以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。この発明の一実施形態による電解質は、例えば溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩とを含むいわゆる液状の電解液を含む。溶媒は、例えば有機溶媒などの非水溶媒が好ましく、化3で表された化合物を含有するものである。
〔式中、R1、R2、R3およびR4は、水素基、またはメチル基、エチル基を表す。X、Y、Zは、硫黄(S)または酸素(O)を表す。ただし、X、Y、Zの全てが硫黄(S)である場合(X=Y=Z=S)およびX、Y、Zの全てが酸素(O)である場合(X=Y=Z=O)を除く。〕
この溶媒は、化3で表された化合物を含有するので、高温においても電解液の分解反応などを抑制できる。よって、電池に用いた場合には、高温においても、サイクル特性を向上させることができるとともに、高温保存特性も向上できる。したがって、この溶媒を用いた電池を高温状況下に放置しても、また高温状況下で使用しても、優れた特性を得ることができる。
化3で表された化合物としては、具体的に例えば化4の(4−1)〜(4−12)で表された化合物を挙げることができる。
また、化3で表された化合物のなかでも、化5で表された化合物がより優れた高温特性を得ることができる点から好ましい。
〔式中、R1、R2、R3およびR4は、水素基、またはメチル基、エチル基を表す。X、Yは、硫黄(S)または酸素(O)を表す。X、Yの全てが酸素(O)である場合(X=Y=O)を除く。〕
また、化3で表された化合物の含有量は、より優れた高温特性を得ることができる点から、溶媒に対して、0.01重量%以上50重量%以下が好ましい。
さらに、溶媒としては、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)などの不飽和結合を有する環状炭酸エステルをさらに含むことが好ましい。電解液の化学安定性を向上でき、優れた高温特性を得ることができるからである。さらに、不飽和結合を有する環状炭酸エステルの含有量は、0.01重量%以上5重量%以下が好ましい。
さらに溶媒としては、化6で表された環状炭酸エステルのR1、R2、R3、R4中の水素原子の一部または全部をフッ素(F)原子、塩素(Cl)原子または臭素(Br)原子で置換した化7で表されたハロゲン化環状炭酸エステルをさらに含むものであることが好ましい。高温においても例えば電解液の分解反応などを、さらに抑制できるからである。よって、例えばこの溶媒を電池に用いた場合には、サイクル特性をさらに向上できるとともに、高温保存特性および高温使用特性もさらに向上できる。したがって、この溶媒を用いた電池を高温状況下に放置しても、また高温状況下で使用しても、さらに優れた特性を得ることができる。
(式中、R1、R2、R3およびR4は、水素原子、メチル基またはエチル基である。)
(式中、R1、R2、R3およびR4は、水素基、ハロゲン基、またはメチル基、エチル基あるいはこれらの一部の水素をハロゲン基で置換した基を表し、それらの少なくとも一つはハロゲンを有する基である。)
化7で表された化合物として、具体的には、例えば化8の(8−1)〜(8−18)を挙げることができる。
また、溶媒としては、化7で表された化合物のなかで、化8の(8−1)で表された4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンおよび化8の(8−2)で表された4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンのうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。より優れた高温特性が得られるからである。さらに、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンは、トランス体が好ましい。特に優れた高温特性が得られるからである。
さらに、従来より使用されている種々の非水溶媒を混合して用いてもよい。このような非水溶媒としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピロニトリル、N,N−ジメチルフォルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、ジメチルスルフォキシド、リン酸トリメチルなどが挙げられる。これらは単独で混合して使用してもよく、複数種を混合して用いてもよい。また、複数種の溶媒を混合して用いる場合には、比誘電率が30以上の高誘電率溶媒と、粘度が1mPa・s以下の低粘度溶媒とを混合して用いることが好ましい。これにより高いイオン伝導性を得ることができるからである。
さらに、より優れた充放電容量特性および充放電サイクル特性を実現するためには、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む溶媒を用いることが好ましい。
[電解質塩]
電解質塩としては、化9で表された軽金属塩を含むことが好ましい。この化9で表された軽金属塩は、負極の表面に安定な被膜を形成し、溶媒の分解反応を抑制することができるからである。化9で表された軽金属塩は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
(式中、R11は化10、化11または化12に示した基を表し、R12はハロゲン基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基またはハロゲン化アリール基を表し、X11およびX12は酸素(O)または硫黄(S)をそれぞれ表し、M11は遷移金属元素または短周期型周期表における3B族元素、4B族元素あるいは5B族元素を表し、M21は短周期型周期表における1A族元素あるいは2A族元素またはアルミニウム(Al)を表し、aは1〜4の整数であり、bは0〜8の整数であり、c、d、eおよびfはそれぞれ1〜3の整数である。)
(式中、R21は、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基またはハロゲン化アリーレン基を表す。)
(式中、R23、R24は、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基またはハロゲン化アリール基を表す。)
また、化9で表された軽金属塩としては、化13で表された化合物が好ましい。
(式中、R11は化14、化15または化16に示した基を表し、R13はハロゲンを表し、M12はリン(P)またはホウ素(B)を表し、M21は短周期型周期表における1A族元素あるいは2A族元素またはアルミニウム(Al)を表し、a1は1〜4の整数であり、b1は0、2または4であり、c、d、eおよびfはそれぞれ1〜3の整数である。)
(式中、R21は、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基またはハロゲン化アリーレン基を表す。)
(式中、R22は、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基またはハロゲン化アリール基を表す。)
化13で表された軽金属塩として、より具体的には、化17で表されたジフルオロ[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウム、化18で表されたジフルオロビス[オキソラト−O,O’]リン酸リチウム、化19で表されたジフルオロ[3,3,3−トリフルオロ−2−オキシド−2−トリフルオロメチルプロピオナト(2−)−O,O’]ホウ酸リチウム、化20で表されたビス[3,3,3−トリフルオロ−2−オキシド−2−トリフルオロメチルプロピオナト(2−)−O,O’]ホウ酸リチウム、化21で表されたテトラフルオロ[オキソラト−O,O’]リン酸リチウム、および化22で表されたビス[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウムが挙げられる。
さらに、電解質塩としては、上述した軽金属塩に加えて、他の軽金属塩のいずれか1種または2種以上を混合して用いることが好ましい。保存特性などの電池特性を向上させることができると共に、内部抵抗を低減させることができるからである。
他の軽金属塩としては、例えば、LiB(C6 H5 )4 、LiCH3 SO3 、LiCF3 SO3 、LiAlCl4 、LiSiF6 、LiCl、LiBr、LiPF6 、LiBF4 、LiB(OCOCF3 )4 、LiB(OCOC2 F5 )4 、LiClO4 、LiAsF6 や、LiN(CF3 SO2 )2 、LiN(C2 F5 SO2 )2 あるいはLiN(C4 F9 SO2 )(CF3 SO2 )などの化23に示したリチウム塩、またはLiC(CF3 SO2 )3 などの化24で表されるリチウム塩を挙げることができる。
また、他の軽金属塩としては、化25で表されるリチウム塩を挙げることができ、化25で表されたリチウム塩としては、例えば、化26で表された1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミドリチウム、化27で表された1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミドリチウム、化28で表された1,3−パーフルオロブタンジスルホニルイミドリチウム、化29で表された1,4−パーフルオロブタンジスルホニルイミドリチウムがより好ましく挙げられる。さらに化30で表されたパーフルオロへプタン二酸イミドリチウムのようなリチウム塩が挙げられる。
(式中、Rは炭素数2〜4の直鎖状または分岐状パーフルオロアルキレン基を表す。)
中でも、LiPF6 、LiBF4 、LiClO4 、LiAsF6 、化23で表されたリチウム塩、化24で表されたリチウム塩、化25で表されたリチウム塩からなる群のうちの少なくとも1種を含むようにすれば、より高い効果を得ることができると共に、高い導電率を得ることができるので好ましく、LiPF6 と、LiBF4 、LiClO4 、LiAsF6 、化23で表されたリチウム塩、化24で表されたリチウム塩および化25で表されたリチウム塩よりなる群のうちの少なくとも1種とを混合して用いるようにすれば、さらに好ましい。
電解質塩の含有量(濃度)は、溶媒に対して、0.3mol/kg以上3.0mol/kg以下の範囲内であることが好ましい。この範囲外ではイオン伝導度の極端な低下により十分な電池特性が得られなくなるおそれがあるからである。そのうち、化9に示した軽金属塩の含有量は、溶媒に対して0.01mol/kg以上2.0mol/kg以下の範囲内であることが好ましい。この範囲内においてより高い効果を得ることができるからである。
なお、電解質は、高分子化合物に電解液を保持させたゲル状の電解質を用いてもよい。ゲル状の電解質は、イオン伝導度が室温で1mS/cm以上であるものであればよく、組成および高分子化合物の構造に特に限定はない。電解液(すなわち液状の溶媒および電解質塩)については上述のとおりである。高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンとポリヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンあるいはポリカーボネートが挙げられる。特に、電気化学的安定性の点からは、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンあるいはポリエチレンオキサイドの構造を持つ高分子化合物を用いることが望ましい。電解液に対する高分子化合物の添加量は、両者の相溶性によっても異なるが、通常、電解液の5質量%以上50質量%未満に相当する高分子化合物を添加することが好ましい。
また、電解質塩の含有量は、電解液の場合と同様である。但し、ここで溶媒というのは、液状の溶媒のみを意味するのではなく、電解質塩を解離させることができ、イオン伝導性を有するものを広く含む概念である。よって、高分子化合物にイオン伝導性を有するものを用いる場合には、その高分子化合物も溶媒に含まれる。
上述したような電解質を用いて、例えば、種々の形状およびサイズのリチウム電池などの二次電池を作製することが可能である。以下にこの発明の一実施形態による電解質を用いた電池の第1の例について説明する。
(電池の第1の例)
