JP5237879B2 - 山岳地帯における既設擁壁の嵩上げ構造及び工法 - Google Patents

山岳地帯における既設擁壁の嵩上げ構造及び工法 Download PDF

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Description

本発明は、山岳地帯における既設擁壁の嵩上げ構造及び工法に関する。
一般に、擁壁の天端高さは河川の氾濫を防止するために、所定のレベル又はそれ以上とされている。しかしながら、近時の異常気象による集中豪雨や台風の多発による大雨を受けた地域では、河川の水位は大きく上昇するため、擁壁の天端は相対的に低くなる。そこで、このような地域では、河川の氾濫浸水対策として、擁壁の天端を嵩上げする必要がある。図5に従来の既設擁壁の嵩上げ構造を示している。一般に、既設擁壁7を嵩上げする場合、既設擁壁7の天端70に新たにコンクリート7cを追加的に打設して、既設擁壁7の天端高さを上げている。図6にこの嵩上げ工事の作業手順を示している。図6に示すように、まず、既設擁壁7の両側に作業用足場91を仮設する(ステップ1)。続いて、この擁壁7の天端に(接着系)アンカー92を打ち込み(ステップ2)、このアンカー92を介して主筋93、配力筋94を配筋する(ステップ3)。そして、この天端の端に合わせて型枠95を組み立て、コンクリート71cを打設する。この種の現場打ちコンクリートによる既設擁壁の嵩上げ構造及び工法は、例えば特許文献1、2など多くの文献で指摘されている。
特開平9−158219号公報(段落0002、0003、及び図5) 特開平7−207686号公報(段落0003)
ところで、山岳地帯の河川に隣接して設置された各種の施設、例えば図1に示すような変電所の河川氾濫浸水対策として、当該変電所の周囲に構築された既設擁壁の嵩上げを上記従来の既設擁壁の嵩上げ構造及び工法を用いて行おうとすると、次のような課題がある。
(1)既設擁壁にコンクリートの大きな荷重をかけることになり、この負担が過度に大きいと、既設擁壁が崩壊する虞がある。
(2)鉄筋、単管、合板などの資材その他の長尺物を運搬する必要があり、現場に長尺物の運搬に障害があると、資材の運搬作業が困難にならざるを得ない。変電所の場合、作業者の頭上に高圧線が通っているため、この高圧線に長尺物が接触すると感電する危険があり、高圧線の位置、間隔に対する十分な配慮が必要で、その分だけ、作業効率は低下する。
(3)場所打ちコンクリート工法では多くの仮設材を必要とし、現場作業が煩雑で工期が長期化する。変電所の場合、作業時間が昼間だけに制限されるため、工期はさらに長くなる。
(4)(生)コンクリートの打設に、通常、圧送ポンプ車を使用するので、現場に圧送ポンプ車と生コン車(生コンクリート専用の運搬車)のセットスペースを確保する必要があり、このスペースの確保が難しいと、コンクリートの打設作業が困難にならざるを得ない。また、クレーンとバケットを使用することもあるが、この場合も、同様である。変電所の場合、圧送ポンプやクレーンによる作業は、既述のとおり、作業者の頭上に高圧線が通っていて、大変に危険であり、十分な注意が必要で、作業効率は低下する。
(5)配管などをして(生)コンクリートを打設していると、配管が詰まって、(配管の)ジョイントを外すことがあるが、この配管のジョイントを外す際に、河川を汚すことがあり、(生)コンクリートの使用は好ましくない。変電所の場合、この配管の取り扱いの際に、高圧線に近づきすぎると、感電の虞があり、十分な注意が必要で、作業効率は低下する。
(5)河川に隣り合わせの既設擁壁上でコンクリート打設が行われる場合、河川を所謂生コンのノロや残コンで汚すことがあり、(生)コンクリートの使用は好ましくない。