しかしながら、上記特許文献1のシステムでは、複数の分岐ライン52のうちいずれかが開放されると液体が供給ライン51からその分岐ライン52に流入するため、供給ライン51を流れる液体の流量が当該分岐ライン52の分岐点よりも下流側ではその分減少する。その結果、供給ライン51を流れる液体の圧力損失が当該分岐ライン52の分岐点よりも下流側では小さくなる。つまり、分岐ライン52が開閉されると供給ライン51内の液体圧力が変動し、それゆえ各分岐点において液体圧力が変動することとなる。これにより、各分岐ライン52を流れる液体の流量が変動するため、各ユースポイントに供給される液体の供給流量が変動してしまう。
また、供給ライン51内の液体圧力は、圧力計54の圧力検出位置では一定に制御されるが、その他の位置では圧力検出位置から離れるほど大きく変動する。そのため、上記特許文献1のシステムのように供給ライン51において圧力計54を複数の分岐ライン52の各分岐点よりも下流側に設ける構成とすると、圧力計54の近くにある下流側の分岐点では圧力変動が小さくなるが、圧力計54から離れた位置にある上流側の分岐点では圧力変動が大きくなると考えられる。したがって、圧力計54から最も離れた位置にある最上流側の分岐点では圧力変動がとりわけ大きくなり、その結果最上流側の分岐点から分岐ライン52へ流入する液体の流量が大きく変動してシステム上許容された流量範囲を超えてしまうおそれがある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、複数のユースポイントへ液体を分配供給する場合において、各ユースポイントへ供給する液体の流量変動を抑制することができる液体供給システムを提供することを主たる目的とするものである。
上記課題を解決するために、第1の発明の液体供給システムは、液体を流通させる液体通路と、該液体通路の途中に設けられ前記液体を圧送する圧送手段と、前記液体通路から分岐させて設けられた複数の分岐通路と、前記液体通路内における液体圧力を検出する圧力検出手段と、を備え、前記複数の分岐通路を個別に開閉して当該分岐通路における液体の流通を許可又は禁止する一方、前記圧力検出手段により検出した液体圧力が目標値に一致するよう圧力調整用アクチュエータの操作により圧力フィードバック制御を実施する液体供給システムにおいて、前記圧力検出手段により液体圧力が検出される圧力検出位置が、前記液体通路において前記複数の分岐通路の各分岐点のうち最も上流側に位置する最上流分岐点と最も下流側に位置する最下流分岐点との間に設定されていることを特徴とする。
本発明における液体供給システムでは、液体通路から分岐する複数の分岐通路を通じて各液体供給先(ユースポイント)に液体が供給される。そして、液体通路内の液体圧力を圧力調整用アクチュエータの操作により圧力フィードバック制御することで各液体供給先に供給される液体の供給流量の変動を抑制している。
ところで、液体通路内の圧力を圧力フィードバック制御する場合には、圧力検出手段の圧力検出位置では液体圧力が一定に制御されるものの、圧力検出位置から離れたその他の部位(各分岐点)では液体圧力が圧力検出位置に対して増加又は低下し、さらにその圧力増加量又は圧力低下量が、分岐通路の開閉により液体通路内の液体流量が変わることで変動する。具体的には、分岐通路が開放されてその分岐通路に液体が流れ込むと、その開放された分岐通路の分岐点よりも下流側ではその分液体通路を流れる液体流量が減少する。その結果、液体通路内の圧力損失が減少し、各分岐点での圧力変動(言い換えれば、圧力増加量、圧力低下量のばらつき)が生じる。
その点、本発明では、圧力検出位置が液体通路において最上流分岐点と最下流分岐点との間に設定されているため、分岐通路が開放されることに伴い液体通路における圧力損失が減少した場合に、圧力検出位置よりも上流側では液体圧力の低下が生じるとともに、圧力検出位置よりも下流側では液体圧力の増加が生じる。つまり、分岐ラインの開放に起因する圧力変動を、圧力検出位置よりも上流側の圧力低下分と圧力検出位置よりも下流側の圧力増加分とに分散させることができ、各分岐点における圧力変動を相対的に小さくすることができる。最上流分岐点よりも上流側又は最下流分岐点よりも下流側に圧力検出位置を設定した場合を比較対象とすれば、その比較対象では圧力変動分の分散がないために各分岐点での圧力変動が全体として大きくなるのに対し、本発明では、圧力変動分の分散により各分岐点での圧力変動を相対的に小さくできる。以上により、各分岐通路を流れる液体の流量変動を抑制することができる。したがって、各ユースポイントへ供給する液体の流量変動を抑制することができる。
