永久磁石式同期モータは、多岐にわたる産業製品などに使用されており、製品毎に様々な特性や特徴が要求されるが、その1つにトルク脈動の抑制があり、特に、低騒音や低振動が強く要求される製品では、トルク脈動を極めて小さなレベルに抑えなければならない。
例えば、エレベータ巻上機に用いられるモータがその一例であるが、特に、モータトルクの減速機構が用いられないダイレクト駆動方式のエレベータ巻上機の場合、モータトルクがダイレクトにエレベータ乗りかごに伝達するため、モータトルクに脈動があると、エレベータ乗りかごが上下に振動して乗り心地が著しく損なわれることになり、このため、このモータのトルク脈動特性を極めて小さくすることが必要となる。
一方、減速機が取り付けられた減速機構付きのエレベータ巻上機では、この減速機が緩衝材となるため、モータのトルク脈動はこの減速機によって低減され、エレベータ乗りかごに伝達し難い。また、減速機には、歯車が使用される歯車減速機が一般的であって、この減速機自体の振動が大きい。このため、この減速機自体の振動に比べてモータのトルク脈動が充分小さなものであることから、モータのトルク脈動は、実用上、問題となるのが少ない。
ところで、エレベータ巻上機としては、エレベータ乗りかごの振動抑圧(乗り心地の向上)を目的に、減速機構を用いないダイレクト駆動方式の巻上機と永久磁石式同期モータとを組み合わせた構成のものが主流となっているが、このような構成の場合、モータのトルク脈動は、この全周波数成分に関して、時間平均トルクとの対比で数%以下といった極めて小さいレベルですることが必要である。また、ダイレクト駆動方式のエレベータ巻上機用のモータでは、定格100%トルクに対して、最大トルクは概ね200〜300%であり、0%のトルクから最大トルクまでの全負荷領域に関して、上記のように、トルク脈動のレベルを極めて小さく抑えなければならない。なお、定格トルクに対する最大トルクの大きさは、エレベータの種類や用途に応じて異なるが、上記の最大トルクの数値は一般的な数値である。
表面磁石式同期モータで発生するトルク脈動を低減する方法として、従来、図10に示す技術が知られている。
なお、図10は回転子が固定子の内側に配置されたインナロータ型の表面磁石式同期モータの回転軸(図示せず)に垂直な面で見た断面の一部を示す断面図であって、1は永久磁石、1aは外表面、2は回転子鉄心、3は回転子、4は固定子鉄心、5はティース(突極)、6はギャップ(空隙)、7はスキューである。
同図(a),(b)において、回転子3側では、回転子鉄心2の表面に、その表面の円周方向(以下、周方向という)に沿って、回転軸方向(以下、軸方向という)に細長い永久磁石1が複数個配列されて設けられている。また、固定子6側では、固定子鉄心4の内面、即ち、回転子3側の面から突出したティース5が複数個設けられており、ティース5間のスロット内には、巻線(図示せず)が設けられてティース5に巻き付けられている。回転子鉄心2の永久磁石1が設けられた外周面と固定子鉄心4のティース5の先端面との間には、ギャップ7が設けられており、固定子鉄心4のティース5夫々毎に3相の該当する相電流を流すことにより、この回転子2,固定子6間のギャップ7内に回転磁界が生じ、この回転磁界と永久磁石1との電磁作用により、永久磁石1に電磁力が生じて回転子が回転する。
かかるインナロータ型の表面磁石式同期モータでは、従来、トルク脈動を低減するために、図10(a)に示すように、永久磁石1の固定子6側の表面、即ち、外表面1aを円筒面状として、永久磁石1の周方向の断面をかまぼこ形状(以下、かかる断面形状の永久磁石を、周方向の断面がかまぼこ形状の永久磁石という)としたり、図10(b)に示すように、固定子のティース5の側面にスキュー7を形成したりするようにしている。あるいは、回転子3側にスキューを形成したり、図10(a)の方法と図10(b)に示す方法とを組み合わせたりすることも知られており、ダイナミック駆動方式のエレベータ巻上機用の表面磁石式同期モータにも多用されている。
モータのギャップ中の磁束密度の分布を正弦波状に近づけると、トルク脈動が小さくなることは既知であり、図10(a)に示すように、永久磁石1の周方向の断面をかまぼこ形状にすることは、このことに基づくものである。また、図10(b)に示すように、スキュー6を設けることは、軸方向のモータの断面毎に発生するトルク脈動の周期に位相差(時間差)を生じさせ、これによってトルク脈動成分が互いに打ち消し合うようにするものである。
一方、両面が平坦で平行な周方向の断面が長方形状をなす永久磁石(以下、周方向の断面が長方形状の永久磁石という)を用いた表面磁石式同期モータも知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
その一方の例としての特許文献1に記載の表面磁石式のモータは、回転子に設けられる永久磁石の表面の一部までモールド樹脂を被覆して永久磁石を回転子に強固に固定させるものであり、回転子が固定子の内側に配置されたインナロータ型のモータの場合には、周方向の断面が長方形状の永久磁石の周方向両側の辺部から固定子までの間隔が最も狭いから、かかる両側の辺部に内接する包絡円の外側(固定子側)に出ないように、永久磁石の表面の周方向中央部をモールド樹脂で被覆するものである。
