JP5243542B2 - 印刷物および印刷物製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、印刷物および印刷物製造方法に関する。
近年、複写機や印刷装置の性能の向上、またパソコンやスキャナなどデジタル処理機の技術向上に伴うDTP技術の発展に伴い、印刷物の模倣・複製が簡易かつ精密に行えるようになってきている。そこで、従来、印刷物の複製を抑制するために、マイクロ文字を印刷する技術(特許文献1参照)、潜像模様および凹凸構造を形成する技術(特許文献2参照)、多色刷りなどの技術を利用している。
特許第3271474号公報 特開2003−281596号公報
上述した技術は有価証券や各種証明書などの重要書類の印刷物における模倣抑制に用いられていた。
一方、段ボールケースのデザインについても、商品の模倣を抑制できる印刷技術を採ることが望まれる。しかしながら、通常の作業工程で段ボールケースを印刷する場合には、段ボール板紙という平滑性のない基材に印刷するという印刷スペックの関係上、色数は2〜3色でマイクロ文字など細かい文字の印刷ができない再現性の低い印刷方法が用いられており、段ボールケースのデザインの模倣を抑制するために上述した技術を用いることはできなかった。
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、模倣を抑制できる印刷物および印刷物製造方法を提供することを目的とする。
上述した問題を解決するためになされた本発明の第1局面の印刷物は、基材と、少なくとも樹脂エマルジョンおよび樹脂組成物を含有し、前記基材表面に配置される透明層と、を有するものであって、前記樹脂組成物は、樹脂を、有機アミン化合物および無機塩基性化合物のうち少なくともいずれか一方の存在下にて、水,グリセリン,グリコール,グリコール誘導体からなる群から選択される1種以上からなる溶媒に溶解させたものである。なお、樹脂組成物における樹脂は、樹脂エマルジョンに含有される樹脂と同じ樹脂であってもよいし、異なる樹脂であってもよい。
このように構成された印刷物において、基材表面に形成された透明層は、そのデザイン(基板表面に沿った形状、以下模倣抑制デザインともいう)を複写機やスキャナなどの装置を用いて読み取ることができない。したがって、印刷物に予め透明層で模倣抑制デザインを形成しておくことで、模倣抑制デザインの模倣を抑制できる。それにより、当該模倣抑制デザインが形成された印刷物の偽物を、複写機等を用いて製造されることを抑制できる。
また、樹脂組成物が含まれることにより、有色インキによる透明層表面への塗装を良好に行うことができる。
また、透明層を形成するだけで模倣を抑制する効果を得ることができるので、マイクロ文字や潜像模様などを印刷するための高品質な印刷装置が必要ないため、通常の印刷工程と同程度のコストで製造することができる。
模倣抑制デザインの確認方法としては、例えば、透明層に光を当てて、基材表面の垂線と角度をつけた斜め方向から目視することが挙げられる。
なお、上記基材とは、有色インキによる表面の塗装が可能なものであり、例えば段ボールが挙げられる。
また、上記透明層は、基材表面に形成された状態で実質的に基材表面が視認できる程度に透明であればよい。
また、有機アミン化合物としては、例えば、モノエタノールアミン,トリエタノールアミン等が挙げられる。また、無機塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム等が挙げられる。
本発明の第2局面の印刷物は、第1局面の印刷物において、前記樹脂エマルジョンが、ロジン変性マレイン酸樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、スチレン−アクリル系−マレイン酸系樹脂からなる群のから選択される1種以上の樹脂と、水,グリセリン,グリコール,グリコール誘導体からなる群から選択される1種以上からなる溶媒と、を含有するものであることを特徴とする。
このように構成された印刷物であれば、模倣抑制デザインの模倣抑制を良好に実現することができる。
本発明の第3局面の印刷物は、第1局面または第2局面の印刷物において、前記樹脂組成物における樹脂が、ロジン変性マレイン酸樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、スチレン−アクリル系−マレイン酸系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂であることを特徴とする。
このように構成された印刷物であれば、透明層表面において良好に有色インキを塗布することができる。
本発明の第4局面の印刷物は、第1局面〜第3局面のいずれかの印刷物において、前記透明層が体質顔料を含有することを特徴とする。