なお、「複数の分岐通路」は、本液体供給システムの稼動に際し、液体の供給先である所定のユースポイントに対して液体を各々給送するための液体給送通路であり、換言すれば、流量制御の対象となる制御対象通路である。ゆえに、液体通路内の液体を外部に排出する場合等に用いる廃液通路は「複数の分岐通路」に含まれない。また、分岐通路として使用可能であっても、実際には所定のユースポイントへの液体供給に使用されていない分岐通路は「複数の分岐通路」に含まれない。
第2の発明の液体供給システムは、第1の発明において、前記圧力検出位置が、前記複数の分岐通路の全てを開放及び閉鎖することにより生じる前記液体通路内の圧力損失による前記最上流分岐点の圧力変動量と、同じく前記複数の分岐通路の全てを開放及び閉鎖することにより生じる前記液体通路内の圧力損失による前記最下流分岐点の圧力変動量とがほぼ等しくなる位置に設定されていることを特徴とする。
複数の分岐通路の全てを開放及び閉鎖することにより生じる最上流分岐点及び最下流分岐点の圧力変動量は、液体通路内で生じる圧力損失の最大変化幅に相当する。なおこの場合、分岐通路が開放されてその下流側で液体通路の液体流量が減ると、圧力損失がその分小さくなる。ゆえに、圧力検出位置が最上流分岐点と最下流分岐点との間にある構成では、最上流分岐点での圧力変動量は分岐通路開放に伴い圧力減少する方向の圧力変動量となり、最下流分岐点での圧力変動量は分岐通路開放に伴い圧力増加する方向の圧力変動量となる。
上記のように最上流分岐点の圧力変動量と最下流分岐点の圧力変動量とがほぼ等しくなる位置に圧力検出位置が設定されていることにより、圧力損失に起因して生じる液体圧力の増加及び減少を液体通路内で好適に分散し、ひいては液体通路で生じる圧力変動量を最小限に抑えることができる。これにより、分岐通路を通じて各ユースポイントへ供給する液体の流量変動を最小限に抑えることができる。
第3の発明の液体供給システムは、前記圧力検出位置が、前記圧力検出位置よりも上流側の分岐通路ごとの液体流量の総和と前記圧力検出位置よりも下流側の分岐通路ごとの液体流量の総和とがほぼ等しくなる位置に設定されていることを特徴とする。
液体通路内の圧力損失は液体流量の二乗に比例して大きくなるため、液体流量の差は液体の圧力損失に大きな影響を及ぼす。その点、本発明によれば、圧力検出位置を挟んで上流側の液体流量の総和と下流側の液体流量の総和とがほぼ等しいため、分岐通路の開閉により液体通路で液体流量の変動が生じても、圧力損失の変動を圧力検出位置よりも上流側と下流側とにそれぞれ同等に分散させることができる。これにより、液体通路において各分岐点における圧力変動をより小さくすることができるため、分岐通路を通じて各ユースポイントへ供給する液体の流量変動をより一層抑制することが期待できる。
第4の発明の液体供給システムは、前記複数の分岐通路を流れる液体の流量が全て同じである液体供給システムにおいて、前記圧力検出位置を挟んで上流側の分岐通路数と下流側の分岐通路数とが同じである、又は分岐通路数の差が1であることを特徴とする。
本発明によれば、圧力検出位置を挟んで上流側の液体流量の総和と下流側の液体流量の総和とがほぼ等しくなる構成を実現できる。これにより、分岐通路の開閉により液体通路で液体流量の変動が生じても、圧力損失の変動を圧力検出位置よりも上流側と下流側とにそれぞれ同等に分散させることができ、液体通路において各分岐点における圧力変動をより小さくすることができる。
なお、分岐通路数が偶数であれば、圧力検出位置を挟んで上流側の分岐通路数と下流側の分岐通路数とを同じにし、分岐通路数が奇数であれば、圧力検出位置を挟んで上流側の分岐通路数と下流側の分岐通路数との差を1にすればよい。
第5の発明の液体供給システムは、前記圧力調整用アクチュエータとして、前記複数の分岐通路の各分岐点よりも上流側又は下流側に設けられ前記液体通路内の液体圧力を調整する圧力調整弁と、該圧力調整弁の開度調整に用いられる操作圧力を調整する操作圧力調整手段とを備え、前記圧力検出手段により検出した液体圧力が目標圧力となるように前記操作圧力調整手段の操作圧力を制御することを特徴とする。