回転子が固定子の外側に配置されたアウターロータ型の表面磁石式同期モータの場合には、周方向の断面が長方形状の永久磁石の周方向中央部が固定子までの間隔が最も狭いから、かかる中央部に外接する包絡円の外側(固定子側)に出ないように、永久磁石の表面の周方向両側の辺部をモールド樹脂で被覆するものである。
このようにして、モールド樹脂で永久磁石を回転子に固着すると、モールド樹脂で永久磁石を被覆する部分が多くなり、このため、永久磁石がより堅固に回転子に固着されることになるが、この場合、モールド樹脂は上記の包絡円からはみ出すことがないから、このように永久磁石の表面にモールド樹脂を被覆しない場合に比べ、永久磁石と固定子との間のギャップ量を増加させる必要がなく、このため、コギングトルクやトルク脈動を低減できるというものである。
他方の例としての上記特許文献2に記載の技術は、アウターロータ型のモータでモータ電源オフの状態でのコギングトルクを低減するものである。コギングトルクは、永久磁石の辺部が固定子側のティース間のスロット開口部に対向したときに、この永久磁石の周方向辺部から向かう磁束により、回転子の回転方向とは反対方向に生ずるトルクによって生ずるものであって、上記特許文献2に記載の技術は、永久磁石を回転子に設けられた溝内に装着することにより、永久磁石の周方向の辺部から回転子にもれる磁石を増加させることにより、この周方向の辺部からスロット開口部に向かう磁束を低減し、これにより、コギングトルクを低減するものである。
特願2004ー222455号公報
特開2002ー331986号公報
表面磁石式同期モータでトルク脈動を低減させるための従来技術として、上記のように、図10(a)に示すように、永久磁石の固定子側の表面形状を円筒面状として、この永久磁石の周方向の断面をかまぼこ形状とする技術や、図10(b)に示すように、固定子側または回転子側、あるいはこれら両方にスキューを設ける技術が知られており、これらが一般的に用いられているが、前者の永久磁石の周方向の断面をかまぼこ形状にすることは、永久磁石の減磁耐力に関して不利であるし、また、後者のスキューを設けることは、有効磁束を低下させるという問題があり、かかる問題を解消しようとすると、磁石使用量(磁石を製作するに必要な材料の使用量:質量)の増加やモータの大型化を招くという問題がある。
以下、これらについて説明する。
永久磁石の減磁耐力は、永久磁石自体の物性と厚さによって決まるが、磁石の物性が同じなら、磁石の厚さによって決まり、厚さが厚いほど磁石の減磁耐圧が大きい。
永久磁石1の周方向の断面を示す図11を用いて、上記の周方向の形状がかまぼこ形状の永久磁石1の減磁耐力についてみると、周方向の中央部Bに比べ、周方向の辺部Aで厚さが薄いため、この辺部Aで減磁耐力が小さい。ある程度の減磁耐力が得られるためには、磁石の厚さがある程度以上でなければならないが(一般には、永久磁石の物性や固定子が永久磁石に与える逆磁界の大きさ、磁石の温度などで決まる)、周方向の断面がかまぼこ形状の永久磁石の場合、薄肉部(辺部A)を有するため、減磁耐力に関して不利となるとともに、肉厚部である周方向の中央部Bでは、減磁耐力に余裕がある場合が多い。
ところで、表面磁石式同期モータにおいて、永久磁石の厚さと出力トルクとの関係をみると、磁石の厚さと出力トルクとの間には、比例的な関係が成り立つものの、磁石の厚さの増加の割合に対し、出力トルクの増加の割合は小さいものである。
図12はインナロータ型の24極の表面磁石式同期モータでの磁石の厚さと出力トルクとの関係に関する磁界解析結果を示すものであって、図示するように、磁石の厚さの増加とともに、出力トルクも増加するが、磁石の厚さの増加の割合に対して出力トルクの増加の割合は小さいものであることがわかる。
このことからすると、表面磁石式同期モータにおいて、磁石の質量当りの出力トルクという指標で比較すると、磁石の厚さが大きいモータよりも、磁石の厚さが小さいモータの方が効率がよいと言える。つまり、減磁性能の許す限り、磁石の厚さを薄くした方が、磁石使用量を減らすことができて効率的となる。
図11に示す周方向の断面がかまぼこ形状の永久磁石は、減磁性能に余裕がある厚肉部があるが、この厚肉にしたことによる出力トルクの増加はそれほど期待することはできず、むしろ磁石使用量の増加を招くことに問題がある。これを解消する方法として、図13に示すように、永久磁石を周方向の断面が円弧状とすることが考えられるが、このようにすると、周方向の断面がかまぼこ形状の磁石と同等のトルク脈動の抑制効果を有する場合、かかる周方向の断面がかまぼこ形状の磁石に比べ、磁石使用量を低減することが可能となる。しかし、このような円筒形状をなす永久磁石は、周方向の断面が長方形状の永久磁石に比べ、形状が特殊なものであるから、製作に手間がかかるものとなり、かかる円筒形状の永久磁石を多極の大型モータに使用する場合には、磁石の正作成を著しく損なう上、固定子鉄心の形状も、永久磁石の形状に合わせて複雑にならざるを得ない。
