JP5242195B2 - 二重平編部を有する筒状生地及びその編成方法 - Google Patents
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Description
ところで、ダブルベッドを有する編機(横編機など)やダブルの丸編機などを用いて、コース方向で適度に袋編みが混在したリピート型の編組織を編成させる方法が提案されている(特許文献1参照)。このような袋編み組織を備えた生地で衣類を製作すると、編組織中に空気層が内包されるので保温性を持たせられる、ということになっている。
口で表裏の結節が生じる)というのが、その編成方法である。
但し、この編成方法は、ダブルシリンダーの丸編機(2つのシリンダーが直列的に設けられたもの)を用いるものとされ、装備する編成針(シリンダ針)には両頭針が必要になっている。
保温性を高めるという意味において、ゴム編と平編とを混在させたような生地(特許文献2等で開示されたもの)では殆ど効果が得られないことは言うまでもない。
即ち、本発明に係る二重平編部を有する筒状生地は、シリンダに保持されて上下動するシリンダ針とシリンダ上のダイヤルに保持されて径方向に摺動するダイヤル針との両方を用いたゴム編を行って編成された筒状のゴム編部に対し、その所定領域に、シリンダ針だけで編成された平編部とダイヤル針だけで編成された平編部とが表裏で乖離した状態に保持される二重平編部が設けられ、当該二重平編部とゴム編部との連結部が編み方の切替で形成されることにより無縫製状態に仕上げられていると共に、前記二重平編部には各平編部相互間を連結する結節部が設けられており、この結節部は一方の平編部においてコース方向に並ぶ複数編目ごとに配置するものとし且つ当該平編部から他方の平編部へ向けてニットすることにより形成されていることを特徴とする。
すなわち、ゴム編部と二重平編部との間、或いは二重平編部の表と裏との間で、肌触りや保温性などの機能を異ならせた構成とする。このようにすることで、例えば看者側からの外観性と着用者側からの着心地とを、それぞれ最適な状態として持たせるようにしたり、着用者の部位(胸部と腹部となど)ごとに最適な機能を持たせるようにしたりできるものである。
ゴム編部は筒径がボディサイズとすることができる。このようにすることで、筒状生地としてそのまま(裁断や縫製などすることなく)身生地に利用できるので、生産性に優れ、低コストで且つ着心地に優れた衣類を製作することができる。
一方、本発明に係る二重平編部を有する筒状生地の編成方法は、シリンダまわりに分散配置された複数の給糸口に対応して形成される各ニッティングポイントで、シリンダに保持されて上下動するシリンダ針とシリンダ上のダイヤルに保持されて径方向に摺動するダイヤル針との両方を用いたゴム編を行って筒状のゴム編部を編み降ろしし、しかる後、所定の給糸口に対応するニッティングポイントではシリンダ針を停止させることによりダイヤル針だけによる平編を行わせると共に、上記以外の給糸口に対応するニッティングポイントではダイヤル針を停止させることによりシリンダ針だけによる平編を行わせるようにし、前記二重平編部の編成中に、所定の給糸口に対応するニッティングポイントにおいて停止中の針を単発的に編み位置まで動作させると共にすぐに元の停止状態に戻すことで二重平編部に対して点在的に表裏間を連結した結節部を形成させ、もってゴム編部に対する所定領域に、無縫製状態のまま、シリンダ針だけによる平編部とダイヤル針だけによる平編部とが表裏で乖離した二重平編部を設けるようにする。
また、結節部を形成させることで、二重平編部は表側の平編部と裏側の平編部とが必要以上に分離せず、両平編部相互間に形成される空気層は、その容量が極端に拡縮するようなことはない。そのため、空気層による保温効果が一定状態に保たれることになる。また表側の平編部と裏側の平編部とが面方向にズレることもないので、皺などの発生を防止できることになり、着崩れの防止に繋がり、また見栄え上も好適である。
結節部により二重平編部の外面に図柄を形成させるようにしてもよい。
