図1は、ナノファイバ製造装置の実施の形態を一部切り欠いて示す平面図である。
同図に示すように、ナノファイバ製造装置100は、放出装置101と、案内体102と、収集装置103と、誘引装置104とを備えている。
ここで、ナノファイバを製造するための原料液については、原料液300と記し、製造されたナノファイバについてはナノファイバ301と記すが、製造に際しては原料液300が電気的に延伸しながらナノファイバ301に変化していくため、原料液300とナノファイバ301との境界は曖昧であり、明確に区別できるものではない。
放出装置101は、帯電した原料液300や製造されるナノファイバ301を気体流に乗せて放出することができるユニットである。
図2は、放出装置の一部を切り欠いて示す平面図である。
図3は、放出装置の外観を示す斜視図である。
これら図に示すように放出装置101は、流出装置110と、帯電装置111と、風洞体112と、気体流発生装置113と、供給路114とを備えている。
流出装置110は、帯電した原料液300を空間中に流出させる装置であり、本実施の形態では、原料液300を遠心力により放射状に流出させる装置である。流出装置110は、流出体115と、回転軸体116と、モータ117とを備えている。
流出体115は、原料液300を空間中に流出させるための部材であり、原料液300が通過する流出孔118が多数設けられる部材である。本実施の形態の場合、流出体115は、原料液300が内方に注入されながら自身の回転による遠心力により空間中に原料液300を流出させることのできる容器であり、一端が閉塞された円筒形状となされ、周壁には流出孔118を多数備えている。流出体115は、貯留する原料液300に電荷を付与するため、導電体で形成されている。流出体115は、ベアリング119により回転可能に支持されている。
具体的には、流出体115の直径は、10mm以上、300mm以下の範囲から採用されることが好適である。あまり大きすぎると後述の気体流により原料液300やナノファイバ301を集中させることが困難になるからであり、また、流出体115の回転軸が偏心するなど、重量バランスが少しでも偏ると大きな振動が発生してしまい、当該振動を抑制するために流出体115を強固に支持する構造が必要となるからである。一方、小さすぎると遠心力により原料液300を流出させるための回転を高めなければならず、駆動源の負荷や振動など問題が発生するためである。さらに流出体115の直径は、20mm以上、150mm以下の範囲から採用することが好ましい。
また、流出孔118の形状は円形が好ましく、その直径は、流出体115の肉厚にもよるが、おおよそ0.01mm以上、3mm以下の範囲から採用することが好適である。これは、流出孔118があまりに小さすぎると原料液300を流出体115の外方に流出させることが困難となるからであり、あまりに大きすぎると一つの流出孔118から流出する原料液300の単位時間当たりの量が多くなりすぎ(つまり、流出する原料液300が形成する線の太さが太くなりすぎ)て所望の径のナノファイバ301を製造することが困難となるからである。
なお、流出体115は、自身の回転による遠心力により原料液300を空間中に流出させる部材ばかりでなく、自身は静止しており、圧力がかけられた原料液300が流出孔118から流出する部材でもかまわない。また、遠心力により原料液300を流出させる流出体115の形状は、円筒形状に限定するものではなく、断面が多角形状の多角筒形状のようなものや円錐形状のようなものでもよい。流出孔118が回転することにより、流出孔118から原料液300が遠心力で流出可能な形状であればよい。また、流出孔118の形状は、円形に限定することなく、多角形状や星形形状などであってもよい。
回転軸体116は、流出体115を回転させ遠心力により原料液300を流出させるための駆動力を伝達するための軸体であり、流出体115の他端から流出体115の内部に挿通され、流出体115の閉塞部と一端部が接合される棒状体である。また、他端はモータ117の回転軸と接続されている。回転軸体116は、モータ117と絶縁体120を介して接続されており、流出体115とモータ117とが電気的に絶縁状態となっている。