図14は周方向の断面が長方形の永久磁石1A(実線)と周方向の断面がかまぼこ形状の永久磁石1B(破線)とを比較して示す図である。
同図において、矢印Xで示す周方向の断面が長方形状の永久磁石1Aと周方向の断面がかまぼこ形状の永久磁石1Bとは、その周方向の辺部1bの厚さが等しいものとし、周方向の断面が長方形状の永久磁石1Aはその厚さが全体にわたって均一であるが、周方向の断面がかまぼこ形状の永久磁石1Bは、その一方の固定子(図示せず)に対向する面が、破線で示すように、周方向の周辺部1bから周辺方向の中央部1cにわたって円弧状に盛り上がっている。
上記のように、永久磁石の減磁耐力はこの磁石の厚さと物性によってほぼ決まるものであり、周辺部1bで所定の減磁耐力が得られるように、この周辺部1bでの厚さが設定されているとすると、周方向の断面がかまぼこ形状の永久磁石1Bでは、その周方向中央部1cの厚さが周辺部1bの厚さよりも厚いため、この周辺方向中央部1cでの減磁耐力が周辺部1bでの減磁耐力よりも大きくなるが、これはそれだけ減磁耐力に余裕があるというだけであって、無駄なことであり、実質的には、周方向の断面がかまぼこ形状の永久磁石1Bと周方向の断面が長方形状の永久磁石1Aとは、減磁耐力がほぼ同一であるということができる。また、周方向の断面がかまぼこ形状の永久磁石1Bでその周辺方向中央部1cで厚みが増えたといっても、図12で説明したように、これによる出力トルクの増加もそれほど期待できないし、周方向の断面がかまぼこ形状の永久磁石1Bの磁石使用量(質量)も必然的に大きくなる。
一方、周方向の断面が長方形状の永久磁石1Aは、減磁耐力の面でも、その余裕がある部分を生じさせる必要がないから、無駄が少ないし、必要な出力トルクを得るために必要な磁石の大きさ、即ち、磁石使用量を、周方向の断面がかまぼこ形状の永久磁石1Bと比べて、少なくすることができる。また、図13に示した周方向の断面が円弧状の永久磁石に対しては、周方向の断面が長方形状と単純な形状をなしているので、磁石の製作性に優れているとともに、固定子鉄心の形状も簡単なものとなり、その製作性に優れたものとなる。
このように、周方向の断面が長方形状の永久磁石1Aは、周方向の断面がかまぼこ形状の永久磁石1Bや周方向の断面が円弧状の永久磁石に比べ、磁石使用量や製作性の点で優れたものであるが、これを表面磁石式同期モータに使用した場合、トルク脈動の発生が大きな問題となり、これを抑制することが必要である。
ところで、このように、周方向の断面が長方形状の永久磁石1Aを使用した表面磁石式同期モータは、例えば、上記の特許文献1,2で記載のように、既に知られているものである。
上記特許文献1に記載の表面磁石式のモータの場合、インナロータ型の場合には、永久磁石の固定子側の表面を、その表面の周方向両側の辺部で内接する包絡円から外側に出ないように、モールド樹脂で被覆し、アウタロータ型の場合には、永久磁石の固定子側の表面を、その表面の周方向中央部で外接する包絡円から外側に出ないように、モールド樹脂で被覆し、永久磁石と固定子側の表面との間のギャップをこのようにモールド樹脂で被覆しない場合と同様の大きさとして、永久磁石を回転子に強固に固定することができるようにしたものであるが、特許文献1には、これにより、コギングやトルク脈動が充分低減できると記載されている。
しかし、これは、上記のように、永久磁石の表面をモールド樹脂で被覆しても、永久磁石と固定子の表面との間のギャップの大きさが変わらないということから、コギングやトルク脈動が、このようにモールド樹脂で被覆しない場合と同程度に、低減できるというものであり、永久磁石の表面をモールド樹脂で被覆したから、コギングやトルク脈動がより低減したというものではない。
インナロータ型の場合、永久磁石と固定子との間のギャップは、永久磁石の周方向中央部で大きく、永久磁石の周方向両側の辺部で小さいことになるが、この状態のギャップ内での磁束密度の分布は、正弦波状ではなく、矩形波に近いものとなり、トルク脈動の低減を積極的に意図したものではないことは明らかである。
また、上記特許文献2に記載の技術は、永久磁石を回転子に設けた溝に嵌め込んで装着することにより、無通電時のトルク変動、いわゆるコギングトルクの低減に関するものであって、通電回転時のトルク脈動を低減することを意図したものではない。例えば、エレベータ巻上機用のモータは、無通電で使用することはほとんどなく、それよりもむしろ、通電回転時でのトルク脈動を抑圧しなければならない。コギングトルクの低減により、通電回転時のコギングトルクの周波数成分を低減できる可能性はあるものの、それ以外のトルク変動の周波数成分については低減することができず、特に、ダイレクト駆動のエレベータ巻き上げ機用のモータで抑制する必要があるトルク脈動特性として、通電回転時におけるトルク脈動の各周波数成分が夫々時間平均トルクの数パーセント以下のレベルとなるように、レベルを小さく抑えることが必要があるが、上記特許文献2に記載の技術では、トルク脈動特性をこのような小さなレベルに抑えることはできないし、このように抑えるようにするものでもない。
