JP5228341B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法及び有機トランジスタの製造方法 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法及び有機トランジスタの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法及び有機トランジスタの製造方法に関するものである。
有機EL素子は、薄型、全固体型、面状自発光及び高速応答であるといった特徴を有する発光素子として、例えばフラットパネルディスプレイやバックライトなどへの応用が期待されている。このような有機EL素子は、一般に表面に陽極層が形成された基板の上に、正孔注入輸送層や発光層などの機能層を形成し、この上に陰極層を形成することで作成される。
ところで、正孔注入輸送層や発光層などの機能層を形成する際、従来のフォトリソグラフィ法による形成方法に代わり、例えばインクジェット法などの液相法を用いて、機能層材料を有機溶媒に溶解又は分散させた液状体を塗布し、これを乾燥させることによって正孔注入輸送層や発光層などの機能層を形成することが知られている。具体的には、1種類以上の溶媒を組み合わせてインク化した液状体をインクジェット法により塗布し、溶媒を乾燥させて除去した後に、焼成して機能層を形成しているものがある(例えば、特許文献1,2参照)。このように、機能層を液相法で形成することは、フォトリソグラフィ法に比べ、製造プロセス及び製造コスト等の面で有利である。
国際公開第00/59267号パンフレット 特開平11−339957号公報
ところで、上述のようなインクジェット法等の液相法を用いた場合、微小な液滴を吐出して基板上に形成するため、液状体の乾燥制御が重要となる。つまり、上述した有機EL素子を製造する際に使用される有機溶媒は、機能層材料の溶解性や、塗布後の膜厚均一性、デバイス特性などを加味した上で決定されるもので、乾燥が速過ぎても遅過ぎても溶媒としては不適となる。
例えば、溶解性に優れた溶媒であっても、沸点が高い溶媒を用いた場合には、乾燥性が悪くなり、乾燥工程に時間を要することになったり、乾燥工程において溶媒を完全に除去することが難しいため、乾燥後に所望の膜厚が得られなくなったりするなどの問題が発生してしまう。
一方、塗布された機能層を乾燥させる際には、沸点が低い溶媒ほど乾燥時間を短縮することができ、生産性の向上に繋がるため有利である。しかしながら、沸点の低い溶媒は、乾燥性に優れるものの、機能層の膜厚均一性が低下しやすいため、単一の溶媒だけでこれらの要求を満たすことは困難である。
また、有機半導体層を有する有機トランジスタを液相法で形成する場合にも同様の問題点がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、成膜性及び素子特性を向上させることができる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法及び有機トランジスタの製造方法の提供を目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、基板上に第1の電極を形成する工程と、前記第1の電極上に機能層を形成する工程と、前記機能層上に第2の電極を形成する工程とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記機能層を形成する工程は、前記機能層の形成材料を有機溶媒に溶解または分散させた液状体を前記第1の電極上に塗布する工程と、前記第1の電極上の前記液状体を真空常温下で乾燥し前記有機溶媒を除去する工程と、前記有機溶媒を除去した後大気圧下で焼成する工程とを有し、前記有機溶媒は、主溶媒と、この主溶媒よりも沸点の低い少なくとも1種以上の副溶媒とを含むとともに、前記主溶媒の沸点は200℃以上であり、且つ、前記主溶媒と前記副溶媒との沸点差が100℃以下であることを特徴とする。
この構成によれば、機能層の形成材料が溶解または分散された有機溶媒が、沸点が200℃以上の主溶媒とこの主溶媒よりも沸点が低い副溶媒とを含むため、有機溶媒に溶解された機能層の液状体が一定の沸点を持たなくなり、有機溶媒の気化が緩やかになる。すなわち、主溶媒と副溶媒との沸点差を利用して乾燥速度に変化を持たせることができるため、乾燥速度をコントロールすることができる。
また、主溶媒と副溶媒との沸点差が100℃以下とすることで、副溶媒の乾燥後、主溶媒が乾燥せずに残存することを防ぐことができる。したがって、機能層の膜厚ムラの発生を防ぎ、成膜性と素子特性との双方を向上させることができる。また、機能層の液状体を真空常温下で乾燥した後、大気圧下で焼成を行うため、素子特性の低下を防ぐことができる。
また、前記主溶媒と前記副溶媒との沸点差が50℃以下であることを特徴とする。
この構成によれば、機能層の成膜性と素子特性をさらに向上させることができる。
また、前記焼成工程の焼成温度は、前記主溶媒の沸点以下の温度であることを特徴とする。
この構成によれば、機能層の形成材料の耐熱性を考慮した上で焼成を行うことができる。
また、前記機能層を形成する工程の前に、前記機能層の形成領域を取り囲むバンクを形成する工程を有し、前記液状体を前記バンク内に塗布することを特徴とする。
