図1は本発明の第1の実施の形態に係る画像記録装置1の側面図であり、図2は画像記録装置1の平面図である。画像記録装置1は、液晶表示装置用のガラス基板(以下、単に「基板」という。)上の感光材料に光を照射して画像を記録する装置(パターン描画装置とも呼ばれる。)である。図1および図2に示すように、画像記録装置1は、(+Z)側の主面91(以下、「上面91」という。)上に感光材料の層が形成された基板9を保持する基板保持部3、基台11上に設けられて基板保持部3をZ方向に垂直なX方向およびY方向に移動する保持部移動機構2、基板保持部3および保持部移動機構2を跨ぐように基台11に固定されるフレーム12、並びに、フレーム12に取り付けられて基板9上の感光材料に変調された光を照射する光照射部4を備える。また、画像記録装置1は、図1に示すように、保持部移動機構2や光照射部4等の各構成を制御する制御部6を備え、制御部6は、光照射部4に接続される変調器制御部60を有する。変調器制御部60には、各種演算を行うCPUおよび各種情報を記憶するメモリを有する主演算部62が設けられる。
基板保持部3は、基板9が載置されるステージ31、ステージ31を回転可能に支持する支持プレート33、および、支持プレート33上において、基板9の上面91に垂直な回転軸321を中心としてステージ31を回転するステージ回転機構32を備える。
保持部移動機構2は、基板保持部3を図1および図2中のX方向(以下、「副走査方向」という。)に移動する副走査機構23、副走査機構23を介して支持プレート33を支持するベースプレート24、並びに、基板保持部3をベースプレート24と共にX方向に垂直なY方向(以下、「主走査方向」という。)に連続的に移動する主走査機構25を備える。画像記録装置1では、保持部移動機構2により、基板9の上面91に平行な主走査方向および副走査方向に基板保持部3が移動される。
図1および図2に示すように、副走査機構23は、支持プレート33の下側(すなわち、(−Z)側)において、ステージ31の主面に平行、かつ、主走査方向に垂直な副走査方向に伸びるリニアモータ231、並びに、リニアモータ231の(+Y)側および(−Y)側において副走査方向に伸びる一対のリニアガイド232を備える。主走査機構25は、ベースプレート24の下側において、ステージ31の主面に平行な主走査方向に伸びるリニアモータ251、リニアモータ251の(+X)側および(−X)側において主走査方向に伸びる一対のエアスライダ252、並びに、図示省略のリニアスケールを備える。
図2に示すように、光照射部4は、副走査方向に沿って等ピッチにて配列されてフレーム12に取り付けられる複数(本実施の形態では、8つ)の光学ヘッド41を備える。また、光照射部4は、図1に示すように、各光学ヘッド41に接続される光源光学系42、並びに、紫外光を出射するUV光源43および光源駆動部44を備える。UV光源43は固体レーザであり、光源駆動部44が駆動されることにより、UV光源43から例えば波長355nmの紫外光が出射され、光源光学系42を介して光学ヘッド41へと導かれる。
各光学ヘッド41は、UV光源43からの光を下方に向けて出射する出射部45、出射部45からの光を反射して空間光変調器46へと導く光学系451、光学系451を介して照射された出射部45からの光を変調しつつ反射する空間光変調器46、および、空間光変調器46からの変調された光を基板9の上面91に設けられた感光材料上へと導く光学系47を備える。
図3は、空間光変調器46を拡大して示す図である。図3に示すように、空間光変調器46は、出射部45を介して照射されたUV光源43からの光を基板9の上面91へと導く回折格子型の複数の光変調素子461を備える。光変調素子461は半導体装置製造技術を利用して製造され、格子の深さを変更することができる回折格子となっている。光変調素子461には複数の可撓リボン461aおよび固定リボン461bが交互に平行に配列形成され、複数の可撓リボン461aは背後の基準面に対して個別に昇降移動可能とされ、複数の固定リボン461bは基準面に対して固定される。回折格子型の光変調素子としては、例えば、GLV(Grating Light Valve:グレーチング・ライト・バルブ)(シリコン・ライト・マシーンズ(サニーベール、カリフォルニア)の登録商標)が知られている。
図4.Aおよび図4.Bは、可撓リボン461aおよび固定リボン461bに対して垂直な面における光変調素子461の断面を示す図である。図4.Aに示すように可撓リボン461aおよび固定リボン461bが基準面461cに対して同じ高さに位置する(すなわち、可撓リボン461aが撓まない)場合には、光変調素子461の表面は面一となり、入射光L1の反射光が0次光(正反射光)L2として導出される。一方、図4.Bに示すように可撓リボン461aが固定リボン461bよりも基準面461c側に撓んで可撓リボン461aと固定リボン461bとの高さの差が所定の値とされる場合には、可撓リボン461aが回折格子の溝の底面となり、1次回折光L3(さらには、高次回折光)が光変調素子461から導出され、0次光L2は消滅する。実際の光変調素子461では、可撓リボン461aと固定リボン461bとの高さの差を複数通りに変更することにより0次光L2の強度が複数通りに変更され、回折格子を利用した多階調の光変調が行われる。
図1に示す光照射部4では、UV光源43からの光が光源光学系42により線状光(光束断面が線状の光)とされ、出射部45を介して空間光変調器46のライン状に配列された複数の可撓リボン461aおよび固定リボン461b(図4.Aおよび図4.B参照)上に照射される。光変調素子461では、隣接する各1本の可撓リボン461aおよび固定リボン461bを1つのリボン対とすると、3つ以上のリボン対が描画されるパターンの1つの画素に対応する。もちろん、光変調素子461が1つのリボン対とされ、1つのリボン対が1つの画素に対応していてもよい。
光変調素子461では、各空間光変調器46に接続される変調器制御部60からの信号に基づいてパターンの各画素に対応するリボン対の可撓リボン461aがそれぞれ制御され、各画素に対応するリボン対が複数通りの出力光量(強度)の0次光を出射する複数の状態の間で遷移可能とされる。光変調素子461から出射される0次光は光学系47へと導かれ、非0次回折光(主として1次回折光((+1)次回折光および(−1)次回折光))は光学系47とは異なる方向へと導かれる。なお、迷光となることを防止するために1次回折光は図示を省略する遮光部により遮光される。
光変調素子461からの0次光は、光学系47を介して基板9の上面91へと導かれ、これにより、基板9の上面91上においてX方向(すなわち、副走査方向)に並ぶ複数の照射位置のそれぞれに変調された光が照射される。以上のように、光変調素子461の各画素に対応するリボン対は多階調(基板9上に描画用の光が照射されない階調を含む。)にて基板9上に光を照射することが可能とされる。
図1および図2に示す画像記録装置1では、保持部移動機構2の主走査機構25により主走査方向に移動される基板9に対し、光照射部4の光変調素子461から変調された光が照射される。換言すれば、主走査機構25は、光変調素子461から基板9へと導かれた光の基板9上における照射領域の位置(すなわち、照射位置)を、基板9に対して相対的にかつ連続的に主走査方向へと移動する照射位置移動機構となっている。なお、画像記録装置1では、基板9を移動することなく、光学ヘッド41が主走査方向に移動することにより基板9上の照射位置が主走査方向に移動されてもよい。画像記録装置1では、制御部6の変調器制御部60により、光変調素子461からの光の変調が制御されることにより、基板9への記録対象である画像(以下、「対象画像」という。)を示すパターンが基板9上に記録される。
ここで、画像記録装置1における対象画像では、主走査方向に対応する列方向および副走査方向に対応する行方向に複数の画素が配列されており、画像記録(パターン描画)の際には、列方向に並ぶ複数の画素を画素列として、各光変調素子461により1つの画素列に対する描画が行われる。また、画素列において画素値が変化する2つの画素の間の位置が、光変調素子461から照射領域に照射される出力光量の遷移を示す変化点とされ、図1の主演算部62では、各変化点に関して基板9上における画素の描画ずれを補正するために出力光量の遷移位置をシフトするシフト量が、当該変化点を挟む2つの画素の画素値の組合せに基づいて求められる。以下の説明では、対象画像が1ないし4の4値の画像であるものとするが、もちろん、5以上の階調レベルを有する画像、あるいは、2または3の階調レベルを有する画像であってもよい。
図5は変調器制御部60の一部の構成を示す図であり、変調器制御部60における各光変調素子461の駆動に係る要素(以下、「素子駆動要素61」という。)の一部を示している。
図5の素子駆動要素61は、第1レジスタ6111、FIFOレジスタ6112、出力レジスタ6113、シフト部613およびD/Aコンバータ612、並びに、D/Aコンバータ612からの出力を光変調素子461の実際の駆動電圧(以下、「実駆動電圧」という。)へと変換する回路を有し、シフト部613はセレクタ6162、第1および第2コンパレータ6141,6142、第1および第2カウンタ6151,6152、タイミングコントローラ6161、並びに、第2、第4および第5レジスタ6163,6164,6165を有する。
変調器制御部60はクロック発生部601をさらに備え、クロック発生部601には主走査機構25のリニアスケールからの信号が入力される。そして、図6の上段に示すように、基板9上における各光変調素子461からの光の照射位置が一定の距離W(以下、「設定距離W」という。)だけ主走査方向(Y方向)に移動する毎にクロック発生部601にてベースクロック813が発生し、図5に示す第1レジスタ6111、FIFOレジスタ6112、並びに、シフト部613の第2レジスタ6163およびタイミングコントローラ6161に入力される。図5では、符号813を付す矢印にて第1レジスタ6111、FIFOレジスタ6112、第2レジスタ6163およびタイミングコントローラ6161に順次入力されるベースクロックを示している(後述の駆動電圧データ811、シフトディレイ数データ812、ディレイクロック814、イーブンストアパルス815、イーブンリセットパルス816、オッドストアパルス817、オッドリセットパルス818、シフト済みタイミングパルス819、第2タイミングパルス819a、第1タイミングパルス819bおよびセレクト信号820、並びに、第3の実施の形態における図21および図22において同様)。
本実施の形態では、図6の下段に示すように、基板9上の照射位置が設定距離Wだけ主走査方向に移動する間に、画素列における1つの画素71の描画が行われ、クロック発生部601では、図6の中段に示すように、1画素に相当する距離を所定数に等分割した距離(本実施の形態では、200に等分割した距離であり、例えば、10ナノメートル(nm))だけ基板9上の照射位置が主走査方向に移動する毎にディレイクロック814が発生し、第1および第2カウンタ6151,6152、セレクタ6162およびタイミングコントローラ6161に入力される。なお、主走査機構25による基板9の主走査方向への移動速度はほぼ一定であるため、図6の上段および中段のそれぞれでは、横軸を時間と捉えることも可能である(後述の図7.Aないし図7.D、図8、図11、図16ないし図18、図20、図23.Aないし図23.D、並びに、図26において同様)。
図7.Aないし図7.Dは、素子駆動要素61のタイミングチャートである。図7.Aないし図7.Dは1つのタイミングチャートを上下左右に4分割したものであり、それぞれ左上、右上、左下、右下の部分を示す。実際には、図7.Aの右端部を図7.Bの左端部にて重複して示し、図7.Cの右端部を図7.Dの左端部にて重複して示し、図7.Cおよび図7.Dにもベースクロックおよびディレイクロックを示している(後述の第3の実施の形態における図23.Aないし図23.Dにおいて同様)。以下、図5、並びに、図7.Aないし図7.Dを参照して、素子駆動要素61の動作について詳細に説明する。
