R1およびR2が表す、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、または環状のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などが挙げられる。R1とR2が一緒になって表す、任意の位置に酸素原子、硫黄原子をふくんでいてもよい炭素数2〜9の直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基としては、例えば、1,2−エタンジイル基、1,3−プロパンジイル基、1,4−ブタンジイル基、1,5−ペンタンジイル基、1,6−ヘキサンジイル基、(シクロペンタン−1’,3’−ジイル)メチル基、(2’,2’,3’−トリメチルシクロペンタン−1’,3’−ジイル)メチル基、ビシクロ〔3.3.1〕ノナン−3,7−ジイル基、2−オキサブタン−1,4ジイル基、2−オキサペンタン−1,5−ジイル基、3−オキサペンタン−1,5−ジイル基などが挙げられる。R1とR2が一緒になってアルキレン基を表す場合、該アルキレン基はその結合している炭素原子と共に環構造を形成する。該環構造としては、例えば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、ノルボルナン環、カンファ環、アダマンタン環、テトラヒドロフラン環、およびテトラヒドロピラン環などが挙げられる。
R3およびR4が表すアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロプキシ基、イソプロポキシ基n−ブトキシ基、イソブトキシ基が挙げられる。R3、およびR4が表す炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、などが挙げられる。R3とR4が一緒になって表す、任意の位置に酸素原子、硫黄原子をふくんでいてもよい炭素数2〜9の直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基としては、例えば1,4−ブタンジイル基、シクロペンタン−1,3−ジイル基、テトラヒドロフラン−2,5−ジイル基などが挙げられる。R3とR4が一緒になってアルキレン基を表す場合、該アルキレンはその結合している炭素原子と共に環構造を形成する。該環構造としては、例えば、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、オキサノルボルナン環などが挙げられる。
Wが表す炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基としては、例えばメチレン基、エタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,1−ジイル基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基等が挙げられる。これらの内、メチレン基およびエタン−1,1−ジイル基が好ましい。
R1’がが表す、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、または環状のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などが挙げられる。
R2’が表す炭素数2〜10の直鎖状、分岐状、または環状のアルキル基をとしては、例えば、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、テトラヒドロピラン−4−イル基などが挙げられる。
R1’とR2’が一緒になって表す、任意の位置に酸素原子、硫黄原子をふくんでいてもよい炭素数2〜9の直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基としては、例えば、1,2−エタンジイル基、1,3−プロパンジイル基、1,4−ブタンジイル基、1,5−ペンタンジイル基、1,6−ヘキサンジイル基、(シクロペンタン−1’,3’−ジイル)メチル基、(2’,2’,3’−トリメチルシクロペンタン−1’,3’−ジイル)メチル基、ビシクロ〔3.3.1〕ノナン−3,7−ジイル基、2−オキサブタン−1,4ジイル基、2−オキサペンタン−1,5−ジイル基、3−オキサペンタン−1,5−ジイル基等が挙げられる。R1’とR2’が一緒になってアルキレン基を表す場合、該アルキレン基はその結合している炭素原子と共に環構造を形成する。該環構造としては、例えば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、ノルボルナン環、カンファ環、アダマンタン環、テトラヒドロフラン環、およびテトラヒドロピラン環などが挙げられる。
アクリル酸エステル誘導体(1)の具体例として、下記式(1−a)〜(1−aa)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
アクリル酸エステル誘導体(1)は例えば、第1工程)スルホラン誘導体(2)とケトン化合物(3)を反応して第3級アルコール(4)を製造し、第2工程)第3級アルコール(4)と重合性基導入剤と反応するか、または、第3級アルコール(4)と連結基導入剤を反応させた後に重合性基導入剤と反応することで製造することができるが、これに限定されるものではない。
(式中、R1、R2、R3、R4、およびR5は前記定義の通り。)
以下、各工程について説明する。
第1工程で使用するスルホラン誘導体(2)の製法に特に制限はなく、スルホラン誘導体(2)は、亜硫酸ガスとブタジエンを反応して得られるスルフォレンを誘導化することによって、製造可能である。また、酸無水物を還元した後、生成するアルコールを脱離基で保護し、硫化ナトリウムで処理することで、環状スルフィドを取得後、それを酸化することで製造することができる(非特許文献3)。市販品をそのまま使用することも可能である。
Tetrahedron Letters(テトラへドロン レターズ),Vol.23,3277−3280(1982)
第1工程の方法としては、塩基存在下、スルホランのエノラートを発生させ、ケトン化合物へ求核付加させることで、第3級アルコール(4)を合成することができる。