このようにすることで、二重平編部の審美性を高めることができる。殊に、二重平編部において表側の平編部と裏側の平編部とで異なる色の糸を用いた場合、表側の糸色を背景としつつ裏側の糸色が結節部による図柄を表現する状態となり、図柄が顕著に浮かび上がるようになる。それだけ装飾性が際だつ(図柄の輪郭が明確になる)ものとなり、また目立った効果(強い印象性)が得られるようになる。
また本発明に係る二重平編部を有する筒状生地の編成方法により、保温性を十分に備えた衣類などを製作するのに好適に使用可能な筒状生地を、丸編機により高能率で編成することができる。
図1(a)及び(b)は、本発明に係る筒状生地1の第1実施形態を示している。また図2は、この筒状生地1を用いて製作した衣類2の一例を示している。
なお、図2に示した衣類2は肩ひも3を有するスリップ(アンダーウエアの一例)としてある。従って図例の衣類2を製作するために用いた筒状生地1は、筒径がボディサイズ(裁断や縫製を加えずに筒径をそのまま身生地に適用できるサイズ)であり、且つ18ゲージ以上の丸編機を用いて編成されたもの(アンダーウエアに適するように編み目が密となったもの)とした。
各筒状生地1は、ゴム編部5に対し、その所定領域に二重平編部6が無縫製で連結されたものとなっている。ゴム編部5は一重(一枚)の生地であるのに対し、二重平編部6は衣類2として表(外)を向く側の平編部6A(以下、必要に応じて「表側平編部6A」と言う)と、衣類2として裏(内)を向く側の平編部6B(以下、必要に応じて「裏側平編部6B」と言う)とを、互いに乖離させたまま二枚重ねにした生地である。
また、これらゴム編部5と二重平編部6とは、後述するように、編成途中で編み方の切替を行うことによって設けられている。両者が「無縫製で連結された」というのはこのような編成方法で実現されたものを言う。
なお、衣類2のなかにあって、二重平編部6は、着用者の胸部を覆うように上側に配置され、ゴム編部5がその下側に配置されている。
これに対して二重平編部6を形成している平編部6A,6Bは、いずれも、凸列のループだけで単一構成される面と凹列のループだけで単一構成される面とが表裏に分かれた編組織(一般に「天竺編」や「シングル生地」等と呼称された編組織と同じ)を有したものである。
また、表側平編部6A又は裏側平編部6Bのうち一方において、空間7に臨む面が凸列のループだけで単一構成される面であり、他方が凹列のループだけで単一構成される面であるものとしてもよい。
また、ゴム編部5と二重平編部6とが無縫製のまま連結されているので、この連結位置
に関しては、衣類2を製作する過程で縫着の必要がなく、従って当然に、凸状の縫着ラインが発生することもない。これらのことから、衣類2の製作に関して高生産性、低コスト、着用感の向上が図れるといった種々の利点がある。
ダイヤル14には、その上面で中心から放射状配置で多数本(シリンダ針17と同数)のダイヤル針19が径方向に沿って摺動自在に保持されている。このダイヤル14の上部には上部カムホルダー20が定置状態で設けられており、この上部カムホルダー20の下面に、ダイヤル針19に横移動(編成動作)を起こさせるためのダイヤルカムが設けられている。
シリンダ13及びダイヤル14の外径は、ボディサイズの筒状生地1を編成できるサイズに形成されている。またシリンダ13におけるシリンダ針17のゲージ数、及びダイヤル14におけるダイヤル針19のゲージ数は、いずれも18ゲージ以上とされている。
またシリンダ13のカムホルダー18に対しては、各給糸口30に対応する状態で、ステッチカム内のカム経路を変更可能にするスイングカムをはじめ、ニッティングポイントが形成される有効範囲内でシリンダ針17の動作量を可変にするステッチ量調整装置35や、シリンダ針17による編成の可否を選択可能にする選針機36が設けられている。
次に、上記丸編機10によって筒状生地1を編成する方法を説明する。
まず図6に示すように、全ての給糸口30に対応したニッティングポイントにおいてシリンダ針17とダイヤル針19との両方を用いたゴム編を行って、ゴム編部5を筒状に編み降ろす。