このように構成された印刷物であれば、透明層の乾燥性が向上するため、透明層を形成した直後に乾燥のために必要な時間が低減できる。それにより、例えば透明層以外の有色インキ等による印刷を一の工程で容易に実行できるようになる。また、有色インキによる透明層表面への塗装がさらに良好に行うことができるようになる。
ところで、基材表面に有色インキによる有色層が形成される場合がある。例えば段ボールの場合、表面に内容物や製造者を表示する印刷が行われる。模倣抑制デザインは、そのような有色層によるデザイン(以下、通常デザインともいう)に組み合わせて使用することができる。具体的には、次の第5局面、第6局面の印刷物の構成とすることが考えられる。
本発明の第5局面の印刷物は、第1局面〜第4局面のいずれかの印刷物において、前記基材表面および/または前記透明層表面における少なくとも一部の領域上に有色層が形成されてなることを特徴とする。
このように構成された印刷物であれば、有色層による通常デザインにより透明層を隠すことや模倣抑制デザインの形状を不明瞭にすることができるため、模倣抑制デザインの他者からの発見や模倣を抑制することができる。
また、本発明の第6局面の印刷物は、第5局面の印刷物において、前記有色層が、前記透明層表面を全て覆うように形成されることを特徴とする。
このように構成された印刷物であれば、基材表面の透明層を有色層によって隠すことができるため、模倣抑制デザインの発見をさらに困難にすることができる。
本発明の第7局面の印刷物は、第1局面〜第6局面のいずれかの印刷物において、前記透明層が紫外線吸収剤を含有することを特徴とする。
このように構成された印刷物であれば、紫外線を照射することにより紫外線吸収剤が発光して浮き出すため、容易に透明層の存在を確認することができる。
本発明の第8局面の印刷物は、第1局面〜第7局面のいずれかの印刷物において、前記透明層が赤外線吸収剤を含有することを特徴とする。
このように構成された印刷物であれば、赤外線を照射すると赤外線吸収剤が赤外線を吸収するため、赤外線吸収測定装置を用いることにより容易に透明層の存在を確認することができる。
本発明の第9局面の印刷物製造方法は、基材表面に、樹脂エマルジョンおよび樹脂組成物を含有する透明層形成材料を塗布することで透明層を形成する透明層形成工程を備えており、前記樹脂組成物は、樹脂を、有機アミン化合物および無機塩基性化合物のうち少なくともいずれか一方の存在下にて、水,グリセリン,グリコール,グリコール誘導体からなる群から選択される1種以上からなる溶媒に溶解させたものである。なお、樹脂組成物における樹脂は、樹脂エマルジョンに含有される樹脂と同じ樹脂であってもよいし、異なる樹脂であってもよい。
このような印刷物製造方法であれば、本発明の第1局面の印刷物と同様の効果を奏する印刷物を製造することができる。
なお、上述した塗布の具体的な態様としては、印刷などの一般的に用いられる様々な方法を適用することができる。
本発明の第10局面の印刷物製造方法は、本発明の第9局面の印刷物製造方法において、前記樹脂エマルジョンが、ロジン変性マレイン酸樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、スチレン−アクリル系−マレイン酸系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂と、水,グリセリン,グリコール,グリコール誘導体からなる群から選択される1種以上からなる溶媒と、を含有するものであることを特徴とする。
このような印刷物製造方法であれば、本発明の第2局面の印刷物と同様の効果を奏する印刷物を製造することができる。
本発明の第11局面の印刷物製造方法は、本発明の第9局面または第10局面の印刷物製造方法において、前記樹脂組成物における樹脂が、ロジン変性マレイン酸樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、スチレン−アクリル系−マレイン酸系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂であることを特徴とする。
このような印刷物製造方法であれば、本発明の第3局面の印刷物と同様の効果を奏する印刷物を製造することができる。
本発明の第12局面の印刷物製造方法は、本発明の第9局面〜第11局面のいずれかの印刷物製造方法において、前記透明層形成材料が、体質顔料を含有することを特徴とする。
このような印刷物製造方法であれば、本発明の第4局面の印刷物と同様の効果を奏する印刷物を製造することができる。
本発明の第13局面の印刷物製造方法は、本発明の第9局面〜第12局面のいずれかの印刷物製造方法において、前記基材表面および/または前記透明層表面における少なくとも一部の領域上に有色層を形成する有色層形成工程を備えることを特徴とする。
