JP5229089B2 - ハイブリッド車両の駆動制御装置及び方法 - Google Patents
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Description
本発明は、ハイブリッド車両の駆動制御装置及び方法の技術分野に関する。
この種の装置として、動力源として内燃機関に加えて電動機を備えると共に、内燃機関の動力により発電する発電機とこの発電機によって発電される電力を蓄積可能なバッテリを備えるハイブリッド車両が知られている。このようなハイブリッド車両では、内燃機関の動力は、例えばプラネタリギアにより構成される動力分割機構によって、発電機の回転軸と、車軸に連結される駆動軸とに分割される。
このようなハイブリッド車両において、内燃機関から駆動軸へのエネルギーの伝達効率を高めるために、駆動軸に出力すべき目標駆動トルクが内燃機関の最大出力トルクより小さい場合には、発電機の回転軸を機械的にロックして、内燃機関の出力軸と駆動軸とを機械的に直結する技術が知られている。この技術によれば、内燃機関の動力を、発電機や電動機を介することなく、駆動軸に直接出力することができるので、発電機や電動機におけるエネルギー損失の発生を無くすことができ、伝達効率を高めることが可能である。例えば特許文献1等では、意図しないで発電機の回転軸の機械的なロックが行われた場合、電動発電機によるEVモードの実施、或いは、エンジンからの直接駆動による退避走行の実施を行う技術が開示されている。
しかしながら、上述した特許文献1等によれば、発電機のロック機構の誤係合故障が発生した場合、エンジン回転数は、一般的に車両の走行速度に比例する。このため、仮に、エンジンの安定燃焼最小速度を下回る低速走行では安定した燃焼ができないため、燃料を供給することが困難となってしまう。このため、電動機によるEV走行が単に行われるため、蓄電池の電力消費の程度が高まってしまうという技術的な問題点が生じる。
また、発電機のロック機構の誤係合故障が発生し、エンジンの安定燃焼最小速度を下回る低速走行が実施された場合、充電する機会を考慮することなく、電動機による退避走行を単に行うため、電力消費の程度が高まり、ひいては、電動機による退避走行を継続できなくなってしまう。
そこで、本発明は、例えば上記の問題点に鑑みなされたものであり、電力消費を低減可能なハイブリッド車両の駆動制御装置及び方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明に係るハイブリッド車両の駆動制御装置は、車両に搭載された内燃機関と、前記内燃機関の動力により発電可能であると共に該発電により得られた電力を蓄電池に充電可能な発電機と、前記内燃機関の動力を、駆動軸及び前記発電機の回転軸に分割する動力分割機構と、前記発電機及び前記蓄電池の少なくとも一方から供給される電力に応じた動力を前記駆動軸に出力可能であると共に前記駆動軸の回転力より発電可能であり、該発電により得られた電力を前記蓄電池に充電可能な電動発電機と、前記発電機の回転軸が回転可能な第1状態及び前記発電機の回転軸が停止した状態で固定される第2状態のうちいずれか一方の状態からいずれか他方の状態へと前記発電機の動作状態を切り替え可能な切り替え手段と、(i)意図しない時期に前記第1状態から前記第2状態へ切り替えられる誤作動が発生し、且つ、要求された要求駆動トルクの動作点が、前記内燃機関の安定燃焼最小回転数及び前記車両の走行抵抗に応じて規定される所定動作点領域に含まれる場合、前記要求駆動トルクより小さい所定駆動トルクで、前記駆動軸を駆動するように前記電動発電機を制御し、(ii)前記誤作動が発生し、且つ、前記要求駆動トルクの動作点が前記所定動作点領域に含まれない場合、前記要求駆動トルクで前記駆動軸を駆動するように前記電動発電機を制御する制御手段とを備える。
本発明に係るハイブリッド車両の駆動制御装置によれば、その制御対象となるハイブリッド車両は、動力源としての内燃機関及び電動発電機の他に、発電機、動力分割機構及び蓄電池を備える。電動発電機は、例えば、モータ又はモータジェネレータを含んで構成される。発電機は、例えば、ジェネレータ又はモータジェネレータを含んで構成される。動力分割機構は、例えば、プラネタリギアを含んで構成され、内燃機関の動力を、発電機の回転軸と、例えば車軸に連結される駆動軸とに分割する。発電機によって発電された電力は、電動発電機に供給される或いは蓄電池に充電される。
このハイブリッド車両は、発電機の回転軸が回転可能な第1状態(所謂、回転可能状態)及び発電機の回転軸が停止した状態で固定される第2状態(所謂、固定状態)のうちいずれか一方の状態からいずれか他方の状態へと発電機の動作状態を切り替え可能な切り替え手段を備えている。
本発明に係る「発電機の動作状態」とは、発電機の回転動作、回転状態、停止動作及び停止状態を意味することに加えて、発電機の回転状態を物理的又は機構的に制限可能な手段の動作及び状態を意味することを包括する、発電機及び発電機の回転状態を制限可能な手段の動作若しくは状態を意味する。発電機の回転状態を制限可能な手段の動作状態は、典型的には、係合手段がハイブリッド車両の一部に係合しているか否かを意味すると共に、係合手段が上述の一部に係合する際の係合動作或いは係合している係合状態を意味する。
切り替え手段によって、発電機の回転軸が回転可能な第1状態に切り替えられることにより、内燃機関の動力が、発電機の回転軸と駆動軸とに分割されて出力される。他方、切り替え手段によって、発電機の回転軸が停止した状態で固定される第2状態に切り替えられることにより、内燃機関の動力が、発電機を介することなく、動力分割機構を介して駆動軸に直接出力される。切り替え手段は、典型的には、内燃機関を搭載するハイブリッド車両の一部に係合することにより発電機の回転を制動可能な係合手段を意味する。より典型的には、切り替え手段として、係合、解放又はスリップ等の動作によって、各種の動力伝達状態を相互に切り換えることのできるクラッチ(所謂、ドッキング切替機構)と、入力部材の回転速度と出力部材の回転速度との比を制御する変速機とを例示できる。この変速機として、変速比を段階的(即ち、不連続的)に変更可能な変速機と、変速比を無段階(即ち、連続的)に変更可能な変速機を例示できる。また、クラッチとして、摩擦式クラッチ、流体式クラッチ又は電磁式クラッチを例示できる。
特に、本発明によれば、意図しない時期に第1状態、即ち、回転可能状態から、第2状態、即ち、固定状態へ切り替えられる誤作動(所謂、誤係合又は誤係合故障)が発生し、且つ、要求された要求駆動トルクの動作点が、内燃機関の安定燃焼最小回転数及び車両の走行抵抗に応じて規定される所定動作点領域に含まれる場合、制御手段の制御下で、電動発電機によって、要求駆動トルクより小さい所定駆動トルクで、駆動軸を駆動される。ここに、本発明に係る動作点とは、要求駆動トルク、車両の走行速度及び運転者が指示するアクセル開度によって、座標上、規定される点を意味する。また、本発明に係る安定燃焼最小回転数とは、内燃機関において、失火の可能性を殆ど又は完全になくすために必要な内燃機関の回転速度の最小値を意味する。典型的には、この安定燃焼最小回転数は、内燃機関の機関温度、内燃機関に吸気される吸気の温度、及び吸気の密度に応じて、内燃機関の燃焼室内で燃焼が確実に行われるように規定されてよい。
典型的には、誤係合が発生し、且つ、要求駆動トルクが、内燃機関の安定燃焼最小回転数に応じて規定される所定動作点領域の上限値を超えない場合、電動発電機によって、要求駆動トルクより小さい所定駆動トルクで駆動軸が駆動される。これにより、要求駆動トルクより小さい所定駆動トルクでEV走行が行われることにより、電力消費を効果的に抑制することが可能であると共に、退避走行が可能な距離を延長することが可能である。
他方、誤作動が発生し、且つ、要求駆動トルクの動作点が所定動作点領域に含まれない場合、制御手段の制御下で、電動発電機によって要求駆動トルクで駆動軸が駆動される。典型的には、誤係合が発生し、且つ、要求駆動トルクが、内燃機関の安定燃焼最小回転数に応じて規定される所定動作点領域の上限値を超える場合、要求駆動トルクを実際に出力するようにEV走行が行われる。これにより、要求駆動トルクによって、内燃機関を例えば5秒等の短い所定時間後に安定燃焼最小回転数で実際に回転させることができる。これにより、内燃機関による動力によって発電を実施する機会を増やすことが可能であり、蓄電池に電力を充電する可能性や頻度を顕著に高めることが可能である。これにより、EV走行による退避走行のための電力をより多頻度で蓄電することができるので、将来、このEV走行による退避走行が行われた場合、この退避走行が可能な距離を延長することが可能である。
