20が設置された際の喫水面より上部の水槽内側面10aに貫通孔を設けているが、側壁天端面から所定の切欠部を設けて吐水口としてもよい。排水管13は水槽内側面10aの底部近くに設けることが好ましい。
次に、浮体ユニット20の詳細を図3を参照して説明する。図3は、浮体ユニットの詳細図で、(a)は浮体ユニットの断面図、(b)は図3(a)中の矢視b−bで示した断面図を示している。浮体ユニット20の一部を構成するボックス状の浮体本体21は、例えば発泡合成樹脂の一体成形体からなり、素材としてはたとえば発泡ポリスチレンが使用されている。浮体本体21は、全体形状が発泡成形される際に、使用金型の形状により、植生基盤22が充填される凹部21aと、浮体底面と凹部21aの底部とを貫通する通水孔21bとが同時成形される。通水孔21bは、図3(b)に示すように、凹部21aの底面に、縦横に所定間隔をあけて形成されている。なお、凹部21a底部には透水シート23が敷設されている。これにより、植生基盤22が通水孔21bから流出するのを防止できる。本実施例ではこの透水シート23には不織布が用いられているが、ヤシ繊維シート等を用いることも好ましい。また、この透水シート23は凹部21aの底面に敷き詰めるのでなく、各通水孔21bを塞ぐ通水孔の直径より大きな円形シート状にして各孔に貼り付けて孔をそれぞれ塞ぐようにしても良い。なお、本実施例では、浮体ユニット20の底面は平面をなしているが、底面側に凹状部(図示せず)を設けることもできる。また、凹状部は底面の複数箇所に形成されていても良い。
植生基盤22は、例えば、人工軽量土壌、固化培土、ミズゴケ等が使用され、各種湿生植物からなる植栽40が生育するための基盤となる。なお植生基盤22は、植生基盤22が充填された浮体ユニット20の浮力を妨げない軽量材料を用いることが好ましい。なお、上述の固化培土を用いた場合、透水シート23を省略することができる。また、この場合、形状を合わせることで施工が容易になり、風によって土が周辺に飛散することを防止できる。また、固化培土に事前に植栽し、それを現場設置することもでき、その場合、現場での早期の緑化が実現できる。
ビオトープの植栽に適する湿生植物としては、コガマ(ガマ科)、ヨシ(イネ科)、カキツバタ(アヤメ科)、ミソハギ(ミソハギ科)、オカダモ(オカダモ科)等があり、ビオトープ製作時に、ビオトープの面積、周辺環境との調和を考慮して複数種の苗をバランスよく植栽することが好ましい。これらの湿生植物の生長は早く、樹脂材料からなる浮体本体21の表面を早期に覆い、その後の生長によりビオトープ全体に十分な緑化が果たされる。浮体ユニット20は、図3に示すように、水槽10内の水に浮かべた際の水位が凹部21aの底面より上方(植生基盤22の下部が浸水(浸漬)する程度)となるように、浮体ユニット20の各種材料が選定され、また各部材の寸法が決定されている。すなわち、浮体本体21及び植生基盤22等の浮力の合計と、浮体本体21、植生基盤22、及び植栽40等の重量の合計とのバランスにより浮体ユニット20における水位が求められ、植生基盤22の一部が常時水に浸かった状態となるように浮体ユニット20を構成する各部材が設計されている。このように浮体ユニット20を設計することで、植生基盤22の底部が常に一定の喫水に位置するため、植生基盤22の湿潤状態も一定に保持でき、浮体ユニット20を浮かせた状態では、水槽の水位変動に関係なく、植生基盤22の湿潤状態を維持することができ、植物にとって安定した生育環境を確保でき、天候等の環境条件に左右されない安定し、かつ容易な生育管理が可能となる。
連結板30は、前述したように、隣接する浮体ユニット20の間、及び浮体ユニット20と水槽10との間に設置されている。連結板30は、浮体ユニット20が水中を揺動した際の位相差に追従可能なジョイント部を有する構造とすることが好ましい。そのため、例えば図2(b)に示したように、浮体ユニット20間をつなぐ連結板30の中間位置に蝶番32を設け、連結板30を固定部31で浮体ユニット20に支持させることが好ましい。その他、図2(c)に示したように、浮体ユニット20の連結板30の支持部にそれぞれ蝶番32を設け、浮体ユニット20間の位相差に追従させることも好ましい。また、図2(d)に示したように、一方の浮体ユニット20のみに蝶番32を設け、他の浮体ユニット20はルーズな固定部31としておくことで同様の作用を果たすことができる。また、図1に示すように連結板30は、隣接する浮体ユニット20の隙間、及び浮体ユニット20と水槽10との隙間を完全に覆い、外部光が水槽内に入射しないようになっている。なお、図1に示した連結板30では、ビオトープ1の構造を説明するため、固定部31,蝶番32等の一部の構成の図示を省略している。