変調器制御部60では、ベースクロック813が発生する毎に、実駆動電圧が時間とともに漸次変化して最終的に到達する目標となる電圧(以下、「目標駆動電圧」という。)を示す駆動電圧データ811の値が図5の素子駆動要素61の第1レジスタ6111に出力される。例えば、図7.Aの最上段において符号813cを付すベースクロックが発生する際には、画素値2に対応する駆動電圧データ811の値(以下、駆動電圧データ811の値811cと表現する。以下同様。)が第1レジスタ6111に入力され、ベースクロック813cの直前のベースクロックに応答して入力されていた画素値0に対応する駆動電圧データ811の値811bが複数の画素値が記憶可能なFIFOレジスタ6112に出力される。図7.Cおよび図7.Dの下から2段目では、第1レジスタ6111が保持(記憶)する値を、「第1レジスタ出力値」として駆動電圧データ811の値に付す符号にて記しており、さらに、当該符号に括弧書きにて対応する画素値を付加している。図7.Cおよび図7.Dの上から3段目、および、後述の第3の実施の形態の図23.Aないし図23.Dにおいて同様である。
後述するように、ベースクロック813cに応答して第1レジスタ6111に入力される駆動電圧データ811の値811cは、ベースクロック813cよりも後のベースクロック813に対応する描画にて利用される。
また、変調器制御部60では、シフト部613の第2レジスタ6163には光変調素子461の動作位置(動作タイミング)を調整するために利用されるシフトディレイ数データ812の値がベースクロック813毎に出力される。本実施の形態では、シフトディレイ数データ812の値は、シフト量をディレイクロック814のカウント数に換算したものとされる。具体的には、ベースクロック813cが発生する際には、カウント数155を示すシフトディレイ数データ812の値(ベースクロック813cの直前のベースクロックにおける駆動電圧データ811の値811bに対応するものであり、以下、シフトディレイ数データ812の値812bと表現する。以下同様。)が第2レジスタ6163に出力される。このとき、タイミングコントローラ6161では、ベースクロック813cの発生により、図7.Aの上から6段目に示すようにイーブンストアパルス815が生成されて第4レジスタ6164に入力され、これにより、シフトディレイ数データ812の値812bが第2レジスタ6163にて記憶されるとともに、ベースクロック813cの直前のベースクロックの際に第2レジスタ6163に入力されていたカウント数193を示すシフトディレイ数データ812の値812aが第4レジスタ6164に入力される。
図7.Cおよび図7.Dの下から3段目および4段目では、第2レジスタ6163および第4レジスタ6164が保持する値を、「第2レジスタ出力値」および「第4レジスタ出力値」としてシフトディレイ数データ812の値に付す符号にて記しており、さらに、当該符号に括弧書きにて当該値が示すカウント数を付加している。図7.Cおよび図7.Dの下から5段目および6段目、並びに、後述の第3の実施の形態の図23.Aないし図23.Dにおいて同様である。
なお、変調器制御部60では、実際には、互いに対応する駆動電圧データ811の値811b(ベースクロック813cの直前のベースクロックにて第1レジスタ6111に入力される値)、および、シフトディレイ数データ812の値812bは同時に生成されるが、内部のレジスタによりシフトディレイ数データ812の値812bを駆動電圧データ811の値811bに対して遅延させて素子駆動要素61に入力している。
タイミングコントローラ6161では、図7.Aの上から6段目に示すように、ベースクロック813cに応答してイーブンリセットパルス816がイーブンストアパルス815と同時に生成されて第2カウンタ6152に入力される。第2カウンタ6152では、ディレイクロック814がカウントされており、イーブンリセットパルス816により第2カウンタ6152におけるカウント数が0に戻される(リセットされる)。また、タイミングコントローラ6161からFIFOレジスタ6112に第1コンパレータ6141の選択を示すセレクト信号820も出力される。図7.Cおよび図7.Dの最下段では、タイミングコントローラ6161からFIFOレジスタ6112に出力されるセレクト信号を「オッド」または「イーブン」と記しており、「オッド」は第1コンパレータ6141の選択を示し、「イーブン」は第2コンパレータ6142の選択を示している(後述の第3の実施の形態の図23.Aないし図23.Dにおいて同様)。
第2コンパレータ6142では、第4レジスタ6164が保持する値(すなわち、シフトディレイ数データ812の値812aが示すカウント数193)と第2カウンタ6152からのカウント数とが比較され、第2カウンタ6152からのカウント数が193となると、図7.Aの下から2段目に示すように、第2コンパレータ6142からセレクタ6162にベースクロック813cに対して遅延したタイミングパルス(以下、「第2タイミングパルス」という。)819aが出力される。
このとき、セレクタ6162にはFIFOレジスタ6112から第2コンパレータ6142の選択を示すセレクト信号820が出力されており(図7.Cの上から3段目では、第2コンパレータ6142の選択を示すセレクト信号を「イーブン」と記している。)、第2タイミングパルス819aの直後のディレイクロック814に同期してシフト済みタイミングパルス819がFIFOレジスタ6112および出力レジスタ6113へと出力される。これにより、FIFOレジスタ6112から、既に入力されている駆動電圧データ811の値811aが出力されて出力レジスタ6113にて保持される。
既述のように、駆動電圧データ811の値は光変調素子461を1回駆動する際の目標駆動電圧に対応しており、出力レジスタ6113の出力はD/Aコンバータ612を経由して電流源51に入力されて電流へとさらに変換される。電流源51は一端が抵抗52を介して高電位Vcc側に接続され、他端が接地される。また、電流源51の両端は、接続パッド53を介して光変調素子461の可撓リボン461aおよび基準面461cに接続される。したがって、駆動電圧データ811の値がD/Aコンバータ612および電流源51を介して電流へと変換されると、抵抗52による電圧降下により両接続パッド53間の実駆動電圧へと変換される。なお、接続パッド53間は浮遊容量を有するため、接続パッド53間の実際の駆動電圧(実駆動電圧)は接続パッド53間の時定数に従った変化を行い、時間と共に目標駆動電圧へと向かう。
このようにして、素子駆動要素61では、各光変調素子461の照射位置が、ベースクロック813cが発生した位置からシフトディレイ数データ812の値812aに応じた距離だけシフトした位置にて、駆動電圧データ811の値811aに従った当該光変調素子461からの出力光量の遷移が行われる。図7.Aおよび図7.Bの最下段では、D/Aコンバータ612の出力信号を示しており、シフトディレイ数データ812の値812aと同符号を付す矢印にてベースクロック813cの発生位置からの距離を示している。また、図7.Aおよび図7.Bの最下段では縦方向に出力光量を示しており、駆動電圧データ811の値811aと同符号を付す点にてその大きさを示している(以下同様)。
また、FIFOレジスタ6112では、シフト済みタイミングパルス819に応答して第1コンパレータ6141の選択を示すセレクト信号820がセレクタ6162に出力される。図7.Cの上から3段目では、第1コンパレータ6141の選択を示すセレクト信号を「オッド」と記している。
続いて、基板9が直前のベースクロック813cの位置から設定距離だけ移動して次のベースクロック813dが発生する際には、第1レジスタ6111では画素値0に対応する駆動電圧データ811の値811dが入力されるとともに(図7.Cの下から2段目参照)、FIFOレジスタ6112に駆動電圧データ811の値811cが入力される。
また、ベースクロック813dの発生により、図7.Aの上から5段目に示すようにタイミングコントローラ6161にてオッドストアパルス817が生成されて第5レジスタ6165に入力される。このとき、第2レジスタ6163にはカウント数201を示すシフトディレイ数データ812の値812cが出力されており、ベースクロック813dおよびオッドストアパルス817が第2レジスタ6163および第5レジスタ6165にそれぞれ入力されることにより、シフトディレイ数データ812の値812cが第2レジスタ6163にて記憶されるとともに、シフトディレイ数データ812の値812bが第5レジスタ6165から出力される(図7.Cの下から3段目および5段目参照)。
さらに、タイミングコントローラ6161では、図7.Aの上から5段目に示すように、ベースクロック813dに応答してオッドリセットパルス818がオッドストアパルス817と同時に生成されて第1カウンタ6151に入力される。第1カウンタ6151では、ディレイクロック814がカウントされており、オッドリセットパルス818により第1カウンタ6151におけるカウント数が0に戻される(リセットされる)。また、タイミングコントローラ6161からFIFOレジスタ6112に第2コンパレータ6142の選択を示すセレクト信号820も出力される。
第1コンパレータ6141では、第5レジスタ6165が保持する値(すなわち、シフトディレイ数データ812の値812bが示すカウント数155)と第1カウンタ6151からのカウント数とが比較され、第1カウンタ6151からのカウント数が155となると、図7.Aの下から3段目に示すように、第1コンパレータ6141からセレクタ6162にベースクロック813dに対して遅延したタイミングパルス(以下、「第1タイミングパルス」という。)819bが出力される。
既述のように、セレクタ6162にはFIFOレジスタ6112から第1コンパレータ6141の選択を示すセレクト信号820が出力されており(図7.Cの上から3段目参照)、第1タイミングパルス819bの直後のディレイクロック814に同期してシフト済みタイミングパルス819がFIFOレジスタ6112および出力レジスタ6113へと出力される。これにより、FIFOレジスタ6112からの駆動電圧データ811の値811bが出力レジスタ6113にて保持される。
出力レジスタ6113の出力はD/Aコンバータ612を経由して電流源51に入力されることにより、各光変調素子461の照射位置が、ベースクロック813dが発生した位置からシフトディレイ数データ812の値812bに応じた距離だけシフトした位置にて、駆動電圧データ811の値811bに従った当該光変調素子461からの出力光量の遷移が行われる。また、FIFOレジスタ6112では、このシフト済みタイミングパルス819の入力に応答して、第2コンパレータ6142の選択を示すセレクト信号820がセレクタ6162に出力される。
基板9が直前のベースクロック813dの位置から設定距離だけさらに移動して次のベースクロック813eが発生する際には、第1レジスタ6111では画素値3に対応する駆動電圧データ811の値811eが入力されるとともに、FIFOレジスタ6112に駆動電圧データ811の値811dが入力される。また、カウント数197を示すシフトディレイ数データ812の値812dが第2レジスタ6163に入力されるとともに、シフトディレイ数データ812の値812cが第4レジスタ6164に入力される。さらに、イーブンリセットパルス816が第2カウンタ6152に入力されてカウント数が0に戻される。
そして、第2コンパレータ6142において、シフトディレイ数データ812の値812cが示すカウント数201と第2カウンタ6152からのカウント数とが一致すると、セレクタ6162にベースクロック813eに対して遅延した第2タイミングパルス819aが出力され、シフト済みタイミングパルス819がFIFOレジスタ6112および出力レジスタ6113へと出力される。このシフト済みタイミングパルス819に応答して、FIFOレジスタ6112から駆動電圧データ811の値811cが出力レジスタ6113に出力され、ベースクロック813eに対応する位置からシフトディレイ数データ812の値812cに応じた距離だけシフトした位置にて、駆動電圧データ811の値811cに従った出力光量の遷移が行われる。
このとき、シフトディレイ数データ812の値812cが、隣接する2つのベースクロック813間のカウント数199よりも多いカウント数201を示すものであるため、実際には、ベースクロック813eに対応する第2タイミングパルス819a(およびシフト済みタイミングパルス819)は、ベースクロック813eの次のベースクロック813fが発生した後に生成される(図7.Aの最上段、上から4段目および下から2段目参照)。したがって、駆動電圧データ811の値811cに従った出力光量の遷移は、基板9上の照射位置がベースクロック813fの発生位置よりもさらに進んだ位置にて行われる。