本発明のハイブリッド車両の駆動制御装置の一の態様は、前記制御手段は、前記誤作動が発生し、且つ、前記車両の走行速度が安定燃焼最小速度を超える場合、前記要求駆動トルクより大きい駆動トルクで前記駆動軸を駆動するように前記内燃機関を制御する。
この態様によれば、車両の走行速度が、安定燃焼最小速度を超える場合、要求駆動トルクより大きい駆動トルク、典型的には、要求駆動トルクに、電動発電機による充電を行うための予備的な駆動トルクを加えた駆動トルクを駆動軸に伝達するように、内燃機関が制御される。これにより、蓄電池に電力を、より多量に且つより迅速に充電することが可能である。これにより、将来、EV走行による退避走行が行われた場合、この退避走行が可能な距離をより確実に延長することが可能である。
本発明のハイブリッド車両の駆動制御装置の他の態様は、前記制御手段は、前記要求駆動トルクで前記駆動軸を駆動することにより、前記車両の走行速度が安定燃焼最小速度を所定時間(5秒)で超えるか否かを判定する判定手段を有し、前記制御手段は、前記走行速度が前記安定燃焼最小速度を前記所定時間で超えると判定される場合、前記要求駆動トルクで前記駆動軸を駆動するように前記電動発電機を制御する。
この態様によれば、車両は要求駆動トルクによって走行することにより、安定燃焼最小速度に、例えば5秒等の短い所定時間で到達可能であることが判定される場合、電動発電機によって、要求駆動トルクで駆動軸を駆動される。
これにより、車両の走行速度が、所定時間で安定燃焼最小速度に到達した後に、内燃機関による動力によって発電を実施する機会を増やすことが可能であり、蓄電池に電力を充電する可能性や頻度を顕著に高めることが可能である。これにより、EV走行による退避走行のための電力をより多頻度で蓄電することができるので、将来、このEV走行による退避走行が行われた場合、この退避走行が可能な距離を延長することが可能である。
典型的には、この所定時間は、車両が走行する路面勾配に応じて変化させてよい。典型的には、車両が降坂路を走行する場合、運転者はアクセル操作量が小さくても車両は加速するので、所定時間を基準値よりも小さくしてよい。他方、車両が登坂路を走行する場合、運転者はアクセル操作量が大きくても加速が妨げられるので、所定時間を基準値より大きくしてよい。これにより、現在の走行速度をより確実に安定燃焼最小速度に到達させることが可能である。
本発明のハイブリッド車両の駆動制御装置の他の態様は、前記制御手段は、前記要求駆動トルクで前記駆動軸を駆動することにより、前記車両の走行速度が前記安定燃焼最小速度を前記所定時間で超えないと判定される場合、前記所定駆動トルクとして、前記車両の走行抵抗に加えて又は代えて前記蓄電池の残り電力量に応じた駆動トルクで前記駆動軸を駆動するように前記電動発電機を制御する。
この態様によれば、所定駆動トルクは、車両の走行抵抗に加えて又は代えて蓄電池に蓄えられた残り電力量に応じて変化させる。
典型的には、電池に蓄えられた蓄電量が所定値を超える場合、電動発電機によって、所定駆動トルクより大きな駆動トルクで駆動してよい。これにより、車両の走行速度を、より積極的に安定燃焼最小速度に到達させることができる。そして、安定燃焼最小速度に到達の後、蓄電池に電力を、より多量に且つより迅速に充電することが可能である。これにより、将来、EV走行による退避走行が行われた場合、この退避走行が可能な距離をより確実に延長することが可能である。
他方、蓄電量が所定値を超えない場合、電動発電機によって、所定駆動トルクより小さな駆動トルクで駆動してよい。これにより、車両の退避走行の距離を延長することが可能である。
本発明のハイブリッド車両の駆動制御装置の他の態様は、前記誤作動(即ち、誤係合)が発生したか否かを特定する特定手段と、前記制御手段は、(i)前記誤作動(即ち、誤係合)が発生したと特定され、且つ、前記要求駆動トルクの動作点が、前記所定動作点領域に含まれる場合、前記所定駆動トルクで、前記駆動軸を駆動するように前記電動発電機を制御し、(ii)前記誤作動が発生したと特定され、且つ、前記要求駆動トルクの動作点が前記所定動作点領域に含まれない場合、前記要求駆動トルクで前記駆動軸を駆動するように前記電動発電機を制御する。
この態様によれば、特定された誤作動の発生に応じて、電動発電機をより高精度に制御することができる。
上記課題を解決するために、本発明に係るハイブリッド車両の駆動制御方法は、車両に搭載された内燃機関と、前記内燃機関の動力により発電可能であると共に該発電により得られた電力を蓄電池に充電可能な発電機と、前記内燃機関の動力を、駆動軸及び前記発電機の回転軸に分割する動力分割機構と、前記発電機及び前記蓄電池の少なくとも一方から供給される電力に応じた動力を前記駆動軸に出力可能であると共に前記駆動軸の回転力より発電可能であり、該発電により得られた電力を前記蓄電池に充電可能な電動発電機と、前記発電機の回転軸が回転可能な第1状態及び前記発電機の回転軸が停止した状態で固定される第2状態のうちいずれか一方の状態からいずれか他方の状態へと前記発電機の動作状態を切り替え可能な切り替え手段とを備えるハイブリッド車両の駆動制御装置におけるハイブリッド車両の駆動制御方法であって、(i)意図しない時期に前記第1状態から前記第2状態へ切り替えられる誤作動が発生し、且つ、要求された要求駆動トルクの動作点が、前記内燃機関の安定燃焼最小回転数及び前記車両の走行抵抗に応じて規定される所定動作点領域に含まれる場合、前記要求駆動トルクより小さい所定駆動トルクで、前記駆動軸を駆動するように前記電動発電機を制御し、(ii)前記誤作動が発生し、且つ、前記要求駆動トルクの動作点が前記所定動作点領域に含まれない場合、前記要求駆動トルクで前記駆動軸を駆動するように前記電動発電機を制御する制御工程とを備える。
本発明に係るハイブリッド車両の駆動制御方法によれば、上述した本発明に係るハイブリッド車両の駆動制御装置が有する各種利益を享受することが可能となる。尚、上述した本発明に係るハイブリッド車両の駆動制御装置が有する各種態様に対応して、本発明に係るハイブリッド車両の駆動制御方法も各種態様を採ることが可能である。
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされる。
以下、図面を参照して、本発明の好適な各種実施形態について説明する。
(第1実施形態)
(基本構成)
第1実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御装置の構成について、図1を参照して説明する。ここに、図1は、第1実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御装置の構成を概念的に示すブロック図である。
(基本構成)
第1実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御装置の構成について、図1を参照して説明する。ここに、図1は、第1実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御装置の構成を概念的に示すブロック図である。
図1において、本実施形態に係るハイブリッド車両10は、エンジン200、第1のモータジェネレータMG1(以下、適宜「MG1」と略称する)、第2のモータジェネレータMG2(以下、適宜「MG2」と略称する)、駆動軸50、動力分割機構300、ロック機構400、PCU(PowerControlUnit)500、バッテリ600、減速機11、車軸12、車輪13、アクセル開度センサ14及びECU100を備えている。
エンジン200は、本発明に係る「内燃機関」の一例たるガソリンエンジンであり、ハイブリッド車両10の主たる動力源として機能するように構成されている。エンジン200の出力軸であるクランクシャフト210は、後述する動力分割機構300のキャリア304に連結されている。尚、本発明における「内燃機関」とは、例えば2サイクル又は4サイクルレシプロエンジン等を含み、少なくとも一の気筒を有し、当該気筒内部の燃焼室において、例えばガソリン、軽油或いはアルコール等の各種燃料を含む混合気が燃焼した際に発生する力を、例えばピストン、コネクティングロッド及びクランクシャフト等の物理的又は機械的な伝達手段を適宜介して動力として取り出すことが可能に構成された機関を包括する概念である。
第1のモータジェネレータMG1は、本発明に係る「発電機」の一例たる電動発電機であり、エンジン200からトルクの供給を受けてその回転軸が回転することにより、バッテリ600を充電するための、或いは第2のモータジェネレータMG2に電力を供給するための発電を主として行うことが可能に構成されている。
