本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施例は、少なくともふたつの無線装置によって構成されるMIMOシステムに関する。無線装置のうちの一方は、送信装置に相当し、他方は、受信装置に相当する。送信装置は、複数の系列によって構成されるパケット信号を生成する。また、複数の系列のそれぞれは、シングルキャリア信号によって構成される。なお、シングルキャリア信号のうちの先頭部分には、プリアンブル信号が配置されている。また、受信装置は、送信装置からのパケット信号を受信すると、パケット信号に含まれたプリアンブルをもとに伝送路特性を推定し、伝送路特性を使用しながら、パケット信号を復調する。ここで、プリアンブルは、受信装置において系列を区別できるような信号パターンとして規定されるべきである。そのような場合であっても、プリアンブルの期間の増加を抑制するために、本実施例に係る送信装置と受信装置とは、次の処理を実行する。
送信装置は、プリアンブルを周波数領域に変換した場合、系列ごとに異なった周波数にピークを有するように、プリアンブルのパターンを規定する。例えば、系列の数が「2」であり、かつプリンアンブルのパターンをFFTにて変換した場合に、ひとつ目の系列のプリアンブルが奇数番目の周波数ポイントにピークを有し、ふたつ目の系列のプリアンブルが偶数番目の周波数ポイントにピークを有する。受信装置は、プリアンブルを受信すると、FFTにて周波数領域に変換する。また、受信装置は、奇数番目の周波数ポイントの値をもとに、ひとつ目の系列に対する伝送路特性を推定し、偶数番目の周波数ポイントの値をもとに、ふたつ目の系列に対する伝送路特性を推定する。なお、このような伝送路特性は、周波数領域にて導出される。さらに、受信装置は、周波数領域の伝送路特性をIFFTにて時間領域に変換することによって、タップ係数を導出する。受信装置は、タップ係数を使用しながら、パケット信号に対して、時空間等化信号処理を実行する。
図1は、本発明の実施例に係る通信システム100の構成を示す。通信システム100は、送信装置10、受信装置50を含む。また、送信装置10は、送信用アンテナ12と総称される第1送信用アンテナ12a、第2送信用アンテナ12b、第3送信用アンテナ12c、第4送信用アンテナ12dを含み、受信装置50は、受信用アンテナ14と総称される第1受信用アンテナ14a、第2受信用アンテナ14b、第3受信用アンテナ14c、第4受信用アンテナ14dを含む。
通信システム100の構成として、MIMOシステムの概略を説明する。パケット信号は、送信装置10から受信装置50に送信される。送信装置10は、第1送信用アンテナ12aから第4送信用アンテナ12dのそれぞれから、複数の系列のデータをそれぞれ送信する。その結果、データレートが高速になる。受信装置50は、第1受信用アンテナ14aから第4受信用アンテナ14dによって、複数の系列のデータを受信する。さらに、受信装置50は、アダプティブアレイ処理によって、受信したデータを分離して、複数の系列のデータを独立に復調する。
ここで、送信用アンテナ12の本数は「4」であり、受信用アンテナ14の本数も「4」であるので、送信用アンテナ12と受信用アンテナ14の間の伝送路の組合せは「16」になる。第i送信用アンテナ12iから第j受信用アンテナ14jとの間の伝送路特性をhijと示す。図中において、第1送信用アンテナ12aと第1受信用アンテナ14aとの間の伝送路特性がh11、第1送信用アンテナ12aから第2受信用アンテナ14bとの間の伝送路特性がh12、第2送信用アンテナ12bと第1受信用アンテナ14aとの間の伝送路特性がh21、第2送信用アンテナ12bから第2受信用アンテナ14bとの間の伝送路特性がh22、第4送信用アンテナ12dから第4受信用アンテナ14dとの間の伝送路特性がh44と示されている。なお、これら以外の伝送路は、図の明瞭化のために省略する。
図2は、送信装置10の構成を示す。送信装置10は、IF部20、変調部22、プリアンブル付加部24、RF部26、送信用アンテナ12と総称される第1送信用アンテナ12a、第2送信用アンテナ12b、制御部28を含む。図1において、送信装置10は、4つの送信用アンテナ12を備えたが、説明を簡潔にするために、ここでは、ふたつの送信用アンテナ12を備えるものとする。
