JP5223354B2 - 切込プリプレグ基材、積層基材、繊維強化プラスチック、および切込プリプレグ基材の製造方法 - Google Patents
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Description
(1)強化繊維が一方向に引き揃えられたプリプレグ基材であって、該プリプレグ基材の全面に強化繊維を横切る方向へ断続的な切り込みからなる列が複数列設けられており、前記切り込みを強化繊維の垂直方向に投影した投影長さWsが30μm〜1.5mmであり、実質的に強化繊維のすべてが前記切り込みにより分断され、前記切り込みにより分断された強化繊維の繊維長さLが10〜100mmであり、繊維体積含有率Vfが45〜65%の範囲内である切込プリプレグ基材。
(2)前記切込プリプレグ基材の厚みHが30〜150μmである、(1)に記載の切込プリプレグ基材。
(3)前記切込プリプレグ基材が炭素繊維と熱硬化性樹脂とから構成される、(1)または(2)に記載の切込プリプレグ基材。
(4)前記切り込みが繊維直交方向から傾いている、(1)から(3)のいずれかに記載の切込プリプレグ基材。
(5)前記切り込みが、前記切込プリプレグ基材の上面と下面とのそれぞれから層を厚み方向に貫かずに設けられ、前記切り込みの深さHsが前記切込プリプレグ基材厚みHに対して0.4H〜0.6Hの範囲内であり、上面の任意の切り込みAと、前記切り込みAと繊維長手方向に隣接した上面の切り込みBとの間隔をLaとすると、前記間隔Laが10〜100mmの範囲内であり、前記切り込みAから切り込みB方向への繊維長手方向の移動量0.4La〜0.6Laの範囲内に下面の切り込みCの幾何中心が配置され、上面の切り込みAとBとに囲まれる領域に含まれる強化繊維の一部が、上面の切り込みAと下面の切り込みC、または上面の切り込みBと下面の切り込みCのいずれかにより分断されているとともに、前記上面の切り込みの幾何形状および/または前記下面の切り込みの幾何形状が同一である、(1)から(4)のいずれかに記載の切込プリプレグ基材。
(6)前記切り込みが、前記切込プリプレグ基材の厚み方向に斜めに設けられており、任意の切り込みにおいて、前記切込プリプレグ基材の上面における強化繊維の分断線と下面における分断線との繊維長手方向の距離をSとすると、前記切込プリプレグ基材厚みHとを用いて、次の(式1)から導かれる角度Θが1〜25°の範囲内にある、(1)から(5)のいずれかに記載の切込プリプレグ基材。
(8)前記積層基材が(1)から(6)のいずれか記載の切込プリプレグ基材のみからなり、前記切込プリプレグ基材が擬似等方に積層されてなる積層基材。
(9)繊維方向が実質的に同一方向である隣接する層において、両層の断続的な切り込みからなる列が等間隔であり、一方の層の前記切込プリプレグ基材の前記切り込みからなる列が、他方の層の前記切込プリプレグ基材の前記切り込みからなる列に対し繊維長手方向にずれて配置されている(7)または(8)に記載の積層基材。
(10)強化繊維が実質的に一方向に引き揃えられた層が強化繊維の配向が異なる方向に少なくとも2層以上積層されてなる、(1)に記載の切込プリプレグ基材を用いた繊維強化プラスチックであって、前記繊維強化プラスチックを構成する層として、層の全面に強化繊維を横切る方向へ該強化繊維に垂直方向に投影した長さWcsが30μm〜20mmの範囲内である複数の切り込みを有し、平均厚みHcが15〜150μmの範囲内である切込層を少なくとも1層以上含み、前記切込層において、強化繊維が切り込みによって繊維長さLが10〜100mmの範囲内で分断されており、前記切込層の内少なくとも1層以上が、層を厚み方向に貫かない切り込みが上面と下面とから配されていることを特徴とする繊維強化プラスチック。
(11)(5)に記載の切込プリプレグ基材の製造方法であって、強化繊維を一方向に引き揃えてマトリックス樹脂を含浸して予備プリプレグ基材を準備し、予備プリプレグ基材に、所定の位置に刃を配置した回転刃ローラーを上面と下面との両面から押し当てて、予備プリプレグ基材の厚み方向に層を貫かない切り込みを入れる、切込プリプレグ基材の製造方法。