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、この種の山岳地帯における擁壁の嵩上げ構造及び工法において、既設擁壁に最小限の荷重をかけるにとどめ、既設擁壁の崩壊を確実に防止すること、嵩上げに使用する材料の運搬やこの材料の組み立て作業を人力で行えるようにすること、仮設材を極力少なくして、工期の短縮を図ること、コンクリートを使用せず、河川の汚濁を防止すること、さらに、コンクリート構造物に比べて経済的であること、また、流木防止機能を全体の外観を損なうことなしに付加すること、などを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、山岳地帯の河川に隣接して設置された各種施設の周囲に前記河川の氾濫浸水を防止するために構築された既設擁壁を嵩上げする、山岳地帯における既設擁壁の嵩上げ構造において、前記既設擁壁の一方の面に沿って並列に、複数に分割された分割柱材が上下方向に連結され前記一方の面に固定されて、前記既設擁壁の天端高さよりも上方所定の高さまで立ち上げられる複数の柱と、前記各柱間に架設、接合されて、前記既設擁壁の上方に延設される複数の止水板と、前記既設擁壁と前記各止水板との間に設けられて両者間の隙間を水密に塞ぐ水切部材とにより構成される、ことを要旨とする。
また、この構造においては、各部に次のような構成を備えることが好ましい。
(1)分割柱材は型鋼、止水板、水切部材は鉄板が採用され、これら型鋼、鉄板が工場加工され、メッキが施されて、複数の分割柱材は上下方向にボルトにより連結されて既設擁壁の一方の面にアンカー止めにより固定され、複数の止水板は各柱間に溶接により接合され、複数の水切部材は既設擁壁の天端上にアンカー止めにより固定されて、前記各止水板の下端に溶接により接合される。
(2)河川側で各柱間に架設され、複数の断面楔形形状からなる流木防止部材を備える。
(3)流木防止部材にアングル材が採用され、複数のアングル材が工場加工され、メッキが施されて、各柱間に溶接により接合される。
上記目的を達成するために、本発明は、山岳地帯の河川に隣接して設置された各種施設の周囲に前記河川の氾濫浸水を防止するために構築された既設擁壁を嵩上げする、山岳地帯における既設擁壁の嵩上げ工法において、前記既設擁壁の一方の面に沿って並列に、複数に分割された分割柱材を上下方向に連結し前記一方の面に固定することにより、複数の柱を前記既設擁壁の天端高さよりも上方所定の高さまで立ち上げる工程と、前記各柱間に止水板を架設、接合して、複数の止水板を前記既設擁壁の上方に延設する工程と、前記既設擁壁と前記各止水板との間に水切部材を設けて両者間の隙間を水密に塞ぐ工程とを有することを要旨とする。
また、この工法においては、さらに、河川側で各柱間に断面楔形形状の流木防止部材を架設する工程を有することが好ましい。
本発明の山岳地帯における擁壁の嵩上げ構造及び工法では、上記の各構成及び各工法により、次のような効果を奏することができる。
(1)山岳地帯の河川に隣接して設置された各種施設の周囲に、河川の氾濫浸水を防止するために構築された既設擁壁において、当該擁壁の外側一方の面に沿って並列に、複数に分割した分割柱材を上下方向に連結し当該一方の面に固定して、複数の柱を既設擁壁の天端高さよりも上方所定の高さまで立ち上げ、これらの柱間に止水板を架設、接合して、複数の止水板を既設擁壁の上方に延設し、この既設擁壁と各止水板との間に水切部材を設けて、両者間の隙間を水密に塞ぐことにより、当該擁壁を嵩上げし、河川の氾濫の際に流水を止める構造としたので、流水を防止する材料のみの使用により、材料の運搬や組み立て作業を人力で行うことができ、作業スペースが少なく機械等の使用が困難な作業条件でも既設擁壁の嵩上げを確実に行うことができ、工期の短縮を図ることができる。この場合、分割柱材にH型鋼、止水板、水切部材に鉄板を採用し、H型鋼や鉄板を工場加工し、亜鉛メッキにより塗装を施して、これらの材料を現場でアンカー止めやボルト止め又は溶接により組み立てるので、作業スペースを十分に確保できない現場でも既設擁壁の嵩上げ作業を簡易に行うことができる。また、これらの材料が短尺物であることで、活線近接距離の作業に適する利点がある。変電所の工事の場合、変電所内の立ち入り期間が短期で済み、経済的である。
(2)H型鋼からなる柱、鉄板からなる止水板、鉄板からなる水切部材により組み立てられた構造物により、既設擁壁に最小限の荷重をかけるにとどめることができ、既設擁壁の崩壊を確実に防止することができる。
(3)コンクリートを使用することがないので、コンクリートによる河川の汚濁を防止することができ、環境対策としても好ましい。また、コンクリートを使用しないことで、コンクリート構造物に比べて経済的である。