本発明によれば、操作圧力調整手段の操作圧力を制御することで圧力調整弁の開度が変更され、それに伴い液体通路内の液体圧力を適正に制御することができる。本発明では、液体通路において最上流分岐点と最下流分岐点との間に圧力検出位置が設定されているのに対し、液体通路において最上流分岐点よりも上流側又は最下流分岐点よりも下流側に圧力調整弁が設けられる構成となっている。こうして圧力検出位置と圧力調整弁とが離間してそれぞれ設けられる構成にあっても、上記のとおり各分岐通路を流れる液体の流量変動を抑制することができる。
なお、圧力調整弁として、複数の分岐通路の各分岐点よりも下流側にパイロット作動式のリリーフ弁を設けるとともに、操作圧力調整手段により、リリーフ弁に作用するパイロット圧を調整する構成が考えられる。かかる場合、パイロット圧を制御することでリリーフ弁による圧力開放(圧力リリース)の程度が変更され、それに伴いリリーフ弁の一次側圧力(すなわち、リリーフ弁よりも上流側の液体圧力)を適正に制御することができる。こうして各分岐通路の分岐点よりも下流側で圧力制御を行う構成では、仮にリリーフ弁でパーティクル(ゴミ等)が発生したとしても、そのパーティクルが各分岐通路に流入することはない。したがって、液体の清浄さを保つ上でも有利であると言える。
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図面に従って説明する。本実施の形態における液体供給システムの概要を図1に基づいて説明する。図1の液体供給システムは、一例として、半導体製品や化学薬品等の製造時において複数の装置(ユースポイント)に薬液を分配供給するためのシステムを想定したものである。
図1において、液体タンク11には液体として薬液が貯留されている。液体タンク11には供給ライン12が接続され、その供給ライン12には、液体タンク11内の液体を汲み上げるとともに所定流量でライン下流側に吐出(圧送)するポンプ13が設けられている。供給ライン12は、液体タンク11を液体供給源として液体を循環させるものであり、ライン始端部及びライン終端部が共に液体タンク11に接続されている。
供給ライン12には、当該ライン12を流通する液体を複数の装置等に分配供給するための複数の分岐ラインが接続されており、これら各分岐ラインを上流側から下流側に向かって順にLN1,LN2,LN3,…,LNnとしている。供給ライン12及び分岐ラインLN1〜LNnは、金属材料又は合成樹脂材料よりなる配管にて構成されており、これらにより「液体通路」及び「複数の分岐通路」が形成されている。また、分岐ラインLN1〜LNnは、通路開口面積がいずれも同一である複数の配管により構成されている。この供給ライン12において各分岐ラインLN1〜LNnとの接続部位はそれぞれ上流側から下流側に向かって順に分岐点C1,C2,C3,…,Cnとなっている。そして、供給ライン12における最上流の分岐ラインLN1と最下流の分岐ラインLNnとの間は複数の分岐点C1〜Cnが存在する分岐区間Lxとなっている。
各々の分岐ラインLN1〜LNnには、当該分岐ラインを開閉して液体の通過を許可又は禁止する開閉弁21と、流量調整のための可変絞り22とがそれぞれ設けられている。各分岐ラインLN1〜LNnの開閉弁21は、手動操作又は電気的な操作のいずれかにより開放又は閉鎖され、いずれかの開閉弁21が開放されると、その開状態の開閉弁21に対応する分岐ラインを通じて液体が流れる。
本システムには、供給ライン12の液体圧力を検出する圧力センサ33が設けられている。また、供給ライン12における分岐区間Lxよりも下流側には、供給ライン12を流通する液体の圧力調整を行うリリーフ弁31と、該リリーフ弁31に供給する操作エアの圧力を調整する電空レギュレータ32とが設けられている。なお、リリーフ弁31及び電空レギュレータ32が圧力調整用アクチュエータに相当する。
リリーフ弁31はパイロット作動式の圧力調整弁であり、その構成を図2により簡単に説明する。リリーフ弁31において、液体入口側である一次側通路41と液体出口側である二次側通路42との間には、ダイアフラム部43を一体的に有する弁体44が設けられ、弁体44の変位により一次側通路41及び二次側通路42を介しての液体の流通が阻止又は許容される。このとき、一次側通路41内の液体圧力(一次側圧力)がダイアフラム部43に作用することで弁体44が開側に変位し、一次側通路41内の液体が二次側通路42に流出する。