図1は、この発明の一実施形態による電解質を用いた二次電池の第1の例の断面構造を示す。この二次電池は、いわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、帯状の正極21と負極22とがセパレータ23を介して積層し巻回された巻回電極体20を有している。
電池缶11は、例えばニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12、13がそれぞれ配置されている。
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶11の内部は密閉されている。
電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。
熱感抵抗素子16は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものである。ガスケット17は、例えば絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
巻回電極体20の中心には、例えば、センターピン24が挿入されている。巻回電極体20の正極21にはアルミニウム(Al)などよりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケル(Ni)などよりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
図2は、図1に示した巻回電極体20の一部を拡大して表すものである。正極21は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体21Aと、正極集電体21Aの両面に設けられた正極活物質層21Bとを有している。なお、正極活物質層21Bが片面のみに存在する領域を有するようにしてもよい。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム箔、ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質として、電極反応物質であるリチウム(Li)を吸蔵および放出することが可能な正極材料を含んで構成されている。
リチウム(Li)を吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、あるいはこれらを含む固溶体(Li(Nix Coy Mnz )O2 )(x、yおよびzの値は0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1である。)、あるいはマンガンスピネル(LiMn2 O4 )などのリチウム複合酸化物、またはリン酸鉄リチウム(LiFePO4 )などのオリビン構造を有するリン酸化合物が好ましい。高いエネルギー密度を得ることができるからである。
また、リチウム(Li)を吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムあるいは二酸化マンガンなどの酸化物、二硫化鉄、二硫化チタンあるいは硫化モリブデンなどの二硫化物、ポリアニリンあるいはポリチオフェンなどの導電性高分子も挙げられる。正極材料は1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
正極活物質層21Bは、また、例えば導電剤を含んでおり、必要に応じてさらに結着剤を含んでいてもよい。導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラックあるいはケッチェンブラックなどの炭素材料が挙げられ、そのうちの1種または2種以上が混合して用いられる。また、炭素材料の他にも、導電性を有する材料であれば金属材料あるいは導電性高分子材料などを用いるようにしてもよい。
結着剤としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムあるいはエチレンプロピレンジエンゴムなどの合成ゴム、またはポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料が挙げられ、そのうちの1種または2種以上が混合して用いられる。例えば、図1に示したように正極21および負極22が巻回されている場合には、結着剤として柔軟性に富むスチレンブタジエン系ゴムあるいはフッ素系ゴムなどを用いることが好ましい。
負極22は、例えば、対向する一対の面を有する負極集電体22Aと、負極集電体22Aの両面に設けられた負極活物質層22Bとを有している。なお、負極活物質層22Bが片面のみ存在する領域を有するようにしてもよい。
負極集電体22Aは、例えば、良好な電気化学的安定性、電気伝導性および機械的強度を有する銅箔、ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。特に、銅箔は高い電気伝導性を有するので最も好ましい。
また、負極集電体22Aは、リチウム(Li)と金属間化合物を形成しない金属元素の少なくとも1種を含む金属材料により構成されていることが好ましい場合もある。リチウム(Li)と金属間化合物を形成すると、充放電に伴い膨張および収縮し、構造破壊が起こって、集電性が低下する他、負極活物質層22Bを支える能力が小さくなり負極活物質層22Bが負極集電体22Aから脱落する場合があるからである。なお、本明細書において金属材料には、金属元素の単体だけでなく、2種以上の金属元素あるいは1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とからなる合金も含める。リチウム(Li)と金属間化合物を形成しない金属元素としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、鉄あるいはクロム(Cr)が挙げられる。
負極活物質層22Bは、負極活物質として、リチウム(Li)を吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んで構成されており、必要に応じて、例えば正極活物質層21Bと同様の結着剤を含んでいてもよい。
リチウム(Li)を吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、炭素材料、金属酸化物あるいは高分子化合物などが挙げられる。炭素材料としては、例えば、易黒鉛化炭素、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化炭素、あるいは(002)面の面間隔が0.340nm以下の黒鉛が挙げられる。より具体的には、熱分解炭素類、コークス類、グラファイト類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維あるいは活性炭などがある。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークスなどがあり、有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子化合物を適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。また、金属酸化物としては、酸化鉄、酸化ルテニウムあるいは酸化モリブデンなどが挙げられ、高分子化合物としてはポリアセチレンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
また、負極活物質層22Bは、例えば、負極活物質として、電極反応物質であるリチウム(Li)を吸蔵および放出することが可能な金属元素の単体、合金および化合物と、リチウム(Li)を吸蔵および放出することが可能な半金属元素の単体、合金および化合物とからなる群のうちの少なくとも1種の負極材料を含んでいてもよい。これにより、高いエネルギー密度を得ることができるようになる。さらに、上述した炭素材料と、共に用いるようにしてもよい。炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、例えば上述した負極材料と共に用いるようにすればようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができ、更に導電剤としても機能するので好ましい。なお、本明細書において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とからなるものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
この負極材料を構成する金属元素あるいは半金属元素としては、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)が挙げられる。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
また、これらの金属元素あるいは半金属元素の合金または化合物としては、例えば、化学式Mas Mbt Liu 、あるいは化学式Map Mcq Mdr で表されるものが挙げられる。これらの化学式において、Maはリチウム(Li)と合金を形成可能な金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表し、Mbはリチウム(Li)およびMa以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表し、Mcは非金属元素の少なくとも1種を表し、MdはMa以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表す。また、s、t、u、p、qおよびrの値はそれぞれs>0、t≧0、u≧0、p>0、q>0、r≧0である。
中でも、この負極材料としては、短周期型周期表における4B族の金属元素あるいは半金属元素の単体、合金または化合物が好ましく、特に好ましいのはケイ素(Si)あるいはスズ(Sn)の単体、またはこれらの合金あるいは化合物である。ケイ素(Si)あるいはスズ(Sn)の単体、合金および化合物は、リチウム(Li)を吸蔵および放出する能力が大きく、組み合わせによっては、従来の黒鉛と比較して負極22のエネルギー密度を高くすることができるからである。
このような合金または化合物について具体的に例を挙げれば、SiB4 、SiB6 、Mg2 Si、Ni2 Si、TiSi2 、MoSi2 、CoSi2 、NiSi2 、CaSi2 、CrSi2 、Cu5 Si、FeSi2 、MnSi2 、NbSi2 、TaSi2 、VSi2 、WSi2 、ZnSi2 、SiC、Si3 N4 、Si2 N2 O、SiOv (0<v≦2)、SnOw (0<w≦2)、SnSiO3 、LiSiO、LiSnO、Mg2 Sn、あるいはスズ(Sn)とコバルト(Co)とを含む合金などがある。
中でも、この負極材料としては、スズ(Sn)と、コバルト(Co)と、炭素(C)とを構成元素として含み、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下であり、かつスズ(Sn)とコバルト(Co)との合計に対するコバルト(Co)の割合Co/(Sn+Co)が30質量%以上70質量%以下であるCoSnC含有材料が好ましい。このような組成範囲において高いエネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるからである。
このCoSnC含有材料は、必要に応じて更に他の構成元素を含んでいてもよい。他の構成元素としては、例えば、ケイ素(Si)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、インジウム(In)、ニオブ(Nb)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、リン(P)、ガリウム(Ga)またはビスマス(Bi)が好ましく、2種以上を含んでいてもよい。容量またはサイクル特性を更に向上させることができるからである。
なお、このCoSnC含有材料は、スズ(Sn)と、コバルト(Co)と、炭素(C)とを含む相を有しており、この相は結晶性の低いまたは非晶質な構造を有していることが好ましい。また、このCoSnC含有材料では、構成元素である炭素の少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合していることが好ましい。サイクル特性の低下はスズ(Sn)などが凝集あるいは結晶化することによるものであると考えられるが、炭素が他の元素と結合することにより、そのような凝集あるいは結晶化を抑制することができるからである。