(4)複数の柱(分割柱材)、複数の止水板、複数の水切部材を順次組み立てていくので、分割柱材を足場に利用することができ、仮設材を極力少なくし、仮設材を少なくする分だけ工期を短縮することができる。
(5)河川側で各柱間に断面楔形形状の流木防止部材を設けたので、この流木防止部材で、河川の流木を止めることができ、河川の氾濫時の流水とともに流木の流出を確実に防止することができる。
(6)流木防止部材にアングル材を採用し、このアングル材を工場加工し、亜鉛メッキを施して、現場で各柱間に溶接により取り付けるので、この流木防止部材を簡易に形成することができ、強度も十分に確保することができる。また、この流木防止部材を複数のアングル材を並列に並べて形成したことで、意匠的効果を有し、嵩上げ構造全体の外観を良好に維持することができる。
本発明の一実施の形態を説明するために例示する、山岳地帯の河川に隣接して設置された各種施設(この場合、変電所)の周囲に河川の氾濫浸水を防止するために構築された既設擁壁の平面図 同既設擁壁の概略断面図(図1のA−A線断面図) 本発明の一実施の形態における既設擁壁の嵩上げ構造を示す概略断面図 (a)同構造に採用される流木防止部材の概略正面図(b)同概略側面断面図 従来の既設擁壁の嵩上げ構造を示す概略断面図 従来の既設擁壁の嵩上げ工法を示す説明図
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。なお、この実施の形態では、山岳地帯の河川に隣接して設置された変電所の河川氾濫浸水対策として、変電所の周囲に構築された既設擁壁を嵩上げする場合を例示する。図1に示すように、この変電所6は河川(本流及び支流)に隣接して設置され、その周囲に(既設)擁壁7が構築されている。図1及び図2に示すように、変電所6には変電設備60が設置され、その上方に高圧線61が通されており、この高圧線61は既設擁壁7の上を通過している。この現場は作業スペースが少なく、河川側は既設擁壁7の片側一方に僅かに幅1.5m程の作業用通路8があり、内陸側は既設擁壁7に沿って道路9が通っているが、この道路9は通行止めにできないため、作業スペースとしては著しく制限されている。しかも、変電設備60、高圧線61は通電状態にあり、変電設備60、高圧線61への活線近接作業距離は制限されるため、作業スペースはさらに狭められる。その上、作業時間は昼間のみに制限される。この現場では、既設擁壁7の近くへ行くには人力による他なく、この既設擁壁7の嵩上げ作業は人力で行う他ない状況にある。
図3に、かかる現場に好適な既設擁壁の嵩上げ構造を示している。図3に示すように、この嵩上げ構造1は、既設擁壁7の外側(河川側)一方の面71に沿って所定の間隔で並列に、複数に分割された分割柱材21、22、23が上下方向に連結され、既設擁壁7の外側一方の面71に固定されて、既設擁壁7の天端70高さよりも上方所定の高さまで立ち上げられる複数の柱2、…と、各柱2、…間に架設、接合されて、既設擁壁7の上方に延設される複数の止水板3、…と、既設擁壁7と各止水板3、…との間に設けられて両者間の隙間を水密に塞ぐ水切部材4と、河川側で各柱2、…間に架設され、複数の断面楔形形状からなる流木防止部材5とを備えて構成される。
分割柱材21、22、23はH型鋼が採用され、H型鋼が分割されて形成される。このH型鋼は工場加工され、亜鉛メッキにより塗装が施される。このH型鋼からなる分割柱材21、22、23は複数、上下に積み重ねられて連結され、1本の柱2として構成される。この場合、1本の柱2につき3つの分割柱材21、22、23が上下方向に積み重ねられて組み立てられ、これら3つの分割柱材21、22、23はそれぞれ連結端間に当板24がボルト25(図4参照)により固定されて接合される。そして、下部及び中間部の各分割柱材21、22が既設擁壁7の外側一方の面71にケミカル系(接着系)のアンカー26を介して支持固定される。このようにして複数の柱2、…が既設擁壁7の外側に(河川側は既設擁壁7の片側一方の作業用通路8上に)既設擁壁7の外側一方の面71に沿って所定の間隔に立ち上げられ、当該一方の面71にアンカー26により支持固定される。