この構成によれば、機能層の形成領域を取り囲むバンクが形成されるため、このバンク内に機能層の形成材料を確実に塗布することができる。
また、前記液相法は、インクジェット法であることを特徴とする。
この構成によれば、機能層の形成材料が溶解された液状体を所定領域に所定量を確実に配することができる。
また、前記焼成工程は、不活性ガス雰囲気内で行われることを特徴とする。
この構成によれば、焼成時における機能層の形成材料の酸化を防ぐことができる。
一方、本発明に係る有機トランジスタの製造方法は、基板上に有機金属化合物からなる半導体層を備えた有機トランジスタの製造方法であって、前記半導体層を形成する工程で、前記半導体層の形成材料を有機溶媒に溶解または分散させた液状体を前記基板上に塗布する工程と、前記液状体を真空常温下で乾燥し前記有機溶媒を除去する工程と、前記有機溶媒を除去した後大気圧下で焼成する工程とを有し、前記有機溶媒は、主溶媒と、この主溶媒よりも沸点の低い少なくとも1種以上の副溶媒とを含むとともに、前記主溶媒の沸点は200℃以上であり、且つ、前記主溶媒と前記副溶媒との沸点差が100℃以下であることを特徴とする。
この構成によれば、半導体層の形成材料が溶解または分散された有機溶媒が、沸点が200℃以上の主溶媒とこの主溶媒よりも沸点が低い副溶媒とを含むため、有機溶媒に溶解された半導体層の液状体が一定の沸点を持たなくなり、有機溶媒の気化が緩やかになる。すなわち、主溶媒と副溶媒との沸点差を利用して乾燥速度に変化を持たせることができるため、乾燥速度をコントロールすることができる。
また、主溶媒と副溶媒との沸点差を100℃以下とすることで、副溶媒の乾燥後、主溶媒が乾燥せずに残存することを防ぐことができる。したがって、半導体層の膜厚ムラの発生を防ぎ、成膜性と素子特性との双方を向上させることができる。また、半導体層の液状体を真空常温下で乾燥した後、大気圧下で焼成を行うため、素子特性の低下を防ぐことができる。
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、本実施形態は、本発明の一部の態様を示すものであり、本発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下に示す各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材ごとに縮尺を異ならせてある。
(有機EL素子)
まず、本実施形態の有機EL素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)100の具体的な態様を説明する。図1は本実施形態に係る有機EL素子を示す断面図である。
図1に示すように、この有機EL素子100は、基板1上に、陽極層(第1の電極)20と、陰極層(第2の電極)60と、これら陽極層20と陰極層60とに挟持された機能層50とを備えている。
また、機能層50は、正孔注入輸送層30と発光層40とを備えている。したがって、この有機EL素子100は、基板1側から順に、陽極層20と、正孔注入輸送層30と、発光層40と、陰極層60とが積層された構造を有している。また、この有機EL素子100は、機能層50(発光層40)で発光した光を基板1側から射出するボトムエミッション構造となっている。
本実施形態の有機EL素子100は、ボトムエミッション構造であるため、基板1は、透明あるいは半透明のものが採用される。例えば、ガラス、石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等が挙げられ、本実施形態では、ガラス基板が用いられるものとする。基板1の表面には、例えば薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下TFTと称する)などからなる駆動素子(図示略)や、信号線、走査線等が形成されている。
また、機能層50(発光層40)で射出した光を陰極層60側から取り出す、いわゆるトップエミッション型である場合には、この基板1の対向側である封止基板側から発光光を取り出す構成となるので、透明基板及び不透明基板のいずれも用いることができる。不透明基板としては、例えば、アルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したものの他に、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。
陽極層20は、印加された電圧によって正孔を正孔注入輸送層30に注入するものであり、ボトムエミッション構造である本実施形態では、例えば、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)などの透明導電膜により形成されている。陽極層20は、前述した駆動素子や信号線及び走査線などと接続するように基板1上にパターニング形成されている。
また、基板1及び陽極層20上には、バンク70が形成されている。このバンク70は、陽極層20上に開口部70aを有し、複数の有機EL素子100を独立させて区分するものである。バンク70を形成する材料として、例えばポリイミド、アクリル等の絶縁性を有する有機物を用いることができる。なお、バンク70を形成する材料として、無機物と有機物とを組み合わせたものであってもよい。