例では1番給糸口及び3番給糸口に相当)に対応するニッティングポイントでは、シリンダ針17を停止させることによりダイヤル針19だけによる平編を行わせ、これによって裏側平編部6Bを編成させる。
またこれ以外の給糸口30(図例では2番給糸口及び4番給糸口に相当)に対応するニッティングポイントでは、ダイヤル針19を停止させることによりシリンダ針17だけによる平編を行わせ、これによって表側平編部6Aを編成させる。
なお、この二重平編部6の編成中に、所定の給糸口30に対応するニッティングポイントにおいて停止中の針を単発的に編み位置まで動作させ、その後、すぐに元の停止状態に戻すようにする。これにより、二重平編部6に対して点在的に、表裏間を連結した結節部50を形成させることができる。
このような結節部50を形成させることで、二重平編部6は表側平編部6Aと裏側平編部6Bとが必要以上に間隔を広げるような分離状態とならない。すなわち、両平編部6A,6B相互間の空間7で形成される空気層は、その容量が極端に拡縮するようなことはない。そのため、空気層による保温効果が一定状態に保たれることになる。
二重平編部6を編成した後は、シリンダ針17だけで平編を行っている給糸口30(図例の2番給糸口及び4番給糸口)対応のニッティングポイントでは、停止中のダイヤル針19に編み動作を開始させて、シリンダ針17及びダイヤル針19の両方を用いたゴム編を行わせる。
これらにより、全ての給糸口30に対応したニッティングポイントにおいてシリンダ針17とダイヤル針19との両方を用いたゴム編が行われる状態に戻り、二重平編部6から無縫製状態のまま、ゴム編部5を編み降ろすことができる。
この編成方法で編成して得られた筒状生地1は、そのまま(裁断や縫製などすることなく)身生地に利用できるので、生産性に優れ、低コストで且つ着心地に優れた衣類2を製作することができる。
シリンダ13側の目移し部40についてその構成及び動作を簡単に説明する。図5に示すように、全てのシリンダ針17の下部側面には、下端が固定され上端が弾性屈曲自在な自由端として開放された鉤フック状のポケット部43が設けられている。
すなわち、シリンダ針17を上昇させた後、ダイヤル針19が突出動作すると、このダイヤル針19がシリンダ針17のポケット部43内へ横から挿入されるようになっている。そのため、この状態でシリンダ針17が下降すると、シリンダ針17に引っ掛けられていたループLはダイヤル針19側へ乗り移り、その後のダイヤル針19の退入によってダイヤル針19側へ引き取られることになる。
そのため、所定タイミングでダイヤル針19を摺動させ、このダイヤル針19に引っ掛けられていたループLをシリンダ針17側へ乗り移らせ、引き取らせることができる。
例えば、筒状生地1において、二重平編部6は筒状に編成すること(即ち、周方向に一周する形体)が限定されるものではなく、周方向で部分的な形体とすることも可能である。
このように、二重平編部6としての形体や度目、衣類2に対する配置、更には保温性を重視させたり通気性を重視させたり等の機能は、適宜変更可能なものである。
二重平編部6を編成する際に、シリンダ13側のステッチ量調整装置35やダイヤル14側のステッチ量調整装置37を巧みに使用して、二重平編部6としての一部(コース方向及びウエール方向における所定範囲)又は二重平編部6の全体にわたり、他よりループ長を大きくさせ、もって該当箇所を他より立体的に膨出させるように編成することもできる。
ゴム編部5、表裏の各平編部6A,6Bのうち、少なくとも一つの編部が、他の編部と異なる糸により編成された構成とすることができる。すなわち、ゴム編部5と二重平編部6との間、或いは二重平編部6の表と裏(6A,6B)との間で、肌触りや保温性などの機能を異ならせた構成とする。
最適な機能を持たせるようにしたりできるものである。
なお、このように編部によって糸を異ならせるには、ストライパー22(給糸切替装置)によりシリンダ13側及びダイヤル14側へ給糸する糸種(短繊維であるか長繊維であるかに限定されない)を切り替えるようにすればよい。
5 ゴム編部
6 二重平編部
6A 平編部(シリンダ針だけで編成されたもの)
