JP5245159B2 - ダイヤモンド基材中への流路形成方法 - Google Patents

ダイヤモンド基材中への流路形成方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5245159B2
JP5245159B2 JP2008266949A JP2008266949A JP5245159B2 JP 5245159 B2 JP5245159 B2 JP 5245159B2 JP 2008266949 A JP2008266949 A JP 2008266949A JP 2008266949 A JP2008266949 A JP 2008266949A JP 5245159 B2 JP5245159 B2 JP 5245159B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
diamond
layer
flow path
shielding layer
forming
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2008266949A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2010095403A (ja
Inventor
昭義 茶谷原
由明 杢野
英明 山田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Original Assignee
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST filed Critical National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority to JP2008266949A priority Critical patent/JP5245159B2/ja
Publication of JP2010095403A publication Critical patent/JP2010095403A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5245159B2 publication Critical patent/JP5245159B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Crystals, And After-Treatments Of Crystals (AREA)

Description

本発明は、ダイヤモンド基材中に微小な埋め込み流路、いわゆるマイクロ流路を形成する方法に関する。
近年、化学合成、化学分析、DNA分析などを基材上で行うLab-on-a-chipやマイクロTAS
と呼ばれる技術開発が盛んに行われている。また、高出力レーザ半導体の冷却を目的とした流路を備えたヒートスプレッダ、ヒートシンクからなる流体冷却システムやヒーターが開発されている。これらの目的では、構成要素として、ガラス、石英ガラス、シリコン(Si)基板等から成る基材中に、微小な流路、いわゆるマイクロ流路を形成したチップが必要となる。
一方、ダイヤモンドは、化学的安定性(不活性)、紫外から遠赤外におよぶ光透過性、絶縁性や半導体性、高熱伝導性、高硬度、高強度、低摩擦係数、耐摩耗性などの各種の優れた物性を有するものであり、マイクロ流路を形成する基材として最適な材料の一つと考えられる。
ダイヤモンドを基材としたマイクロ流路に関しては、Lab-on-a-chipへの利用(下記非
特許文献1参照)、流体冷却システムやバイオ化学分析や合成への利用(下記非特許文献2参照)等の報告がなされている。更に、半導体レーザ・モジュールへの利用(下記特許文献1参照)、ヒーター構造体への適用(下記特許文献2参照)、マイクロ流体デバイスを備えた化学分析装置(下記特許文献3)等も報告されている。
しかしながら、ダイヤモンドは際立った難加工材料であり、しかも大型基材の入手が不可能であり、非常に高価であること等から、ダイヤモンドを基材とするマイクロ流路は実用化されるには至っておらず、通常、Lab-on-a-chipやマイクロTASでは、ガラスや高分子材料を基材とするマイクロ流路体が使用されている。ダイヤモンド材料については、ヒートスプレッダとして、流路などを持たない単純な形状のダイヤモンドが一部使用されているに過ぎない。
Diamond & Related Materials 13(2004)780. Sensors and Actuators 73(1999)24. 特開2004−146720号公報 特開2004−296146号公報 特開2006-184010号公報
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、各種の優れた物性を有するダイヤモンドを基材として、微小な埋め込み流路(マイクロ流路)を、比較的簡単な方法によって精度良く形成できる方法を提供することである。