IF部20は、外部から送信の対象となるデータを受けつける。また、IF部20は、受けつけたデータに対して誤り訂正の符号化を実行し、符号化したデータをふたつの系列に分離して出力する。変調部22は、IF部20から、ふたつの系列のデータを受けつける。また、変調部22は、ふたつの系列のデータのそれぞれに対して、変調を実行する。ここで、変調方式は、任意のものでよい。変調部22は、ふたつの系列の変調データを出力する。プリアンブル付加部24は、変調部22から、ふたつの系列の変調データを受けつける。また、プリアンブル付加部24は、ふたつの系列の変調データを予め定めた長さにまとめる。また、プリアンブル付加部24は、まとめた変調データをパケット信号に格納する。ここで、パケット信号は、ふたつの系列にて形成されている。さらに、プリアンブル付加部24は、ふたつの系列によって形成されるパケット信号のうち、先頭部分の期間にプリアンブルを付加する。
図3(a)−(b)は、送信装置10から送信されるパケット信号のフォーマットを示す。図3(a)は、パケット信号全体のフォーマットを示す。ひとつ目の系列は、「第1AGC用プリアンブル」、「第1タップ用プリアンブル」、「データ」によって形成されており、ふたつ目の系列は、「第2AGC用プリアンブル」、「第2タップ用プリアンブル」、「データ」によって形成されている。第1AGC用プリアンブルおよび第2AGC用プリアンブル(以下、「AGC用プリアンブル」と総称する)は、図示しない受信側にAGC制御を実行させるための既知信号である。第1タップ用プリンアンブルおよび第2タップ用プリアンブル(以下、「タップ用プリアンブル」と総称する)は、受信側にタップ係数を導出させるための既知信号である。これは、受信側に伝送路特性を推定させるための既知信号ともいえる。なお、前提として、受信側には、複数のタップが備えられているが、その構成は後述する。データは、変調部22から受けつけたふたつの系列の変調データに相当する。なお、パケット信号には、図示しない制御信号等が含まれてもよいが、ここでは説明を省略する。
図3(b)は、タップ用プリアンブルの構成を示す。第1タップ用プリアンブルのパターンは、ふたつの「P1」というサブパターンに分割される。なお、第1タップ用プリアンブルに含まれるサブパターンの数は、パケット信号の系列数に応じて規定される。ここでは、パケット信号の系列数と同一の値に規定される。また、「P1」は、任意の信号パターンを示しており、例えば、複数のシンボルにて形成される。一方、第2タップ用プリアンブルのパターンは、「P2」、「−P2」というサブパターンに分割される。ここで、「−P2」は、「P2」の位相を反転させた信号パターンに相当している。
つまり、系列内のふたつのサブパターンのそれぞれは、同一の信号パターンから生成されている。また、ひとつ目の系列では、ふたつのサブパターンが同一の位相であるのに対して、ふたつ目の系列では、ふたつのサブパターンが反転の位相であるので、サブパターン間における信号パターンの位相関係は、系列ごとに異なるように規定されている。ここで、「P1」の信号パターンと「P2」の信号パターンは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。なお、AGC用プリアンブルの構成については説明を省略するが、図示しない受信側においてふたつの系列を区別できるようなパターンが規定されていればよい。
このようなタップ用プリアンブルは、ふたつの系列のそれぞれに配置した既知信号のパターンを周波数領域に変換した場合に、周波数領域での信号強度の相対的に強い周波数が系列ごとに異なるように規定されている。図4は、タップ用プリアンブルの周波数特性を示す。横軸が周波数を示し、縦軸が信号強度を示す。また、実線が第1タップ用プリアンブルの周波数特性を示し、点線が第2タップ用プリアンブルの周波数特性を示す。各タップ用プリアンブルの周波数特性において、最大値と最小値とが周波数方向に繰り返し出現する。また、各タップ用プリアンブル間において、最大値の周波数と最小値の周波数とが互いに異なっている。