ベースクロック813fが発生する際には(既述のように、この時点では、直前のベースクロック813eに対応するシフト済みタイミングパルス819は未だ生成されていない。)、第1レジスタ6111では駆動電圧データ811における値811eの次の値が入力されるとともに、FIFOレジスタ6112に駆動電圧データ811の値811eが入力される。また、カウント数170を示すシフトディレイ数データ812の値812eが第2レジスタ6163に入力されるとともに、シフトディレイ数データ812の値812dが第5レジスタ6165に入力される。さらに、オッドリセットパルス818が第1カウンタ6151に入力されてカウント数が0に戻される。
そして、第1コンパレータ6141において、シフトディレイ数データ812の値812dが示すカウント数197と第1カウンタ6151からのカウント数とが一致すると、セレクタ6162にベースクロック813fに対して遅延した第1タイミングパルス819bが出力され、シフト済みタイミングパルス819がFIFOレジスタ6112および出力レジスタ6113へと出力される。このシフト済みタイミングパルス819に応答して、FIFOレジスタ6112の駆動電圧データ811の値811dが出力レジスタ6113から出力され、ベースクロック813fに対応する位置からシフトディレイ数データ812の値812dに応じた距離だけシフトした位置にて、駆動電圧データ811の値811dに従った出力光量の遷移が行われる。
このとき、シフトディレイ数データ812の値812dが、隣接する2つのベースクロック813間のカウント数199よりも少ないカウント数197を示すものであるため、ベースクロック813fに対応するシフト済みタイミングパルス819は、ベースクロック813fの次のベースクロック813gの発生前に生成される。また、既述のように、ベースクロック813eに対応するシフト済みタイミングパルス819がベースクロック813fが発生した後に生成される。したがって、実際には隣接する2つのベースクロック813f,813gの間に、光変調素子461からの出力光量の遷移が2度行われることとなる(図7.Bの最下段参照)。
なお、上記の例では、各ベースクロック813に応じて第1レジスタ6111に入力される駆動電圧データ811の値が、当該ベースクロック813の直前のベースクロック813における駆動電圧データ811の値と異なるものとされているが、あるベースクロック813における駆動電圧データ811の値が直後のベースクロック813におけるものと同じである場合には(すなわち、実際の出力光量の遷移が行われない場合には)、当該駆動電圧データ811の値に対応するシフトディレイ数データ812の値が設定距離分のカウント数よりも少ない一定のカウント数(例えば、設定距離の半分に相当するカウント数)を示すものとされ、当該駆動電圧データ811の値が示す画素値から同じ画素値への出力光量の遷移が行われるものとして光変調素子461の駆動が制御される(実際の出力光量の変化は生じない。)。
以上のように、各素子駆動要素61では、イーブンリセットパルス816とオッドリセットパルス818とがベースクロック813毎に交互に生成されるとともに、第2カウンタ6152では一のイーブンリセットパルス816の生成から次のイーブンリセットパルス816の生成までの照射位置の移動範囲をカウント区間としてディレイクロック814のカウントが行われ、第1カウンタ6151では一のオッドリセットパルス818の生成から次のオッドリセットパルス818の生成までの照射位置の移動範囲をカウント区間としてディレイクロック814のカウントが行われる。すなわち、第1および第2カウンタ6151,6152では、カウント開始位置を設定距離だけ互いにシフトさせて(ずらして)、ベースクロック813に基づいて設定距離の2倍のカウント区間毎にディレイクロックのカウントが開始される。
また、画像記録装置1では、ベースクロック813が生成される毎に駆動電圧データ811の値およびシフトディレイ数データ812の値を素子駆動要素61に入力するとともに、イーブンストアパルス815とオッドストアパルス817とを交互に発生させることにより、当該素子駆動要素61に対応する画素列において各カウンタ6151,6152の各カウント区間の最初の設定距離における画素を、当該カウンタ6151,6152に接続されたコンパレータ6141,6142に割り当てつつ、当該画素と直前の画素との間の変化点に対するシフト量を当該カウント区間の始点からのディレイクロック814のカウント数に換算したシフトディレイ数データ812の値が設定値としてコンパレータ6141,6142に入力されることとなる。そして、第1および第2コンパレータ6141,6142では、第1および第2カウンタ6151,6152からそれぞれ入力されるカウント数が設定値以上となる際に、光変調素子461からの出力光量の遷移を指示する信号が出力されることにより、素子駆動要素61では、ディレイクロック814に対応する距離を最小分解能としつつ、シフトディレイ数データ812に基づいて光変調素子461の動作位置をベースクロック813に対応する位置からシフトさせ(調整する)、基板9上に対象画像を記録することが可能となる。
ところで、素子駆動要素にて1つのカウンタおよび1つのコンパレータのみが設けられる比較例の画像記録装置を想定した場合に、1画素に相当する周期にて発生するベースクロック毎にカウンタをリセットするときには、1画素に相当する距離を超えて遷移位置をシフトさせることができない。これに対し、図1の画像記録装置1では、2つのカウンタ6151,6152および2つのコンパレータ6141,6142が設けられ、2つのカウンタ6151,6152がベースクロック813毎に交互にリセットされることにより、1画素に相当する距離を超えて遷移位置をシフトさせることが実現される。
図7.Aないし図7.Dを参照して説明した動作例では、基板9上の照射位置が設定距離だけ主走査方向に移動する間に1つの画素の描画制御が行われるが、図8の下段に示すように、隣接する2つのベースクロック813間の距離である設定距離Wが複数(図8の下段では4個)の画素71に対応付けられ(ただし、当該複数の画素71には1つの変化点のみが含まれる。)、照射位置が設定距離Wだけ移動する間に複数の画素の描画制御が行われてもよい。すなわち、ベースクロック813が発生する周期を決定する設定距離は、対象画像の各画素列における1以上の画素に相当する距離とされる。
ところで、図7.Aないし図7.Dを参照して説明した動作例では、2つのカウンタ6151,6152がベースクロック813毎に交互にリセットされることにより、2以上の画素に相当する距離を超えて遷移位置をシフトさせることができない。以下、第2の実施の形態として多数の画素に相当する距離を超えて遷移位置をシフトさせることが可能な高度な手法について説明する。なお、以下の説明では、設定距離が複数の画素71に対応するものとする。
図9は、第2の実施の形態に係る変調器制御部60の構成を示すブロック図である。変調器制御部60は、既述の素子駆動要素61および主演算部62に加えて、プログラミング可能な電子回路であるFPGA(Field Programmable Gate Array)制御要素63(図9中にて破線のブロックにて示す。)を備える。実際には、変調器制御部60には、各光変調素子461に対して1つの素子駆動要素61および1つのFPGA制御要素63が設けられるが、図9では1つの光変調素子461に対応する素子駆動要素61およびFPGA制御要素63のみを図示している。
主演算部62は、画像記録の際に利用される各種テーブルを生成するテーブル生成部622、および、後述のテーブル生成時にテーブルの生成に係る条件を検出するシフト量超過検出部621を備える。FPGA制御要素63では、対象画像の変更(画素の加工)に用いられる画素加工テーブル6311を記憶するメモリ631、画素加工テーブル6311を用いて対象画像の画素の画素値を変更する画素列加工部632、および、変更後の画像を素子駆動要素61用のデータフォーマットに変換する出力データ生成部633の機能が実現される。
また、各素子駆動要素61は、図5に示す構成に加えて、シフトディレイ数データ812を取得する修正シフト量取得部618、駆動電圧データ811を取得する駆動電圧取得部619、および、メモリ617を有し、光変調素子461毎に準備される後述の修正シフト量テーブル6171、全光変調素子461にて共通の基準位置アドレステーブル6172、および、描画時の複数階調の出射光量に対応する目標駆動電圧を示す駆動電圧テーブル6173が主演算部62からメモリ617に入力されて記憶される。
既述のように、画像記録装置1における記録対象である対象画像では、主走査方向に対応する列方向および副走査方向に対応する行方向に複数の画素が配列されており、画像記録(パターン描画)では、列方向に並ぶ複数の画素を画素列として、各光変調素子461により1つの画素列に対する描画が行われる。以下の説明では、各画素列は、それぞれが列方向に連続して同一の画素値を有する複数の画素群の集合とされ(すなわち、各画素列はそれぞれが2以上の画素の集合である複数の画素群にて構成され)、画素列において隣接する2つの画素群の間の位置が、光変調素子461から照射領域に照射される出力光量の遷移を示す変化点とされる。
各光変調素子461の素子駆動要素61に接続される画素列加工部632には、当該光変調素子461に対応する画素列のデータ(以下、「画素列データ」という。)691がランレングスデータとして入力され、後述するように画素加工テーブル6311を用いて画素列データ691が加工される。そして、出力データ生成部633では、加工後の画素列データ691が素子駆動要素61用のデータフォーマットに変換され、ベースクロック813が発生する毎に変換画素データ692として素子駆動要素61に順次出力される。
ここで、ベースクロック813を示す図8の上段、および、1つの画素列の画素を示す図8の下段のように、本実施の形態における画像記録装置1では、隣接する2つのベースクロック813間の期間(以下、「ベースクロック期間」という。)において、対象画像の各画素列における2以上の画素71(図8の下段の例では4個の画素71)が描画制御の対象とされる。換言すれば、ベースクロック期間にて描画制御の対象とされる画素の個数をベースクロック間画素数として、ベースクロック期間において光変調素子461からの光の照射位置が主走査方向に移動する設定距離は、ベースクロック間画素数の画素71に相当する距離(図8の上段にて符号Wを付す矢印にて示す距離)とされる。以下の説明では、図8の上段および下段において、対象画像の各画素71の先頭に対応する主走査方向の位置(符号A1を付す矢印にて示す位置)を当該画素の「基準位置」といい、隣接する2つの基準位置間の距離(すなわち、設定距離をベースクロック間画素数で除した距離であり、描画における論理的な最小分解能と捉えることができる。)を「基準距離」という。図8の下段では、基準距離を符号Tを付す矢印にて示している。
また、画像記録装置1では、既述のように、1つのシフト済みタイミングパルス819がベースクロック813に対応付けられており、ベースクロック813に応じて出力される変換画素データ692は、図10に示すように、ベースクロック期間におけるベースクロック間画素数の画素において、直前の画素から画素値が変化する画素の番号、および、当該画素の画素値(以下、それぞれ「変化画素番号」および「変化後画素値」という。)を示すものとなっている。
例えば、ベースクロック間画素数が4であり、図11の最下段に示すように、あるベースクロック期間における4個の画素71(図11の最下段において太線の矩形にて囲む画素71)において、3番目の画素71と4番目の画素71との間にて画素値が1から2に変化する場合には(図11の最下段において画素値が1の画素71を白色にて示し、画素値が2の画素71に平行斜線を付す。図11の下から2ないし5段目、並びに、図16ないし図18、図20において同様。)、変化画素番号および変化後画素値はそれぞれ4および2とされ、図11の下から2段目に示すように、2番目の画素71と3番目の画素71との間にて画素値が1から2に変化する場合には、変化画素番号および変化後画素値はそれぞれ3および2とされ、図11の下から3段目に示すように、1番目の画素71と2番目の画素71との間にて画素値が1から2に変化する場合には、変化画素番号および変化後画素値は共に2とされる。