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ダイヤモンドを基材として用い、流路を形成する部分に対応する表面を残して、その他の基材表面に、基材中へのイオン注入を阻害するための遮蔽層を形成した後、基材表面からイオン注入を行うことによって、ダイヤモンド基材の内部に、目的とする流路の形状に一致する非ダイヤモンド層を形成できることを見出した。そして、この非ダイヤモンド層をグラファイト化した後
、エッチングすることによって、グラファイト化した非ダイヤモンド層を除去して、マイクロ流路を形成できることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記のダイヤモンド基材中に埋め込み流路を形成する方法を提供するものである。
1. 下記(1)〜(4)の工程を含むことを特徴とするダイヤモンド基材中に埋め込み流路を形成する方法:
(1)流路を形成する部分に対応する表面部分を露出した状態とし、それ以外のダイヤモンド基材表面に遮蔽層を形成する工程、
(2)上記(1)工程で遮蔽層を形成したダイヤモンド基材の表面からイオン注入を行う工程、
(3)イオン注入されたダイヤモンド基材を加熱して、該ダイヤモンド基材中にグラファイト化した非ダイヤモンド層を形成する工程、
(4)グラファイト化した非ダイヤモンド層をエッチングによって除去して流路を形成する工程。
2. 上記(2)工程の終了後のいずれかの時期に遮蔽層を除去する工程を含む、上記項1に記載の方法。
3. 遮蔽層を除去した後であって、上記(3)工程の前又は後に、気相合成法によってダイヤモンドを成長させる工程を含む、上記項2に記載の方法。
4. 請求項3の方法で気相合成法によってダイヤモンドを成長させる際に、上記(3)工程における非ダイヤモンド層をグラファイト化するための加熱を同時に行う、上記項3に記載の方法。
5. 上記(4)工程の前に、ダイヤモンド基材の表面からグラファイト化した非ダイヤモンド層に達する貫通孔又はグラファイト化した非ダイヤモンド質の経路を形成する工程を含む上記項1〜4のいずれかに記載の方法。
6. ダイヤモンド基材中に埋め込み流路を有するダイヤモンド材料であって、該ダイヤモンド材料の表面に、流路が形成されている部分に沿って流路幅と同一幅で結晶欠陥が存在することを特徴とするダイヤモンド材料。
以下、本発明方法について、具体的に説明する。
処理対象とするダイヤモンド
本発明方法の処理対象となるダイヤモンドは、特に限定されるものではなく、例えば、天然のダイヤモンド、高圧合成法によって人工的に製造されたバルク単結晶からなるダイヤモンド、気相合成法によって基板等の上に形成された多結晶ダイヤモンドまたは単結晶ダイヤモンド、ナノダイヤモンド等の各種のダイヤモンドを処理対象とすることができる。更に、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)も本発明の処理対象のダイヤモンドに含ま
れる。
流路の形成方法
以下、本発明の流路形成方法の一実施態様の概略を示す図1を参照して、本発明方法について詳細に説明する。
(i)遮蔽層の形成工程
まず、図1(a)に示す様に、処置対象とするダイヤモンドの表面上に遮蔽層を形成する。
遮蔽層は、後述するイオン注入工程において、流路を形成する部分以外へのイオン注入を阻害するためのものであり、流路を形成する部分に対応する表面部分を露出した状態として、それ以外のダイヤモンド基材表面に遮蔽層を形成すればよい。
遮蔽層を形成する材料としては、イオン注入によって飛散、減量、変形等を生じない材料であれば良く、例えば、SiO2、Al2O等のガラス材料、セラミックス材料;Fe、Ni、Au、Pt、ステンレススチールなどの金属材料等を用いることができる。
遮蔽層を形成する方法については特に限定的ではなく、使用する遮蔽層の材料に応じて、目的とする形状、及び厚さの遮蔽層を形成できる方法を採用すればよい。例えば、真空蒸着、スパッタリング、プラズマCVD、スピンコート、ディップコート、湿式めっきなど
の薄膜作製方法を用いて薄膜を作製し、一般的なフォトリソグラフィー方法を用いてパターニングする等の方法を適用できる。また、別途作製した流路に対応するパターンを有するマスク板をダイヤモンド基材の表面に配置して遮蔽層としてもよい。
遮蔽層の厚さについては、後述するイオン注入の際に、流路を形成する部分以外にイオンが注入されてダイヤモンド基材に変質が生じない様に、遮蔽層の材料に応じて決まる注入イオンの飛程以上とすればよい。
(ii) 非ダイヤモンド層の形成工程:
次いで、遮蔽層を形成したダイヤモンド基材の表面上からイオン注入を行う。イオン注入法は、試料に高速のイオンを照射する方法であり、一般的には所望の元素をイオン化して取り出し、これに電圧を印加して電界により加速した後、質量分離して所定のエネルギーを持ったイオンを試料に照射することにより行うが、プラズマの中に試料を浸漬し、試料に負の高電圧パルスを加えることによりプラズマ中の正イオンを誘引するプラズマイオン注入法により行ってもよい。注入イオンとしては、例えば炭素、酸素、アルゴン、ヘリウム、プロトンなどを用いることができる。