また、リリーフ弁31には、外部から操作エアを導入する操作エア室46が設けられており、弁体44には前記一次側圧力と逆向きに操作エア室46内の圧力(操作エア圧力)が作用するようになっている。この操作エア圧力がパイロット圧に相当する。操作エア室46はエア入出ポート47に連通しており、電空レギュレータ32から供給される操作エアがエア入出ポート47を介して導入されることで操作エア圧力が可変調整される。この場合、操作エア圧力が増大されると、弁体44の開度が閉じ側に制御され、結果として当該リリーフ弁31による圧力開放(圧力リリース)の程度が減じられる。なお、リリーフ弁31の構成として、電空レギュレータ32を一体化させて設けることも可能である。
図1の説明に戻り、本液体供給システムは、液体圧力を制御するためのコントローラ30を備えている。コントローラ30は、CPUや各種メモリ等を有するマイクロコンピュータを主体として構成される電子制御装置である。コントローラ30には、圧力センサ33から圧力検出信号が逐次入力される。コントローラ30は、この圧力検出信号から算出した液体圧力(実圧力)に基づいて、電空レギュレータ32から排出される操作エアの圧力を調整する。電空レギュレータ32によって操作エア圧力が調整されることにより、供給ライン12の液体圧力(リリーフ弁31の一次側圧力)が都度の設定圧力に制御される。なおこのとき、設定圧力は、作業者による外部入力によって設定されるか、或いは都度の最適値となるようにコントローラ30の演算処理によって設定されると良い。
上記構成の液体供給システムでは、基本的に供給ライン12内の液体圧力が、都度の設定圧力(目標値)にフィードバック制御される。より具体的には、例えばPID等の制御手法を用い、設定圧力と実圧力(圧力センサ33による計測圧力)との偏差に基づいて電空レギュレータ32に対する制御指令値が算出されるとともに、該制御指令値に基づく信号出力により圧力制御が行われる。上記のフィードバック制御により、任意の分岐ラインLN1〜LNnを通じて液体が流れることによって供給ライン12の液体圧力が変化しても、その後速やかに元の設定圧力に復帰できるようになっている。
ところで、上記構成の液体供給システムでは、分岐ラインLN1〜LNnの開閉により供給ライン12における液体の圧力損失が変動し、結果として各分岐点C1〜Cnにおいて圧力変動が生じる。また、圧力センサ33により圧力検知される位置、すなわち圧力検出位置Kを変更することにより各分岐点C1〜Cnにおける圧力変動の大きさが変わる。本実施形態では、供給ライン12の分岐区間Lxにおいて中間位置(最上流分岐点と最下流分岐点との間)に圧力検出位置Kを設定することで、各分岐点C1〜Cnでの圧力変動を低減することとしている。以下、その詳細を説明する。
まず、各分岐点C1〜Cnにおける圧力変動について図3に基づいて説明する。図3(a)は供給ライン12における圧力検出位置Kを示す図、図3(b)は供給ライン12における流路位置と圧力との関係を示すグラフ、図3(c)は供給ライン12における流路位置と液体流量との関係を示すグラフである。なお、図3(b)では横軸に流路位置を、縦軸に圧力を示し、図3(c)では横軸に流路位置を、縦軸に液体流量を示す。
図3では、説明の便宜上、分岐ラインをLN1〜LN3の3本のみとし、隣り合う2つの分岐点C1−C2間及び分岐点C2−C3間の距離をいずれもLとする。また、圧力検出位置Kは分岐点C2−C3間の中間(分岐点C2よりもL/2下流側)に設定されており、供給ライン12内の液体圧力がその圧力検出位置KにおいてPo(基準圧力)となるように圧力フィードバック制御が実施されている。
また、図3(b)では、供給ライン12において圧力損失が最大となる全分岐ラインLN1〜LN3の閉鎖時における圧力を実線で示し、供給ライン12において圧力損失が最小となる全分岐ラインLN1〜LN3の開放時における圧力を破線で示す。図3(c)では、全分岐ラインLN1〜LN3の閉鎖時における液体流量を実線で示し、全分岐ラインLN1〜LN3の開放時における液体流量を破線で示す。