特に、第1タップ用プリアンブルの周波数特性での最大値と、第2タップ用プリアンブルの周波数特性での最小値とが、同一の周波数を示し、第2タップ用プリアンブルの周波数特性での最大値と、第1タップ用プリアンブルの周波数特性での最小値とが、同一の周波数を示す。これは、隣接した第1タップ用プリアンブルの周波数特性での最大値と、第2タップ用プリアンブルの周波数特性での最大値との間の周波数によって、タップ用プリアンブルにFFTを実行した場合に、両者の最大値が異なったFFTポイントに出現することに相当する。例えば、第1タップ用プリアンブルの周波数特性での最大値が奇数番目のFFTポイントに出現し、第2タップ用プリアンブルの周波数特性での最大値が偶数番目のFFTポイントに出現する。図2に戻る。
プリアンブル付加部24は、図3(a)のごとく生成したパケット信号を出力する。RF部26は、プリアンブル付加部24からパケット信号を受けつける。ここで、パケット信号は、ベースバンド帯域の信号に相当し、RF部26は、パケット信号に対して直交変調を実行することによって、ベースバンド帯域から中間周波数帯域へ周波数変換する。さらに、RF部26は、中間周波数帯域のパケット信号を周波数変換することによって、無線周波数帯域のパケット信号を生成する。RF部26は、無線周波数帯域のパケット信号を増幅した後に、送信用アンテナ12を介して送信する。なお、RF部26から送信されるパケット信号は、シングルキャリア信号である。制御部28は、送信装置10全体のタイミング等を制御する。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされた通信機能のあるプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
図5は、受信装置50の構成を示す。受信装置50は、受信用アンテナ14と総称される第1受信用アンテナ14a、第2受信用アンテナ14b、RF部60、時空間合成処理部62、導出部64、第1復調部66a、第2復調部66bと総称される復調部66、IF部68、制御部70を含む。図1において、受信装置50は、4つの受信用アンテナ14を備えたが、説明を簡潔にするために、ここでは、ふたつの受信用アンテナ14を備えるものとする。
RF部60は、ふたつの受信用アンテナ14を介して、複数の系列によって形成されたパケット信号を受信する。前述のごとく、パケット信号の先頭部分の期間には、AGC用プリアンブルとタップ用プリアンブルとが配置されている。なお、タップ用プリアンブルのパターンは、図3(b)のように規定されている。ここで、パケット信号は、シングルキャリア信号である。また、パケット信号は、無線周波数帯域の信号であり、RF部60は、無線周波数帯域から中間周波数帯域へパケット信号を周波数変換する。さらに、RF部60は、中間周波数帯域のパケット信号に対して直交検波を実行することによって、バースバンド帯域のパケット信号を生成する。さらに、RF部60は、AGCを備えており、パケット信号に含まれたAGC用プリアンブルをもとに増幅率を設定した後に、パケット信号を増幅する。なお、AGCの詳細は説明を省略する。
時空間合成処理部62は、時空間合成処理部62からパケット信号を受けつける。また、時空間合成処理部62は、パケット信号に対して、時空間等化信号処理を系列ごとに実行する。つまり、時空間合成処理部62は、ひとつの系列に対して、ふたつの受信用アンテナ14のそれぞれに対応するような等化器を備えており、さらにふたつの等化器の出力を加算する。加算結果が当該系列に対する合成信号に相当する。また、別の系列に対しても同様に構成がなされている。つまり、時空間合成処理部62には、4つの等化器が備えられている。最終的に、時空間合成処理部62は、系列ごとに合成信号を出力する。一方、時空間合成処理部62は、導出部64から4つの等化器に対するタップ係数を受けつける。なお、時空間合成処理部62は、パケット信号を受けつけてから、導出部64からのタップ係数を受けつけるまでの間、受けつけたパケット信号を遅延させる。