元素の結合状態を調べる測定方法としては、例えばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)が挙げられる。XPSでは、炭素の1s軌道(C1s)のピークは、グラファイトであれば、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正された装置において、284.5eVに現れる。また、表面汚染炭素であれば、284.8eVに現れる。これに対して、炭素元素の電荷密度が高くなる場合、例えば炭素が金属元素または半金属元素と結合している場合には、C1sのピークは、284.5eVよりも低い領域に現れる。すなわち、CoSnC含有材料について得られるC1sの合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる場合には、CoSnC含有材料に含まれる炭素の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合している。
なお、XPS測定では、スペクトルのエネルギー軸の補正に、例えばC1sのピークを用いる。通常、表面には表面汚染炭素が存在しているので、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、これをエネルギー基準とする。XPS測定では、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとCoSnC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形として得られるので、例えば市販のソフトウエアを用いて解析することにより、表面汚染炭素のピークと、CoSnC含有材料中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
負極活物質層22Bは、例えば、気相法、液相法、焼成法、または塗布のいずれにより形成してもよく、それらの2以上を組み合わせてもよい。焼成法というのは、粒子状の負極活物質を結着剤あるいは溶剤などと混合して成形したのち、例えば結着剤などの融点よりも高い温度で熱処理する方法である。
気相法、液相法または焼成法により形成する場合には、形成時に負極活物質層22Bと負極集電体22Aとが界面の少なくとも一部において合金化することがあり好ましい。さらに、真空雰囲気下または非酸化性雰囲気下で熱処理を行い、合金化するようにしてもよい。具体的には、界面において負極集電体22Aの構成元素が負極活物質層22Bに、または負極活物質の構成元素が負極集電体22Aに、またはそれらが互いに拡散していることが好ましい。充放電に伴う負極活物質層22Bの膨張・収縮による破壊を抑制することができると共に、負極活物質層22Bと負極集電体22Aとの間の電子伝導性を向上させることができるからである。
気相法としては、例えば、物理堆積法あるいは化学堆積法を用いることができ、具体的には、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱CVD(Chemical Vapor Deposition ;化学気相成長)法あるいはプラズマCVD法等が利用可能である。液相法としては電解鍍金あるいは無電解鍍金等の公知の手法が利用可能である。焼成法に関しても公知の手法が利用可能であり、例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法あるいはホットプレス焼成法が利用可能である。塗布の場合には、正極21と同様にして形成することができる。
また、負極活物質層22Bは、例えば、負極活物質であるリチウム金属により形成してもよい。これにより高いエネルギー密度を得ることができるようになるからである。この場合、負極活物質層22Bは、組み立て時から既に有するように構成してもよいが、組み立て時には存在せず、充電時に析出したリチウム金属により構成するようにしてもよい。また、負極活物質層22Bを集電体としても利用し、負極集電体22Aを削除するようにしてもよい。
セパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。中でも、ポリオレフィン製の多孔質膜はショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。特に、ポリエチレンは、100℃以上160℃以下の範囲内においてシャットダウン効果を得ることができ、かつ電気化学的安定性にも優れているので、セパレータ23を構成する材料として好ましい。また、ポリプロピレンも好ましく、他にも化学的安定性を備えた樹脂であればポリエチレンあるいはポリプロピレンと共重合させたり、またはブレンド化することで用いることができる。
セパレータ23には、液状の電解質である電解液が含浸されている。この電解液は、液状の溶媒、例えば有機溶剤などの非水溶媒と、この非水溶媒に溶解された電解質塩とを含んでおり、必要に応じて各種添加剤を含んでいてもよい。液状の非水溶媒というのは、例えば、非水化合物よりなり、25℃における固有粘度が10.0mPa・s以下のものを言う。なお、電解質塩を溶解した状態での固有粘度が10.0mPa・s以下のものでもよく、複数種の非水化合物を混合して溶媒を構成する場合には、混合した状態での固有粘度が10.0mPa・s以下であればよい。
次に、電池の第1の例の製造方法の一例について説明する。まず、例えば、正極活物質と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーを作製する。次いで、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機などにより圧縮成型することにより正極活物質層21Bを形成する。これにより、正極21が得られる。
また、例えば、負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーを作製する。次いで、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機などにより圧縮成型することにより負極活物質層22Bを形成する。これにより、負極22が得られる。
続いて、正極集電体21Aに正極リード25を溶接などにより取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード26を溶接などにより取り付ける。そののち、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回し、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接して、巻回した正極21および負極22を一対の絶縁板12、13で挟み電池缶11の内部に収納する。正極21および負極22を電池缶11の内部に収納したのち、電解液を電池缶11の内部に注入し、セパレータ23に含浸させる。そののち、電池缶11の開口端部に電池蓋14、安全弁機15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図2に示した二次電池が得られる。
この二次電池では、例えば、充電を行うと、正極活物質層21Bからリチウムイオンが放出され、電解液を介して、負極活物質層22Bに含まれるリチウム(Li)を吸蔵および放出することが可能な負極材料に吸蔵される。次に、放電を行うと、負極活物質層22B中のリチウム(Li)を吸蔵および放出することが可能な負極材料に吸蔵されたリチウムイオンが放出され、電解液を介して正極活物質層21Bに吸蔵される。
(電池の第2の例)
次に、電池の第2の例について説明する。図3は、電池の第2の例の一構成例を示す断面図である。この二次電池は、正極リード31および負極リード32が取り付けられた巻回電極体30をフィルム状の外装部材40の内部に収容したものであり、小型化、軽量化および薄型化が可能となっている。
正極リード31および負極リード32はそれぞれ、外装部材40の内部から外部に向かい例えば同一方向に導出されている。正極リード31および負極リード32は、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)あるいはステンレス(SUS)などの金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状または網目状とされている。
外装部材40は、例えば、ナイロンフィルム、アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に貼り合わせた矩形状のアルミラミネートフィルムにより構成されている。外装部材40は、例えば、ポリエチレンフィルム側と巻回電極体30とが対向するように配設されており、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム41が挿入されている。密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されている。
なお、外装部材40は、上述したアルミラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム、ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
図4は、図3に示した巻回電極体30のI−I線に沿った断面図である。巻回電極体30は、正極33と負極34とをセパレータ35および電解質層36を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ37により保護されている。
正極33は、正極集電体33Aの片面あるいは両面に正極活物質層33Bが設けられた構造を有している。負極34は、負極集電体34Aの片面あるいは両面に負極活物質層34Bが設けられた構造を有しており、負極活物質層34Bと正極活物質層33Bとが対向するように配置されている。正極集電体33A、正極活物質層33B、負極集電体34A、負極活物質層34Bおよびセパレータ35の構成は、それぞれ第1の例で説明した正極集電体21A、正極活物質層21B、負極集電体22A、負極活物質層22Bおよびセパレータ23と同様である。
電解質層36は、電解液と、この電解液を保持する保持体となる高分子化合物とを含み、いわゆるゲル状となっている。ゲル状の電解質層36は高いイオン伝導率を得ることができると共に、電池の漏液を防止することができるので好ましい。なお、電解質には、電解液を高分子化合物に保持させることなく、液状の電解質としてそのまま用いてもよい。
次に、電池の第2の例の製造方法の一例について説明する。まず、正極33および負極34のそれぞれに、溶媒と、電解質塩と、高分子化合物と、混合溶剤とを含む前駆溶液を塗布し、混合溶剤を揮発させてゲル状の電解質層36を形成する。そののち、正極集電体33Aの端部に正極リード31を溶接により取り付けると共に、負極集電体34Aの端部に負極リード32を溶接により取り付ける。
次に、ゲル状の電解質層36が形成された正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層し積層体としたのち、この積層体をその長手方向に巻回して、最外周部に保護テープ37を接着して巻回電極体30を形成する。最後に、例えば、外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込み、外装部材40の外縁部同士を熱融着などにより密着させて封入する。その際、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間には密着フィルム41を挿入する。これにより、図3および図4に示した二次電池が得られる。
また、この二次電池は、次のようにして作製してもよい。まず、上述したようにして正極33および負極34を作製し、正極33および負極34に正極リード31および負極リード32を取り付けたのち、正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ37を接着して、巻回電極体30を形成する。次に、この巻回電極体30を外装部材40に挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材40の内部に収納する。続いて、溶媒と、電解質塩と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を用意し、外装部材40の内部に注入する。
