JP5233190B2 - 旋回挙動制御装置、自動車、及び旋回挙動制御方法 - Google Patents
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Description
安部正人著「自動車の運動と制御」山海堂、平成4年7月10日、p.201
本発明の課題は、4輪操舵によって横すべり角のゼロ化を実現しつつ、操縦性や乗心地の向上を図ることである。
《第1実施形態》
《構成》
図1は、本発明の概略構成である。自動車1には、各車輪2i(i=FL、FR、RL、RR)を個別に転舵可能な転舵機構3iが搭載され、夫々をコントローラ4によって駆動制御し、運転者のステアリング操作に応じたステアリング・バイワイヤを行う。
転舵機構3iは、電動モータの回転を、非可逆特性を有するハイポイドギアを介してラック&ピニオンに伝達することで、車輪を転舵するように構成されている。
コントローラ4は、操舵角センサ5で検出するステアリングホイール6の操舵角と、車輪速センサ7で検出する各車輪速と、転舵角センサ8で検出する各転舵角とを入力し、後述する図3の駆動制御処理を実行する。なお、ステアリング・バイワイヤを行う際、運転者のステアリング操作に対して適度な操舵反力を付与するために、ステアリング系統に接続された反力モータ9の駆動制御を行うものとし、その説明は省略する。
先ずステップS1では、操舵角、各車輪速、各転舵角などの各種データを読込む。
続くステップS2では、各車輪速に基づいて車速Vを算出する。
続くステップS3では、下記に示すように、操舵角θに応じて目標旋回半径Rを設定する。REは操舵角θに対するゲインである。
1/R(s)=RE×θ(s)
RE=1/{(1+AV2)×L×n}
また、ノイズなど高調波の影響を小さくするために、下記に示すように、ローパスフィルタを介して過渡特性を考慮してもよい。
1/R(s)=RE×{1/(1+Ts)}×θ(s)
続くステップS4では、公転基準点Leを設定する。
続くステップS5では、目標自転中心Loを設定する。ここでは、後輪車軸よりも後方に目標自転中心Loを設定する。
続くステップS6では、目標旋回半径R、公転基準点Le、及び目標自転中心Loを実現するための目標横すべり角β、目標ヨーレートγを設定する。
β=−(Le/ρ)
また、下記に示すように、車両基準点Oが旋回半径ρ、車速Vで旋回するときの公転のヨーレート{V/ρ}と、車両座標自体が回転するときの自転のヨーレート{s(Le−Lo)/ρ}とを加算して目標ヨーレートγを算出する。自転のヨーレートは、公転基準点Leと目標自転中心Loとの距離の変化率である。
γ={V+s(Le−Lo)}/ρ
《作用》
次に、第1実施形態の作用について説明する。
従来の4WSでは、前輪舵角に対する後輪舵角を所定の伝達関数に従って制御することにより、車両の横すべり角をゼロにすることができる。また、運転者のステアリング操作に応じてヨーレートが一次遅れの応答となり、急なステアリング操作をするとヨーレートが大きくなり、これによって車両基準点の方向に旋回半径が小さくなる。このとき、図5に示すように、車体が重心点を軸に自転することになるが、その重心点よりも後方は旋回外側に張り出すことになるので、例えば狭い道路では車体後部の張り出しに注意しなければならない。しかも、自転中心よりも後方に運転席がある場合、自転によって運転席が旋回外側に変位することになるので、運転者に旋回外側への横加速度が作用することになり、これは旋回方向とは逆方向になるので、違和感を与え兼ねない。
また、図5に示すように、自転中心Loの位置を後輪車軸よりも後方に設定すれば、車両後部が旋回外側に張り出すことを抑制できるので、目標コースに対して自車両の横位置だけに注意して運転すれば、その目標コースに沿って走行することができるので、操縦性が向上する。
図6は、計算条件であり、車速40[km/h]で直進している状態から、操舵角を増加させたとする。図7は、前輪舵角と後輪舵角であり、本発明では従来技術よりも微分的な応答特性となる。図8は、横すべり角βとヨーレートγであり、従来技術も本発明も共に横すべり角βがゼロに追従するが、ヨーレートγについては、従来技術よりも本発明の方が増加する。図9は、車体の外形が描く軌跡であり、特に旋回の初期段階で車両後部の旋回外側への張り出しが抑制されることが確認できた。
上記の第1実施形態では、各車輪2iの全てを個別に転舵可能な転舵機構3iを搭載しているが、少なくとも前後輪の夫々を転舵できればよいので、例えば、図10に示すように、前輪2FL・2FRの舵角比を変更可能なギヤ比可変機構10と、後輪2RL・2RRを転舵可能な転舵機構11とを設けることで、前後輪の夫々を転舵するような構成であっても、上記の一実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
以上より、ステップS3の処理が「旋回半径設定手段」に対応し、ステップS4の処理が「公転基準点設定手段」に対応し、ステップS5の処理が「自転中心設定手段」に対応し、ステップS6の処理が「旋回挙動設定手段」に対応し、ステップS7の処理が「算出手段」に対応し、ステップS8の処理が「制御手段」に対応している。また、目標横すべり角β及び目標ヨーレートγが「目標旋回挙動」に対応している。
これにより、車両後部が旋回外側に張り出すことを抑制することができるので、操縦性が向上する。
(3)公転基準点設定手段は、旋回中心を通る車両左右方向の直線と車両前後方向の直線との交点でなる、車両進行方向と車両の向きが一致する点を、旋回中心の周りを公転するときの公転基準点として設定する。
これにより、公転基準点の位置を車両基準点に合わせるときに、確実に横すべり角のゼロ化を実現できる。