(12)(6)に記載の切込プリプレグ基材の製造方法であって、強化繊維を一方向に引き揃えてマトリックス樹脂を含浸して予備プリプレグ基材を準備し、予備プリプレグ基材に、予備プリプレグ基材の厚み方向に層を貫く切り込みを入れ、上面と下面とで回転速度の異なるニップローラーを押し当て、強化繊維の分断面を厚み方向に斜めにする、切込プリプレグ基材の製造方法。
所定の基材を、300×300mmの金型上に配置した後、加熱型プレス成型機により、6MPaの加圧下、150℃の温度雰囲気で所定の時間で流動・成形せしめ、300×300mmの平板状の成形体を得た。
得られた平板状の成形体より、長さ250±1mm、幅25±0.2mmの引張強度試験片を切り出した。JIS K−7073(1998)に規定する試験方法に従い、標点間距離を150mmとし、クロスヘッド速度2.0mm/分で引張強度を測定した。なお、本実施例においては、試験機としてインストロン(登録商標)万能試験機4208型を用いた。測定した試験片の数はn=5とし、平均値を引張強度とした。さらに、測定値より標準偏差を算出し、その標準偏差を平均値で除することにより、バラツキの指標である変動係数(CV値(%))を算出した。
得られた平板状の成形体の性状より、流動性とソリを評価した。
流動性に関しては、基材を伸長して成形するにあたり、金型キャビティ内に繊維強化プラスチックが充填されており、最表層に配された基材も金型端部付近まで伸長している場合には流動性○、金型キャビティ内に繊維強化プラスチックが充填されているものの、最表層に配された基材がほとんど伸長していない場合には流動性△、金型キャビティ内に繊維強化プラスチックが充填されていない部位がある場合には流動性×、として評価した。
ソリに関しては、成形体を平らな試験台上に置いただけで成形体が試験台と全面で接触している場合にはソリ○、成形体を平らな試験台上に置いただけで成形体が試験台とが全面で接触しておらず、指で成形体上面から試験台に成形体を押し付けた際、成形体が試験台と全面で接触する場合にはソリ△、指で成形体上面から試験台に成形体を押し付けた際、成形体が試験台と接触していない部分がある場合にはソリ×と評価して、表1〜10にまとめた。
(参考実施例1)
エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製“エピコート(登録商標)”828:30重量部、“エピコート(登録商標)”1001:35重量部、“エピコート(登録商標)”154:35重量部)に、熱可塑性樹脂ポリビニルホルマール(チッソ(株)製“ビニレック(登録商標)”K)5重量部をニーダーで加熱混練してポリビニルホルマールを均一に溶解させた後、硬化剤ジシアンジアミド(ジャパンエポキシレジン(株)製DICY7)3.5重量部と、硬化促進剤3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア(保土谷化学工業(株)製DCMU99)4重量部を、ニーダーで混練して未硬化のエポキシ樹脂組成物を調整した。このエポキシ樹脂組成物を、リバースロールコーターを用いてシリコーンコーティング処理された厚さ100μmの離型紙上に塗布して樹脂フィルムを作製した。次に、一方向に配列させた炭素繊維(引張強度4,900MPa、引張弾性率235GPa)の両面に樹脂フィルムをそれぞれ重ね、加熱・加圧することによって樹脂を含浸させ、単位面積あたりの炭素繊維重さ125g/m2、繊維体積含有率Vf55%、厚み0.125mmのプリプレグ基材を作製した。
(参考実施例2)
硬化促進剤を2,4−トルエンビス(ジメチルウレア)(ピイ・ティ・アイジャパン(株)製“オミキュア(登録商標)”24)5重量部に替えた以外は実施例1と同様に、切込プリプレグ基材、それを用いた積層基材を作製した。かかる積層基材を、加熱型プレス成形機の加圧時間(硬化時間)だけを3分に替えた以外は参考実施例1と同様の方法で繊維強化プラスチックを得た。加圧時間が実施例1の1/10であるにもかかわらず、ほぼ同等のガラス転移温度を示し、該エポキシ樹脂組成物は、速硬化性に優れることがわかった。