電解質用組成物を注入したのち、外装部材40の開口部を真空雰囲気下で熱融着して密封する。次に、熱を加えてモノマーを重合させて高分子化合物とすることによりゲル状の電解質層36を形成する。以上により、図4に示した二次電池が得られる。
さらに、この発明の具体的な実施例について図3および図4を参照しながら説明する。ただし、この発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の説明で化合物12〜化合物15とは、それぞれ以下に示す化31の(31−1)〜(31−4)で表された化合物である。
<実験例1−1〜実験例1−32、比較例1−1〜比較例1−7>
まず、炭酸リチウム(Li2 CO3 )と炭酸コバルト(CoCO3 )とを、Li2 CO3 :CoCO3 =0.5:1(モル比)の割合で混合し、空気中において900℃で5時間焼成して、正極材料としてのリチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO2 )を得た。
次に、このリチウム・コバルト複合酸化物91質量部と、導電剤であるグラファイト6質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合して正極合剤を調製した。続いて、この正極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させて正極合剤スラリーとし、厚み12μmの帯状アルミニウム箔よりなる正極集電体33Aの両面に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して正極活物質層33Bを形成し正極33を作製した。そののち、正極集電体33Aの一端にアルミニウム製の正極リード31を取り付けた。
実験例1−1〜実験例1−32および比較例1−1〜比較例1−7では、負極34は、以下に説明するようにして作製した。
まず、負極材料として人造黒鉛粉末を用意し、この人造黒鉛粉末90質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン10質量部とを混合して負極合剤を調製した。次に、この負極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合剤スラリーとしたのち、厚み15μmの帯状銅箔よりなる負極集電体34Aの両面に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して負極活物質層34Bを形成し負極34を作製した。そののち、負極集電体34Aの一端にニッケル製の負極リード32を取り付けた。
次に、作製した正極33と負極34とを多孔質ポリエチレンフィルムよりなるセパレータ35を介して積層し、扁平巻回したのち、得られた巻回電極体30を、ラミネートフィルムよりなる外装部材40に挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材40の内部に収納し、以下に説明する電解液を外装部材40の内部に注入した。次に、外装部材40の開口部を真空雰囲気下で熱融着して密封した。以上に説明したように、実験例1−1〜実験例1−32および比較例1−1〜比較例1−7の二次電池を作製した。なお、ラミネートフィルムは、外側からナイロン−アルミニウム−無延伸ポリプロピレンよりなるものを用い、それらの厚みは、それぞれ、30μm、40μm、30μmとし、合計で100μmとした。
実験例1−1〜実験例1−8、実験例11〜実験例13では、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(EC:DEC)2:3の組成で混合した溶媒に、以下に説明する化合物を添加した後、電解質塩として、LiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。なお、溶媒は、添加した化合物を含有した溶媒を100重量%としており、以降においても同様である。
実験例1−9、実験例1−10、実験例1−14、実験例1−15では、電解液としては、溶媒であるジエチルカーボネート(DEC)に、以下に説明する化合物を添加した後、電解質塩として、LiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
実験例1−1では化合物12を1重量%添加した。実験例1−2では化合物13を1重量%添加した。実験例1−3では化合物15を1重量%添加した。実験例1−4では化合物12を1重量%およびビニレンカーボネート(VC)を1重量%添加した。実験例1−5では化合物12を1重量%およびビニルエチレンカーボネート(VEC)を1重量%添加した。実験例1−6〜実験例1−10では化合物12を0.01重量%、5重量%、10重量%、30重量%、50重量%添加した。実験例1−11〜実験例1−15では化合物13を0.01重量%、5重量%、10重量%、30重量%、50重量添加した。
実験例1−16〜実験例1−23では、電解液としては、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(FEC:DEC)2:3の組成で混合した溶媒に、以下に説明する化合物を添加した後、電解質塩であるLiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
実験例1−16では化合物12を1重量%添加した。実験例1−17では化合物15を1重量%添加した。実験例1−18では化合物12を1重量%およびビニレンカーボネート(VC)を1重量%添加した。実験例1−19では化合物12を1重量%およびビニルエチレンカーボネート(VEC)を1重量%添加した。実験例1−20〜実験例1−22では化合物12を0.01重量%、5重量%、10重量%添加した。実験例1−23では化合物13を10重量%添加した。
実験例1−24〜実験例1−28では、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)と4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)とジエチルカーボネート(DEC)とを重量比(EC:DFEC:DEC)2:1:7の組成で混合した溶媒に、以下に説明する化合物を添加した後、電解質塩であるLiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
実験例1−24では化合物12を1重量%添加した。実験例1−25では化合物12を1重量%およびビニレンカーボネート(VC)を1重量%添加した。実験例1−26では化合物12を1重量%およびビニルエチレンカーボネート(VEC)を1重量%添加した。実験例1−27では化合物12を10重量%添加した。実験例1−28では化合物13を10重量%添加した。
実験例1−29〜実験例1−32では、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(EC:DEC)2:3の組成で混合した溶媒に、化合物12を1重量%添加した後、以下に説明する電解質塩を1mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
実験例1−29では、電解質塩としては、LiPF6 0.9mol/kgおよび化17で表された化合物0.1mol/kgを用いた。実験例1−30では、LiPF6 0.9mol/kgおよび化22で表された化合物0.1mol/kgを用いた。実験例1−31では、LiPF6 0.9mol/kgおよび化27で表された化合物0.1mol/kgを用いた。実験例1−32では、LiPF6 0.8mol/kg、化22で表された化合物0.1mol/kgおよび化27で表された化合物0.1mol/kgを用いた。
比較例1−1では、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(EC:DEC)2:3の組成で混合した溶媒に、電解質塩であるLiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
比較例1−2では、電解液としては、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(FEC:DEC)2:3の組成で混合した溶媒に、電解質塩であるLiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
比較例1−3では、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)と4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(EC:DFEC:DEC)2:1:7の組成で混合した溶媒に電解質塩であるLiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
比較例1−4では、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(EC:DEC)2:3の組成で混合した溶媒に、ビニレンカーボネート(VC)を1重量%添加した後、電解質塩であるLiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
比較例1−5では、電解液としては、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(FEC:DEC)2:3の組成で混合した溶媒に、ビニレンカーボネート(VC)を1重量%添加した後、電解質塩であるLiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
比較例1−6では、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)と4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(EC:DFEC:DEC)2:1:7の組成で混合した溶媒に、ビニレンカーボネート(VC)を1重量%添加した後、電解質塩であるLiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
比較例1−7では、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(EC:DEC)2:3の組成で混合した溶媒に、電解質塩として、LiPF6 0.9mol/kg、化17で表された化合物0.1mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
次に、作製した実験例1−1〜実験例1−32、比較例1−1〜比較例1−7の二次電池について、充放電試験を行い、高温保存特性および高温サイクル特性を調べた。高温保存特性は、23℃で充放電を2サイクル繰り返し、再び充電して80℃の恒温槽に10日間放置したのち、再び23℃で放電を行い、その保存前の放電容量に対する保存後の放電容量の割合、すなわち(「保存後の放電容量」/「保存前の放電容量」)×100から求めた。なお、保存前の放電容量は2サイクル目の放電容量であり、保存後の放電容量は保存直後の放電容量、すなわち全体では3サイクル目の放電容量である。
また、高温サイクル特性は、23℃で充放電を2サイクル繰り返したのち、60℃の恒温槽中において充放電を50サイクル繰り返し、23℃における2サイクル目の放電容量に対する高温における50サイクル目の放電容量の割合、すなわち(「高温における50サイクル目の放電容量」/「23℃における2サイクル目の放電容量」)×100から求めた。得られた結果を表1〜表3に示す。
表1〜表3に示すように、化合物12、化合物13または化合物15を含む電解液を用いた実験例1−1〜実験例1−32において、化合物12、化合物13または化合物15を含まないことのみ異なる電解液を用いた、それぞれの比較例1−1〜比較例1−7と比べると、高温保存特性は、若干向上し、高温サイクル特性は、若干向上若しくは同等だった。すなわち、負極に炭素材料を用いる場合において、化3で表された化合物を含む電解液を用いることで、高温特性を向上できることがわかった。