これは、流出体115のアースとの接続が事故などにより切れた場合、モータ117を保護するためである。回転軸体116は、ベアリング119により回転可能に支持されている。
モータ117は、遠心力により原料液300を流出孔118から流出させるために、回転軸体116を介して流出体115に回転駆動力を付与する装置である。なお、流出体115の回転数は、流出孔118の口径や使用する原料液300の粘度や原料液内の高分子物質の種類などとの関係により、数rpm以上、10000rpm以下の範囲から採用することが好ましく、本実施の形態のようにモータ117と流出体115とが直動の時はモータ117の回転数は、流出体115の回転数と一致する。
帯電装置111は、原料液300に電荷を付与して帯電させる装置である。本実施の形態の場合、帯電装置111は、帯電電極121と、帯電電源122と、接地装置123とを備えている。
帯電電極121は、自身がアースに対し高い電圧もしくは低い電圧となることで、接地されている流出体115に電荷を誘導するための部材である。本実施の形態の場合、帯電電極121は、流出体115の周囲を取り囲むように配置される円環状の部材である。帯電電極121に正の電圧が印加されると流出体115には、負の電荷が誘導され、帯電電極121に負の電圧が印加されると流出体115には、正の電荷が誘導される。
帯電電極121の大きさは、流出体115の直径よりも大きい必要があるが、その直径は、50mm以上、1500mm以下の範囲から採用されることが好適である。なお、帯電電極121の形状は、円環状に限ったものではなく、流出体115の形状との関係によって、多角形の環状や平板状などであってもよい。また、帯電電極121の断面形状も矩形ばかりでなく丸形でもかまわない。
接地装置123は、流出体115と電気的に接続され、流出体115を接地電位に維持することができる部材である。接地装置123の一端は、流出体115が回転状態であっても電気的な接続状態を維持することができるようにブラシとして機能するものであり、他端は大地と接続されている。
帯電電源122は、帯電電極121に高電圧を印加することのできる電源である。帯電電源122は、一般には、直流電源が好ましい。特に、発生させるナノファイバ301の帯電極性に影響受けないような場合、生成したナノファイバ301の帯電を利用して、逆極性の電位を印加した電極でナノファイバ301を誘引するような場合には、直流電源を採用することが好ましい。また、帯電電源122が直流電源である場合、帯電電源122が帯電電極121に印加する電圧は、10KV以上、200KV以下の範囲の値から設定されるのが好適である。帯電電源122に負の電圧が印加される場合には、前記の印加する電圧の極性は、負になる。特に、流出体115と帯電電極との間の電界強度が重要であり、帯電電極121と流出体115との距離が最も近い空間において1KV/cm以上の電界強度になるように印加電圧を調整するのが好ましい。
本実施の形態のように帯電装置111に一方の電極を接地電位とする誘導方式を採用すれば、流出体115を接地電位に維持したまま原料液300に電荷を付与することができる。流出体115が接地電位の状態であれば、流出体115に接続される回転軸体116やモータ117などの部材を流出体115から電気的に絶縁する必要が無くなり、流出装置110として簡単な構造を採用しうることになり好ましい。
なお、帯電装置111として、流出体115に電源を接続し、流出体115を高電圧に維持し、帯電電極121を接地することで原料液300に電荷を付与してもよい。また、流出体115を絶縁体で形成すると共に、流出体115に貯留される原料液300に直接接触する電極を流出体115内部に配置し、当該電極を用いて原料液300に電荷を付与するものでもよい。このような流出体115に直接もしくは原料液に直接電極を配置する場合には、原料液に帯電する電荷の極性は、印加する電圧の極性と同じ極性になる。
気体流発生装置113は、流出体115から流出される原料液300の飛行方向を変更し、ナノファイバ301を搬送して案内体102の内方を通過させるための気体流を発生させる装置である。本実施の形態の場合、気体流発生装置113は、モータ117の背部に備えられ、モータ117から流出体115の先端に向かう気体流を発生させる。気体流発生装置113は、流出体115から径方向に流出される原料液300を軸方向に変更することができる風力を発生させることができるものとなっている。図2において、気体流は矢印で示している。気体流発生装置113としては、軸流ファンを備える送風機等を例示することができる。