6B 平編部(ダイヤル針だけで編成されたもの)
13 シリンダ
14 ダイヤル
17 シリンダ針
19 ダイヤル針
30 給糸口
50 結節部
Claims (7)
- シリンダ(13)に保持されて上下動するシリンダ針(17)とシリンダ(13)上のダイヤル(14)に保持されて径方向に摺動するダイヤル針(19)との両方を用いたゴム編を行って編成された筒状のゴム編部(5)に対しその所定領域に、シリンダ針(17)だけで編成された平編部(6A)とダイヤル針(19)だけで編成された平編部(6B)とが表裏で乖離した状態に保持される二重平編部(6)が設けられ、当該二重平編部(6)とゴム編部(5)との連結部が編み方の切替で形成されることにより無縫製状態に仕上げられていると共に、前記二重平編部(6)には各平編部(6A,6B)相互間を連結する結節部(50)が設けられており、この結節部(50)は一方の平編部においてコース方向に並ぶ複数編目ごとに配置するものとし且つ当該平編部から他方の平編部へ向けてニットすることにより形成されていることを特徴とする二重平編部を有する筒状生地。
- 前記ゴム編部(5)、表裏の各平編部(6A,6B)のうち、少なくとも一つの編部が他の編部と異なる糸により編成されていることを特徴とする請求項1記載の二重編成部を有する筒状生地。
- 前記ゴム編部(5)は筒径がボディサイズであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の二重平編部を有する筒状生地。
- 前記ゴム編部(5)は18ゲージ以上の丸編機を用いて編成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の二重平編部を有する筒状生地。
- シリンダ(13)まわりに分散配置された複数の給糸口(30)に対応して形成される各ニッティングポイントで、シリンダ(13)に保持されて上下動するシリンダ針(17)とシリンダ(13)上のダイヤル(14)に保持されて径方向に摺動するダイヤル針(19)との両方を用いたゴム編を行って筒状のゴム編部(5)を編み降ろしし、
しかる後、
所定の給糸口(30)に対応するニッティングポイントではシリンダ針(17)を停止させることによりダイヤル針(19)だけによる平編を行わせると共に、上記以外の給糸口(30)に対応するニッティングポイントではダイヤル針(19)を停止させることに
よりシリンダ針(17)だけによる平編を行わせるようにし、
前記二重平編部(6)の編成中に、所定の給糸口(30)に対応するニッティングポイントにおいて停止中の針を単発的に編み位置まで動作させると共にすぐに元の停止状態に戻すことで二重平編部(6)に対して点在的に表裏間を連結した結節部(50)を形成させ、
もって筒状のゴム編部(5)に対する所定領域に、無縫製状態のまま、シリンダ針(17)だけによる平編部(6A)とダイヤル針(19)だけによる平編部(6B)とが表裏で乖離した二重平編部(6)を設ける
ことを特徴とする二重平編部を有する筒状生地の編成方法。 - シリンダ針(17)だけによる平編とダイヤル針(19)だけによる平編とを行って二重平編部(6)を編成した後、
シリンダ針(17)だけで平編を行っている給糸口(30)対応のニッティングポイントでは停止中のダイヤル針(19)に編み動作を開始させてシリンダ針(17)及びダイヤル針(19)の両方を用いたゴム編を行わせる共に、
ダイヤル針(19)だけで平編を行っている給糸口(30)対応のニッティングポイントでは停止中のシリンダ針(17)に編み動作を開始させてシリンダ針(17)及びダイヤル針(19)の両方を用いたゴム編を行わせるようにし、
もって二重平編部(6)から無縫製状態のままゴム編部(5)を編み降ろす
ことを特徴とする請求項5記載の二重平編部を有する筒状生地の編成方法。 - 前記結節部(50)により二重平編部(6)の外面に図柄を形成させることを特徴とする請求項6記載の二重平編部を有する筒状生地の編成方法。
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