このように、目標旋回挙動の一要素である目標横すべり角を容易に設定できる。
(5)旋回挙動設定手段は、車両が目標旋回半径で旋回するときの公転によるヨーレートと、公転基準点及び目標自転中心の距離の変化率でなる自転によるヨーレートと、を加算して目標ヨーレートを設定する。
このように、目標旋回挙動の一要素である目標ヨーレートを容易に設定できる。
《構成》
第2実施形態は、運転者に旋回外側への横加速度が作用することを防ぐものである。
前記ステップS5の処理で、運転席よりも後方に目標自転中心Loを設定する。
《作用》
したがって、図11に示すように、自転中心Loの位置を運転席よりも後方に設定すれば、運転者は旋回内側へ移動することになり、旋回外側への横加速度が作用することがない。すなわち、自転中心Loに作用する横加速度αyは、下記に示すように、車速Vを一定とすると、操舵角θに対して線形の関係になるので、ステアリング操作に対して逆向きの横加速度αyが作用することはない。したがって、運転者に違和感を与えることがなく、乗心地が向上する。
αy=V(γ(s)+sβ(s))
=V{(V+s(Le−Lo))−s(Le−Lo)}REθ(s)
=V2REθ(s)=V2/ρ
図12は、横加速度であり、本実施形態では、旋回初期に旋回逆向きの横加速度を打ち消し、旋回方向と一致する旋回内側へ安定した横加速度が発生することを確認できた。
《効果》
(1)自転中心設定手段は、運転席よりも後方に目標自転中心を設定する。
これにより、運転者に旋回外側への横加速度が作用することを抑制できるので、乗心地が向上する。
2FL〜2RR 車輪
3FL〜3RR 転舵機構
4 コントローラ
5 操舵角センサ
6 ステアリングホイール
7 車輪速センサ
8 転舵角センサ
9 反力モータ
10 ギヤ比可変機構
11 転舵機構
Claims (7)
- 前後輪の夫々を転舵可能な転舵機構と、運転者のステアリング操作に応じて車両基準点から旋回中心までの目標旋回半径を設定する旋回半径設定手段と、前記旋回中心を通る車両左右方向の直線と車両前後方向の直線との交点でなる、車両進行方向と車両の向きが一致する点を、前記旋回中心の周りを公転するときの公転基準点として設定する公転基準点設定手段と、車両の目標自転中心を設定する自転中心設定手段と、前記旋回半径設定手段で設定した目標旋回半径、前記公転基準点設定手段で設定した公転基準点、及び前記自転中心設定手段で設定した目標自転中心に応じて、車両の目標旋回挙動を設定する旋回挙動設定手段と、該旋回挙動設定手段で設定した目標旋回挙動に応じて前後輪の目標転舵角を算出する算出手段と、該算出手段で算出した目標転舵角に応じて前記駆動機構を駆動制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする旋回挙動制御装置。
- 前記自転中心設定手段は、後輪車軸よりも後方に目標自転中心を設定することを特徴とする請求項1に記載の旋回挙動制御装置。
- 前記自転中心設定手段は、運転席よりも後方に目標自転中心を設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の旋回挙動制御装置。
- 前記旋回挙動設定手段は、車両基準点から前記公転基準点までの距離を前記目標旋回半径で除した値に基づいて目標横すべり角を設定することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の旋回挙動制御装置。
- 前記旋回挙動設定手段は、車両が前記目標旋回半径で旋回するときの公転によるヨーレートと、前記公転基準点及び前記目標自転中心の距離の変化率でなる自転によるヨーレートと、を加算して目標ヨーレートを設定することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の旋回挙動制御装置。
- 旋回挙動制御装置を備えた自動車において、
運転者によって操作されるステアリング操作子と、前後輪の夫々を転舵可能な転舵機構と、前記ステアリング操作子の操作量に応じて車両基準点から旋回中心までの目標旋回半径を設定する旋回半径設定手段と、前記旋回中心を通る車両左右方向の直線と車両前後方向の直線との交点でなる、車両進行方向と車両の向きが一致する点を、前記旋回中心の周りを公転するときの公転基準点として設定する公転基準点設定手段と、車両の目標自転中心を設定する自転中心設定手段と、前記旋回半径設定手段で設定した目標旋回半径、前記公転基準点設定手段で設定した公転基準点、及び前記自転中心設定手段で設定した目標自転中心に応じて、車両の目標旋回挙動を設定する旋回挙動設定手段と、該旋回挙動設定手段で設定した目標旋回挙動に応じて前後輪の目標転舵角を算出する算出手段と、該算出手段で算出した目標転舵角に応じて前記駆動機構を駆動制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする自動車。 - 前後輪の夫々を転舵可能な転舵機構を備え、
運転者のステアリング操作に応じて車両基準点から旋回中心までの目標旋回半径を設定し、
前記旋回中心を通る車両左右方向の直線と車両前後方向の直線との交点でなる、車両進行方向と車両の向きが一致する点を、前記旋回中心の周りを公転するときの公転基準点として設定し、
車両の目標自転中心を設定し、
前記目標旋回半径、前記公転基準点、及び前記目標自転中心に応じて、車両の目標旋回挙動を設定し、
前記目標旋回挙動に応じて前後輪の目標転舵角を算出し、
前記目標転舵角に応じて前記駆動機構を駆動制御することを特徴とする旋回挙動制御方法。
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