JP5225702B2 - 燃料電池システム及びその制御方法 - Google Patents
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このため、例えば起動直後において、アノードガスを大量に必要とする高負荷運転が要求された場合、結露水によって反応ガスの浸透が阻害されて、発電に必要とする量のアノードガスを連続的に供給できない状態に陥り、このような高負荷運転を連続的に行えずシステムが停止に至るおそれがある。
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る燃料電池システム1のブロック図である。
燃料電池システム1は、燃料電池10と、この燃料電池10にアノードガスとしての水素ガスやカソードガスとしての空気を供給する供給装置20と、これら燃料電池10及び供給装置20を制御する制御装置40とを有する。
電流制限器15は、図示しないDCDCコンバータ等を備え、制御装置40から出力される電流指令値に基づいて、燃料電池10から高圧バッテリ16及び駆動モータ17に出力される出力電流を制御する。また、この電流指令値は、図示しないアクセルペダルの開度を検出するアクセル開度センサ18から出力されたアクセル開度に基づいて、制御装置40により算出される。
また、エア供給路23には、アノードエア導入路31が分岐して設けられている。アノードエア導入路31の先端側は、後述の水素供給路25に接続されている。また、このアノードエア導入路31には、アノードエア導入弁311が設けられている。
このアノードエア導入弁311を閉じた状態では、エア供給路23と水素供給路25は遮断され、アノードエア導入弁311を開いた状態では、エア供給路23と水素供給路25は連通し、エアを水素供給路25に供給することが可能となる。このアノードエア導入弁311は、例えば、燃料電池10の発電停止期間中に水素供給路25やアノード流路13を掃気する際に開かれる。
希釈器50は、エア排出路24を介して導入された空気を希釈ガスとして用い、上述の水素排出路29を介して導入された不純ガスや残留水を、この希釈ガスで希釈した後に、排出管51を介して大気に排出する。
ここで、イグニッションがオンにされ燃料電池10を起動した後、この燃料電池10で発電する手順は、以下のようになる。
すなわち、パージ弁291を閉じておき、水素タンク22から、水素供給路25を介して、燃料電池10のアノード流路13に水素ガスを供給する。また、エアコンプレッサ21を駆動させることにより、エア供給路23を介して、燃料電池10のカソード流路14に空気を供給する。
燃料電池10に供給された水素ガス及び空気は、発電に供された後、燃料電池10からアノード流路13内の生成水等の残留水とともに、水素還流路26及びエア排出路24に流入する。このとき、パージ弁291は閉じているので、燃料電池10から排出される水素ガスは、エゼクタ28に還流されて、燃料電池10に再度供給される。
この排水パージ制御は、イグニッションスイッチがオンにされてから、所定の時間ごとに行われる。
2.温度。より具体的には、燃料電池システムの温度、反応ガスの温度、及び冷却水の温度等が挙げられる。すなわち、これら温度が所定の判定温度に達した場合には、燃料電池の暖機が完了したと判定される。
3.積算水素排出量。より具体的には、この積算水素排出量は、希釈器から排出されたオフガスの水素濃度と、希釈器に流入したオフガスの体積流量との積を積分することで算出される。すなわち、この積算水素排出量が所定の判定排出量に達した場合には、燃料電池の暖機が完了したと判定される。
また、これらパラメータを暖機の完了の判定に用いる場合には、各判定値は、試験により最適な値に設定される。
ここで、この高負荷判定値IFCWOTは、運転者により高負荷運転、すなわち急加速が要求されたことを判定するための電流値であり、試験により最適な値に設定される。
また、パージ弁を開いて、アノード流路内の水分を排出するには、水分を排出するために最低限必要な時間である有効排水時間以上の時間にわたり、水分を排出するために最低限必要な圧力である排水有効圧力以上の差圧をアノード流路に発生させ続ける必要がある。これにより、排水パージ制御を実行するために最適な出力電流の領域は、図4に示すように、中負荷領域に限定される。
以上の点に鑑みて、上述の中負荷制限値IFCMIDは、中負荷領域に設定される。
ステップS12では、排水パージ完了フラグを「1」に更新し、この処理を終了する。
図5は、燃料電池の起動履歴の一例を示すタイムチャートである。より具体的には、図5の(a)は前回の発電期間(時刻t2〜t3)中に高負荷運転が行われた場合のタイムチャートを示し、図5の(b)は前回の発電期間(時刻t6〜t7)中に高負荷運転が行われなかった場合のタイムチャートを示す。
上述のように、ソーク時間は、燃料電池の発電を停止してから再び開始するまでの時間であり、また、アノード流路内に残留する水分と相関がある状態量として用いられる。