硬化促進剤を4,4−メチレンビス(フェニルジメチルウレア)(ピイ・ティ・アイジャパン(株)製“オミキュア(登録商標)”52)7重量部に替えた以外は参考実施例2と同様の方法で繊維強化プラスチックを得た。加圧時間が実施例1の1/10であるにもかかわらず、ほぼ同等のガラス転移温度を示し、未硬化のエポキシ樹脂組成物は、速硬化性に優れることがわかった。
共重合ポリアミド樹脂(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM4000、ポリアミド6/66/610共重合体、融点155℃)のペレットを、200℃で加熱したプレスで34μm厚みのフィルム状に加工した。離型紙を用いなかった他は参考実施例1と同様にして、切込プリプレグ基材を作成した。ポリアミド樹脂の25℃雰囲気下における粘度は固体であるため測定不可能であり、該基材はタック性がなかった。参考実施例1と同様に裁断後、タック性がないので単に16層を疑似等方([−45/0/+45/90]2S)に重ね、そのまま、300×300mmのキャビティを有する平板金型上の概中央部に配置した。加熱型プレス成形機により、6MPaの加圧のもと、200℃×1分間の条件で流動せしめ、型を開けることなく、冷却した後、脱型して、300×300mmの平板状の繊維強化プラスチックを得た。
ランダム共重合PP樹脂(プライムポリマー(株)製J229E,融点155℃)55重量%と酸変性PP系樹脂(三洋化成(株)製ユーメックス1010、酸価約52、融点142℃、重量平均分子量30,000)45重量%とを、日本製鋼所(株)製2軸押出機(TEX−30α2)を用い、200℃で溶融混練したペレットを、200℃で加熱したプレスで34μm厚みのフィルム状に加工した。以降、参考実施例4と同様にして、繊維強化プラスチックを得た。
参考実施例1と同様に樹脂フィルムを作成した。次に、一方向に配列させたガラス繊維(引張強度1,500MPa、引張弾性率74GPa)の両面に樹脂フィルムをそれぞれ重ね、加熱・加圧することによって樹脂を含浸させ、ガラス繊維重さ175g/m2、繊維体積含有率Vf55%、厚み0.125mmの切込プリプレグ基材を作製した。以後、参考実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。
(参考実施例7〜9)
切り出す切込プリプレグ基材の大きさが異なる以外は参考実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。切り出す切込プリプレグ基材の大きさは、参考実施例7では212×212mm、参考実施例8では268×268mm、参考実施例9では300×300mm、とした。それぞれ参考実施例7がチャージ率50%、参考実施例8が80%、参考実施例9が100%に相当する。
(参考実施例10〜13)
参考実施例1の切り込みパターンにおいて、切り込みの間隔L(繊維長さ)が異なる以外は、参考実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。それぞれLは、参考実施例10では15mm、参考実施例11では45mm、参考実施例12では60mm、参考実施例13では90mmとした。これに伴い、積層基材において、配向方向が同一である隣接する層において、一方の層の切込プリプレグ基材の切り込みからなる列が、他方の層の切込プリプレグ基材の切り込みからなる列に対し繊維方向に前記間隔Lの0.5倍ずつずれることになり、この繊維長手方向へのずれはそれぞれ、参考実施例10が7.5mm、参考実施例11が22.5mm、参考実施例12が30mm、参考実施例13が45mmとなる。
(参考実施例14〜15、実施例1)
参考実施例1の切り込みパターンにおいて、切り込みの長さWが異なる以外は参考実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。それぞれWは参考実施例14では10.1mm、参考実施例15では2.6mm、実施例1では1.35mmとした。これに伴い、隣り合う切り込みの列は繊維直交方向にそれぞれ、参考実施例14では10mm、参考実施例15では2.5mm、実施例1では1.25mmずれている。