なお、気体流発生装置113は、シロッコファンなど他の送風機により構成してもかまわない。また、後述する吸引装置132により風洞体112の内方に気体流を発生させるものでもかまわない。この場合、ナノファイバ製造装置100は、積極的に気体流を発生させる気体流発生装置113を有しないこととなるが、何らかの装置により、風洞体112などの内方に気体流が発生していることをもってナノファイバ製造装置100が気体流発生装置113を備えているものとする。
風洞体112は、気体流発生装置113で発生した気体流を帯電電極121と流出体115との間に案内する導管である。本実施の形態の場合、風洞体112により案内された気体流は、帯電電極121の内側を通過しつつ、流出体115の流出孔118から流出された原料液300と交差し、原料液300の飛行方向を変更する。
さらにまた、放出装置101は、気体流制御装置124と、加熱装置125とを備えている。
気体流制御装置124は、気体流発生装置113により発生する気体流が流出孔118の開口端に当たらないよう気体流を制御する機能を有するものである。本実施の形態の場合、気体流制御装置124として、気体流を所定の領域に流れるように案内する風路体が採用されている。気体流制御装置124により、気体流が直接流出孔118に当たらないため、流出孔118から流出される原料液300が早期に蒸発して流出孔118を塞ぐことを可及的に防止し、原料液300を安定させて流出させ続けることが可能となる。なお、気体流制御装置124は、流出孔118の風上に配置され気体流が流出孔118近傍に到達するのを防止する壁状の防風壁でもかまわない。
加熱装置125は、気体流発生装置113が発生させる気体流を構成する気体を加熱する加熱源である。本実施の形態の場合、加熱装置125は、案内体102の内方に配置される円環状のヒータであり、加熱装置125を通過する気体を加熱することができるものとなっている。加熱装置125により気体流を加熱することにより、空間中に流出される原料液300は、蒸発が促進され効率よくナノファイバ301を製造することが可能となる。
供給路114は、外部にある原料液300用タンク(図示せず)から流出体115内方に原料液300を供給するための経路である。本実施の形態の場合、供給路114は、管体で形成されている。
図4は、案内体の近傍を模式的に示す斜視図である。
案内体102は、放出装置101から放出され、気体流によって搬送されるナノファイバ301を所定の場所に案内する風洞であり、内方に流れる気体流により案内体102が撓む程度の厚みからなる部材で形成されている。本実施の形態の場合、案内体102は、厚みが0.1mmのポリプロピレンのフィルム円筒形に成型した部材である。
図5は、内方に気体流を流していない状態と、流した状態との案内体を模式的に示す断面図である。
これらの図に示すように、案内体102一端部は、ナノファイバ301を搬送する気体流の風上側(図中矢印は、気体流の方向を示す)に配置され、剛性のある円環形状の第一保持体141により保持され、案内体102の他端部は、風下側に配置され、剛性のある円環形状の第二保持体142により保持されている。また、第一保持体141と、第二保持体142とは、案内体102の端部を第一保持体141や、第二保持体142に縛り付ける締結帯144を備えている。締結帯144は、一本の帯状部材を輪状にした部材であり、輪の径を小さくする方向、つまり縛り付ける方向には変形させることができるが、その逆はできない、いわゆるインシュロックと称されるものである。
案内体102は、同図(a)に示すように、内方に気体流が流れていない場合は、重力に従いある程度下方に撓んだ状態となる。一方、案内体102は、同図(b)に示すように、内方に気体流(図中矢印)が流れている場合は、案内体102内方の圧力が外方の圧力(気圧)よりも低くなるため、案内体102の全体が内方に向かって押され、結果として中央部分が最も絞られ、第一保持体141及び第二保持体142に向かって徐々に径が大きくなるような形状となる。
なお、案内体102を構成する材料は、ポリプロピレンに限定されるわけではない。案内体102は、ナイロンも含むナイロンよりも負に帯電しにくい絶縁体、かつ、ポリエチレンを含むポリエチレンよりも正に帯電しにくい絶縁体の中から選定される1または2以上の材料により構成することが好ましい。
ここで、ナイロンも含むナイロンよりも負に帯電しにくい絶縁体、かつ、ポリエチレンを含むポリエチレンよりも正に帯電しにくい絶縁体とは、帯電列において、ナイロンからポリエチレンの範囲に含まれる絶縁体である。
また、帯電列とは、正に帯電しやすい材質から負に帯電しやすい材質(またはその逆)を序列をつけて並べたもので、実験的に定められたものである。具体的には、正に帯電しやすいものから順に列挙すると、アスベスト、ガラス、人毛、雲母、ナイロン、羊毛、レーヨン、鉛、木綿、絹、ビスコース、 人の皮膚、カゼイン、アセテート、アクリル、アルミニウム、亜鉛、カドミウム、クロム、紙、エボナイト、麻、鉄、銅、ニッケル、黄銅、銀、硫黄、ゴム、白 金、ビニロン、ポリスチレン、オーロン、サラン、ダクロン、ダイネル、ベロン、カーバイト、ポリエチレン、カネカロン、セルロイド、セロファン、塩化ビニール、テフロン(登録商標)、硝酸セルロース、となる。これらの内、先に記載された材質の部材とその後に記載された材質の部材を摩擦したり、一端密着させ重ね合わせた二つの材質からなるシートを剥離したりすると、先に記載された材質の部材が正に帯電し、後に記載された材質の部材が負に帯電する。
従って、ナイロン、羊毛、レーヨン、木綿、絹、ビスコース、 人の皮膚、カゼイン、アセテート、アクリル、アルミニウム、紙、エボナイト、麻、硫黄、ゴム、ビニロン、ポリスチレン、オーロン、サラン、ダクロン、ダイネル、ベロン、カーバイト、ポリエチレンである。なお、これらは例示であって、ここに記載されていない材質であっても、上記条件を満足する材質があれば本願発明に含まれる。
また、案内体102の厚みは、内方に流通する気体流により案内体102が撓む厚みであれば良い。具体的には、内径約600mmの円筒形の案内体102の内方に毎分30立米の気体が流された時の圧力差により案内体102が撓む厚みであればよい。具体的には、案内体102の肉厚は、0.01mm以上、0.5mm以下であることが好ましい。案内体102の肉厚が0.01mm未満であると、ナノファイバ製造装置100が操業中に、案内体102が破損するおそれが高くなる。一方、案内体102の肉厚が0.5mmよりも厚い場合は、案内体102が撓みにくくなり、かつ案内体102が帯電する量もナノファイバ301の生産効率に悪影響を及ぼす可能性が高くなる。
拡散体127は、案内体102と第二保持体142を介して接続され、高密度状態のナノファイバ301を広く均等に拡散させ低密度状態とする導管であり、ナノファイバ301が案内される空間を滑らか、かつ、連続的に拡大することで、ナノファイバ301を搬送する気体流の速度とナノファイバ301の速度とを徐々に減速させるフード状の部材である。本実施の形態の場合、拡散体127は、案内体102の高さをそのまま維持し、幅のみ徐々に広がるフード形状となっている。
収集装置103は、案内体102から放出されるナノファイバ301を収集するための装置である。本実施の形態の場合、収集装置103は、被堆積部材128と、巻回装置129と、供給装置130とを備えている。
被堆積部材128は、静電延伸現象により製造され気体流により搬送されるナノファイバ301と気体流とを分離し、ナノファイバ301のみが堆積する部材である。本実施の形態の場合、被堆積部材128は、堆積したナノファイバ301と容易に分離可能な材質で構成された薄く柔軟性のある長尺のシート状の部材であり、気体流を容易に透過でき、ナノファイバ301を捕集しうる網状の部材である。具体的に被堆積部材128としては、アラミド繊維からなる長尺の布を例示することができる。さらに、被堆積部材128の表面にテフロン(登録商標)コートを行うと、堆積したナノファイバ301を被堆積部材128から剥ぎ取る際の剥離性が向上するため好ましい。また、被堆積部材128は、ロール状に巻き付けられた状態で供給装置130から供給されるものとなっている。
巻回装置129は、被堆積部材128を移送することができる装置である。本実施の形態の場合、長尺の被堆積部材128を巻き取りながら供給装置130から引き出し、堆積するナノファイバ301と共に被堆積部材128を搬送するものとなっている。巻回装置129は、不織布状に堆積しているナノファイバ301を被堆積部材128とともに巻き取ることができるものとなっている。
(図1の参照に戻る。)
誘引装置104は、ナノファイバ301を被堆積部材128に誘引するための装置である。本実施の形態の場合、誘引装置104は、異なる誘引方式を同時、または、選択的に実施できるように、気体誘引装置143と、電界誘引装置133とを備えている。
気体誘引装置143は、気体流を吸引することによりナノファイバ301を被堆積部材128に誘引する装置であり、被堆積部材128の後方に配置されている。本実施の形態の場合、気体誘引装置143は吸引装置132と集中体131とを備えている。
集中体131は、拡散体127で広がった気体流を受け取り、吸引装置132に至るまでの間に気体流を集中させる部材であり、拡散体127とは逆向きの漏斗形状となっている。
吸引装置132は、被堆積部材128を通過する気体流を強制的に吸引する送風機である。吸引装置132は、シロッコファンや軸流ファンなどの送風機であって、被堆積部材128を通過して速度が落ちた気体流を高い速度に加速することのできる装置である。
電界誘引装置133は、帯電しているナノファイバ301を電界により被堆積部材128に誘引する装置であり、誘引電極134と、誘引電源135とを備えている。
誘引電極134は、帯電したナノファイバ301を誘引するための電界を発生させるための電極である。本実施の形態の場合、誘引電極134には気体流を通過させることのできる金属製の網が採用されている。誘引電極134は、拡散体127の開口部全体に広がって設けられている。
誘引電源135は、誘引電極134を所定の電圧及び極性に維持することができる直流電源である。本実施の形態の場合、誘引電源135は、0V(接地状態)から200KV以下の範囲で自由に電圧と極性を変更することができる直流電源である。
なお、誘引電極134は、実施の形態において金属製の網が採用されているが、それに限定するものではなく、被堆積部材128の幅位の長さの所定の幅を有する誘引電極でもよい。吸引装置132により吸引することで、ナノファイバは、誘引電極に誘引されると共に、気体流によって、被堆積部材128に吸引される。そのようにすることで、引火性の高い溶剤を使用する場合においても、高密度の溶剤を使用しても、爆発する溶剤の濃度まで達することはなく、安心して装置の使用ができるようになる。
なお、帯電電源122が交流電源の場合は、誘引電源135を交流電源としても良い。
回収装置105は、原料液300から蒸発した溶剤を気体流から分離して回収することのできる装置である。回収装置105に関しては、原料液300に用いられる溶剤の種類によって異なるが、例えば、気体を低温にして溶剤を結露させて回収する装置や、活性炭やゼオライトを用いて溶剤のみを吸着させる装置、液体などに溶剤を溶け込ませる装置やこれらを組み合わせた装置を例示できる。
ここで、ナノファイバ301を構成する高分子物質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ポリアミド、アラミド、ポリイミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニル、ポリペプチド等およびこれらの共重合体を例示できる。また、上記より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明は上記高分子物質に限定されるものではない。
原料液300に使用される溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシド、ピリジン、水等を例示することができる。また、上記より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明は上記溶剤に限定されるものではない。
さらに、原料液300に骨材や可塑剤などの添加剤を添加してもよい。当該添加剤としては、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、珪化物、弗化物、硫化物等を挙げることができるが、耐熱性、加工性などの観点から酸化物を用いることが好ましい。当該酸化物としては、Al2O3、SiO2、TiO2、Li2O、Na2O、MgO、CaO、SrO、BaO、B2O3、P2O5、SnO2、ZrO2、K2O、Cs2O、ZnO、Sb2O3、As2O3、CeO2、V2O5、Cr2O3、MnO、Fe2O3、CoO、NiO、Y2O3、Lu2O3、Yb2O3、HfO2、Nb2O5等を例示することができる。また、上記より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明は上記添加剤に限定されるものではない。
溶剤と高分子物質との混合比率は、溶剤と高分子物質により異なるが、溶剤量は、約60重量%から98重量%の間が望ましい。
上記のように、溶剤蒸気が気体流により滞留することなく処理されるため、原料液300は、上記のように溶剤を50重量%以上含んでいても十分に蒸発し、静電爆発を発生させることが可能となる。従って、溶質である高分子が薄い状態からナノファイバ301が製造されるため、より細いナノファイバ301をも製造することが可能となる。また、原料液300の調整可能範囲が広がるため、製造されるナノファイバ301の性能の範囲も広くすることが可能となる。
次に、上記構成のナノファイバ製造装置100を用いたナノファイバ301の製造方法を説明する。
まず、気体流発生装置113、及び、吸引装置132を稼働させ、風洞体112や、案内体102、拡散体127、集中体131の内方に一定方向の気体流を発生させる(気体流発生工程)。以上の状態で、案内体102内の風量が毎分30立米となるようナノファイバ製造装置100を調整した。
次に、流出体115の内方に原料液300を供給する(原料液供給工程)。原料液300は、別途タンク(図示せず)に蓄えられており、供給路114を通過して流出体115の他端部から流出体115内部に供給される。具体的には、ナノファイバ301の材質はPVA(ポリビニルアルコール)を選定し、原料液300は、溶剤(溶媒とも呼ばれている。)を水とし、水にPVAを10重量%で溶解したものを用いた。
次に、帯電電源122により帯電電極121を正または負の高電圧とする。帯電電極121の中心に配置される流出体115には電荷が集中し、当該電荷が流出孔118を通過する原料液300に転移し、原料液300が帯電する(帯電工程)。
前記帯電工程と同時期に流出体115をモータ117により回転させて、遠心力により流出孔118から帯電した原料液300を流出する(流出工程)。
具体的には、外径がΦ60mmの流出体115を用いた。流出孔118は、周方向等間隔に108個設けられており、孔径は0.3mmであった。また、原料液300は、流出体115を2000rpmで回転させることにより流出させた。一方、帯電電極121は内径Φ600mmのものを用い、帯電電源122により帯電電極121を接地電位に対して負の60KVとした。これにより、流出体115には正の電荷が誘導され、正に帯電した原料液300が流出することとなる。
流出体115の径方向放射状に流出された原料液300は、気体流により飛行方向が変更され、気体流に乗り案内体102に案内される。ここで、原料液300の帯電状態と帯電電極121とは逆極性であるため、クーロン力により引きつけられて帯電電極121の方向に向いて飛行しようとするが、帯電電極121に向かうほとんどの原料液300が気体流により方向が変えられ、案内体に向かって飛行することとなる。
原料液300は静電延伸現象によりナノファイバ301を製造しつつ(ナノファイバ製造工程)放出装置101から放出される。ここで、原料液300は、強い帯電状態(高い電荷密度)で流出しているため、静電延伸が容易に発生し、流出した原料液300のほとんどがナノファイバ301に変化していく。また、原料液300は、強い帯電状態(高い電荷密度)で流出しているため、静電延伸が何次にもわたって発生し、線径の細いナノファイバ301を大量に製造される。
また、前記気体流は、加熱装置125により加熱されており、原料液300の飛行を案内しつつ、原料液300に熱を与えて溶剤の蒸発を促進し静電延伸を促進している。
以上のようにして放出装置101から放出されるナノファイバ301は、案内体102に導入される。そして、ナノファイバ301は、案内体102の内方を気体流に搬送されながら収集装置103に向かって案内される(案内工程)。
ここで、案内体102は、肉厚の薄い部材で構成されているため、案内体102の内方にナノファイバ301を搬送する気体流が流れると、内外間の気圧差により、中央に向かって徐々に径が小さくなる形状となる。当該形状においては、案内体102の内方で乱気流が発生し難くなり、ナノファイバ301を安定した状態で搬送することが可能となる。また、ナノファイバ301が案内体102の内壁に衝突し難くなり、案内体102の内壁にナノファイバ301が付着することによるナノファイバ301の生産効率の低下を回避することが可能となる。
また、案内体102は、帯電しにくい材質からなり、肉厚の薄い部材で構成されているため、案内体102が帯電する量はきわめて少ない。従って、案内体102と帯電したナノファイバ301との間で発生するクーロン力よりも、気体流による搬送力の方が遙かに上回るため、案内体102の内壁にナノファイバ301が付着することを回避できる。
拡散体127にまで搬送されたナノファイバ301は、ここで急速に速度が低下すると共に、均一な分散状態となる(拡散工程)。
この状態において、被堆積部材128の背方に配置される吸引装置132は、蒸発した蒸発成分である溶剤と共に気体流を吸引し、ナノファイバ301を被堆積部材128上に誘引する(誘引工程)。また、電圧が印加された誘引電極134により電界が発生し、当該電界によってもナノファイバ301が誘引される(誘引工程)。
以上により、被堆積部材128により気体流から分けられてナノファイバ301が収集される(収集工程)。被堆積部材128は、巻回装置129によりゆっくり移送されているため、ナノファイバ301も移送方向に延びた長尺の帯状部材として回収される。
被堆積部材128を通過した気体流は、吸引装置132により加速され、回収装置105に到達する。回収装置105では、気体流から溶剤成分を分離回収する(回収工程)。
以上のような構成のナノファイバ製造装置100を用い、以上のナノファイバ製造方法を実施することによって、気体流により搬送され案内体102に案内されるナノファイバ301が、案内体102の内壁に付着し難くなる。
これにより、ナノファイバ301の生産効率を向上させることが可能となる。また、案内体102に付着するナノファイバ301の量が少ないため、案内体102をメンテナンスする期間を長くとることができる。さらに、案内体102が比較的安価で入手することができるため、案内体102を取り替えるだけで案内体102のメンテナンスを終了させることができる。また、溶剤を用いて案内体102から付着したナノファイバ301を洗い落とすなどの作業が不要となり、メンテナンス作業者の安全性向上や環境に対する負荷などを低減することができる。
従って、ナノファイバ製造装置100のランニングコストを低く抑えることが可能となる。
なお、上記実施の形態では、原料液300を遠心力を用いて流出させたが、本願発明はこれに限定されるわけではない。例えば、図6に示すように、原料液300に加えた圧力により流出孔118から原料液300を流出させるものでも良い。具体的に、ナノファイバ製造装置100は、直方体で両端部が開口した風洞体112と、前記風洞体112の一壁面に設けられ、流出孔118が先端に設けられるノズルが多数マトリクス状に設けられた流出体115と、風洞体112の一端開口部に設けられる気体流発生装置113と、流出体115と対向する面に風洞体112の一部として設けられる帯電電極121とを備えてもよい。
この場合、第一保持体141は、風洞体112の出口形状に合致した矩形環状となる。一方、第二保持体142は、拡散体127の入口形状に合致した円形環状となる。そして、一端部が第一保持体141に保持され、他端部が第二保持体142に保持される案内体102は、断面形状が矩形から円形に変化する場合に乱気流が発生しないような形状となるように撓み、かつ、中間部が最も小さな断面となるように撓む。これにより、放出装置101の放出口が矩形であっても、容易にナノファイバ301を案内することが可能となる。