このような印刷物製造方法であれば、本発明の第5局面の印刷物と同様の効果を奏する印刷物を製造することができる。
本発明の第14局面の印刷物製造方法は、本発明の第13局面の印刷物製造方法において、前記有色層が前記透明層表面を全て覆うように形成されることを特徴とする。
このような印刷物製造方法であれば、本発明の第6局面の印刷物と同様の効果を奏する印刷物を製造することができる。
本発明の第15局面の印刷物製造方法は、本発明の第9局面〜第14局面のいずれかの印刷物製造方法において、前記透明層形成材料が紫外線吸収剤を含有することを特徴とする。
このような印刷物製造方法であれば、本発明の第7局面の印刷物と同様の効果を奏する印刷物を製造することができる。
本発明の第16局面の印刷物製造方法は、本発明の第9局面〜第15局面のいずれかの印刷物製造方法において、前記透明層形成材料が赤外線吸収剤を含有することを特徴とする。
このような印刷物製造方法であれば、本発明の第8局面の印刷物と同様の効果を奏する印刷物を製造することができる。
本発明の第17局面の印刷物製造方法は、本発明の第9局面〜第16局面のいずれかの印刷物製造方法において、前記透明層形成工程がフレキソ印刷により実行されることを特徴とする。
このような印刷物製造方法であれば、フレキソ印刷により低コストで印刷物を製造することができる。
模倣抑制デザインの一例を示す図である。 模倣抑制デザインに通常デザインを重ねた状態を示す図である。 模倣抑制デザインに通常デザインを重ねた状態を示す断面図である。 模倣抑制デザインをスキャニングした画像を示す図である。 模倣抑制デザインを有色インキで印刷した画像を示す図である。 模倣抑制デザインおよび通常デザインをスキャニングした画像を示す図である。 印刷物をデジタルカメラで撮影した画像を示す図である。
1…段ボール、2…模倣抑制デザイン(透明インキによる透明層)、3…通常デザイン(有色インキによる有色層)
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[実施例]
本実施例では、以下に説明する透明インキ(本発明における透明層形成材料)を用いて、段ボールに模倣抑制デザインを印刷した印刷物を製造した。
(1)透明インキの構成
本実施例の透明インキは、溶媒10重量%、体質顔料40重量%、水溶性樹脂(本発明における樹脂組成物)40重量%、樹脂エマルジョン10重量%、からなる。各材料の詳細を以下に説明する。
・溶媒:水
・体質顔料:炭酸カルシウム
・水溶性樹脂:ロジン変性マレイン酸樹脂25重量%と、水(溶媒)65重量%と、樹脂を水に溶解させるための塩基性化合物としてのトリエチルアミン10重量%と、の混合物
・樹脂エマルジョン:ロジン変性マレイン酸樹脂40重量%と水(溶媒)60重量%との混合物
透明インキは上記材料を攪拌混合して製造した。
(2)印刷方法
段ボール原紙にKライナーと中芯からなるBフルートのシートを使用した。印刷には通常段ボール印刷で使用されるフレキソフォルダーグルアーを使用し、上記(1)の透明インキ+有色インキの2色の3色を用意した。有色インキは、DF04赤、DF26スミ、を使用した。
印刷条件を以下の表1に示す。印刷環境は通常の段ボール印刷の環境と同等とした。
まず、透明インキを使用して、段ボール1上に模倣抑制デザイン2を印刷した。透明インキは印刷された後乾燥し、ロジン変性マレイン酸樹脂共重合体からなる透明被膜(本発明における透明層)を形成した。
図1に、透明インキを使用して印刷された模倣抑制デザイン2の一例を示す。この模倣抑制デザイン2は、JURA社のGSアートスクリーンを使用して作成した。このソフトは任意の文字や記号をランダムに配置させて、その集合体で絵柄を作成することができるソフトであり、より模倣が困難な絵柄を作成することができる。
続いて、有色インキを使用して、図2に示すように、模倣抑制デザイン2に重ねて通常デザイン3を印刷した。通常デザイン3を印刷した後の段ボール断面の模式図を図3に示す。通常デザイン3(有色インキ)は、模倣抑制デザイン2(透明インキ)上に印刷された領域と、段ボール1に直接印刷された領域と、が存在する。なお、この有色インキを使用して印刷された通常デザイン3が、本発明における有色層に相当する。
なお、これら模倣抑制デザイン2と通常デザイン3の印刷は、上記フレキソフォルダーグルアーを1回通すことで実施した。
このように印刷された模倣抑制デザイン2は、段ボール1に正面から向かって見るとほぼ目視できないが、段ボールを斜め傾け光を当てると形状が確認できた。また、通常デザイン3は、模倣抑制デザイン2に印刷された領域と、段ボール1に直接印刷された領域と、に一瞥してわかる差異は無く、いずれの領域においても良好に印刷できた。
(3)効果を確認する試験
