JP5243807B2 - 定置網の垣網 - Google Patents

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この発明は、エチゼンクラゲ等の巨大クラゲが囲網の端口から進入するのを防止した定置網の垣網に関するものである。
定置網(又は建網ともいう)は漁場に網を敷設し、回遊してきて網に迷い込んだ魚を漁獲する方法であり、日本における漁獲技術の1つとして従来から使用され、現在なおも採用されている漁獲方法である。日本近海には暖流(例えば、黒潮や対馬海流)と寒流(例えば、親潮やリマン海流)が流れている。暖流に乗っていろいろな種類の魚、例えば、鰯、鰺、鯖、鰹、鮪、ブリや鮭等が回遊してくる。一方寒流には小魚の餌となる動物プランクトンが豊富で、暖流と寒流のぶつかる潮境は好魚場となる。日本近海には好漁場が沢山あり、定置網が盛んであった。しかし、近年中国や韓国の沿岸でエチゼンクラゲが大量発生し、成長しながら暖流に乗って日本海を北上し、日本海沿岸の定置網業に大きな被害を与えて、大問題になっている(非特許文献6,7)。
定置網の種類や構成及び敷設方法等については多くの文献やホームページ(以下、HPと略記する)に開示されている。例えば、非特許文献1〜4に掲載されている。ここでは、図7に近年の標準的な大型定置網の1例を示す。図7に示すように、定置網50は垣網51、囲網52、箱網53、54等から構成されている。なお、囲網52の内部には運動場と呼んでいるスペース52aと登網部と呼ばれているスペース52bとが設けられている。運動場52aと垣網51が交差する入口を端口55と呼んでいる。この定置網50には垣網51の両側に端口が形成されており、両端口と呼ぶ。また、入った魚が逃げないように箱網54の奥に小船56が接続されている。
野村正恒著、最新漁業技術一般、成山堂書店、180〜196頁、平成12年4月出版 金田禎之著、日本の漁業と漁法、成山堂書店、74〜85頁、平成17年6月出版 鈴木マリーンHP、海の散歩道0302、釣師の通らない道Vol.10、周辺の海の環境−9、定置網−4、定置網のしくみ 泉澤水産HP、定置網
定置網50の敷設方法や揚網方法については文献に記載されており、本願発明とは直接に関係していないので説明は省略する。垣網51は端口55の央部又は端部に接続され、垣網51の他端は海岸の磯にまで延長している。垣網51の全長は数十メートルから数百メートルに及ぶケースもある。垣網51の上縁には合成繊維又は鋼製のロープ61が取り付けられ、該ロープ61に多数の浮子62が固定されている。浮子62によって垣網51の上縁は海面上に保持される。一方、垣網51の下縁63には沈子(図示省略)が取り付けられ、垣網51が海中で張られた状態を維持する。また、垣網51の端口端は、例えば、囲網52の上縁に設けられたロープに結んで固定する。垣網51の他端(陸地側端)は浮子及び沈子を介して海底に固定する。
上記した構成により、海流に乗って回遊して来た魚10が垣網51に進路を遮られ、一部の魚10が端口55の方向に誘導される。誘導された魚10は端口55を通って囲網52の内部に入る。その一部は運動場52aの内部で遊泳し、外部に逃げて行くが、他の一部は登網部52bを登って、箱網53、54へ進入する。箱網53の入口は狭められ、かつ、段差が設けられているため、箱網53に入った魚類は簡単に外部に脱出はできない。なお、ここでは箱網53,54が2段に設けられている。更に、奥に小舟56が設けられている。
垣網51は回遊してきた魚群を誘導するものであり、魚群の行動を考慮して設置される。海流に乗ってきた魚は沖合から湾内に突入すると、先ず、等深線に沿って移動する。垣網51はこれらの魚をできる限り多く端口55方向に誘導するように張られている。即ち、沿岸付近では等深線と大体40〜50度の角度で交差し、垣網51の中間、或いは囲網52の近くでは等深線と直角に近づくように張立てる(非特許文献5参照)。