また、図11の下から4段目に示すように、1番目の画素71と直前のベースクロック期間における4番目の画素71との間にて画素値が1から2に変化する場合には、変化画素番号および変化後画素値はそれぞれ1および2とされ、図11の下から5段目(上から2段目)に示すように、画素値が変化する画素71が存在しない場合には、変化画素番号は1とされ、変化後画素値は直前のベースクロック期間における最後の画素の画素値と同じとされる。なお、変化画素番号は、基準距離Tを単位とする論理的な座標値と捉えることができる。
図12は基準位置アドレステーブル6172を示す図である。図12に示す基準位置アドレステーブル6172は、直前のベースクロック813が発生した位置から1ないし4番目の画素のそれぞれに対する基準位置までの主走査方向の距離(以下、「基準位置アドレス」という。)をディレイクロック814のカウント数として示すテーブルとなっている(図11の最上段参照)。図12では、1ないし4番目の画素の基準位置アドレスをそれぞれ「第1基準位置アドレス」、「第2基準位置アドレス」、「第3基準位置アドレス」、「第4基準位置アドレス」と記している。
図13は修正シフト量テーブル6171を示す図である。修正シフト量テーブル6171は、後述の補正テーブルを修正することにより生成されるものであり、複数通りの2つの画素値の組合せのそれぞれに対してシフト量(後述の補正テーブルから導かれる値を修正(変更)することにより得られる値であり、以下、「修正シフト量」という。)を示すものとなっており、実際には、修正シフト量はディレイクロック814のカウント数にて表されている。図13では、画素値Mと画素値Nとの組合せに対する修正シフト量を「画素値M→N変化時修正シフト量」と記している(ただし、M、Nは1ないし4)。なお、修正シフト量は、隣接する2つの基準位置間の距離(すなわち、基準距離T)に相当するカウント数よりも小さい。
図9の修正シフト量取得部618では、出力データ生成部633からベースクロック813毎に入力される変換画素データ692の変化画素番号を用いて図12の基準位置アドレステーブル6172を参照することにより、1つの基準位置アドレスが特定される。また、修正シフト量取得部618では、直前のベースクロック813にて入力された変換画素データ692の変化後画素値が記憶されており、直前の変化後画素値および今回の変化後画素値を用いて図13の修正シフト量テーブル6171を参照することにより、1つの修正シフト量が特定される。そして、特定された基準位置アドレスおよび修正シフト量(既述のように、両者はディレイクロック814のカウント数として表されている。)を加算した値がシフトディレイ数として求められ、図5のシフト部613の第2レジスタ6163に、シフトディレイ数データ812として入力される。このように、シフトディレイ数データ812の値は、各カウンタ6151,6152の各カウント区間の最初の設定距離における始点から当該設定距離に含まれる変化点までの距離と当該変化点に対するシフト量との和を当該始点からのディレイクロック814のカウント数に換算した値となっている。
図14は駆動電圧テーブル6173を示す図である。駆動電圧テーブル6173は複数通りの画素値にそれぞれ対応する目標駆動電圧を示すテーブルとなっており、図9の駆動電圧取得部619では、変換画素データ692の変化後画素値を用いて駆動電圧テーブル6173を参照することにより、変化後画素値に対応する駆動電圧が特定される。図14では、変化後画素値1ないし4に対応する駆動電圧をそれぞれ「第1階調駆動電圧」、「第2階調駆動電圧」、「第3階調駆動電圧」、「第4階調駆動電圧」と記している。特定された駆動電圧は駆動電圧データ811として図5の第1レジスタ6111に入力される。
以上のようにして、図9の素子駆動要素61において変換画素データ692から駆動電圧データ811およびシフトディレイ数データ812が生成されることにより、光変調素子461からの出力光量を変化後画素値に対応する階調に遷移させるとともに、その遷移位置をシフト(調整)することが可能となる。なお、画素加工テーブル6311および修正シフト量テーブル6171の詳細については後述する。
次に、画像記録装置1が基板9上に画像を記録する動作について図15を参照しつつ説明する。画像記録装置1では、まず、各光変調素子461に対して補正テーブルが操作者により準備され、図9の主演算部62に入力される(ステップS11)。なお、図9では符号681を付す矢印にて補正テーブルを示している。
ここで、補正テーブルとは、各光変調素子461に対応する画素列における各変化点に関して、当該変化点を挟む2つの画素群に対応する基板9上の2つの領域(2つの画素群に対応するパターンが形成される2つの領域)間の境界の主走査方向の位置ずれ(すなわち、描画ずれ)を補正するために、当該光変調素子461からの出力光量の遷移位置をシフトするシフト量を示すものである。描画ずれの原因としては、撓み量が変化する際に可撓リボン461aの状態が安定するまでの時間が、当該変化点を挟む2つの画素群の画素値の組合せによって相違すること、あるいは、当該光変調素子461の照射領域の主走査方向の長さや位置(照射位置)が他の光変調素子461と相違すること等が挙げられる。なお、補正テーブルは、例えば、ダミー基板に副走査方向に伸びるパターンを実際に描画する、あるいは、ステージ31上に光検出部を設け、全ての光変調素子461からの光の照射領域の主走査方向の長さや位置を測定することにより取得される。
表1に示す補正テーブルでは、注目している注目画素の直前の画素の画素値と、注目画素の画素値(表1において、それぞれ「直前の画素値」および「現在の画素値」と記す。)との全ての組合せのそれぞれに対して、「標準シフト量」、「線幅補正シフト量」および「位置補正シフト量」が設定されている。なお、表1では、「直前の画素値」および「現在の画素値」が1と1の組合せ、1と2の組合せ、2と1の組合せ、2と2の組合せとされる場合のみを示しているが、実際には、「直前の画素値」および「現在の画素値」のそれぞれが3および4とされる組合せについても「標準シフト量」、「線幅補正シフト量」および「位置補正シフト量」が設定されている。
図16は、補正テーブルにおける標準シフト量を説明するための図である。図16の上段はベースクロック813を示し、中段は目標駆動電圧を示し、下段は画素列を示している。ここでは、図16の上段および下段に示すようにベースクロック間画素数が4であるものとし、図16の上段では、図8の上段と同様に、設定距離Wをベースクロック間画素数にて除した基準距離を符号Tを付す矢印にて示している。
標準シフト量は、上述の描画ずれを補正する必要が無い場合でも、出力光量の遷移位置を変化点に対応する位置から照射位置の基板9に対する相対移動方向の前側(主走査方向への移動時の前側であり、図16の右側)に移動させるためのものである。例えば、図16の中段および下段に示す例では、光変調素子461に対する目標駆動電圧を画素値1に対応する第1階調駆動電圧V1から画素値2に対応する第2階調駆動電圧V2へと変更する遷移位置が、画素値1の白い画素71から平行斜線を付す画素値2の画素71への変化点の位置(すなわち、画素値2の画素群の最初の画素71の基準位置A1a)に対して、標準シフト量である基準距離Tの1/2倍だけ移動する。既述のように、全ての光変調素子461のそれぞれに対して補正テーブルが個別に準備されるが、全ての補正テーブルの全ての画素値の組合せにおいて標準シフト量は等しくされる。
図17は、補正テーブルにおける線幅補正シフト量を説明するための図である。線幅補正シフト量は、隣接する2つの画素群の画素値の組合せに依存する描画ずれを補正するためのものであり、例えば、変化点において画素値が1から2に変化する際には、表1を参照することにより光変調素子461からの出力光量の遷移位置(例えば、出力光量の立ち上がり時間に依存する位置)を基準距離Tの1/3倍だけ照射位置の相対移動方向の前側に移動させることを示す(+(1/3)T)が特定され、これにより、基板9上において画素値1の画素群に対応する領域と画素値2の画素群に対応する領域との境界位置のずれが補正される(すなわち、画素群の描画ずれが補正される。)。また、変化点において画素値が2から1に変化する際には、表1を参照することにより光変調素子461からの出力光量の遷移位置(例えば、出力光量の立ち下がり時間に依存する位置)を基準距離Tの1/3倍だけ照射位置の相対移動方向の後側に移動させることを示す(−(1/3)T)が特定され、これにより、基板9上において画素値2の画素群に対応する領域と画素値1の画素群に対応する領域との境界位置のずれが補正される。
図17の上から2段目には、図16の中段における目標駆動電圧の変化(図17の上から3段目にも同じものを破線にて示している。後述の図18の上から4段目において同様。)に対して表1の線幅補正シフト量によるシフトをさらに追加したものを示している。ここでは、図17の最下段に示すように、隣接する3つの画素群の画素値が1、2、1の順番にて変化し、中央の画素値2の画素群の画素数が5とされているため、図17の上から2段目にて光変調素子461の目標駆動電圧が第2階調駆動電圧V2とされる距離は、5個の画素に相当する距離(基準距離Tの5倍)よりも基準距離Tの2/3倍だけ短くなり、これにより、画素値2の画素群に対応する基板9上の領域の主走査方向の幅が補正されることとなる。このように、補正テーブルにおける線幅補正シフト量は、実質的には、各画素値の画素群に対応する基板9上の領域の主走査方向の幅(線幅)を補正するためのものとなっている。
図18は、補正テーブルにおける位置補正シフト量を説明するための図である。位置補正シフト量は、光変調素子461の照射位置の他の光変調素子461とのずれ(主走査方向のずれ)を補正するためのものである。位置補正シフト量は、各光変調素子461に対して個別に設定されるものであり、2つの画素の画素値の全ての組合せに対して同じ値が設定されている。例えば、図17の上から2段目に示す例において(図18の上から3段目にも同じものを一点鎖線にて示している。)、さらに、表1の位置補正シフト量(+4(1/3)T)によるシフトを追加すると、変化点において画素値が1から2に変化する場合、および、変化点において画素値が2から1に変化する場合のいずれにおいても、図18の上から2段目に示すように、光変調素子461からの出力光量の遷移位置が基準距離Tの4(1/3)倍((13/3)倍)だけ照射位置の相対移動方向の前側((+Y)側)にさらに移動することとなる。
この場合、光変調素子461の目標駆動電圧を第1階調駆動電圧V1から第2階調駆動電圧V2へと変更する位置(すなわち、出力光量の遷移位置)が、図18の最下段に示す画素列における画素値1の画素71から画素値2の画素71への変化点の位置(画素71aの基準位置A1a)に対して、基準距離Tの5倍よりも大きくかつ基準距離Tの6倍以下の距離だけ移動し、光変調素子461からの出力光量の遷移位置のシフト量が、1つの画素に対応する基板9上の領域の主走査方向の幅に設定距離を加算した距離(すなわち、5画素に相当する距離)を超える。これにより、画素値1の画素71から画素値2の画素71への変化点(基準位置A1a)に対する出力光量の遷移タイミングが、当該変化点が含まれるベースクロック期間の次の次の(2つ後の)ベースクロック期間に含まれ、ベースクロック813aに対応する描画の際に参照されるシフトディレイ数データ812の値が示すカウント数が、設定距離Wの2倍のカウント区間に相当するカウント数を超えてしまう。既述のように、図5の第1および第2カウンタ6151,6152におけるディレイクロック814のカウント数はベースクロック813毎に交互に(すなわち、設定距離Wの2倍のカウント区間毎に)リセットされるため、図1の画像記録装置1では、図18の最下段に示す画素列に基づいて図18の上から2段目に示すような目標駆動電圧の変更を行うことはできない。
そこで、以下の説明にて詳述するように、画像記録装置1では、図18の最下段において太線の矩形にて囲む画素71aの画素値を0に変更することにより、画素値1から画素値2への変化点を1画素分だけ移動(遅延)させる処理が行われるとともに、移動後の変化点に対して修正されたシフト量を求める処理が行われる。以下、基準距離Tの5倍をシフト上限距離と呼ぶ。