導出部64も、時空間合成処理部62からパケット信号を受けつける。また、導出部64は、パケット信号に含まれたタップ用プリアンブルをもとに、時空間合成処理部62において使用すべきタップ係数を系列ごとに導出する。なお、導出部64におけるタップ係数の導出方法は後述するが、導出部64は、タップ用プリアンブルの期間において動作する。第1復調部66aは、時空間合成処理部62から、ひとつ目の系列に対応した合成信号を受けつける。また、第1復調部66aは、ひとつ目の系列に対応した合成信号を復調し、復調結果を出力する。一方、第2復調部66bは、時空間合成処理部62から、ふたつ目の系列に対応した合成信号を受けつけ、第1復調部66aと同様に復調を実行する。IF部68は、復調部66から、ふたつの系列に対応した復調結果を受けつける。また、復調部66は、ふたつの系列に対応した復調結果を合成し、合成結果に対して誤り訂正の復号を実行する。さらに、IF部68は、復号したデータを出力する。つまり、IF部68は、図2のIF部20に対応した処理を実行する。制御部70は、受信装置50全体のタイミングを制御する。
図6は、時空間合成処理部62の構成を示す。時空間合成処理部62は、合成部80と総称される第1合成部80a、第2合成部80bを含む。また、合成部80は、等化部82と総称される第1等化部82a、第2等化部82b、加算部84を含む。ここで、第1合成部80aは、ひとつ目の系列に対する時空間合成処理を実行し、第2合成部80bは、ふたつ目の系列に対する時空間合成処理を実行する。
第1等化部82aは、図示しない第1受信用アンテナ14aに接続されており、直列に接続された複数のタップを備える。また、第1等化部82aは、複数のタップにて、入力した信号を逐次遅延させる。また、第1等化部82aは、図示しない導出部64から複数のタップ係数を受けつけ、遅延させた信号とタップ係数とを乗算する。最終的に、第1等化部82aは、複数のタップのそれぞれに対する乗算結果を加算して出力する。また、第2等化部82bは、図示しない第2受信用アンテナ14bに接続されており、第1等化部82aと同様の処理を実行する。このような第1等化部82aの処理は、導出部64からの複数のタップ係数を受けつけたタイミングより開始される。それまでの間、入力した信号は遅延される。加算部84は、第1等化部82aからの加算結果と、第2等化部82bからの加算結果とを加算する。加算部84での加算結果が、ひとつ目の系列に対する合成信号に相当する。また、第2合成部80bも、同様の処理を実行する。
図7は、導出部64の構成を示す。導出部64は、FFT部110と総称される第1FFT部110a、第2FFT部110b、計算部112と総称される第1計算部112a、第2計算部112b、IFFT部114と総称される第1IFFT部114a、第2IFFT部114b、第3IFFT部114c、第4IFFT部114dを含む。また、計算部112は、抽出部116、相関部118を含む。
第1FFT部110aは、図示しない第1受信用アンテナ14aに接続されており、入力したパケット信号に含まれたタップ用プリアンブルの部分をFFTにて周波数領域に変換する。第1FFT部110aは、図4において隣接した第1タップ用プリアンブルの周波数特性での最大値と、第2タップ用プリアンブルの周波数特性での最大値との間の周波数にて動作する。そのため、図4における第1タップ用プリアンブルの周波数特性での最大値と、第2タップ用プリアンブルの周波数特性での最大値とが、FFTポイントに一致する。第1FFT部110aは、周波数領域に変換したタップ用プリアンブルの部分を出力する。第2FFT部110bは、図示しない第2受信用アンテナ14bに接続されており、第1FFT部110aと同様に動作する。
抽出部116は、FFT部110から受けつけた周波数領域の値から、奇数番目のFFTポイントの値を抽出する。つまり、抽出部116は、第1タップ用プリアンブルに対応した値を抽出する。抽出部116は、抽出した値を相関部118へ出力する。相関部118は、周波数領域の第1タップ用プリアンブルの値を予め記憶する。相関部118は、周波数を一致させながら、抽出した値と周波数領域の第1タップ用プリアンブルの値とを対応づける。相関部118は、対応づけた値同士を乗算する。その際、周波数領域の第1タップ用プリアンブルの値は、複素共役にされている。