井上実著、漁具と魚の行動、第2章の2垣網に対する魚の行動、PP29−41、恒星社厚生閣刊
等深線に沿って移動してきた魚10は垣網51に遭遇すると、種々の方向に進路を変更する。網目を通過する魚、端口55方向に進む魚、沿岸方向に進む魚、元の方向に引き返す魚がおり、必ずしも大半の魚が端口方向に進む訳ではない。しかし、障害物に出会った魚は勾配が急であれば(等深線が密集している所では)遊泳層より深いところ(深み)、暗いところに沈降する傾向があることが実験的に認められている。そして、ここでは、端口55方向に進む魚の挙動のみが重要である。
さらに、端口55方向に進む魚であっても、垣網51に対する魚(又は魚群)の行動は魚種によって一様ではなく、垣網51の材料と目合、垣網51の姿勢と角度、魚の成群状態、周りの明るさなどにも影響される。例えば、ブリの場合を1例にとると、ブリは30m位の水深の層から垣網51に接近し、垣網51から10m位離れて垣網51に沿って泳ぐと言われている。また、黒鮪では昼間は10〜15m離れるが夜間では5〜6m位まで接近して泳ぐと言われている(非特許文献1)。
上記した定置網は海流に乗って回遊してくる魚類を捕獲する漁法であり、比較的に少ない労力で、しかも大量の魚類を捕獲することができ、種々の魚類に適用できる有力な漁法の1つであった。しかし、前述したように、近年、中国や韓国の沿岸でエチゼンクラゲが大量発生し、成長しながら海流(対馬暖流)に乗って日本海を北上し、日本海の沿岸にも来遊するという現象が頻発するようになってきた。日本海沿岸に来遊したエチゼンクラゲは定置網にも進入し、定置網漁業に大きな被害を与えている。成長したエチゼンクラゲの大きなものは、傘の直径が100cm以上にもなり、正常な個体では糸状付属器の長さは傘径の3〜5倍にもなる。また、重量も200kgにもなるために、エチゼンクラゲの入網により漁具の破損、操業効率の低下、操業海域の縮小、選別時間の増加、クラゲの触手による魚体の損傷(商品価値の低下)等の被害が生じている(文献6,7)。
島根県水産試験場HP、エチゼンクラゲについて 安田徹編、海のUHOクラゲ、116−120頁、恒星社厚生閣
エチゼンクラゲの定置網への入網を防止する有効な手段は現在の所、まだ開発中である。提案された方法としては非特許文献8に開示されているものがある。この垣網は垣網部の下側に目合の大きい捨て網部を設けてエチゼンクラゲを通過させる仕組みになっている。具体的な実施例では、垣網部は海面から41.5mの深さまで目合いが45cmの網を使用し、捨て網部は垣網部の下部から海底(55.5mの深さ)まで目合いが150cmの網を使用している。また、設置方法は、海面から海底に向けて潮流に対して下流方向に斜めになるように張り立てる。移動してきたエチゼンクラゲは垣網の垣網部に遭遇すると垣網部に沿って潜り込み、捨て網部から抜けて下流に向けて移動する。試験結果では魚類を逃がすことなくエチゼンクラゲだけを通過させることができたと報告している。
島根県水産試験所HP、とびっくす(トビウオ通信号外)第7号、2−(2)定置網、平成18年3月30日発行
また、本出願人はエチゼンクラゲの定置網への入網を防止する別の垣網を発明し、現在出願中である(特願2007−219697)。この出願発明では海流の流れ方向は、少なくともエチゼンクラゲが定置網に入る場合の海流の流れ方向は一定であると見なしてきた。しかし、暖流や寒流の他に潮汐による海面昇降を考えると海流の流れ方向は変化する。潮汐は地球と月や太陽の引力に依って誘起され、太陽・地球・月の位置関係によって潮汐の大きさや潮流の強さが変化する。特に、日本海は対馬海峡、関門海峡及び津軽海峡を通して太平洋と接しているために、日本海側の潮汐規模、潮汐時間が太平洋側の潮汐規模、潮汐時間と異なるために潮汐によって海流の流れ方向が変化する。