さらに、化合物12、化合物13を含む電解液を用いた実験例1−1、実験例1−2では、化合物12、化合物13の代わりに化合物15を含むことのみ異なる電解液を用いた実験例1−3に比べて、高温保存特性および高温サイクル特性が向上した。さらに、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)を含む電解液を用いた実験例1−16と実験例1−17との比較でも同様の結果が得られた。さらに、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)を含む電解液についても同様の結果が得られる傾向にある。すなわち、負極に炭素材料を用いる場合において、化3で表された化合物の中でも、化5で表された化合物を含む電解液を用いることで、より優れた高温特性を得られることがわかった。
さらに、化合物12に加えて、ビニレンカーボネート(VC)またはビニルエチレンカーボネート(VEC)を含む電解液を用いた実験例1−4、実験例1−5では、化合物12、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)を含まないことのみ異なる電解液を用いた比較例1−1に比べて、高温保存特性および高温サイクル特性が向上した。さらに、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)を含む電解液を用いた実験例1−18、実験例1−19、比較例1−2との比較でも同様の結果が得られた。さらに4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)を含む電解液を用いた実験例1−25、実験例1−26、比較例1−3との比較でも同様の結果が得られた。
さらに、実験例1−4では、ビニレンカーボネート(VC)を含まないことのみ異なる電解液を用いた実験例1−1および化合物12を含まないことのみ異なる電解液を用いた比較例1−4に比べて、高温保存特性および高温サイクル特性が向上した。さらに、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)を含む電解液を用いた実験例1−18と、実験例1−16および比較例1−5との比較でも同様の結果が得られた。さらに、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)を含む電解液を用いた実験例1−25と、実験例1−24および比較例1−6との比較でも同様の結果が得られた。さらに、ビニルエチレンカーボネート(VEC)についても同様の結果が得られる傾向にある。さらに、化合物13〜化合物15でも同様の結果が得られる傾向にある。
すなわち、負極に炭素材料を用いる場合において、化3で表された化合物に加えて、さらに不飽和結合を有する環状炭酸エステルを含む電解液を用いることで、より優れた高温特性を得ることができることがわかった。
さらに、実験例1−1〜実験例1−15と、実験例1−16〜実験例1−23、実験例1−24〜実験例1−28との比較から、化3で表された化合物に加えて、さらに4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)の少なくとも1種を含む電解液を用いることで、より高温特性を向上できることが確認できた。すなわち、負極に炭素材料を用いる場合において、化3で表された化合物に加えて、さらに化7で表された化合物を含む電解液を用いることで、より優れた高温特性を得られることがわかった。
さらに、実験例1−1、実験例1−6〜実験例1−10より、化合物12の含有量は、0.01重量%以上50重量%以下で良好な高温保存特性、高温サイクル特性が得られることが確認できた。実験例1−2、実験例1−11〜実験例1−15より、化合物13の含有量についても同様の結果が得られる傾向にある。さらに、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)を含む電解液を用いた実験例1−16、実験例1−20〜実験例1−22で同様の結果が得られた。さらに、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)を含む電解液を用いた実験例1−24、実験例1−27で同様の結果が得られた。さらに、化合物13〜化合物15の含有量でも、同様の結果が得られる傾向にある。すなわち、負極に炭素材料を用いる場合において、化3で表された化合物の含有量は、0.01重量%以上50重量%以下が好ましいことがわかった。
さらに、実験例1−29〜実験例1−32では、化合物12を含み、且つリチウム塩として、第1化合物であるLiPF6 および表3に示す第2化合物の軽金属塩を含む電解液を用いており、化合物12および表3に示す第2化合物を含まないことのみ異なる電解液を用いた比較例1−1より優れた高温保存特性および高温サイクル特性を得ることが確認できた。
さらに、実験例1−29〜実験例1−32では、リチウム塩として、表3に示す第2化合物を含まないことのみ異なる電解液を用いた実験例1−1より、高温保存特性がさらに向上したことおよび高温サイクル特性がさらに向上したこと若しくは同等であったことが確認できた。
さらに、実験例1−29では、化合物12を含まないことが異なる電解液を用いた比較例1−7より、高温保存特性および高温サイクル特性をさらに向上できることが確認できた。
さらに、実験例1−29〜実験例1−32の比較より、化合物12を含み、且つ化22の軽金属塩および化27の軽金属塩を含む電解液を用いた実験例1−32が、実験例1−29〜実験例1−32のなかでも、特に優れた高温保存特性および高温サイクル特性を得られることが確認できた。
すなわち、負極に炭素材料を用いる場合において、化3で表された化合物を含み、さらに化9で表された軽金属塩および化25で表された軽金属塩のうちの少なくとも1種を含む電解液を用いることで、より優れた高温特性を得られることがわかった。さらに、化3で表された化合物を含み、且つ化9で表された軽金属塩および化25で表された軽金属塩の両方を含む電解液を用いることで、特に優れた高温特性を得られることがわかった。
<実験例2−1〜実験例2−35、比較例2−1〜比較例2−7>
実験例2−1〜実験例2−35および比較例2−1〜比較例2−7では、負極34を以下に説明するように作製した。また、以下に説明する電解液を用いた。
厚み15μmの帯状銅箔よりなる負極集電体34Aに厚み30μmのリチウム金属を貼り付けて負極活物質層34Bを形成し、負極34を作製した。
実験例2−1〜実験例2−9、実験例2−12〜実験例2−14では、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(EC:DEC)2:3の組成で混合した溶媒に、以下に説明する化合物を添加した後、電解質塩として、LiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
実験例2−10、実験例2−11、実験例2−15、実験例2−16では、電解液としては、溶媒であるジエチルカーボネート(DEC)に、以下に説明する化合物を添加した後、電解質塩として、LiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
実験例2−1では化合物12を1重量%添加した。実験例2−2では化合物13を1重量%添加した。実験例2−3では化合物14を1重量%添加した。実験例2−4では化合物15を1重量%添加した。実験例2−5では化合物12を1重量%およびビニレンカーボネート(VC)を1重量%添加した。実験例2−6では化合物12を1重量%およびビニルエチレンカーボネート(VEC)を1重量%添加した。実験例2−7〜実験例2−11では化合物12を0.01重量%、5重量%、10重量%、30重量%、50重量%添加した。実験例2−12〜実験例2−16では化合物13を0.01重量%、5重量%、10重量%、30重量%、50重量%添加した。
実験例2−17〜実験例2−26では、電解液としては、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(FEC:DEC)2:3の組成で混合した溶媒に、以下に説明する化合物を添加した後、電解質塩として、LiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
実験例2−17では化合物12を1重量%添加した。実験例2−18では化合物13を1重量%添加した。実験例2−19では化合物14を1重量%添加した。実験例2−20では化合物15を1重量%添加した。実験例2−21では化合物12を1重量%およびビニレンカーボネート(VC)を1重量%添加した。実験例2−22では化合物12を1重量%およびビニルエチレンカーボネート(VEC)を1重量%添加した。実験例2−23〜実験例2−25では化合物12を0.01重量%、5重量%、10重量%添加した。実験例2−26では化合物13を10重量%添加した。
実験例2−27〜実験例2−31では、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)と、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(EC:DFEC:DEC)2:1:7の組成比で混合した溶媒に、以下に説明する化合物を添加した後、電解質塩として、LiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
実験例2−27では化合物12を1重量%添加した。実験例2−28では化合物12を1重量%およびビニレンカーボネート(VC)を1重量%添加した。実験例2−29では化合物12を1重量%およびビニルエチレンカーボネート(VEC)を1重量%添加した。実験例2−30では化合物12を10重量%添加した。実験例2−31では化合物13を10重量%添加した。
実験例2−32〜実験例2−35では、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(EC:DEC)2:3の組成で混合した溶媒に、化合物12を1重量%添加した後、以下に説明する電解質塩を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
実験例2−32では、電解質塩としては、LiPF6 0.9mol/kgおよび化17で表された化合物0.1mol/kgを用いた。実験例2−33では、LiPF6 0.9mol/kgおよび化22で表された化合物0.1mol/kgを用いた。実験例2−34では、LiPF6 0.9mol/kgおよび化27で表された化合物0.1mol/kgを用いた。実験例2−35では、LiPF6 0.8mol/kg、化22で表された化合物0.1mol/kgおよび化27で表された化合物0.1mol/kgを用いた。
比較例2−1では、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(EC:DEC)2:3の組成で混合した溶媒に、電解質塩であるLiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
比較例2−2では、電解液としては、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(FEC:DEC)2:3の組成で混合した溶媒に、電解質塩であるLiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
比較例2−3では、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)と4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(EC:DFEC:DEC)2:1:7の組成で混合した溶媒に電解質塩であるLiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
比較例2−4では、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(EC:DEC)2:3の組成で混合した溶媒に、ビニレンカーボネート(VC)を1重量%添加した後、電解質塩であるLiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