以上の処理によって、相関部118は、奇数番目のFFTポイントに対する周波数特性を導出する。また、相関部118は、隣接したふたつの周波数特性をもとに内挿補間を実行することによって、その間の偶数番目のFFTポイントに対する周波数特性を導出する。相関部118は、周波数特性の逆特性を出力する。つまり、相関部118は、FFT部110において変換した周波数領域の値をもとに、系列ごとに異なったプリアンブルのパターンを使用しながら、各系列に対する周波数領域での伝送路特性を計算する。
第1IFFT部114aは、図示しない第1受信用アンテナ14aに対応した周波数特性の逆特性を時間領域に変換することによって、第1受信用アンテナ14aに対応したタップ係数を導出する。また、第2IFFT部114bは、図示しない第2受信用アンテナ14bに対応した周波数特性の逆特性を時間領域に変換することによって、第2受信用アンテナ14bに対応したタップ係数を導出する。また、第1IFFT部114aと第2IFFT部114bから出力されるタップ係数が、ひとつ目の系列に対応したタップ係数に相当する。また、第2計算部112b、第3IFFT部114c、第4IFFT部114dも、同様の処理を実行することによって、ふたつ目の系列に対応したタップ係数を導出する。
以上の構成による受信装置50の動作を説明する。ふたつの受信用アンテナ14を介して、ふたつの系列にて形成されたパケット信号を受信する。また、FFT部110は、パケット信号のうちのタップ用プリアンブルの部分に対してFFTを実行することによって、周波数領域の信号を生成する。抽出部116は、周波数領域の信号から、ひとつ目の系列に対応した部分を抽出する。例えば、抽出部116は、奇数番目のFFTポイントの値を抽出する。また、抽出部116は、周波数領域の信号から、ふたつ目の系列に対応した部分を抽出する。相関部118は、ひとつ目の系列に対応した部分と、予め記憶した周波数領域のタップ用プリアンブルの値とをもとに、ひとつ目の系列に対する周波数特性を導出する。
ここで、周波数領域のタップ用プリアンブルは、ひとつ目の系列に対応するものとする。なお、相関部118は、ふたつ目の系列に対しても同様の処理を実行する。IFFT部114は、周波数特性の逆特性に対してIFFTを実行することによって、ひとつ目の系列に対応したタップ係数と、ふたつ目の系列に対応したタップ係数とを生成する。時空間合成処理部62は、ひとつ目の系列に対応したタップ係数を使用しながら、受信したパケット信号を時空間等化処理することによって、ひとつ目の系列に対応した合成信号を導出する。また、復調部66は、ひとつ目の系列に対応した合成信号を復調する。なお、時空間合成処理部62、復調部66は、ふたつ目の系列に対しても同様の処理を実行する。
これまで、パケット信号を形成する系列の数は、「2」であるとしていた。しかしながら、系列の数は、2に限定されず、それ以外の値であってもよい。ここでは、系列の数が「4」である場合を説明する。なお、変形例に係る送信装置10の構成は、図2と同様のタイプであるが、4つの系列にて形成されたパケット信号を処理できるように拡張されている。また、変形例に係る受信装置50の構成は、図5と同様のタイプであるが、4つの系列にて形成されたパケット信号を処理できるように拡張されている。
図8は、変形例に係るパケット信号のフォーマットを示す。ここでは、タップ用プリアンブルの部分のみを示す。各系列は、4つのサブパターンにて形成されている。ここで、サブパターン数は、系列数に一致する。ひとつ目の系列は、「P1」、「P1」、「P1」、「P1」の順に配置されている。また、ふたつ目の系列は、「P2」、「jP2」、「−P2」、「−jP2」の順に配置されている。ここで、「j」は、位相を90°回転させる演算に相当する。3つ目の系列は、「P3」、「−P3」、「P3」、「−P3」の順に配置されている。4つ目の系列は、「P4」、「−jP4」、「−P4」、「jP4」の順に配置されている。