画像記録装置1において補正テーブルが準備されると、主演算部62では、画素加工テーブル6311および修正シフト量テーブル6171の生成に係る処理が行われる。まず、図9のシフト量超過検出部621では、表1における2つの画素値の各組合せにおいて標準シフト量、線幅補正シフト量および位置補正シフト量を加算することにより、表2に示すように合計シフト量が求められる(ステップS12)。
続いて、異なる2つの画素値の全ての組合せ(表2では、画素値1と画素値2の組合せおよび画素値2と画素値1の組合せ)において合計シフト量がシフト上限距離(すなわち、5画素に相当する基準距離Tの5倍)を超えるものが存在するか否かが確認される。ここでは、直前の画素値および現在の画素値がそれぞれ1および2とされる組合せのみにおいて、合計シフト量が基準距離Tの(+5(1/6))倍(すなわち、(+31/6)倍)となってシフト上限距離よりも大きくかつ6倍以下となることが確認される。そして、テーブル生成部622では、直前の画素値および現在の画素値がそれぞれ1および2とされる組合せにおいて「画素加工数」を(+1)とし、他の組合せにおいて「画素加工数」を0として、表3に示す画素加工テーブル6311が生成される。
画素加工数は、隣接する2つの画素群の間の変化点の移動量を示すものであり、表3の画素加工テーブル6311では、画素値1から画素値2に変化する変化点に対して画素加工数が(+1)となることにより、当該変化点を1画素分だけ遅延させる画素列の加工が指示され、他の画素値の組合せに対しては画素加工数が0となることにより画素の加工を行わないことが指示されることとなる。画素加工テーブル6311は、図9のFPGA制御要素63のメモリ631に入力されて記憶される(ステップS13)。なお、合計シフト量が基準距離Tのα倍(ただし、αは5以上の整数)よりも大きくかつ(α+1)倍以下となる場合には、本実施の形態では画素加工数は(α−4)とされる。
テーブル生成部622では、合計シフト量がシフト上限距離よりも大きくなって画素加工数が0以外とされた画素値の組合せにおいて、対応する画素加工数に基準距離Tを乗じた値が求められ、合計シフト量から当該値を引いた値が修正シフト量として求められる。また、合計シフト量がシフト上限距離以下となる画素値の組合せについては合計シフト量がそのまま修正シフト量とされる。したがって、表2の例では、直前の画素値および現在の画素値がそれぞれ1および2とされる組合せにおいて修正シフト量が基準距離Tの(+4(1/6))倍とされ、他の画素値の組合せについては合計シフト量がそのまま修正シフト量とされ、表4に示す修正シフト量テーブル6171が生成される。修正シフト量テーブル6171は図9の素子駆動要素61のメモリ617に入力されて記憶される(ステップS14)。なお、同一の2つの画素値の組合せにおいて合計シフト量がシフト上限距離を超えるものが存在する場合には、シフト上限距離よりも小さい任意の値(例えばベースクロック期間の半分に相当する量)が修正シフト量とされる。また、実際には、修正シフト量は、ディレイクロック814の分解能に相当するシフト量の整数倍に近い値に変更され、既述のように、ディレイクロック814のカウント数であるシフトディレイ数を素子駆動要素61にて与えることが可能となっている。
以上のようにして、画素加工テーブル6311および修正シフト量テーブル6171が準備されると、基板9の主走査方向への一定速度での移動が開始されるとともに(ステップS15)、制御部6が有する図示省略の画像メモリに記憶された対象画像のデータが変調器制御部60に入力される。既述のように、図9の変調器制御部60では、各画素列加工部632に対応する画素列データ691が入力される。
画素列加工部632では、図18の最下段に示すように、隣接する3つの画素群の画素値がそれぞれ1、2、1である場合、最初の(図18の左側の)画素値1の白い画素群と画素値2の平行斜線を付す画素群との間の変化点に対する画素加工数は表3の画素加工テーブル6311を参照することにより(+1)として求められ、画素値2の画素群の最初の画素71aの画素値が1に変更されて変化点が移動(遅延)する。また、画素値2の画素群と次の(図18の右側の)画素値1の画素群との間の変化点に対する画素加工数は0として求められ、変化点の移動は行われない。なお、表3に示すように同一の画素値を有する画素71の間では画素加工数は0となり、画素の加工は行われないため、画素加工数は変化点に対してのみ影響を与えるものとなる。
実際には、画素列加工部632では、図19に示すようにランレングスデータとして入力される画素列のデータにおいてランレングスの長さを変更することにより、変化点の移動が行われる。図19では、1つのランレングスを矩形(符号690a,690b,690cを付す。)にて図示している。
図19中にて「DATA(n)」と記すランレングス690bと直後の「DATA(n+1)」と記すランレングス690cとの間の位置である変化点(以下、「注目変化点」という。)に注目した場合、まず、ランレングス690bの画素値および直後のランレングス690cの画素値を用いて画素加工テーブル6311を参照することにより注目変化点に対する画素加工数が求められる。画素列加工部632には、表5に示す画素列データ691の修正条件が予め記憶されており、例えばランレングス690bの直前の「DATA(n−1)」と記すランレングス690aとランレングス690bとの間の変化点に対して求められた画素加工数(表5中にて「DATA(n−1)に対する画素加工数」と記す。)が0であり、注目変化点に対して求められる画素加工数(表5中にて「DATA(n)に対する画素加工数」と記す。)も0である場合には、ランレングス690bの長さの変更量(表5中にて「DATA(n)に対する実際の加工」と記す。)は0とされる。
表5に示すように、ランレングス690aとランレングス690bとの間の変化点に対して求められた画素加工数が0であり、注目変化点に対して求められる画素加工数が(+1)である場合には、ランレングス690bの長さの変更量が(+1)とされる(すなわち、ランレングス690bが1画素だけ長くされる。)。また、ランレングス690aとランレングス690bとの間の変化点に対して求められた画素加工数が(+1)であり、注目変化点に対して求められる画素加工数が0である場合には、ランレングス690aが(+1)だけ伸長されていることにより、注目変化点が1画素だけ遅延しているため、ランレングス690bの長さの変更量が(−1)とされる(すなわち、ランレングス690bが1画素だけ短くされる。)。さらに、ランレングス690aとランレングス690bとの間の変化点に対して求められた画素加工数が(+1)であり、注目変化点に対して求められる画素加工数が(+1)である場合には、ランレングス690aが(+1)だけ伸長されていることにより、注目変化点が1画素だけ既に遅延しているため、ランレングス690bの長さの変更量が0とされる。
図18の最下段に示す例において、隣接する3つの画素群のうち中央の画素群の画素数(ランレングスの長さ)が5である場合には、最初の(図18の左側の)画素値1の白い画素群と画素値2の平行斜線を付す画素群との間の変化点に対する画素加工数が(+1)であり、画素値2の画素群と次の(図18の右側の)画素値1の画素群との間の変化点に対する画素加工数が0であることにより、画素値2の画素群の画素数(ランレングスの長さ)の変更量は(−1)となり、画素値2の画素群の画素数が4に変更される。
以上のように、画像記録装置1では、対象画像データがランレングスデータとして画素列加工部632に入力され、各変化点を移動する際に、ランレングスデータのランレングスの長さを変更することにより、変化点の移動が容易に行われ、画素列データ691が加工される(ステップS16)。画素列加工部632の設計によっては、対象画像のデータはランレングスデータ以外の形式にて表されていてもよい。
画素列加工部632における画素列データの加工に並行して、加工後の画素列データ(の部分)は、出力データ生成部633にて復号化されてベースクロック間画素数毎に区切られ、既述のように、ベースクロック間画素数の画素において直前の画素から画素値が変化する画素の番号、および、当該画素の画素値(すなわち、変化画素番号および変化後画素値)を示す変換画素データ692が生成される。
例えば、図18の最下段において、画素71aの画素値が画素列加工部632の処理により1に変更されている(白い画素となっている)ものとして、図18の最上段のベースクロック813aに対応する描画の際に参照される変換画素データ692の変化画素番号および変化後画素値は、ベースクロック813a,813b間の4個の画素71における変化点の不存在により共に1とされる(既述のように、変化点が存在しない場合も変化画素番号は1とされ、変化後画素値は直前のベースクロック期間における最後の画素の画素値と同じとされる。)。また、ベースクロック813bに対応する描画の際に参照される変換画素データ692の変化画素番号および変化後画素値は、ベースクロック813b,813c間の4個の画素71のうち最初の画素(最初の基準位置)における画素値1から画素値2への変化点の存在により、それぞれ1および2とされ、ベースクロック813cに対応する描画の際に参照される変換画素データ692の変化画素番号および変化後画素値は、ベースクロック813c,813d間の4個の画素71のうち最初の画素(最初の基準位置)における画素値2から画素値1への変化点の存在により、共に1とされる。
そして、基板9がベースクロック間画素数に相当する設定距離だけ移動する毎に発生するベースクロック813に応じて、変換画素データ692が素子駆動要素61に出力される(ステップS17)。素子駆動要素61では、変換画素データ692から駆動電圧データ811およびシフトディレイ数データ812を生成して光変調素子461を制御することにより、光変調素子461からの出力光量の遷移位置をシフトしつつ基板9上にパターンが描画される(ステップS18)。
このとき、図18の最上段におけるベースクロック813bに対応する描画の際には、変化画素番号および変化後画素値がそれぞれ1および2とされる変換画素データ692に基づいて1番目の画素に対応する基準位置アドレス(ここでは0となる。)が特定されるとともに、修正シフト量が直前の変化後画素値および今回の変化後画素値を用いて(+4(1/6)T)(すなわち、+(25/6)T)として特定される。これにより、シフトディレイ数データ812の値が、設定距離Wの2倍のカウント区間よりも短い距離(+4(1/6)T)に相当するカウント数として求められ、図18の上から2段目に示すような目標駆動電圧の変更が実現される。なお、変更後の目標駆動電圧は、変換画素データ692の変化後画素値に基づいて第2階調駆動電圧V2とされる。
実際には、ステップS17における変換画素データ692の生成および素子駆動要素61への入力、並びに、ステップS18における変換画素データ692に基づくパターンの描画は基板9上に対象画像を示す画像の全体が記録されるまで繰り返される(ステップS19)。対象画像の全体が記録されると、基板9の主走査方向への移動が停止され、基板9上に画像を記録する動作が完了する(ステップS20)。
以上に説明したように、図1の画像記録装置1では、補正テーブルにおいて2つの画素値の各組合せに対して合計シフト量を求めることにより、実質的に、各光変調素子461に対応する画素列の各変化点に関して、画素群の描画ずれを補正するために光変調素子461からの出力光量の遷移位置をシフトするシフト量(修正前のシフト量)が求められる。続いて、合計シフト量がシフト上限距離よりも大きくなる組合せに対して、基準距離Tのβ倍として表される合計シフト量におけるβの整数部から4を引いた値を画素加工数とし、合計シフト量と画素加工数に基準距離Tを乗じた値との差を修正シフト量として画素加工テーブル6311および修正シフト量テーブル6171が作成される。
これにより、実際の画像記録の際に、各変化点に対する上記シフト量が、1つの画素に対応する基板9上の領域の主走査方向の幅に設定距離を加算したシフト上限距離を超える場合に、当該変化点が列方向に移動するように対象画像の画素の画素値が変更されるとともに、当該変化点に対応するシフト量が、当該シフト量から当該変化点が移動した画素数に相当する距離を減算した値に修正され、シフト上限距離以下となる修正後のシフト量が取得されることとなる。そして、主走査機構25に同期しつつ変更後の対象画像および修正後のシフト量に基づいて空間光変調器46を制御することにより、基板9に画像を記録する際に、光変調素子461からの出力光量の遷移位置をシフト上限距離を超えてシフトさせつつ画像を精度よく記録することが実現される。