比較例2−5では、電解液としては、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(FEC:DEC)2:3の組成で混合した溶媒に、ビニレンカーボネート(VC)を1重量%添加した後、電解質塩であるLiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
比較例2−6では、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)と4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(EC:DFEC:DEC)2:1:7の組成で混合した溶媒に、ビニレンカーボネート(VC)を1重量%添加した後、電解質塩であるLiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
比較例2−7では、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(EC:DEC)2:3の組成で混合した溶媒に、電解質塩として、LiPF6 0.9mol/kg、化17で表された化合物0.1mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
次に、作製した実験例2−1〜実験例2−35および比較例2−1〜比較例2−7の二次電池について、実験例1−1〜実験例1−32、比較例1−1〜比較例1−7と同様にして、充放電試験を行い、高温保存特性および高温サイクル特性を調べた。表4〜表6に測定結果を示す
表4〜表6に示すように、化合物12、化合物13、化合物14、または化合物15を含む電解液を用いた実験例2−1〜実験例2−35において、化合物12、化合物13、化合物14、または化合物15を含まないことのみ異なる電解液を用いた、それぞれの比較例2−1〜比較例2−7と比べると、高温保存特性は、若干向上し、高温サイクル特性は、若干向上若しくは同等だった。すなわち、負極活物質としてリチウム金属を用いる場合において、化3で表された化合物を含む電解液を用いることで、高温特性を向上できることがわかった。
さらに、化合物12を含む電解液を用いた実験例2−1および化合物13を含む電解液を用いた実験例2−2では、化合物12または化合物13の代わりに化合物14を含むことのみ異なる電解液を用いた実験例2−3および化合物15を含むことのみ異なる電解液を用いた実験例2−4に比べて、高温保存特性および高温サイクル特性が向上した。さらに、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)を含む電解液を用いた実験例2−17および実験例2−18と、実験例2−19および実験例2−20との比較でも同様の結果が得られた。さらに、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)を含む電解液についても同様の結果が得られる傾向にある。
すなわち、負極活物質としてリチウム金属を用いる場合において、化3で表された化合物の中でも、化5で表された化合物を含む電解液を用いることで、より優れた高温特性を得られることがわかった。
さらに、化合物12に加えて、ビニレンカーボネート(VC)またはビニルエチレンカーボネート(VEC)を含む電解液を用いた実験例2−5、実験例2−6では、化合物12、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)を含まないことのみ異なる電解液を用いた比較例2−1に比べて、高温保存特性および高温サイクル特性が向上した。
さらに、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)を含む電解液を用いた実験例2−21、実験例2−22、比較例2−2との比較でも同様の結果が得られた。さらに4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)を含む電解液を用いた実験例2−28、実験例2−29、比較例2−3との比較でも同様の結果が得られた。
さらに、実験例2−5では、ビニレンカーボネート(VC)を含まないことのみ異なる電解液を用いた実験例2−1に比べて、高温保存特性および高温サイクル特性が向上した。さらに、実験例2−5では、化合物12を含まないことのみ異なる電解液を用いた比較例2−4に比べて、高温保存特性が向上し、高温サイクル特性が同等だった。さらに、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)を含む電解液を用いた実験例2−21と、実験例2−17および比較例2−5との比較によると、実験例2−21では、実験例2−17および比較例2−5より、高温保存特性および高温サイクル特性が向上した。さらに、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)を含む電解液を用いた実験例2−28と、実験例2−27および比較例2−6との比較によると、実験例2−28では、実験例2−27および比較例2−6より、高温保存特性および高温サイクル特性が向上した。さらに、ビニルエチレンカーボネート(VEC)についても同様の結果が得られる傾向にある。さらに、化合物13〜化合物15についても同様の結果が得られる傾向にある。
すなわち、負極活物質としてリチウム金属を用いる場合において、化3で表された化合物に加えて、さらに不飽和結合を有する環状炭酸エステルを含む電解液を用いることで、より優れた高温特性を得られることがわかった。
さらに、実験例2−1〜実験例2−16と、実験例2−17〜実験例2−26、実験例2−27〜実験例2−31との比較から、化3で表された化合物に加えて、さらに4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)の少なくとも1種を含む電解液を用いることで、より高温特性を向上できることが確認できた。すなわち、負極活物質としてリチウム金属を用いる場合において、化3で表された化合物に加えて、さらに化7で表された化合物を含む電解液を用いることで、より優れた高温特性を得られることがわかった。
さらに、実験例2−1、実験例2−7〜実験例2−11より、化合物12の含有量は、0.01重量%以上50重量%以下で良好な高温保存特性、高温サイクル特性が得られることが確認できた。実験例2−2、実験例2−12〜実験例2−16より、化合物13の含有量についても同様の結果が得られる傾向にある。さらに、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)を含む電解液を用いた実験例2−17、実験例2−23〜実験例2−25で同様の結果が得られた。さらに、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)を含む電解液を用いた実験例2−27、実験例2−30で同様の結果が得られた。さらに、化合物13〜化合物15の含有量でも、同様の結果が得られる傾向にある。すなわち、負極活物質としてリチウム金属を用いる場合において、化3で表された化合物の含有量は、0.01重量%以上50重量%以下が好ましいことがわかった。
さらに、実験例2−32〜実験例2−35では、化合物12を含み、且つリチウム塩として、第1化合物であるLiPF6 および表6に示す第2化合物の軽金属塩を含む電解液を用いており、化合物12および表6に示す第2化合物を含まないことのみ異なる電解液を用いた比較例2−1より優れた高温保存特性および高温サイクル特性を得ることが確認できた。
さらに、実験例2−32〜実験例2−35では、リチウム塩として、表6に示す第2化合物を含まないことのみ異なる電解液を用いた実験例2−1より、高温保存特性がさらに向上したことおよび高温サイクル特性がさらに向上したこと若しくは同等であったことが確認できた。
さらに、実験例2−32では、化合物12を含まないことが異なる電解液を用いた比較例2−7より、高温保存特性および高温サイクル特性をさらに向上できることが確認できた。
さらに、実験例2−32〜実験例2−35の比較より、化合物12を含み、且つ化22の軽金属塩および化27の軽金属塩を含む電解液を用いた実験例2−35が、実験例2−32〜実験例2−35のなかでも、特に優れた高温保存特性および高温サイクル特性を得られることが確認できた。
すなわち、負極活物質としてリチウム金属を用いる場合において、化3で表された化合物を含み、さらに化9で表された軽金属塩および化25で表された軽金属塩のうちの少なくとも1種を含む電解液を用いることで、より優れた高温特性を得られることがわかった。さらに、化3で表された化合物を含み、且つ化9で表された軽金属塩および化25で表された軽金属塩の両方を含む電解液を用いることで、特に優れた高温特性を得られることがわかった。
<実験例3−1〜実験例3−35、比較例3−1〜比較例3−7>
実験例3−1〜実験例3−35および比較例3−1〜3−7では、負極34を以下に説明するように作製した。また、表7〜表9に示すように、実験例2−1〜実験例2−35、比較例2−1〜比較例2−7と同様の電解液を用いた。
厚み15μmの銅箔よりなる負極集電体34Aの上に負極活物質としてケイ素(Si)を用い、電子ビーム蒸着法を用いて、負極活物質層34Bを形成した。
作製した実験例3−1〜実験例3−35、比較例3−1〜比較例3−7の二次電池について、実験例1−1〜実験例1−32、比較例1−1〜比較例1−7と同様にして、充放電試験を行い、高温保存特性および高温サイクル特性を調べた。表7〜表9に測定結果を示す。
表7〜表9に示すように、化合物12、化合物13、化合物14、または化合物15を含む電解液を用いた実験例3−1〜実験例3−35において、化合物12、化合物13、化合物14、または化合物15を含まないことのみ異なる電解液を用いた、それぞれの比較例3−1〜比較例3−7と比べると、高温保存特性は、若干向上し、高温サイクル特性は、若干向上若しくは同等だった。すなわち、負極活物質として、ケイ素(Si)を構成元素として含む材料を用いる場合において、化3で表された化合物を含む電解液を用いることで、高温特性を向上できることがわかった。
さらに、化合物12を含む電解液を用いた実験例3−1および化合物13を含む電解液を用いた実験例3−2では、化合物12または化合物13の代わりに化合物14を含むことのみ異なる電解液を用いた実験例3−3および化合物15を含むことのみ異なる電解液を用いた実験例3−4に比べて、高温保存特性が向上若しくは同等および高温サイクル特性が向上した。さらに、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)を含む電解液を用いた実験例3−17および実験例3−18と、実験例3−19および実験例3−20との比較でもほぼ同様の結果が得られた。さらに、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)を含む電解液についても同様の結果が得られる傾向にある。
すなわち、ケイ素(Si)を構成元素として含む材料を用いる場合において、化3で表された化合物の中でも、化5で表された化合物を含む電解液を用いることで、より優れた高温特性を得られることがわかった。
さらに、化合物12に加えて、ビニレンカーボネート(VC)またはビニルエチレンカーボネート(VEC)を含む電解液を用いた実験例3−5、実験例3−6では、化合物12、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)を含まないことのみ異なる溶媒を用いた比較例3−1に比べて、高温保存特性および高温サイクル特性が向上した。
さらに、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)を含む電解液を用いた実験例3−21、実験例3−22、比較例3−2との比較でも同様の結果が得られた。さらに4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)を含む電解液を用いた実験例3−28、実験例3−29、比較例3−3との比較でも同様の結果が得られた。