第2のモータジェネレータMG2は、本発明に係る「電動発電機」の一例たる電動発電機であり、エンジン200の動力を補助(即ち、アシスト)する電動機として、或いはバッテリ600を充電するための発電機として機能するように構成されている。より具体的には、第2のモータジェネレータMG2は、駆動力或いは制動力をアシストする装置であり、駆動力をアシストする場合には、第1のモータジェネレータMG1及びバッテリ600の少なくとも一方から電力が供給されて電動機として機能し、制動力をアシストする場合には、ハイブリッド車両10の車輪13側から伝達されるトルクによって回転させられて電力を発電する発電機として機能するように構成されている。第2のモータジェネレータMG2は、駆動軸50に対し動力を供給することが可能となるように、その回転軸が駆動軸50に連結されている。
駆動軸50は、ハイブリッド車両10の車輪である車輪13に連結される車軸12に、デファレンシャル等の各種減速ギア装置を含む減速機構11を介して連結されている。
動力分割機構300は、プラネタリギア(遊星歯車機構)を含んでおり、エンジン200の動力を第1のモータジェネレータMG1の回転軸及び駆動軸50に分割或いは分配することが可能に構成されている。より具体的には、動力分割機構300は、外歯歯車のサンギア301と、サンギア301と同心円上に配置された内歯歯車のリングギア302と、サンギア301及びリングギア302に噛合するピニオンギア303と、ピニオンギア303を自転且つ公転自在に保持するキャリア304とを備えており、サンギア301、リングギア302及びキャリア304が3つの回転要素として相互に差動作用を生じるように構成されている。キャリア304には、エンジン200の出力軸であるクランクシャフト210が連結されている。サンギア301には、第1のモータジェネレータMG1の回転軸が連結されている。リングギア302には、駆動軸50が連結されている。動力分割機構300は、キャリア304から入力されるエンジン200からの動力を、サンギア301側(即ち、第1のモータジェネレータMG1側)とリングギア302側(即ち、駆動軸50側)とにそのギア比に応じて分配する。
ロック機構400は、本発明に係る「切り替え手段」の一例であり、第1のモータジェネレータMG1の回転軸を停止した状態で機械的に固定すること(即ち、第1のモータジェネレータMG1をロックすること)が可能に構成されている。と共に、ロック機構400は、第1のモータジェネレータMG1の回転軸を回転可能な状態で開放すること(即ち、第1のモータジェネレータMG1のロックを開放すること)が可能に構成されている。
詳細には、ロック機構400によって第1のモータジェネレータMG1がロックされた場合、エンジン200からの動力は、動力分割機構300によって第1のモータジェネレータMG1には分配されず、駆動軸50に出力されることになる。この際、典型的には、第2のモータジェネレータMG2は停止され、駆動軸50にはエンジン200からの駆動力のみが伝達される(即ち、ハイブリッド車両10は、エンジン200から出力される駆動力のみで走行することになる)。より詳細には、例えば、要求駆動力あるいはエンジンの負荷が小さい場合には、ロック機構400によって第1のモータジェネレータMG1の回転が阻止されて、動力分配機構300の実質的な変速比に設定されてよい。即ち、エンジンの回転数が可及的に低回転数に抑制される。その場合、動力分配機構300では、第1モータジェネレータMG1による発電は行われず、また第1モータジェネレータMG1が電動機として機能することもない。従って、第2モータジェネレータMG2で発電して第1モータジェネレータMG1に給電したり、或いはバッテリーから第1モータジェネレータMG1に給電する必要がないので、電力の消費が生じない。即ち、このようにして設定されるロック状態では動力の循環が生じず、動力損失やそれに伴う燃費の悪化を防止若しくは抑制することができる。
PCU500は、バッテリ600から取り出した直流電力を交流電流に変換して第1のモータジェネレータMG1及び第2のモータジェネレータMG2に供給すると共に、第1のモータジェネレータMG1及び第2のモータジェネレータMG2によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ600に供給することが可能に構成されたインバータ等を含み、バッテリ600と各モータジェネレータとの間の電力の入出力を個別に制御することが可能に構成された制御ユニットである。PCU500は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によってその動作が制御される構成となっている。
バッテリ600は、第1のモータジェネレータMG1及び第2のモータジェネレータMG2に電力を供給する電力供給源として機能することが可能に構成された充電可能な蓄電池である。
アクセル開度センサ14は、ハイブリッド車両10のアクセルペダル(不図示)の操作量たるアクセル開度を検出することが可能に構成されたセンサである。アクセル開度センサ14は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたアクセル開度は、ECU100によって一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
ECU100は、CPU(CentralProcessingUnit)、ROM(ReadOnlyMemory)及びRAM(RandomAccessMemory)等を備え、ハイブリッド車両10の動作全体を制御することが可能に構成された電子制御ユニットであり、本発明に係る「ハイブリッド車両の駆動制御装置」の一例である。ECU100は、CPU(CentralProcessingUnit)、ROM(ReadOnlyMemory)及びRAM(RandomAccessMemory)等を備え、エンジン200の動作全体を制御することが可能に構成された電子制御ユニットである。ECU100によって、本発明に係る「制御手段」及び「判定手段」の一例が構成されている。
制御部110は、ECU100の一部を構成し、アクセル開度センサ14によって検出されたアクセル開度に応じて定められる目標駆動トルク及び駆動軸50の回転数である駆動軸回転数(即ち、駆動軸回転速度)に応じて、ロック機構400を制御することが可能に構成されている。加えて、制御部110は、この目標駆動トルク及びこの駆動軸回転速度に加えて、エンジンの回転速度、第1のモータジェネレータMG1の回転速度及び第2のモータジェネレータMG2の回転速度に応じて、ロック機構400を制御することが可能に構成されている。
本実施形態では特に、ECU100は、誤係合特定部120を備えている。誤係合特定部120は、本発明に係る「特定手段」の一例であり、第1のモータジェネレータMG1の回転数の変化を監視し、ECU100から指示されたMG1の回転数と実際のMG1の回転数との偏差が所定閾値を超えるか否かに基づいて、MG1ロックの誤係合が発生したか否かを特定することが可能に構成されている。尚、制御部110及び誤係合特定部120を含むECU100による制御処理については、後に図5を参照して詳細に説明する。
(ロック機構の動作)
ここで、図2及び図3を参照して、MG1ロックの誤開放が発生した場合を含むMG1のロック機構の動作について説明する。尚、本実施形態では、例えば電磁カム方式によるロック機構について説明したが、本発明は、例えばくし形状の噛み合いドッキング装置に適用してよい。或いは、本発明は、例えば摩擦力を利用した摩擦式クラッチ装置に適用してよい。或いは、本発明は、例えば湿式多板を利用したクラッチ装置等の他の方式のクラッチ装置に適用してよい。
ここで、図2及び図3を参照して、MG1ロックの誤開放が発生した場合を含むMG1のロック機構の動作について説明する。尚、本実施形態では、例えば電磁カム方式によるロック機構について説明したが、本発明は、例えばくし形状の噛み合いドッキング装置に適用してよい。或いは、本発明は、例えば摩擦力を利用した摩擦式クラッチ装置に適用してよい。或いは、本発明は、例えば湿式多板を利用したクラッチ装置等の他の方式のクラッチ装置に適用してよい。
ここに、図2は、本実施形態に係るMG1ロック機構における、外観を図式的に示した外観平面図である。図3は、本実施形態に係るMG1ロック機構における、MG1ロックの開放時の一の断面を図式的に示した断面図(図3(a))及びMG1ロックの実施時一の断面を図式的に示した断面図(図3(b))である。尚、図3(a)及び図3(b)の断面図は、図2中の線分A−A’を断面として、矢印Xから見た断面図である。
(ロック機構の基本構成)