本願発明はこのような状況下でなされたものであり、比較的簡単な改良によってエチゼンクラゲ等の巨大クラゲの入網を排除し、魚を有効に捕獲すると共に海流の流れ方向が変化しても有効な定置網を提供することを課題としている。
本願発明は、上記課題を解決するために以下の構成を採用している。即ち、
請求項1に記載の発明は、海流が流れている漁場に設置される定置網の垣網において、前記垣網に巨大クラゲが通過する開口を設けると共に、該開口の上流側で端口方向に移動する巨大クラゲを該開口に誘導する入口ガイド網と該開口の下流方向に誘導する出口ガイド網を設け、該入口ガイド網と該出口ガイド網は相補って、該垣網に沿って端口方向に移動する魚に該開口を通して直接に該垣網の反対側の景色が見えないように構成したことを特徴としている。
本発明は、海流の流れる方向及び向きが変動しても有効に機能するように構成したことを特徴の1つとする。なお、海流は寒流や暖流だけでなく潮流その他の海水の流れを含めた意味である。以下も同じ。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記入口ガイド網と前記出口ガイド網は、敷設したときに、前記入口ガイド網と前記出口ガイド網の岸側端の辺縁を結ぶ平面よりも前記開口の岸側端の辺縁が沖側に配置される構成としたことを特徴としている。
本発明は、垣網に沿って端口方向に移動する魚に開口を通して直接に該垣網の反対側の海中の景色が見えないようにする構成条件を明確にしたことを特徴の1つとする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2の何れかに記載の発明において、前記入口ガイド網と前記出口ガイド網の双方の沖側縁を前記垣網の開口縁に固定し、岸側縁を開閉自在に構成し、前記開口を閉じるときは前記ガイド網の双方伸長した状態で該垣網の両側から挟んで該垣網に着脱自在に固定する構成としたことを特徴としている。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記入口ガイド網と前記出口ガイド網の双方を前記垣網に着脱自在に固定する固定手段はワン・タッチ式等の着脱容易な手段で構成したことを特徴としている。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4に記載の発明において、前記入口ガイド網と前記出口ガイド網の双方を前記垣網と同一の網材を利用して構成したことを特徴としている。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5に記載の発明において、前記開口は、幅1〜3メートルとし、前記開口の深さは、水深30メートル以内又は垣網の底部の水深と同一深さにしたことを特徴としている。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6に記載の発明において、前記開口の形状を縦長矩形は又は台形としたことを特徴としている。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7に記載の発明において、前記開口は、前記垣網の長さ方向に対して20メートル〜50メートルの任意間隔で複数個設けてことを特徴としている。
巨大クラゲの入網を排除し、魚を有効に捕獲すると共に海流の流れ方向が変化しても有効に機能するという効果が得られる。
図1は、本願発明の実施形態を示し、海流の上流方向から見た斜視図である。図1で実線の矢印は現在の海流の方向を示し、点線の矢印は海流が反対方向に変化した場合を示す。図1に示すように入口ガイド網12と出口ガイド網13は垣網51に対して対称に設置されるために海流の流れ方向による影響は少ない。図1において、垣網51の適宜の位置にエチゼンクラゲ等の巨大クラゲ(以下、単に、「エチゼンクラゲ」という。)を下流側に開放するための開口11が設けられている。開口11の大きさは来遊するエチゼンクラゲの傘の大きさや数量を考慮して決定する。一般に、開口11の横幅は(2〜3)メートルにするのが好ましく、縦方向長さはエチゼンクラゲが遊泳する深さで、例えば、海面から(0〜2)メートルの深さから(20〜30)メートルの深さとするのが好ましい。エチゼンクラゲを誘導する入口ガイド網12及び出口ガイド網13は開口11の上流側、下流側にそれぞれ設ける。