第1工程で使用する塩基としては、これに限定されるものではないが、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシドアルカリなどの金属アルコキシド類;水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物類;水素化カルシウムなどのアルカリ土類金属水素化物類;メチルリチウム、エチルリチウム、ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムなどの有機アルカリ金属化合物類;有機アルカリ土類金属化合物類;メチルマグネシウムブロマイド、エチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムマグネシウムなどの有機グリニャール試薬類;1価の銅塩とアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の有機金属化合物類;リチウムジイソプロピルアミドなどのアルカリ金属アミド、アルカリ土類金属アミド類;又は、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデク−7−エンなどの有機アミン類;を挙げることができ、これらの塩基1種を単独で、あるいは、2種以上の塩基を混合して使用することができる。塩基の使用量は、スルホラン誘導体(2)に対して、0.5モル〜10モルの範囲が好ましいが、副生成物の観点から、0.7〜1.5モルの範囲がより好ましい。
第1工程の反応は、通常溶媒中で行われ、用いられる溶媒としては、反応に悪影響を与えない限りどのような溶媒でも構わないが、トルエン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、などのハロゲン化炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコールなどのアルコール;N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒;若しくは、これらの混合溶媒中で行われる。
第1工程の反応温度は使用する溶媒、塩基、スルホラン誘導体(2)、ケトン化合物(3)によっても異なるが、通常−20℃から用いる溶媒の還流温度の範囲内である。
第1工程の反応時間は使用する溶媒、塩基、スルホラン誘導体(2)、ケトン化合物(3)によっても異なるが、通常は0.5時間〜48時間の範囲が好ましく、1時間〜24時間の範囲がより好ましい。
第1工程の反応は、通常、中和処理をすることで第3級アルコール(4)を取得することができる。必要があれば、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、再結晶などの有機化合物を単離する際に用いられる操作により単離可能である。
このようにして得られる第3級アルコール(4)のうち、R2が炭素数2〜10の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基である第3級アルコール(4)は第3級アルコール(6)に等しい。第3級アルコール(6)は、新規化合物である。
次に第2工程について説明する。
アクリル酸エステル誘導体(1)のnが0の場合は、第1工程で得た第3級アルコール(3)と式CH2=CHR5COX(式中R5は前記のとおりである。)、式(CH2=CHR5CO)2O(式中R5は前記のとおりである。)、式CH2=CHR5COOC(=O)R6(式中R5は前記の通りであり、R6は、t−ブチル基または2,4,6−トリクロロフェニル基を表す。)、または式CH2=CHR5COOSO2R7(式中R5は前記の通りであり、R7はメチル基またはp−トリル基を表す。)で示される化合物(以下これらの化合物を重合性基導入剤Aと称する)を塩基性物質の存在下反応させること(以下、第2工程−Aと称する)により行う。アクリル酸エステル誘導体(1)のnが1の場合は、第1工程で得た第3級アルコール(3)と式X−W−COX(式中Wは前記の通りであり、Xは塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を表す。)、式(X−W−CO)2O(式中、X、Wは前記定義の通りである。)、式X−W−COOC(=O)R7(式中、X、Wは前記定義の通りであり、R8は、t−ブチル基または2,4,6−トリクロロフェニル基を表す。)、または式X−W−COOSO2R9(式中、X、Wは前記定義の通りであり、R9は、メチル基またはp−トリル基を表す。)で示される化合物(以下、これらの化合物を連結基導入剤B1と称する)を塩基性物質の存在下反応させ(以下、第2工程−B−1と称する)、次いで式CH2=CHR5COOM(式中、R5は前記定義の通りであり、Mはナトリウム原子またはカリウム原子を表す。)で示される化合物(以下、これらの化合物を重合性基導入剤B2と称する)と反応させること(以下、第2工程−B−2と称する)により行う。以下、順に第2工程−A〜第2工程−Bを説明する。
第2工程−Aにより製造するn=0のアクリル酸エステル誘導体(1)の具体例としては、例えば(1−a)〜(1−u)が挙げられる。
第2工程−Aで使用する重合性基導入剤Aの内、式CH2=CHR5COXで示される化合物としては、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、2−トリフルオロメチルアクリル酸クロリドなどが挙げられ、式(CH2=CHR5CO)2Oで示される化合物としては、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水2−トリフルオロメチルアクリル酸などが挙げられ、式CH2=CHR5COOC(=O)R6で示される化合物としては、アクリル酸ピバリン酸無水物、アクリル酸2,4,6−トリクロロ安息香酸無水物、メタクリル酸ピバリン酸無水物、メタクリル酸2,4,6−トリクロロ安息香酸無水物、2−トリフルオロメチルアクリル酸ピバリン酸無水物、2−トリフルオロメチルアクリル酸2,4,6−トリクロロ安息香酸無水物などが挙げられ、式CH2=CHR5COOSO2R7で示される化合物としては、アクリル酸メタンスルホン酸無水物、アクリル酸p−トルエンスルホン酸無水物、メタクリル酸メタンスルホン酸無水物、メタクリル酸p−トルエンスルホン酸無水物、2−トリフルオロメチルアクリル酸メタンスルホン酸無水物、2−トリフルオロメチルアクリル酸p−トルエンスルホン酸無水物などが挙げられる。重合性基導入剤Aの使用量は、経済性および後処理の容易さの観点から、第3級アルコール(4)に対して0.8倍モル〜7倍モルの範囲であることが好ましく、0.8倍モル〜5倍モルの範囲であることがより好ましい。
第2工程−Aで使用する塩基性物質としては、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどが挙げられる。塩基性物質の使用量は、経済性および後処理の容易さの観点から、第3級アルコール(3)に対して0.8倍モル〜20倍モルの範囲であることが好ましく、0.8倍モル〜10倍モルの範囲であることがさらに好ましい。