機能層50のうち、正孔注入輸送層30は、陽極層20から注入した正孔を発光層40に輸送するためのものであり、陽極層20が形成された基板1上であって、バンク70の開口部70a内に形成されている。この正孔注入輸送層30を構成する材料としては、本実施形態では、トリフェニルアミン系ポリマーを有機溶媒中に溶解させたものが用いられる。
なお、正孔注入輸送層30の形成材料としては、前記のものに限定されることなく種々のものが使用可能である。例えば、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンやその誘導体などを、適宜な分散媒に分散させたものなどが使用可能である。
一方、発光層40は、陰極層60から注入される電子と正孔注入輸送層30から注入される正孔とが結合して所定波長の光を発光する部分であり、正孔注入輸送層30上に形成されている。この発光層40を構成する材料としては、例えばポリフルオレン誘導体(PF)やポリパラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などの高分子有機材料を用いることができる。また、発光層40としては、上記高分子有機材料に、例えばペリレン系色素や、クマリン系色素、ローダミン系色素、ルブレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、キナクリドンなどの低分子有機材料をドープしたものを用いてもよい。
そして、発光層40は、高分子有機材料又はこの高分子有機材料に低分子有機材料をドープしたものを有機溶媒中に溶解させた溶液を正孔注入輸送層30上に塗布して乾燥させることによって形成されている。
陰極層60は、バンク70及び発光層40を覆って一面に形成されている。発光層40の上面から順にLiF(フッ化リチウム)層、Ca(カルシウム)層及びAl(アルミニウム)層を積層した構成となっている。そして、陰極層60上には、シール層(図示略)を介して封止基板(図示略)が形成されている。
(有機EL素子の製造方法)
次に、図2を参照して本実施形態における有機EL素子の製造方法を説明する。ここで、図2は、有機EL素子の工程図である。なお、以下の説明においては、陽極層20を形成する工程までは従来と同様であるため説明を省略する。
まず、図2(a)に示すように、陽極層20が形成された基板1上にバンク70を形成する。具体的には、スピンコート法やインクジェット法、ジェットディスペンサー法、ニードルディスペンサー法等によりバンク70の形成材料を塗布する。そして、フォトリソグラフィ技術を利用して、露光、現像処理を施すことで、陽極層20に臨む開口部70aを有するバンク70を形成する。
次に、基板1の表面をプラズマに曝すプラズマ処理を行う。これは、陽極層20の表面を活性化し、さらにバンク70の表面を改質処理することで、基板1上に液体材料に対する親和性の異なる複数の領域(親液領域及び撥液領域)を形成することを目的として行う。本実施形態では、まず、基板1を加熱する予備加熱工程を行った後、プラズマとして酸素ガスを用いたプラズマによる第1のプラズマ処理を行い、その後、CF(テトラフルオロメタン)ガス等のフルオロカーボンガスを用いたプラズマによる第2のプラズマ処理を行う。その結果、第1のプラズマ処理により、陽極層20の表面に親液性が付与され、第2のプラズマ処理によりバンク70の表面に撥液性が付与される。
なお、第2プラズマ処理の処理ガスは、テトラフルオロメタン(四フッ化炭素)に限らず、他のフルオロカーボン系のガスを用いることができ、大気圧プラズマ処理装置を用いる場合には、ヘリウムガスとの混合ガスを用いるとプラズマの発生を容易にし、安定性を高めることができる。一方、減圧環境下でプラズマ処理を行う場合にはフルオロカーボンガスを単体で処理ガスとして用いることができる。
また、バンク70の形成材料は酸素ガスプラズマにより前処理した方がフッ素化されやすい、という特徴を有しており、本実施形態には特に有効である。陽極層20の表面もこのCFガスを用いたプラズマ処理の影響を多少受けるが、濡れ性に影響を与える事は少なく、第1のプラズマ処理による親液性を保持した状態となる。
また、上記第2のプラズマ処理工程が終了したならば、基板1を所定温度まで冷却しておくことが好ましい。続いて行われる機能層50を形成する工程中に基板1の温度が変動するのは工程の安定性を得る上で好ましくないためである。
次に、図2(b)に示すように、陽極層20上に機能層50のうち、例えば厚さ50nmの正孔注入輸送層30を形成する。具体的には、正孔輸送注入性を有するトリフェニルアミン系ポリマーを、例えば、主溶媒としてシクロヘキシルベンゼン(沸点237.5℃)と副溶媒としてキシレン(沸点140℃)等の有機溶媒で溶解させた正孔注入輸送層30のインク組成物(液状体)30aとしてインクジェット法等によりバンク70内の陽極層20上に吐出していく。
続いて、陽極層20上に塗布された正孔注入輸送層30のインク組成物30aを乾燥させ、インク組成物30aに含まれる有機溶媒を除去する。具体的には、常温(室温)の真空下で15分間乾燥させることで脱溶媒して正孔注入輸送層30の固体膜を得る。