以下に別の変形例を説明する。別の変形例は、これまでと同様に、複数の系列によって形成されたパケット信号であって、かつシングルキャリア信号によって形成されたパケット信号を使用する無線装置に関する。しかしながら、これまでは、複数の系列に対して、MIMO方式を実行しているが、変形例では、MIMO方式を実行せずに、複数の系列を合成した後に送信する。また、これまでは、バースト信号のプリアンブルに対する信号パターンに関するが、変形例では、バースト信号においてプリアンブルに続くデータに対する信号パターンに関する。また、少なくともひとつの系列にパイロット信号が含まれている。その場合、データおよびパイロット信号は、受信装置において系列を区別できるような信号パターンとして規定されるべきである。これに対応するために別の本変形例に係る送信装置と受信装置とは、次の処理を実行する。なお、以下の説明において、データのみを「データ」ということもあれば、データとパイロット信号との組合せを「データ」ということもある。
送信装置は、データを周波数領域に変換した場合、系列ごとに異なった周波数にピークを有するように、データのパターンを規定する。例えば、系列の数が「2」であり、かつデータをFFTにて変換した場合に、ひとつ目の系列のデータが奇数番目の周波数ポイントにピークを有し、ふたつ目の系列のデータが偶数番目の周波数ポイントにピークを有する。また、送信装置は、いずれかの系列、例えば、奇数番目の系列にパイロット信号を配置させる。受信装置は、データを受信すると、FFTにて周波数領域に変換する。また、受信装置は、奇数番目の周波数ポイントの値を抽出するが、これはパイロット信号に相当する。そのため、受信装置は、パイロット信号をもとに周波数領域において伝送路特性を推定し、これを偶数番目の周波数ポイントにも展開する。この展開には、例えば、補間が使用される。さらに、受信装置は、周波数領域の伝送路特性をIFFTにて時間領域に変換することによって、タップ係数を導出する。受信装置は、タップ係数を使用しながら、パケット信号に対して、等化信号処理を実行する。
図9は、本発明の別の変形例に係る送信装置10の構成を示す。送信装置10は、IF部20、変調部22、パイロット信号記憶部150、生成部152、合成部154、RF部26、送信用アンテナ12、制御部28を含む。ここで、系列の数は、「4」であるとする。また、バースト信号の信号部分には、これまでと同様に、プリアンブルが配置されているが、以下では、データの部分のみを説明し、プリアンブルについては、説明を省略する。
IF部20は、外部から送信の対象となるデータを受けつける。また、IF部20は、受けつけたデータに対して誤り訂正の符号化を実行し、符号化したデータを複数の系列に分離して出力する。送信装置10において生成される系列の数は、前述のごとく、「4」であり、そのうちのひとつは、パイロット信号に相当するので、IF部20は、「3」つの系列にデータを分離する。変調部22は、3つの系列のデータのそれぞれに対して、変調を実行する。
生成部152は、4つの系列のそれぞれを周波数領域に変換した場合に、周波数領域での信号強度の相対的に強い周波数が系列ごとに異なるように、各系列に対する信号のパターンを規定する。つまり、生成部152は、少なくとも系列の数に対応した回数だけ、各系列内において同一のシンボルを繰り返し、かつ同一のシンボルを繰り返す際の位相関係のパターンを系列ごとに異ならせることによって、各系列を生成する。具体的に説明すると、図8と同様のパターンによって各系列が生成される。つまり、生成部152は、ひとつ目の系列として、シンボル「P1」を受けつける。生成部152は、系列数「4」だけ、「P1」を繰り返す。その際、生成部152は、ひとつ目の系列に対する位相関係として規定されたパターン「+」、「+」、「+」、「+」を使用する。その結果、図8のごとく、「P1」、「P1」、「P1」、「P1」が生成される。