しかしながら、前回の発電期間中において高負荷運転が行われた場合(図5の(a)参照)と、高負荷運転が行われなかった場合(図5の(b)参照)とでは、各々の発電開始時刻(t4及びt8)におけるアノード流路内に残留する水分量は異なる。つまり、前回の発電期間中において高負荷運転を行っていない場合には、排水パージ制御は実行されていないものと推定される。このため、高負荷運転を行った場合の水分量は、高負荷運転を行っていない場合の水分量よりも少ないと推定される。
一方、図5(b)に示すような発電履歴、すなわち、時刻t8を今回の発電開始時刻として、前回の発電期間(時刻t6〜t7)中に高負荷運転が行われなかった場合には、ソーク時間は、高負荷運転が行われなかったことに鑑みて、前回の発電が停止してからこの発電が再び開始されるまでの時間t8−t7に、前々回の発電が停止してからこの発電が再び開始されるまでの時間t6−t5を加算したものをソーク時間とする。
図6及び図7は、それぞれ、比較例及び本実施形態の燃料電池の起動後の制御例を示すタイムチャートである。より具体的には、燃料電池の起動後、運転者により高負荷運転要求があった場合における制御例を示すタイムチャートである。またここで、比較例は、上述の図2に示すような排水パージ制御を行わない場合を示す。
先ず、運転者により、電流指令値を所定値まで上昇させる高負荷運転が要求される。これに伴い、出力電流は電流指令値に沿って増加し、一方、燃料電池のセル電圧は急激に低下する。
ところで、セル電圧が低い状態で電流を取り出し続けると燃料電池が劣化する。そこで、図6に示す制御例では、セル電圧の急激な低下による燃料電池の劣化を防止するために、出力電流を制限する制御が行われ、これにより、燃料電池の運転が停止される。
時刻t11において、運転者により、電流指令値を初期電流指令値IFCCMDINまで上昇させる高負荷運転が要求される。この高負荷運転の要求に伴い、出力電流は増加し始め、セル電圧は低下し始める。
時刻t12において、排水パージ制御が必要であると判定(図2中ステップS8参照)されたことに応じて、電流指令値が中負荷制限値IFCMIDに修正(図2中ステップS9参照)される。また、これに伴い、出力電流がこの中負荷制限値IFCMIDに制限されるとともに、セル電圧は所定の電圧値に安定する。
時刻t13から所定の開弁時間にわたり、パージ弁が開弁され排水パージ制御が開始(図2中ステップS10参照)される。
時刻t14において、電流指令値が初期電流指令値IFCCMDINに戻され(図2中ステップS11参照)、これに伴い、出力電流が増加し始める。またここで、セル電圧も低下し始めるものの、排水パージ制御を行いアノード流路内の水分を排出し発電性能を確保することにより、出力電流をさらに制限することなく安定して発電を継続することができる。
(1)アノード流路13内に残留する水分量と相関があるソーク時間及び温度低下幅に基づいて、排水パージ制御を実行する必要があるか否かを判定し、排水パージ制御を実行する必要があると判定された場合、連続運転可能時間が所定の排水有効時間以上であり、かつ、アノード流路13に発生する差圧が所定の排水有効圧力以上である状態で、排水パージ制御を実行する。これにより、例えば、燃料電池10の起動直後において、高負荷運転が要求された場合であっても、排水に有効な差圧と時間を確保して水分を排出しながら、システムが停止に至ることなく燃料電池を連続的に運転することができる。
本発明の第2実施形態について、図8及び図9を参照して説明する。
図8は、本実施形態に係る制御装置による排水パージ制御の手順を示すフローチャートである。本実施形態は、上述の第1実施形態と比較して、排水パージ制御を実行する際における電流指令値の修正の仕方が異なる。
ステップS29では、電流指令値IFCCMDを、所定のレート制限値IFCACLLMTに基づいてレート制限する。
ここで、レート制限値IFCACLLMTは、電流指令値IFCCMDの時間変化を示し、試験に基づいて最適な値に設定される。またここで、このレート制限は、電流指令値が、初期電流指令値IFCCMDINに達するまで行われる。
ステップS31では、排水パージ完了フラグを「1」に更新し、この処理を終了する。
図9は、本実施形態の燃料電池の起動後の制御例を示すタイムチャートである。より具体的には、運転者により高負荷運転要求があった場合における制御例を示すタイムチャートである。
また、この時刻t21において、要求された電流指令値が高負荷判定値IFCWOT以上であると判定(図8中ステップS23)されたことに応じて、電流指令値をレート制限値IFCACLLMTに基づいてレート制限する制御が開始される(図8中ステップS29)。これに伴い、出力電流は、時刻t21からt23までレート制限される。
時刻t22から、所定の開弁時間にわたり、パージ弁が開弁され排水パージが開始(図8中ステップS30参照)される。
時刻t23において、電流指令値が初期電流指令値IFCCMDINに達したことに応じて、電流指令値のレート制限が解除される。またここで、セル電圧は、出力電流の増加に伴って低下するものの、排水パージ制御を行いアノード流路内の水分を排出し発電性能を確保することにより、出力電流をさらに制限することなく安定して発電を継続することができる。
すなわち、本実施形態では、レート制限により出力電流を制限しつつ、排水パージ制御を実行する。すなわち、所定の時間にわたって一定の出力電流に制限するのではなく、レートで制限することにより、運転者に対して違和感を与えることなく、排水パージ制御を実行するための時間を確保することができる。したがって、排水パージ制御を行いつつ、商品性も向上できる。
上記実施形態では、水素還流路26から分岐する水素排出路29を設けるとともに、この水素排出路29にパージ弁291を設け、このパージ弁291を開くことで、アノード流路13内の残留水を、不純ガスとともに排出したがこれに限らない。例えば、このパージ弁とは別に、残留水のみを排出するドレイン弁を設けてもよい。
10…燃料電池
13…アノード流路
15…電流制限器(出力制限手段)
22…水素タンク(アノードガス供給手段)
25…水素供給路(アノードガス供給手段)
28…エゼクタ(アノードガス供給手段)
291…パージ弁(排出装置)
40…制御装置(パージ制御手段、排水要否判定手段、出力制限手段、ソーク時間算出手段)
Claims (6)
- アノードガス及びカソードガスの反応により発電する燃料電池と、
当該燃料電池のアノード流路にアノードガスを供給するアノードガス供給手段と、
前記アノード流路内の水分を排出する排出装置と、
前記アノードガス供給手段によりアノードガスを供給した際に前記アノード流路の流入口と流出口との間に発生する差圧を利用して、前記排出装置により前記アノード流路内の水分を排出する排水パージ制御を行うパージ制御手段と、を備える燃料電池システムであって、
前記燃料電池の起動時に前記アノード流路内に残留する水分量と相関がある状態量に基づいて、前記パージ制御手段により前記排水パージ制御を実行する必要があるか否かを判定する排水要否判定手段と、
前記燃料電池から電気負荷に出力される出力電流に対する要求を取得する要求取得手段と、
前記取得した要求に基づいて前記出力電流を制御する出力制御手段と、をさらに備え、
前記出力電流を所定値以上とする高負荷運転が要求され、かつ、前記排水要否判定手段により前記排水パージ制御を実行する必要があると判定された場合、
前記出力制御手段は、所定負荷運転を継続可能な時間を連続運転可能時間として、当該連続運転可能時間が所定の排水有効時間以上であり、かつ、前記差圧が所定の排水有効圧力以上となる中負荷領域内に前記出力電流を制限し、
前記パージ制御手段は、前記出力制御手段によって前記出力電流が制限されている間に、前記排水パージ制御を実行することを特徴とする燃料電池システム。 - 前記燃料電池の発電が停止している間に、前記アノード流路に掃気ガスを供給することで当該アノード流路を掃気する掃気手段をさらに備え、
前記排水要否判定手段は、前記燃料電池の前回の発電停止期間中に前記掃気手段により掃気された場合には、前記排水パージ制御を実行する必要がないと判定することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。 - 前記燃料電池の発電を停止してからこの発電が再び開始されるまでの時間をソーク時間として、当該ソーク時間を算出するソーク時間算出手段をさらに備え、
前記排水要否判定手段は、前記ソーク時間算出手段により算出されたソーク時間を前記水分量と相関がある状態量として、当該ソーク時間が所定の判定時間以下である場合には、前記排水パージ制御を実行する必要がないと判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池システム。 - 前記ソーク時間算出手段は、前回の発電期間中に高負荷運転を行っていない場合には、前回の発電が停止してからこの発電が再び開始されるまでの時間を、前々回の発電が停止してからこの発電が再び開始されるまでの時間に加算したものをソーク時間として算出することを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。
- 前記パージ制御手段は、前記燃料電池による発電を開始してから停止するまでの間において、前記排水パージ制御を1回のみ実行することを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の燃料電池システム。
- アノードガス及びカソードガスの反応により発電する燃料電池と、
前記燃料電池のアノード流路にアノードガスを供給するアノードガス供給手段と、
前記アノード流路内の水分を排出する排出装置と、
前記燃料電池から電気負荷に出力される出力電流に対する要求を取得する要求取得手段と、を備える燃料電池システムの制御方法であって、
前記燃料電池の起動時に前記アノード流路内に残留する水分量と相関がある状態量に基づいて、前記アノード流路内の水分を排出する必要があるか否かを判定し、
前記出力電流を所定値以上とする高負荷運転が要求され、かつ、前記アノード流路内の水分を排出する必要があると判定された場合、
所定負荷運転を継続可能な時間を連続運転可能時間として、当該連続運転可能時間が所定の排水有効時間以上であり、かつ、前記アノード流路の流入口と流出口に発生する差圧が所定の排水有効圧力以上となる中負荷領域内に前記出力電流を制限し、前記出力電流が制限されている間に前記排出装置を制御し、当該アノード流路の水分を排出することを特徴とする燃料電池システムの制御方法。
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