止水板3は鉄板が採用され、各柱2、…間に架設可能にかつ各柱2、…の上端と既設擁壁7の天端70位置との間を閉塞可能な大きさに形成される。この鉄板は工場加工され、亜鉛メッキにより塗装が施される。この止水板3は上下を隣り合う2本の柱2、2の既設擁壁7に対向する面の上端位置と既設擁壁7の天端70に対応する位置に合せて各柱2、2間に架設され、止水板3と各柱2、2が溶接により接合される。このようにして複数の止水板3、…が複数の柱2、…間に取り付けられ、これら止水板3、…により各柱2、…の上端と既設擁壁7の天端70位置との間が閉塞される。
水切部材4は鉄板が採用され、既設擁壁7の天端70を覆いかつ当該天端70と止水板3との間の隙間を閉塞可能な大きさに形成される。この鉄板は工場加工され、亜鉛メッキにより塗装が施される。この水切部材4は既設擁壁7の天端70上に敷設されアンカーにより固定され、水切部材4の先端部(河川側の端部)と止水板3の下端が溶接により接合される。このようにして複数の水切部材4、…が既設擁壁7の天端70と複数の止水板3、…との間に取り付けられ、これら水切部材4、…により既設擁壁7と各止水板3、…との間の隙間が水密に塞がれる。なお、これら水切部材4、…と止水板3、…は両者間にアングル材がボルト止めにより固定されて接合され、両者間の隙間を止水剤により止水するようにしてもよい。
流木防止部材5はアングル材が採用され、複数のアングル材が各柱2、…間に架設可能な長さに形成されて、各柱2、…間に並列に架設されて構成される。このアングル材は工場加工され、亜鉛メッキにより塗装が施される。図4に示すように、複数のアングル材はそれぞれ、角部が外側(河川側)に向けられ、左右両端を隣り合う2本の柱2、2の河川に対向する面に当接されて、各柱2、2間に各柱2、2の上端から既設擁壁7の天端70に対応する位置までの範囲に並列に架設され、複数のアングル材の角部が河川側に向けて断面楔形形状に突出される。このようにして複数の流木防止部材5、…が複数の柱2、…間に取り付けられ、これら流木防止部材5、…の断面楔形形状により流木を止めるようにする。
この既設擁壁の嵩上げ工法について図3を参照しながら説明する。まず、この工法を行うまでに、必要な準備が行われる。この準備では、既設擁壁7の原寸測定を実施して、柱2、すなわちH型鋼を配置するための配置図を作成する。この段階で、柱2、すなわちH型鋼の重量を把握し、柱2を人力により運搬可能に、1本の柱2を複数に分割、この場合、3分割にして、3つの分割柱材21、22、23により組み立てることを決定する。柱2(分割柱材21、22、23)、止水板3、水切部材4、流木防止部材5の各材料は工場加工し、それぞれ塗装(亜鉛メッキ)を施す。そして、現場で柱2の位置及び高さの墨出し、取り付けアンカー26の位置出しを行った後、次の工法により既設擁壁の嵩上げを行う。
この工法では、柱2の立ち上げ工程、止水板3の取り付け工程、水切部材4の取り付け工程、流木防止部材5の取り付け工程を順次行う。
まず、柱2の立ち上げ工程では、複数の柱2、…を既設擁壁7の外側(河川側は、作業用通路8上)に既設擁壁7の外側一方の面71に沿って所定の間隔で並列に立ち上げ設置する。この柱2の立ち上げは、複数に分割された分割柱材(H型鋼)21、22、23を上下方向に当板24、ボルト25により連結し、既設擁壁7の外側一方の面71にアンカー26止めにより固定することで行い、各柱2、…を既設擁壁7の天端高さよりも上方所定の高さまで立ち上げる。この場合、分割柱材21、22、23を小型ウィンチを使用して運搬する。まず、下部の柱となる分割柱材21を既設擁壁7の外側(作業用通路8上)の所定の位置に設置して、この分割柱材21をケミカル系(接着系)のアンカー26を介して既設擁壁7の外側一方の面71に固定する。なお、足場確保のため、この下部の柱の設置固定を施工範囲の半分程度まで先行して行う。続いて、これら分割柱材21(下部の柱)上に中間部の柱となる分割柱材22をそれぞれの連結端間に当板24を当ててボルト25止めすることにより連結して組み立て、この分割柱材22をケミカル系(接着系)のアンカー26を介して既設擁壁7の外側一方の面71に固定する。そして、これら分割柱材22(中間部の柱)上に上部の柱となる分割柱材23をそれぞれの連結端間に当板24を当ててボルト25止めすることにより連結して組み立てる。