第2工程−Aは、溶媒の存在下または非存在下に実施できる。使用する溶媒としては、反応を阻害しなければ特に制限はなく、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン、シメンなどの芳香族炭化水素;塩化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル;アセトニトリル、ベンズニトリルなどのニトリルが好適である。これらの溶媒は、単独で用いても、2種以上を混合して用いても良い。溶媒を使用する場合の使用量は、経済性および後処理の容易さの観点から、第3級アルコール(4)に対して0.1質量倍〜10質量倍の範囲であることが好ましく、0.1質量倍〜5質量倍の範囲であることがより好ましい。
第2工程−Aの反応温度は、使用する重合性基導入剤A、第3級アルコール(4)、塩基性物質の種類により異なるが、概ね、−50℃〜80℃の範囲であることが好ましい。
第2工程−Aの反応は、水またはアルコールの添加により、停止することができる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、およびi−プロパノールなどが挙げられる。なお、水およびアルコールの混合物を使用することも可能である。水またはアルコールの使用量は、過剰の重合性基導入剤Aに対して1倍モル以上の量を用いれば良い。使用量が少ないと過剰の重合性基導入剤Aを完全に分解できず、副生成物を生じる場合がある。
次に第2工程−Bについて説明する。第2工程−Bにより製造するn=1のアクリル酸エステル誘導体(1)の具体例としては、例えば、(1‐v)から(1−aa)が挙げられる。
第2工程−B−1で使用する連結基導入剤B1のうち、式X−W−COXで示される化合物としては、クロロ酢酸クロリド、2−クロロプロピオン酸クロリド、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸ブロミドなどが挙げられ、式X−W−COOC(=O)R8で示される化合物としては、クロロ酢酸ピバリン酸無水物、クロロ酢酸2,4,6−トリクロロ安息香酸無水物、2−クロロプロピオン酸ピバリン酸無水物、2−クロロプロピオン酸2,4,6−トリクロロ安息香酸無水物などが挙げられ、式X−W−COOSO2R9で示される化合物としては、クロロ酢酸メタンスルホン酸無水物、クロロ酢酸p−トルエンスルホン酸無水物、2−クロロプロピオン酸メタンスルホン酸無水物、2−クロロプロピオン酸p−トルエンスルホン酸無水物などが挙げられ、式(X−W−CO)2Oで示される化合物としては、無水クロロ酢酸、無水2−クロロプロピオン酸などが挙げられる。連結基導入剤B1の使用量は、経済性および後処理の容易さの観点から、第3級アルコール(4)に対して0.8倍モル〜7倍モルの範囲であることが好ましく、0.8倍モル〜5倍モルの範囲であることがより好ましい。
第2工程−B−1で使用する塩基性物質としては、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどが挙げられる。塩基性物質の使用量は、経済性および後処理の容易さの観点から、第3級アルコール(3)に対して0.8倍モル〜20倍モルの範囲であることが好ましく、0.8倍モル〜10倍モルの範囲であることがより好ましい。
第2工程−B−1は、溶媒の存在下または非存在下で実施できる。使用する溶媒としては、反応を阻害しなければ特に制限はなく、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン、シメンなどの芳香族炭化水素;塩化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル;アセトニトリル、ベンズニトリルなどのニトリル等が好適である。これらの溶媒は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。溶媒を使用する場合、その使用量は、経済性および後処理の容易さの観点から、第3級アルコール(3)に対して0.1質量倍〜10質量倍の範囲であることが好ましく、0.1質量倍〜5質量倍の範囲であることがより好ましい。
第2工程−B−1の反応温度は、使用する連結基導入剤B1、第3級アルコール(3)、塩基性物質の種類により異なるが、概ね、−50℃〜80℃の範囲であることが好ましい。
第2工程−B−1の反応は、水またはアルコールの添加により、停止することができる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノールなどが挙げられる。なお、水およびアルコールの混合物を使用することも可能である。水またはアルコールの使用量は、過剰の連結基導入剤B1に対して1倍モル以上の量を用いれば良い。使用量が少ないと過剰の連結基導入剤B1を完全に分解できず、副生成物を生じる場合がある。
第2工程−B−2で使用する重合性基導入剤B2としては、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カリウム、2−トリフルオロメチルアクリル酸ナトリウム、2−トリフルオロメチルアクリル酸カリウムが挙げられる。重合性基導入剤B2の使用量は、経済性および後処理の容易さの観点から、第3工程−B−1の生成物に対して0.8倍モル〜5倍モルの範囲であることが好ましく、0.8倍モル〜3倍モルの範囲であることがより好ましい。
第2工程−B−2では、必要に応じてヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムブロミドなどを活性化剤として用いることが好ましい。活性化剤を用いる場合、その使用量は、第3工程−B−1の生成物に対して0.001モル倍〜0.5モル倍の範囲であることが好ましく、後処理の容易さおよび経済性の観点から0.005モル倍〜0.3モル倍の範囲であることがより好ましい。
第2工程−B−2は、溶媒の存在下、または非存在下に実施できる。使用する溶媒としては、反応を阻害しなければ特に制限はなく、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン、シメンなどの芳香族炭化水素;塩化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミドが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いても、2種以上を混合して用いても良い。溶媒を使用する場合、その使用量は、経済性および後処理の容易さの観点から、第3工程−B−1の生成物に対して0.1質量倍〜10質量倍の範囲であることが好ましく、0.1質量倍〜5質量倍の範囲であることがより好ましい。
第2工程−B−2の反応温度は、使用する重合性基導入剤B2、第2工程−B−1の生成物、塩基性物質の種類により異なるが、概ね、−50℃〜80℃の範囲であることが好ましい。
