JP5219032B2 - 水素同位体含有ガス除去装置およびそれに用いる吸着装置 - Google Patents
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Description
また、この発明は、上記した水素同位体含有ガス除去装置に用いて好適な吸着装置に関するものである。
さらに、本発明の水素同位体含有ガス除去装置は、現状にあっても、比較的大容量のトリチウム含有ガスの発生や漏洩を伴うおそれがある原子力や放射性物質取り扱い施設において、トリチウムの回収装置としても使用することができる。
核融合炉の燃料としては、一日で約1kgのトリチウムが使われる。従って、このガスの一部、例えば1Ciすなわち3.7×1010Bqが何らかの事故で容積:1000m3の室内に漏れ出た場合を想定しても、放射能濃度は1cc当たり約37Bqで、これは法律で規定された排出濃度限度の1万倍である。
例えば非特許文献1では、被処理ガスを酸素と水素を共に200℃以上に加熱した貴金属触媒酸化器に送り、ここで水素を水にしてモレキュラーシーブ(商標登録)で代表されるゼオライト等の固体乾燥材に吸着させて回収する方法が開示されている。
「Tritium Process Laboratory at the JAERI (Y. Naruse et al.:Fusion Engineering and Design Vol.12 P 293-318 (1990))」
また、モレキュラシーブを充填した吸着塔の利点は、吸着した水分を加熱脱離させ、モレキュラシーブを再利用することにあるので、吸着塔1基の容積はなるべく小さくし、繰り返し使用することが求められる。しかしながら、吸着塔の再生に要する時間は、加熱、脱水、冷却の各工程を合わせると半日以上はかかるので、頻繁な吸湿再生操作を繰り返して実施することは、多量のガスを処理する目的には必ずしも有効ではない。
かような水分を吸湿する固体乾燥材の吸湿率は、固体乾燥材の質量の1%程度にすぎないため、生成した水分を回収するためにモレキュラーシーブ粒子等のペブル状の固体乾燥材を用いる装置では充填量が極めて多くなり、その結果、流体抵抗も大きくなり、装置も大型化する。また、流体抵抗が上がると、ポンプの容量が増し、圧力も高まり、水素同位体ガスが系外へ漏洩し易くなるので、安全のために装置の耐圧性が要求される。
さらに、吸湿材であるモレキュラシーブに吸着された水分を脱離させる再生操作のための加熱器や加熱ガスを流すための設備への負担も大きいので、流通系と熱系の負担低減も併せて要望されていた。
その結果、以下に述べる知見を得た。
(1) 従来から使用されてきたモレキュラシーブ等の吸湿材を、単味でハニカム構造とすることはできなかったが、この点については適量の造形材を混合して成型することにより解決することができる。
(2) また、吸湿能を向上させるには、ハニカム構造とした吸湿部材を前段と後段に2分割し、前段の吸湿材としては湿分捕集容量の大きい吸湿材を、一方後段の吸湿材としては平衡圧の低い吸湿材を用いることが有効である。
(3) さらに、酸化触媒塔に比べると、吸湿乾燥塔の方が吸湿材の充填量も多く、圧力損失も過大になるため、吸湿材は吸湿と脱湿再生を繰り返すことが要求されるが、この点については、使用するハニカム構造吸湿部材を回転式にして、湿潤ガスを流通させる流路とこれとは逆方向から乾燥ガスを通過させる流路とを併設することにより、常に吸湿と脱着再生を行うことができる。
本発明は上記の知見に立脚するものである。
1.トリチウムを含む水素および水素化合物ガスを酸化させ、該酸化により生じた水分を含む湿潤ガス中から水分を捕集する吸湿部材を収納した吸着装置であって、該吸湿部材がハニカム構造になり、かつ該ハニカム構造の吸湿部材が、吸湿材に対し15〜40mass%の造形材を混合して成型したものであることを特徴とする水素同位体含有ガス除去装置用の吸着装置。
また、本発明の水素同位体含有ガス除去装置に従い、酸化触媒および吸湿部材としてハニカム構造のものを用いることにより、圧力損失を大幅に下げて、大風量の気体を処理できるので、ポンプへの負荷を軽減できるだけでなく、配管・容器系の耐圧性を向上させることができ、その結果、コンパクトで経済性および信頼性の高い浄化装置を提供することができる。