さらに、実験例3−5では、ビニレンカーボネート(VC)を含まないことのみ異なる電解液を用いた実験例3−1に比べて高温保存特性および高温サイクル特性が向上した。さらに、実験例3−5では、化合物12を含まないことのみ異なる電解液を用いた比較例3−4に比べて、高温保存特性が向上した。さらに、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)を含む電解液を用いた実験例3−21と、実験例3−17および比較例3−5との比較によると、実験例3−21では、実験例3−17および比較例3−5に比べて、高温保存特性および高温サイクル特性が向上した。さらに、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)を含む電解液を用いた実験例3−28と、実験例3−27および比較例3−6との比較によると、実験例3−28では、実験例3−27および比較例3−6に比べて高温保存特性および高温サイクル特性が向上した。さらに、ビニルエチレンカーボネート(VEC)についても同様の結果が得られる傾向にある。さらに、化合物13〜化合物15についても同様の結果が得られる傾向にある。
すなわち、ケイ素(Si)を構成元素として含む材料を用いる場合において、化3で表された化合物に加えて、さらに不飽和結合を有する環状炭酸エステルを含む電解液を用いることで、より優れた高温特性を得られることがわかった。
さらに、実験例3−1〜実験例3−16と、実験例3−17〜実験例3−26、実験例3−27〜実験例3−31との比較から、化3で表された化合物に加えて、さらに4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)の少なくとも1種を含む電解液を用いることで、より高温特性を向上できることが確認できた。すなわち、ケイ素(Si)を構成元素として含む材料を用いる場合において、化3で表された化合物に加えて、さらに化7で表された化合物を含む電解液を用いることで、より優れた高温特性を得られることがわかった。
さらに、実験例3−1、実験例3−7〜実験例3−11より、化合物12の含有量は、0.01重量%以上50重量%以下で良好な高温保存特性、高温サイクル特性が得られることが確認できた。実験例3−2、実験例3−12〜実験例3−16より、化合物13の含有量についても同様の結果が得られる傾向にある。さらに、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)を含む電解液を用いた実験例3−17、実験例3−23〜実験例3−25で同様の結果が得られた。さらに、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)を含む電解液を用いた実験例3−27、実験例3−30で同様の結果が得られた。さらに、化合物13〜化合物15の含有量でも、同様の結果が得られる傾向にある。すなわち、ケイ素(Si)を構成元素として含む材料を用いる場合において、化3で表された化合物の含有量は、0.01重量%以上50重量%以下が好ましいことがわかった。
さらに、実験例3−32〜実験例3−35では、化合物12を含み、且つリチウム塩として、第1化合物であるLiPF6 および表9に示す第2化合物の軽金属塩を含む電解液を用いており、化合物12および表9に示す第2化合物を含まないことのみ異なる電解液を用いた比較例3−1より優れた高温保存特性および高温サイクル特性を得ることが確認できた。
さらに、実験例3−32〜実験例3−35では、リチウム塩として、表9に示す第2化合物を含まないことのみ異なる電解液を用いた実験例3−1より、高温保存特性および高温サイクル特性をさらに向上できることが確認できた。
さらに、実験例3−32では、化合物12を含まないことが異なる電解液を用いた比較例3−7より、高温保存特性および高温サイクル特性をさらに向上できることが確認できた。
さらに、実験例3−32〜実験例3−35の比較より、化合物12を含み、且つ化22の軽金属塩および化27の軽金属塩を含む電解液を用いた実験例3−35が、実験例3−32〜実験例3−35のなかでも、特に優れた高温保存特性および高温サイクル特性を得られることが確認できた。
すなわち、ケイ素(Si)を構成元素として含む材料を用いる場合において、化3で表された化合物を含み、且つ化9で表された軽金属塩および化25で表された軽金属塩のうちの少なくとも1種を含む電解液を用いることで、より優れた高温特性を得られることがわかった。また、特に、化3で表された化合物を含み、且つ化9で表された軽金属塩および化25で表された軽金属塩の両方を含む電解液を用いることで、特に優れた高温特性を得られることがわかった。
<実験例4−1〜実験例4−35、比較例4−1〜比較例4−7>
実験例4−1〜実験例4−35では、負極34を以下に説明するように作製した。また、以下に説明する電解液を用いた。
まず、原料であるCo−Sn合金粉末と、炭素粉末とを所定の割合で混合し、全体の投入粉末量を10gとして乾式混合した。この混合物を直径9mmの鋼玉約400gとともに、伊藤製作所製の遊星ボールミルの反応容器中にセットした。反応容器中をアルゴン雰囲気に置換し、毎分250回転の回転速度による10分間の運転と、10分間の休止とを、運転時間の合計が20時間になるまで繰り返した。そののち、反応溶器を室温まで冷却して合成された負極活物質粉末について組成分析を行ったところ、スズ(Sn)の含有量は49.5質量%、コバルト(Co)の含有量は29.7質量%、炭素の含有量は19.8質量%、スズ(Sn)とコバルト(Co)との合計に対するコバルト(Co)の割合Co/(Sn+Co)は37.5質量%であった。なお、炭素の含有量は、炭素・硫黄分析装置により測定し、スズ(Sn)、コバルト(Co)の含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)発光分析により測定した。また、X線回折を行ったところ、回折角2θ=20°〜50°の間に、回折角2θが1°以上の広い半値幅を有する回折ピークが観察された。さらに、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)を行ったところ、図5に示したようにピークP1が得られた。ピークP1を解析すると、表面汚染炭素のピークP2と、ピークP2よりも低エネルギー側に負極活物質粉末中におけるC1sのピークP3とが得られた。このピークP3は、284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質粉末中の炭素が他の元素と結合していることが確認された。
次に、負極活物質粉末80質量部と、導電剤としてグラファイト(ロンザ製KS-15)11質量部およびアセチレンブラック1質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン8質量部とを混合し、溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合剤スラリーとした。そののち、この負極合剤スラリーを厚み10μmの帯状銅箔よりなる負極集電体34Aの両面に均一に塗布して乾燥させ、一定圧力で圧縮成型して負極活物質層34Bを形成した。以上により負極34を作製した。
実験例4−1〜実験例4−9、実験例4−12〜実験例4−14では、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(EC:DEC)2:3の組成で混合した溶媒に、以下に説明する化合物を添加した後、電解質塩として、LiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
実験例4−10、実験例4−11、実験例4−15、実験例4−16では、電解液としては、溶媒であるジエチルカーボネート(DEC)に、以下に説明する化合物を添加した後、電解質塩として、LiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
実験例4−1では化合物12を1重量%添加した。実験例4−2では化合物13を1重量%添加した。実験例4−3では化合物14を1重量%添加した。実験例4−4では化合物15を1重量%添加した。実験例4−5では化合物12を1重量%およびビニレンカーボネート(VC)を1重量%添加した。実験例4−6では化合物12を1重量%およびビニルエチレンカーボネート(VEC)を1重量%添加した。実験例4−7〜実験例4−11では化合物12を0.01重量%、5重量%、10重量%、30重量%、50重量%添加した。実験例4−12〜実験例4−16では化合物13を0.01重量%、5重量%、10重量%、30重量%、50重量%添加した。
実験例4−17〜実験例4−26では、電解液としては、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(FEC:DEC)2:3の組成で混合した溶媒に、以下に説明する化合物を添加した後、電解質塩として、LiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
実験例4−17では化合物12を1重量%添加した。実験例4−18では化合物13を1重量%添加した。実験例4−19では化合物12を1重量%およびビニレンカーボネート(VC)を1重量%添加した。実験例4−20では化合物12を1重量%およびビニルエチレンカーボネート(VEC)を1重量%添加した。実験例4−21〜実験例4−23では化合物12を0.01重量%、5重量%、10重量%添加した。実験例4−24〜実験例4−26では化合物13を0.01重量%、5重量%、10重量%添加した。
実験例4−27〜実験例4−31では、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)と、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(EC:DFEC:DEC)2:1:7の組成比で混合した溶媒に、以下に説明する化合物を添加した後、電解質塩として、LiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
実験例4−27では化合物12を1重量%添加した。実験例4−28では化合物12を1重量%およびビニレンカーボネート(VC)を1重量%添加した。実験例4−29では化合物12を1重量%およびビニルエチレンカーボネート(VEC)を1重量%添加した。実験例4−30では化合物12を10重量%添加した。実験例4−31では化合物13を10重量%添加した。
実験例4−32〜実験例4−35では、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(EC:DEC)2:3の組成で混合した溶媒に、化合物12を1重量%添加した後、以下に説明する電解質塩を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
実験例4−32では、電解質塩としては、LiPF6 0.9mol/kgおよび化17で表された化合物0.1mol/kgを用いた。実験例4−33では、LiPF6 0.9mol/kgおよび化22で表された化合物0.1mol/kgを用いた。実験例4−34では、LiPF6 0.9mol/kgおよび化27で表された化合物0.1mol/kgを用いた。実験例4−35では、LiPF6 0.8mol/kg、化22で表された化合物0.1mol/kgおよび化27で表された化合物0.1mol/kgを用いた。
比較例4−1では、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(EC:DEC)2:3の組成で混合した溶媒に、電解質塩であるLiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
比較例4−2では、電解液としては、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(FEC:DEC)2:3の組成で混合した溶媒に、電解質塩であるLiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
比較例4−3では、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)と4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(EC:DFEC:DEC)2:1:7の組成で混合した溶媒に電解質塩であるLiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
