〔梱包材〕
本発明の梱包材を構成する不織布は、熱収縮率の異なる複数の樹脂の相構造を形成した複合繊維(捲縮性複合繊維)を含み、この複合繊維は主に面方向に配向し、この配向軸に沿ってコイル状に平均曲率半径20〜200μmで捲縮して、各繊維が略均一に交絡していることが好ましい。さらに、この不織布は、詳細は後述するように、前記複合繊維とを含むウェブに高温(過熱または加熱)水蒸気を作用させて、複合繊維に捲縮を発現し、繊維同士を機械的に絡み合わせることにより得られる。すなわち、複合繊維の捲縮による交絡によって、伸縮性、クッション性、柔軟性そして自着性を発現している。
(潜在捲縮性複合繊維)
捲縮性複合繊維を形成する複合繊維は、複数の樹脂の熱収縮率の違いに起因して、加熱により捲縮を生じる非対称又は層状(いわゆるバイメタル)構造を有する繊維(潜在捲縮性複合繊維)から得られる。複数の樹脂は、通常、軟化点が異なる。複数の樹脂は、例えば、ポリオレフィン系樹脂(低密度、中密度又は高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのC2〜C4のオレフィン単位を有するポリオレフィン系樹脂など)、アクリル系樹脂(アクリロニトリル−塩化ビニル共重合体などのアクリロニトリル単位を有するアクリロニトリル系樹脂など)、ポリビニルアセタール系樹脂(ポリビニルアセタール樹脂など)、ポリ塩化ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体など)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体など)、スチレン系樹脂(耐熱ポリスチレンなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂などのC2〜C4のアルキレン単位を有するポリアルキレンアリレート系樹脂など)、ポリアミド系樹脂(ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612などの脂肪族ポリアミド系樹脂、半芳香族ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンイソフタルアミド、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリp−フェニレンテレフタルアミドなどの芳香族ポリアミド系樹脂など)、ポリカーボネート系樹脂(ビスフェノールA型ポリカーボネートなど)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂(セルロースエステルなど)などの熱可塑性樹脂から選択してもよい。さらに、これらの各熱可塑性樹脂には、共重合可能な他の単位が含まれていてもよい。
これらの樹脂のうち、本発明では、高温水蒸気で加熱処理しても溶融又は軟化して繊維が融着しない点から、軟化点は融点が100℃以上の非湿熱接着性樹脂(又は耐熱性樹脂又は疎水性樹脂)、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂が好ましく、特に、耐熱性や繊維形成性などのバランスに優れる点から、芳香族ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂が好ましい。潜在捲縮性複合繊維または捲縮性繊維による融着が起こると捲縮が十分発現せず、捲縮性繊維本来のクッション性が不十分となる場合があるので、本発明では、高温水蒸気で処理しても捲縮性複合繊維による融着が起こらないように、複合繊維の表面に露出する樹脂は非湿熱接着性繊維であるのが好ましい。
複合繊維を構成する複数の樹脂は互いに熱収縮率が異なっていればよく、同系統の樹脂の組み合わせであっても、異種の樹脂の組み合わせであってもよいが、密着性の点から、同系統の樹脂の組み合わせで構成されているのが好ましい。同系統の樹脂を組み合わせる場合、通常、単独重合体(必須成分)を形成する成分(A)と、変性重合体(共重合体)を形成する成分(B)との組み合わせが用いられる。すなわち、必須成分である単独重合体に対して、例えば、結晶化度や軟化点(融点またはガラス転移点)を低下させる共重合性単量体を共重合させて変性する事により、単独重合体よりも結晶化度を低下させるか、非晶性とし、単独重合体よりも軟化点を低下させてもよい。このように、結晶性、軟化点を変化させることにより、熱収縮率に差異を設けてもよい。軟化点の差は、例えば、5〜150℃、好ましくは50〜130℃、さらに好ましくは70〜120℃程度であってもよい。変性に用いられる共重合性単量体の割合は、全単量体に対して、例えば、1〜50モル%、好ましくは2〜40モル%、さらに好ましくは3〜30モル%(特に5〜20モル%)程度である。単独重合体を形成する成分と変性重合体を形成する成分との複合比率(質量比)は、繊維の構造に応じて選択できるが、例えば、単独重合体成分(A)/変性重合体成分(B)=90/10〜10/90、好ましくは70/30〜30/70、更に好ましくは60/40〜40/60程度である。
本発明では、潜在捲縮性の複合繊維を製造しやすい点から、複合繊維は芳香族ポリエステル系樹脂の組み合わせ、特に、ポリアルキレンアリレート系樹脂(a)と変性ポリアルキレンアリレート系樹脂(b)との組み合わせであってもよい。特に、本発明では、ウェブ形成後に捲縮を発現するタイプが好ましく、この点からも前記組み合わせが好ましい。
ポリアルキレンアリレート系樹脂(a)は、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸などの対称型芳香族ジカルボン酸など)とアルカンジオール成分(エチレングリコールやブチレングリコールなどC3〜C6のアルカンジオールなど)との単独重合体であってもよい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)などのC2〜C4のアルキレン単位を有するポリアルキレンテレフタレート系樹脂などが使用され、通常、固有粘度0.6〜0.7程度の一般的なPET繊維に用いられるPETが使用される。
一方、変性ポリアルキレンアリレート系樹脂(b)では、必須成分である前記ポリアルキレンアリレート系樹脂(a)の軟化点、結晶化度を低下させる共重合成分、例えば、非対称型芳香族ジカルボン酸、指環族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸などのジカルボン酸成分や、ポリアルキレンアリレート系樹脂(a)のアルカンジオールよりも鎖長の長いアルカンジオール成分及び/又はエーテル結合含有ジオール成分が使用できる。これらの共重合性分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの成分のうち、ジカルボン酸成分として、対称性が低い芳香族カルボン酸(イソフタル酸、フタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸など)、脂肪族ジカルボン酸(アジピン酸などのC6〜C12の脂肪族ジカルボン酸)などが汎用され、ジオール成分として、アルカンジオール(1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどC3〜C6のアルカンジオールなど)、(ポリ)オキシアルキレングリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのC2〜C4のアルキレン単位を有するポリオキシアルキレングリコールなど)などが汎用される。これらのうち、イソフタル酸などの対称性が低い芳香族ジカルボン酸、ジエチレングリコールなどのC2〜C4のアルキレン単位を有するポリオキシアルキレングリコールなどが好ましい。さらに、変性ポリアルキレンアリレート系樹脂(b)は、C2〜C4のアルキレン基を有するアルキレンアリレート(エチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレートなど)をハードセグメントとし、(ポリ)オキシアルキレングリコールなどをソフトセグメントとするエラストマーであってもよい。