このように、第2工程−Aまたは第2工程B−1およびB−2を経て得られたアクリル酸エステル誘導体(1)は、必要に応じて常法により分離精製するのが好ましい。例えば、反応混合物を水洗した後、濃縮し、蒸留、カラムクロマトグラフィーまたは再結晶などの通常の有機化合物の分離精製に用いられる方法により精製することができる。また、必要に応じて、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤の添加後にろ過またはゼータプラス(商品名:キュノ株式会社製)やプロテゴ(製品名:日本マイクロリス株式会社製)などの金属除去フィルターで処理することにより、得られたアクリル酸エステル誘導体(1)中の金属含有量を低減することも可能である。
高分子化合物(7)は、アクリル酸エステル誘導体(1)を単独で重合してなるもの、またはアクリル酸エステル誘導体(1)と他の重合性化合物とを共重合してなるものであり、アクリル酸エステル誘導体(1)に基づく構成単位を0モル%を超え100モル%、好ましくは10〜80モル%、より好ましくは20〜70モル%含有する。アクリル酸エステル誘導体(1)に基づく構成単位の具体例として下記式(1’−a)から(1’−aa)で示されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
共重合させる他の重合性化合物(以下、共重合単量体と称す)として下記式(I)から(X)(式中R10、R11、R12、R14、R15、R16、R17、およびR18は、それぞれ独立してCH2=CHR19CO−(R19は、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を表す)で示される基を表し、R13は、HまたはCOOR20(R20は、メチル基、エチル基、およびn−プロピル基等のアルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、および2−アダマンチル基などのシクロアルキル基を表す)を表す。)で示される化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。共重合単量体は、1種類のみを使用することもでき、必要に応じて2種類以上を混合して使用することもできる。
高分子化合物(7)の具体例としては、以下の高分子化合物(A−1)〜(A−24)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。(R10、R11、R12、R14、R15、R16、R17、およびR18は、前期定義の通り。l、m、nは構成単位モル比を表す。)
高分子化合物(7)の重量平均分子量(Mw)に特に制限は無いが、以下の測定方法によるMwが500〜50000の範囲、好ましくは1000〜30000の重合体であると、フォトレジスト用重合体組成物の原料として有用である。かかるMwの測定は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)により、TSK−gel SUPER HZM−H(商品名、東ソー株式会社製、4.6mm×150mm)2本およびTSK−gel SUPER HZ2000(東ソー株式会社製、4.6mm×150mm)1本を直列につないだものを使用し、テトラヒドロフランを溶媒とし、カラム温度40℃、RI温度40℃、溶離液の流速0.35ml/分、の条件で行い、標準ポリスチレンで作成した検量線による換算値として求める。また、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除すことにより分散度(Mw/Mn)を求める。
高分子化合物(7)の分散度は、1.0〜2.5の範囲であることが好ましく、1.0〜2.0の範囲であることがより好ましい。
高分子化合物(7)は、アクリル酸エステル誘導体(1)、重合開始剤、必要に応じて1種類以上の共重合単量体、溶媒および連鎖移動剤を反応器に供給してラジカル重合反応させて得られる。以下、かかる重合反応について説明する。
高分子化合物(7)の製造では、単量体のアクリル酸エステル誘導体(1)および共重合単量体を、目的とする高分子化合物(7)中の対応する構成単位モル比に応じて重合させる。即ち、一般的なラジカル重合反応で行われているのと同様に、各単量体の重合速度比と所望とする高分子化合物(7)中の対応する構成単位のモル比を勘案して重合反応に供するアクリル酸エステル誘導体(1)と共重合単量体のモル比を適宜調節することにより、所望の構成単位のモル比を持つ高分子化合物(7)を得ることができる。
高分子化合物(7)の製造に使用する重合開始剤としては、t−ブチルヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド化合物;ジ−t−ブチルペルオキシドなどのジアルキルペルオキシド化合物;過酸化ベンゾイルなどのジアシルペルオキシド化合物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレートなどのアゾ化合物などが挙げられる。これらの中でも、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレートなどのアゾ化合物を用いることが好ましい。重合開始剤の使用量は、重合性化合物の合計モル数に対して、0.5モル%〜20モル%の範囲が好ましく、1〜15モル%の範囲がより好ましい。一般的なラジカル重合反応と同様に、重合開始剤の使用量により、高分子化合物(7)の分子量を調整できる。
高分子化合物(7)の製造に際し、必要に応じて連鎖移動剤を用いても良い。連鎖移動剤としては、ドデカンチオール、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプト酢酸、およびメルカプトプロピオン酸などのチオール化合物が挙げられる。これらは単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、重合性化合物の合計モル数に対して、0.5モル%〜20モル%の範囲が好ましく、1〜15モル%の範囲がより好ましい。
高分子化合物(7)の製造は、溶媒中で行うのが好ましい。使用する溶媒としては、重合反応を阻害しなければ特に制限はなく、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテル;乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルなどのエステル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテルが挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いても良い。溶媒の使用量は、経済性および後処理の容易さのの観点から、重合性化合物の合計質量に対して、通常、0.5質量倍〜20質量倍の範囲が好ましく、1質量倍〜10質量倍の範囲であることがより好ましい。
高分子化合物(7)の製造において、重合法に特に制限はなく、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法など、アクリル系ポリマーを製造する際に用いる公知の方法を使用でき、中でも、溶液重合法を用いることが好ましい。