図1に、本発明で対象とする水素同位体含有ガス除去装置の要部を模式で示す。図中、符号1はフィルタ、2は冷却凝縮器、3は酸化装置、そして4が吸着装置であり、5は排気ポンプである。なお、図示は省略したが、酸化装置3と吸着装置4の間には、吸着装置4における負担を低減するため、湿分回収を行う予備冷却器を配置することもできる。また、通常、フィルタの出側には処理対象ガスを吸引する送風器が、該送風器の吐出側には処理対象ガスを所定温度に予熱する予熱器がそれぞれ設けられている。
なお、メタンガスの処理に際しては、300℃以上の高温にしたメタン用酸化装置6でメタンガスを酸化することが好ましい。
ここに、造形材を15〜40mass%混合することにした理由は、吸湿材単味では、必要な強度および造形性が得られないからである。
すなわち、本発明で対象とするハニカム構造の吸湿部材としては、吸湿性能だけでなく、強度および造形性が必要とされるのであるが、造形材の比率が15mass%(下限)に満たないと必要とする強度および造形性が得られず、一方40mass%(上限)を超えると吸湿性能の低下を招くからである。
また、造形材としては、やはりある程度の吸湿性を有するものが好ましく、特にセピオライト(珪酸マグネシウム)系造形材が有利に適合するが、その他にも、通常の珪酸塩系の粘土などを使用することもできる。
ここに、ガスの通路を形成するハニカムの各孔の大きさは、円相当径で0.5〜2mm程度とすることが好ましい。というのは、ハニカム孔の大きさが0.5mm(下限)に満たないと、十分な流体抵抗の低減が望めず、一方2mm(上限)を超えると吸湿性能の低下を招くからである。
実験に用いた部材は次のとおりである。
・ハニカム構造吸湿部材
吸湿構造材:(カルシウムアルミネート)、ハニカム孔径:1mm
・ペブル状吸湿部材A
吸湿材:モレキュラーシーブ4A、粒径:約3.2mm(1/8インチ)
・ペブル状吸湿部材B
吸湿材:モレキュラーシーブ4A、粒径:約1.6mm(1/16インチ)
実験に用いた吸湿部材は次のとおりである。
・ペブル状吸湿部材
吸湿材:ゼオライト、モレキュラーシーブ4A、粒径:約1.68mm
・ハニカム構造吸湿部材X
吸湿材:モレキュラーシーブ4A、造形材:(セピオライトと珪酸塩,含有量:50mass%)、ハニカム孔径:1mm
・ハニカム構造吸湿部材Y
吸湿材:モレキュラーシーブ4A、造形材:(セピオライト,含有量:20mass%)、ハニカム孔径:1mm
・実験条件
ハニカム吸湿剤形状と寸法、直径:20mm、長さ:30mm、体積:9.42cm3、
試験ガス:空気、湿分分圧:1000Pa(約1%)、流量:200cm3/min、温度:313K
図中、番号8がモジュール化したハニカムモジュール、9がこれらを複数束組み合わせて大容量のガス処理に対応可能にした大型のハニカムモジュール組立体である。
すなわち、回転機能を備えるハニカム構造吸湿部材の流路の一部に、一端から湿潤ガスを流通させて吸湿を行う一方、ハニカム構造吸湿部材の残りの流路に、他端から回収用に脱湿させた乾燥ガスの一部を環流して逆方向から流通させることにより、吸湿と再生を同時並行的に行うことができるのである。
さて、酸化装置を出た湿潤ガス12は、水分凝縮器11を通して湿分を低下させたのち、この例でハニカム構造吸湿部材10の上半分の流路に一端から供給すると同時に、排出された乾燥ガス13の一部を当該回転式ハニカム構造吸湿部材の下半分の流路に他端から逆方向に再生用乾燥ガス14として送風する。このように再生用乾燥ガス14を、回転しているハニカム構造吸湿部材10に通すことにより、ハニカム構造吸湿部材10に吸着していた水分は再生用乾燥ガス14に回収され、その結果、ハニカム構造吸湿部材10の吸湿部位は除湿されて再生されることになる。なお、吸湿した再生用乾燥ガス15は水分凝縮器11に送られ、ここで湿分が低下されて、再利用される。
かような二層構造にすれば、前段で高露点の湿分を取り除くことができ、また後段で十分低い露点まで水分を取ることができるので、より一層吸湿効果を高めることができる。
この構造の有効性は、前段の吸湿材に流入する前の凝縮器で露点を十分下げることができないか、もしくはそうした凝縮器を設置されない場合に特に顕著である。また、吸湿保持量が少ない場合は上記回転式のハニカム材の回転速度を上げる必要が出てくる。しかし、回転速度を上げすぎると十分な再生、すなわち脱湿が困難になることも予想される。