上記印刷方法にて印刷された段ボールの模倣抑制デザインに対し、以下の方法により模倣を試みた。
(3−1)スキャニング試験
(3−1−1)
スキャナ(セイコーエプソン株式会社製 ES−6000HS)を使用し、解像度9600dpiで、透明インキで模倣抑制デザインを印刷した段ボールをスキャニングした。透明インキで印刷された模倣抑制デザインをスキャニングした画像を図4に示す。
なお参考として、図5に、有色インキにて印刷した本試験の模倣抑制デザインの画像を示す。
図4に示すように、透明インキで印刷された模倣抑制デザインは全くスキャニングできなかった。これは、スキャナが媒体に対して垂直方向から光を当てて反射したデータを読み込む機械であるため、垂直方向から画像を認識できない限り、読み込むことは不可能であるためであると考えられる。
(3−1−2)
段ボールに透明インキで模倣抑制デザインを印刷し、その上から有色インキで通常デザインを印刷したものを、上記スキャナにてスキャニングした。スキャニングした画像を図6Aに示す。図6Aにおいて段ボール上に模倣抑制デザインは写っておらず、スキャニングができなかったことがわかる。
また、比較例として、透明インキを一般的なニスに変更したものを、同様に上記スキャナにてスキャニングした。スキャニングした画像を図6Bに示す。図6Bには、図6Aに見られない模倣抑制デザインによる「NOCOPY」の文字の一部が写し出されており、スキャニングが可能であった(模倣抑制の効果が小さい)ことがわかる。
(3−2)デジタルカメラでの撮影実験
デジタルカメラを使用して斜めアングルから撮影を行った。図7A,7Bに、異なる段ボールに印刷した模倣抑制デザインを撮影した画像を示す。また図7Cに、参考として、有色インキで印刷した模倣抑制デザインを撮影した画像を示す。
デジタルカメラのアングルによっては、部分的に画像の撮影が可能となるが、その画像から複製に用いる画像データを抽出することはできない。
(4)真贋判定の手順
透明インキで模倣抑制デザインを作成し、さらに有色インキで通常デザインを印刷した段ボールと、その段ボールをスキャニングして作成された偽物の段ボールと、を判別するための真贋判定は、以下1〜3の手順だけで十分に機能できる。
1.透明インキで印刷されたデザインがあるか、ないか
2.透明インキで印刷したデザインが概要で合っているか
3.デザイン以外の隠し文字の有無
(5)発明の効果
上述した印刷物であれば、透明インキで印刷された模倣抑制デザインをスキャナにより読み取ることができないので、模倣抑制デザインの模倣を抑制することができる。それにより、当該模倣抑制デザインが形成された印刷物の偽物が製造されることを抑制できる。
また、上述した印刷物であれば、有色インキによる通常デザインによって、透明インキによる模倣抑制デザインを隠すことや模倣抑制デザインの形状を不明瞭にすることができるため、模倣抑制デザインの他者からの発見や模倣を抑制することができる。
また、この印刷物の印刷は、通常1台の印刷機にて印刷することができるため、通常の段ボール製造コストで印刷物を製造することができ、また従来の段ボール印刷の装置を変更せずに使用できることから、生産性が低下することも抑制できる。
(6)変形例
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることは言うまでもない。
例えば上記実施例では、透明インキ,水溶性樹脂,樹脂エマルジョンを構成する溶媒として水を用いる構成を例示したが、それ以外の溶媒を用いる構成であってもよい。例えば、水、グリセリン、グリコール、グリコール誘導体などを印刷環境に応じて選択的に単独若しくは併用することができる。上記グリコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコールなどのジオール化合物が利用でき、その誘導体としては、前記グリコールのメチル,エチル,プロピル,ブチル,ヘキシル,オクチルなどのアルキルエーテル化合物、酢酸エステル,酪酸エステルなどのエステル化合物、及びエステルエーテル化合物が利用できる。
なお、上述した透明インキ,水溶性樹脂,樹脂エマルジョンを構成する溶媒は、水0〜100重量%、グリセリン0〜80重量%、グリコールおよびグリコール誘導体の群から選択される1種以上の溶媒0〜50重量%の含有比率とするとよい。
また、上記実施例では、体質顔料として炭酸カルシウムを用いる構成を例示したが、通常、フレキソ凸版用印刷インキで使用される白色のものがそのまま使用できる。具体的には、炭酸カルシウム以外に、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク、酸化チタンなどを用いてもよい。なお、体質顔料はこれらのうち1種類のみを用いる構成であってもよいし、複数の混合物を用いる構成であってもよい。