イオンの注入エネルギーは、一般的なイオン注入で用いられる10 keV〜10 MeV程度の範囲でよい。注入イオンは、イオンの種類とエネルギー、およびイオン注入される材料の種類によって決まる注入深さ(飛程)を中心に一定の幅を持って分布する。試料の損傷はイオンが停止する飛程近傍が最大になるが、飛程近傍より表面側でもイオンが通過することにより一定程度の損傷を受ける。これら飛程や損傷の度合いは、SRIMコードのようなモンテカルロシミュレーションコードによって計算・予測することができる。
遮蔽層を形成したダイヤモンドにイオン注入を行うことにより、遮蔽層を形成していない部分については、照射量がある一定量を超えると、イオンの飛程近傍より表面側で結晶構造が変質し、ダイヤモンド構造が破壊されて非ダイヤモンド層が形成される。
形成される非ダイヤモンド層の深さや厚さは、使用するイオンの種類、注入エネルギー、照射量、イオン注入される材料の種類などによって異なるので、これらの条件については、イオンの飛程近傍においてエッチング可能な非ダイヤモンド層が形成されるように決めればよい。通常は、注入されたイオンの原子濃度が最も高い部分について、原子濃度が1x1020 atoms/cm3程度以上であることが好ましく、確実に非ダイヤモンド層を形成するためには1x1021 atoms/cm3程度、すなわちはじき出し損傷量で1 dpa以上であることが好ま
しい。
例えば、炭素イオンを注入エネルギー3 MeVで注入する場合には、イオンの照射量は、1x1016 ions/cm2〜1x1017 ions/cm2程度とすればよい。この場合、イオンの照射量が多くなりすぎると、表面の結晶性が悪化し、一方、照射量が少なすぎると、非ダイヤモンド層が十分に形成されず、エッチングが困難となる。
上記した方法でイオン注入を行うことによって、図1(b)に示すように、遮蔽層が形
成されていない部分のダイヤモンド基材中に、目的とする流路パターンを有する非ダイヤモンド層が形成される。
(iii)グラファイト化工程
次いで、イオン注入後、ダイヤモンドを真空中、還元性雰囲気、酸素を含まない不活性ガス雰囲気等の非酸化性雰囲気中で600℃以上の温度で熱処理することによって、非ダイヤモンド層のグラファイト化を進行させる。これにより、次工程でのエッチングが速く進行する。熱処理温度の上限はダイヤモンドがグラファイト化しはじめる温度となるが、通常、1200℃程度とすればよい。熱処理時間については、熱処理温度などの処理条件により異なるが、例えば、5分〜10時間程度とすればよい。
この工程については、後述するダイヤモンドの成長工程において、非ダイヤモンド層のグラファイト化が進行する温度以上に加熱される場合には、ダイヤモンドの成長工程と同時に行うことができ、独立した加熱処理によるグラファイト化工程は不要となる。
(iv) 遮蔽層の除去工程
イオン注入後、上記(ii)工程で形成した遮蔽層を除去する。遮蔽層の除去方法としては、特に限定的ではないが、ダイヤモンドが侵されない条件での化学エッチングが有効である。
例えば、SiO、AlO等のガラス材料、セラミックス材料等によって遮蔽層が形成されている場合には、フッ化水素酸溶液、KOHなどの強アルカリ溶液等を用いてエッチング
することによって除去することができる。また、Fe、Ni、Au、Pt、ステンレススチールなどの金属材料によって遮蔽層が形成されている場合には、塩酸、硫酸、硝酸、混酸、王水などを用いてエッチングすればよい。また、マスク板をダイヤモンド基材の表面に配置して遮蔽層とした場合には、これを物理的に取り除けばよい。
遮蔽層の除去工程は、通常、グラファイト化工程の後に行えばよいが、グラファイト化工程の前に行っても良く、また後述するエッチング工程において遮蔽層が変質しない場合には、この工程の前後の任意の時期に行うことができる。尚、後述するダイヤモンド成長工程を行う場合には、ダイヤモンド成長工程の前に遮蔽層を除去することが必要である。
(v) ダイヤモンド成長工程:
次いで、図1(d)に示すように、処理対象のダイヤモンドの表面に、ダイヤモンドを
成長させる。
後述するエッチング工程において、ダイヤモンド基材の表面にダイヤモンドを成長させることなく非ダイヤモンド層をエッチング除去すると、非ダイヤモンド層より表層部分のダイヤモンドが薄い場合には、十分な強度を保持できずに表層部分が崩壊して、エッチングによって形成された流路が露出することがある。このため、エッチング処理前に、ダイヤモンド基材の表面にダイヤモンドを成長させて、非ダイヤモンド層より表層部分に十分な厚さのダイヤモンド層を形成することによって、表層部分のダイヤモンド層の崩壊を防止することができる。また、ダイヤモンド基材の表面にダイヤモンドを成長させることによって、形成される流路の深さを調整することができる。
従って、イオン注入によって十分に深い位置に非ダイヤモンド層が形成されている場合には、ダイヤモンド成長工程を省略することができる。
ダイヤモンドの成長方法としては、気相合成法を採用することができる。気相合成法としては、特に限定はなく、例えば、マイクロ波プラズマCVD法、熱フィラメント法、直流