上述した浮体ビオトープを用いることで、次のような効果を奏する。
(1)浮体ユニット20における水位を、植生基盤22の下部が水に浸かる程度とすることで、水槽の水位に関係なく、植生基盤22を一定の湿潤状態に容易に保つことが可能となる。
(2)上記効果により、水分保持のために植生基盤22を厚く形成する必要がないため、浮体ユニットを軽量にすることができ、経済的なビオトープを実現することができる。
(3)水槽10内には浮体ユニット20を浮かせるだけの水があればよく、大量の水を必要とすることはない。そのため、給排水装置も小型の装置でよく経済的である。
(4)連結板30が浮体ユニット20間、及び浮体ユニット20と水槽10との隙間を覆うように設置することで次のような効果を奏する。
・水槽10内へ差し込む日光等の外部光が遮断されるため、アオコ、藻類の発生を抑制で きる。
・水槽10内の水の蒸発を抑制することができ、水の有効利用が図れる。
・蚊の幼虫であるボウフラ等の発生を抑制することができる。
・維持管理用の通路として利用できるため、ビオトープ1の維持管理が容易となる。
(5)給水管11に雨水を貯留することができるタンクを接続することにより、雨水の有効利用も図ることができる。
(6)植栽40の施肥も、液肥を水槽内の水に溶くだけでよいため、ビオトープ1の維持管理が容易となる。
本発明は上述した実施形態に限られず、様々な変形及び応用が可能である。上述の実施形態では、複数の浮体ユニット20が互いに連結されている場合について説明したが、浮体ユニット20の個数を限定するものでない。例えば、製造や施工に支障がない場合には、1つの浮体ユニット20からビオトープ1を構成してもよい。また、上述したように、平面形状が四角の浮体ユニット20について説明したが、浮体ユニット20の形状は自由に設定することができ、例えば三角形や多角形の形状であってもよい。また、水槽10は地上に施工されたものとして説明したが、掘り下げた地面に水を溜めて水槽として使用することができる。また、水槽10を複数並べることで、より大規模なビオトープを形成できる。
本発明に係る浮体ビオトープの斜視図。 図1中の矢視II−IIで示した断面図。 浮体ユニットの詳細図で、(a)は浮体ユニットの断面図、(b)は図3(a)中の矢視b−bで示した断面図。
符号の説明
1 ビオトープ
10 水槽
11 給水管
12 オーバーフロー吐水口
13 排水管
13a バルブ
20 浮体ユニット
21 浮体本体
21a 凹部
21b 通水孔
22 植生基盤
23 透水シート
30 連結板
31 固定部
32 蝶番
40 植栽

Claims (3)

  1. 植生基盤を浮体上面から充填可能な凹部と、該凹部の底部と浮体底面とを貫通する複数個の通水孔が形成され、水面に浮いた状態で前記通水孔を介して前記凹部に浸水した水の水面が前記植生基盤の下部に達する喫水を有する浮体ユニットと、
    前記浮体ユニットの喫水が確保される以上の深さと、前記浮体ユニットを複数個配列可能な平面積とを有する水槽と、
    該水槽に浮かべられた隣接する前記浮体ユニットの水面上での揺動に追従可能なジョイント部を有する連結板と
    を備え、
    前記水槽内に給水し、複数個配列した前記浮体ユニットを浮かせて前記植生基盤の下部を浸漬させ、前記浮体ユニット間の隙間を、前記ジョイント部を介して前記連結板により連結し、前記植生基盤表面に植物を植栽してなることを特徴とする浮体ビオトープ。
  2. さらに、前記連結板のジョイント部を介して、前記浮体ユニットと前記水槽の内周縁部との隙間を連結してなる請求項1に記載の浮体ビオトープ。
  3. 前記植物は、湿生植物である請求項1または2に記載の浮体ビオトープ。
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