変性ポリアルキレンアリレート系樹脂(b)において、ジカルボン酸成分として、軟化点を低下させるためのジカルボン酸成分(例えば、イソフタル酸など)の割合は、ジカルボン酸成分の全量に対して、例えば、1〜50モル%、好ましくは5〜50モル%、さらに好ましくは15〜40モル%程度である。ジオール成分として、軟化点を低下させるためのジオール成分(例えば、ジエチレングリコールなど)の割合は、ジオール成分の全量に対して、例えば、30モル%以下、好ましくは10モル%以下(例えば0.1〜10モル%程度)である。共重合成分の割合が低すぎると、十分な捲縮が発現せず、捲縮発現後の不織繊維の形態安定性と伸縮性とが低下する。一方、共重合成分の割合が高すぎると、捲縮発現性能は高くなるが、安定的に紡糸する事が困難となる。
変性ポリアルキレンアリレート系樹脂(b)は、必要に応じて、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸成分、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどのポリオール成分などを併用して分岐させてもよい。
潜在捲縮性複合繊維及び/または捲縮性複合繊維の横断面形状(繊維の長さ方向に垂直な断面形状)は、一般的な中実断面形状である丸型断面や異形断面〔扁平状、楕円状、多角形状、3〜14葉状、T字状、H字状、V字状、ドッグボーン(I字状)など〕に限定されず、中空断面状などであってもよいが、通常、丸型断面である。
潜在捲縮性複合繊維及び/または捲縮性複合繊維の横断面構造としては、複数の樹脂に形成された相構造、例えば、芯鞘型、海島型、ブレンド型、並列型(サイドバイド型又は多層貼合型)、放射型(放射状貼合型)、中空放射型、ブロック型、ランダム複合型などの構造が挙げられる。これらの横断面構造のうち、加熱により自発捲縮を発現させ易い点から、相部分が隣り合う構造(いわゆるバイメタル構造)や、相構造が非対称である構造、例えば、偏芯芯鞘型、並列型構造が好ましい。
なお、潜在捲縮性複合繊維及び/または捲縮性複合繊維が偏芯芯鞘型などの芯鞘型構造である場合、表面に位置する鞘部の非湿熱性接着性樹脂と熱収縮差を有し捲縮可能であれば、芯部は湿熱接着性樹脂(例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体やポリビニルアルコールなどのビニルアルコール系重合体など)や、低い軟化点を有する熱可塑性樹脂(例えば、ポリスチレンや低密度ポリエチレンなど)で構成されていてもよい。
潜在捲縮性複合繊維及び/または捲縮性複合繊維の繊度は、0.1〜50dtexの範囲から選択でき、好ましくは0.5〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtex(特に1.5〜3dtex)程度である。繊度が低すぎると、繊維そのものが製造し難くなることに加え、繊維強度を確保し難い。また、捲縮を発現させる工程において、綺麗なコイル状捲縮を発現させ難くなる。一方、繊度が高すぎると、繊維が剛直となり、十分な捲縮を発現し難くなる。なおここでいう繊度は不織布を形成する複合繊維の平均繊度である。
潜在捲縮性複合繊維及び/または捲縮性複合繊維の平均繊維長は、例えば、10〜100mm程度の範囲から選択でき、好ましくは20〜80mm、さらに好ましくは25〜75mm(特に40〜60mm)程度である。繊維長が短すぎると、繊維ウェブの形成が難しくなることに加え、捲縮を発現させる工程において、繊維同士の交絡が不十分となり、強度及び伸縮性の確保が困難となる。また、繊維長が長すぎると、均一な目付の繊維ウェブを形成することが難しくなるばかりか、ウェブ形成時点で繊維同士の交絡が多く発現し、捲縮を発現する際にお互いに妨害し合って柔軟性及びクッション性の発現が困難となる。
潜在捲縮性複合繊維は、熱処理を施す事により、捲縮が発現(顕在化)し、略コイル状(螺旋状又はつるまきバネ状)の立体捲縮を有する捲縮性複合繊維となる。
加熱前の捲縮数(機械捲縮数)は、例えば、0〜30個/25mm、好ましくは1〜25個/25mmさらに好ましくは5〜20個・25mm程度である。加熱後の捲縮数は、例えば、30個/25mm以上(例えば、30〜200個/25mm)であり、好ましくは35〜150個/25mm、さらに好ましくは40〜120個/25mm程度であり、45〜120個/25mm(特に50〜100個/25mm)程度であってもよい。
本発明の不織布の製造に用いることができる潜在捲縮性複合繊維は、繊維ウェブとしたのち、高温水蒸気で捲縮することで、不織繊維内部で略均一に捲縮することができる。
本発明の不織布において熱により発現した捲縮を任意の面方向長5mm、厚み方向0.2mmの範囲を観察すると、1周以上のコイルスプリングを形成している繊維の数は、例えば、通常5〜50本であり、好ましくは5〜40本、さらに好ましくは10〜40本である。
本発明では、捲縮性複合繊維の不織布内部において発現する(表面付近から中心部に亘る)、捲縮数が略均一であることで、ゴムやエラストマーを含んでいなくても、高い柔軟性及びクッション性を有するとともに、粘着剤を含んでいなくても、実用的な強度を有するうえで一層好ましい。なお、本願明細書において、「厚み方向に三等分した領域」とは、不織布の厚み方向に対して直交する方向にスライスして三等分した各領域のことを意味する。
さらに、本発明の不織布の内部において発現する捲縮の均一性は、例えば、厚み方向において、繊維湾曲率の均一性によっても評価できる。繊維湾曲率とは、繊維(捲縮した状態の繊維)の両端の距離(L1)に対する繊維長(L2)の比(L2/L1)であり、例えば、1.3以上(例えば、1.35〜5)、好ましくは1.4〜4(例えば、1.5〜3.5)、さらに好ましくは1.6〜3(特に1.8〜2.5)程度である。なお、本発明では、後述するように、不織布の電子顕微鏡写真に基づいて繊維湾曲率を測定するため、前記繊維長(L2)は三次元的に捲縮した繊維を引き延ばして直線状にした繊維長(実長)ではなく、写真に写った二次元的に捲縮した繊維を引き延ばして直線状にした繊維長(写真上の繊維長)は、実際の繊維長よりも短く計測される。
さらに、捲縮性複合繊維を混綿した場合においては、不織布の内部において、略均一に捲縮が発現するため、繊維湾曲率が均一である。本発明では、コイル状捲縮発現後の繊維湾曲率の均一性は例えば、不織布の厚み方向の断面において、厚み方向に三等分した各々の層における繊維湾曲率の比較によって評価できる。すなわち、厚み方向の断面において、厚み方向に三等分した各々の領域によって評価できる。すなわち、厚み方向の断面において、厚み方向に三等分した各々の領域における繊維湾曲率はいずれも前記範囲にあり、各領域における繊維湾曲率の最大値に対する最小値の割合(繊維湾曲率が最大の領域に対する最小の領域の比率)が例えば、75%以上(例えば、75〜100%)、好ましくは80〜99%、さらに好ましくは82〜98%(特に85〜97%)程度である。