比較例4−4では、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(EC:DEC)2:3の組成で混合した溶媒に、ビニレンカーボネート(VC)を1重量%添加した後、電解質塩であるLiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
比較例4−5では、電解液としては、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(FEC:DEC)2:3の組成で混合した溶媒に、ビニレンカーボネート(VC)を1重量%添加した後、電解質塩であるLiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
比較例4−6では、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)と4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(EC:DFEC:DEC)2:1:7の組成で混合した溶媒に、ビニレンカーボネート(VC)を1重量%添加した後、電解質塩であるLiPF6 を1.0mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
比較例4−7では、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比(EC:DEC)2:3の組成で混合した溶媒に、電解質塩として、LiPF6 0.9mol/kg、化17で表された化合物0.1mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
作製した実験例4−1〜実験例4−35、比較例4−1〜比較例4−7の二次電池について、実験例1−1〜実験例1−32、比較例1−1〜比較例1−7と同様にして、充放電試験を行い、高温保存特性および高温サイクル特性を調べた。表10〜表12に測定結果を示す。
表10〜表12に示すように、化合物12、化合物13、化合物14、または化合物15を含む電解液を用いた実験例4−1〜実験例4−35において、化合物12、化合物13、化合物14、または化合物15を含まないことのみ異なる電解液を用いた、それぞれの比較例4−1〜比較例4−7と比べると、高温保存特性は、若干向上し、高温サイクル特性は、若干向上若しくは同等だった。すなわち、負極活物質として、コバルト−スズを構成元素として含む材料を用いる場合において、化3で表された化合物を含む電解液を用いることで、高温特性を向上できることがわかった。
さらに、化合物12を含む電解液を用いた実験例4−1および化合物13を含む電解液を用いた実験例4−2では、化合物12または化合物13の代わりに化合物14を含むことのみ異なる電解液を用いた実験例4−3および化合物15を含むことのみ異なる電解液を用いた実験例4−4に比べて、高温保存特性が向上若しくは同等および高温サイクル特性が向上した。さらに、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)を含む電解液を用いた実験例3−17および実験例3−18、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)を含む電解液を用いた実験例4−27についても同様の結果が得られる傾向にある。
すなわち、負極活物質として、コバルト−スズを構成元素として含む材料を用いる場合において、化3で表された化合物の中でも、化5で表された化合物を含む電解液を用いることで、より優れた高温特性を得られることがわかった。
さらに、化合物12に加えて、ビニレンカーボネート(VC)またはビニルエチレンカーボネート(VEC)を含む電解液を用いた実験例4−5、実験例4−6では、化合物12、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)を含まないことのみ異なる電解液を用いた比較例4−1に比べて、高温保存特性および高温サイクル特性が向上した。
さらに、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)を含む電解液を用いた実験例4−19、実験例4−20、比較例4−2との比較でも同様の結果が得られた。さらに4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)を含む電解液を用いた実験例4−28、実験例4−29、比較例4−3との比較でも同様の結果が得られた。
さらに、実験例4−5では、ビニレンカーボネート(VC)を含まないことのみ異なる電解液を用いた実験例4−1および化合物12を含まないことのみ異なる電解液を用いた比較例4−4に比べて、高温保存特性および高温サイクル特性が向上した。さらに、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)を含む電解液を用いた実験例4−19と、実験例4−17および比較例4−5との比較でも同様の結果が得られた。さらに、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)を含む電解液を用いた実験例4−28と、実験例4−27および比較例4−6との比較でも同様の結果が得られた。さらに、ビニルエチレンカーボネート(VEC)についても同様の結果が得られる傾向にある。さらに、化合物13〜化合物15についても同様の結果が得られる傾向にある。
すなわち、負極活物質として、コバルト−スズを構成元素として含む材料を用いる場合において、化3で表された化合物12に加えて、さらに不飽和結合を有する環状炭酸エステルを含む電解液を用いることで、より優れた高温特性を得られることがわかった。
さらに、実験例4−1〜実験例4−16と、実験例4−17〜実験例4−26、実験例4−27〜実験例4−31との比較から、化3で表された化合物に加えて、さらに4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)の少なくとも1種を含む電解液を用いることで、より優れた高温特性を向上できることが確認できた。すなわち、負極活物質として、コバルト−スズを構成元素として含む材料を用いる場合において、化3で表された化合物に加えて、さらに化7で表された化合物を含む電解液を用いることで、より優れた高温特性を得られることがわかった。
さらに、実験例4−1、実験例4−7〜実験例4−11より、化合物12の含有量は、0.01重量%以上50重量%以下で良好な高温保存特性、高温サイクル特性が得られることが確認できた。実験例4−2、実験例4−12〜実験例4−16より、化合物13の含有量についても同様の結果が得られる傾向にある。さらに、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)を含む電解液を用いた実験例4−17、実験例4−21〜実験例4−23で同様の結果が得られた。さらに、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)を含む電解液を用いた実験例4−27、実験例4−30で同様の結果が得られた。さらに、化合物13〜化合物15の含有量でも、同様の結果が得られる傾向にある。すなわち、負極活物質として、コバルト−スズを構成元素として含む材料を用いる場合において、化3で表された化合物の含有量は、0.01重量%以上50重量%以下が好ましいことがわかった。
さらに、実験例4−32〜実験例4−35では、化合物12を含み、且つリチウム塩として、第1化合物であるLiPF6 および表12に示す第2化合物の軽金属塩を含む電解液を用いており、化合物12および表12に示す第2化合物を含まないことのみ異なる電解液を用いた比較例4−1より優れた高温保存特性および高温サイクル特性を得ることが確認できた。
さらに、実験例4−32〜実験例4−35では、リチウム塩として、表12に示す第2化合物を含まないことのみ異なる電解液を用いた実験例4−1より、高温保存特性および高温サイクル特性がさらに向上したこと若しくは同等であったことが確認できた。
さらに、実験例4−32では、化合物12を含まないことのみ異なる電解液を用いた比較例4−7より、高温保存特性がさらに向上したことおよび高温サイクル特性が同等であったことが確認できた。
さらに、実験例4−32〜実験例4−35の比較より、化合物12を含み、且つ化22の軽金属塩および化27の軽金属塩を含む電解液を用いた実験例4−35が、実験例4−32〜実験例4−35のなかでも、特に優れた高温保存特性および高温サイクル特性を得られることが確認できた。
すなわち、負極活物質として、コバルト−スズを構成元素として含む材料を用いる場合において、化3で表された化合物を含み、さらに化9で表された軽金属塩および化25で表された軽金属塩のうちの少なくとも1種を含む電解液を用いることで、より優れた高温特性を得られることがわかった。また、化3で表された化合物を含み、さらに化9で表された軽金属塩および化25で表された軽金属塩の両方を含む電解液を用いることで、特に優れた高温特性を得られることがわかった。
負極活物質として、コバルト−スズを構成元素として含む材料を用いる場合においても、負極に炭素材料、リチウム金属、ケイ素(Si)を用いる場合と同様に、化3で表された化合物の中でも、化5で表された化合物を含む電解液を用いることで、より優れた高温特性を得られる傾向にある。さらに、負極活物質として、コバルト−スズを構成元素として含む材料を用いる場合にも、負極に炭素材料、リチウム金属、ケイ素(Si)を用いる場合と同様に、化3で表された化合物の含有量は、0.01重量%以上50重量%以下が好ましい傾向にある。
また、上述した実施例では、電解液を用いる場合について説明したが、ゲル状の電解質を用いても同様の結果を得ることができる。
以上、説明したように、この発明によると、負極全般において、化3で表された化合物の少なくとも1種を含む電解質を用いることで、高温特性を向上できることがわかった。また、負極全般において、化3で表された化合物の中でも、化5で表された化合物を含む電解質を用いることで、より優れた高温特性を得られることがわかった。さらに、負極全般において、化3で表された化合物に加えて、さらに不飽和結合を有する環状炭酸エステルを含む電解質を用いることで、より優れた高温特性を得られることがわかった。さらに、負極全般において、より優れた高温特性を得ることができる点からは、化3で表された化合物の含有量は、溶媒に対して、0.01重量%以上50重量%以下が好ましいことがわかった。さらに、負極全般において、化3で表された化合物を含み、さらに電解質塩として、化9で表された軽金属塩および化25で表された軽金属塩のうちの少なくとも1種を含む電解質を用いることで、より優れた高温特性を得られることがわかった。さらに、化9で表された軽金属塩および化25で表された軽金属塩の両方を含む電解質を用いることで、特に優れた高温特性を得られることがわかった。
以上、この発明を実施形態および実施例を挙げて説明したが、この発明は、上述した実施形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上述した実施形態および実施例では、巻回構造の二次電池を具体的に挙げて説明したが、この発明は、角型、シート型あるいはカード型、または正極および負極を複数積層した積層構造を有する二次電池についても同様に適用することができる。
また、上述した実施形態においては、円筒型の二次電池および外装材にラミネートフィルムを用いた二次電池を例に挙げて説明したが、これらに限定されることはない。例えば、コイン型、角型、ボタン型等、外装材に金属製容器等を用いた二次電池、薄型電池等、種々の形状や大きさした非水電解質電池にも適用可能である。
さらに、上述した実施形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる場合について説明したが、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの長周期型周期表における他の1族の元素、またはマグネシウム(Mg)あるいはカルシウム(Ca)などの長周期型周期表における2族の元素、またはアルミニウム(Al)などの他の軽金属、またはリチウム(Li)あるいはこれらの合金を用いる場合についても、この発明を適用することができ、同様の効果を得ることができる。その際、負極活物質には、実施形態で説明したような負極材料を同様にして用いることができる。