また、上記実施例では、水溶性樹脂および樹脂エマルジョンを構成する樹脂として、ロジン変性マレイン酸樹脂を用いる構成を例示したが、ロジン変性マレイン酸樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、スチレン−アクリル系−マレイン酸系樹脂からなる群のうちから選択される樹脂を用いることができる。なお、水溶性樹脂および樹脂エマルジョンを構成する樹脂は、同じ樹脂であってもよいし、異なる樹脂であってもよい。
また、水溶性樹脂を構成する塩基性化合物としてトリエチルアミンを用いる構成を例示したが、それ以外の有機アミン化合物(モノエタノールアミン,トリエタノールアミン等)であってもよいし、無機塩基性化合物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム等)であってもよい。なお、塩基性化合物として有機アミン化合物を用いると、上記実施例のようにアルキルアンモニウム塩が生成される。一方、無機塩基性化合物を用いると、樹脂のケン化物が生成される。いずれが生成されても、上記実施例と同様に樹脂エマルジョンに含まれる樹脂の共重合体と共に透明層を形成することができ、また透明層表面に良好に有色インキを印刷させることができる。
また、水溶性樹脂における樹脂、水、および塩基性化合物の混合割合は、樹脂が15〜25重量%、水が60〜84重量%、塩基性化合物が1〜15重量%の範囲が良好である。
また、樹脂エマルジョンにおける樹脂と水との混合割合は、樹脂が40〜50重量%、水が50〜60重量%の範囲が良好である。
また、透明インキにおける各構成要素の含有比率は、溶媒が0〜30重量%、体質顔料が0〜50重量%、水溶性樹脂が20〜50重量%、樹脂エマルジョンが5〜20重量%の範囲が良好である。体質顔料は必ずしも含まれる必要はないが、体質顔料を含有することで、透明インキの乾燥性を向上させることができる。また、この透明インキには、顔料分散剤、ワックス、消泡剤、転移性向上剤、レベリング剤などの各種添加剤を添加してもよい。
また、透明インキには、紫外線吸収剤および赤外線吸収剤のうちいずれか一方または両方が含まれていてもよい。紫外線吸収剤が含まれている場合、紫外線を照射することにより紫外線吸収剤が発光して浮き出すため、容易に透明層の存在を確認することができる。また赤外線吸収剤が含まれている場合、赤外線を照射すると赤外線吸収剤が赤外線を吸収するため、赤外線吸収測定装置を用いることにより容易に透明層の存在を確認することができる。
そして、このように容易に透明層を確認することができるため、透明層を有する段ボールと、透明層を有さない偽物の段ボールとの真贋判定を容易に行うことができる。
なお、上記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、アクリレート系、サリチレート系等の紫外線吸収剤を用いることができる。具体的には2−(2‘−ヒドロキシー5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(チヌビンP、チバガイギー社製)、2−(2‘−ヒドロキシー3’−t−ブチルー5‘−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(チヌビン326、チバガイギー社製)、2-〔2−ヒドロキシ―3,5−ビス(α,α―ジメチルベンジル)〕フェニル〕―2H―ベンゾトリアゾール(チヌビン234、チバガイギー社製)等を挙げることが出来る。
また、赤外線吸収剤としては、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素、ジオール系色素、トリフェニルメタン系色素など赤外線吸収剤を用いることができる。具体的には金属ナフタロシアニン顔料が挙げられる。
また、上記実施例では、フレキソフォルダーグルアー1回の処理で透明インキと有色インキを印刷する構成を例示したが、別々に印刷してもよい。
また、上記実施例では、模倣抑制デザインと一部が重なるように通常デザインが印刷される構成を例示したが、模倣抑制デザイン全体を覆うように通常デザインが印刷されていてもよいし、模倣抑制デザインと重ならないように通常デザインが印刷されていてもよい。また、模倣抑制デザインのみを段ボールに印刷する構成であってもよい。
特に、模倣抑制デザイン全体を覆うように通常デザインが印刷されていることで、段ボール表面の模倣抑制デザインを通常デザインによって隠すことができるため、模倣抑制デザインの発見をさらに困難にすることができる。

Claims (17)

  1. 基材と、
    少なくとも樹脂エマルジョンおよび樹脂組成物を含有し、前記基材表面に配置される透明層と、を有しており、