高分子化合物(7)の製造に際しての重合温度は、アクリル酸エステル誘導体(1)および高分子化合物(7)の安定性の観点から、40℃〜150℃の範囲であり、60℃〜120℃の範囲であるのが好ましい。
このようにして得られる高分子化合物(7)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、再沈殿などの通常の操作により単離可能である。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、再沈殿などの通常の操作により、分子量や分散度の調整が可能である。更に、必要に応じて、キレート剤処理、金属除去フィルター処理などの操作により、金属含有量を低減することも可能である。
上記再沈澱用の溶媒として用いる溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ニトロメタンなどのニトロ化炭化水素;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン;酢酸などのカルボン酸;酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネートなどのカーボネート;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコールが挙げられる。これらの溶媒は、1つを単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
高分子化合物(7)は、高分子化合物(7)を含有するフォトレジスト組成物(以下、フォトレジスト化合物(8)と称する。)の成分として使用できる。フォトレジスト組成物(8)は高分子化合物(7)、後述の溶媒、光酸発生剤、並びに必要に応じて塩基性物質および添加物とからなる。
フォトレジスト組成物(8)に用いる溶媒としては、例えばプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル;乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルなどのエステル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテルなどが挙げられる。
溶媒は、単独で使用しても、2種類以上を混合して使用してもよい。溶媒の使用量は、高分子化合物(7)に対して、通常、1質量倍〜50質量倍の範囲であり、2質量倍〜25質量倍の範囲であることが好ましい。
フォトレジスト組成物(8)に用いる光酸発生剤としては、露光により効率よく酸を生成する慣用公知の化合物を用いることができる。使用される光酸発生剤としてはトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメチルメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネートなどのスルホニウム塩;ジフェニルヨードヘキサフルオロスルフェートなどのヨードニウム塩;ジフェニルジスルホン、ジトリルジスルホンなどのジスルホン;1−メチル−3,5−ビストリクロロメチルトリアジン、1,3,5−トリストリクロロメチルトリアジンなどのトリアジン;ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタンなどのジアゾメタン;(2’−ニトロフェニル)メチル−p−トルエンスルホネート、(2’,6’−ジニトロフェニル)メチル−p−トルエンスルホネート、1−フェニル−1−(4−メチルフェニル)スルホニルオキシ−1−ベンゾイルメタンなどのスルホン酸エステル;ジアゾナフトキノン;ベンゾイントシレートなどが挙げられる。これらの光酸発生剤は単独で使用することも2種以上を混合して使用することもできる。光酸発生剤の使用量は、放射線照射により生成する酸の強度や高分子化合物(7)におけるアクリル酸エステル誘導体(1)の量に応じて選択でき、高分子化合物(7)に対して、0.1質量%〜30質量%、好ましくは0.5質量%〜10質量%の範囲である。
フォトレジスト組成物(8)は、必要によって塩基性物質をさらに含有していても良い。塩基性物質としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−(1−アダマンチル)アセトアミド、ベンズアミド、N−アセチルエタノールアミン、1−アセチル−3−メチルピペリジン、ピロリドン、N−メチルピロリドン、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、2−ピロリジノン、アクリルアミド、メタクリルアミド、t−ブチルアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどのアミド;ピリジン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジン、ニコチン、キノリン、アクリジン、イミダゾール、4−メチルイミダゾール、ベンズイミダゾール、ピラジン、ピラゾール、ピロリジン、ピペリジン、テトラゾール、モルホリン、4−メチルモルホリン、ピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリエタノールアミンなどのアミンが挙げられる。これらの塩基性物質は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。塩基性物質を使用する場合、その使用量は塩基性物質の種類により異なるが、光酸発生剤に対して、概ね0.01モル倍〜10モル倍の範囲で使用され、0.05モル倍〜1モル倍の範囲で使用されることが好ましい。
フォトレジスト組成物(8)には、さらに、必要に応じて、界面活性剤、増感剤、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤等の各種添加剤を配合することもできる。
フォトレジスト組成物(8)は、基板に塗布してから70℃〜160℃程度の温度でプリベークし、放射線、特にArFエキシマレーザーを照射した後、70℃〜160℃の温度で30秒以上ポストベークし、次いで水又はアルカリ現像液で処理することにより、パターンを形成することができる。
フォトレジスト組成物(8)の露光には、種々の波長の放射線、例えば、紫外線、X線などが利用でき、半導体レジスト用では、通常g線、i線、XeCl、KrF,KrCl、ArF、ArCl、F2などのエキシマレーザーが使用される。露光エネルギーは、0.1〜1000mJ/cm2の範囲が好ましく、1〜500mJ/cm2の範囲がより好ましい。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はかかる実施例により何ら限定されない。