次に、有機溶媒が除去され、固体膜となった正孔注入輸送層30の形成材料に焼成処理を施す。具体的には、大気圧下の窒素雰囲気中でホットプレートやランプヒータを用いて、焼成(例えば、200℃×30分)する。そして、正孔注入輸送層30の形成材料が不溶化され、スピンコータ等を用いて基板1上にリンス処理を行う。これにより、不溶化されていない部分が洗浄除去されるため、不溶化された部分のみを選択的に基板1上に残存させて例えば、厚さ50nmの正孔注入輸送層30を得ることができる。
次に、図2(c)に示すように、正孔注入輸送層30上に、機能層50のうち発光層40を形成する。具体的には、正孔注入輸送層30と同様に、赤色に発光するポリフルオレン系材料を例えば、主溶媒としてシクロヘキシルベンゼン(沸点237.5℃)と副溶媒としてキシレン(沸点140℃)等の有機溶媒で溶解させたインク組成物(液状体)40aをインクジェット法等により正孔注入輸送層30上に吐出する。そして、吐出したインク組成物40aを乾燥した後、大気圧下の窒素雰囲気中でホットプレートやランプヒータを用いて、焼成(例えば、90℃×30分)することで、例えば厚さ80nmの発光層40が形成される(図2(d)参照)。
ここで、機能層50(正孔注入輸送層30及び発光層40)の焼成工程において、溶解している有機溶媒の沸点よりも低い温度で焼成を行うことにより、機能層50の形成材料の耐熱性を考慮した上で焼成を行うことができる。なお、焼成工程は、窒素雰囲気の他に、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気で行うことができる。このように、不活性ガス雰囲気中で焼成を行うことにより、機能層50の形成材料の酸化を防ぐことができる。
なお、機能層50(正孔注入輸送層30及び発光層40)のインク組成物30a,40aの塗布方法は、前述したインクジェット法の他に、ディスペンサー法やスプレー法により塗布することもできる。さらに、フレキソ印刷法や、スクリーン印刷法、凸版印刷法、平板印刷法、グラビア印刷法等により形成することもできる。
続いて、発光層40上に陰極層60を形成する。具体的には、蒸着法、スパッタ法、CVD法等で形成することができる。特に真空加熱蒸着法で、発光層40の表面から順にLiF、Ca、Alを、例えば、厚さが2nm、20nm、200nmで積層させる。
そして、陰極層60までが形成された基板1上に、シール層を介して封止部材で封止する。この封止工程については、公知の工程を適用することができるので、詳細は省略することとする。なお、封止工程は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。大気中で行うと、陰極層60にピンホール等の欠陥が生じていた場合にこの欠陥部分から水や酸素等が陰極層60に侵入して陰極層60が酸化される畏れがあるので好ましくない。
ところで、発光層40の形成材料を有機溶媒に溶解させたインク組成物40aとして塗布する場合、バンク70の近傍と有機EL素子100の中心部とでは乾燥挙動(乾燥スピード)が異なるため、図3に示すように、乾燥した発光層40の表面形状が断面視M字形状になってしまう(図3中実線)。これは、有機EL素子100の中心部では、発光層40のインク組成物40a塗布時において、そのインク組成物40aの表面が、その厚さ方向に比べて大きいため、その自重で凹んでしまうからであると考えられる。また、バンク70近傍が盛り上がるのは、コーヒーステイン現象で見られるように、インク組成物40aの表面とバンク70近傍のポリマー濃度が高くなって蒸発が早く進行してしまうためであると考えられる。このように、発光層40の乾燥速度は、ポリマー濃度、蒸発速度で異なり複雑である。
このような膜厚ムラを改善するために、本発明を適用した有機EL素子100の製造方法では、上述した発光層40をインクジェット法により形成する際に、前述した発光層40の形成材料を溶解させる有機溶媒として、発光層40の形成材料の溶解性に優れた有機溶媒を主溶媒として選択し、この主溶媒よりも沸点の低い少なくとも1種以上の有機溶媒を副溶媒として加えた混合溶媒を用いている。
具体的には、前述したシクロヘキシルベンゼン(沸点237.5℃)、キシレン(沸点140℃)の他に、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン(沸点203℃)、トルエン(沸点110.6℃)などの有機溶媒を用いることができる。これらの有機溶媒は、発光層40の形成材料の溶解性、乾燥性、溶液安定性、塗布性に優ており、残留溶媒としてデバイス特性に対する悪影響の度合いが小さい。また、これらの有機溶媒は、特にフルオレンとアリールアミンとを分子内に有したポリマーに対する溶解性及び溶液安定性に優れている。したがって、これらの有機溶媒を用いることによって、特性に優れた有機EL素子100を安定して製造することができる。なお、以上のことは、正孔注入輸送層30についても同様である。
ここで、上記有機溶媒に発光層の形成材料を溶解させて、インク組成を以下の条件で構成した場合の、各実施例における発光層の成膜性(膜の平坦性)と素子寿命(素子化した際のデバイス特性)とを測定する実験を行った。結果を表1に示す。また、成膜性については発光層の膜厚を80nmに制御し、その膜厚を触針式で測定しており、標準偏差σの3倍を値に示している。
なお、比較例1は、2種類の溶媒の沸点差が100℃以上(126.9℃)の場合、比較例2として溶媒を単一で用いた場合を示している。