図3(a)の構成の液体供給システムでは、分岐ラインLN1〜LN3のうち任意の分岐ラインLNiの開閉弁21が開放されると、その開閉弁21が開放された分岐ラインLNiに対して供給ライン12から液体が流れ込む。そして、その分岐ラインLNiの分岐点Ciよりも下流側では供給ライン12を流通する液体の流量がその分減少する。したがって、供給ライン12において分岐点C1−C2間を流通する液体の流量Q1及び分岐点C2−C3間を流通する液体の流量Q2は、例えば各分岐ラインN1〜N3が全て閉鎖された状態ではそれぞれ最大(つまりポンプ13による供給流量と同じ流量)となり、各分岐ラインN1〜N3が全て開放された状態ではそれぞれ最小となる。ここで、ポンプ13により供給ライン12に供給される液体の流量をQt、分岐ラインLN1〜LN3の開放時に分岐ラインLN1〜LN3に流通される液体の流量をそれぞれQaとすると(なお、Qt>3Qa)、図3(c)に示すように、液体流量Q1,Q2の最大値はともにQtとなり(実線)、液体流量Q1,Q2の最小値はそれぞれ(Qt−Qa),(Qt−2Qa)となる(破線)。
ところで、供給ライン12を流通する液体の圧力損失ΔPは、当該液体の流通距離d及び液体流量Qの2乗と正比例の関係にあり、具体的には以下の(1)式により求められる。
ΔP=4f(ρQ2/2)(d/D) …(1)
ここで、fは供給ライン12の管摩擦係数、ρは液体の密度、Dは供給ライン12の管内径であるが、以下の説明を簡略化するためにf、ρ及びDの各値を固定値(定数)とし、上記(1)式を以下の(2)式のように簡略化して表す。
ΔP=αdQ2 …(2)
なお、αは、α=4f(ρ/2)(1/D)により求められる固定値である。
この(2)式によれば、分岐点C1−C2間及び分岐点C2−C3間における圧力損失ΔP1,ΔP2は、液体流量Q1,Q2の二乗に比例して変動することがわかる。図3(b)では、分岐点C1−C2間の圧力差が圧力損失ΔP1に相当し、分岐点C2−C3間の圧力差が圧力損失ΔP2に相当する。また、図3(c)では、分岐ラインLN1〜LN3の開放に伴い、分岐区間Lxにおいて図示のごとく流量減少が生じる。このとき、式(2)によれば、実線で示す圧力損失最大時(全分岐ラインLN1〜LN3の閉鎖時)には、分岐点C1−C2間の圧力損失ΔP1、分岐点C2−C3間の圧力損失ΔP2が共に最大値αLQt2になる(ΔP1=ΔP2)。また、破線で示す圧力損失最小時(全分岐ラインLN1〜LN3の開放時)には、分岐点C1−C2間の圧力損失ΔP1が最小値αL(Qt−Qa)2になるとともに、分岐点C2−C3間の圧力損失ΔP2が最小値αL(Qt−2Qa)2になる(ΔP1>ΔP2)。つまり、分岐ラインLN1〜LN3の閉鎖時には、各分岐点間での圧力損失が同一になる(分岐点間の距離がいずれもLであるため)。また、分岐ラインLN1〜LN3の開放時には、各分岐点間の上流側ほど圧力損失が大きくなる。
ここで、圧力検出位置Kが基準圧力Poで保持されている場合、その圧力検出位置Kよりも上流側では液体圧力が基準圧力Poよりも高い圧力になり、圧力検出位置Kよりも下流側では液体圧力が基準圧力Poよりも低い圧力となる。また、圧力損失最大時の液体圧力(実線)と圧力損失最小時の液体圧力(破線)とを比較すると、圧力検出位置Kよりも上流側では、「圧力損失最大時の液体圧力>圧力損失最小時の液体圧力」となるのに対し、圧力検出位置Kよりも下流側では、「圧力損失最大時の液体圧力<圧力損失最小時の液体圧力」となる。つまり、分岐ラインLN1〜LN3の開放状態では、分岐区間Lxにおいて流量減少が生じ(図3(c)参照)、それに伴い同ラインLN1〜LN3の閉鎖状態に比べて、圧力検出位置Kよりも上流側及び下流側での圧力損失分が小さくなる。したがって、分岐ラインLN1〜LN3の開放時には、圧力損失分の低下に伴い圧力検出位置Kよりも上流側で液体圧力の低下が生じるのに対し、圧力検出位置Kよりも下流側で液体圧力の上昇が生じる。
このとき、圧力損失最大時における分岐点C1,C3での液体圧力をP1,P3、圧力損失最小時における分岐点C1,C3での液体圧力をP1’,P3’とし、最上流の分岐点C1で生じうる圧力変動量をSA=P1−P1’、最下流の分岐点C3で生じうる圧力変動量をSB=P3’−P3とすると、SA≒SBとすることが望ましい。
要するに、分岐区間Lxでは、その中間位置(最上流分岐点と最下流分岐点との間)に圧力検出位置Kが設定されることで、分岐ラインLN1〜LN3の開放に起因する圧力変動が、圧力検出位置Kよりも上流側の圧力低下分と下流側の圧力増加分とに分散されることとなる。したがって、分岐区間Lxにおいて各分岐点C1〜C3での圧力変動が相対的に小さくなり、各分岐点C1〜C3での圧力変動による流量変動を抑制できる。