放電法などの公知の方法を適用できる。
特に、マイクロ波プラズマCVD法によれば、高純度なダイヤモンド膜を成長させること
ができる。具体的な製造条件については特に限定はなく、公知の条件に従って、ダイヤモンドを成長させればよい。原料ガスとしては、例えば、メタンガスと水素ガスの混合ガスを用いることができ、更に、これに窒素ガスを加えることによって、成長速度が飛躍的に上昇するとともに、特に単結晶成長の場合は異常成長粒子や成長丘の発生を皆無にすることができる。
具体的なダイヤモンド成長条件の一例を示すと、反応ガスとして用いる水素、メタン及び窒素の混合気体では、メタンは、水素供給量1モルに対して、0.01〜0.33モル程度となる比率で供給し、窒素は、メタン供給量1モルに対して、0.0005〜0.1モル程度となる比率で供給することが好ましい。また、プラズマCVD装置内の圧力は、通常、13.3〜40kPa程度とすればよい。マイクロ波としては、通常、2.45GHz、915MHz等の工業および科学用に許可された周波数のマイクロ波が使用される。マイクロ波電力は、特に限定的ではないが、通常、0.5〜5kW程度とればよい。この様な範囲内において、例えば、ダイヤモンド基板の温度が900〜1300℃程度となるように各条件を設定すればよい。また、このような温度に基板を保つことより、イオン注入により形成した非ダイヤモンド層のグラファイト化が促進される。
ダイヤモンド成長層の厚さについては、特に限定はないが、通常、1μm〜1mm程度とすればよい。
(vi) 非ダイヤモンド層のエッチング工程
次いで、非ダイヤモンド層をエッチングして除去することによってダイヤモンド基材の内部に空間を形成する。これにより、図1(e)に示すように、非ダイヤモンド層と同一のパターンを持った流路が形成される。
非ダイヤモンド層のエッチング方法については、特に限定的ではないが、例えば、電気化学エッチング、熱酸化などの方法を適用できる。
電気化学エッチングによって非ダイヤモンド層を取り除く方法としては、例えば、電解液の中に2個の電極を一定間隔を置いて設置し、非ダイヤモンド層を形成した単結晶ダイヤモンドを電解液中の電極間に置き、電極間に直流電圧を印加する方法を採用できる。電解液としては、純水が望ましい。電極材料は導電性を有するものであれば特に制限はないが、化学的に安定な白金、グラファイトなどの電極が望ましい。電極間隔隔および印加電圧は、最もエッチングが速く進むように設定すればよい。電解液の中の電界強度は通常100〜300 V/cm程度であればよい。
また、電気化学エッチングによって非ダイヤモンド層を取り除く方法において、交流電圧を印加してエッチングを行う方法によれば、大型の単結晶ダイヤモンドであっても、非ダイヤモンド層においてエッチングが結晶の内部にまで極めて速く進行し、非ダイヤモンド層より表面側のダイヤモンドを短時間に分離することが可能となる。
交流電圧を印加する方法についても、電極間隔および印加電圧は、最もエッチングが速く進むように設定すればよいが、通常、印加電圧を電極間隔で割った電解液の中の電界強度は通常50〜10000V/cm程度とすることが好ましく、500〜10000V/cm程度とすることがよ
り好ましい。
交流としては、商用の周波数60または50Hzの正弦波交流を用いるのが簡単であるが
、同様の周波数成分をもてば、波形は特に正弦波に限るものではない。
電解液として用いる純水は、比抵抗が高い(即ち、導電率が低い)ほうが高電圧を印加できるので都合がよい。一般の超純水装置を用いて得られる超純水は、18MΩ・cm程度と
いう十分に高い比抵抗を有するので、電解液として好適に使用できる。液温は低温のほうが高電圧を印加できるので都合がよい。実際上は室温でエッチングをはじめ、冷却しなければ80°程度まで昇温しても問題はない。
また、熱酸化で非ダイヤモンド層を取り除く方法としては、例えば、酸素雰囲気中で500〜900℃程度の高温に加熱し、酸化によって非ダイヤモンド層をエッチングすればよい。この際、エッチングがダイヤモンド内部まで進むと、結晶の外周から酸素が透過しにくくなるため、非ダイヤモンド層を形成するためのイオンとして酸素イオンを選択し、かつエッチングが起こるのに必要な照射量より十分に多量の酸素イオンを注入しておけば、エッチング時に酸素が非ダイヤモンド層の内部からも供給され、非ダイヤモンド層のエッチングをより速く進行させることができる。
尚、上記したエッチング法を採用する場合には、非ダイヤモンド層に外部への露出部分が少なくとも一カ所存在することが必要である。特に、電気化学エッチングを行う場合には、2カ所以上の露出部分が存在することが好ましい。