ガイド網12,13の上辺縁に浮子14を直接(又は短いロープを介して浮子14が海面に浮くように)取り付ける。一方、ガイド網12,13の下辺縁にはロープを介して沈子15を取り付けて海底に固定する。ガイド網12,13の沖側辺縁は開口の沖側辺縁の垣網51に固定し、ガイド網12,13の岸側辺縁はエチゼンクラゲを誘導するために垣網51から適当な間隔(例えば、2ないし3メートル)を開けるように設置する。例えば、本実施形態では、ガイド網12,13の上辺縁と垣網51の上縁ロープ61との間をロープ17で接続し、ガイド網12,13の下辺縁と沈子16との間をロープ18で接続し、更に、ガイド網12,13の上辺縁と沈子16との間をロープ19で接続している。なお、ガイド網12,13の海中における固定方法は上述した方法に限られない。例えば、ガイド網12,13を海中に敷設するときだけ、曲がりにくい材質の筒状体(図示省略)にロープ17を通して設置し、揚網時には予め取り外すようにしてもよい。なお、ガイド網12,13の入口(又は出口)の幅を確保するために、ガイド網12、13の岸側端の縁に複数本のロープ17,19を設けてもよい。
図2はエチゼンクラゲを誘導するガイド路20としてガイド網12、13を設置した例を示す上平面図を示す。図2(A)は、図1に示すようにガイド網12,13を2点で固定した例を示す。図2(B)は1点で固定した例を示す。図の実線で示すように垣網51に沿って端口55方向に進行してきたエチゼンクラゲは開口11を通過した後は岸側方向(図の右方向)に開放され、下流に向かって移動する。従って、端口55の近くに設けられた開口11を通過したエチゼンクラゲは端口55を通って囲網52に入網する確率が少なくなる。
図3は垣網51を揚網する前やエチゼンクラゲ等が近くに遊泳していない場合に通常の方法(従来と同じ方法)で使用する場合にエチゼンクラゲを誘導するガイド網12,13を広げて伸ばし、開口11を閉じた状態を示す。図3において、ガイド網12,13は広げた状態で垣網51を両側から挟んで固定する。このときガイド網12,13は垣網51の両側から接触し、開口11を完全に塞いだ状態になる。ガイド網12、13を固定する手段としては、例えば、連結固定手段25を沖側に設け、着脱自在な固定手段22をガイド網12、13の開放縁(岸側縁)に設ける。以下、この場合について説明する。着脱自在な固定手段22を図の矢視X−Xから見た状態を図4に示す。連結固定手段25を図の矢視Y−Yから見た状態を図5に示す。
図4は着脱自在な固定手段22の1実施例を示す。図4(B)は図3の矢視X−Xから見た断面図で、図4(A)は矢視X1−X1から見た側面図、図4(C)は矢視X2−X2から見た側面図を示す。図4において、固定手段22はガイド網12、13の開閉自在な開放縁に設けたズック製の布22a、22bとその中央に設けた簡易着脱テープ(例えば、登録商標「マジックテープ」の様なテープ)23a、23bから構成されている。開放縁を固定するときは簡易着脱テープ23a、23bを垣網51の両側から挟んで網の上から固定する。開放するときは簡易着脱テープ23a、23bをはがして、ガイド路20を構成するように設置する。なお、固定手段はこれに限られない。例えば、図3のロープ19(及び17,18)或いは、別の新たなロープを利用して垣網51を挟んで編むようにして固定してもよい。更に公知の技術、例えばフック等を利用して固定してもよい。着脱自在な固定手段は海中での作業を容易にするために着脱容易なものが好ましい。