また、生成部152は、ふたつ目の系列として、シンボル「P2」を受けつける。生成部152は、系列数「4」だけ、「P2」を繰り替える。その際、生成部152は、ふたつ目の系列に対する位相関係として規定されたパターン「+」、「+j」、「−」、「−j」を使用する。その結果、図8のごとく、「P2」、「jP2」、「−P2」、「−jP2」が生成される。さらに、生成部152は、3つ目の系列、4つ目の系列に対しても同様に処理する。その結果、3つ目の系列、4つ目の系列として、「P3」、「−P3」、「P3」、「−P3」と、「P4」、「−jP4」、「−P4」、「jP4」とが生成される。
ここで、4つ目の系列が、パイロット信号に相当するので、4つ目の系列に含まれるシンボルが既知信号である。また、パイロット信号は、パイロット信号記憶部150に記憶されており、パイロット信号記憶部150は、パイロット信号を出力する。最終的に、生成部152は、図8のように示した信号のパターンをシンボル数だけ繰り返すことによって、複数の系列を生成する。生成部152は、4つの系列を合成部154へ出力する。合成部154は、生成部152から4つの系列を受けつける。また、合成部154は、4つの系列を合成することによってひとつのバースト信号を生成する。なお、合成は、時間領域においてなされればよい。合成部154は、合成したバースト信号をRF部26へ出力する。
RF部26は、合成部154からバースト信号を受けつける。ここで、バースト信号は、ベースバンド帯域の信号に相当し、RF部26は、バースト信号に対して直交変調を実行することによって、ベースバンド帯域から中間周波数帯域へ周波数変換する。さらに、RF部26は、中間周波数帯域のバースト信号を周波数変換することによって、無線周波数帯域のパケット信号を生成する。RF部26は、無線周波数帯域のバースト信号を増幅した後に、送信用アンテナ12を介して送信する。なお、RF部26から送信されるバースト信号は、シングルキャリア信号である。制御部28は、これまでと同様に送信装置10全体のタイミング等を制御する。
図10は、本発明の別の変形例に係る受信装置50の構成を示す。受信装置50は、受信用アンテナ14、RF部60、FFT部170、分離部172、IFFT部174、再生部176、復調部66、IF部68、制御部70を含む。また、再生部176は、伝送路推定部178、補間部180、IFFT部182を含む。
RF部60は、4つの系列によって形成されたバースト信号を受信する。前述のごとく、バースト信号では、4つの系列のそれぞれを周波数領域に変換した場合に、周波数領域での信号強度の相対的に強い周波数が系列ごとに異なるように、各系列に対する信号のパターンが規定されている。ここで、バースト信号は、シングルキャリア信号である。RF部60は、受信したバースト信号をバースバンド帯域に変換した後にFFT部170へ出力する。FFT部170は、RF部60からバースト信号を受けつける。また、FFT部170は、バースト信号に対してFFTを実行することによって、バースト信号を周波数領域の信号へ変換する。ここで、系列間の周波数特性の最大値の差をもとに、FFTの速度は定められている。
分離部172は、FFT部170から周波数領域の信号を受けつける。周波数領域の信号における各周波数に対応した値は、4つの系列のうちのいずれかに対応づけられるように関係づけられている。分離部172は、当該関係を使用して、周波数領域の信号を4つの系列に分離する。伝送路推定部178は、分離部172において分離した4つの系列のうち、パイロット信号が配置された系列を抽出する。また、伝送路推定部178は、抽出した系列もとに、伝送路特性を推定する。伝送路特性の推定には、公知の技術が使用されればよいが、パイロット信号に対応した周波数での伝送路特性が推定される。伝送路推定部178は、推定した伝送路特性を補間部180へ出力する。
補間部180は、伝送路推定部178から推定した伝送路特性を受けつける。補間部180は、伝送路特性値に対して補間を実行することによって、周波数領域の信号における各周波数に対応した伝送路特性を導出する。補間部180は、導出した伝送路特性をIFFT部182へ出力する。IFFT部182は、伝送路特性に対してIFFTを実行することによって、時間領域の伝送路特性を導出する。また、補間部180は、時間領域の伝送路特性を復調部66へ出力する。