ところで、光変調素子からの出力光量の遷移がベースクロック期間にて1度だけ可能とされる比較例の画像記録装置では、上記の対象画像の画素値の変更およびシフト量の修正のみでは、画像を適切に印刷することができない場合がある。図20はベースクロック813および画素列を示す図である。図20の上段はベースクロック813を示し、中段は変化点の移動前の画素列を示し、下段は変化点の移動後の画素列を示している。なお、図20の中段および下段では、変化点の位置を符号A2を付す矢印にて示している。
図20の上段および中段に示すように、ベースクロック間画素数が4として設定されている場合には、対象画像のデータは、各画素列において連続して同一の画素値を有する各画素群における画素数が4以上として生成されており(論理的な最小線幅が4画素に相当する幅であると捉えることができる。)、これにより、光変調素子461からの出力光量の遷移がベースクロック期間にて1度だけ可能とされる比較例の画像記録装置において、画像を適切に記録することが可能とされている。この場合に、仮に、図15のステップS16の画素列データの加工において、変化点を1画素だけ遅延させる処理が行われると、図20の下段に示すように、画素数が3となる画素群(平行斜線を付す画素71の集合)が生成されてベースクロック期間にて2つの変化点が存在してしまい、比較例の画像記録装置では画像を適切に記録することができなくなってしまう。
これに対し、図1の画像記録装置1では、2つのカウンタ6151,6152および2つのコンパレータ6141,6142が設けられ、2つのカウンタ6151,6152がベースクロック813毎に交互にリセットされることにより、ベースクロック期間にて2つの変化点が存在する場合でも、画像を適切に印刷することが可能となる。
また、画像記録装置1では、複数通りの2つの画素値の組合せのそれぞれに対して移動前の変化点のシフト量を示す複数の補正テーブルが全ての光変調素子461に対応して予め準備され、主演算部62により2つの画素値の各組合せに対する変化点の移動量を示す複数の画素加工テーブル6311、および、2つの画素値の各組合せに対して補正テーブルの値を修正したシフト量(修正シフト量)を示す複数の修正シフト量テーブル6171が複数の補正テーブルから生成される。そして、画素列加工部632において画素列の各変化点における2つの画素値の組合せを用いて対応する画素加工テーブル6311を参照することにより、当該変化点の移動量を取得して変化点を列方向に移動する処理が行われ、修正シフト量取得部618において画素列の各変化点における2つの画素値の組合せを用いて対応する修正シフト量テーブル6171を参照することにより、当該変化点の修正シフト量を取得する処理が行われる。これにより、画像記録装置1では、基板9に画像を記録する際に、シフト上限距離を超える遷移位置のシフトを容易に実現することができる。
ここで、RIP(Raster Image Processor)において対象画像のデータを生成する際に、補正テーブルに基づいて予め変化点を移動した画像データを作成することも考えられるが、この場合、補正テーブルの内容が変更されると、画像データを再度作り直す必要が生じ、画像記録に係る処理に要する時間が長くなってしまう。
これに対し、画像記録装置1では、補正テーブルの内容が変更された場合であっても、上記のように、画素加工テーブル6311および修正シフト量テーブル6171を更新(修正)するのみでよいため、画像記録に係る処理に要する時間を短縮することが可能となる。
既述のように、画像記録装置1では、複数(全て)の光変調素子461のそれぞれに対して1つの素子駆動要素61および1つのFPGA制御要素63が設けられるため、本実施の形態では、複数のFPGA制御要素63におけるメモリ631の集合が複数の光変調素子461にそれぞれ対応する複数の画素加工テーブル6311を記憶する第1のテーブル記憶部と捉えられ、複数の素子駆動要素61におけるメモリ617の集合が複数の光変調素子461にそれぞれ対応する複数の修正シフト量テーブル6171を記憶する第2のテーブル記憶部と捉えられる。また、複数のFPGA制御要素63における画素列加工部632の集合が、各変化点の移動量を取得して当該変化点を列方向に移動する画像変更部と捉えられ、複数の素子駆動要素61における修正シフト量取得部618の集合が、各変化点に対する修正後のシフト量を取得するシフト量取得部と捉えられる。
図21は、本発明の第3の実施の形態に係る素子駆動要素の構成を示す図である。図21の素子駆動要素61aでは、図5の素子駆動要素61に比べてシフト部613aのみが相違しており、他の構成は同様であり、同符号を付している。シフト部613aはセレクタ643、オッドコンパレータ641、イーブンコンパレータ642、1つのカウンタ644、タイミングコントローラ645、アキュムレータ65、並びに、第2、第3および第5レジスタ647,648,649を有する。
図22はアキュムレータ65の構成を示す図である。アキュムレータ65は、補助タイミングコントローラ651、セレクタ652、コンパレータ653、加算器654、減算器655、並びに、第7、第8および第6レジスタ656,657,658を有する。
図21および図22に示すように、素子駆動要素61aでは、クロック発生部601からのベースクロック813が、タイミングコントローラ645、第1レジスタ6111およびFIFOレジスタ6112に入力され、ディレイクロック814はタイミングコントローラ645、カウンタ644、セレクタ643、並びに、アキュムレータ65の補助タイミングコントローラ651に入力される。
図23.Aないし図23.Dは、素子駆動要素61aのタイミングチャートである。以下、図21、図22、並びに、図23.Aないし図23.Dを参照して、素子駆動要素61aの動作の詳細について説明する。
素子駆動要素61aでは、図9を参照して説明した上記第2の実施の形態と同様に駆動電圧データ811およびシフトディレイ数データ812が画像記録動作に並行して取得される。例えば、図23.Cの最上段において符号813cを付すベースクロックが発生する際には、画素値2に対応する駆動電圧データ811の値811cが取得されて、図23.Cの下から3段目に示すように第1レジスタ6111に入力され、ベースクロック813cの直前のベースクロック813にて入力された駆動電圧データ811の値811bがFIFOレジスタ6112に入力される。
また、ベースクロック813cが発生する際には、カウント数197を示すシフトディレイ数データ812の値812cも取得されてシフト部613aの第2および第3レジスタ647,648に入力される。このとき、タイミングコントローラ645では、ベースクロック813cの発生により、図23.Aの上から6段目に示すイーブンストアパルス815および第2ストアパルス821が生成され、第2レジスタ647および第5レジスタ649にそれぞれ入力されることにより、図23.Cの下から4段目および6段目に示すように、第2レジスタ647のみにてシフトディレイ数データ812の値812cが記憶されるとともに、ベースクロック813cの2つ前のベースクロック813にて第2レジスタ647に入力されていたカウント数193を示すシフトディレイ数データ812の値812aが第5レジスタ649に記憶される。第2ストアパルス821は、カウンタ644、並びに、アキュムレータ65の補助タイミングコントローラ651および第7レジスタ656にも入力される。
カウンタ644では、ディレイクロック814がカウントされており、第2ストアパルス821の入力によりカウンタ644におけるカウント数が0に戻される(リセットされる)。そして、イーブンコンパレータ642において、第5レジスタ649が保持する値(すなわち、シフトディレイ数データ812の値812aが示すカウント数193)とカウンタ644からのカウント数とが比較され、カウンタ644からのカウント数が193となると、図23.Aの上から8段目に示すようにイーブンコンパレータ642からセレクタ643にベースクロック813cに対して遅延したタイミングパルス832(以下、「イーブンタイミングパルス832」という。)が出力される。このとき、セレクタ643にはFIFOレジスタ6112からイーブンコンパレータ642の選択を示すセレクト信号820が出力されており、イーブンコンパレータ642からのイーブンタイミングパルス832に対応するシフト済みタイミングパルス819が、次のディレイクロック814に同期してFIFOレジスタ6112および出力レジスタ6113へと出力される。
FIFOレジスタ6112では、このシフト済みタイミングパルス819に応答して、ベースクロック813cの2つ前のベースクロック813にて第1レジスタ6111に入力された駆動電圧データ811の値811aが出力レジスタ6113に出力され、ベースクロック813cに対応する位置からシフトディレイ数データ812の値812aに応じた距離だけシフトした位置にて、駆動電圧データ811の値811aに従った出力光量の遷移が行われる(図23.Aの下から4段目参照)。また、FIFOレジスタ6112では、シフト済みタイミングパルス819に応答して、オッドコンパレータ641の選択を示すセレクト信号820がセレクタ643に出力される。
一方で、アキュムレータ65の補助タイミングコントローラ651では、既述のようにベースクロック813cの発生により第2ストアパルス821が入力されると、オーバー200信号822が入力されている場合には第8レジスタ657に対して第1ロードパルス823が出力され、オーバー200信号822が入力されていない場合には第1ロードパルス823は出力されない。ここで、オーバー200信号822は、ベースクロック813cの直前のベースクロック813に応答して第3レジスタ648に入力されたシフトディレイ数データ812の値812bが示すカウント数と、ベースクロック期間に相当するディレイクロック814のカウント数として予め設定された値200とをコンパレータ653にて比較し、シフトディレイ数データ812の値812bが示すカウント数が200を超えている場合に補助タイミングコントローラ651に出力される信号である。
実際には、シフトディレイ数データ812の値812bがカウント数202を示すことにより、図23.Aの下から2段目に示すようにオーバー200信号822が補助タイミングコントローラ651に出力されており、図23.Cの上から3段目に示すように第1ロードパルス823が補助タイミングコントローラ651から第8レジスタ657に出力される。これにより、第8レジスタ657にて減算器655の値が読み込まれる。このとき、減算器655には、シフトディレイ数データ812の値812bが示すカウント数202から200を減算したカウント数を示す値が保持されており、第8レジスタ657ではカウント数2を示す値が記憶される。なお、図22では、符号R200を付す矢印にてシフトディレイ数データ812の値812bと比較される値が減算器655に入力されていることを示している(加算器654において同様)。
なお、セレクタ652には、加算器654に接続された第7レジスタ656からの信号、制御部6における図示省略の構成要素から入力される値399を示す信号(図22中に符号R399を付す矢印にて示す。)、および、減算器655に接続された第8レジスタ657からの信号が入力されており、ベースクロック813cの直前のベースクロック813に応答して生成されたオーバー200信号822の入力により、補助タイミングコントローラ651から値399を示す信号の選択を指示するセレクト信号824が入力されることにより、セレクタ652では値399が出力値とされる。また、ベースクロック813cの直前に、後述する第2ロードパルス825が生成されて第6レジスタ658に入力されることにより、ベースクロック813cの発生時には第6レジスタ658にて値399が記憶されている(図23.Cの上から5段目参照)。加算器654における動作については後述する。