なお、2層構造化した場合も圧力損失は、単一の場合と基本的に変わらない。すなわち、圧力損失は本処理のようにガスの流れがゆっくりな層流の場合、孔径に反比例し、長さに比例するからである。
なお、本発明において、水分捕集容量が大きいとは、湿分分圧に比例して吸湿率が増すシリカゲル1g当り約0.5gまたはそれ以上の水分を捕集するものをいう。ちなみに、モレキュラーシーブで代表されるゼオライトは約0.3g/g、セピオライトは0.15g/g程度である。また、水分の捕集しやすさや逆に発散のしやすさは比表面積に依存し、シリカゲル吸湿材の比表面積が450〜700m2/gであるのに対して、ゼオライトは約150m2/gである。一方、平衡圧が低い吸湿材とは、ここでは吸湿後の露点が-40℃以下をいい、ゼオライトは-60℃以下である。
このように、シリカゲルは分圧が上がるほど吸湿量が増える一方、平衡圧も高くなるが、モレキュウラーシーブは分圧が一定以上になっても平衡圧は余り変わらない。従って、処理ガスの湿度が高いほど、シリカゲルが吸湿に有効に作用し、最終的な低い露点の平衡圧はモレキュラーシーブで実現できる。
すなわち、本発明の水素同位体含有ガス除去装置は、トリチウムを含む水素および水素化合物ガスを酸化させる酸化触媒をそなえる酸化装置と、該酸化により生じた水分を含む湿潤ガス中から水分を捕集する吸湿部材をそなえる吸着装置を有するものであって、酸化装置としてハニカム構造の酸化触媒を収納した酸化装置を用いると共に、吸着装置として、上述したような本発明に従う吸着装置を用いるものである。
また、このハニカム構造の酸化触媒のハニカムの各孔の大きさについては、ハニカム構造吸湿部材の場合と同じく、円相当径で0.5〜2mm程度とすることが好ましい。
2 冷却凝縮器
3 酸化装置
4 吸着装置
5 排気ポンプ
6 メタン用酸化装置
7 吸着装置
8 ハニカムモジュール
9 ハニカムモジュール組立体
10 回転式のハニカム構造吸湿部材
10A ハニカム構造吸湿部材の前段
10B ハニカム構造吸湿部材の後段
11 予備冷却器(水分凝縮器)
12 湿潤ガス
13 乾燥ガス
14 再生用乾燥ガス
15 吸湿した再生用乾燥ガス
Claims (6)
- トリチウムを含む水素および水素化合物ガスを酸化させ、該酸化により生じた水分を含む湿潤ガス中から水分を捕集する吸湿部材を収納した吸着装置であって、該吸湿部材がハニカム構造になり、かつ該ハニカム構造の吸湿部材が、吸湿材に対し15〜40 mass%の造形材を混合して成型したものであることを特徴とする水素同位体含有ガス除去装置用の吸着装置。
- 前記吸湿材がゼオライト系吸湿材からなり、また前記造形材がセピオライト系造形材からなることを特徴とする請求項1記載の吸着装置。
- 前記ハニカム構造の吸湿部材の吸湿材として、前段に水分捕集容量の大きい吸湿材を、一方後段に平衡圧の低い吸湿材を用いることを特徴とする請求項1記載の吸着装置。
- 前記ハニカム構造の吸湿部材が、回転式であって、前記湿潤ガスを流通させる流路と、該流路を通過させることにより除湿された乾燥ガスの一部を逆方向から通過させることにより吸湿部材の脱湿を司る流路をそなえることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の吸着装置。
- トリチウムを含む水素および水素化合物ガスを酸化させる酸化触媒をそなえる酸化装置と、該酸化により生じた水分を含む湿潤ガス中から水分を捕集する吸湿部材をそなえる吸着装置を有する水素同位体含有ガス除去装置において、該酸化装置としてハニカム構造の酸化触媒を収納した酸化装置を用いると共に、該吸着装置として、請求項1乃至4のいずれかに記載のハニカム構造の吸湿部材を収納した吸着装置を用いることを特徴とする水素同位体含有ガス除去装置。
- 前記ハニカム構造の酸化触媒および前記ハニカム構造の吸湿部材を、それぞれモジュール化し、処理効率、装置形状および処理規模に応じて当該モジュールの装荷量を最適化することを特徴とする請求項5記載の水素同位体含有ガス除去装置。
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