繊維湾曲率及びその均一性の具体的な測定方法としては、不織布の断面を電子顕微鏡写真で撮影し、厚み方向に三等分した各領域から選択した領域について繊維湾曲率を測定する方法が用いられる。測定する領域は、三等分した表層(表面域)、内層(中央域)、裏層(裏面域)の各層について、長さ方向2mm以上の領域で測定を行なう。また、各測定領域の厚み方向については、各層の中心付近において、それぞれの測定領域が同じ厚み幅を有するように設定する。さらに、各測定領域は、厚み方向において平行で、かつ各測定領域内において繊維湾曲率を測定可能な繊維片が100本以上(好ましくは300本以上、さらに好ましくは500〜1000本程度)含まれるように設定する。これらの各測定領域を設定した後、領域内の全ての繊維の繊維湾曲率を測定し、各測定領域ごとに平均値を算出した後、最大の平均値を示す領域と、最小の平均値を示す領域との比較により繊維湾曲率の均一性を算出する。
不織布を構成する捲縮性複合繊維は、前述の如く、熱処理により略コイル状の捲縮を発現する。この捲縮性複合繊維のコイルで形成される曲線の平均曲率半径は、例えば、10〜250μm程度の範囲から選択でき、例えば、20〜200μm(例えば、50〜200μm)、好ましくは50〜160μm(例えば、60〜150μm)、さらに好ましくは70〜130μm程度である。ここで、平均曲率半径は、捲縮性複合繊維のコイルにより形成される曲線のカーブの大きさの平均を表す指標であり、この値が大きい場合は、形成されたコイルがルーズな形状を有し、言い換えれば捲縮数の少ない形状を有していることを意味する。また、捲縮数が少ないと、繊維同士の交絡も少なくなるため、十分なクッション性及び柔軟性を発現するためには不利となる。逆に、平均曲率半径が小さすぎるコイル状捲縮を発現させた場合は、繊維同士の交絡が十分行われず、ウェブ強度を確保することが困難となるばかりか、このような捲縮を発現する潜在捲縮性複合繊維の製造も非常に難しくなる。
コイル状に捲縮した捲縮性複合繊維において、コイルの平均ピッチは、例えば、0.03〜0.5mm、好ましくは0.04〜0.3mm、さらに好ましくは0.05〜0.2mm程度である。
本発明の不織布には、これらの複合繊維に加えて、前記複合繊維の特性を損なわない範囲で、他の繊維が含まれていてもよい、他の繊維としては、例えば、先に例示された非湿熱接着性樹脂で構成された繊維、潜在捲縮性複合繊維の他、セルロース系繊維〔例えば、天然繊維(木綿、羊毛、絹、麻など)、半合成繊維(トリアセテート繊維などのアセテート繊維など)、再生繊維(レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル(例えば、登録商標名:「テンセル」など)など)など〕、無機繊維(例えば、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維など)などが使用できる。他の繊維の平均繊度及び平均繊維長は潜在捲縮性複合繊維と同様である。これら他の繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これら他の繊維のうち、レーヨンなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などが好ましい。特に潜在捲縮性複合繊維がポリエステル系繊維である場合、他の繊維もポリエステル系繊維であってもよい。
他の繊維の割合は、不織布全体に対して、例えば、20質量%以下、好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下(例えば、0.1〜5質量%程度)である。
不織布は、さらに、慣用の添加剤、例えば、安定剤(胴化合物などの熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤など)、抗菌剤、消臭剤、香料、着色剤(染顔料など)、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、潤滑剤、結晶化速度遅延剤などを含有していてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤は、繊維表面に坦持されていてもよく、繊維中に含まれていてもよい。
(不織布の特性)
本発明の不織布は、前記繊維で構成されたウェブから得られる不織繊維構造を有しており、その外部形状は用途に応じて選択できるが、通常、テープ状またはシート状である。
本発明の不織布を構成する殆ど(大部分)の繊維(コイル捲縮繊維の軸芯方向)が不織布面(シート面)に対して略並行に配向されているのが望ましい。なお、本願明細書では、「面方向に配向している」とは、繊維の長手方向が厚さ方向よりも面方向に近い方向を向いている複合繊維を指し、実質的に全ての複合繊維が面方向に配向している。例えば、ニードルパンチによる交絡のように、局部的に多数の繊維が厚み方向に沿って配向している部分が繰り返し存在しない状態を意味する。不織繊維からなるウェブをニードルパンチで交絡させると、厚み方向に沿った繊維の比率が高くなるため、不織布の面方向への変形が困難となり、大きな荷重をかけて変形させると、元の形状に戻らなくなる。従って、繊維を平行に配列させる点からは、ニードルパンチによる繊維の交絡の程度を低減するか、交絡しないのが好ましい。すなわち、本発明の不織布を用いて梱包後に潜在捲縮を発現させる場合には、この梱包作業に支障をきたさない程度に軽度な繊維交絡(ニードルパンチ等)が可能である。
さらに、不織布を形成する捲縮性複合繊維がシート面に対して平行して配列している場合、隣接又は交差する繊維は、捲縮コイル部で互いに交絡しているが、不織繊維の厚み方向(又は斜め方向)でも、軽度に繊維が交絡している。特に、本発明では、不織布において、ウェブ形成後に、コイル状に収縮する過程で繊維が交絡し、交絡したコイル部により繊維が適度に拘束されている。
一方、不織布において、厚み方向(シート面に対し垂直方向)に配向している繊維が多く存在すると、この繊維もコイル状の捲縮を形成することとなるため、不織繊維同士が極めて複雑に絡み合うこととなる。その結果、他の繊維を必要以上に拘束又は固定し、さらに繊維を構成するコイルの伸縮を阻害するため、基材全体の柔軟性、ひいてはクッション性を低減させる。従って、できるだけ繊維をシート面に対して平行に配向させるのが望ましい。
更に、コイル状に捲縮した複合繊維は、その長さ方向へに加えられた力に対し、変形しやすく戻り難いが、コイル側面方向からの力に対しては、変形し難く、変形しても戻りやすいため、形態維持性とクッション性の確保に好適である。また複合繊維が面内の一方向に配向していると不織布全体の変形性、自着性に方向依存性が現れる。特に伸縮性の高い方向に沿って物品に巻きつけると密着性が高まり、また自着性も高い。このような方向性は製造工程のウェブ形成時に調節することができる。