次に、供給ライン12の分岐区間Lxにおいて中間位置に圧力検出位置Kを設定することで各分岐点C1〜Cnでの圧力変動を低減できることについて、分岐区間Lxよりも上流側及び下流側に圧力検出位置Kを設定した場合と比較しつつ補足説明する。図4は供給ライン12における圧力検出位置Kを示す図であり、図5は供給ライン12における流路位置と圧力との関係を示すグラフである。なお、図4(a)〜(d)に示す各液体供給システムの構成は、圧力検出位置Kを除いて先の図3(a)と同じである(但し、図4(c)については圧力検出位置Kも含めて図3(a)と同じ構成である)。
また、図4では圧力検出位置Kの位置が各々異なり、圧力検出位置Kが、(a)では最上流の分岐点C1よりも上流側に、(b)では分岐点C1−C2間に、(c)では分岐点C2−C3間に、(d)では最下流の分岐点C3よりも下流側に設定されている。より具体的には、図4において(a)では、最上流の分岐点C1よりも距離L/2だけ上流側に圧力検出位置Kが設定され、(b)では、分岐点C1−C2間の中央位置(C1,C2から各々L/2離れた位置)に圧力検出位置Kが設定され、(c)では、分岐点C2−C3間の中央位置(C2,C3から各々L/2離れた位置)に圧力検出位置Kが設定され、(d)では、最下流の分岐点C3よりも距離L/2だけ下流側に圧力検出位置Kが設定されている。そして、図4(a)〜(d)に示す各圧力検出位置Kにおける供給ライン12での流路位置と圧力との関係を図5にてそれぞれ(a)〜(d)に示す。図5では、横軸に流路位置を示し、縦軸に圧力を示す。また、図5では、供給ライン12において圧力損失が最大となる全分岐ラインLN1〜LN3の閉鎖時における圧力を実線で示し、供給ライン12において圧力損失が最小となる全分岐ラインLN1〜LN3の開放時における圧力を破線で示す。
まず、図4(a)に示すように圧力検出位置Kが分岐区間Lxの上流側に設定されている場合、図5(a)に示すように、全分岐ラインLN1〜LN3の開放状態(破線)では同ラインLN1〜LN3の閉鎖状態(実線)に比べて、圧力検出位置Kよりも下流側に位置する分岐区間Lxにおいて液体圧力が上昇する。このとき、分岐区間Lx(分岐点C1〜C3)では圧力上昇のみが生じ、圧力変動が上昇分と低下分とに分散されない。図5(a)では、圧力検出位置Kから最も離れた位置にある最下流の分岐点C3での圧力変動量が最大となり、その圧力変動量はSa(max)である。
次に、図4(b)に示すように圧力検出位置Kが分岐点C1−C2間に設定されている場合には、図5(b)に示すように、全分岐ラインLN1〜LN3の開放状態(破線)では同ラインLN1〜LN3の閉鎖状態(実線)に比べて、圧力検出位置Kよりも上流側で液体圧力が低下しているのに対し、圧力検出位置Kよりも下流側では液体圧力が上昇している。つまり、分岐区間Lx(分岐点C1〜C3)では圧力変動が上昇分と低下分とに分散されている。図5(b)では、分岐点C3での圧力変動量が最大となり、その圧力変動量はSb(max)である。
図4(c)に示すように圧力検出位置Kが分岐点C2−C3間に設定されている場合には、図5(c)に示すように、全分岐ラインLN1〜LN3の開放状態(破線)では同ラインLN1〜LN3の閉鎖状態(実線)に比べて、圧力検出位置Kよりも上流側で液体圧力が低下しているのに対し、圧力検出位置Kよりも下流側では液体圧力が上昇している。つまり、分岐区間Lx(分岐点C1〜C3)では圧力変動が上昇分と低下分とに分散されている。これは図5(b)と同等である。図5(c)では、分岐点C1での圧力変動量が最大となり、その圧力変動量はSc(max)である。
次に、図4(d)に示すように圧力検出位置Kが分岐区間Lxの下流側に設定されている場合には、図5(d)に示すように、全分岐ラインLN1〜LN3の開放状態(破線)では同ラインLN1〜LN3の閉鎖状態(実線)に比べて、圧力検出位置Kよりも上流側に位置する分岐区間Lxにおいて液体圧力が低下する。このとき、分岐区間Lx(分岐点C1〜C3)では圧力低下のみが生じ、圧力変動が上昇分と低下分とに分散されない。図5(d)では、最上流の分岐点C1での圧力変動量が最大となり、その圧力変動量はSd(max)である。
ここで、図5(a)〜(d)における圧力変動量の最大値Sa(max)〜Sd(max)を大小比較すると、
Sc(max)<Sb(max)<Sa(max)<Sd(max)
となる。これは、圧力検出位置Kが分岐点C1−C2間又は分岐点C2−C3間(いずれも分岐区間Lxの中間位置)に設定されている場合に、分岐区間Lxの上流側又は下流側に設定されている場合よりも圧力変動量が小さくなることを意味する。