図5は連結固定手段25の1実施例を示す。図5(B)は図3の矢視Y−Yから見た断面図で、図5(A)は同図の矢視Y1−Y1から見た側面図、図5(C)は矢視Y2−Y2から見た側面図を示す。図5(D)は矢視Z−Zから見た断面の平面図を示す。図5において、垣網51の開口11の沖側縁51aを挟んで両側にガイド網12の沖側縁12aとガイド網13の沖側縁13aを配置し、連結固定手段25で固定する。連結固定手段25はゴム製、プラスティック製、その他の材質の環状帯等で構成するのが好ましい。
図6は垣網51に沿って端口55方向に進行する魚10が垣網51に設けた開口11に気が付かないためのガイド網12、13の構成について説明する図である。垣網51に沿って移動するエチゼンクラゲ9は入口ガイド網12、開口11、出口ガイド網13を通過して下流側に移動するが、魚10は開口11に気付かないためそのまま垣網51に沿って端口55方向に移動する条件を説明する。
図6において、開口11の岸側辺縁11Eが、入口ガイド網12の入口先端辺縁12Eと出口ガイド網13の出口先端辺縁13Eとを結んで構成される面(12E、13E)と交叉し、沖側にあれば、魚10は直接開口11を通して垣網51の反対側の海中の風景を見ることができない。即ち、反対側の風景は、必ず垣網51か又はガイド網12,13を通して見ることになる。従って、垣網51に沿って端口方向に移動する魚10は単眼視(遠近感がない状態)で垣網51を見ているために開口11の存在を認識できない。また、垣網51から風景までの距離は、垣網51からガイド網12(又は、13)までの距離に比べて大きいために開口11の存在に気が付かない。その結果、魚10は垣網51に沿って端口方向に移動を続ける。以下、ガイド網12,13のこのような機能を魚の「目隠し機能」と言うことにする。従って、ガイド網12,13はエチゼンクラゲ9を下流側にガイドするガイド機能と魚10の目隠し機能を持つように構成される。
なお、図6で海流の流れる向きが反転した場合(図の点線の場合)は入口ガイド網12と出口ガイド網13の機能が逆になる。また、流れる向きが変化した場合は入口ガイド網12の機能と出口ガイド網13の機能が変化するが全体としてガイド機能と目隠し機能を発揮する。海流の流れ速度や流れ方向(向き)の変化等の海流の特性、エチゼンクラゲが来遊する方向(暖流の流れている方向)及び開口11を設けている位置(例えば、端口に近い、岸に近い等)を考慮して、入口ガイド網12と出口ガイド網13の長さの比率、形状等を決定するのが好ましい。
図8は魚の単眼視の視野を説明した図である。魚の目は、図8に示すように凸形状の顔の両側に各々1個ずつ眼を持っており、両眼で1個の物を見るより、単眼視でそれぞれの眼が重なり合わない別々の像を見ることが多い。例えば、マスの成魚では、図8に示すように、両眼視(前方視)による水平視野(β)は20〜30度で狭く、単眼視の水平視野(α)は約160度(なお、垂直視野は150度)である。魚は両眼視野では、正確な距離を測り、物の形状を認識できるが、単眼視(側方視)の視野では両眼視の場合よりも遠くまで見えるけれども、物の形状は、はっきりせず、動きだけを感じる。従って、本願のように構成した垣網51に沿って泳ぐ魚は単眼視で垣網51を見ているため垣網51とガイド網12,13の識別が困難で開口11を殆ど識別できない。又、遠くから垣網51に接近する際は開口11の部分を両眼視野で捕らえることも起こりうるが、このような確率は小さいだけでなく、直接開口11を通して垣網の向こう側の景色を見ることができないために開口11を発見できないケースも多い。従って、多くの場合は、通常の開口のない垣網に対すると同じように行動する。
以上に述べたように、本願実施形態に述べた垣網を使用することにより、エチゼンクラゲの入網を排除し、魚を有効に捕獲すると共に海流の流れ方向が変化しても有効に機能するという効果が得られる。