参考実施例1の切り込みパターンにおいて、自動裁断機の代わりに、円柱状の金属を削りだし円周上に複数の刃を設けて回転ローラーとし、プリプレグ基材に押し当てて切り込みを入れることで、切り込みの長さWを変えた以外は参考実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。それぞれWは実施例2では0.725mm、実施例3では0.412mm、実施例4では0.05mmとした。これに伴い、隣り合う切り込みの列は繊維直交方向にそれぞれ、実施例2では0.625mm、実施例3では0.312mm、実施例4では0.03mmずれている。
(参考実施例16〜21)
参考実施例1の切込プリプレグ基材の単位面積あたりの炭素繊維重さを変えることによりプリプレグ基材の厚みを変えた以外は参考実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。それぞれ参考実施例16が単位面積あたりの炭素繊維重さが25g/m2、プリプレグ基材の厚みが0.025mm、参考実施例17が50g/m2、0.05mm、参考実施例18が100g/m2、0.1mm、参考実施例19が150g/m2、0.15mm、参考実施例20が200g/m2、0.2mm、参考実施例21が300g/m2、0.3mmとした。
(参考実施例22〜25)
参考実施例1のプリプレグ基材の単位面積あたりの炭素繊維重さを変えることにより炭素繊維の体積含有率Vfを変えた以外は参考実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。それぞれ参考実施例22が単位面積あたりの炭素繊維重さが146g/m2、Vfが65%、参考実施例23が135g/m2、Vfが60%、参考実施例24が113g/m2、Vfが50%、参考実施例25が101g/m2、Vfが45%とした。
(参考実施例26、27)
参考実施例26は参考実施例1の積層構成を変えた以外は参考実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。参考実施例1の切り込みを入れた切込プリプレグ基材を16層クロスプライに積層した、[0/90]4Sの積層基材を用いた。参考実施例27は参考実施例1の切込プリプレグ基材と、切り込みを入れた後の切込プリプレグ基材を取り合わせて積層した以外は参考実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。すなわち、切り込みのない連続繊維のみで構成されたプリプレグ基材8層と切り込みを入れたプリプレグ基材8層とを交互にクロスプライに積層した、[0/C90]4S(Cは連続繊維のみで構成されたプリプレグ基材をさす)の積層基材を用いた。
参考実施例28は参考実施例1の積層構成を変えた以外は参考実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。参考実施例1の切り込みを入れた切込プリプレグ基材を12層擬似等方に積層した、[60/0/−60]2Sの積層基材を用いた。参考実施例29は参考実施例1の切り込みを入れた切込プリプレグ基材に加え、その層間に実施例1のエポキシ樹脂フィルムを転写させた樹脂層を挿入した以外は参考実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。参考実施例1の切り込みを入れた切込プリプレグ基材を16層擬似等方に積層する際、樹脂層を設け、[45/R/0/R/-45/R/90/R]2S(Rは樹脂層をさす)の積層基材を用いた。最終的にVfは49%となった。参考実施例30は参考実施例1の切り込みを入れた切込プリプレグ基材に加え、最表層に参考実施例1と同様のエポキシ樹脂を含浸したVf55%の層厚み250μmの平織プリプレグ基材を配した以外は参考実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。参考実施例1の切り込みを入れた切込プリプレグ基材を16層擬似等方に積層し、さらに最表層に繊維方向が0°と90°に配向した前記平織プリプレグ基材を積層した、[WF0/45/0/-45/90]2S(WFは平織プリプレグ基材をさす)の積層基材を用いた。