非ダイヤモンド層が処理対象のダイヤモンド基材の内部にのみ存在し、外部への露出部分が存在しない場合には、例えば、ダイヤモンド基材の表面から非ダイヤモンド層まで達する貫通孔を形成すればよい。貫通孔は、一般的なフォトリソグラフィー技術を利用した選択エッチングやレーザー加工法を用いて容易に作製することができる。また、貫通孔に代えて、ダイヤモンド基材表面から非ダイヤモンド層まで達する、グラファイト化した非ダイヤモンド質の経路を形成してもよい。グラファイト化した非ダイヤモンド質の経路の形成方法としては、流路を形成するための非ダイヤモンド層の形成方法と同様に、イオン注入を行った後、加熱する方法を採用できる。この場合、非ダイヤモンド質の経路を形成する部分以外に、遮蔽層を形成し、次いで、イオンの注入エネルギーを段階的に変化させて、ダイヤモンド基材の表面から非ダイヤモンド層まで達する非ダイヤモンド質の経路を形成し、その後、加熱処理を行ってグラファイト化させればよい。この様な方法で非ダイヤモンド層に達する貫通孔又は非ダイヤモンド質の経路を形成した後、上記した方法でエッチングを行うことによって、ダイヤモンド基材内部に目的とする流路を形成することができる。
流路を有するダイヤモンド基材
図2は、上記した各製造工程で処理されたダイヤモンド基材の断面を模式的に示す図面である。
まず、図2(a)に示す様に、遮蔽層を形成したダイヤモンド基材にイオン注入を行い、その後、熱処理し、遮蔽層を除去することによって、図2(b)に示すように、ダイヤモンド基材の内部にグラファイト化された部分(流路になる部分)が形成される。グラファイト化された部分に対応するダイヤモンド基材表面は、周囲のイオン注入されない部分に比べてわずかに盛り上がりが生じる。これはイオン注入によって導入されたイオンの占める体積にもよるが、イオン注入によってダイヤモンド結晶構造が壊され、熱処理によってグラファイト化するときの密度変化によるところが大きい。
その後、この表面にダイヤモンドを成長させることによって、図2(c)に示す様に流路パターンに沿ってダイヤモンド基材表面に段差が生じる。
次いで、エッチング処理を行って埋め込み流路を形成したダイヤモンド材料では、特に、単結晶ダイヤモンドを基材として用い、この上にダイヤモンドをエピタキシャル成長させた場合には、図2(d)に示すように、エッチングによって流路を形成した部分に沿って生じる段差上に転位などの結晶欠陥が生じやすい。この欠陥は例えば、偏光顕微鏡によって観察することができる。
従って、本発明方法によって埋め込み流路を形成したダイヤモンド材料は、特に、単結晶ダイヤモンドを基材として、気相合成法でダイヤモンドを成長させた場合には、その表面に、流路が形成されている部分に沿って流路幅と同一幅で結晶欠陥が存在することによって特徴付けられるものである。
本発明の流路形成方法によれば、加工が困難なダイヤモンドを基材として、比較的簡単な処理方法によって、精度良く埋め込み流路を形成できる。
従って、本発明方法を利用することによって、ダイヤモンドを基材とするマイクロ流路体を簡単な処理方法で作製することが可能となり、ダイヤモンドの有する優れた物性を利用したマイクロ流路体を各種の用途に実用化することが可能となる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
実施例1
平坦に研磨された高温高圧合成の単結晶ダイヤモンド基材(3×3mm、厚さ0.5mm)上
に、厚さ0.1mmの銅テープを貼りつけることによって、幅約0.2mmのライン形状を残し
て遮蔽層を形成した。次いで、遮蔽層を形成したダイヤモンド基材に、タンデム加速器を用いて、エネルギー3MeVの炭素イオンをドーズ量2×1016個/cm2、室温にてイオン注入
した。注入後、遮蔽層である銅テープを取り除いた。
その後、この基材をマイクロ波プラズマCVD装置内に配置し、水素500sccmを供給し、圧
力を160Torrに調整し、マイクロ波電力を印加してプラズマ化し、基材を1150℃に加熱し
て、イオン注入層をグラファイト化し、さらに、メタン60sccm、窒素0.6sccmの原料ガス
を導入し、ダイヤモンドエピタキシャル成長を行った。ダイヤモンドエピタキシャル成長層の厚さは0.3mmであった。
次いで、超純水400ccを入れたガラスビーカー中に、直径0.5mmの二本の白金電極を約5mm間隔で設置し、上記した試料を電極間にガラス板とテフロン(登録商標)テープを用いて固定し、印加電圧4kV(交流60Hz)の条件で電解エッチングを行ってグラファイト層を
エッチングすることにより、流路を形成した。液温はエッチング開始時の25℃からエッチング中に上昇し、一時間後約80℃に達し、以降一定であった。
エッチング後のダイヤモンド基材の流路部分では、黒色のグラファイト層が完全に除去され、周囲のダイヤモンドと同色になった。また、流路の厚さを観察するため側面より走査型電子顕微鏡を用いて観察したところ、厚さ約0.12μmの流路が形成されていることが
確認できた。
また、上記した方法で流路を形成した後のダイヤモンド基材の表面状態を示す偏光顕微鏡写真を図3に示す。図3から明らかなように、流路が形成された部分に対応するダイヤモンドの表面に、流路の境界に沿って2本の線状に並んだ欠陥が明瞭に観察される。
本発明の流路形成方法の一実施態様の概略を示す説明図。 本発明の流路形成方法の一実施態様における各製造工程で処理されたダイヤモンド基材の断面を模式的に示す図面。 実施例1において流路を形成したダイヤモンド材料の表面状態を示す偏光顕微鏡写真。