本発明の目的は、かかる問題を解消し、周方向の断面が長方形の永久磁石を用いて、通電回転時におけるトルク脈動を、その各周波数成分が時間平均トルクに対して数パーセント以下となるように、小さなレベルに抑えることができるようにしたアウタロータ型の永久磁石式同期モータを提供することにある。
上記の目的を達成するために、本発明は、固定子鉄心に形成されたティース間のスロット内に固定子巻線が配置され、該固定子巻線が該ティースに集中的に巻き付けられた固定子と、回転子鉄心の前記固定子側の表面に周方向に等間隔に複数の永久磁石が配置された回転子とを備え、回転子を前記固定子の外側に配置したアウタロータ型の永久磁石式同期モータであって、前記固定子の前記スロットは、前記回転子と前記固定子との間のギャップに完全に開放したオープンスロットであり、前記永久磁石は、前記回転子鉄心の前記表面に設けられた溝に嵌め込まれて貼り付けられるとともに、前記永久磁石は、その周方向の断面形状が長方形をなす磁石であって、固定子側の表面が回転子鉄心の表面よりも突出して回転子鉄心に配置され、前記回転子の極ピッチに対する前記永久磁石の周方向の開き角の比率が70%〜90%であることを特徴とする。
また、本発明は、ティースの先端面が、前記回転子側に突出した周方向に円弧状の表面であって、ティースの先端面の周方向の面形状の曲率半径Rtが、前記固定子鉄心の外径Rstに対し、Rt<Rstであることを特徴とする。
さらに、ティースの前記曲率半径Rtの前記固定子鉄心の外径Rstに対する比率が、5%〜40%であることを特徴とする。
また、本発明は、モータ外径の断面幅が軸長よりも大きい薄型モータであることを特徴とする。
また、本発明は、回転子の磁極数が16以上であることを特徴とする。
本発明によると、周方向の断面形状が長方形の永久磁石を用いて、トルク脈動を、その各周波数成分が、全分領域にわたって、時間平均トルクに対して数パーセント以下のレベルとなるように、低減させることが可能となり、しかも、磁石質量(1つ磁石に対する材料の使用量)の低減や製作性の向上を図ることができる。
以下、本発明による実施形態を図面を用いて説明する。
図1は本発明による永久磁石式同期モータの第1の実施形態を示す部分断面図であって、1は永久磁石、2は回転子鉄心、2aは磁石貼り付け面、3は回転子、4はバックコア、5はティース、6は固定子、7はギャップ、9はスロット、10は固定子巻線である。
同図において、この第1の実施形態は、回転子3が固定子8の外側に配置されたアウタロータ型の永久磁石同期モータであって、ここでは、トルク脈動が大きな問題となるダイレクト駆動型エレベータ巻上機用の駆動モータを想定するものであるが、これのみに限定されるものではない。
回転子3は、その回転子鉄心2の内面(ギャップ7側の面)、即ち、磁石貼り付け面2aに複数の永久磁石1が周方向に複数個配列されて設けられた構成をなしており、これら永久磁石1は周方向の断面が長方形をなしている。ここで、これら永久磁石1はS極とN極との永久磁石であって、回転子鉄心2の内面にS極の永久磁石1とN極の永久磁石1とが交互に配列されており、配列されるS極の永久磁石1とN極の永久磁石1との個数は等しく、モータ極数の半分である。
回転子鉄心2の磁石貼り付け面2aには、その周方向に、永久磁石の周方向の幅に等しい幅の凹形状をなす溝が等ピッチで設けられ、かつこれら夫々の溝は、その平面状の底面の周方向中心点での垂線がこの永久磁石式同期モータの回転中心軸に向くように、形成されており、かつ、その側壁は底面に対して垂直面をなしてスキューを設けておらず、かかる溝夫々に永久磁石1が嵌め込まれて貼り付られている。
図2は永久磁石1の回転鉄心2への取り付け状態をより詳細に示す部分断面図であって、1bは永久磁石1の周方向辺部、11は上記の溝、12は永久磁石1の辺部からの磁束であり、図1に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。をつけている。
同図において、永久磁石1が嵌め込まれた溝11は、この永久磁石1の位置ずれを防止する機能を有するものであるが、さらに、永久磁石1の周方向辺部1bからの磁束12を回転鉄心2に漏らし、ギャップ7中の磁束密度の分布を正弦波状にするためでもある。永久磁石1から発生される磁束は、ギャップ(空気)中よりも回転子鉄心2のような磁性体の方に流れ易く、磁束は流れ易い方向に流れる傾向がある。
そこで、回転子鉄心2に溝11を設け、これに永久磁石1を嵌め込んで貼り付けると、この永久磁石1の周方向の辺部1bが磁性体からなる回転子鉄心2の表面に近づくことになり、その分この辺部1bから回転子鉄心2へ流れる磁束の量が多くなって、この辺部1bから固定子6に流れる磁束の量が減少する。このために、永久磁石1の周方向中心部からギャップ7を通って流れる磁束の量が多く、辺部1bからギャップ7を通って流れる磁束の量が少なくなり、このため、永久磁石1と固定子6との間のギャップ7中の磁束密度の分布は正弦波状となる。