なお、ガイド網12,13の網材に垣網51の網材と同一の網材、少なくとも同一色の網材を使用すると、魚は更に開口11の認識が困難になり、魚が開口から逃げることを防止することができる。また、開口11の形状は長方形に限らない。例えば、台形にしてもよい。若いエチゼンクラゲは遊泳力が大きいので海面近くに浮上し、老いたエチゼンクラゲは遊泳力が弱いので海底近くで遊泳するからである。また、開口11は垣網51に等間隔に設ける必要はない。更に、全ての開口11の大きさ、形状を同一にする必要はない。けだし、海流の速度は垣網51全体にわたって一様でないし、また、場所によって遊泳するエチゼンクラゲの大きさも異なるからである。また、上記実施形態では両端口の場合を示しているが、片端口の場合であっても本発明の技術範囲に属する。箱網等の種類、定置網のサイズ等は上記に説明した物に限定されない。
本願発明の実施形態の斜視図である。 (A)、(B)ガイド網の敷設方法の説明図である。 開口を閉じた状態を示す。 (A)〜(C)着脱自在な固定手段の実施例を示す。 (A)〜(D)連結固定手段の実施例を示す。 ガイド網と開口の関係を示す。 従来の定置網の例を示す。 魚の視野領域の説明図を示す。
符号の説明
9 エチゼンクラゲ(巨大クラゲ)
10 魚
11 開口
12 入口ガイド網
13 出口ガイド網
14 浮子(ガイド網用)
15 沈子(ガイド網用)
16 沈子(ガイド網用)
20 ガイド路
22 着脱自在な固定手段
25 連結固定手段
51 垣網
52 囲網
55 両端口

Claims (8)

  1. 海流が流れている漁場に設置される定置網の垣網において、前記垣網に巨大クラゲが通過する開口を設けると共に、該開口の上流側で端口方向に移動する巨大クラゲを該開口に誘導する入口ガイド網と該開口の下流方向に誘導する出口ガイド網を設け、該入口ガイド網と該出口ガイド網は相補って、該垣網に沿って端口方向に移動する魚に該開口を通して直接に該垣網の反対側の景色が見えないように構成したことを特徴とする定置網の垣網。
  2. 前記入口ガイド網と前記出口ガイド網は、敷設したときに、前記入口ガイド網と前記出口ガイド網の岸側端の辺縁を結ぶ平面よりも前記開口の岸側端の辺縁が沖側に配置される構成としたことを特徴とする請求項1に記載の定置網の垣網。
  3. 前記入口ガイド網と前記出口ガイド網の双方の沖側縁を前記垣網の開口縁に固定し、岸側縁を開閉自在に構成し、前記開口を閉じるときは前記ガイド網の双方伸長した状態で該垣網の両側から挟んで該垣網に着脱自在に固定する構成としたことを特徴とする請求項1または請求項2の何れか1に記載の定置網の垣網。
  4. 前記入口ガイド網と前記出口ガイド網の双方を前記垣網に着脱自在に固定する固定手段はワン・タッチ式等の着脱容易な手段で構成したことを特徴とする請求項3に記載の定置網の垣網。
  5. 前記入口ガイド網と前記出口ガイド網の双方を前記垣網と同一の網材を利用して構成したことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1に記載の定置網の垣網。
  6. 前記開口の幅は1メートル〜3メートルとし、前記開口の深さは水深30メートル以内または前記垣網の底部の水深と同一の深さにしたことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1に記載の定置網の垣網。
  7. 前記開口の形状を縦長矩形または台形としたことを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1に記載の定置網の垣網。
  8. 前記開口は、前記垣網の長さ方向に対して20メートル〜50メートルの任意間隔で複数個設けてことを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか1に記載の定置網。
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