本発明の不織布は、繊維間に生ずる空隙を有している。これらの空隙は、スポンジのような樹脂発泡体と異なり各々が独立した空隙ではなく連続しているため、通気性を有している。本発明の基材の通気度は、フラジール形法による通気度で0.1cm3/cm2・秒以上(例えば、0.1〜300cm3/cm2・秒)、好ましくは0.5〜250cm3/cm2・秒(例えば1〜250cm3/cm2・秒)、さらに好ましくは5〜200cm3/cm2・秒程度であり、通常、1〜100cm3/cm2・秒)程度である。通気度が小さすぎると、基材に空気を通過させるために外部から圧力を加える必要が生じ、自然な空気の出入りが困難となる。一方、通気度が大きすぎると、通気性は高くなるが、基材内の繊維空隙が大きくなりすぎ、クッション性が低下する。本発明では、このような高い通気性を有するため、着用しても蒸れることなく快適に利用できる。
本発明の不織布の密度は、具体的には、見掛密度、0.01〜0.20g/cm3の範囲から選択でき、好ましくは0.05〜0.15g/cm3、さらに好ましくは0.08〜0.12g/cm3程度である。見掛密度が低すぎると、形態安定性が低下し、梱包した時に伸びの大きい部分の繊維密度が希薄になったり、破断しやすくなる。また、逆に高すぎると、形態安定性は確保できるものの、伸縮性やクッション性、自着性が低下する。
本発明では、特に、面方向(又は長手方向)において、複数の低密度部と複数の高密度部とが配列されているのが好ましく、周期的に交互に配向されているのが好ましい。このような規則的であってもよい密度差を設けることにより、本発明の不織布は、手切れ性を確保しながらも、伸縮性を有する事が可能となる。低密度部及び高密度部の構造については、周期的に交互に形成されていれば特に限定されないが、不織布がテープ状または帯状である場合、長さ方向に沿って交互に形成された縞模様であってもよいが、網目状または格子状(千鳥状)に交互に形成された構造が好ましい。網目状又は格子状構造の場合、低密度部と高密度部との面積比は異なっていてもよく(例えば、低密度部/高密度部(%)=90/10〜10/90、好ましくは70/30〜30/70程度)から選択でき、略同程度の面積比であってもよい。各部の平均幅は、例えば0.1〜10mm、好ましくは0.5〜5mm、更に好ましくは1〜3mm程度である。
加熱前の不織布(繊維ウェブ)の目付は、例えば10〜200g/m2、好ましくは20〜100g/m2程度である。繊維ウェブの目付が小さすぎると充分な物性が得られず、一方、大きすぎると均一な捲縮が発現しない場合がある。
本発明の不織布の目付(加熱後の目付)は用途に応じて、例えば、10〜300g/m2程度の範囲から選択でき、好ましくは20〜250g/m2、さらに好ましくは30〜200g/m2(特に50〜150g/m2)程度である。目付が小さすぎると、伸縮性や形態安定性を確保することが難しく、また、目付が大きすぎると、例えば湿熱加工によって複合繊維を捲縮、交絡させて不織布を得る場合、ウェブが厚すぎて高温水蒸気が十分にウェブ内部に入り込めず、厚み方向に融着や捲縮が均一な不織布とするのが困難になる。
また、不織布の厚みは、例えば0.1〜10mm程度の範囲から選択でき、例えば、0.2〜5mm、好ましくは0.3〜3mm、更に好ましくは0.4〜1.5mm程度である。目付や厚みがこの範囲にあると、不織布の伸縮性と切断性とのバランスが良くなる。
本発明の不織布は、少なくとも一方向(例えば、テープ状の場合の長さ方向など)において、破断伸度が50%以上であってもよく、好ましくは60%以上(例えば、60〜300%)、更に好ましくは80%以上(例えば80〜250%)程度である。破断伸度がこの範囲にあると、不織布の伸縮性が高く、梱包材として使用した場合に、梱包対象となる物体の複雑な形状に対応して密着した状態での梱包が可能である。
本発明の不織布は、少なくとも一方向において、50%伸長後における回復率(50%伸長回復率)が70%以上(例えば、70〜100%)であってもよく、例えば、80%以上(例えば、80〜100%)、好ましくは90%以上(例えば90〜100%)、更に好ましくは、95%以上(例えば、95〜100%)である。伸長回復率がこの範囲にあると、伸長に対する追従性が向上し、梱包材として物品を梱包した場合に、その物品の形状に充分追従するとともに、重ねた不織布同士の摩擦によって適度な固定及び締め付けが可能になる。特に巻き付けて数枚の不織布と重ねると、摩擦による固定力が全体として回復応力に対応し、目付を高めるのと類似の挙動を示す。すなわち、伸長回復率が小さい場合には、使用箇所が複雑な形状をしていたり、輸送中に動いたりした場合不織布がその動きに追従できず、また、変形した箇所が元に戻らず、該部の固定が弱くなる。
本発明の不織布は、少なくとも一方向における50%伸長回復挙動において、最初の50%伸長挙動における25%伸長時応力(伸び応力(X))と50%伸長後の戻り挙動における25%伸長時の戻り応力(回復応力(Y))との比(Y/X)が0.05以上であってもよく、例えば、0.1以上、好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.4以上(特に0.5〜1.0)程度である。この比率が高いと、不織布を伸ばした後の戻り時応力を高く保持でき、梱包材として巻きつけた際により強く固定できる。この比率が低いと、戻り時応力が低く、固定力が低下し、梱包材としての用途に適さない。
本発明の不織布は、自着性(粘着剤などを用いることなく、不織布同士の接触により接合または交絡して拘束または掛止可能な特性)にも優れており、梱包材として適している。詳しくは、梱包材として使用したとき、梱包材を被梱包物品に一度巻き付けたのち、その端部を重ねる(又は引きちぎって重ねる)という動作により、巻かれた不織布同士が伸ばされながら押し付けられて不織布同士が接合して固定され、自着性を発現する。この場合において、接合部の不織布同士は、不織布の破断強度以上の強さで接合していることが理想的である。しかし、実用上は梱包される物品の状態に応じて巻き方を変化させる場合が多く、巻き方が変化した場合には、摩擦力の向上などにより、固定力が向上するため、接合部の強度が破断強度より小さくとも、実用上は梱包材の固定が可能である。また、接合部の強度の実測も困難である。そこで、本発明では、この自着性の評価方法として「曲面滑り応力」を用いた。不織布を梱包材として用いた際に所定の自着性を有し、実用上問題のない程度に使用可能とするには、曲面滑り応力が0.5N/50mm以上であるのが好ましく、更に好ましくは1.0N/50mm以上(特に3.0N/50mm以上)である。この応力は梱包材の自着性に大きく関係し、大きいほど、梱包材を目的の物品に巻き付けて引きちぎった後、強固に固定できる。したがって、この応力が小さすぎると、不織布を充分に固定できず、端部から徐々にほどけてしまう。なお、曲面滑り応力は、引張試験機を用いて、後述する実施例に記載の方法により測定する。
更に、不織布の表面に一部遊離する状態で形成されたコイル又はループ状繊維の数が多く存在する事により固定性が向上する。更に梱包する対象物に巻き付けた後に梱包材を切断した場合、切断箇所におけるフリーな繊維(切断によって露出され、又は端部が形成された遊離繊維)が、重ね合わせる相手方における不織布表面のコイル又はループ状繊維に対し、より自由交絡することが可能となるため、特に優れた自着性が発現する。不織布表面に存在するコイル又はループ状繊維の本数は、例えば、1cm2あたり7本以上、好ましくは8〜50本、更に好ましくは9〜45本(特に10〜40本)程度である。なお、本発明では、コイル又はループ状繊維の本数の具体的な測定方法は、実施例において記載された測定方法を用いる。