参考実施例1と同様に樹脂フィルムを作製し、参考実施例1と同様に一方向に配列させた炭素繊維の両面に樹脂フィルムをそれぞれ重ね、加熱・加圧する際、樹脂が完全に炭素繊維内に含浸していない状態で単位面積あたりの炭素繊維重さ125g/m2、繊維体積含有率Vf55%の半含浸プリプレグ基材を作製した。この半含浸プリプレグ基材に参考実施例1と同様に図10に示すような切り込みを挿入した。得られた切込プリプレグ基材は、厚み方向中央部には樹脂の含浸していない領域があるものの、切り込みにより毛羽立ったり、分離したりすることなく、参考実施例1と同様に十分な取り扱い性を保っていた。さらに参考実施例1と同様に、積層、成形して繊維強化プラスチックを得た。
(参考実施例32〜34)
参考実施例1のプリプレグ基材に切り込みを入れる工程において、プリプレグ基材の上面と下面とのそれぞれから層を貫かない切り込みを入れる以外は参考実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。図7に示した、上下の回転ローラーに剃刀を埋め所定の長さ刃を露出させておき、同じ半径、等回転速度で回転する上下の回転ローラーにおいて該刃は半ピッチずれて埋められており、上面と下面とから押し当てて切込プリプレグ基材の厚み方向に層を貫かない切り込みを入れた。切込プリプレグ基材上面に入った切り込みをU、下面をDとすると、参考実施例32はUが35μm(0.28H、ただしHは切込プリプレグ基材の厚み)、Dが100μm(0.8H)、参考実施例33はUが55μm(0.44H)、Dが75μm(0.6H)、参考実施例34はU、Dともに67μm(0.54H)の深さとした。切込プリプレグ基材上面における任意の切り込みAと繊維長手方向に隣接する上面の切り込みBとの間隔Lは30mmであり、切り込みAから切り込みB方向へ繊維長手方向への移動量15mm(0.5L)で下面の切り込みBと重なる。切込プリプレグ基材の繊維は上下の切り込みによって分断されすべて繊維長が30mm以下となっていた。
参考実施例32〜34と同様にプリプレグ基材に切り込みを入れる以外は、参考実施例9と同様にして繊維強化プラスチックを得た。切込プリプレグ基材上面に入った切り込みをU、下面をDとすると、参考実施例35はUが35μm(0.28H、ただしHは切込プリプレグ基材の厚み)、Dが100μm(0.8H)、参考実施例36はUが55μm(0.44H)、Dが75μm(0.6H)、参考実施例37はU、Dともに67μm(0.54H)の深さとした。
(参考実施例38〜42)
参考実施例1のプリプレグ基材に切り込みを入れた後、切込プリプレグ基材の厚み方向にせん断力を加え、切り込みを斜めにする以外は、参考実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。参考実施例1のように層を貫く切込プリプレグ基材に鉛直な切り込みを入れた後、切込プリプレグ基材を60℃で加熱・軟化させた状態で、図8に示した、上面と下面とで回転速度の異なるニップローラーを押し当て、せん断力によって、強化繊維の分断面を厚み方向に斜めにした。図6のように、切込プリプレグ基材の上面における強化繊維の分断線と下面における分断線との繊維方向における距離17をせん断距離Sとすると、250×250mmに切り出した切込プリプレグ基材上で5ヶ所以上の切り込み部においてせん断距離Sを測定し、平均したものを式1に代入して切り込みのなす角19、すなわちテーパー角度Θを算出した。参考実施例38はせん断距離Sが12.5mm、テーパー角度Θが0.6°、参考実施例39はSが6.25mm、Θが1.1°、参考実施例40はSが1mm、Θが7.1°、参考実施例41はSが0.5mm、Θが1.4mm、参考実施例42はSが0.25mm、Θが27°とした。