なお、重量平均分子量(Mw)および分散度(Mw/Mn)は、検出器として示差屈折率計を用い、溶離液としてテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により、標準ポリスチレンで作成した検量線による換算値として求めた。
GPC測定:カラムとして、TSK−gel SUPER HZM−H(商品名:東ソー株式会社製、4.6mm×150mm)2本およびTSK−gel SUPER HZ2000(商品名:東ソー株式会社製、4.6mm×150mm)1本を直列につないだものを使用し、カラム温度40℃、示差屈折率計温度40℃、溶離液の流速0.1mL/分の条件で測定した。
<実施例1>
2−(1‘−ヒドロキシシクロペンタン−1’−イル)−テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキサイドの合成
温度計、三方コック、滴下ろうとを付した内容量1Lの4つ口フラスコに窒素雰囲気下、エチルマグネシウムブロミドテトラヒドロフラン1mol/l溶液を235ml投入したのち、スルホラン24gとテトラヒトロフラン125gを混合したものを反応液の内温が35℃以下であるように滴下した。その後、反応液をオイルバスで加熱して、2時間還流、攪拌を行った。この反応液にシクロペンタノン16gを2時間かけて滴下し、その後、室温で2時間攪拌を行った。反応混合液に、25%塩化アンモニウム水溶液を500g滴下し、有機層と水層に分離した。この有機層を減圧下に濃縮し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/2)にて精製し、以下の物性を示す2−(1−ヒドロキシ−1−シクロペンチル)−テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキサイドを12g得た(純度99%、収率30%)。
1H−NMR(300MHz,CDCl3,TMS,ppm)δ:1.4−1.91(6H,m)、2.01−2.46(4H,m)、3.0(2H,m)、3.16(1H,m)
<実施例2>
2−(1‘−メタクリロイルオキシシクロヘキサン−1’−イル)−テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキサイドの合成
温度計、三方コック、滴下ろうとを付した内容量200mlの4つ口フラスコに窒素雰囲気下、実施例1の方法で得られた2−(1‘−ヒドロキシシクロペンタン−1’−イル)−テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキサイド11g、塩化メチレン33g、ジメチルアミノピリジン0.7g、およびトリエチルアミン40.5gを仕込んだ。次いで、塩化メタクリロイル23gを反応液の内温が35℃以下であるように滴下した。その後、室温で7時間攪拌した。反応混合液にエタノール5gを滴下し、次いで水50gを投入し、15分攪拌した。この有機層と水層を分離し、有機層を水50gで洗浄した後、減圧下に濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで、以下の物性を示す2−(1‘−メタクリロイルオキシシクロヘキサン−1’−イル)−テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキサイドを10g得た(純度99%、収率70%)。
1H−NMR(300MHz,CDCl3,TMS,ppm)δ:1.60−1.79(4H,m)、1.95(3H,s)、2.00−2.155(4H,m)、2.18−2.53(4H,m)、2.99(1H,m)、3.17(1H,m)、4.34(1H,t,J=7.4Hz)、5.56(1H,s)、6.11(1H,s)
<合成例1>
2−(2 ‘−ヒドロキシブタン−2’−イル)−テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキサイドの合成
温度計、三方コック、滴下ろうとを付した内容量1Lの4つ口フラスコに窒素雰囲気下、エチルマグネシウムブロミドテトラヒドロフラン1mol/l溶液を125ml投入したのち、スルホラン15gとテトラヒトロフラン75gを混合したものを反応液の内温が35℃以下であるように滴下した。その後、反応液をオイルバスで加熱して、2時間還流下、攪拌を行った。この反応液にアセトン7gを2時間かけて滴下し、その後、室温で2時間攪拌を行った。反応混合液に、25%塩化アンモニウム水溶液を500g滴下し、有機層と水層に分離した。この有機層を減圧下に濃縮し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/2)にて精製し、以下の物性を示す2−(2 ‘−ヒドロキシブタン−2’−イル)−テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキサイドを6g得た(純度99%、収率28%)。
1H−NMR(300MHz,CDCl3,TMS,ppm)δ:1.58(3H,s)、1.68−1.78(2H,m)、1.93(3H,s)、2.20(2H,d,J=9.6Hz)、3.61−3.78(4H,m)、5.54(1H,s)、6.07(1H,s)
<実施例3>
2−(2 ‘−メタクリロイルオキシブタン−2’−イル)−テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキサイドの合成
温度計、三方コック、滴下ろうとを付した内容量50mlの4つ口フラスコに窒素雰囲気下、合成例1の方法で得られた2−(2 ‘−ヒドロキシブタン−2’−イル)−チオフェン−1,1−ジオキサイド2gを仕込んだ。塩化メチレン6g、ジメチルアミノピリジン137g、およびトリエチルアミン3.3gを仕込んだ。次いで、塩化メタクリロイル2.3gを反応液の内温が35℃以下であるように滴下した。その後、室温で7時間攪拌した。反応混合液にエタノール350mgを滴下し、次いで水30gを投入し、15分攪拌した。この有機層と水層を分離し、有機層を水30gで洗浄した後、減圧下に濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで、以下の物性を示す2−(2 ‘−メタクリロイルオキシブタン−2’−イル)−テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキサイドを1.7g得た(純度99%、収率70%)。なお、オクタノール/水分配係数のlog値であるlogPと溶解度パラメーターであるSPは、計算ソフトCAChe(商品名;富士通株式会社)のハミルトニアンPM5を用いて計算した。
1H−NMR(300MHz,CDCl3,TMS,ppm)δ:1.74(3H,s)、1.77(3H,m)、1.92(3H,s)、1.99−2.34(4H,d,m)、2.98(1H,m)、3.19(1H,m)、3.64(1H,t,J=7.6Hz)、5.55(1H,s)、6.11(1H,s)
logP1.71
SP20.8(J/mol)
[高分子化合物の合成]
<実施例4> 高分子化合物aの合成
電磁攪拌装置、還流冷却器および温度計を備えた内容積200mlの丸底フラスコに、窒素雰囲気下、2−(1‘−メタクリロイルオキシシクロヘキサン−1’−イル)−テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキサイド10g(48.83mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン11.5g(48.83mmol)、プロピレングリコールモノメチルエーテル160gおよび2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.4g(8.5mmol)を仕込み、80〜85℃にて4時間重合反応を行なった。得られた反応混合液を、室温下、反応混合液に対して約20倍質量のメタノール中に撹拌しながら滴下し、生成した沈殿物をろ取した。該沈殿物を、減圧(26.7Pa)下、60℃で12時間乾燥して、以下の繰り返し単位からなる高分子化合物b7,5gを得た。得られた高分子化合物bのMwは15917、分散度は1.57であった。
<実施例5> 高分子化合物bの合成
電磁攪拌装置、還流冷却器および温度計を備えた内容積200mlの丸底フラスコに、窒素雰囲気下、2−(2 ‘−メタクリロイルオキシブタン−2’−イル)−テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキサイド12g(48.83mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン11.5g(48.83mmol)、プロピレングリコールモノメチルエーテル177.0gおよび2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.4g(8.5mmol)を仕込み、80〜85℃にて4時間重合反応を行なった。得られた反応混合液を、室温下、反応混合液に対して約20倍質量のメタノール中に撹拌しながら滴下し、生成した沈殿物をろ取した。該沈殿物を、減圧(26.7Pa)下、60℃で12時間乾燥して、以下の繰り返し単位からなる高分子化合物b8gを得た。得られた高分子化合物bのMwは13240、分散度は1.47であった。
<実施例6> 高分子化合物cの合成
電磁攪拌装置、還流冷却器および温度計を備えた内容積100mlの丸底フラスコに、2−(1‘−メタクリロイルオキシシクロヘキサン−1’−イル)−テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキサイド5.09g(18.7mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン2.96g(12.5mmol)、α―メタクリロイルオキシ−γ―ブチロラクトン3.18g(18.7mmol)、メチルエチルケトン60.0gを仕込み、窒素バブリングを10分間おこなった。窒素雰囲気下で2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.66g(4.0mmol)を仕込み、80℃にて4時間重合反応を行なった。得られた反応混合液を、室温下、約20倍質量のメタノール中に撹拌しながら滴下することにより、白色沈殿物を得た。該沈殿物をろ取し、減圧(26.7Pa)下、50℃で10時間乾燥して、以下の繰り返し単位からなる高分子化合物a6.63gを得た。得られた高分子化合物aのMwは8000、分散度は2.0であった。
<実施例7> 高分子化合物dの合成
電磁攪拌装置、還流冷却器および温度計を備えた内容積100mlの丸底フラスコに、2−(2 ‘−メタクリロイルオキシブタン−2’−イル)−テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキサイド4.60g(18.7mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン2.96g(12.5mmol)、α―メタクリロイルオキシ−γ―ブチロラクトン3.18g(18.7mmol)、メチルエチルケトン61.0gを仕込み、窒素バブリングを10分間おこなった。窒素雰囲気下、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.66g(4.0mmol)を仕込み、80℃にて4時間重合反応を行なった。得られた反応混合液を、室温下、約20倍質量のメタノール中に撹拌しながら滴下することにより、白色沈殿物を得た。該沈殿物をろ取し、減圧(26.7Pa)下、50℃で10時間乾燥して、以下の繰り返し単位からなる高分子化合物b6.45gを得た。得られた高分子化合物bのMwは8300、分散度は1.90であった。
<合成例2> 高分子化合物eの合成
電磁攪拌装置、還流冷却器および温度計を備えた内容積200mlの丸底フラスコに、窒素雰囲気下、2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン10.0g(42.3mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン10.0g(42.7mmol)、プロピレングリコールモノメチルエーテル80.0gおよび2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.40g(8.53mmol)を仕込み、81〜87℃にて2時間重合反応を行なった。得られた反応混合液を、室温下、反応混合液に対して約20倍質量のメタノール中に撹拌しながら滴下し、生成した沈殿物をろ取した。該沈殿物をTHF100.0gに溶解した液を上記と同質量のメタノール中に攪拌しながら滴下し、生成した沈殿物をろ取後、上記と同質量のメタノールで洗浄することにより白色沈殿物を得た。該沈殿物を、減圧(26.7Pa)下、50℃で10時間乾燥して、以下の繰り返し単位からなる高分子化合物h13.2gを得た。得られた高分子化合物hのMwは16100、分散度は1.68であった。
<合成例3> 高分子化合物fの合成
合成例2において、2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン10.0g(42.3mmol)の代わりに2−メタクリロイルオキシテトラヒドロピラン7.39g(42.7mmol)を用いた以外は実施例10と同様の仕込み量および条件で重合反応を行った。得られた反応混合液を、室温下、反応混合液に対して約20倍質量のメタノール中に撹拌しながら滴下し、生成した沈殿物をろ取した。該沈殿物をTHF100.0gに溶解した液を上記と同質量のメタノール中に攪拌しながら滴下し、生成した沈殿物をろ取後、上記と同質量のメタノールで洗浄することにより白色沈殿物を得た。該沈殿物を、減圧(26.7Pa)下、50℃で10時間乾燥して、以下の繰り返し単位からなる高分子化合物i9.96gを得た。得られた高分子化合物iのMwは13200、分散度は1.71であった。