図2、図3(a)及び図3(b)に示されるように、MG1のロック機構400は、部材401と、部材402と、ボール420と、ケース450とを備えて構成されている。特に、図3(a)或いは図3(b)中の、例えば隙間SPなどに存在する黒塗り星型及び黒塗りの五角形は夫々、ロック機構400内の潤滑油に含まれている異物を概念的に示している。
図2、図3(a)及び図3(b)に示されるように、MG1のロック機構400は、部材401と、部材402と、ボール420と、ケース450とを備えて構成されている。特に、図3(a)或いは図3(b)中の、例えば隙間SPなどに存在する黒塗り星型及び黒塗りの五角形は夫々、ロック機構400内の潤滑油に含まれている異物を概念的に示している。
部材401は、MG1と平面401aを介して固定されており、MG1と共に回転可能である。
部材402は、例えば電磁力等によって、MG1の側からハイブリッド車両に静止状態で固定されているケース450の摩擦面450aの側へ向かう付勢力を受ける(図3(a)及び図3(b)中の右側から左側へ向かう方向を参照)。これにより、部材402は、MG1の側からケース450の摩擦面450aに向かって移動し、摩擦面450aに接触することにより、摩擦面450aに吸着される。これにより、ロック機構400内のカム機構を回転させ、MG1の回転軸に対して固定トルクを発生させる。これにより、MG1の回転軸を停止した状態で固定可能である。
ボール420は、球状の剛体であり部材401と部材402との間に配置され、部材401及び部材402に付勢力を与えることが可能である。
(ロック機構の開放状態)
図3(a)に示されるように、MG1ロックが開放されている場合、ロック機構400において、部材402と、ハイブリッド車両に静止状態で固定されているケース450との間には隙間SPがあり、ボール420及び部材402は、部材401と同様にして、MG1と共に回転している。尚、図3(a)中の矢印は、部材401、部材402及びMG1の回転方向を示している。
図3(a)に示されるように、MG1ロックが開放されている場合、ロック機構400において、部材402と、ハイブリッド車両に静止状態で固定されているケース450との間には隙間SPがあり、ボール420及び部材402は、部材401と同様にして、MG1と共に回転している。尚、図3(a)中の矢印は、部材401、部材402及びMG1の回転方向を示している。
即ち、ロック機構400において、部材402がケース450に係合しなく、それに伴い部材401及びボール420も係合しない非係合状態になることにより、MG1の回転軸が回転可能な回転可能状態或いは開放状態(即ち本発明に係る「第1状態」の一例)が形成されている。
(ロック機構の係合状態)
図3(b)に示されるように、MG1ロックが実施されている場合、部材402は、MG1側からケース450に向かう方向へ第1の付勢力F1を受け、ケース450の摩擦面450aに接触した際に生じる摩擦力により吸着状態となって固定されている。尚、第1の付勢力F1は、典型的には、MG1をロックするための駆動電流がケース450側で流れることによって磁性の性質を有する部材402に対して発生する電磁力であってよい。
図3(b)に示されるように、MG1ロックが実施されている場合、部材402は、MG1側からケース450に向かう方向へ第1の付勢力F1を受け、ケース450の摩擦面450aに接触した際に生じる摩擦力により吸着状態となって固定されている。尚、第1の付勢力F1は、典型的には、MG1をロックするための駆動電流がケース450側で流れることによって磁性の性質を有する部材402に対して発生する電磁力であってよい。
部材402は、この第1の付勢力F1に加えて、部材401からボール420を介して、部材402をケース450側に押し付けることにより生じる機構的な力である第2の付勢力F2を受け、ケース450の摩擦面450aに接した際に生じる摩擦力により吸着状態となって固定されている。これにより、ボール420及び部材402は、部材401の回転を停止させると共に、MG1の回転を停止させることによって、MG1ロックが正常に実施されている。
即ち、ロック機構400において、部材402がケース450の摩擦面450aに接触し摩擦力により停止し、それに伴い、ボール420を介して部材401の動作が停止し、これにより、部材401、部材402及びボール420がケース450に係合した係合状態になる。即ち、ロック機構400において、部材401、部材402及びボール420がケース450に係合した係合状態によって、MG1の回転軸が停止した固定状態或いは係合状態(即ち、本発明に係る「第2状態」の一例)が形成されている。このように、部材401、部材402及びボール420によって、本発明に係る「係合手段」の一例が構成されている。ケース450によって、本発明に係る「ハイブリッド車両の一部」の一例が構成されている。
特に、ロック機構400は、このような部材401、部材402及びボール420を備え、電磁力である第1の付勢力F1に加えて、上述の機構的な力である第2の付勢力F2を発生させる構成をとることにより、MG1を、部材401、部材402及びボール420を介して、ケース450の摩擦面450aに押し付けるための付勢力を、効率的且つ簡便に大きくさせることが可能である。これにより、第1の付勢力F1によってのみMG1をロックする場合と比較して、MG1の回転軸を停止した状態で固定するための固定トルクを、効率的且つ簡便に大きくさせることが可能である。
しかしながら、ロック機構400において、機構的な原因又は物理的な原因により、部材402と、ケース450と係合してしまい、MG1ロックの誤係合が発生してしまうのである。この機構的な原因としての、例えば路面からの反力が、駆動軸を介して、MG1の回転軸に伝達された、予想外の外部入力トルクにより、部材402と、ケース450とが係合し、MG1ロックの誤係合が発生してしまうことが考えられる。或いは、この物理的な原因としての、部材402をケース450から遠ざけるように移動させる際に異物や凹凸部等の障害物に引っ掛かることにより、部材402と、ケース450とが係合し、MG1ロックの誤係合が発生してしまうことが考えられる。
特に、本実施形態では、MG1のロック機構において、誤係合故障が発生した場合、駆動トルクの制限を実施する駆動トルク制限領域を有する所定マップを用いることにより、運転者のアクセル操作量を要求する駆動トルクに変換している。尚、本実施形態に係る駆動トルク制限領域を有する所定マップの詳細については、後述される。
(運転領域)
次に、図4を参照して、本実施形態に係るハイブリッド車両の運転領域について説明する。ここに、図4は、本実施形態に係るハイブリッド車両における、目標駆動トルク及び駆動軸回転数によって規定される運転領域を示すマップである。図4では、横軸に駆動軸回転数(即ち、駆動軸回転速度)を示し、縦軸に目標駆動トルク(即ち、駆動軸の目標駆動トルク)を示している。また、EV(ElectricVehicle)走行が行われる運転領域を「EV走行」として示し、電気CVT(Continuously Variable Transmission)走行が行われる運転領域を「電気CVT走行」として示し、第1のモータジェネレータMG1がロックされる運転領域を「MG1ロック走行」として示している。また、図4に示すマップは、エンジン200が定常燃焼状態にある場合に出力すると予め推定された出力トルクに基づいて予め作成されている。
次に、図4を参照して、本実施形態に係るハイブリッド車両の運転領域について説明する。ここに、図4は、本実施形態に係るハイブリッド車両における、目標駆動トルク及び駆動軸回転数によって規定される運転領域を示すマップである。図4では、横軸に駆動軸回転数(即ち、駆動軸回転速度)を示し、縦軸に目標駆動トルク(即ち、駆動軸の目標駆動トルク)を示している。また、EV(ElectricVehicle)走行が行われる運転領域を「EV走行」として示し、電気CVT(Continuously Variable Transmission)走行が行われる運転領域を「電気CVT走行」として示し、第1のモータジェネレータMG1がロックされる運転領域を「MG1ロック走行」として示している。また、図4に示すマップは、エンジン200が定常燃焼状態にある場合に出力すると予め推定された出力トルクに基づいて予め作成されている。
ECU100は、図4に示すマップ上において、目標駆動トルク及び駆動軸回転数によって定まる点(以下、「運転動作点」と称する)が、どの位置にくるかによって、運転モードを「EV走行モード」、「電気CVT走行モード」及び「MG1ロック走行」のいずれにするかを決定する。尚、本実施形態では、目標駆動トルク及び駆動軸回転数によって定まる運転動作点に加えて又は代えて、エンジンの出力トルク及び駆動軸回転数によって定まる動作点の座標上の位置に基づいて、運転モードを「EV走行モード」、「電気CVT走行モード」及び「MG1ロック走行」のいずれにするかを決定してよい。