参考実施例38〜42と同様に切込プリプレグ基材の切り込みを斜めにする以外は、参考実施例9と同様にして繊維強化プラスチックを得た。参考実施例43はせん断距離Sが12.5mm、テーパー角度Θが0.6°、参考実施例44はSが6.25mm、Θが1.1°、参考実施例45はSが1mm、Θが7.1°、参考実施例46はSが0.5mm、Θが1.4mm、参考実施例47はSが0.25mm、Θが27°とした。
(参考実施例48、49)
参考実施例1と同様のプリプレグ基材に、図2f)に示す切り込みパターンのように、繊維直交方向から傾けて直線状の切り込みを、自動裁断機を用いて挿入した。切り込みの長さWは5.1mmであり、繊維方向に対になる切り込みの幾何中心同士の間隔L(繊維長さ)は30mmである。繊維方向に対して切り込みの角度を、参考実施例48は30°、参考実施例49は45°とした。その結果、切り込みを繊維直交方向に投影した投影長さWsが、参考実施例48は2.55mm、参考実施例49は3.61mmとなった。これに伴い、隣り合う切り込みの列は繊維直交方向にそれぞれ、参考実施例48では2.5mm、参考実施例49では3.5mm、ずれている。
参考実施例48、49と同様の手法を用いて、繊維直交方向から傾けて直線状の切り込みを挿入した。切り込みの長さWは1.35mmであり、間隔L(繊維長さ)は30mmである。繊維方向に対して切り込みの角度を、実施例5は30°、実施例6は45°とした。切り込みを斜めにすることで、自動裁断機という簡易な切り込み挿入方法でも、切り込みを強化繊維の垂直方向に投影した投影長さWsを、実施例5は0.68mm、実施例6は0.95mmと小さくすることができた。これに伴い、隣り合う切り込みの列は繊維直交方向にそれぞれ、実施例5では0.6mm、実施例6では0.9mm、ずれている。
参考実施例1の切込プリプレグ基材の単位面積あたりの炭素繊維重さを変えることによりプリプレグ基材の厚みを200g/m2、プリプレグ基材の厚みが0.2mmに変えた以外は、実施例5、6と同様の手法、同様の切り込みパターンを用いて、繊維直交方向から傾けて直線状の切り込みを挿入した。
参考実施例1の切込プリプレグ基材の単位面積あたりの炭素繊維重さを変えることによりプリプレグ基材の厚みを200g/m2、プリプレグ基材の厚みが0.2mmに変え、切り込みの長さWは1.35mm(Wsも1.35mm)、隣り合う切り込みの列が繊維直交方向に1.3mmずれているほかは、参考実施例1と同様にした。
(参考例1、2)
参考実施例1の積層構成を変えた以外は参考実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。参考例1では参考実施例1の切り込みを入れた切込プリプレグ基材を8層同方向に積層した[0]8の積層基材を用いた。参考例2では参考実施例1の切り込みを入れた切込プリプレグ基材を16層積層した[0/45]4Sの積層基材を用いた。
(比較例1)
プリプレグ基材に切り込みを入れなかった他は、参考実施例1と同様とした。
参考実施例1と同様のエポキシ樹脂組成物を厚めに塗布した樹脂フィルムを作成した。次に、長さ25mmにカットされた炭素繊維束(引張強度4,900MPa、引張弾性率235GPa、12,000本)を単位面積あたりの重量が125g/m2になるよう均一に樹脂フィルム上に落下、散布した。さらにもう一枚の樹脂フィルムを被せて、カットされた炭素繊維を挟んだ後、カレンダーロールを通過させ、繊維体積含有率Vf55%のSMCシートを作製した。このSMCシートを250×250mmに切り出し、16層積層して、積層基材を得た後、参考実施例1と同様に成形し、繊維強化プラスチックを得た。
マトリックス樹脂としてビニルエステル樹脂(ダウ・ケミカル(株)製、デラケン790)を100重量部、硬化剤としてtert−ブチルパーオキシベンゾエート(日本油脂(株)製、パーブチルZ)を1重量部、内部離型剤としてステアリン酸亜鉛(堺化学工業(株)製、SZ−2000)を2重量部、増粘剤として酸化マグネシウム(協和化学工業(株)製、MgO#40)を4重量部用いて、それらを十分に混合撹拌し、樹脂ペーストを得た。樹脂ペーストをドクターブレードを用いて、ポリプロピレン製の離型フィルム上に塗布した。その上から、比較例2と同様の長さ25mmにカットされた炭素繊維束を単位面積あたりの重量が500g/m2になるよう均一に落下、散布した。さらに、樹脂ペーストを塗布したもう一方のポリプロピレンフィルムとで樹脂ペースト側を内にして挟んだ。炭素繊維のSMCシートに対する体積含有量は40%とした。得られたシートを40℃にて24時間静置することにより、樹脂ペーストを十分に増粘化させて、SMCシートを得た。このSMCシートを250×250mmに切り出し、4層積層して、積層基材を得た後、参考実施例1と同様に成形し、繊維強化プラスチックを得た。