さらに、本発明の不織布は、少なくとも一方向(例えば、長手方向)において、破断強度は、例えば、15〜100N/50mm、好ましくは20〜95N/50mm、更に好ましくは30〜85N/50mm程度である。破断強度は手切れ性に大きく関係し、本発明の不織布は手で切断できることが特徴であるが、梱包材としての使用において、引裂きに対する「ねばり」も保持する必要がある。この「ねばり」とは、使用中に引裂きのきっかけとなる切れ目などが発生した時、この切れ目を起点として簡単に裂けるのが抑制されることを意味する。すなわち、引き裂きが始まると容易に破断に移行するため、最終的な手切れ性は破断強度に依存するといえる。従って、この破断強度が大きすぎると、手で切断するのが困難になる。また、小さすぎると強度が不足して容易に破断し、取扱性が低下する。
特に、梱包材として強固に梱包する対象の物品を固定する必要がある場合、梱包材を巻き付けた後、その長さ方向に沿って伸展しながら必要量巻き付けた後に切断し、その切断端を固定するために十分な強度が必要であるため、梱包材の長さ方向において、前記破断強度の範囲を満たすのが好ましい。特に、梱包する物品が平面のみからなる場合は、二つ以上の平面からなるエッジ部に合せて固定することが好ましい。
また、本発明の不織布を製造する場合、必要に応じて目的の幅や長さに加工することが必要となるが、この工程は、通常、スリッターリワインダーを用いることで容易に加工できる。従って、本発明においては、良好な生産性を確保する点からも不織布の長さ方向において、破断強度が前記範囲にあることが好ましい。
一方、幅方向の破断強度は長手(長さ)方向よりも低くてもよく、例えば、0.05〜50N/50mm、好ましくは0.1〜45N/50mm、更に好ましくは0.5〜40N/50mm(特に1〜35N/50mm)程度であってもよい。
このように、本発明の不織布は、面方向と厚さ方向との異方性だけでなく、通常、製造工程の流れ方向(MD)と幅方向(CD方向)との間で異方性を有している。すなわち、本発明の不織布は、製造過程において、コイル状捲縮繊維の軸芯方向が面方向と略平行となるだけでなく、面方向と略平行に配向したコイル状捲縮繊維の軸芯方向は、流れ方向に対しても略平行となる傾向がある。その結果、矩形状不織布が製造される場合、不織布製造における流れ方向と幅方向との間で、前記伸縮特性及び破断特性、特に破断強度が異方性を有する。梱包材として使用する場合は、流れ方向を長さ方向に向けて用いる事で長さ方向に高い伸縮性を有する部材を得る事が可能になる。
本発明の不織布は撥水性を有しているのが好ましい。特に、梱包材に水が付着した場合に容易に内部まで浸透して梱包している物品を水に晒す事を防止できるからである。撥水性の発現は、後述する製造工程の中で、水や水蒸気に繊維が晒される事で、繊維に付着した親水性を有する物質が洗い流され、繊維の表面に樹脂本来の性質が発現することによる。具体的にこの撥水度は、JIS1092スプレー試験において3点以上(好ましくは3〜5点、更に好ましくは4〜5点)を示すのが好ましい。
さらには、この水や水蒸気による洗浄効果により、繊維に付着している繊維油剤も洗い流されることにより、本発明の不織布により、梱包される物品の表面状態が汚染される可能性も低減できる。
(不織布の製造方法)
本発明の不織布の製造方法は前記潜在捲縮性複合繊維を含む繊維をウェブ化する工程と、生成した繊維ウェブを固定して不織布化する工程とを含む。該不織布化する工程は加熱して捲縮する工程とを含むことが望ましい。
まず、前記潜在捲縮性複合繊維を含む繊維をウェブ化する方法としては、慣用の方法、例えば、スパンボンド法、メルトブロー法などの直接法、メルトブロー繊維やステープル繊維などを用いたカード法、エアレイ法などの乾式法などを利用できる。これらの方法のうち、メルトブロー繊維やステープル繊維を用いたカード法、特にステープル繊維を用いたカード法が汎用される。ステープル繊維を用いて得られたウェブとしては、例えば、ランダムウェブ、セミランダムウェブ、パラレルウェブ、クロスラップウェブなどが挙げられる。
次に、不織布化する工程の好適な例として湿熱加工について説明する。湿熱加工によって不織布化することで厚さ方向で均一な捲縮を有する不織布が得られる。得られた繊維ウェブは、ベルトコンベアにより次工程へ送られ、高温水蒸気で加熱処理され、面方向に対して略平行に配向された、熱収縮率の異なる複数の樹脂が相構造を形成していることで潜在捲縮性を有する複合繊維が特定の曲率半径で厚さ方向において略均一に均一に捲縮を発現することにより、繊維同士が交絡する。本発明では、加熱方法として、高温水蒸気で処理する方法を用いる事により、不織繊維の表面から内部に亘り、均一な融着と捲縮を発現できる。なお、融着及び捲縮工程の前工程として、繊維が飛散するのを抑制する点などから、得られた繊維ウェブの一部の繊維を、低圧力水(例えば、0.1〜1.6MPa、好ましくは0.5〜1MPa程度の水)をスプレーなどにより噴霧又は噴射(吹き付け)して交絡させる方法などにより軽度に絡合する工程を経てもよい。
繊維ウェブは、ベルトコンベアにより送られ、過熱蒸気又は高温蒸気(高圧スチーム)流に晒されることにより、本発明の不織布が得られる。すなわち、ベルトコンベアで運搬された繊維ウェブは蒸気噴射装置のノズルから噴出される高速高温水蒸気流の中を通過する際、吹き付けられた高温水蒸気(高温スチーム)流に晒されることにより、本発明の不織布が得られる。すなわち、ベルトコンベアで運搬された繊維ウェブは、蒸気噴射装置のノズルから噴出される高速高温水蒸気流の中を通過する際、吹き付けられた高温水蒸気により、潜在捲縮性を有する複合繊維の捲縮の発現により、該複合繊維が特定の曲率半径を有するコイル状に形を変えながら移動し、繊維同士の3次元的交絡が発現する。特に、本発明における繊維ウェブは通気性を有しているため、高温水蒸気が内部にまで浸透し、略均一な構造(複合繊維の捲縮、交絡の均一性)を有する不織布を得る事ができる。
繊維ウェブはベルトコンベアで高温水蒸気処理に供せられるが、繊維ウェブは高温水蒸気処理と同時に収縮する、従って、供給する繊維ウェブは、高温水蒸気に晒される直前では、目的とする不織繊維の大きさに応じてオーバーフィードされているのが好ましい。オーバーフィードの割合は、目的の不織繊維の長さに対して、110〜300%、好ましくは120〜250%程度である。
使用するベルトコンベアは、基本的には加工に用いる繊維のウェブの形態を乱すことなく高温水蒸気処理する事ができれば、特に限定されるものではなく、エンドレスコンベアが好適に用いられる。なお、一般的な単独のベルトコンベアであってもよく、必要に応じてもう一台のベルトコンベアを組み合わせて、両ベルト間にウェブを挟むように運搬してもよい。このように運搬することにより、繊維ウェブを処理する際に、処理に用いる水、高温水蒸気、コンベアの振動などの外力により運搬してきた繊維ウェブの形態が変形するのが抑制できる。また、処理後の不織繊維の密度や厚さをこのベルトの間隔を調整することにより制御することも可能となる。