    前記樹脂組成物は、樹脂を、有機アミン化合物および無機塩基性化合物のうち少なくともいずれか一方の存在下にて、水,グリセリン,グリコール,グリコール誘導体からなる群から選択される1種以上からなる溶媒に溶解させたものである
    ことを特徴とする印刷物。
  2. 前記樹脂エマルジョンは、ロジン変性マレイン酸樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、スチレン−アクリル系−マレイン酸系樹脂からなる群のから選択される1種以上の樹脂と、水,グリセリン,グリコール,グリコール誘導体からなる群から選択される1種以上からなる溶媒と、を含有するものである
    ことを特徴とする請求項1に記載の印刷物。
  3. 前記樹脂組成物における樹脂は、ロジン変性マレイン酸樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、スチレン−アクリル系−マレイン酸系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂である
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷物。
  4. 前記透明層は、体質顔料を含有する
    ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の印刷物。
  5. 前記基材表面および/または前記透明層表面における少なくとも一部の領域上に有色層が形成されてなる
    ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の印刷物。
  6. 前記有色層は、前記透明層表面を全て覆うように形成される
    ことを特徴とする請求項5に記載の印刷物。
  7. 前記透明層は、紫外線吸収剤を含有する
    ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の印刷物。
  8. 前記透明層は、赤外線吸収剤を含有する
    ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の印刷物。
  9. 基材表面に、樹脂エマルジョンおよび樹脂組成物を含有する透明層形成材料を塗布することで透明層を形成する透明層形成工程を備えており、
    前記樹脂組成物は、樹脂を、有機アミン化合物および無機塩基性化合物のうち少なくともいずれか一方の存在下にて、水,グリセリン,グリコール,グリコール誘導体からなる群から選択される1種以上からなる溶媒に溶解させたものである
    ことを特徴とする印刷物製造方法。
  10. 前記樹脂エマルジョンは、ロジン変性マレイン酸樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、スチレン−アクリル系−マレイン酸系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂と、水,グリセリン,グリコール,グリコール誘導体からなる群から選択される1種以上からなる溶媒と、を含有するものである
    ことを特徴とする請求項9に記載の印刷物製造方法。
  11. 前記樹脂組成物における樹脂は、ロジン変性マレイン酸樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、スチレン−アクリル系−マレイン酸系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂である
    ことを特徴とする請求項9または請求項10に記載の印刷物製造方法。
  12. 前記透明層形成材料は、体質顔料を含有する
    ことを特徴とする請求項9から請求項11のいずれかに記載の印刷物製造方法。
  13. 前記基材表面および/または前記透明層表面における少なくとも一部の領域上に有色層を形成する有色層形成工程を備える
    ことを特徴とする請求項9から請求項12のいずれかに記載の印刷物製造方法。
  14. 前記有色層は、前記透明層表面を全て覆うように形成される
    ことを特徴とする請求項13に記載の印刷物製造方法。
  15. 前記透明層形成材料は、紫外線吸収剤を含有する
    ことを特徴とする請求項9から請求項14のいずれかに記載の印刷物製造方法。
  16. 前記透明層形成材料は、赤外線吸収剤を含有する
    ことを特徴とする請求項9から請求項15のいずれかに記載の印刷物製造方法。
  17. 前記透明層形成工程は、フレキソ印刷により実行される
    ことを特徴とする請求項9から請求項16のいずれかに記載の印刷物製造方法。
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