IFFT部174は、分離部172から3つの系列の値を受けつける。特に、IFFT部174は、パイロット信号が配置された系列以外を受けつける。IFFT部174は、各系列の値のそれぞれに対してIFFTを実行する。なお、分離部172において周波数領域の信号の一部が抽出されることによって、各系列は形成されている。そのため、IFFT部174において変換の対象となる各系列のポイント数は、分離部172での分離前の周波数領域の信号のポイント数よりも少ない。そのため、IFFT部174は、変換する前に、所定の系列に対して、他の系列に対応した周波数を「0」にて補間する。例えば、IFFT部174は、第1の系列に対して、第2の系列から第4の系列に対応した周波数を「0」にて補間する。IFFT部174は、時間領域の各系列を復調部66へ出力する。
復調部66は、IFFT部182から時間領域の伝送路特性を受けつけ、IFFT部174から時間領域の各系列を受けつける。また、復調部66は、適応等化器によって構成されており、複数のタップを含む。復調部66は、時間領域の伝送路特性の逆特性を求めることによって、タップ係数を求める。復調部66は、タップ係数を使用しながら、各系列に対して等化処理を実行する。なお、タップ係数の導出は、IFFT部182においてなされてもよい。さらに、復調部66は、等化処理した各系列を復調する。復調部66は、復調した各系列をIF部68へ出力する。IF部68は、復調部66から、3つの系列に対応した復調結果を受けつける。また、IF部68は、3つの系列に対応した復調結果を合成し、合成結果に対して誤り訂正の復号を実行する。さらに、IF部68は、復号したデータを出力する。制御部70は、受信装置50全体のタイミングを制御する。以上の説明において、別の変形例では、系列数が「4」であるとしたが、これに限定されるものではない。
本発明の実施例によれば、複数の系列のそれぞれに配置した既知信号のパターンを周波数領域に変換した場合に、周波数領域での信号強度の相対的に強い周波数が系列ごとに異なるように、既知信号のパターンを規定するので、系列間の干渉量を低減できる。また、系列間の干渉が低減されるので、シングルキャリア方式にてMIMO方式を実現する場合に、プリアンブルの期間の増加を抑制できる。また、系列内の複数のサブパターンのそれぞれを同一の信号パターンから生成するとともに、サブパターン間における信号パターンの位相を系列ごとに異なるように規定するので、周波数領域での信号強度の相対的に強い周波数が系列ごとに異なることを実現できる。また、タップ係数プリアンブルに対してFFTを実行するので、各系列に対応した部分を容易に抽出できる。また、各系列に対応した部分が抽出されるので、系列を分離できる。また、時空間等化処理を実行するので、データに対するFFTを回避できる。また、データに対するFFTが回避されるので、処理量を低減できる。
また、複数の系列のそれぞれを周波数領域に変換した場合に、周波数領域での信号強度の相対的に強い周波数が系列ごとに異なるように、各系列に対する信号のパターンを規定するので、少なくともひとつの系列にパイロット信号を配置できる。また、周波数領域での信号強度の相対的に強い周波数が系列ごとに異なるように、各系列に対する信号のパターンを規定するので、シングルキャリア信号でありながら、データ中にパイロット信号を挿入できる。また、データ中にパイロット信号が挿入されているので、受信特性を向上できる。また、周波数領域での信号強度の相対的に強い周波数が系列ごとに異なるように、各系列に対する信号のパターンを規定するので、受信側において、複数の系列を容易に分離できる。また、受信側において、複数の系列が容易に分離されるので、アンテナ数がひとつであっても複数の系列にて形成された信号を処理できる。
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
10 送信装置、 12 送信用アンテナ、 14 受信用アンテナ、 20 IF部、 22 変調部、 24 プリアンブル付加部、 26 RF部、 28 制御部、 50 受信装置、 60 RF部、 62 時空間合成処理部、 64 導出部、 66 復調部、 68 IF部、 70 制御部、 80 合成部、 82 等化部、 84 加算部、 100 通信システム。