繊維ウェブに水蒸気を供給するためには、慣用の水蒸気噴射装置が用いられる。この水蒸気噴射装置としては、所望の圧力と量で、ウェブ全幅に亘り概ね均一に水蒸気を吹き付けることが可能な装置が好ましい。2台のベルトコンベアを組み合わせた場合、一方のコンベア内に装着され、通水性のコンベアベルト、又はコンベアの上に載置されたコンベアネットを通してウェブに水蒸気を供給する。他方のコンベアにはサクションボックスを装着してもよい。サクションボックスによって、繊維ウェブを通過した過剰の水蒸気を吸引排出できる。また、繊維ウェブの表及び裏の両側を一度に水蒸気処理するために、さらに前記水蒸気噴射装置が装着されているコンベアとは反対側のコンベアにおいて、前記水蒸気噴射装置が装着されている部位よりも下流部のコンベア内に別の水蒸気噴射装置を設置してもよい。下流部の蒸気噴射装置及びサクションボックスが無い場合、繊維ウェブの表と裏を蒸気処理したい場合は、一度処理した繊維ウェブの表裏を反転させて再度処理装置内を通過させることで代用してもよい。
コンベアに用いるエンドレスベルトは、繊維ウェブの運搬や高温水蒸気処理の妨げにならなければ、特に限定されない。ただし、高温水蒸気処理をした場合、その条件により繊維ウェブの表面にベルトの表面形状が転写される場合があるので、用途に応じて適宜選択するのが好ましい。特に表面の平坦な基材を得たい場合には、メッシュの細かいネットを使用すればよい。なお、90メッシュ程度が上限であり、概ね90メッシュより粗いネット(例えば、10〜50メッシュ程度のネット)が好ましい。これ以上のメッシュの細かなネットは、通気性が低く、水蒸気が通過しにくくなる。メッシュベルトの材質は、水蒸気処理に対する耐熱性などの観点より、金属、耐熱処理したポリエステル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリアリレート系樹脂(全芳香族ポリエステル系樹脂)、芳香族ポリアミド系樹脂などの耐熱性樹脂などが好ましい。
水蒸気噴射装置から噴射される高温水蒸気は、気流であるため、水流絡合処理やニードルパンチ処理とは異なり、被処理体である繊維ウェブ中の繊維を大きく移動させることなく繊維ウェブ内部へ進入する。この繊維ウェブ中への水蒸気流の進入作用及び湿熱作用によって、水蒸気流が繊維ウェブ内に存在する各繊維の表面を湿熱状態で効率的に覆い、均一な熱捲縮が可能になると考えられる。また、乾熱処理に比べても、繊維内部に対して十分に熱を伝達できるため、表面及び厚み方向における捲縮の程度が概ね均一になる。
高温水蒸気を噴射するためのノズルは、所定のオリフィスが幅方向に連続的に並んだプレートやダイスを用い、これを供給される繊維ウェブの幅方向にオリフィスが並ぶように配置すればよい。オリフィス列は一列以上あればよく、複数列が並行した配列であってもよい。また、一列のオリフィス列は一列以上あればよく、複数列が並行した配列であってもよい。また、一列のオリフィス列を有するノズルダイを複数台並列に設置してもよい。
プレートにオリフィスを開けたタイプのノズルを使用する場合、プレートの厚さは、0.5〜1mm程度であってもよい。オリフィスの径やピッチに関しては、目的とする繊維固定と、捲縮発現に伴う繊維交絡が効率よく実現できる条件であれば特に制限はないが、オリフィスの直径は、通常、0.05〜2mm、好ましくは0.1〜1mm、さらに好ましくは0.2〜0.5mm程度である。オリフィスのピッチは、通常、0.5〜3mm、好ましくは0.8〜2.5mm、さらに好ましくは1〜1.5mm程度である。オリフィスの径が小さすぎると、ノズルの加工精度が低くなり、加工が困難になるという設備的な問題点と、目詰まりを起こしやすくなるという運転上の問題点が生じやすい。逆に大きすぎると、十分な水蒸気噴射力を得る事が困難となる。一方、ピッチが小さすぎると、ノズル孔が密になりすぎるため、ノズル自体の強度が低下する。一方、ピッチが大きすぎると、高温水蒸気が繊維ウェブに十分に当たらないケースが生じるため、ウェブ強度の確保が困難となる。
使用する高温水蒸気についても、目的とする繊維の固定と、繊維の捲縮発現に伴う適度な繊維交絡が実現できれば特に限定はなく、使用する繊維の材質や形態により設定すればよいが、圧力は、例えば、0.1〜2MPa、好ましくは0.2〜1.5MPa、さらに好ましくは0.3〜1MPa程度である。水蒸気の圧力が高すぎたり、強すぎる場合には、ウェブを形成する繊維が必要以上に動いて地合の乱れを生じたり、繊維が溶融しすぎて部分的に繊維形状を保持できなくなったり、必要以上に交絡する可能性がある。また、圧力が弱すぎると、繊維の融着や捲縮発現に必要な熱量を被処理物であるウェブに与えることができなくなったり、水蒸気がウェブを貫通できず厚み方向に繊維融着斑や捲縮の不均一を生ずる場合がある。また、ノズルからの水蒸気の均一な噴出の制御が困難になる場合がある。
高温水蒸気の温度は、例えば、70〜150℃、好ましくは80〜120℃、さらに好ましくは90〜110℃程度である。高温水蒸気の処理速度は、例えば、200m/分以下、好ましくは0.1〜110m/分、さらに好ましくは1〜50m/分程度である。
このようにして繊維ウェブの繊維に捲縮を発現させた後、得られる不織繊維で構成された基材に水分が残留する場合があるので、必要に応じて基材を乾燥してもよい。乾燥に関しては、乾燥用加熱体接触した基材表面の繊維が、乾燥の熱により繊維が溶融して繊維形態が消失しないことが必要であり、繊維形態が維持できる限り、慣用の方法を利用できる。例えば、不織布の乾燥に使用されているシリンダー乾燥機やテンターのような大型の乾燥設備を使用してもよいが、残留している水分は微量であり、比較的軽度な乾燥手段により乾燥可能なレベルである場合が多いため、遠赤外線照射、マイクロ波照射、電子線照射などの非接触法や、熱風を吹きつけたり通過させる方法などが好ましい。
また、本発明の不織布の製造においては、別の力学的方法によってウェブを形成する繊維の交絡を促進させる工程を経てもよい。たとえばニードルパンチによって交絡を促進させても良い。
また、低圧水による処理の後、幅方向に連続したオリフィスから噴出させた高圧のスプレー状の水流をあてて繊維の交絡を促進、すなわち水流絡合処理を経てもよい。この工程における水の噴出圧力は繊維交絡が適度な範囲となるように、例えば、2MPa以上(たとえば、2〜15MPa)、好ましくは3〜12MPa、さらに好ましくは4〜10MPa(特に5〜8MPa)程度である。なお、水の温度は、例えば5〜50℃、好ましくは10〜40℃、例えば15〜35℃(常温)程度である。また以上述べた交絡方法は組み合わせて用いても良い。
本発明の梱包材は本発明の不織布のみからなっていてもよく、また場合によっては別の部材を加えたものであってもよい。例えば、末端をより強固に固定することが可能になる様に末端にファスニングテープを貼ったり、テープや紐で外周を補強したり、あるいは表面に意匠性のある物品を貼付する事などが可能である。また運搬性を高めるための持ち手や、意匠性を高めるための飾りを付すことも可能である。
本発明の梱包材は、通常平面状であるが、形状は特に限定されない。例えば正方形などの矩形、テープ状、などでもよく、用途に応じてプリーツなどの立体形状をなしていてもよい。
本発明の梱包方法においては、物品は梱包材によって全面を包んでも一部を包んでも良いが、梱包材の少なくとも2箇所を物品の周囲を囲んで該物品に密接するように合せることが必要である。