次に、止水板3の取り付け工程では、各柱2、…間に止水板(鉄板)3、…を架設、接合する。この止水板3の取り付けは、止水板3の上下を隣り合う2本の柱2、2の既設擁壁7に対向する面の上端位置と既設擁壁7の天端70に対応する位置に合せて、止水板3を各柱2、2間に架設し、この止水板2と各柱2、2とを溶接により接合することにより行う。この場合、溶接による歪み取りを併せて行う。このようにして複数の止水板3、…を複数の柱2、…間に取り付けて(この場合、複数の止水板3、…で各柱2、…の上端と既設擁壁7の天端70位置との間を閉塞する。)、既設擁壁7の上方に延設する。
次いで、水切部材4の取り付け工程では、既設擁壁7と各止水板3、…との間に水切部材(鉄板)4、…を設ける。この水切部材4の取り付けは、水切部材4を既設擁壁7の天端70上に敷設してアンカーにより固定し、この水切部材4の先端部(河川側の端部)と止水板3の下端とを溶接により接合する。この場合、溶接による歪み取りを併せて行う。このようにして複数の水切部材4、…を既設擁壁7の天端70と複数の止水板3、…との間に取り付けて、これら複数の水切部材4、…により既設擁壁7と各止水板3、…との間の隙間を水密に塞ぐ。なお、この工程は、水切部材と止水板との間にアングル材をボルト止めにより固定して水切部材と止水板とを接合し、両者間の隙間を止水剤により止水するようにしてもよい。
そして、流木防止部材5の取り付け工程では、河川側で各柱2、…間に断面楔形形状の流木防止部材5、…を架設する。この流木防止用部材5の取り付けは、複数のアングル材をそれぞれ、角部を外側に向けて、左右両端を隣り合う2本の柱2、2の河川に対向する面に当接させ、各柱2、2間に各柱2、2の上端から既設擁壁7の天端70に対応する位置までの範囲に並列に架設し、溶接により接合する。このようにして複数の流木防止部材5、…を複数の柱2、…間に取り付け、複数のアングル材の角部を河川側に向け断面楔形形状に突出させて、これら流木防止部材5、…により流木を止めるようにする。そして最後に、溶接跡のタッチアップなど必要な処理を行って、この嵩上げ作業を終了する。
以上説明したように、この既設擁壁の嵩上げ構造及び工法によれば、次のような効果を奏する。
(1)山岳地帯の河川に隣接して設置された変電所6の周囲に、河川の氾濫浸水を防止するために構築された既設擁壁7において、この擁壁7の外側一方の面71に沿って並列に、複数に分割した分割柱材21、22、23を上下方向に当板24及びボルト25により連結し、当該一方の面71にケミカル系のアンカー26により固定して、複数の柱2、…を既設擁壁7の天端高さよりも上方所定の高さまで立ち上げ、これらの柱2、…間にそれぞれ止水板3を架設、接合して、複数の止水板3、…を既設擁壁7の上方に延設し、この既設擁壁7と各止水板3、…との間に水切部材4、…を設けて、両者間の隙間を水密に塞ぐことによって、当該擁壁7を嵩上げし、河川の氾濫の際に流水を止める構造としたので、河川の流水を防止する材料のみの使用により、材料の運搬や組み立て作業を人力で行うことができ、作業スペースが少なく機械等の使用が困難な作業条件でも既設擁壁7の嵩上げを確実に行うことができ、工期の短縮を図ることができる。特に、分割柱材21、22、23にH型鋼、止水板3、水切部材4に鉄板を採用し、H型鋼や鉄板を工場加工し、亜鉛メッキにより塗装を施して、これらの材料を現場でアンカー止めやボルト止め又は溶接により組み立てるので、作業スペースを十分に確保できない現場でも既設擁壁の嵩上げ作業を簡易に行うことができる。また、これらの材料が短尺物であることで、活線近接距離の作業に適する利点がある。変電所6の工事の場合、変電所6内の立ち入り期間が短期で済み、経済的である。
(2)H型鋼からなる柱2、鉄板からなる止水板3、鉄板からなる水切部材4により組み立てられた構造物により、既設擁壁7に最小限の荷重をかけるにとどめることができ、既設擁壁7の崩壊を確実に防止することができる。