図1に戻って、固定子6に設けられたティース(突極)5は、絶縁材(図示せず)で覆われており、ティース5間のスロット9には、固定子巻線10が配置されている。この固定子巻線10は、ティース5を覆う絶縁材の上からティース5の側面に集中的に巻かれて集中巻をなしている。ここでは、固定子6は、例えば、30極36スロットの構成をなしている。ここで、ティース5以外の絶縁材が必要な部位、例えば、固定子6のバックコア4との接触部やスロット中での隣り合う固定子巻線10間などにも、絶縁材によって絶縁処理がなされている。
なお、固定子6と回転子3とのいずれにおいても、スキューは設けられていない。
ここで、周方向の断面が長方形の永久磁石1を用いたアウタロータ型の表面磁石式同期モータとインナロータ型の表面磁石式同期モータとの特性を比較する。
図3は周方向の断面が長方形の永久磁石1を用いたアウタロータ型の表面磁石式同期モータを示す部分断面図であって、図1に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。なお、固定子6側の詳細な形状は省略している。
また、図4は周方向の断面が長方形の永久磁石1を用いたインナロータ型の表面磁石式同期モータを示す部分断面図であって、図1に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。なお、固定子6側の詳細な形状は省略している。
図3において、永久磁石1の外表面1aでの周方向中央部1cから固定子6までのギャップ7の寸法をa、永久磁石1の外表面1aでの周方向辺部1bから固定子6までのギャップ7の寸法をbとすると、a<bである。
図4において、同様にして、永久磁石1の外表面1aでの周方向中央部1cから固定子6までのギャップ7の寸法をa’、永久磁石1の外表面1aでの周方向辺部1bから固定子6までのギャップ7の寸法をb’とすると、a’>b’である。
ここで、a=b’,a’=bとなるように、図3に示すアウタロータ型の表面磁石式同期モータと図4に示すインナロータ型の表面磁石式同期モータとを構成すると、a’>a,b’<bとなるが、両者のギャップ7の平均寸法はほぼ等しくなる。しかし、トルクに最も寄与するギャッブ寸法が小さい部分は、図3に示すアウタロータ型の表面磁石式同期モータの場合、永久磁石1の外表面1aでの周方向中央部1cであり、図4に示すインナロータ型の表面磁石式同期モータの場合、永久磁石1の外表面1aでの周方向両側の辺部1bである。また、永久磁石1の外表面1aでの周方向両側の辺部1bからの磁束は、図2に示すように、その一部が固定子鉄心2に漏れたり、異極性の隣の永久磁石1に漏れたりして、有効磁束が減少してしまうが、永久磁石1の外表面1aでの周方向中央部1cからの磁束は、ほとんど漏れることがなく、有効磁束が大きい。特に、図3に示すアウタロータ型の表面磁石式同期モータの場合、有効磁束が大きい永久磁石1の外表面1aでの周方向中央部1cから固定子6までのギップ寸法aが、インナロータ型の表面磁石式同期モータでの永久磁石1の外表面1aでの周方向中央部1cから固定子6までのギップ寸法a’よりも小さい。
このように、永久磁石1の外表面1aでの周方向両側の辺部1bでは、図3に示すアウタロータ型の表面磁石式同期モータが図4に示すインナロータ型の表面磁石式同期モータよりも、ギャップ寸法が大きいが、有効磁束が少ないものであり、図3に示すアウタロータ型の表面磁石式同期モータが、図4に示すインナロータ型の表面磁石式同期モータよりも、有効磁束が多い永久磁石1の外表面1aでの周方向中央部1cでギャップ寸法が小さいから、磁石質量当りのトルクが大きくなり、この点で、図3に示すアウタロータ型の表面磁石式同期モータの方が有利である。このことからして、この第1の実施形態は、アウタロータ型の表面磁石式同期モータとするものである。
また、図3に示すアウタロータ型の表面磁石式同期モータでは、永久磁石1の外表面1aでの周方向中央部1cでギャップ寸法aが小さく、永久磁石1の外表面1aでの周方向両側の辺部1bでギャップ寸法bが小さいので、永久磁石1を、その周方向の断面をかまぼこ状とした場合と同等の効果が得られるものであり、コギングトルクも含めたトルク脈動の低減が見込めるものとなる。これに対し、図4に示すインナロータ型の表面磁石式同期モータでは、かまぼこ形状とは逆に、永久磁石1の外表面1aでの周方向両側の辺部1bで出っ張り、永久磁石1の外表面1aでの周方向中央部1cでへこんだ形状となるので、ギャップ7内での磁束密度の分布は矩形状となり、かえってトルク脈動が増加することになる。
ところで、図3に示すアウタロータ型の表面磁石式同期モータでは、エレベータ巻上機用の駆動モータに用いる場合、これに必要なトルク脈動特性、即ち、0%〜最大トルクの全負荷領域に対し、トルク変動の各周波数成分が時間平均トルクの数パーセント以下という極めて小さなものとなるトルク脈動特性が得られるようにするためには、回転子3の形状と固定子6の形状とを適正化することが必要となる。