比較例3と同様に樹脂ペーストを作成してポリプロピレンフィルム上に樹脂ペーストを塗布した後、長さ25mmにカットされたガラス繊維束(引張強度1,500MPa、引張弾性率74GPa、800本)を単位面積あたりの重量が700g/m2になるよう均一に落下、散布した。以後、比較例3と同様に、繊維強化プラスチックを得た。
(比較例5、6)
参考実施例1の切り込みパターンにおいて、切り込みの間隔L(繊維長さ)が異なる以外は、参考実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。それぞれLは、比較例5では7.5mm、比較例6では120mmとした。これに伴い、積層基材において、配向方向が同一である隣接する層において、一方の層の切込プリプレグ基材の切り込みからなる列が、他方の層の切込プリプレグ基材の切り込みからなる列に対し繊維方向に前記間隔Lの0.5倍ずつ、ずれることになり、この繊維長手方向へのずれはそれぞれ、比較例5が3.75mm、比較例6が60mmとなる。
(比較例7)
参考実施例1の切り込みパターンにおいて、切り込みの長さWが異なる以外は参考実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。Wは15mmとした。これに伴い、隣り合う切り込みの列は繊維直交方向に15mmずれている。
参考実施例1の切り込みパターンにおいて、実施例2〜4と同様に回転ローラーを用いて、切り込み長さWが0.025mmとする以外は参考実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。これに伴い、隣り合う切り込みの列は繊維直行方向に0.02mmずれている。
(比較例9、10)
参考実施例1の切込プリプレグ基材の単位面積あたりの炭素繊維重さを変えることにより炭素繊維の体積含有率Vfを変えた以外は参考実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。それぞれ比較例9が単位面積あたりの炭素繊維重さが158g/m2、Vfが70%、比較例10が90g/m2、Vfが40%とした。
2:繊維直交方向
3:強化繊維
4:強化繊維の不連続端
4a:切込プリプレグ基材上面からの切り込み
4b:切込プリプレグ基材下面からの切り込み
4c:切込プリプレグ基材の厚み方向に斜めに入った切り込み
5:互いに切り込んでいる幅
6:繊維方向に対になる切り込みの幾何中心同士の間隔L(繊維長さL)
7:断続的な切り込みの列
7a:第1の断続的な切り込みの列
7b:第2の断続的な切り込みの列
7c:第3の断続的な切り込みの列
7d:第4の断続的な切り込みの列
8:切り込みの幾何中心
9:切り込みを強化繊維の垂直方向に投影した投影長さWs
10:本発明の切込プリプレグ基材
11:プリプレグ基材
12:積層基材
13:積層基材に加わる圧力
14:樹脂の流れ
15:強化繊維の端部の開き
16:切込プリプレグ基材の厚みH
17:互いに切り込んでいる厚みHs
18:切込プリプレグ基材上面の対になる切り込み同士の間隔La
19:切込プリプレグ基材上面の切り込みと対になる切込プリプレグ基材下面の切り込みとの間隔
20:せん断距離S
21:平均繊維分断線
22:切り込みの傾き角度Θ
23:回転ローラー
24:刃
25:ニップローラー
25a:回転速度の速いニップローラー
25b:回転速度の遅いニップローラー
26:切込プリプレグ基材α内の切り込み
27:切込プリプレグ基材β内の切り込み
28:距離0.5X
Claims (12)