(3)コンクリートを使用することがないので、コンクリートによる河川の汚濁を防止することができ、環境対策として好ましい。また、コンクリートを使用しないことで、コンクリート構造物に比べて経済的である。
(4)複数の柱2(分割柱材21、22、23)、…、複数の止水板3、…、複数の水切部材4、…を順次組み立てていくので、分割柱材21、22、23を足場に利用することができ、仮設材を極力少なくして、仮設材を少なくする分だけ工期を短縮することができる。
(5)河川側で各柱2、…間に断面楔形形状の流木防止部材5、…を設けたので、この流木防止部材5で、河川の流木を止めることができ、河川の氾濫時の流水とともに流木の流出を確実に防止することができる。
(6)流木防止部材5にアングル材を採用し、このアングル材を工場加工し、亜鉛メッキを施して、複数のアングル材を現場で各柱2、…間に溶接により取り付けるので、この流木防止部材5を簡易に形成することができ、強度も十分に確保することができる。また、この流木防止部材5を複数のアングル材を並列に並べて形成したことで、意匠的効果を有し、嵩上げ構造1全体の外観を良好に維持することができる。
1 既設擁壁の嵩上げ構造
2 柱
21、22、23 分割柱材
24 当板
25 ボルト
26 ケミカル系のアンカー
3 止水板
4 水切部材
5 流木防止部材
6 変電所
60 変電設備
61 高圧線
7 既設擁壁
70 天端
71 一方の面
8 作業用通路
9 道路

Claims (6)

  1. 山岳地帯の河川に隣接して設置された各種施設の周囲に前記河川の氾濫浸水を防止するために構築された既設擁壁を嵩上げする、山岳地帯における既設擁壁の嵩上げ構造において、
    前記既設擁壁の一方の面に沿って並列に、複数に分割された分割柱材が上下方向に連結され前記一方の面に固定されて、前記既設擁壁の天端高さよりも上方所定の高さまで立ち上げられる複数の柱と、
    前記各柱間に架設、接合されて、前記既設擁壁の上方に延設される複数の止水板と、
    前記既設擁壁と前記各止水板との間に設けられて両者間の隙間を水密に塞ぐ水切部材とにより構成される、
    ことを特徴とする山岳地帯における既設擁壁の嵩上げ構造。
  2. 分割柱材は型鋼、止水板、水切部材は鉄板が採用され、これら型鋼、鉄板が工場加工され、メッキが施されて、複数の分割柱材は上下方向にボルトにより連結されて既設擁壁の一方の面にアンカー止めにより固定され、複数の止水板は各柱間に溶接により接合され、複数の水切部材は既設擁壁の天端上にアンカー止めにより固定されて、前記各止水板の下端に溶接により接合される請求項1に記載の山岳地帯における既設擁壁の嵩上げ構造。
  3. 河川側で各柱間に架設され、複数の断面楔形形状からなる流木防止部材を備える請求項1又は2に記載の山岳地帯における既設擁壁の嵩上げ構造。
  4. 流木防止部材にアングル材が採用され、複数のアングル材が工場加工され、メッキが施されて、各柱間に溶接により接合される請求項3に記載の山岳地帯における既設擁壁の嵩上げ構造。
  5. 山岳地帯の河川に隣接して設置された各種施設の周囲に前記河川の氾濫浸水を防止するために構築された既設擁壁を嵩上げする、山岳地帯における既設擁壁の嵩上げ工法において、
    前記既設擁壁の一方の面に沿って並列に、複数に分割された分割柱材を上下方向に連結し前記一方の面に固定することにより、複数の柱を前記既設擁壁の天端高さよりも上方所定の高さまで立ち上げる工程と、
    前記各柱間に止水板を架設、接合して、複数の止水板を前記既設擁壁の上方に延設する工程と、
    前記既設擁壁と前記各止水板との間に水切部材を設けて両者間の隙間を水密に塞ぐ工程と、
    を有する、
    ことを特徴とする山岳地帯における既設擁壁の嵩上げ工法。
  6. 河川側で各柱間に断面楔形形状の流木防止部材を架設する工程を有する請求項5に記載の山岳地帯における既設擁壁の嵩上げ工法。
JP2009110940A 2009-04-30 2009-04-30 山岳地帯における既設擁壁の嵩上げ構造及び工法 Expired - Fee Related JP5237879B2 (ja)

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