具体的には、ECU100は、運転動作点が、図4に示すマップ上において、「EV走行」にあると判定した場合には、運転モードを「EV走行モード」に設定し、「電気CVT走行」にあると判定した場合には、運転モードを「電気CVTモード」に設定し、「MG1ロック走行」にあると判定した場合には、運転モードを「MG1ロックモード」に設定する。
ECU100は、運転モードを「EV走行モード」に設定した場合には、ハイブリッド車両10が、第2のモータジェネレータMG2からの駆動力のみで走行するEV走行を行うように、エンジン200、ロック機構400及びPCU500を制御する。
ECU100は、運転モードを「電気CVT走行モード」に設定した場合には、ハイブリッド車両10が、エンジン200から動力分割機構300を介して駆動軸50に出力される駆動力と第2のモータジェネレータMG2から駆動軸50に出力される駆動力とで走行する電気CVT走行を行うように、エンジン200、ロック機構400及びPCU500を制御する。具体的には、ECU100は、運転モードを「電気CVT走行モード」に設定した場合には、エンジン200からの動力が第1のモータジェネレータMG1及び駆動軸50に分配されて、第1のモータジェネレータMG1で発電が行われると共に第2のモータジェネレータMG2からの駆動力が駆動軸50に出力されるように、エンジン200、ロック機構400及びPCU500を制御する。
ECU100は、運転モードを「MG1ロックモード」に設定した場合には、ハイブリッド車両10が、エンジン200からの駆動力のみで走行するように、エンジン200、ロック機構400及びPCU500を制御する。具体的には、ECU100は、運転モードを「MG1ロックモード」に設定した場合には、第1のモータジェネレータMG1がロックされるように、ロック機構400を制御する。運転モードが「MG1ロックモード」である場合、後述されるように、伝達効率及び燃費効率を向上させることが可能である。
尚、ECU100は、運転モードを「EV走行モード」又は「電気CVT走行モード」に設定した場合には、第1のモータジェネレータMG1がロックされないように、ロック機構400を制御する。
(動作原理)
次に、図5乃至図7を参照して、本発明の本実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御装置における動作原理について説明する。ここに、図5は、本実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御装置を統括制御するECUにおける制御処理の流れを示したフローチャートである。尚、図5で示された制御処理は、ECU100によって、所定周期で繰り返し実行される。図6は、本実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御装置における駆動軸の駆動トルクを決定可能な走行速度及びアクセル開度を入力変数とした所定マップを示したグラフである。図7は、図6の所定マップの一部を拡大して示したグラフである。尚、図6及び図7の横軸は走行速度を意味し、縦軸は駆動軸の駆動トルク(所謂、ペラ軸駆動トルク)を意味し、座標上の曲線群は、複数種類のアクセル開度に夫々対応している。また、図6中の点線で囲まれた部分Area1は、図7中の点線で囲まれた部分Area1に対応する。
次に、図5乃至図7を参照して、本発明の本実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御装置における動作原理について説明する。ここに、図5は、本実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御装置を統括制御するECUにおける制御処理の流れを示したフローチャートである。尚、図5で示された制御処理は、ECU100によって、所定周期で繰り返し実行される。図6は、本実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御装置における駆動軸の駆動トルクを決定可能な走行速度及びアクセル開度を入力変数とした所定マップを示したグラフである。図7は、図6の所定マップの一部を拡大して示したグラフである。尚、図6及び図7の横軸は走行速度を意味し、縦軸は駆動軸の駆動トルク(所謂、ペラ軸駆動トルク)を意味し、座標上の曲線群は、複数種類のアクセル開度に夫々対応している。また、図6中の点線で囲まれた部分Area1は、図7中の点線で囲まれた部分Area1に対応する。
図5に示されるように、ECU100の制御下で、誤係合が発生したか否かが判定される(ステップS101)。具体的には、第1のモータジェネレータMG1の回転数の変化を監視した結果、ECU100から指示されたMG1の回転数と実際のMG1の回転数との偏差が所定閾値を超える場合、MG1ロックの誤係合が発生したと判定される。他方、ECU100から指示されたMG1の回転数と実際のMG1の回転数との偏差が所定閾値を超えない場合、MG1ロックの誤係合が発生しないと判定される。
このステップS101の判定の結果、誤係合が発生したと判定される場合(ステップS101:Yes)、ECU100の制御下で、所定マップが取得される(ステップS102)。ここに、本実施形態に係る所定マップとは、ハイブリッド車両の走行速度及び運転者が指示するアクセル開度を入力変数として、駆動軸の駆動トルクを決定可能なマップを意味する。尚、本実施形態に係る駆動トルク制限領域を有する所定マップの詳細については、後述される。
次に、ECU100の制御下で、ハイブリッド車両の走行速度が、安定燃焼最小速度、未満であるか否かが判定される(ステップS103)。ここに、本実施形態に係る安定燃焼最小速度とは、エンジンが安定的に燃焼する、言い換えると、エンジンで失火の可能性を殆ど又は完全になくすために必要なハイブリッド車両の走行速度の最小値を意味する。具体的には、安定燃焼最小速度Vsは、単位を「(km/h):kilometer per hour」として、次式(1)で導出される。
Vs={Nes×(1+ρ)}/Kdiff ×2πr ×60/1000
・・・(1)
但し、Nes:安定燃焼最小回転数(rpm:revolution per minute)
ρ:プラネタリアギヤ比
Kdiff:ディフェレンシャルギヤ比
r:タイヤ半径(m:meter)とする。
・・・(1)
但し、Nes:安定燃焼最小回転数(rpm:revolution per minute)
ρ:プラネタリアギヤ比
Kdiff:ディフェレンシャルギヤ比
r:タイヤ半径(m:meter)とする。
特に、安定燃焼最小速度Vs(km/h)は、エンジンの冷却水の水温、吸入空気の温度、又は空気の密度に応じて、エンジンの燃焼室内で燃焼が確実に行われるように設定してよい。これにより、エンジンにおいて、失火の可能性を殆ど又は完全になくした安定した運転をより確実に実現することができる。
このように、式(1)は、エンジンが安定的に燃焼する、言い換えると、エンジンで失火の可能性を殆ど又は完全になくすために必要なエンジンの回転速度の最小値を意味する安定燃焼最小回転数Nesに係数を乗算することにより、算出される。
より具体的には、上述した式(1)に、上述した各種の変数に数値として、安定燃焼最小回転数Nesに「800(rpm)」を代入し、プラネタリアギヤ比ρに「0.3846」(=30/78)を代入し、ディフェレンシャルギヤ比Kdiffに「3.0」を代入し、タイヤ半径rに「0.30(m)」を代入した場合、安定燃焼最小速度Vsとして、「41.8(km/h)」となる。
上述したステップS103の判定の結果、ハイブリッド車両の走行速度が、安定燃焼最小速度、未満であると判定される場合(ステップS103:Yes)、ECU100の制御下で、要求される駆動トルクが、駆動トルク制限領域に含まれるか否かが判定される(ステップS104)。ここに、本実施形態に係る駆動トルク制限領域とは、要求される駆動トルク、走行速度及びアクセル開度によって、座標上、規定される動作点のうち、要求される駆動トルクの制限を実施する必要のある動作点の領域を意味する。具体的には、図6に示されるように、この駆動トルク制限領域Z1(図6中の右上方向に向かうハッチング部分を参照)は、走行速度が安定燃焼最小速度Vsを越えない場合においてEV走行が実施されるEV走行領域Z2(図6中の点状のハッチング部分を参照)に含まれる。
(駆動トルク制限領域の境界:上限境界)
ここで、図7に加えて、上述した図6を参照して、このEV走行が実施されるEV走行領域Z2のうち、駆動トルク制限領域の境界について説明する。
ここで、図7に加えて、上述した図6を参照して、このEV走行が実施されるEV走行領域Z2のうち、駆動トルク制限領域の境界について説明する。
最初に、駆動トルク制限領域の境界のうち上限境界の一例について詳細に説明する。図6及び図7に示されるように、駆動トルク制限領域の境界の上限値の一例として、現在の走行速度が所定時間以内に上述の安定燃焼最小速度Vsに到達するために必要な所定駆動トルクを挙げることができる。この所定駆動トルクTa1について、具体的には、次の式(2)によって算出される。
Ta1={(Vs−Va)/3.6/t ×W ×r/Kdiff}+Ta0
・・・(2)
但し、Vs:安定燃焼最小速度(km/h)
Va: 現在の走行速度(km/h)
t: 現在の走行速度Vaが安定燃焼最小速度Vsに到達するまで加速を行う必要のある時間である所定時間(秒:second)
W: 車両重量(kg)
r:タイヤ半径(m:meter)
Kdiff:ディフェレンシャルギヤ比
Ta0:路面からの抵抗力(所謂、走行抵抗力)と釣り合った状態で、現在の走行速度Va(km/h)を維持しつつ走行する定常走行を行うために必要な駆動軸の定常駆動トルク(所謂、ペラ軸駆動トルク)(Nm:Newton Meter)とする。
・・・(2)
但し、Vs:安定燃焼最小速度(km/h)
Va: 現在の走行速度(km/h)
t: 現在の走行速度Vaが安定燃焼最小速度Vsに到達するまで加速を行う必要のある時間である所定時間(秒:second)
W: 車両重量(kg)
r:タイヤ半径(m:meter)
Kdiff:ディフェレンシャルギヤ比
Ta0:路面からの抵抗力(所謂、走行抵抗力)と釣り合った状態で、現在の走行速度Va(km/h)を維持しつつ走行する定常走行を行うために必要な駆動軸の定常駆動トルク(所謂、ペラ軸駆動トルク)(Nm:Newton Meter)とする。
この定常駆動トルクTa0について、具体的には、次の式(3)によって算出される。
Ta0={(A×Va×Va+C)×r}/Kdiff
・・・(3)
但し、A:空気抵抗係数(N/{(km/h)の2乗})
Va: 現在の走行速度(km/h)
C:走行損失(N:Newton)
Kdiff:ディフェレンシャルギヤ比とする。
・・・(3)
但し、A:空気抵抗係数(N/{(km/h)の2乗})
Va: 現在の走行速度(km/h)
C:走行損失(N:Newton)
Kdiff:ディフェレンシャルギヤ比とする。
尚、現在の走行速度Va(km/h)を変化させながら定常駆動トルクTa0を算出し、図7の座標上にプロットする場合、現在の走行速度Vaを安定燃焼最小速度Vsと一致させた動作点P0、即ち、「Va=Vs」で定常走行時の定常駆動トルクの動作点P0を通過する下に緩やかに凸な右上がりの曲線であるトルクラインL0となることが分かる。
ここで、車両が、現在、上述のように算出した安定燃焼最小速度Vsより「10」(km/h)だけ小さい速度で走行している場合、即ち、現在の走行速度Vaが「31.8」(km/h)である場合について、駆動トルク制限領域の境界の上限値である所定駆動トルクTa1を、具体的に算出する。
先ず、上述した式(3)によって示される定常駆動トルクTa0に、空気抵抗係数Aに「0.035」(N/(km/h)の2乗)を代入し、現在の走行速度Vaに「31.8」(km/h)を代入し、走行損失Cに「150」(N)を代入し、タイヤ半径rに「0.30(m)」を代入し、ディフェレンシャルギヤ比Kdiffに「3.0」を代入した場合、走行抵抗力と釣り合う上述した定常駆動トルクTa0は、「18.5(Nm)」となる。
これにより、駆動トルク制限領域の境界の上限値である所定駆動トルクTa1を示す上述した式(2)に、安定燃焼最小速度Vsとして、「41.8(km/h)」を代入し、現在の走行速度Vaに「31.8」(km/h)を代入し、上述の所定時間tとして、「5(sec)」を代入し、車両重量Wとして、「1800(kg)」を代入し、タイヤ半径rに「0.30(m)」を代入し、ディフェレンシャルギヤ比Kdiffに「3.0」を代入し、定常駆動トルクTa0に「18.5(Nm)」を代入する。この結果、駆動トルク制限領域の境界の上限値である所定駆動トルクTa1は、「118.5(Nm)」(図7中の点P1を参照)として算出される。
以上のようにして、現在の走行速度Va(km/h)を変化させながら駆動トルク制限領域の上限値である所定駆動トルクTa1を算出し、図7の座標上にプロットする場合、現在の走行速度Vaを安定燃焼最小速度Vsと一致させた動作点P0、即ち、「Va=Vs」で定常走行時の定常駆動トルクの動作点P0を通過する右下がりのトルクラインL1(図6及び図7を参照)上をプロットされることが分かる。
このトルクラインL1の右下側の動作点領域の範囲内において、駆動トルク制限領域が含まれる。他方、このトルクラインL1の右上側の動作点領域であり且つ安定燃焼最小速度Vsより小さい動作点領域においては、駆動トルクの制限を実施しない。
特に、車両が降坂路を走行する場合、運転者はアクセル操作量が小さくても車両は加速する。他方、車両が登坂路を走行する場合、運転者はアクセル操作量が大きくても加速が妨げられる。このため、現在の走行速度Vaが安定燃焼最小速度Vsに到達するまで加速を行う必要のある時間である所定時間t(sec)を、路面勾配に応じて、変化させてよい。これにより、現在の走行速度Vaをより確実に安定燃焼最小速度Vsに到達させることが可能である。
(駆動トルク制限領域の境界:下限境界)
次に、駆動トルク制限領域の境界のうち下限境界の一例について詳細に説明する。図6及び図7に示されるように、駆動トルク制限領域の境界の下限値、言い換えると、駆動トルクの制限を実施した場合に出力する必要のある出力駆動トルクの一例として、上述した路面からの抵抗力(所謂、走行抵抗力)と釣り合うための定常駆動トルクと比較して大きく、例えば重力の「0.02倍」だけ加速することが可能な駆動トルクを挙げることができる。具体的には、この出力駆動トルクTa2は、次の式(3a)によって算出される。
次に、駆動トルク制限領域の境界のうち下限境界の一例について詳細に説明する。図6及び図7に示されるように、駆動トルク制限領域の境界の下限値、言い換えると、駆動トルクの制限を実施した場合に出力する必要のある出力駆動トルクの一例として、上述した路面からの抵抗力(所謂、走行抵抗力)と釣り合うための定常駆動トルクと比較して大きく、例えば重力の「0.02倍」だけ加速することが可能な駆動トルクを挙げることができる。具体的には、この出力駆動トルクTa2は、次の式(3a)によって算出される。
Ta2=(A×Va×Va+ C+ W×9.8×Pa)×r / Kdiff
・・・(3a)
但し、A:空気抵抗係数(N/{(km/h)の2乗})
Va: 現在の走行速度(km/h)
C:走行損失(N:Newton)
W: 車両重量(kg)
Pa:駆動トルクの制限時に許容する許容加速度(単位を1重力「G:Gravity」とする)
r:タイヤ半径(m:meter)
Kdiff:ディフェレンシャルギヤ比とする。
・・・(3a)
但し、A:空気抵抗係数(N/{(km/h)の2乗})
Va: 現在の走行速度(km/h)
C:走行損失(N:Newton)
W: 車両重量(kg)
Pa:駆動トルクの制限時に許容する許容加速度(単位を1重力「G:Gravity」とする)
r:タイヤ半径(m:meter)
Kdiff:ディフェレンシャルギヤ比とする。
具体的には、上述の式(3a)より、要求された駆動トルクが駆動トルク制限領域内に含まれ、駆動トルクの制限が実施された場合、許容加速度Paとして、「0.02G」までの加速を許容し、現在の走行速度Vaが、安定燃焼最小速度Vs=41.8(41.8(km/h))より「10(km/h)」だけ低い速度Va=31.8(km/h)である場合、出力駆動トルクTa2は、「53.8(Nm)」(図7中の点P2を参照)として算出される。詳細には、図6及び図7中のトルクラインL2に示されるように、現在の走行速度Va(km/h)を変化させながら出力駆動トルクTa2を求める場合、下に緩やかに凸な右上がりの曲線であるトルクラインL2となることが分かる。
このように、現在の走行速度Vaが変化すると、所定駆動トルクTa1及び出力駆動トルクTa2の値は、図7に示す2本のトルクラインL1及びトルクラインL2に沿って夫々移動する。このため、所定マップにおけるアクセル開度と、駆動トルクとの相関関係は、車両速度Vaに応じて、熱効率或いは燃費効率が、最も高くなるように設定することが望ましい。
特に、上述した実施形態では、許容加速度Paとして「0.02G」を用いたが、電池に蓄えられた蓄電量に応じて、この許容加速度Paの値を変化させて良い。典型的には、電池に蓄えられた蓄電量が所定値を超える場合、「0.02G」より許容加速度Paを大きくしてよい。これにより、車両の走行速度を、より積極的に安定燃焼最小速度に到達させることができる。そして、安定燃焼最小速度に到達の後、蓄電池に電力を、より多量に且つより迅速に充電することが可能である。これにより、将来、EV走行による退避走行が行われた場合、この退避走行が可能な距離をより確実に延長することが可能である。他方、蓄電量が所定値を超えない場合、「0.02G」より許容加速度Paを小さくしてよい。これにより、車両の退避走行の距離を延長することが可能である。
(動作原理:続き)
再び、図5に戻って、上述したステップS104の判定の結果、要求される駆動トルクが、上述した駆動トルク制限領域に含まれると判定される場合(ステップS104:Yes)、更に、ECU100の制御下で、要求される駆動トルクが、上述した出力する必要のある出力駆動トルクTa2を超えるか否かが判定される(ステップS105)。ここで、要求される駆動トルクが、上述した出力する必要のある出力駆動トルクTa2を超えると判定される場合(ステップS105:Yes)、ECU100の制御下で、要求された駆動トルクが出力駆動トルクTa2に制限されてEV走行が行われる(ステップS106)。
再び、図5に戻って、上述したステップS104の判定の結果、要求される駆動トルクが、上述した駆動トルク制限領域に含まれると判定される場合(ステップS104:Yes)、更に、ECU100の制御下で、要求される駆動トルクが、上述した出力する必要のある出力駆動トルクTa2を超えるか否かが判定される(ステップS105)。ここで、要求される駆動トルクが、上述した出力する必要のある出力駆動トルクTa2を超えると判定される場合(ステップS105:Yes)、ECU100の制御下で、要求された駆動トルクが出力駆動トルクTa2に制限されてEV走行が行われる(ステップS106)。
このように、現在の走行速度Vaが安定燃焼最小速度Vsよりも小さく、且つ、要求される駆動トルクが、上述した駆動トルク制限領域に含まれると判定される場合、要求された駆動トルクを出力駆動トルクTa2に制限したEV走行を行うことにより、電力消費を効果的に抑制することが可能であると共に、退避走行が可能な距離を延長することが可能である。
他方、上述したステップS105の判定の結果、要求される駆動トルクが、上述した出力する必要のある出力駆動トルクTa2を超えると判定されない場合(ステップS105:No)、ECU100の制御下で、要求された駆動トルクを制限することなく、要求された駆動トルクを実際に出力するようにEV走行が行われる(ステップS107)。
他方、上述したステップS104の判定の結果、要求される駆動トルクが、上述した駆動トルク制限領域に含まれると判定されない場合、言い換えると、現在の走行速度Vaが安定燃焼最小速度Vsよりも小さく、且つ、要求される駆動トルクが、上述した所定駆動トルクTa1よりも大きい場合(ステップS104:No)、或いは、現在の走行速度Vaが安定燃焼最小速度Vsよりも小さく、且つ、要求される駆動トルクが、上述した出力駆動トルクTa2よりも小さい場合(ステップS104:No)、ECU100の制御下で、要求された駆動トルクを実際に出力するようにEV走行が行われる(ステップS107)。
このように、要求される駆動トルクが、上述した所定駆動トルクTa1よりも大きい場合、車両は要求された駆動トルクによって走行することにより、安定燃焼最小速度Vs(km/h)に、例えば5秒等の短い所定時間で到達可能であることが予測できるので、駆動トルクの制限を実施しない。これにより、安定燃焼最小速度Vsに到達後、エンジンによる動力によって発電を実施する機会を増やすことが可能であり、蓄電池に電力を充電する可能性や頻度を顕著に高めることが可能である。これにより、EV走行による退避走行のための電力をより多頻度で蓄電することができるので、将来、このEV走行による退避走行が行われた場合、この退避走行が可能な距離を延長することが可能である。
他方、上述したステップS103の判定の結果、ハイブリッド車両の走行速度が、安定燃焼最小速度、未満であると判定されない場合、即ち、ハイブリッド車両の走行速度が、安定燃焼最小速度、以上であると判定される場合(ステップS103:No)、ECU100の制御下で、要求される駆動トルクに加えて、MG2による充電を行うための予備的な駆動トルクを駆動軸に直接伝達するように、エンジンが運転される(ステップS108)。
このように、車両が、安定燃焼最低速度Vs(km/h)を超える走行速度で走行している場合、エンジンを運転させ、要求された駆動トルクに加えて、余分の予備的な駆動トルクを発生させる。これにより、蓄電池に電力を、より多量に且つより迅速に充電することが可能である。これにより、将来、EV走行による退避走行が行われた場合、この退避走行が可能な距離をより確実に延長することが可能である。
言い換えると、車両が、安定燃焼最低速度Vs(km/h)を超える走行速度で走行している場合、運転者の要求する駆動パワーと電池充電に必要な充電パワーとを合算したパワーをエンジンが駆動軸に出力するように、エンジン出力が決定される。特に、誤係合が発生した場合、電池充電量の目標値を正常時よりも高く設定することにより、将来的に行われる可能性のある退避走行のための電力をより多量に蓄電することができるので、この退避走行による走行距離を延長することが可能である。
他方、上述したステップS101の判定の結果、誤係合が発生したと判定されない場合(ステップS101:No)、ECU100の制御下で、上述した一連の制御処理は一旦、終了される。
(本実施形態に係る作用と効果との検討)
次に、図8及び図9を参照して、本実施形態に係る作用と効果について検討する。ここに、図8は、一般例に係る意図しないMG1ロック(所謂、誤係合)が発生した場合のハイブリッド車両の共線図(図8(a))及び一般例に係る意図しないMG1の誤係合の発生後、MG1の回転数がゼロに固定された場合のハイブリッド車両の共線図(図8(b))である。尚、図8(a)及び図8(b)中の縦軸が各回転軸の回転数を示し、横軸は、各ギヤのギヤ比を距離的な関係で示している。図9は、一般例に係るハイブリッド車両の駆動制御装置における駆動軸の駆動トルクを決定可能な走行速度及びアクセル開度を入力変数とした所定マップを示したグラフである。尚、図9の横軸は走行速度を意味し、縦軸は駆動軸の駆動トルク(所謂、ペラ軸駆動トルク)を意味し、座標上の曲線群は、複数種類のアクセル開度に夫々対応している。
次に、図8及び図9を参照して、本実施形態に係る作用と効果について検討する。ここに、図8は、一般例に係る意図しないMG1ロック(所謂、誤係合)が発生した場合のハイブリッド車両の共線図(図8(a))及び一般例に係る意図しないMG1の誤係合の発生後、MG1の回転数がゼロに固定された場合のハイブリッド車両の共線図(図8(b))である。尚、図8(a)及び図8(b)中の縦軸が各回転軸の回転数を示し、横軸は、各ギヤのギヤ比を距離的な関係で示している。図9は、一般例に係るハイブリッド車両の駆動制御装置における駆動軸の駆動トルクを決定可能な走行速度及びアクセル開度を入力変数とした所定マップを示したグラフである。尚、図9の横軸は走行速度を意味し、縦軸は駆動軸の駆動トルク(所謂、ペラ軸駆動トルク)を意味し、座標上の曲線群は、複数種類のアクセル開度に夫々対応している。
仮に、図8(a)中の点線のラインに示されるように、一般例に係るハイブリッド車両が、例えば「電気CVTモード」で走行中、意図しないMG1ロックの実施(所謂、MG1ロックの誤係合)が発生した場合、MG1の回転数が急降下してしまうと共に、瞬間的にエンジンの回転数が降下してしまうにも関わらず、駆動軸での駆動力は維持される。このため、駆動軸の半径方向に生じるせん断力が発生し、駆動軸が折れ曲がったり、せん断されてしまう可能性が生じ、ハイブリッド車両が物理的に破損してしまう可能性が生じる。
また、一般例に係るハイブリッド車両において、MG1のロック機構の誤係合故障が発生した場合、エンジン回転数は、一般的に車両の走行速度に比例する。このため、図8(b)中の点線のラインに示されるように、仮に、エンジンの安定燃焼最小速度を下回る低速走行では安定した燃焼ができないため、燃料を供給することが困難となってしまう。このため、MG2によるEV走行が単に行われるため、蓄電池の電力消費の程度が高まってしまう。
特に、仮に、ハイブリッド車両の駆動制御装置において、図9に示される、一般例に係る駆動軸の駆動トルクを決定可能な走行速度及びアクセル開度を入力変数とした所定マップを用いた場合、上述したエンジンの安定燃焼最小速度等によって規定される駆動トルク制限領域を考慮していないため、次のような技術的な問題点が生じる。即ち、MG1のロック機構の誤係合故障が発生し、エンジンの安定燃焼最小速度を下回る低速走行が実施された場合、充電する機会を考慮することなく、MG2による退避走行を単に行うため、電力消費の程度が高まり、ひいては、MG2による退避走行を継続できなくなってしまう。
これに対して、本実施形態では、MG1ロックの誤係合が発生した場合、上述した駆動トルク制限領域を有する所定マップを用いる。そして、要求される駆動トルクが、この駆動トルク制限領域に含まれる場合、駆動トルクの制限を実施する。典型的には、現在の走行速度Vaが安定燃焼最小速度Vsよりも小さく、且つ、要求される駆動トルクが、この駆動トルク制限領域に含まれる場合、要求された駆動トルクを出力駆動トルクTa2に制限したEV走行を行うことにより、電力消費を効果的に抑制することが可能であると共に、退避走行が可能な距離を延長することが可能である。
他方、要求される駆動トルクが、この駆動トルク制限領域に含まれない場合、駆動トルクの制限を実施しない。典型的には、現在の走行速度Vaが安定燃焼最小速度Vsよりも小さく、且つ、要求される駆動トルクが、この駆動トルク制限領域の上限値である所定駆動トルクTa1よりも大きい場合、駆動トルクの制限を実施しない、即ち、要求された駆動トルクを実際に出力するようにEV走行が行われる。
このように、要求される駆動トルクが、上述した所定駆動トルクTa1よりも大きい場合、車両は要求された駆動トルクによって走行することにより、安定燃焼最小速度Vs(km/h)に、例えば5秒等の短い所定時間で到達可能であることが予測できるので、駆動トルクの制限を実施しない。これにより、安定燃焼最小速度Vsに到達後、エンジンによる動力によって発電を実施する機会を増やすことが可能であり、蓄電池に電力を充電する可能性や頻度を顕著に高めることが可能である。これにより、EV走行による退避走行のための電力をより多頻度で蓄電することができるので、将来、このEV走行による退避走行が行われた場合、この退避走行が可能な距離を延長することが可能である。
或いは、典型的には、現在の走行速度が、安定燃焼最小速度以上である場合、要求される駆動トルクに加えて、MG2による充電を行うための予備的な駆動トルクを駆動軸に直接伝達するように、エンジンが運転される。このように、車両が、安定燃焼最低速度Vs(km/h)を超える走行速度で走行している場合、エンジンを運転させ、要求された駆動トルクに加えて、余分の予備的な駆動トルクを発生させる。これにより、蓄電池に電力を、より多量に且つより迅速に充電することが可能である。これにより、将来、EV走行による退避走行が行われた場合、この退避走行が可能な距離をより確実に延長することが可能である。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うハイブリッド車両の駆動制御装置及び方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
10…ハイブリッド車両、50…駆動軸、100…ECU、110…制御部、120…誤係合特定部、200…エンジン、300…動力分割機構、400…ロック機構、600…バッテリ、MG1…第1のモータジェネレータ、MG2…第2のモータジェネレタ。
Claims (6)
- 車両に搭載された内燃機関と、
前記内燃機関の動力により発電可能であると共に該発電により得られた電力を蓄電池に充電可能な発電機と、
前記内燃機関の動力を、駆動軸及び前記発電機の回転軸に分割する動力分割機構と、
前記発電機及び前記蓄電池の少なくとも一方から供給される電力に応じた動力を前記駆動軸に出力可能であると共に前記駆動軸の回転力より発電可能であり、該発電により得られた電力を前記蓄電池に充電可能な電動発電機と、
前記発電機の回転軸が回転可能な第1状態及び前記発電機の回転軸が停止した状態で固定される第2状態のうちいずれか一方の状態からいずれか他方の状態へと前記発電機の動作状態を切り替え可能な切り替え手段と、
(i)意図しない時期に前記第1状態から前記第2状態へ切り替えられる誤作動が発生し、且つ、要求された要求駆動トルクの動作点が、前記内燃機関の安定燃焼最小回転数及び前記車両の走行抵抗に応じて規定される所定動作点領域に含まれる場合、前記要求駆動トルクより小さい所定駆動トルクで、前記駆動軸を駆動するように前記電動発電機を制御し、(ii)前記誤作動が発生し、且つ、前記要求駆動トルクの動作点が前記所定動作点領域に含まれない場合、前記要求駆動トルクで前記駆動軸を駆動するように前記電動発電機を制御する制御手段と
を備えることを特徴とするハイブリッド車両の駆動制御装置。 - 前記制御手段は、前記誤作動が発生し、且つ、前記車両の走行速度が安定燃焼最小速度を超える場合、前記要求駆動トルクより大きい駆動トルクで前記駆動軸を駆動するように前記内燃機関を制御することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の駆動制御装置。
- 前記制御手段は、前記要求駆動トルクで前記駆動軸を駆動することにより、前記車両の走行速度が安定燃焼最小速度を所定時間で超えるか否かを判定する判定手段を有し、
前記制御手段は、前記走行速度が前記安定燃焼最小速度を前記所定時間で超えると判定される場合、前記要求駆動トルクで前記駆動軸を駆動するように前記電動発電機を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド車両の駆動制御装置。 - 前記制御手段は、前記要求駆動トルクで前記駆動軸を駆動することにより、前記車両の走行速度が前記安定燃焼最小速度を前記所定時間で超えないと判定される場合、前記所定駆動トルクとして、前記車両の走行抵抗に加えて又は代えて前記蓄電池の残り電力量に応じた駆動トルクで前記駆動軸を駆動するように前記電動発電機を制御することを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド車両の駆動制御装置。
- 前記誤作動が発生したか否かを特定する特定手段と、
前記制御手段は、(i)前記誤作動が発生したと特定され、且つ、前記要求駆動トルクの動作点が、前記所定動作点領域に含まれる場合、前記所定駆動トルクで、前記駆動軸を駆動するように前記電動発電機を制御し、(ii)前記誤作動が発生したと特定され、且つ、前記要求駆動トルクの動作点が前記所定動作点領域に含まれない場合、前記要求駆動トルクで前記駆動軸を駆動するように前記電動発電機を制御することを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載のハイブリッド車両の駆動制御装置。 - 車両に搭載された内燃機関と、
前記内燃機関の動力により発電可能であると共に該発電により得られた電力を蓄電池に充電可能な発電機と、
前記内燃機関の動力を、駆動軸及び前記発電機の回転軸に分割する動力分割機構と、
前記発電機及び前記蓄電池の少なくとも一方から供給される電力に応じた動力を前記駆動軸に出力可能であると共に前記駆動軸の回転力より発電可能であり、該発電により得られた電力を前記蓄電池に充電可能な電動発電機と、
前記発電機の回転軸が回転可能な第1状態及び前記発電機の回転軸が停止した状態で固定される第2状態のうちいずれか一方の状態からいずれか他方の状態へと前記発電機の動作状態を切り替え可能な切り替え手段とを備えるハイブリッド車両の駆動制御装置におけるハイブリッド車両の駆動制御方法であって、
(i)意図しない時期に前記第1状態から前記第2状態へ切り替えられる誤作動が発生し、且つ、要求された要求駆動トルクの動作点が、前記内燃機関の安定燃焼最小回転数及び前記車両の走行抵抗に応じて規定される所定動作点領域に含まれる場合、前記要求駆動トルクより小さい所定駆動トルクで、前記駆動軸を駆動するように前記電動発電機を制御し、(ii)前記誤作動が発生し、且つ、前記要求駆動トルクの動作点が前記所定動作点領域に含まれない場合、前記要求駆動トルクで前記駆動軸を駆動するように前記電動発電機を制御する制御工程と
を備えることを特徴とするハイブリッド車両の駆動制御方法。
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JP2009102263A JP5229089B2 (ja) | 2009-04-20 | 2009-04-20 | ハイブリッド車両の駆動制御装置及び方法 |
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