ところで、以上説明した内容は、分岐ラインとして3本の分岐ラインLN1〜LN3を用いた場合に限らず、分岐ラインが2本の場合や4本以上の場合にもそのまま適用することができる。そこで、分岐ラインとして10本の分岐ラインLN1〜LN10を用いた場合の例を図6に基づいて説明する。
図6では、分岐点C1〜C10により区分される各分岐点間の距離のうち、分岐点C5−C6間の距離を2L、その他の各分岐点間の距離をいずれもLで同一としている。そして、圧力検出位置Kが、分岐点C5−C6間の中央位置(C5,C6から各々L離れた位置)に設定されている。また、各分岐ラインLN1〜LN10の液体流量はいずれもQaで同一となっている(なお、Qt>10Qa)。つまり、図6の構成では、各分岐ラインLN1〜LN10の液体流量が全て同じである構成において、圧力検出位置Kを挟んで上流側の分岐ライン数(=5)と下流側の分岐ライン数(=5)とが同じになっている。また、本構成では、圧力検出位置Kが、圧力検出位置Kよりも上流側の分岐ラインごとの液体流量の総和(=Qa×5)と圧力検出位置Kよりも下流側の分岐ラインごとの液体流量の総和(=Qa×5)とがほぼ等しくなる位置に設定されている。
この場合、圧力検出位置Kが分岐区間Lxにおける中間位置に設定されているため、上記と同様に、分岐ラインLN1〜LN10の開放に起因する圧力変動が供給ライン12において圧力検出位置Kよりも上流側の圧力低下分と下流側の圧力増加分とに分散される。したがって、供給ライン12において各分岐点C1〜C10における圧力変動が抑制される。
また、圧力検出位置Kを挟んで上流側の液体流量の総和と下流側の液体流量の総和とが等しくなっているため、分岐ラインLN1〜LN10の開閉に伴い供給ライン12にて液体圧力が変動してもその変動を供給ライン12において上流側と下流側とにそれぞれ同等に分散させることができる。これにより、供給ライン12における各分岐点C1〜C10での圧力変動がより小さくなる。
なお、ここでは分岐ラインの本数が偶数(n=10)である場合を例として圧力検出位置Kを挟んで上流側及び下流側の分岐ライン数を同数となるように圧力検出位置Kを設定したが、例えば分岐ラインの本数が奇数(例えば、n=11)である場合には、圧力検出位置Kを挟んで上流側及び下流側の分岐ライン数の差が1となるように圧力検出位置Kを設定すればよい。
以上詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
圧力検出位置Kを分岐区間Lxにおける中間位置に設定することにより、分岐ラインLN1〜LNnの開放に起因して生じる圧力変動が、圧力検出位置Kよりも上流側の圧力低下分と下流側の圧力上昇分とに分散される。これにより、各分岐点C1〜Cnにおける圧力変動が抑制され、分岐ラインLN1〜LNnを流通する液体の流量変動を抑制することができる。その結果、各ユースポイントへ供給する液体の流量変動を抑制することができる。
圧力検出位置Kよりも上流側の分岐ラインごとの液体流量の総和と圧力検出位置Kよりも下流側の分岐ラインごとの液体流量の総和とが等しくなる位置に圧力検出位置Kを設定すること(例えば、図6では、「分岐ラインLN1〜LN5の液体流量の総和=分岐ラインLN6〜LN10の液体流量の総和」となるように圧力検出位置Kを分岐点C5−C6間に設定したこと)により、分岐ラインLN1〜LNnの開放に起因して生じる圧力変動が圧力検出位置Kよりも上流側と下流側とにそれぞれ同等に分散される。これにより、供給ライン12において各分岐点C1〜Cnにおける圧力変動がより小さくなるため、分岐ラインLN1〜LNnを通じて各ユースポイントへ供給する液体の流量変動をより一層抑制することができる。
各分岐ラインLN1〜LNnを流れる液体の流量が全て同じである場合において、圧力検出位置Kを挟んで上流側の分岐ライン数と下流側の分岐ライン数とが同じとなる位置(例えば図6における分岐点C5−C6間)に圧力検出位置Kを設定することにより、圧力検出位置Kよりも上流側及び下流側の液体流量の総和をそれぞれ等しくした。この場合、分岐ライン数によって、各分岐点C1〜Cnにおける液体圧力の変動を抑制する上で適正な圧力検出位置Kを容易に設定できる。
