JP5236266B2 - 歯科矯正用のワイヤ保持装置及び歯科矯正装置 - Google Patents
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Description
本明細書に開示される別の歯科矯正用のワイヤ保持装置は、所定の間隔を空けて配された少なくとも一対の突起部を有しており、その突起部間のスロットに歯科矯正用ワイヤを挿通して保持する。このワイヤ保持装置の突起部の少なくとも一方には、その突起部を貫通すると共にその一端が他方の突起部に向かって開口するネジ孔と、そのネジ孔と螺合し、その先端が突起部間に突出した状態と、突起部間から退避した状態とに切換えられる雄ネジと、を備えている。そして、雄ネジの先端が突起部間に突出した状態では、スロットに挿通されたワイヤがスロットから脱落することが防止されるようになっている。
この歯科矯正用のワイヤ保持装置では、ワイヤがワイヤ保持装置のスロットに挿通されると、雄ネジを突起部に形成されたネジ孔に挿し込み、雄ネジの先端を突起部間に突出させる。これによって、スロットに挿通されたワイヤがスロットから脱落することが防止される。このワイヤ保持装置では、ネジ孔に螺合している雄ネジによってワイヤの脱落を防止している。そのため、ワイヤに舌等が当たることによってワイヤが容易に外れることを防止することができる。このワイヤ保持装置は、長期に亘って安定してワイヤを保持することができる。また、このワイヤ保持装置では、ネジ孔に雄ネジを挿し込むだけでよいため、ワイヤをワイヤ保持装置に脱着する作業を容易に行うことができる。
なお、本明細書中、「純チタン」には、構成成分の100%がチタン金属であるものの他に、不可避的な不純物を含有するチタンをも含んでいる。
この歯科矯正装置に用いられるワイヤ保持装置は、雄ネジをネジ孔に螺合させるだけで、ワイヤがスロットから脱落することを防止するができる。そのため、歯科矯正装置の取り付け作業時間が短縮される。これにより、取り付け作業中の患者の負担を軽減することができる。また、この歯科矯正装置のワイヤは、一旦患者に取り付けられると、長時間に亘って連続して装着されたままとされることが多い。この歯科矯正装置のワイヤ保持装置では、ワイヤを長期に亘って安定して保持することができる。そのため、歯科矯正装置のメンテナンスの回数を低減することができる。
ワイヤを歯列の内側に取付けて歯列弓を拡大する場合、外力が作用しない状態で患者の歯列弓の幅よりも広い幅を有する形状にワイヤの形状を調整し、患者に装着する。すなわち、ワイヤが歯列弓に装着された状態では、ワイヤは弾性変形し、ワイヤの復元力が歯に作用する。歯は、ワイヤの復元力によって所望の位置に移動する。ワイヤは一旦ワイヤ保持装置に装着されると、所望の歯列弓形状になるまで取替えないことが理想である。そのため、ワイヤは、弾性変形能が高く、歯列弓の幅が広がっても(即ち、ワイヤに付与された歪が小さくなっても)復元力が低下しにくいことが望まれる。
低ヤング率で高弾性変形能なチタン合金で作製されているワイヤは、ワイヤに巻きバネ部を形成しなくても、充分な弾性変形能を有することができる。したがって、ワイヤは、巻きバネ部のない簡素な形状とすることができる。また、ヤング率が低いため、歯列弓の拡大に伴ってワイヤのひずみが小さくなっても、復元力が低下することを抑制することができる。
ここで、「低ヤング率で高弾性変形能なチタン合金」とは、従来のチタン合金や鉄鋼材料と比較して、ヤング率が小さく、ひずみの変化に対して応力の変化が小さく、弾性変形能の大きいチタン合金をいう。
本発明の歯科矯正装置では、ワイヤの形状を簡素にすることができる。これにより、本発明の歯科矯正装置を装着している患者の不快感を低減することができる。
(形態1)歯科矯正用のワイヤ保持装置は、ベース部を有している。ベース部の一方の面には、一対の突起部が設けられ、突起部間がスロットとされている。ベース部の他方の面は、その表面全体が凹凸に形成されている。