- 強化繊維が一方向に引き揃えられたプリプレグ基材であって、該プリプレグ基材の全面に強化繊維を横切る方向へ断続的な切り込みからなる列が複数列設けられており、前記切り込みを強化繊維の垂直方向に投影した投影長さWsが30μm〜1.5mmであり、実質的に強化繊維のすべてが前記切り込みにより分断され、前記切り込みにより分断された強化繊維の繊維長さLが10〜100mmであり、繊維体積含有率Vfが45〜65%の範囲内である切込プリプレグ基材。
- 前記切込プリプレグ基材の厚みHが30〜150μmである、請求項1に記載の切込プリプレグ基材。
- 前記切込プリプレグ基材が炭素繊維と熱硬化性樹脂とから構成される、請求項1または2に記載の切込プリプレグ基材。
- 前記切り込みが繊維直交方向から傾いている、請求項1から3のいずれかに記載の切込プリプレグ基材。
- 前記切り込みが、前記切込プリプレグ基材の上面と下面とのそれぞれから層を厚み方向に貫かずに設けられ、前記切り込みの深さHsが前記切込プリプレグ基材厚みHに対して0.4H〜0.6Hの範囲内であり、上面の任意の切り込みAと、前記切り込みAと繊維長手方向に隣接した上面の切り込みBとの間隔をLaとすると、前記間隔Laが10〜100mmの範囲内であり、前記切り込みAから切り込みB方向への繊維長手方向の移動量0.4La〜0.6Laの範囲内に下面の切り込みCの幾何中心が配置され、上面の切り込みAとBとに囲まれる領域に含まれる強化繊維の一部が、上面の切り込みAと下面の切り込みC、または上面の切り込みBと下面の切り込みCのいずれかにより分断されているとともに、前記上面の切り込みの幾何形状および/または前記下面の切り込みの幾何形状が同一である、請求項1から4のいずれかに記載の切込プリプレグ基材。
- 請求項1から6のいずれか記載の切込プリプレグ基材を含む、強化繊維を一方向に引き揃えられたプリプレグ基材が積層された積層基材であって、前記プリプレグ基材が少なくとも2方向以上に繊維方向が異なる層が積層されている積層基材。
- 前記積層基材が請求項1から6のいずれか記載の切込プリプレグ基材のみからなり、前記切込プリプレグ基材が擬似等方に積層されてなる積層基材。
- 繊維方向が実質的に同一方向である隣接する層において、両層の断続的な切り込みからなる列が等間隔であり、一方の層の前記切込プリプレグ基材の前記切り込みからなる列が、他方の層の前記切込プリプレグ基材の前記切り込みからなる列に対し繊維長手方向にずれて配置されている請求項7または8に記載の積層基材。
- 強化繊維が実質的に一方向に引き揃えられた層が強化繊維の配向が異なる方向に少なくとも2層以上積層されてなる、請求項1に記載の切込プリプレグ基材を用いた繊維強化プラスチックであって、前記繊維強化プラスチックを構成する層として、層の全面に強化繊維を横切る方向へ該強化繊維に垂直方向に投影した長さWcsが30μm〜20mmの範囲内である複数の切り込みを有し、平均厚みHcが15〜150μmの範囲内である切込層を少なくとも1層以上含み、前記切込層において、強化繊維が切り込みによって繊維長さLが10〜100mmの範囲内で分断されており、前記切込層の内少なくとも1層以上が、層を厚み方向に貫かない切り込みが上面と下面とから配されていることを特徴とする繊維強化プラスチック。
- 請求項5に記載の切込プリプレグ基材の製造方法であって、強化繊維を一方向に引き揃えてマトリックス樹脂を含浸して予備プリプレグ基材を準備し、予備プリプレグ基材に、所定の位置に刃を配置した回転刃ローラーを上面と下面との両面から押し当てて、予備プリプレグ基材の厚み方向に層を貫かない切り込みを入れる、切込プリプレグ基材の製造方法。
- 請求項6に記載の切込プリプレグ基材の製造方法であって、強化繊維を一方向に引き揃えてマトリックス樹脂を含浸して予備プリプレグ基材を準備し、予備プリプレグ基材に、予備プリプレグ基材の厚み方向に層を貫く切り込みを入れ、上面と下面とで回転速度の異なるニップローラーを押し当て、強化繊維の分断面を厚み方向に斜めにする、切込プリプレグ基材の製造方法。
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