また、以下に説明する表1〜3においては、混合されている溶媒のうち、最も沸点の高い有機溶媒を主溶媒とし、その主溶媒よりも沸点及び粘度の低い有機溶媒を副溶媒とする。
Figure 0005228341
表1に示すように、実施例1〜3のように、2種類の有機溶媒が混合され、主溶媒の沸点が200度以上であるとともに、主溶媒と副溶媒との沸点差が100℃以下である場合、成膜性と素子寿命の双方において、向上していることが分かる。特に、実施例3のように、沸点差が50℃以下(34.5℃)である場合には、素子寿命が大幅に向上していることがわかる。また、実施例4のように、溶媒を3種類用いた場合においても、成膜性が4nm、素子寿命が1.09と良好な結果が得られた。
実施例1〜3では、主溶媒と、主溶媒より沸点の低い副溶媒とを混合させることにより、その有機溶媒が一定の沸点を持たなくなり、有機溶媒の気化が緩やかになるため、乾燥速度に変化を持たせることができる。つまり、主溶媒と副溶媒の沸点差を利用して、乾燥速度をコントロールすることができるためであることが考えられる。また、その主溶媒と副溶媒との沸点差が小さくなるにつれ、成膜性と素子寿命が向上しているのは、副溶媒の乾燥後、主溶媒が乾燥せずに残存することを防ぐことができるためだと考えられる。
一方、比較例1のように、溶媒の沸点差が100℃以上(126.9℃)の場合、成膜性は図れるものの、素子寿命が悪く、比較例2のように、溶媒を単体で用いた場合、素子寿命は高いものの、成膜性が悪く、膜厚ムラが大きく発生しているため、成膜性と素子寿命の両立した結果は得られなかった。
比較例1,2では、主溶媒と副溶媒との沸点差が大きすぎて、副溶媒が乾燥した後、主溶媒が残存してしまい、副溶媒の乾燥後、残存している主溶媒が乾燥するまでに時間を要するためであると考えられる。
次に、本実施形態では、発光層のインク組成物を塗布後、常温で真空乾燥後にホットプレート上で焼成している。そこで、比較例として発光層の形成材料を本実施形態と同様の有機溶媒に溶解させ、真空乾燥器中で90℃×30分の加熱を行った場合と比較し、表2に示す。
Figure 0005228341
同様の溶媒を用いた場合、実施例のように常温で真空乾燥した後にホットプレート等を用いて大気圧下で焼成を行うことで、比較例として真空乾燥中に加熱した場合と比べて素子寿命が向上するという結果が得られた。比較例では、有機溶媒が完全に乾燥される前に加熱を始めることで、発光層の形成材料が有機溶媒の乾燥とともに酸化してしまうためではないかと考えられる。
次に、正孔注入輸送層30においても、同様の実験を行い、その結果を表3に示す。
Figure 0005228341
正孔注入輸送層30においても同様に、主溶媒の沸点が200℃以上であるとともに、主溶媒と副溶媒との沸点差が100℃以下(97.5℃)である場合は成膜性と素子寿命の双方で良好な結果が得られた。これは、前述した発光層40と同様の理由から生じるものと考えられる。
このように、本実施形態においては、正孔注入輸送層30及び発光層40の形成材料を溶解する有機溶媒が、沸点が200℃以上の主溶媒とこの主溶媒よりも沸点が低い副溶媒を含む構成とした。そのため、正孔注入輸送層30及び発光層40を溶解している有機溶が一定の沸点を持たなくなり、有機溶媒の気化が緩やかになる。すなわち、主溶媒と副溶媒の沸点差を利用して、乾燥速度に変化を持たせることができるため、乾燥速度をコントロールすることができる。
また、主溶媒と副溶媒との沸点差が100℃以下で、好ましくは50℃以下であるため、副溶媒の乾燥後、主溶媒が乾燥せずに残存することを防ぐことができる。したがって、機能層50のインク組成物30a,40aの蒸発速度やインク組成物30a,40aの自重から生じる機能層50の膜厚ムラの発生を防ぎ、成膜性と素子特性との双方を向上させることができる。また、機能層50のインク組成物30a,40aを真空常温下で乾燥した後、大気圧下で焼成を行うため、発光層40の形成材料が有機溶媒の乾燥とともに酸化することを防ぎ、素子特性の低下を防ぐことができる。
さらに、有機EL素子100の形成領域を取り囲むバンク70が形成されるとともに、このバンク70の表面は、撥液処理され、陽極層20は親液処理されているため、このバンク70内に正孔注入輸送層30及び発光層40の形成材料が溶解されたインク組成物30a,40aを所定位置に確実に塗布することができる。
なお、上述の実施形態の有機EL素子の発光層(機能層)を、例えば白色発光材料で構成し、各画素領域のそれぞれから射出される光(白色光)を、カラーフィルタを用いて、赤色光、緑色光、及び青色光のそれぞれに変換することによって、フルカラーのディスプレイを形成することも可能である。
(有機EL装置)
その一例として上記有機EL素子100は、図4に示すような有機EL装置(発光装置)150に好適に用いることができる。
図4は、本実施形態に係る有機EL素子100を備えた有機EL装置150の構成を示す平面図である。
図4に示すように、有機EL装置150は、基板1に表示領域(図中一点鎖線の内側の領域)2と非表示領域(図中一点鎖線の外側の領域)3とを有する構成になっている。
表示領域2には、実表示領域4(図中二点鎖線の内側の領域)とダミー領域(図中二点鎖線の外側の領域)5とが設けられている。
実表示領域4内には、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の光が射出されるサブ画素がマトリクス状に配列されている。赤色のサブ画素、緑色のサブ画素、青色のサブ画素は1列ずつストライプ状に設けられており、このストライプが行方向に繰り返し形成されている。隣接する赤色サブ画素、緑色サブ画素、青色サブ画素が1組になって画素が形成されており、1つの画素内で赤色、緑色、青色の光を混色させることでフルカラー表示が可能になっている。
ダミー領域5には、主として各サブ画素を発光させるための回路が設けられている。例えば、実表示領域4の図中左辺及び右辺に沿うように走査線駆動回路80が配置されており、実表示領域4の図中上辺に沿うように検査回路90が配置されている。検査回路90は、有機EL装置150の作動状況を検査するための回路である。例えば検査結果を外部ドライバなどに出力し、製造途中や出荷時における有機EL装置150の品質、欠陥の検査を行うことができるように構成されている。
図5は、有機EL装置150の等価回路図である。
有機EL装置150は、複数の走査線101…と、各走査線101に対して直角に交差する方向に延びる複数の信号線102…と、各信号線102に並列に延びる複数の電源線103…とからなる配線構成になっている。走査線101…と信号線102…との各交点付近に画素領域(サブ画素)X…を形成したものである。
信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ線駆動回路100が接続されている。走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路80が接続されている。
画素領域Xの各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT(スイッチング素子)112と、このスイッチング用TFT112を介して信号線102から共有される画素信号を保持する保持容量113と、該保持容量113によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT130と、この駆動用TFT130を介して電源線103に電気的に接続したときに該電源線103から駆動電流が流れ込む陽極層20と、該陽極層20と陰極層60との間に挟み込まれた正孔注入輸送層30及び発光層40とが設けられている。
この有機EL装置150は、走査線101が駆動されてスイッチング用TFT112がオン状態になると、そのときの信号線102の電位が保持容量113に保持され、該保持容量113の状態に応じて駆動用TFT130のオン・オフ状態が決まる。駆動用TFT130がオン状態のとき、チャネルを介して電源線103から陽極層20に電流が流れ、正孔注入輸送層30を介して発光層40に正孔が注入される。一方、陰極層60からは電子が発光層40に注入される。発光層40において注入された正孔と電子とが結合して発光する。
(有機トランジスタ)
次に、図6に基づいて本発明の第2実施形態である、有機トランジスタについて説明する。
図6(a)は、有機トランジスタの平面図であり、(b)は(a)におけるA−A線に沿う断面図である。図6中、符号10は有機トランジスタであり、この有機トランジスタ10は、いわゆるボトムゲート・トップコンタクト構造のものである。ただし、本発明の有機トランジスタは、ボトムゲート・トップコンタクト構造に限定されることなく、いわゆるボトムゲート・ボトムコンタクト構造、トップゲート・ボトムコンタクト構造、トップゲート・トップコンタクト構造等にも適用可能ある。
図6(a),(b)に示すように、本実施形態の有機トランジスタ10は、基板11上にゲート電極12を配設し、さらにこのゲート電極12上にゲート絶縁膜13を介して有機半導体層14を配設したもので、この有機半導体層14上に、ソース電極15及びドレイン電極16を配設したものである。このような薄膜トランジスタ10では、ソース電極15及びドレイン電極16の間に電圧を印加した状態で、ゲート電極12にゲート電圧を印加すると、有機半導体層14のゲート絶縁膜13との界面付近にチャネルが形成され、このチャネル領域をキャリア(正孔)が移動することで、ソース電極15およびドレイン電極16の間に電流が流れる。
このような構成の有機トランジスタ10を形成するには、まず、基板11を用意する。
この基板11については、ガラス基板、シリコン基板、アルミニウムやステンレス等の金属基板、GaAs等の半導体基板、プラスチック基板、及びこれらの基板を貼り合わせた積層基板など、いかなる基板を用いることもできる。これらのうち、価格が安く軽量で柔軟性が高い、プラスチック基板を用いるのが好ましい。
また、このような基板11上に直接有機トランジスタ10を形成するようにしてもよく、あるいは、このような基板11上に絶縁層(図示せず)を介して有機トランジスタ10を形成するようにしてもよい。この絶縁層としては、絶縁性を有する薄膜であれば既知のどのような膜を用いることもできる。なお、本発明では、このような絶縁層を形成した基板も含めて、基板11としている。
次に、この基板11上に、ゲート電極12を形成する。このゲート電極12の形成材料としては、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)等やそれらの金属を用いた合金、InO、SnO、ITO等の導電性の酸化物、ポリアニリン、ポリピロール等の導電性高分子、及びそれに塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸、PF、AsF、FeCl等のルイス酸、ヨウ素等のハロゲン原子、ナトリウムカリウム等の金属原子等のドーパントを添加したもの、カーボンブラックや金属粒子を分散した導電性の複合材料等、導電性を有する種々の材料を用いることができる。
また、このゲート電極12の形成方法としては、従来公知の種々の方法が採用可能である。例えば、上記形成材料によって導電膜を形成し、この導電膜をフォトエッチングすることにより、ゲート電極12を形成することができる。また、所定の形状(パターン形状)の開口部を形成したメタルスルーマスクを用い、これ通して基板11上に金属膜の蒸着処理を行うことにより、エッチングを行うことなく、金属膜パターンからなるゲート電極12を形成することもできる。さらに、金属微粒子やグラファイトのような導電性微粒子を含む液状のポリマー混合物を形成材料として用い、このような液状体を、インクジェット法等によって選択的に吐出しパターニングすることにより、簡易にしかも低コストでゲート電極12を形成することもできる。
続いて、上記ゲート電極12を覆うように、基板11上にゲート絶縁膜13を形成する。このゲート絶縁膜13の形成材料としては、絶縁性を有する材料であれば、特に限定されることなく種々のものを用いることができ、有機材料、無機材料のいずれも使用可能である。
ここで、上記ゲート絶縁膜13上の所望の領域に有機半導体層14を形成する。この有機半導体層14の形成材料としては、例えば、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)[P3HT]、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)[PTV]、ポリ(パラ−フェニレンビニレン)[PPV]、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)[PFO]、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−ビス−N,N’−(4−メトキシフェニル)−ビス−N,N’−フェニル−1,4−フェニレンジアミン)[PFMO]、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−ベンゾチアジアゾール)[BT]、フルオレン−トリアリルアミン共重合体、トリアリルアミン系ポリマー、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−ジチオフェン)[F8T2]のようなフルオレン−ビチオフェン共重合体等のポリマー有機半導体材料、またフラーレン(C60)、あるいは、金属フタロシアニンあるいはそれらの置換誘導体、あるいはアントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン等のアセン分子材料、あるいは、α−オリゴチオフェン類、具体的にはクォーターチオフェン(4T)、セキシチオフェン(6T)、オクタチオフェンのような低分子系有機半導体のうちの1種を用い、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
そして、上述の有機半導体層14の形成材料に例えば、主溶媒としてシクロヘキシルベンゼン(沸点237.5℃)と副溶媒としてキシレン(沸点140℃)で溶解させた有機半導体層14のインク組成物としてインクジェット法等により吐出していく。このように、沸点が200℃以上の主溶媒とこの主溶媒よりも沸点が低い副溶媒を含むとともに、それら主溶媒と副溶媒との沸点差が100℃以下とすることで、有機半導体層14を溶解している有機溶が一定の沸点を持たなくなり、有機溶媒の気化が緩やかになる。すなわち、主溶媒と副溶媒の沸点差を利用して、乾燥速度に変化を持たせることができるため、乾燥速度をコントロールすることができる。また、第1実施形態と同様に主溶媒と副溶媒との沸点差は50℃以下であることが特に好ましい。
続いて、ゲート絶縁膜13上に塗布された有機半導体層14のインク組成物を乾燥させ、インク組成物に含まれる有機溶媒を除去させる。具体的には、常温(室温)の真空下で乾燥させることで脱溶媒して有機半導体層14の固体膜を得る。
次に、有機溶媒が除去され、固体膜となった有機半導体層14の形成材料に、大気圧下の窒素雰囲気中でホットプレートやランプヒータを用いて焼成処理を施す。
なお、有機半導体層14の形成方法としては、特にインクジェット法が用いられるが、他にも、キャスト法、引き上げ法、ラングミュアブロジェット法、スプレー法、シルクスクリーン法等が採用される。
また、有機半導体層14の形成に先立ち、この有機半導体層14を良好に形成するため、この有機半導体層14の下地となる面、すなわち基板1上の上記ゲート絶縁膜13の表面を改質処理してもよい。この表面改質処理としては、例えばヘキサメチレンジシラザン等の表面改質剤を用いた表面処理、アセトン等を用いた有機洗浄処理、塩酸等の酸や水酸化ナトリウム等のアルカリ処理、UVオゾン処理、フッ素化処理、酸素やアルゴン等のプラズマ処理、ラングミュアブロジェット膜の形成処理が挙げられ、これらのうち1種、または2種以上の処理を用いることができる。
これらの処理を行うことにより、有機半導体層14が溶解されたインク組成物を液滴塗布し、さらに乾燥した後、得られる半導体層がより所望の膜厚に近くなるように調節することができる。
次に、ソース電極15及びドレイン電極16を形成する。ソース電極15及びドレイン電極16の形成材料としては、前述したゲート電極12と同様に、導電性を有する種々の材料を用いることができる。
これらソース電極15、ドレイン電極16の形成方法としては、上記ゲート電極12の場合と同様、従来公知の種々の方法が採用可能である。なお、ソース電極15とドレイン電極16とを、必要に応じて異なる材料で形成してもよい。
このようにしてボトムゲート・トップコンタクト構造の有機トランジスタ10を形成したら、得られた有機トランジスタ10を水分や酸素から保護するため、該有機トランジスタ10を覆って保護膜(図示せず)を設けてもよい。
このような保護膜としては、例えば酸化ケイ素や酸化アルミニウム、酸化タンタルのような無機酸化物、窒化ケイ素のような無機窒化物、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレン、パリレン膜やUV硬化樹脂などの絶縁性有機ポリマー、さらにはこれらの積層膜を用いることができる。
このように本実施形態では、第1実施形態と同様に有機半導体層14の形成材料を溶解する有機溶媒が、沸点が200℃以上の主溶媒とこの主溶媒よりも沸点が低い副溶媒を含むとともに、それら主溶媒と副溶媒との沸点差が100℃以下、好ましくは50℃以下であるため、有機半導体層14を溶解している有機溶媒が一定の沸点を持たなくなり、有機溶媒の気化が緩やかになる。すなわち、主溶媒と副溶媒との沸点差を利用して、乾燥速度に変化を持たせることができるため、乾燥速度をコントロールすることができる。
したがって、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
つまり、本発明の有機トランジスタ10は、電子ペーパー等に用いられる有機トランジスタとして好適なものとなり、また、電子ペーパー等のフレキシブル性が求められる電子機器のアクティブマトリクス基板を構成する薄膜トランジスタとして、好適なものとなる。
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。前述した正孔注入輸送層あるいは発光層のインク組成物は、低分子、高分子、デンドリマー等の分子形態に関係なく、また発光層の形成材料は、例えば蛍光、燐光材料ともに有効である。
本発明の第1実施形態の有機EL素子を模式的に示す断面図である。 本発明の第1実施形態における有機EL素子の工程図である。 有機EL素子の説明図である。 本発明の第1実施形態に係る有機EL装置の構成を示す平面図。 本発明の第1実施形態に係る有機EL装置の配線構造を示す模式図である。 (a)は本発明の第2実施形態における有機トランジスタの平面図であり、(b)は断面図である。
符号の説明
1,11‥基板 10…有機トランジスタ 14…有機半導体層(半導体層) 20…陽極層(第1の電極) 30…正孔注入輸送層(機能層) 40…発光層(機能層) 50…機能層 60…陰極層(第2の電極) 70…バンク 100…有機EL素子

Claims (5)

  1. 基板上に第1の電極を形成する工程と、
    前記第1の電極上に機能層を形成する工程と、
    前記機能層上に第2の電極を形成する工程とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
    前記機能層を形成する工程は、前記機能層の形成材料を有機溶媒に溶解または分散させた液状体を前記第1の電極上に塗布する工程と、
    前記第1の電極上の前記液状体を真空常温下で乾燥し前記有機溶媒を除去する工程と、
    前記有機溶媒を除去した後大気圧下で焼成する工程とを有し、
    前記有機溶媒は、主溶媒と、この主溶媒よりも沸点の低い少なくとも1種以上の副溶媒とを含むとともに、前記主溶媒の沸点は200℃以上であり、且つ、前記主溶媒と前記副溶媒との沸点差が50℃以下であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  2. 前記焼成工程の焼成温度は、前記主溶媒の沸点以下の温度であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  3. 前記機能層を形成する工程の前に、前記機能層の形成領域を取り囲むバンクを形成する工程を有し、前記液状体を前記バンク内に塗布することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  4. 前記機能層を塗布する工程において、前記機能層の形成材料をインクジェット法により塗布することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  5. 前記焼成工程は、不活性ガス雰囲気内で行われることを特徴とする請求項1から請求項
    4の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
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