Claims (3)

  1. 下記(1)〜(4)の工程を含むことを特徴とするダイヤモンド基材中に埋め込み流路を形成する方法:
    (1)流路を形成する部分に対応する表面部分を露出した状態とし、それ以外のダイヤモンド基材表面に遮蔽層を形成する工程、
    (2)上記(1)工程で遮蔽層を形成したダイヤモンド基材の表面からイオン注入を行う工程、
    (3)イオン注入されたダイヤモンド基材を加熱して、該ダイヤモンド基材中にグラファイト化した非ダイヤモンド層を形成する工程、
    (4)グラファイト化した非ダイヤモンド層をエッチングによって除去して流路を形成する工程。
    但し、上記(2)工程の終了後のいずれかの時期に遮蔽層を除去する工程を含み、
    遮蔽層を除去した後であって、上記()工程の前に、イオンを注入した面に、気相合成法によってダイヤモンドを成長させる工程を含む。
  2. 請求項1の方法で気相合成法によってダイヤモンドを成長させる際に、上記(3)工程における非ダイヤモンド層をグラファイト化するための加熱を同時に行う、請求項1に記載の方法。
  3. 上記(4)工程の前に、ダイヤモンド基材の表面からグラファイト化した非ダイヤモンド層に達する貫通孔又はグラファイト化した非ダイヤモンド質の経路を形成する工程を含む請求項1又は2に記載の方法。
JP2008266949A 2008-10-16 2008-10-16 ダイヤモンド基材中への流路形成方法 Expired - Fee Related JP5245159B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008266949A JP5245159B2 (ja) 2008-10-16 2008-10-16 ダイヤモンド基材中への流路形成方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008266949A JP5245159B2 (ja) 2008-10-16 2008-10-16 ダイヤモンド基材中への流路形成方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2010095403A JP2010095403A (ja) 2010-04-30
JP5245159B2 true JP5245159B2 (ja) 2013-07-24