ワイヤ保持装置10に用いられる素材には、従来から歯科矯正用ワイヤ保持装置に用いられてきた種々の素材を用いることができる。また、ワイヤ保持装置10を純チタンで製作することができる。ワイヤ保持装置10を純チタンで製作すると、人体への悪影響が少ない点で好ましい。ワイヤ保持装置10を純チタンで製作する場合、ワイヤ保持装置10を鋳造等によって一体に製作することが好ましい。ワイヤ保持装置10を一体に製作することで、機械加工等を無くすことができるためである。接着面31の凹凸32は、機械加工や化学的な表面処理等の種々の方法によって形成することができる。
歯にワイヤ保持装置10を接着すると、次に、ワイヤ保持装置10のスロット33に歯科矯正用のワイヤ50を取付ける。スロット33にワイヤ50を取付ける場合、図4に示すように、まず、ネジ23の下端と第2突起部22との間隔が、挿通されるワイヤ50の直径よりも大きくなるようにネジ23を配置する。この状態で、ワイヤ50が、第1突起部21(ネジ23の下端)と第2突起部22との間を通り、スロット33に挿通される。次に、図2に示すように、ネジ23を締め付けて、ネジ23の下端を第2突起部22に向かって移動させる。ネジ23は、その下端がワイヤ50に接触する。ネジ23は、その締付トルクが所定値となるまで締め付けられる。ネジ23がネジ孔21aに締付けられた状態(図2に示す状態)では、ネジ23の下端と第2突起部22との間隔が、ワイヤ50の直径よりも小さくなり、スロット33からワイヤ50が脱落することが防止される。このように、ワイヤ50をワイヤ保持装置10に脱着する場合、ネジ23をネジ孔21aに対して移動させるだけでよい。そのため、ワイヤ50のワイヤ保持装置10への脱着を容易に行うことができる。
歯科矯正装置80は、一対のワイヤ保持装置10と、ワイヤ保持装置10に保持されるワイヤ50を有している。ワイヤ保持装置10は、左右の第2大臼歯150の内側の表面に接着されている。ワイヤ保持装置10は、ワイヤ50を保持している。これにより、ワイヤ50は、歯列140に対して所定の位置に固定されている。ワイヤ50は、患者の歯列弓に合わせて所定の形状に弾性変形されて取付けられている。ワイヤ50は、低ヤング率で高弾性変形能なチタン合金で作製されている。これにより、ワイヤ50は、図7で示したような、巻きバネ部206を形成することなく、要求される弾性変形能を達成することができる。また、ヤング率が低いため、歯列弓の幅が拡大することによってワイヤ50のひずみ量が低下しても、ワイヤ50の復元力の大幅な低下を抑制することができる。
ワイヤ50に用いられる低ヤング率で高弾性変形能なチタン合金としては、例えば、特許3282809号、3375083号等に開示されているチタン合金や、豊通マテリアル株式会社が販売するチタン合金(登録商標ゴムメタル)がある。このチタン合金について、簡単に説明する。
(1)30〜60質量%のVa族(バナジウム族)元素のうちの1種以上の元素
(2)1〜20質量%のジルコニウム(Zr)とハフニウム(Hf)とスカンジウム(Sc)の1種以上の元素
(3)0.08〜0.6質量%の酸素(O)
(4)0.05〜1.0質量%の炭素(C)
(5)1〜20質量%のモリブデン(Mo)、1〜20質量%の鉄(Fe)、1〜20質量%の錫(Sn)、0.1〜3質量%のアルミニウム(Al)のうちの1種以上の元素
(6)0.01〜1.0質量%のホウ素(B)
なお、ワイヤ50に用いることができるチタン合金には、上記に示す成分の全てが含まれている必要は必ずしもなく、いくつかの成分を選択することができる。例えば、(1)と(2)とチタン(Ti)からなるチタン合金であってもよい。
焼結法の場合、原料粉末は、純金属粉末及び/又は合金粉末の2種以上を混合する。粉末の平均粒径は、100μm以下であることが好ましく、45μm以下であればより緻密な焼結体が得やすくなる。この粉末の混合には、V型混合機、ボールミルや振動ミル等を使用することができる。
焼結法では、原料粉末を所定形状の成形体に成形し、その成形された成形体を加熱して焼結させる。粉末の成形には、例えば、金型成形、CIP成形(冷間静水圧プレス成形)、RIP成形(ゴム静水圧プレス成形)等を用いることができる。