続いて、基板9が直前のベースクロック813cの位置から設定距離だけ移動して次のベースクロック813dが発生する際には、画素値0に対応する駆動電圧データ811の値811dが第1レジスタ6111に入力されるとともに、駆動電圧データ811の値811cがFIFOレジスタ6112に入力される。また、カウント数197を示すシフトディレイ数データ812の値812dが第2および第3レジスタ647,648に入力され、ベースクロック813dの発生により、図23.Aの上から5段目に示すようにオッドストアパルス817がタイミングコントローラ645にて生成されて第3レジスタ648に入力されることにより、図23.Cの上から7段目に示すように第3レジスタ648においてのみシフトディレイ数データ812の値812dが記憶される。シフトディレイ数データ812の値812dは、第3レジスタ648に接続されるアキュムレータ65のコンパレータ653、加算器654および減算器655にて参照される。
オッドコンパレータ641ではアキュムレータ65の第6レジスタ658が保持する値399が参照されており、オッドコンパレータ641に順次入力されるカウンタ644からのカウント数(ただし、カウンタ644はベースクロック813dの直前のベースクロック813cの発生後からディレイクロック814を継続してカウントしている。)が399となると、図23.Aの上から7段目に示すようにベースクロック813dに対して遅延したタイミングパルス831(以下、「オッドタイミングパルス831」という。)がセレクタ643に出力される。後述するように、セレクタ643ではこのオッドタイミングパルス831が無視され、シフト済みタイミングパルス819は出力されない。
一方で、ベースクロック813dの発生直後において、アキュムレータ65のコンパレータ653では、第3レジスタ648が保持する値(すなわち、シフトディレイ数データ812の値812d)とコンパレータ653に予め設定された値200とが比較され、ここでは、シフトディレイ数データ812の値812dが示すカウント数197が200を超えていないため、オーバー200信号822が補助タイミングコントローラ651に出力されない状態となる(OFFとされる。)。
また、加算器654ではシフトディレイ数データ812の値812dが示すカウント数197に、ベースクロック期間に相当するディレイクロック814のカウント数200を加算した値397が出力値とされ、減算器655ではシフトディレイ数データ812の値812dが示すカウント数197から200を減算した値が出力値とされる。
実際には、補助タイミングコントローラ651においてもディレイクロック814がカウントされており、ベースクロック813dの直前のベースクロック813cによる第2ストアパルス821の生成からのカウント数が399となると、補助タイミングコントローラ651からセレクタ652に第8レジスタ657の選択を指示するセレクト信号824が入力されてセレクタ652にて第8レジスタ657からの値が選択される。
このとき、第8レジスタ657では、ベースクロック813cの発生に伴って入力されたカウント数2を示す値が保持されている。また、補助タイミングコントローラ651では、セレクト信号824に僅かに遅延して第2ロードパルス825が生成されて第6レジスタ658に入力され、第6レジスタ658にてセレクタ652からの値(カウント数2を示す値)が記憶される(図23.Cの上から5段目参照)。
続いて、ベースクロック813dの次のベースクロック813eが発生すると、画素値3に対応する駆動電圧データ811の値811eが第1レジスタ6111に入力され、直前のベースクロック813dにて入力された駆動電圧データ811の値811dがFIFOレジスタ6112に入力される。また、カウント数170を示すシフトディレイ数データ812の値812eが第2および第3レジスタ647,648に入力され、タイミングコントローラ645から第2レジスタ647および第5レジスタ649にイーブンストアパルス815および第2ストアパルス821がそれぞれ入力されることにより、第2レジスタ647におけるシフトディレイ数データ812の値812cが第5レジスタ649に記憶されるとともに、シフトディレイ数データ812の値812eが第2レジスタ647にて記憶される。
補助タイミングコントローラ651では、図23.Aの最下段に示すようにオッドセレクト信号826が生成されてセレクタ643に入力される。セレクタ643では、オッドセレクト信号826の入力によりオッドコンパレータ641から直前に入力されたオッドタイミングパルス831が無視され、シフト済みタイミングパルス819は出力されない。
カウンタ644では、第2ストアパルス821によりカウンタ644におけるカウント数が0に戻される。また、オッドコンパレータ641ではアキュムレータ65の第6レジスタ658の値(すなわち、カウント数2を示す値)と、カウンタ644のカウント数とが比較され、カウンタ644のカウント数が2となると、ベースクロック813eに対して遅延したオッドタイミングパルス831がオッドコンパレータ641からセレクタ643に出力される。
このとき、セレクタ643にはオッドセレクト信号826が入力されていることにより、オッドコンパレータ641からの出力が強制的に選択され、シフト済みタイミングパルス819が次のディレイクロック814に同期してFIFOレジスタ6112および出力レジスタ6113へと出力される。これにより、図23.Aの下から4段目に示すようにベースクロック813eの直前のベースクロック813dに対応する位置から、カウント数202を示すシフトディレイ数データ812の値812bに応じた距離だけシフトした位置にて、駆動電圧データ811の値811bに従った出力光量の遷移が行われる。なお、図23.Aおよび図23.Bの上から3段目には、仮にカウンタ644がオッドストアパルス817のタイミングにてリセットされる場合のカウント数を「仮想カウンタ出力値」として示している。
オッドタイミングパルス831はアキュムレータ65の補助タイミングコントローラ651にも出力されており、オッドタイミングパルス831に応答してオッドセレクト信号826がOFFとされる。また、補助タイミングコントローラ651では、第7レジスタ656の選択を指示するセレクト信号824がセレクタ652に入力されてセレクタ652にて第7レジスタ656からの値が選択される。このとき、第7レジスタ656では、シフトディレイ数データ812の値812dが示すカウント数197に200を加算したカウント数397を示す値が記憶されている。さらに、補助タイミングコントローラ651では、セレクト信号824に僅かに遅延して第2ロードパルス825が生成されて第6レジスタ658に入力され、第6レジスタ658にてセレクタ652からの値(カウント数397を示す値)が記憶される(図23.Cの上から5段目参照)。
カウンタ644では、ディレイクロック814のカウントがさらに継続されており、イーブンコンパレータ642において、第5レジスタ649にて記憶されるシフトディレイ数データ812の値812cが示すカウント数197とカウンタ644からのカウント数とが一致すると、イーブンコンパレータ642からセレクタ643にベースクロック813eに対して遅延したイーブンタイミングパルス832が出力される。このとき、セレクタ643にはFIFOレジスタ6112からイーブンコンパレータ642の選択を示す信号が出力されており、シフト済みタイミングパルス819が次のディレイクロック814に同期してFIFOレジスタ6112および出力レジスタ6113へと出力される。これにより、ベースクロック813eに対応する位置からシフトディレイ数データ812の値812cに応じた距離だけシフトした位置にて、駆動電圧データ811の値811cに従った出力光量の遷移が行われる。
続いて、基板9が直前のベースクロック813eの位置から設定距離だけ移動して次のベースクロック813fが発生する際には、駆動電圧データ811の値が第1レジスタ6111に入力されるとともに、タイミングコントローラ645におけるオッドストアパルス817の生成により第3レジスタ648にてシフトディレイ数データ812の値が読み込まれる。
既述のように、第6レジスタ658には第7レジスタ656の値(すなわち、シフトディレイ数データ812の値812dが示すカウント数197に200を加算したカウント数を示す値)が記憶されており、オッドコンパレータ641に順次入力されるカウンタ644からのカウント数(ただし、カウンタ644はベースクロック813fの直前のベースクロック813eの発生後からディレイクロック814をカウントしている。)が397となると、オッドコンパレータ641からセレクタ643にベースクロック813fに対して遅延したオッドタイミングパルス831が出力される。これにより、ベースクロック813fに対応する位置からシフトディレイ数データ812の値812dに応じた距離だけシフトした位置にて、駆動電圧データ811の値811dに従った出力光量の遷移が行われる。
以上のように、図21の素子駆動要素61aでは、1つ置きのベースクロック813にて発生する第2ストアパルス821にてカウンタ644がリセットされることにより、カウンタ644においてベースクロック813に基づいて設定距離の2倍のカウント区間毎にディレイクロック814のカウントが開始される。
ところで、図23.Aおよび図23.Bの上から3段目の仮想カウンタ出力値、および、上から4段目のカウンタ出力値に示すように、素子駆動要素61aでは、オッドコンパレータ641およびイーブンコンパレータ642に対して設定距離だけシフトした開始位置から上記のカウント区間に等しい長さの区間(以下、「重複カウント区間」という。)が順次設定されていると捉えることができ、ここでは、シフトディレイ数データ812の値がそのまま参照されるイーブンコンパレータ642の各重複カウント区間がカウンタ644のカウント区間と重なっている。また、シフトディレイ数データ812の値は、当該素子駆動要素61に対応する画素列において各重複カウント区間の最初の設定距離における始点から当該最初の設定距離に含まれる変化点までの距離と当該変化点に対するシフト量との和を当該重複カウント区間の始点からのディレイクロック814のカウント数に換算したシフト換算値を示すものとなる。
素子駆動要素61aでは、重複カウント区間がカウンタ644のカウント区間と相違するオッドコンパレータ641に関して、対応するシフトディレイ数データ812の値が示すカウント数が設定距離に相当するカウント数200を超えない場合には、加算器654にて当該カウント数に200を加算した値がオッドコンパレータ641の設定値として入力され、対応するシフトディレイ数データ812の値が示すカウント数が200を超える場合には、減算器655にて当該カウント数から200を減算した値がオッドコンパレータ641の設定値として入力される。これにより、図21の素子駆動要素61aでは、カウンタを1つのみ設けつつ、1画素に相当する距離を超えて光変調素子461からの出力光量の遷移位置をシフトさせることが可能となる構成が実現され、さらに、上記第2の実施の形態における手法と組み合わせる場合には、シフト上限距離を超えて出力光量の遷移位置をシフトさせることが可能となる。
なお、オッドコンパレータ641の設定値の入力に係る上記処理は、シフトディレイ数データ812の値が示すカウント数に設定距離に相当するカウント数200を加算した値が、2個の設定距離に相当するカウント数400を超えない場合に当該値を設定値とし、当該値が2個の設定距離に相当するカウント数400を超える場合に、シフトディレイ数データ812の値が示すカウント数から200を減算した値を設定値としてオッドコンパレータ641に設定する処理と捉えることもできる。
図24は、本発明の第4の実施の形態に係る画像記録装置1aの構成を示す図である。画像記録装置1aは画像記録用の光を出射する1つの光学ヘッド41aおよび画像が記録される記録媒体9aを外側面に保持する保持部である保持ドラム70を有する。記録媒体9aには光学ヘッド41aによる光の照射(露光)による描画により画像が記録される。記録媒体9aとしては、例えば、刷版、刷版形成用のフィルム等が用いられる。なお、保持ドラム70として無版印刷用の感光ドラムが用いられてもよく、この場合、記録媒体9aは感光ドラムの表面に相当し、保持ドラム70が記録媒体9aを一体的に保持していると捉えることができる。