Family

ID=42257365

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008266949A Expired - Fee Related JP5245159B2 (ja) 2008-10-16 2008-10-16 ダイヤモンド基材中への流路形成方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5245159B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN115367695A (zh) * 2022-08-25 2022-11-22 哈尔滨工业大学 一种金刚石微流道的制备方法

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN101203939B (zh) * 2005-01-11 2010-06-16 阿波罗钻石公司 加工金刚石的方法以及利用金刚石半导体的器械
US9410241B2 (en) * 2006-09-04 2016-08-09 National Institute Of Advanced Industrial Science And Technology Method for separating surface layer or growth layer of diamond

Also Published As

Publication number Publication date
JP2010095403A (ja) 2010-04-30

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8591856B2 (en) Single crystal diamond electrochemical electrode
US6399177B1 (en) Deposited thin film void-column network materials
JP4849691B2 (ja) 大面積ダイヤモンド結晶基板及びその製造方法
EP2048267B1 (en) Process for producing single-crystal substrate with off angle
WO2011074599A1 (ja) モザイク状ダイヤモンドの製造方法
JPWO2015199180A1 (ja) ダイヤモンド基板の製造方法、ダイヤモンド基板、及び、ダイヤモンド複合基板
TW201100324A (en) Method to synthesize graphene
EP2584594A1 (en) Method for manufacturing silicon carbide semiconductor device and apparatus for manufacturing silicon carbide semiconductor device
US11859279B2 (en) Modular reactor for microwave plasma-assisted deposition
JP4919300B2 (ja) ダイヤモンドの表面層又は成長層の分離方法
JP2010037128A (ja) グラファイト膜製造方法
JP4803464B2 (ja) 単結晶ダイヤモンドの表面損傷の除去方法
JP5142282B2 (ja) ダイヤモンドの表層加工方法
Huang et al. Terminal Atom‐Controlled Etching of 2D‐TMDs
TWI377266B (ja)
US20030072973A1 (en) Corrosion-resistant member, method of manufacturing the same and apparatus for heating corrosive substance
JP5245159B2 (ja) ダイヤモンド基材中への流路形成方法
CN103964417B (zh) 一种含锗元素的掺杂石墨烯的制备方法
US7714248B2 (en) Microwave plasma generator
CN113725075B (zh) 一种金刚石混合终端表面电导的制备方法
Miyauchi et al. Microfabrication of diamond films: selective deposition and etching
CN116288244A (zh) 图形化金刚石的制备方法和具有图形化金刚石的制品及其应用
JP2006045008A (ja) ダイヤモンド膜・カーボン細線複合材料及びその製造方法
CN105568251A (zh) 一种绝缘衬底上生长石墨烯的方法
KR960008901B1 (ko) 다공질 실리콘 기판을 이용한 다이아몬드 박막의 증착방법

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100311

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20121018

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20121023

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20121205

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130108

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130225

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130319

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130321

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20160419

Year of fee payment: 3

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees