図1に示した如く、本発明に係る実施例1の投射型表示装置10Aは、RGB3原色と対応した3個の反射型液晶パネルなどによる反射型空間光変調素子(以下、反射型液晶パネルと記す)を用いている。
この実施例1の投射型表示装置10Aでは、無偏光の白色光を射出する光源11と、光源11からの白色光をR光(赤色光),G光(緑色光),B光(青色光)に色分解して各色光を照明光として射出する照明光学系(色分解光学系)12〜16と、R光,G光,B光に対応して3個設けた各直角三角柱体21の第1面21aに弾性変位可能に取り付けられた反射型偏光板(以下、ワイヤグリッド偏光板と記す)22と、各直角三角柱体21の第2面21bにマスク材24を介して取り付けられたR光用の反射型液晶パネル25R又はG光用の反射型液晶パネル25GもしくはB光用の反射型液晶パネル25Bと、各色光用の反射型液晶パネル25R,25G,25Bからそれぞれ射出された各色の画像光を色合成する色合成光学系(以下、3色合成クロスダイクロイックプリズムと記す)28と、この3色合成クロスダイクロイックプリズム28で得られた色合成画像光をスクリーンS上に投影する投射レンズ29とで構成されている。
まず、光源11はメタルハライドランプ,キセノンランプ,ハロゲンランプなどを用いてR光,G光,B光を含んだ無偏光の白色光を射出する。この光源11から射出した白色光はミラー12で光路を90°曲げられて、異なる波長特性のダイクロイック膜をそれぞれ膜付けした2枚の第1,第2ミラー13a,13bをX字状に交差させたクロスダイクロイックミラー13に入射する。
そして、クロスダイクロイックミラー13で入射した白色光がR光及びG光と、B光とに色分解される。
この後、クロスダイクロイックミラー13で色分解されたR光及びG光は、ミラー14で光路を90°曲げられた後にダイクロイックミラー15に入射する。このダイクロイックミラー15によってR光とG光とに色分解され、R光はそのまま直進し、G光はダイクロイックミラー15で光路が90°曲げられる。
一方、クロスダイクロイックミラー13で色分解されたB光は、ミラー16で光路を90°曲げられて直進する。
尚、この実施例では、光源11からの白色光をR光,G光,B光に色分解して各色光を照明光として射出する照明光学系(色分解光学系)12〜16を用いているが、これに限ることなく、R光,G光,B光をそれぞれ射出する各色光用のLED光源を適用すれば各色光照明光学系12〜16を用いない構成も可能である。
この後、色分解されたR光,G光,B光は、各色光に対応して計3個設けられた各直角三角柱体21における各色光の光軸に対してそれぞれ45°傾斜した第1面21aに取り付けられたワイヤグリッド偏光板22の光入射面22aに入射する。各ワイヤグリッド偏光板22では、各色光のうち一方向の偏光成分であるS偏光(又はP偏光)を透過する。以下、ワイヤグリッド偏光板22を透過した光をS偏光として述べる。透過した各色光のS偏光は、透過した各色光のS偏光と直交した第2面21bにマスク材24を介して取り付けられた各色光用の反射型液晶パネル25R,25G,25Bにそれぞれ入射する。
この際、各色光用の反射型液晶パネル25R,25G,25Bの裏面には放熱用のヒートシンク26がそれぞれ固着されている。
ここで、ワイヤグリッド偏光板22は、R光,G光,B光に対応して計3個設けられており、厚みが2mm以下であるために弾性変位可能である。また、ワイヤグリッド偏光板22は、透明な光学ガラス板又は透明な樹脂板を母材とし、この母材にアルミニウムなどの金属線を所定のピッチで規則正しくストライプ状に多数本並べられており、各色光用の反射型液晶パネル25R,25G,25Bの画面サイズに対応して長方形状に形成されている。
また、各色光に対応して設けられたワイヤグリッド偏光板22は、R光,G光,B光の各色光の一方向の偏光成分であるS偏光を透過させ、他方向の偏光成分であるP偏光を反射させる機能を備えた反射型偏光板の一種である。このワイヤグリッド偏光板22を用いることで、光源11から発せられる光が偏光板で吸収されることを防ぐと共に、複屈折による表示画像の品質低下を抑えることができる。結果として、明るく、色再現性の良好な表示画像が得られる。
そして、各ワイヤグリッド偏光板22を通過したR光,G光,B光が対応する各色光用の反射型液晶パネル25R,25G,25Bに入射すると、反射型液晶パネル25R,25G,25BでR光,G光,B光の各画像信号に基づいて光変調され各画像光として射出される。反射型液晶パネル25R,25G,25Bで光変調された各画像光のうちで他方向の偏光成分であるP偏光が各ワイヤグリッド偏光板22の光反射面22bでそれぞれ反射される。
この後、各ワイヤグリッド偏光板22で反射した各色のP偏光の画像光は3色合成クロスダイクロイックプリズム28の異なる3面からそれぞれ入射する。
上記した3色合成クロスダイクロイックプリズム28は、透明な光学ガラスを用いて直方体(立方体も含む)に形成されており、上面から見た時に内部に第1,第2ダイクロイック膜28a,28bがX字状にクロスして膜付けされており、ここに入射された各色の画像光を色合成して、3色合成クロスダイクロイックプリズム28から射出した色合成画像光として投射レンズ29側に射出している。
そして、投射レンズ29により色合成画像光をスクリーンS上に投影して、カラー画像をスクリーンS上に拡大表示している。
ここで、各色の画像光に対してスクリーンS上で観察される倍率色収差を投射型表示装置1台ごとに補正するために、R光,G光,B光ごとに設けられた実施例1の倍率色収差補正手段について、図1に加えて図2〜図4を用いて説明する。
先に背景技術で説明したように、R光,G光,B光の各波長が異なることによって、スクリーンS上に結像した各色の画像の大きさが異なるという倍率色収差が発生する。
また、投射レンズ29の倍率色収差特性は、本出願人が先に提案した特許文献1に開示したように、投射レンズ29内に設けた複数のレンズ(図示せず)の形状により、R光<G光<B光の順に結像した像が縮小される特性を有するものと、R光>G光>B光の順に結像した像が拡大される特性を有するものと2種類あり、どちらの特性を有する投射レンズ29を適用するかは装置10Aの設計時に予め設定されている。
この際、投射レンズ29によりカラー画像をスクリーンS上に投影した時に、R光,G光,B光のうちでG光は最も解像度に影響を与え、その次に、R光が解像度に影響を与え、B光は解像度に影響を与える割合が比較的少ないので、G光に対するレジストレーションずれ(レジずれ)を最も押さえる必要がある。
従って、各色の画像光に対してスクリーンS上での倍率色収差を補正する際に、特許文献1では最も解像度に影響するG光を倍率色収差補正時の基準とし、G光に対してR光及びB光の各倍率色収差を補正するように記載されている。しかし、各色光の倍率色収差補正はあくまでも相対的なものであるので、R光を倍率色収差補正時の基準とし、このR光に対してG光及びB光の各倍率色収差を補正することも可能である。
ここで、実施例1の倍率色収差補正手段は、R光,G光,B光対応して計3個設けられた各直角三角柱体21の45°傾斜した第1面21aに取り付けられた各ワイヤグリッド偏光板22の光反射面22bを複数の積層型圧電素子31(図2〜図4)を用いて凸曲面状又は凹曲面状に弾性変位させている。
この際、実施例1の倍率色収差補正手段は、各色光に対して全て共通の構造であり、R光,G光,B光ごとに各直角三角柱体21の第1面21aに後述する第1〜第3の構造形態(図2〜図4)のうちいずれか一の構造形態を適用しているが、倍率色収差を補正する必要がある色光に対して実施例1の倍率色収差補正手段を動作させれば良いものである。
即ち、図2(a),(b)に示した如く、実施例1の倍率色収差補正手段の基台となる直角三角柱体21は、剛性を有する金属材又は樹脂材を用いて内部が空洞に形成されており、第1面21aと、第2面21bと、第3面21cと、第4面21dと、第5面21eとを有している。第2面21bと、第3面21cとは直交しており、第1面21aは45゜傾斜して三角柱状に形成され、第1〜第3面21a〜21cにそれぞれ矩形枠が開口されていると共に、第4,第5面21d,21eは閉じられている。
そして、直角三角柱体21の第1面21aに長方形状のワイヤグリッド偏光板22が取り付けられ、第2面21bにマスク材24の窓24aを介して各色光用の反射型液晶パネル25R,25G,25Bのいずれか一つが取り付けられている。
尚、直角三角柱体21の第3面21cに不図示の透明な光学ガラス板を取り付けても良く、透明な光学ガラス板を取り付けた場合には直角三角柱体21の内部を密閉することができるので塵埃などが内部に入り込まない。
更に、直角三角柱体21の第1面21aは、ワイヤグリッド偏光板22の外形に合わせて長方形状に形成されている。更に、この第1面21aのうちで互いに対向する一対の短辺(左右の辺)の中央部位近傍、及び/又は、互に対向する一対の長辺(上下の辺)の各中央部位近傍に、ワイヤグリッド偏光板22の光反射面22b(図1)を凸面状又は凹面状に弾性変位させるための複数の積層型圧電素子31が取り付けられている。
より具体的には、図2(a),(b)に示したように、直角三角柱体21中で45°傾斜した第1面21aに設けられた実施例1の倍率色収差補正手段の第1構造形態では、直角三角柱体21の第1面21aのうちで互いに対向する一対の短辺(左右の辺)の各中央部位近傍に一対の逆L字状支持片21a1,21a2が互に対向して左右対称に突出形成されており、これら一対の逆L字状支持片21a1,21a2に一対の積層型圧電素子31,31がワイヤグリッド偏光板22の光入射面22aに向かって取り付けられている。
また、図3に示したように、直角三角柱体21中で45°傾斜した第1面21aに設けられた実施例1の倍率色収差補正手段の第2構造形態では、直角三角柱体21の第1面21aのうちで互いに対向する一対の長辺(上下の辺)の各中央部位近傍に一対の逆L字状支持片21a3,21a4が互に対向して上下対称に突出形成されており、これら一対の逆L字状支持片21a3,21a4に一対の積層型圧電素子31,31がワイヤグリッド偏光板22の光入射面22aに向かって取り付けられている。
また、図4に示したように、直角三角柱体21中で45°傾斜した第1面21aに設けられた実施例1の倍率色収差補正手段の第3構造形態では、直角三角柱体21の第1面21aのうちで互いに対向する一対の短辺(左右の辺)の各中央部位近傍に一対の逆L字状支持片21a1,21a2が互に対向して左右対称に突出形成され、且つ、互いに対向する一対の長辺(上下の辺)の各中央部位近傍に一対の逆L字状支持片21a3,21a4が互に対向して上下対称に突出形成されており、これらの逆L字状支持片21a1〜21a4に積層型圧電素子31がワイヤグリッド偏光板22の光入射面22aに向かってそれぞれ取り付けられている。
尚、図2〜図4に示した逆L字状支持片21a1〜21a4は、直角三角柱体21と一体に形成するか、又は、別体に形成して直角三角柱体21に取り付ければ良いものである。
次に、ワイヤグリッド偏光板22の光反射面22bを凸曲面状に弾性変位させる場合について図5に示す。直角三角柱体21の第1面21aには、矩形枠外周に沿って長方形状の段差部21a5が一段引っ込んで形成されており、この段差部21a5内に長方形状のワイヤグリッド偏光板22が嵌め込まれ、且つ、ワイヤグリッド偏光板22の光反射面22b側の4隅のコーナー部位が不図示の接着剤を用いて段差部21a5に接着されている。これにより、ワイヤグリッド偏光板22中で接着されていない部位が弾性変位可能になっている。
更に、ワイヤグリッド偏光板22の光反射面22bを凸曲面状に弾性変位させる場合には、積層型圧電素子31は電圧を加えると伸長する伸長タイプ圧電素子31Aを用いる。この伸長タイプ圧電素子31Aの一端部は逆L字状支持片(21a1〜21a4)に接着剤を用いて固着され、伸長タイプ圧電素子31Aの他端部はワイヤグリッド偏光板22の光入射面22aに対して接離自在になっている。
また、伸長タイプ圧電素子31Aは、圧電素子駆動回路32と、倍率色収差補正部33とによりその伸長量が制御される。
ここで、倍率色収差補正部33は、スクリーンS(図1)上に投影されたR光,G光,B光の各テストパターン投影画像のうちで、倍率色収差補正時の基準となる一の色光のテストパターン投影画像の外形位置と、倍率色収差補正対象となる色光のテストパターン投影画像の外形位置との位置ずれ量を不図示の光センサで検出して、この位置ずれ量を補正する信号を圧電素子駆動回路32に供給している。
あるいは、基準となる一の色光のテストパターン投影画像の外形位置と、倍率色収差補正対象となる色光のテストパターン投影画像の外形位置との位置ずれ量を目視にて観察し、そのずれ量に応じた値を倍率色収差補正部33に入力して、この位置ずれ量を補正する信号を圧電素子駆動回路32に供給している。
また、圧電素子駆動回路32は、倍率色収差補正部33からの位置ずれ量を補正する信号に応じた電圧を伸長タイプ圧電素子31Aに印加している。
従って、倍率色収差補正部33からの位置ずれ量を補正する信号に応じた電圧を圧電素子駆動回路32から伸長タイプ圧電素子31Aに印加すると、この伸長タイプ圧電素子31Aの他端部が矢印F1に方向に向かって伸長する。そして、伸長タイプ圧電素子31Aの他端部がワイヤグリッド偏光板22の光入射面22aに当接した後に、伸長タイプの圧電素子31Aの他端部でワイヤグリッド偏光板22の光入射面22aを矢印F1方向に押し込む。その結果、ワイヤグリッド偏光板22の光入射面22aが凹曲面状に弾性変位し、ワイヤグリッド偏光板22の光反射面22bが凸曲面状に弾性変位する。
そして、先に説明した図2(a)と対応して図6(a)に示したように、伸長タイプ圧電素子31A(31)をワイヤグリッド偏光板22の光入射面22a側で一対の短辺(左右の辺)の各中間部位近傍に設置した場合に、ワイヤグリッド偏光板22の光反射面22b側では上下の各長辺との間が凸曲面状に変位して凸曲面が得られる。この凸曲面により、スクリーンS上に投影された投影画像の垂直方向が拡大されるので垂直方向に対して倍率色収差を補正することが可能になる。
また、先に説明した図3と対応して図6(b)に示したように、伸長タイプ圧電素子31A(31)をワイヤグリッド偏光板22の光入射面22a側で一対の長辺(上下の辺)の各中間部位近傍に設置した場合に、ワイヤグリッド偏光板22の光反射面22b側では左右の各短辺との間が凸曲面状に変位して凸曲面が得られる。この凸曲面により、スクリーンS上に投影された投影画像の水平方向が拡大されるので水平方向に対して倍率色収差を補正することが可能になる。
また、先に説明した図4と対応して図6(c)に示したように、伸長タイプ圧電素子31A(31)をワイヤグリッド偏光板22の光入射面22a側で一対の短辺(左右の辺)及び一対の長辺(上下の辺)の各中間部位近傍に設置した場合に、ワイヤグリッド偏光板22の光反射面22b側では上下の各長辺との間及び左右の各短辺との間が凸曲面状に変位して凸曲面が得られる。この凸曲面により、スクリーンS上に投影された投影画像の垂直方向及び水平方向が拡大されるので垂直方向及び水平方向に対して倍率色収差を補正することが可能になる。
次に、ワイヤグリッド偏光板22の光反射面22bを凹曲面状に弾性変位させる場合について図7に示す。直角三角柱体21の第1面21aには、矩形枠外周に沿って長方形状の段差部21a5が一段引っ込んで形成されており、この段差部21a5内に長方形状のワイヤグリッド偏光板22が嵌め込まれ、且つ、ワイヤグリッド偏光板22の光入射面22aの外周部位が押さえ板23で固定されている。これにより、ワイヤグリッド偏光板22中で押さえ板23で固定されていない部位が弾性変位可能になっている。
更に、ワイヤグリッド偏光板22の光反射面22bを凹曲面状に弾性変位させる場合には、積層型圧電素子31は電圧を加えると収縮する収縮タイプ圧電素子31Bを用いる。この収縮タイプ圧電素子31Bの一端部は逆L字状支持片(21a1〜21a4)に接着剤を用いて固着され、収縮タイプ圧電素子31Bの他端部もワイヤグリッド偏光板22の光入射面22aに接着剤を用いて固着されている。
また、収縮タイプ圧電素子31Bは、伸長タイプ圧電素子31Aの場合と同じく、圧電素子駆動回路32と、倍率色収差補正部33とによりその圧縮量が制御される。
従って、倍率色収差補正部33からの位置ずれ量を補正する信号に応じた電圧を圧電素子駆動回路32から収縮タイプ圧電素子31Bに印加すると、この収縮タイプ圧電素子31Bの他端部が矢印F2方向に向かって収縮し、ワイヤグリッド偏光板22の光入射面22aに接着した収縮タイプ圧電素子31Bの他端部で光入射面22aを矢印F2方向に引き上げる。その結果、ワイヤグリッド偏光板22の光入射面22aが凸曲面状に弾性変位し、ワイヤグリッド偏光板22の光反射面22bが凹曲面状に弾性変位する。
そして、先に説明した図2(a)と対応して図8(a)に示したように、収縮タイプ圧電素子31B(31)をワイヤグリッド偏光板22の光入射面22a側で一対の短辺(左右の辺)の各中間部位近傍に設置した場合に、ワイヤグリッド偏光板22の光反射面22b側では上下の各長辺との間が凹曲面状に変位して凹曲面が得られる。この凹曲面により、スクリーンS上に投影された投影画像の垂直方向が縮小されるので垂直方向に対して倍率色収差を補正することが可能になる。
また、先に説明した図3と対応して図8(b)に示したように、収縮タイプ圧電素子31B(31)をワイヤグリッド偏光板22の光入射面22a側で一対の長辺(上下の辺)の各中間部位近傍に設置した場合に、ワイヤグリッド偏光板22の光反射面22b側では左右の各短辺との間が凹曲面状に変位して凹曲面が得られる。この凹曲面により、スクリーンS上に投影された投影画像の水平方向が縮小されるので水平方向に対して倍率色収差を補正することが可能になる。
また、先に説明した図4と対応して図8(c)に示したように、収縮タイプ圧電素子31Bをワイヤグリッド偏光板22の光入射面22a側で一対の短辺(左右の辺)及び一対の長辺(上下の辺)の各中間部位近傍に設置した場合に、ワイヤグリッド偏光板22の光反射面22b側では上下の各長辺との間及び左右の各短辺との間が凹曲面状に変位して凹曲面が得られる。この凹曲面により、スクリーンS上に投影された投影画像の垂直方向及び水平方向が縮小されるので垂直方向及び水平方向に対して倍率色収差を補正することが可能になる。
この際、ワイヤグリッド偏光板22の厚みが2mm以下で、ワイヤグリッド偏光板22の弾性変形による撓み量が4μm以下で、ワイヤグリッド偏光板22の凸曲面又は凹曲面の曲率半径が28000mm以上にすることにより、200インチのスクリーンS(図1)上に拡大投影された反射型液晶パネル25R,25G,25Bの1画素に対応する像が1mm角で表示される場合、200インチの投影画像の周辺で2.5mm(2.5画素分)に表示される画像を拡大又は縮小することができる。つまり、2.5画素以下の倍率色収差を補正することができる。
尚、図6(a)〜(c)及び図8(a)〜(c)に示したワイヤグリッド偏光板22は前述したように各色光用の反射型液晶パネル25R,25G,25Bの画面サイズに合わせて長方形状に形成されているが、凸曲面状又は凹曲面状に上下左右対称に弾性変位させるためにワイヤグリッド偏光板22を正方形状に形成することも可能である。したがって、長方形状及び正方形状を含めて矩形状に形成したワイヤグリッド偏光板22の互いに対向する一対の左右の辺、及び/又は、一対の上下の辺の各中間部位近傍に積層型圧電素子31を設置すれば良いものである。
尚また、この実施例では、積層型圧電素子31を用いてワイヤグリッド偏光板22の光反射面22bを凸曲面状又は凹曲面状に弾性変位させているが、積層型圧電素子31に代えてネジとモータとを組み合わせ、複数のネジをワイヤグリッド偏光板22の光入射面22a側の辺の各中間部位近傍に設けてワイヤグリッド偏光板22を弾性変位させる構造でも良い。
次に、上記構成による実施例1の投射型表示装置10AにおいてスクリーンS上に投影された投影像がR光,G光,B光の順に大きくなるよう表示される倍率色収差特性を有する投射レンズ29を使用する場合、図9に示したようにG光を倍率色収差補正時の基準の一の色光とし、R光用のワイヤグリッド偏光板22及びB光用のワイヤグリッド偏光板22の光反射面22bの形状を設定すれば良い。
即ち、図9に示した如く、G光を基準とした場合に、G光用のワイヤグリッド偏光板22の光入射面22a及び光反射面22bは弾性変位させることなく平坦面のままとし、G光用の反射型液晶バネル25Gから射出したG光の画像光をスクリーンS上に投影すれば、スクリーンS上でのG光の投影画像の外形サイズは基準の大きさとなる。
一方、R光はG光よりも結像した像が縮小されるので基準となるG光の投影画像の外形サイズよりも拡大させる必要がある。そのため、先に示した図6(a)〜(c)のいずれか一の構造形態を適用して、R光用のワイヤグリッド偏光板22の光反射面22bを積層型圧電素子31により凸曲面状に弾性変位させる。これにより、補正前のR光の投影画像のサイズに対して補正後のR光の投影画像のサイズが拡大して、基準となるG光の投影画像の外形サイズに一致させることができる。
更に、B光はG光よりも結像した像が拡大されるので基準となるG光の投影画像の外形サイズよりも縮小させる必要がある。そのため、先に示した図8(a)〜(c)のいずれか一の構造形態を適用して、B光用のワイヤグリッド偏光板22の光反射面22bを積層型圧電素子31により凹曲面状に弾性変位させる。これにより、補正前のB光の投影画像のサイズに対して補正後のB光の投影画像のサイズが縮小して、基準となるG光の投影画像の外形サイズに一致させることができる。
尚、スクリーンS上に投影された投影像がR光,G光,B光の順に小さくなるように表示される倍率色収差特性を有する投射レンズ29を使用して、R光を基準として倍率色収差を補正する場合には、ここでの図示を省略するが、R光の投影画像の外形サイズに対してG光及びB光の各投影画像のサイズを拡大させれば良いので、G光用及びB光用の各ワイヤグリッド偏光板22の光反射面22bを積層型圧電素子31により凸曲面状に弾性変位させれば良い。
上述したように、本発明に係る実施例1の投射型表示装置10Aによれば、積層型圧電素子31によりワイヤグリッド偏光板22の光反射面22bを凸曲面状又は凹曲面状に弾性変位させることで、スクリーンS(図1,図9)上でR光,G光,B光のうちで基準となる一の色光の投影画像の外形サイズに対して他の二つの色光の投影画像の外形サイズを調整することが可能になる。これにより、例えば±2.5画素の範囲内で微調整しない基準となる投影画像の外形サイズに一致させることができるので、投射レンズ29の倍率色収差特性のばらつきや各光学部材の形状のばらつきを無視できない場合に、装置1台ごとに各色の画像光に対して投影画面上での倍率色収差をより一層確実に低減することができる。
本実施例1では、各ワイヤグリッド偏光板22を直角三角柱体21の第1面21aに固定するとしたが、必ずしも直角三角柱体21は必要ではなく照明光の光軸に対して45度傾斜した面を有する偏光板固定手段に各ワイヤグリッド偏光板22を上述の方法で固定し、倍率色収差補正手段で弾性変位するとしてもよい。
図10に示した本発明に係る実施例2の投射型表示装置10Bは、先に説明した本発明に係る実施例1の投射型表示装置10A(図1)の構成と一部を除いて同様の構成であり、ここでは説明の便宜上、先に示した構成部材に対して同一の符号を付し、且つ、先に示した構成部材は必要に応じて適宜説明し、実施例1に対して異なる構成部材に新たな符号を付して実施例1と異なる点について説明する。
図10に示した如く、本発明に係る実施例2の投射型表示装置10Bでは、剛性を有する金属材又は樹脂材を用いて内部が空洞で直角二等辺三角柱として形成されており、各色光に対応して計3個設けられた各直角三角柱体21を備えている。直角三角柱体21の第1面21a及び第2面21bは、実施例1と同じ構造である。
ここで、厚みが2mm以下に設定された各ワイヤグリッド偏光板22が正方形状に形成されている点が実施例1に対して異なる。
また、各直角三角柱体21は、第2面21bと直交した第3面21cに、透明で厚みが2mm以上に設定されて剛性を有する各光学ガラス板27が取り付けられている。
そして、各直角三角柱体21中の第1面21a〜第3面21cに取り付けた各部材は、周囲を不図示のシール材によりシールされているので、各直角三角柱体21の内部が密閉されている。
また、各直角三角柱体21の第3面21cに取り付けた光学ガラス板27は、これと対向する3色合成クロスダイクロイックプリズム28に接着されていてもよい。
ここで、実施例2の倍率色収差補正手段は、R光,G光,B光に対応して計3個設けられた各直角三角柱体21の内部の密閉された空間の圧力を変化させ、各第1面21aに取り付けられた各ワイヤグリッド偏光板22を弾性変位させている。
この際、実施例2の倍率色収差補正手段も、実施例1と同様に、各色光に対して全て共通の構造であり、倍率色収差を補正する必要がある色光に対して実施例2の倍率色収差補正手段を動作させれば良いものである。
即ち、図11に示した如く、実施例2の倍率色収差補正手段の基台となる直角三角柱体21は内部が密閉されており、この直角三角柱体21の第1面21aの外周に沿って実施例1とは異なって正方形状の段差部21a6(図12のみ図示)が一段引っ込んで形成されており、この段差部21a6内に正方形状のワイヤグリッド偏光板22が嵌め込まれている。ワイヤグリッド偏光板22は、光入射面22aの外周部位が押さえ板23で固定されている。そのため、正方形状のワイヤグリッド偏光板22の押さえ板23で固定されていない部位が上下及び左右に対称に弾性変位可能になっている。
また、直角三角柱体21中の第4面21d(又は第5面21e)に内部圧力調整用の孔21d1が貫通して穿設され、この孔21d1にパイプ41の一端が接続されていると共に、パイプ41の他端は直角三角柱体21内部を加圧または減圧する圧力変更手段であるコンプレッサ(ポンプ)42に接続されている。
また、コンプレッサ42は、コンプレッサ駆動部43と、倍率色収差補正部44とにより動作可能になっている。
ここで、倍率色収差補正部44は、スクリーンS(図10)上に投影されたR光,G光,B光の各テストパターン投影画像のうちで、基準となる一の色光のテストパターン投影画像の外形位置と、倍率色収差補正対象となる色光のテストパターン投影画像の外形位置との位置ずれ量を不図示の光センサで検出して、この位置ずれ量を補正する信号をコンプレッサ駆動部43に供給している。
あるいは、基準となる一の色光のテストパターン投影画像の外形位置と、倍率色収差補正対象となる色光のテストパターン投影画像の外形位置との位置ずれ量を目視にて観察し、そのずれ量に応じた値を倍率色収差補正部44に入力して、この位置ずれ量を補正する信号をコンプレッサ駆動部43に供給している。
また、コンプレッサ駆動部43は、倍率色収差補正部44からの位置ずれ量を補正する信号に応じてコンプレッサ42から出力される空気の圧力を制御している。
従って、コンプレッサ42から出力される空気の圧力がパイプ41を通して直角三角柱体21内に加わることで、ワイヤグリッド偏光板22の光反射面22bがコンプレッサ42からの圧力に応じて凸曲面状又は凹曲面状に弾性変位される。
ここで、例えば、厚みが0.7mmで30mm×30mmの正方形状の光学ガラス板を母材とするワイヤグリッド偏光板22を用いた場合、直角三角柱体21の周囲の圧力が1気圧であるときに、直角三角柱体21の内部圧力を例えば0.95気圧とすると、直角三角柱体21の内部と外部との間で−0.5気圧の圧力差が生じる。この結果、図12(a)に示したように、ワイヤグリッド偏光板22が直角三角柱体21の内部側に撓むため、光反射面22bが凸曲面状に弾性変位する。この際、凸曲面の中心部位は周辺に対して約4μm凸状に撓む。
このときに、正方形状のワイヤグリッド偏光板22の光反射面22bは、図13(a)〜(c)に拡大して示したように、凸状に撓んだときの等高線が上下左右略対称に現れて、曲率半径が28000mmの凸レンズ形状となる。ワイヤグリッド偏光板22の曲率半径が28000mmの凸レンズ形状にすることにより、200インチのスクリーンS(図10)上に拡大投影された反射型液晶パネル25R,25G,25Bの1画素に対応する像が1mm角で表示される場合、200インチの投影画像の周辺で2.5mm(2.5画素分)に表示される画像を拡大することができる。つまり、2.5画素以下の倍率色収差を補正することができる。
一方、直角三角柱体21の内部圧力を例えば1.05気圧とすることにより、直角三角柱体21の内部と外部との間で+0.5気圧の圧力差が生じる。その結果、図12(b)に示したように、ワイヤグリッド偏光板22が直角三角柱体21の外部側に撓むため光反射面22bが凹曲面状に弾性変位する。この際、凹曲面の中心部位は周辺に対して約4μm凹状に撓む。
このときに、正方形状のワイヤグリッド偏光板22の光反射面22bは、図13(a)〜(c)に拡大して示したように、凹状に撓んだときの等高線が上下左右略対称に現れて、曲率半径が28000mmの凹レンズ形状となる。ワイヤグリッド偏光板22の曲率半径が28000mmの凹レンズ形状にすることにより、200インチのスクリーンS(図10)上に拡大投影された反射型液晶パネル25R,25G,25Bの1画素に対応する像が1mm角で表示される場合、200インチの投影画像の周辺で2.5mm(2.5画素分)に表示される画像を縮小することができる。つまり、2.5画素以下の倍率色収差を補正することができる。
このように、ワイヤグリッド偏光板22の母材を光学ガラス板又は透明な樹脂板から構成し、その厚みと大きさを適時選ぶことにより、直角三角柱体21の内部圧力を変化させることによってワイヤグリッド偏光板22を数ミクロン程度弾性変形させることが可能である。
尚、実施例2では、直角三角柱体21内に空気を充填した例を示しているが、直角三角柱体21内に入れる気体を空気以外のガスとして不活性ガスなどを充填することも可能であり、また、気体以外に液体を充填することも可能である。
更に、直角三角柱体21内に入れる気体を空気とする場合には、コンプレッサ42の吸気口にフィルタ(図示せず)を取り付けることより、直角三角柱体21の内部に微小のゴミの進入を防ぐことができる。
尚、実施例2では、ワイヤグリッド偏光板22を正方形状に形成することでレンズ形状に弾性変位させたが、これに限ることなく、ワイヤグリッド偏光板22を実施例1と同様に各色光用の反射型液晶パネル25R,25G,25Bの画面サイズに合わせて長方形状に形成した場合でも実施例2の倍率色収差補正手段を適用することが可能である。
上述したように、本発明に係る実施例2の投射型表示装置10Bによれば、投射倍率色収差特性を有する投射レンズ29(図10)を用いたときに、実施例2の倍率色収差補正手段内のコンプレッサ42からの圧力によりワイヤグリッド偏光板22の光反射面22bを凸曲面状又は凹曲面状に弾性変位させることができる。この結果、スクリーンS(図10)上でR光,G光,B光のうちで基準となる一の色光の投影画像の外形サイズに対して他の二つの色光の投影画像のサイズを微調整することが可能になる。これにより、例えば基準となる一の色光の投影画像以外の投影画像を±2.5画素の範囲内で調整し、基準となる投影画像の外形サイズに一致させることができる。したがって、投射レンズ29の倍率色収差特性のばらつきや各光学部材の形状のばらつきを無視できない場合に、装置1台ごとに各色の画像光に対して投影画面上での倍率色収差をより一層確実に低減することができる。