保持ドラム70は円筒面の中心軸を中心にモータ81により回転し、これにより、光学ヘッド41aが記録媒体9aに対して主走査方向に(後述する複数の光変調素子からの光が照射される位置の配列方向に対して垂直な方向に)相対的に一定の速度で移動する。また、光学ヘッド41aはモータ82およびボールねじ83により保持ドラム70の回転軸に平行な(主走査方向に垂直な)副走査方向に移動可能とされ、光学ヘッド41aの位置はエンコーダ(図示省略)により検出される。このように、モータ81,82、ボールねじ83を含む移動機構により、保持ドラム70の外側面および記録媒体9aが、空間光変調器を有する光学ヘッド41aに対して一定の速度で主走査方向に相対的に移動するとともに主走査方向に交差する副走査方向にも相対的に移動する。モータ81,82およびエンコーダは制御部6aに接続され、制御部6aがモータ81,82および光学ヘッド41a内の空間光変調器からの信号光の出射を制御することにより、保持ドラム70上の記録媒体9aに光による画像記録が行われる。
図25は光学ヘッド41aの内部構成の概略を示す図である。光学ヘッド41a内には、複数の発光点を一列に有するバータイプの半導体レーザである光源43a、および、回折格子型の複数の光変調素子を一列に配列して有する空間光変調器46が配置され、光源43aからの光は、レンズ471(実際には、集光レンズ、シリンドリカルレンズ等により構成される。)およびプリズム472を介して空間光変調器46へと導かれる。このとき、光源43aからの光は線状光(光束断面が線状の光)とされ、ライン状に配列される複数の光変調素子上に照射される。
空間光変調器46の各光変調素子は、上記第1の実施の形態と同様の構成である制御部6aの変調器制御部60(図24参照)により制御される。なお、図25では、変調器制御部60の複数の素子駆動要素61(素子駆動要素61aであってもよい。)を1つのブロックにて示している。光変調素子から出射される0次光はプリズム472へと戻され、1次回折光はプリズム472とは異なる方向へと導かれる。なお、迷光となることを防止するために1次回折光は図示を省略する遮光部により遮光される。
各光変調素子からの0次光はプリズム472にて反射され、ズームレンズ473を介して光学ヘッド41a外の記録媒体9aへと導かれ、複数の光変調素子の像が副走査方向に並ぶように記録媒体9a上に形成される。ズームレンズ473はズームレンズ駆動モータ474にて倍率が可変とされており、これにより、記録される画像の解像度が変更される。
図24の画像記録装置1aにおいても、上記第1の実施の形態に係る画像記録装置1と同様に(または、上記第2もしくは第3の実施の形態に係る画像記録装置1と同様に)、各光変調素子に対応する画素列の各変化点に関して、画素の描画ずれを補正するために光変調素子からの出力光量の遷移位置をシフトするシフト量が求められる。そして、1画素に相当する距離を超える出力光量の遷移位置のシフトを許容しつつ、記録媒体9a上に画像が精度よく記録される。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
上記第1の実施の形態では、図5の各カウンタ6151,6152からのカウント数と比較される設定値をコンパレータ6141,6142に入力する設定値入力部が、タイミングコントローラ6161、並びに、第2、第4および第5レジスタ6163〜6165により実現され、上記第3の実施の形態では、図21のカウンタ644からのカウント数と比較される設定値をコンパレータ641,642に入力する設定値入力部が、タイミングコントローラ645、アキュムレータ65、並びに、第2、第3および第5レジスタ647〜649により実現されるが、複数の光変調素子461のそれぞれに対して設けられる設定値入力部は他の構成により実現されてもよい。
上記第1および第2の実施の形態では、2つのカウンタ6151,6152およびコンパレータ6141,6142が設けられるが、画像記録装置の各素子駆動要素では3以上のカウンタおよびコンパレータが設けられてもよく、この場合、複数の画素に相当する距離を超えて光変調素子461からの出力光量の遷移位置をシフトさせることが可能となる。以上のように、画像記録装置の各素子駆動要素では、カウント開始位置が設定距離だけ順にシフトするとともに、ベースクロック813に基づいてそれぞれが設定距離のK倍のカウント区間(Kは2以上の整数)毎にディレイクロック814のカウントを開始するK個のカウンタ、および、K個のカウンタからそれぞれ入力されるカウント数が設定値以上となる際に、光変調素子461からの出力光量の遷移を指示する信号を出力するK個のコンパレータが設けられ、設定値入力部が、当該素子駆動要素に対応する画素列において各カウンタの各カウント区間の最初の設定距離における始点から当該設定距離に含まれる変化点までの距離と当該変化点に対するシフト量との和を当該始点からのディレイクロック814のカウント数に換算した設定値を、当該カウンタに接続されたコンパレータに入力する。これにより、1画素に相当する距離を超えて光変調素子からの出力光量の遷移位置をシフトさせることが可能となる。
また、上記第3の実施の形態でも同様に、画像記録装置の各素子駆動要素に3以上のコンパレータが設けられてもよく、素子駆動要素では、ベースクロック813に基づいて、設定距離のK倍のカウント区間(Kは2以上の整数)毎にディレイクロック814のカウントを開始する1つのカウンタ、および、1ないしKの番号にそれぞれに対応付けられるとともに、カウンタから入力されるカウント数が設定値以上となる際に、光変調素子461からの出力光量の遷移を指示する信号を出力するK個のコンパレータが設けられる。そして、K個のコンパレータに対して番号に従って設定距離だけ順にシフトした開始位置からカウント区間に等しい長さの重複カウント区間が順次設定されるとともに、番号が1であるコンパレータの各重複カウント区間がカウンタのカウント区間と重なっているものとして、当該素子駆動要素に対応する画素列において各重複カウント区間の最初の設定距離における始点から当該設定距離に含まれる変化点までの距離と当該変化点に対するシフト量との和を当該始点からのディレイクロック814のカウント数に換算したシフト換算値が求められ、設定値入力部が、当該重複カウント区間に対応するコンパレータの番号から1を減じた値に設定距離に相当するカウント数を乗じた番号換算値をシフト換算値に加算した値が、K個の設定距離に相当するカウント数を超えない場合に当該値を設定値とし、K個の設定距離に相当するカウント数を超える場合に、K個の設定距離に相当するカウント数から番号換算値を減算した値を、シフト換算値から減算して得られる値を設定値として、当該重複カウント区間に対応するコンパレータに入力する。これにより、1画素に相当する距離を超えて光変調素子からの出力光量の遷移位置をシフトさせることが可能となる。
上記第2の実施の形態では、各素子駆動要素61が2つのカウンタ6151,6152および2つのコンパレータ6141,6142のみを有することにより、シフト上限距離が1つの画素に対応する基板9上の領域の主走査方向の幅に設定距離を加算したものとされるが、上述のように、素子駆動要素がK個のカウンタおよびK個のコンパレータを有する場合には、シフト上限距離は1つの画素に対応する基板9上の領域の主走査方向の幅に設定距離の(K−1)倍を加算した値とされる。そして、各変化点に対するシフト量がシフト上限距離を超える場合に、当該変化点が列方向に移動するように対象画像の画素の画素値が変更されるとともに、当該変化点に対するシフト量を、当該シフト量から当該変化点が移動した画素数に相当する距離を減算した値に修正して、シフト上限距離以下となる修正後のシフト量が取得されることにより、シフト上限距離を超えて遷移位置をシフトさせることが可能となる(第3の実施の形態において同様)。
上記第2の実施の形態において、図17の例では、光変調素子461において目標駆動電圧が画素値2に対応する第2階調駆動電圧V2とされる距離が短くされる場合(図26の上から4段目参照)について述べたが、図26の上から3段目に示すように、目標駆動電圧が第2階調駆動電圧V2とされる距離が長くなるように補正テーブルにおける線幅補正シフト量が決定されていてもよい。また、画像記録装置1,1aでは、光変調素子461の遷移位置を照射位置の進行方向の前側にシフトさせる以外に(図26の上から5段目参照)、図26の最下段に示すように、照射位置の進行方向の後側にシフトさせてもよい。
このような場合であっても、描画ずれの補正を行わない場合のシフト量である標準シフト量を基準距離Tの1/2倍に設定し、1つの画素に対応する基板9または記録媒体9a上の領域の主走査方向の幅の半分から画素群の描画ずれに基づく距離(上記実施の形態では、線幅補正シフト量および位置補正シフト量)を増減した値を、(画素の加工に伴う)修正を行う前のシフト量とすることにより、光変調素子461の出力光量の遷移位置を主走査方向の両側に容易に移動させることができ、その結果、画像を精度よく記録することが可能となる。
上記第2の実施の形態では、画素加工テーブル6311および修正シフト量テーブル6171を用いることにより、シフト上限距離を超える遷移位置のシフトを容易に行うことが実現されるが、各変化点のシフト量がシフト上限距離を超える場合に、当該変化点が列方向に移動するように対象画像の画素の画素値が変更されるとともに、当該変化点に対するシフト量を、当該シフト量から当該変化点が移動した画素数に相当する距離を減算した値に修正して、シフト上限距離以下となる修正後のシフト量が取得されるのであるならば、画素加工テーブル6311および修正シフト量テーブル6171を用いることなく画像記録が行われてもよい。
図1および図24の画像記録装置1,1aでは、複数の光変調素子461を有する空間光変調器46が設けられ、複数の光変調素子461により対象画像に含まれる互いに異なる複数の画素列の描画が行われることにより、画像を高速に記録することが実現されるが、画像記録装置の設計によっては、1つの光変調素子を有する光変調器が用いられてもよい。この場合、1つの画素列加工部632および1つの修正シフト量取得部618がそれぞれ各変化点の移動量を取得して当該変化点を列方向に移動する画像変更部、および、各変化点に対する修正後のシフト量を取得するシフト量取得部と捉えられ、同一の画素加工テーブル6311および修正シフト量テーブル6171を用いて複数の画素列に対応する描画が行われる。
画像記録装置1,1aにおいて、描画における信号光は必ずしも0次光である必要はなく、1次回折光が信号光とされてもよい。また、撓んでいない状態の可撓リボン461aと固定リボン461bとの相対的位置関係が上記実施の形態とは異なり、可撓リボン461aが撓んだ状態で0次光が出射される光変調素子461が用いられてもよい。これらの場合においても、光変調素子461の動作タイミングをシフトすることにより、適切な画像記録が実現される。
可撓リボン461aおよび固定リボン461bは帯状の反射面として捉えることができるのであるならば、厳密な意味でのリボン形状である必要はない。例えば、ブロック形状の上面が固定リボンの反射面としての役割を果たしてもよい。
光変調素子461は回折格子型に限定されず、例えば液晶シャッタ等であってもよい。さらに、光変調素子461は光を反射するものにも限定されず、例えば、レーザアレイが光変調素子461としての役割を果たしてもよい。これらの場合においても各素子における描画ずれを補正することにより、適切な画像記録が実現される。
また、2次元の空間光変調器が採用されてもよく、この場合、光変調素子461の各1次元の配列に対して、上記実施の形態における複数の光変調素子461に対する補正が適用される。
上記第2の実施の形態では、合計シフト量がシフト上限距離を超える変化点を検出して、当該変化点を移動しつつシフト量を修正する演算部が、主演算部62、複数のFPGA制御要素63および複数の素子駆動要素61により実現されるが、画像を高速に記録する必要がない場合には、演算部の機能が主演算部62における演算のみにより(ソフトウェア的に)実現されてもよい。
また、画像記録装置1,1aでは、基板9および記録媒体9aの主走査方向への移動速度はほぼ一定とされるため、以上の説明における距離(または位置)の概念は時間(または時刻)として捉えることも可能である。
基板9および記録媒体9aは光学ヘッド41,41aに対して相対的に移動可能であるならば他の手法により移動されてもよい。また、画像の情報を保持する記録媒体は、プリント配線基板や半導体基板等の感光性材料が塗布された、あるいは、感光性を有する他の材料であってもよく、光の照射による熱に反応する材料であってもよい。