<合成例4> 高分子化合物gの合成
電磁攪拌装置、還流冷却器および温度計を備えた内容積200mlの丸底フラスコに、窒素雰囲気下、1−メタクリロイルオキシ−1−メチルシクロヘキサン9.14g(50.2mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン11.82g(50.0mmol)、1,4−ジオキサン101.4gおよび2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.24g(7.55mmol)を仕込み、80〜82℃にて5時間重合反応を行なった。得られた反応混合液を、室温下、反応混合液に対して約20倍質量の水―メタノール混合溶液(重量比 水:メタノール=1:3)中に撹拌しながら滴下し、生成した沈殿物をろ取した。該沈殿物をTHF140.0gに溶解した液を上記と同質量の水―メタノール混合溶液(重量比 水:メタノール=1:3)中に攪拌しながら滴下し、生成した沈殿物をろ取後、上記と同質量の水―メタノール混合溶液(重量比 水:メタノール=1:3)で洗浄することにより白色沈殿物を得た。該沈殿物を、減圧(26.7Pa)下、50℃で10時間乾燥して、以下の繰り返し単位からなる高分子化合物j11.8gを得た。得られた高分子化合物jのMwは12600、分散度は1.83であった。
<合成例5> 高分子化合物hの合成
電磁攪拌装置、還流冷却器および温度計を備えた内容積100mlの丸底フラスコに、2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン4.39g(18.7mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン2.96g(12.5mmol)、α―メタクリロイルオキシ−γ―ブチロラクトン3.18g(18.7mmol)、メチルエチルケトン60.5gを仕込み、窒素バブリングを10分間おこなった。窒素雰囲気下、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.66g(4.0mmol)を仕込み、80℃にて4時間重合反応を行なった。得られた反応混合液を、室温下、約20倍質量のメタノール中に撹拌しながら滴下することにより、白色沈殿物を得た。該沈殿物をろ取し、減圧(26.7Pa)下、50℃で10時間乾燥して、以下の繰り返し単位からなる高分子化合物c6.06gを得た。得られた高分子化合物cのMwは9800、分散度は1.53であった。
<QCM法による現像液中の溶解特性評価>
実施例4〜7および合成例2〜5で得られた高分子化合物a〜hを100質量部と、光酸発生剤としてTPS−109(製品名、みどり化学株式会社製)3質量部と、溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/乳酸エチル=1/1の混合溶媒)とをそれぞれ混合し、高分子化合物の濃度が12質量%のフォトレジスト組成物4種類を調製した。これらのフォトレジスト組成物を、フィルター[四フッ化エチレン樹脂(PTFE)製、孔径0.2μm]を用いてろ過した後、表面に金電極を真空蒸着した1インチサイズの石英基板上にそれぞれスピンコーティング法により塗布し、厚み約300nmの感光層を形成させた。これらの感光層を形成させた石英基板をホットプレート上にて、110℃で90秒間プリベークした後、ArFエキシマレーザー(波長193nm)を用い、露光量100mJ/cm2で露光し、続いて110℃で90秒間ポストエクスポージャーベークした。水晶振動子マイクロバランス装置「RQCM」(商品名;Maxtek社製)に上記石英基板をセットし、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて120秒間現像処理した。現像処理中の石英基板の振動数変化を経時的にモニターした後、得られた振動数変化を膜厚の変化に換算し、膜厚の増加変化から最大膨潤量、膜厚の減少変化から溶解速度を算出した。結果を表1に示した。
<二光束干渉法露光評価>
実施例4〜7および合成例2〜5で得られた高分子化合物a〜hを100質量部と、光酸発生剤としてTPS−109(製品名、みどり化学株式会社製)3質量部と、溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/乳酸エチル=1/1の混合溶媒)とをそれぞれ混合し、高分子化合物の濃度が12質量%のフォトレジスト組成物4種類を調製した。これらのフォトレジスト組成物を、フィルター[四フッ化エチレン樹脂(PTFE)製、孔径0.2μm]を用いてろ過した。クレゾールノボラック樹脂(群栄化学製PS−6937)6質量%濃度のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液をスピンコーティング法により塗布して、ホットプレート上で200℃で90秒間焼成することにより、膜厚約100nmの反射防止膜(下地膜)を形成させた直径10cmのシリコンウエハー上に、該ろ液をそれぞれスピンコーティング法により塗布し、ホットプレート上で130℃、90秒間プリベークして膜厚約300nmのレジスト膜を形成させた。このレジスト膜に、波長193nmのArFエキシマレーザーを用いて二光束干渉法露光した。引き続き、130℃で90秒間ポストエクスポージャーベークした後、2.38質量%−テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて60秒間現像処理することにより、1:1のラインアンドスペースパターンを形成させた。現像済みウエハーを割断したものを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、線幅100nmのラインアンドスペースを1:1で解像した露光量におけるパターンの形状観察と線幅の変動(以下、LWRと称する。)測定を行った。LWRは、測定モニタ内において、線幅を複数の位置で検出し、その検出位置のバラツキの分散(3σ)を指標とした。結果を表2に示した。
以上の結果より、本発明のアクリル酸エステル誘導体(1)を繰り返し単位に含む高分子化合物の場合(高分子化合物a、b、c、d)、含まない高分子化合物の場合(高分子化合物e、f、g、h)に比べ、フォトレジストを製造する際の現像工程にて使用するアルカリ現像液への溶解速度が非常に高く、現像時の最大膨潤量が非常に小さく、LWRが改善されていることから、半導体デバイス製造用の化学増幅型レジストとして有用であることがわかる。