また本発明の梱包方法においては、捲縮させていない、もしくは弱く捲縮させた本発明の不織布からなる梱包材を用いて物品を梱包後、加熱によって梱包材を捲縮させることが望ましい。この際梱包材の強度や伸縮性、自着性を得る上では弱く捲縮させていることがより好ましい。特に複数のバラけやすい物品の場合は予め適度に捲縮させた梱包材を用いて軽く伸縮させながら物品の周囲を囲んで該物品に密接するように梱包材の2つの部分を合せた後、捲縮繊維の自着効果によってこれらを仮止めすることが有効である。一方、捲縮による物品を固定する効果を充分に得る上では捲縮させていないことが望ましい。この場合、ウェブを公知の別の手段で固定して不織布を形成しておくことが望ましく、不織布の柔軟性保持や物品の汚染防止の観点からニードルパンチや水流絡合によって不織布を形成することが特に望ましい。不織布に水分が残留することが望ましくない場合はニードルパンチを用いるか、水分を低温で乾燥させることが、熱による複合繊維の捲縮を抑制する上で望ましい。このように捲縮していない、または弱く捲縮させた不織布からなる梱包材で包んだ後で、不織布を熱で捲縮させると物品を均一な圧力で固定でき、例えば柔らかい物品を梱包しても変形しにくい。梱包する物品が水分に晒されても良い場合は、水蒸気によって梱包材を収縮させると短時間でより強固に物品を固定できるので望ましい。
(実施例)
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。実施例における各物性値は、以下に示す方法により測定した。なお、実施中の「部」及び「%」は断りのない限り、質量基準である。
(1) ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度
フェノールとテトラクロロエタンとを等質量で混合した溶媒を用い、ポリエチレンテレフタレート試料を1g/0.1Lの濃度で溶解した溶液について、粘度計を用いて30℃における溶媒及び溶液流下時間を測定し、下記式(1)から固有粘度〔η〕を算出した。
(2) 目付(g/m2)
JIS L1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて測定した。
(3) 厚さ(mm)、見掛密度(g/cm3)
JIS L1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて厚さを測定し、この値と目付の値とから見掛密度を算出した。
(4) 捲縮数
JIS L1015「化学繊維ステープル試験方法」(8.12.1)に準じて評価した。
(5)通気度
JIS L1096「一般織物試験方法」(8.27.1 A法)に準じ、フラジール形法にて測定した。
(6)平均曲率半径
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、不織繊維の断面を100倍に拡大した写真を撮影した。撮影した不織繊維の断面写真に写っている繊維の中で、1周以上の螺旋(コイル)を形成している繊維について、その螺旋に沿って円を描いた時の円の半径(コイル軸方向から捲縮性複合繊維を観察した時の円の半径)を求め、これを曲率半径とした。なお、繊維が楕円状に螺旋を描いている場合には楕円の長径と短径との和の1/2を曲率半径とした。ただし、複合繊維が十分コイル状に捲縮を発現していない場合や、繊維の螺旋形状が斜めから観察されることにより楕円として写っている場合を排除するために、楕円の長径と短径との比が0.8〜1.2の範囲に入る楕円だけを測定対象とした。なお、測定は、任意の断面について撮影したSEM画像について測定し、n数=100の平均値として示した。
(7)破断強度および破断伸度
JIS L1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて測定した。なお、破断強度及び破断伸度は不織布の流れ(MD)方向及び幅(CD)方向について測定した。
(8)50%伸長回復率
JIS1096「一般織物試験方法」に準拠して測定した。ただし、本発明における評価では、一律、伸度50%での回復率とし、また50%伸長後、元の位置に戻った後は、待ち時間無しに次の動作に入った。なお、測定は、不織布の流れ方向(MD)および幅(CD)方向について行った。
(9)伸び応力及び回復応力
上記(8)の伸長回復率測定における最初の伸長過程において、25%伸長した時の伸長応力を伸び応力(X)とし、50%伸長後の戻り過程において25%伸度まで戻った時の戻り応力を回復応力(Y)とした。測定結果よりY/Xを算出した。なお、測定は、不織布の流れ(MD)方向および幅(CD)方向について行った。
(10)曲面滑り応力
以下に示した方法により測定した。
まず、測定対象となる梱包材をMD方向が長さ方向となるように、50mm幅×600mm長の大きさにカットし、サンプルとした。次に、サンプルの一方の端部をセロハンテープで巻芯(外形30mm×長さ150mmのポリプロピレン樹脂製のパイプロール)に固定した後、このサンプルのもう一方の端部にワニ口クリップ(掴み幅50mm、使用にあたり口部内側に0.5mm厚のゴムシートを両面テープで固定した)を使用して、サンプルの全幅に対し均一に荷重が掛かるように150gの錘を取付けた。
サンプルを固定した巻芯(パープロール)をサンプル及び錘が釣り下がるように持ち上げた状態で錘が大きく揺れないように、パイプロールを5周回転させてサンプルを巻き上げて錘を持ち上げた。この状態で、パイプロールに巻き付けたサンプルの平面状部分と接点(パイプロール)へ巻きついているサンプルの部分と、錘の重力によって垂直状になっているサンプルの部分との境界線)を基点とし、この基点が動いてずれる事のないように、ゆっくりとワニ口クリップ及び錘を取り外した。次に、この基点からパイプロールを半周(180°)した地点で、内層のサンプルを傷つけないように、サンプルの最外周部分をカミソリ刃で切断し、切れ目を設けた。
このサンプルにおける最外層部分と、その下(内層)でパイプロールに巻き付けられている内層部分との間の曲面滑り応力を測定した。この測定には、引張試験機(島津製作所(株)製、「オートグラフ」)を用いた。引張試験機の固定側チャック台座に設置した治具にパイプロールを固定し、サンプルの端部(ワニ口クリップを取付けていた端部)をロードセル側のチャックで掴んで引張速度200mm/分にて引張り、切れ目でサンプルが外れた(分離した)時の測定値(引張強度)を曲面滑り応力とした。なお、曲面滑り応力が破断強度を超える程度に強すぎて、サンプルが外れる前に破断してしまった場合は、「破断」と表記した。
(11)梱包材表面のループ(又はコイル)状繊維の割合
梱包材の表面における電子顕微鏡写真(倍率×100倍)を撮影し、撮影された繊維表面の1cm2あたりにおいて、不織布表面に形成された繊維ループ(ループ状に1周以上旋回した繊維)又はコイル形状の繊維の本数を数えた。すなわち、明らかな単繊維で連続したループを形成している繊維のみをループ状繊維として計測した。このような計測を任意の5箇所において行い、その平均を求め、小数点以下を四捨五入してループ状繊維の割合とした。
(12)繊維湾曲率及びその均一性
不織繊維の断面における電子顕微鏡写真(倍率×100倍)を撮影し、撮影された繊維の映し出された部分において、厚み方向において、表層、内層、裏層の3つの領域に三等分し、各層の中心付近において、長さ2mm以上で、かつ測定可能な繊維片が500本以上含むように測定領域を設定した。これらの領域について、その繊維の一方の端部ともう一方の端部との端部間距離(最短距離)を測定し、さらにその繊維の繊維長(写真上の繊維長)を測定した。すなわち、繊維の端部が不織繊維の表面に露出している場合は、その端部をそのまま端部間距離を測定するための端部とし、端部が不織繊維内部に埋没している場合は、不織繊維内部に埋没する境界部分(写真上の端部)を端部間距離(L1)に対するその繊維の繊維長(L2)の比(L2/L1)から、繊維湾曲率を算出した。さらに、各層の最大値と最小値の割合から繊維湾曲率の厚み方向における均一性を算出した。