以下では、かかる適正化について説明するが、まず、回転子3の形状の適正化について説明する。
全負荷領域に対してトルク変動の各周波数成分を、上記のように、小さくするためには、回転子3の形状の適正化として、回転子3の極ピッチに対する永久磁石1の周方向の開き角の比率を適切に設定しなければならない。
図5は図1に示す永久磁石1の開き角τpmとトルク脈動との関係を示す特性図であって、同図(a)はこの開き角τpmが適切であるときの状態を、同図(b)はこの開き角τpmが適切でないときの状態を夫々示している。具体的には、同図(a)は永久磁石1の開き角τpmが回転子3の極ピッチτpの82%であるときの状態を、同図(b)は永久磁石1の開き角τpmが回転子3の極ピッチτpの65%であるときの状態を夫々示している。
ここで、図1において、
永久磁石1の開き角τpm:モータの回転中心を原点とし、この原点からみた
永久磁石1の周方向の幅の一端から他端までの角
度。ここで、永久磁石1の周方向の幅を決める
「一端」,「他端」の端部は、永久磁石の外表面
1aとは反対側の面での周方向での端部1dであ
る。
回転子3の極ピッチτp:上記の原点からみた回転子3の1極当りの幅の一
端から他端までの角度。例えば、回転子3の磁極
数を30極とした場合、回転子3の極ピッチτp
は、機械角で360゜/30=12゜となる。
永久磁石1の開き角τpmと回転子3の極ピッチτpとのかかる定義によると、例えば、永久磁石1の開き角τpmを10゜、回転子3の極ピッチτpを12゜とすると、回転子3の極ピッチτpに対する永久磁石1の開き角τpmの比率は、
10゜×100/12゜=83.33%
となる。
また、図11はトルク変動の1次〜6次成分を示しているが、これら成分は、
1次成分:トルク変動の周波数が同期周波数の6倍
2次成分:トルク変動の周波数が同期周波数の12倍
3次成分:トルク変動の周波数が同期周波数の18倍
4次成分:トルク変動の周波数が同期周波数の24倍
5次成分:トルク変動の周波数が同期周波数の30倍
6次成分:トルク変動の周波数が同期周波数の36倍
である。
製作寸法誤差のない理想的な永久磁石式同期モータの場合、1次成分はモータ通電時に発生するトルク脈動の基本成分であり、2次成分は、ここでは、回転子3と固定子6の突極数の関係で決まるコギングトルクの基本成分である。また、同期周波数は、極数と回転速度から求められる値であって、極数をP、回転速度をN(r/min)とすると、同期周波数=(N/60)×(P/2)(Hz)となる。
図5(a),(b)では、横軸をトルク、縦軸を時間平均トルクに対するトルク変動の比率としているが、トルクが0%のときのトルク脈動は、百分率で表わすと、無限大となってしまうので、省略している。
ところで、トルク変動の各周波数成分が時間平均トルクの数パーセント以下という極めて小さなものとなるトルク脈動特性が得られるように、トルク脈動を充分に低減するためには、永久磁石1の開き角τpmの適正化ばかりでなく、固定子6の形状も適正化されなければならない。
図5は固定子6の形状も適正化されたときのトルク脈動の特性を示すものであるが、図5(a)は永久磁石1の開き角τpmが、上記のように、回転子6の極ピッチτpに対する永久磁石1の開き角τpmの比率を82%として、適正化されているものであり、図5(b)は永久磁石1の開き角τpmが、上記のように、回転子6の極ピッチτpに対する永久磁石1の開き角τpmの比率を65%として、適正化されていないものである。
図5(a)に示すトルク脈動特性では、トルク脈動の各周波数成分が、全負荷領域(ほぼ0%〜最大トルクの領域全体)にわたって、かなり小さなレベルに抑えられており、大きいレベルでも、概ね0.8%以下となっている。
これに対し、固定子6の形状も適正化されているが、永久磁石1の開き角τpmが適正化されていない図5(b)の場合には、図5(a)に比べて、全体的にトルク脈動が大きく、特に、低負荷領域(低トルク領域)では、2次成分が極端に大きく、逆に高負荷領域では、1次成分が極端に大きくなっていることがわかる。なお、モータの極数とスロット数とで決まるコギングトルクの基本波は、上記のように、2次成分に含まれる。
このように、固定子6の形状も適正化されているが、永久磁石1の開き角τpmが適正化されていない図5(b)の場合には、トルク脈動の特性の劣化が極端に現われ、このような劣化したトルク脈動特性を持つ表面磁石式同期モータは、エレベータ巻上機用の駆動モータとしては、不適切である。
全負荷領域に対するトルク変動の各周波数が時間平均トルクに対して数パーセント以下という極めて小さいトルク脈動特性を得るためには、固定子6の形状も適正化された状態で、永久磁石1の開き角τpmを、回転子3の極ピッチに対し、70%〜90%にすることが適切である。
ここで、固定子6の形状の適正化について説明する。
ここで、図1において、固定子巻線10が納まるスロット9の形状について注目すると、このスロット9の形状は、ギャップ7側の開口部が完全に開放されたものであり、かかるスロット9をオープンスロットという。