成形体の焼結は、真空又は不活性ガスの雰囲気でなされることが好ましい。また、焼結温度は、合金の融点以下で、しかも成分元素が十分に拡散する温度域で行われることが好ましく、例えば、その温度範囲は1200℃〜1400℃である。また、その焼結時間は2〜16時間であることが好ましい。したがって、チタン合金の緻密化と生産性の効率化を図る上で、1200℃〜1400℃かつ2〜16時間の条件で焼結工程を行うことができる。なお、焼結後は熱間加工を行うことにより、焼結合金の空孔等を低減して組織を緻密化させることができる。
HIP法では、上記原料粉末を所定形状の容器に充填し、HIP法を用いて容器内の粉末を加圧固化させる。使用する容器は、例えば、金属製でも、セラミック製でも、ガラス製でもよい。また、真空脱気して、原料粉末を容器に充填、封入することが好ましい。
また、ワイヤ50は、ワイヤ保持装置10に保持(固定)されているため、長期間連続で装着されていても、スロット33からワイヤ50が脱落する心配がなく使用することができる。
例えば、上記実施例のワイヤ保持装置は、従来のワイヤ保持装置と同様に、純チタン以外の金属材料やセラミクスにより作製されてもよい。この場合、ワイヤ保持装置の歯の表面と接着する面には、機械加工、又は、メッシュ状の部材を貼り付けることにより、表面に凹凸を形成してもよい。
また、上記ネジ23の上端にフック等を形成し、スプリングや輪ゴムを掛け止めることができるようにしてもよい。
さらに、本実施例では、ネジ孔21aはスロット33の上側の第1突起部21にのみ形成されていたが、第2突起部22の、第1突起部21のネジ孔21aと対向する位置にネジ孔を形成し、ネジを第1突起部21と第2突起部22の両方のネジ孔に締め付けるようにしてもよい。この構成では、第1突起部21と第2突起部22との間を完全に閉じた状態にすることができるため、より確実にワイヤを保持することができる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は、複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
20:ワイヤ保持部
23:ネジ
30:ベース部
31:接着面
33:スロット
50:ワイヤ
80:歯科矯正装置
Claims (5)
- 歯科矯正用ワイヤを保持する歯科矯正用のワイヤ保持装置であって、
一方の面が歯の表面に取り付けられるベース部と、
それぞれがベース部の他方の面から突出しており、所定の間隔を空けて配された少なくとも一対の突起部と、
突起部の少なくとも一方に、その突起部を、ベース部の他方の面に対して平行に貫通すると共にその一端が他方の突起部に向かって開口するネジ孔と、
そのネジ孔と螺合し、その先端が突起部間に突出した状態と、突起部間から退避した状態とに切換えられる雄ネジと、を備えており、
突起部間のスロットには、歯科矯正用ワイヤが挿通され、
雄ネジの先端が突起部間に突出した状態では、スロットに挿通されたワイヤが、雄ネジとスロットの内周面に挟持されることによって、スロットに挿通されたワイヤがスロットから脱落することが防止されることを特徴とするワイヤ保持装置。 - 雄ネジを除く各部が純チタンにより作製されていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ保持装置。
- 雄ネジは六角ネジであることを特徴とする請求項1又は2に記載のワイヤ保持装置。
- 歯列の内側に取付けられ、歯列弓を拡大する歯科矯正装置であって、
歯の内側の表面に接着された少なくとも1つの請求項1から3のいずれか1項に記載のワイヤ保持装置と、
そのワイヤ保持装置のスロットに挿通されたワイヤと、
を備えていることを特徴とする歯科矯正装置。 - ワイヤが、低ヤング率で高弾性変形能なチタン合金で作製されていることを特徴とする請求項4に記載の歯科矯正装置。
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