供給ライン12において分岐区間Lxよりも下流側にリリーフ弁31を設けた。これにより、電空レギュレータ32によりパイロット圧を制御することでリリーフ弁31による圧力開放(圧力リリース)の程度が変更され、それに伴いリリーフ弁31の一次側圧力(すなわち、リリーフ弁31よりも上流側の液体圧力)を適正に制御することができる。つまり、このようにリリーフ弁31が圧力検出位置Kに対し離間して設けられる構成であっても各分岐ラインLN1〜LNnを流れる液体の流量変動を抑制することができる。また、このように各分岐点C1〜Cnよりも下流側で圧力制御を行う構成では、仮にリリーフ弁31でパーティクル(ゴミ等)が発生したとしても、そのパーティクルが各分岐ラインLN1〜LNnに流入することはない。よって、液体の清浄さを保つ上でも有利であると言える。
本発明は上記実施形態に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
(1)供給ライン12における各分岐点の間隔を任意に変更することが可能である。この場合、各分岐点の間隔を不同とする。また、供給ライン12において圧力検出位置Kを挟んで上流側と下流側とで非対称に各分岐点の間隔を設定することも可能である。
(2)分岐ラインLN1〜LNnごとの液体流量を不同に設定する。こうして各分岐ラインの流体流量が不同である場合に、圧力検出位置が、圧力検出位置よりも上流側の液体流量の総和と圧力検出位置よりも下流側の液体流量の総和とがほぼ等しくなる位置に設定されていることが望ましい。これにより、供給ライン12において各分岐点における圧力変動を小さくすることができる。
(3)2つの隣り合う分岐点間に圧力検出位置を設定する場合において、それら2つの分岐点のいずれか一方に近接して圧力検出位置を設定する構成でもよい。又は、分岐区間Lxにおいて最上流の分岐点と最下流の分岐点とを除くいずれかの分岐点と同位置に圧力検出位置を設定することも可能である。この場合、圧力検出位置と同位置となる分岐点では、圧力誤差がほとんど生じなくなる。したがって、複数の分岐点の中に特に高精度に制御したい分岐ラインが含まれる場合には有利な構成となる。
(4)供給ライン12を重力方向に延びるように設け、当該供給ライン12に対して複数の分岐ラインLN1〜LNnを接続してもよい。この場合においても分岐区間Lxにおける中間に圧力検出位置Kを設定すれば、各分岐点C1〜Cnにおける圧力変動を抑制することができ、ひいては分岐ラインLN1〜LNnを流れる液体の流量変動を抑制することができる。これにより、液体供給システムを縦置き型として製品化することが可能となるため、半導体製品や化学薬品等の製造工場において本システムを設置する際には大きな設置スペースを必要としなくて済む。但し、このようなシステムでは供給ライン12を液体が重力方向に流れるため供給ライン12における液体圧力には供給ライン12内の液体の水頭圧が含められる。そのため、適切な圧力検出位置Kを定める際にはその点を考慮する必要がある。
(5)上記実施形態では、供給ライン12において分岐区間Lxよりも下流側に圧力調整弁としてのリリーフ弁31を設ける構成としたが、これを変更してもよい。例えば、供給ライン12において分岐区間Lxよりも上流側に、圧力調整弁としてのパイロット作動式のレギュレータと、該レギュレータに供給する操作エアの圧力(パイロット圧)を調整する電空レギュレータとを設ける構成としてもよい。
この場合、コントローラが、圧力センサ33からの圧力検出信号から算出した液体圧力(実圧力)に基づいて電空レギュレータ32から排出される操作エアの圧力を調整する。これにより、供給ライン12の液体圧力(レギュレータの二次側圧力)が都度の設定圧力に制御される。よって、レギュレータが圧力検出位置Kに対して離間して設けられる構成であっても、各分岐ラインLN1〜LNnを流れる液体の流量変動を抑制することができる。
(6)上記実施形態では、リリーフ弁31に供給する操作エアの圧力を電空レギュレータ32により調整することで供給ライン12内の液体圧力を制御する構成としたが、リリーフ弁31の駆動方式を他の構成に変更してもよい。例えば、リリーフ弁31の開度調整をモータ駆動式とする。この場合、リリーフ弁31の開度がモータにより調整されることで、供給ライン12内の液体圧力を所望の圧力に制御できることとなる。
12…液体通路としての供給ライン、13…圧送手段としてのポンプ、30…制御手段としてのコントローラ、31…圧力調整用アクチュエータ(圧力調整弁)としてのリリーフ弁、32…圧力調整用アクチュエータ(操作圧力調整手段)としての電空レギュレータ、33…圧力検出手段としての圧力センサ、C1〜Cn…分岐点、K…圧力検出位置、LN1〜LNn…分岐通路としての分岐ライン。