これに対し、図6はセミクローズドスロットの一般的な形状を示す断面図であって、9’はスロット、13は突起部であり、前出図面に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
同図において、スロット9’のギャップ側の開口部が部分的に閉じるように、ティース5に先端側部に突起部13が設けられており、かかるスロット9’がセミクローズドスロットの一般的な形状である。
このようなセミクローズドスロット9’の場合、ティース5の先端部の突起部13により、その周辺部で磁束密度が極端に高くなる傾向があり、磁気飽和を起こし易い。これは、この突起部13の付近の磁路断面が、他の部位に比べ、小さいことが主原因であるが、モータの体積当りの出力トルクが大きいモータ、つまり積極的に小型化されているモータほど磁路断面を可能な限り縮小していることが多いため、磁束密度が極端に高くなって磁気飽和を生ずるという特性が顕著に現われる。エレベータ巻上機用の駆動モータも、小型化が1つの重要に課題となっており、かかる特性が現われ易い。このようなモータは、トルク脈動の大きさが磁気飽和のレベルに影響され易くなるため、エレベータ巻上機用の駆動モータのように、特定の負荷領域だけではなく、全負荷領域に対してトルク脈動を抑制する必要がある場合には、トルク脈動の抑制と小型化の両立が難しくなる。また、回転子や固定子にトルク脈動の抑制に大きな効果があるスキューを設けない場合には、トルク脈動の抑制と小型化の両立がますます難しくなる。
そこで、この第1の実施形態では、全負荷領域に対するトルク脈動の抑制を図るために、固定子6の形状として、図1に示すように、スロット9をオープンスロットとするものである。これによると、ティース5の先端部に磁路断面が小さな突起部がないため、磁束密度が極端に高い部分が存在しない。従って、全負荷領域に対するトルク脈動の抑制やコントロールが、図6に示すセミクローズドスロットの場合に比べ、容易なものとなる。
また、この第1の実施形態では、図1において、ティース5の先端面を周方向で回転子3側に突出した円弧状にする。ここで、各ティース5の先端面の回転子3側に最も突出している周方向の中心部が内接するモータの回転中心(原点)を中心とする円(固定子鉄心の周面)Cを想定し、この円Cの半径(固定子鉄心の外径(半径))をRstとする。また、ティース5の先端面の周方向の円弧の曲率半径をRtとすると、Rt<Rstとする。これにより、ティース5の先端面が円Cから回転子3側に突出することがない。
このように、この第1の実施形態では、固定子6側の形状の1つとして、Rt<Rstとすることにより、トルク脈動の低減を図るものである。
図7はRt=Rstであるときのトルク脈動を示す特性図であって、図5に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
同図において、この場合には、ティース5の先端面が円Cに一致している。ここでは、回転子3の形状は、図5(a)の場合と同じで適正化されているが、図5(a)では、円Cの半径Rstに対して、ティース5の先端面の周方向の円弧の曲率半径Rtも適正化されているものであり、回転子3の形状も、また、固定子6の形状も適正化されている。
図7に示す特性図を図5(a)に示す特性図と比較すると、トルク脈動の大きさが全体的に大きくなっており、特に、低負荷領域では、2次成分が極端に大きくなっている。2次成分はコギングトルクの基本周波数を含むので、Rt<Rstとすることにより、回転子3が回転する際の磁場の変化が滑らかとなり、ゴギングトルクの低減効果が出るし、1次成分のようなトルク脈動を低減することも可能となる。
ここで、ティース5の先端面の周方向の円弧の曲率半径Rtを適正化するためには、円Cの半径Rstに対する曲率半径Rtの比率の上限を40%とする。この上限値を超えると、全負荷領域にわたってトルク脈動を抑制することが困難となり、特に、図7に示すように、低負荷時のトルク脈動が上昇する。
図8は円Cの半径Rstに対する曲率半径Rtの比率を4.5%とし、他の条件を図7の場合と等しくした場合のトルク脈動を示す特性図であって、図5に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
円Cの半径Rstに対する曲率半径Rtの比率を小さくすると、図7に示す特性に比べ、低負荷時のトルク脈動が小さくなって全負荷領域でのトルク脈動が低減されていくが、この比率が小さくなり過ぎると、図8に示すように、高負荷時のトルク脈動の1次成分が急激に上昇する。回転子3の形状が適正化されていない場合には、この傾向がより顕著に現われ、エレベータ巻上機用の駆動モータとしては、不適切な特性となる。
図8に示す特性から高負荷時のトルク脈動を低減するためには、円Cの半径Rstに対する曲率半径Rtの比率を高めればよく、この比率の下限値を5%とすることにより、低,高負荷時でのトルク脈動の上昇がなく、全負荷領域全体にわたって、トルク変動の各周波数成分が時間平均トルクの数パーセント以下となるように、トルク脈動が低減された特性が得られるものである。