図1に、撮影された繊維の測定方法についての模式図を示す。図1(a)は、一方の端部に表面が露出し、他方の端部が不織繊維内部に埋没した繊維を示し、この繊維の場合、端部間距離L1は、繊維の端部から不織繊維内部に埋没する境界部分までの距離になる。一方、繊維長L2は、繊維の観察できる部分(繊維の端部から不織繊維の内部に埋没するまでの部分)の繊維写真上で二次元的に引き延ばした長さになる。
図1(b)は両端部が不織繊維の内部に埋没した繊維を示し、この繊維の場合、端部間距離L1は、不織繊維表面に露出した部分における両端部(写真上の両端部)の距離になる。一方、繊維長L2は、不織繊維の表面に露出している部分の繊維を写真上で二次的に引き延ばした長さになる。
(実施例1)
潜在捲縮性を有する複合繊維として固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート樹脂(A成分)とイソフタル酸20モル%及びジエチレングリコール5モル%を共重合した変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(B成分)とで構成されたサイドバイサイド型複合ステープル繊維((株)クラレ製、「PN−780」、1.7dtex×51mm長、機械捲縮数12個/25mm、130℃×1分熱処理後における捲縮数62個/25mm)を準備した。
このサイドバイサイド型複合ステープル繊維を用いて、カード法により目付32.1g/m2のカードウェブを作製し、このカードウェブをコンベアネット上で移動させ、径2mmΦ、2mmピッチで千鳥状に孔(円形状)のあいた多孔版ドラムとの間を通過させ、この多孔板ドラムの内部からウェブ及びコンベアネットに向かって、0.8MPaでスプレー状に水流を噴出して、繊維同士が実質的な交絡を生じることなく僅かに動く程度に濡らした。
このウェブを30メッシュ、幅500mmのステンレス製エンドレス金網を装備したベルトコンベアに移送した。この時、次の水蒸気処理工程での収縮を阻害しないように、ウェブを200%程度オーバーフィードさせた。なお、このコンベアベルトの上部には同じベルトが装備されており、それぞれが同じ速度で同方向に回転し、これら両金網の間隔を任意に調整可能なベルトコンベアを使用した。
次いで、下側のベルトコンベアに備えられた水蒸気噴射装置へカードウェブを導入し、この装置から0.4MPaの高温水蒸気をカードウェブに対し垂直に噴出して水蒸気処理を施した後、熱風にて乾燥して、潜在捲縮繊維のコイル状捲縮を発現させるとともに、繊維を交絡させ不織布を得た。
なお、水蒸気噴射ノズルの孔径は0.3mmであり、ノズルがコンベアの幅方向に沿って1mmピッチで1列に並べられた水蒸気噴射装置を使用した。加工速度は3m/分であり、ノズル側とサクション側の上下コンベアベルト間の間隔(距離)は10mmとした。ノズルはコンベアベルトの裏側にベルトとほぼ接するように配置した。
得られた不織布は、目付が75.5g/m2であった。この不織布は、MD方向およびCD方向のいずれにもよく伸縮し、また、破断しない程度に軽く手で伸ばした後、応力を解除するとすぐに元の形に戻った。結果を表1に示す。
実施例1のこの不織布は軽量な品物を梱包するのに優れており、携帯電話の部品として用いる鏡面仕上げをしたアルミ板の梱包に用いた結果、自着性によりしっかり梱包できた。そして、次の工程で使用する際まで、その表面を保護し、加工時には容易に取り出しができた。
(実施例2)
実施例1と同様にして得られたカードウェブを76メッシュの樹脂製エンドレスベルトを装備したベルトコンベアに移送しながら少量の水によりウェブを予備的に濡らした後、直径0.1mmΦのオリフィスがウェブ幅方向に0.6mm間隔で一列に設けられたノズルを表裏2段ずつ用いて、ノズルから水を噴射し繊維を交絡させた。水圧は一段目のノズルでは表と裏の両面とも2MPaで吹き付け、2段目のノズルでは表と裏の両面とも4MPaで吹き付けた。
この後、実施例1と同様に水蒸気処理を行い、後に熱風にて乾燥した。この不織布を用いて、直径約30cmの円状に巻いたLANケーブル(30m長)を5つ積み上げ、この外周に沿って1周半巻き付けた後、破断端を不織布表面に固定した。積み上げられたケーブルは、まとめて運ぶ事が可能であり、手で抱えて運ぶ程度であれば崩れる事も無かった。また、この中から円状に巻いたケーブル一つを取り出しその一部を切断後残りを戻したが、固定用の不織布は容易に開き、また閉じることができた。
(実施例3)
ウェブの目付を20g/m2としたこと以外は、実施例2と同じ方法で実施例3の不織布を得た。
(実施例4)
ウェブ目付を75g/m2としたこと以外は実施例2と同様な方法で実施例4の不織布を得た。
(実施例5)
水流を吹き付けた後のウェブにあてる水蒸気の圧力を0.8MPaとしたこと以外は実施例2と同様な方法で実施例5の不織布を得た。
(実施例6)
目付を56.2g/m2とした事以外は実施例1の方法によりカードウェブを得た。このカードウェブを10パンチ/cm2の密度で40番手のニードル針を用いてニードルパンチ処理し、ニードルパンチ不織布を得た。このニードルパンチ不織布の物性を表1に示すが、乱暴に扱わなければ、概ね形態を崩すことなく梱包に使用できた。
ニードルパンチ不織布を用いて、陶器でできたオスメス番いの鳥の人形とその衣装を互い違いになるとともに、お互いに直接接触しないように外周に2周巻付け、端部をセロハンテープで仮止めして熱風乾燥機内で30秒100℃に加熱した後に取り出した。巻き付けたニードルパンチ不織布は、人形の形態にあわせて収縮し、緻密に梱包した状態になっていた。お互いにズレて傷つけあうような隙間も無く、また、お互いの間に実施例の不織布を挟んだ状態でしっかり固定された。端部のセロハンテープ仮止めは剥れていたが、テープを取り除き、端部を抑えたら固定できた。
(実施例7)
実施例1で用いたカードウェブを孔径Φ0.1mmのノズルを用いて、水圧一段目2.9MPa、二段目3.9MPaの条件(一般的な水流絡合の条件)で片面を水流絡合処理した後、このウェブを130℃の熱風乾燥機内で1分間熱処理し、捲縮発現させることで不織布を得た。この不織布を梱包材として冷凍中華まん全体を包み、梱包材の末端を軽く押圧すると自着した。これを蒸し器に入れて20分後取り出したところ、巻き付けた不織布は、中華まんの形態にあわせて伸長して中華まんの柔らかさを損うことなく、かつ、蒸し器に入れる前よりも一層しっかりと末端が自着し、緻密に梱包した状態になっていた。また梱包材を剥がして中華まん表面を観察したが繊維の混入は認められなかった。
(比較例1)
実施例1で用いたカードウェブに水圧一段目3.9MPa、二段目8.0MPaそして三段目14.0MPaの条件(一般的な水流絡合の条件)で片面を水流絡合処理した後、このウェブを130℃の熱風乾燥機内で1分間熱処理し、密度0.26g/cm3の不織布を得た。この不織布は伸縮性がなく、繊維交絡が強く、伸縮性が低かった。この不織布を、携帯電話の部品として用いる鏡面仕上げをしたアルミ板の梱包に用いた結果、不織布が自着して梱包できたが、運搬しようとするとすぐに剥がれた。