以上のように、この第1の実施形態は、アウタロータ型の表面磁石式同期モータであって、回転子3側では、回転子鉄心2にスキューのない溝11(図2)を設けて、この溝11に周方向の断面が長方形の永久磁石1を嵌め込んで固定するとともに、回転子3の形状として、永久磁石1の開き角τpmを、回転子3の極ピッチに対し、70%〜90%とすることにより、回転子3の形状を適正化し、固定子6側では、スロット9をオープンスロットとするとともに、固定子6の形状として、ティース5の先端面を回転子3側に突出した周方向に円弧状とし、この先端面の曲率半径Rstの固定子6の外径Rtに対する比率を5〜40%とすることにより、固定子6の形状を適正化するものである。
以上のようにして、トルク脈動の小さい表面磁石式同期モータが実現可能となるが、ダイレクト駆動型のエレベータ巻上機用の駆動モータに使用する場合には、モータ形状を偏平(薄型)にすることが必要であり、又、偏平であるが故に、回転子の磁極数が多い多極モータとする必要がある。
エレベータ巻上機は、機械室あるいはエレベータ昇降路内に設置されるが、一般に、エレベータ巻上機を設置するスペースでの床面積(断面積)は小さく、高さ方向の許容空間は床面積に比べて大きい場合が多い。従って、エレベータ巻上機の外観形状は、断面席(床面積)が小さく、高さ方向が大きくなる傾向がある。これは、エレベータ機器を設置する場所が、建物内のデットゾーンであり、デットゾーンを、横方向ではなく、高さ方向に向けることにより、建物の居住面積や商業面積を拡大することを主な狙いとすることによるものである。
エレベータ巻上機用の駆動モータについても、同様のことが必要であり、特に、ダイレクト駆動型のエレベータ巻上機用の駆動モータの外観形状としては、外径幅よりも、軸長の方が小さい偏平形状のモータである場合が多い。これは、モータの軸長が大きいエレベータ巻上機は、軸長が大きい分床面積を大きくすることを必要とするが、逆に、モータの軸長が小さいエレベータ巻上機は、必要とする床面積を縮小することができるためである。
しかし、モータの軸長を小さくすると、その分モータが発生するトルクが小さくなる。これに対し、モータに必要なトルクは変わらないので、モータの軸長を小さくした分を補間するために、モータの外径を拡大することが必要となる。このことが、エレベータ巻上機用の駆動モータとして偏平形状のものが多いことの主な理由である。
以上のことから、ダイレクト型のエレベータ巻上機用の駆動モータは、大口径の偏平モータ(大口径の薄型モータ)であるのが一般的であり、過去の実績によると、モータ外径は400mm以上であることが多く、大きいものは、1500mmを超えるものもある。モータの軸長は様々であるが、概ね外径の半分以下であり、軸長が外径の1/10という超薄型のモータが使用される場合もある。
回転子の磁極数は、モータ外径に比例して増加するのが通常であるが、エレベータ巻上機用の駆動モータは、上記のように、外径が大きいため、16極や24極,30極,40極,60極などの多極モータが使用され、最小極数は、実績として、16極である。
上記の第1の実施形態も、このような大口径の薄型モータとすることもできるものであり、これにより、ダイレクト型のエレベータ巻上機用の駆動モータとすることを可能にする。
図9は本発明による永久磁石式同期モータの第2の実施形態を示す部分断面図であって、14は空隙であり、前出図面に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
同図において、この第2の実施形態は、回転子3での永久磁石1が嵌め込まれた溝11の周方向両側の辺部(即ち、永久磁石1の外表面1aとは反対側の面側での周方向両側の辺部が対向した部分)に空隙14を設けたものである。
永久磁石1の溝11に嵌め込まれた部分の辺部に空隙14を設けることにより、この部分の磁気抵抗が増加し、このため、かかる辺部での有効磁束が減少し、図10に示す従来の表面磁石式同期モータのように、周方向の断面がかまぼこ形状の永久磁石を用いたのと同等の効果が得られ、トルク脈動を低減することができる。
なお、この第2の実施形態では、固定子6として、例えば、図6に示すような従来の一般的に構造のものとすることができるが、図1に示す構造のものとしてもよい。また、図1において、溝11(図2)内に、この第2の実施形態と同様の空隙14を設けるようにしてもよい。
また、この第2の実施形態も、このような大口径の薄型モータとすることもできるものであり、これにより、ダイレクト型のエレベータ巻上機用の駆動モータとすることを可能にする。
以上説明したように、上記各実施形態においては、周方向の断面が長方形の永久磁石1を用いることにより、上記のかまぼこ形状の永久磁石を用いる場合と比べ、磁石の質量を削減でき、また、製作性も優れたものである上、トルク脈動特性を効果的に低減して、トルク特性が良好な表面磁石式同期モータを実現可能とするものであり、例えば、エレベータ巻上機用の駆動モータなどに最適である。