JP5217231B2 - オリゴアニリン化合物 - Google Patents

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Description

本発明は、オリゴアニリン化合物に関し、さらに詳述すると、アニリンの繰り返し単位の中にアニリン骨格とは異なるπ電子共役系が積層したアリール基を導入した構造単位を有するオリゴアニリン化合物に関する。
近年、本発明者らは、低分子オリゴアニリン化合物からなる電荷輸送性物質を用いた有機溶媒系の電荷輸送性ワニスから得られる電荷輸送性薄膜が、優れたエレクトロルミネッッセンス素子特性を示すことを報告している(特許文献1:特開2002−151272号公報参照)。
特許文献1の電荷輸送性ワニスにおいて、電荷輸送性材料を構成する低分子オリゴアニリン化合物は、分子内で同一の繰り返し単位構造を有し、その共役系が伸長するほど溶剤に対する溶解性が低下し、電荷輸送性薄膜用の電荷輸送性ワニスを調製する際に、電荷輸送性材料の量を増加させることは困難であった。
また、電荷輸送性材料の溶解性を向上させた場合、同時に耐熱性低下の原因となることが多く、高耐熱性を維持したまま溶解性を向上させることは困難であった。
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子という)において、素子構造を最適化して素子特性を向上させようとした場合、電荷輸送性薄膜の膜厚が重要な要素となる。この膜厚は、電荷輸送性ワニスにおける電荷輸送性材料の溶解性に大きな影響を受けることから、電荷輸送性材料の溶解性を高めることにより膜厚のコントロールが容易になる。
また、電子デバイスとして利用される有機EL素子は、高い耐熱性を有することが要求されることから、有機EL素子に用いられる電荷輸送性材料には高耐熱性が求められている。しかし、耐熱性を向上させるためには電荷輸送性材料の骨格をよりリジットな骨格に設計しなければならず、溶解性とトレードオフになることが一般的である。
このように、有機EL素子の電荷輸送性薄膜においては、用いる電荷輸送性材料の溶解性が高く、高耐熱性を有することが望まれているが、高い溶解性および耐熱性を併せ持つような材料設計をすることは困難であり、このトレードオフを解消することが大きな課題であった。
特開2002−151272号公報
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、溶剤に対して良好な溶解性を有し、高耐熱性を有する電荷輸送性薄膜を与え得るオリゴアニリン化合物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、分子内のアニリンの繰り返し単位の中にアニリン骨格とは異なるπ電子共役系が積層したアリール基を導入した構造単位を有するオリゴアニリン化合物が、有機溶媒に対する溶解性に優れるとともに、高耐熱性を有する電荷輸送性薄膜を与え得ることから、有機EL素子の機能を十分に発現させ得る電荷輸送性材料として有用であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
1. 式(3)で表されることを特徴とするオリゴアニリン化合物、
Figure 0005217231
(式中、R1 〜R 14は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基、またはスルホン基を示す。mおよびnは、それぞれ独立に、1以上の整数、かつ、m+n≦20を満足する。
2. 前記R 1 〜R 14 が、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のオルガノオキシ基、炭素数1〜20のオルガノアミノ基、炭素数1〜20のオルガノシリル基、炭素数1〜20のオルガノチオ基、またはスルホン基である1のオリゴアニリン化合物、
3. 1または2のオリゴアニリン化合物からなる電荷輸送性物質、
4. 1または2のオリゴアニリン化合物を含む電荷輸送性ワニス、
5. 4の電荷輸送性ワニスから作製される電荷輸送性薄膜、
6. 1または2のオリゴアニリン化合物を含む電荷輸送性薄膜、
7. 5または6の電荷輸送性薄膜を少なくとも1層備える有機電子デバイス、
8. 5または6の電荷輸送性薄膜を少なくとも1層備える有機エレクトロルミネッセンス素子、
9. 前記電荷輸送性薄膜が、正孔注入層または正孔輸送層である8の有機エレクトロルミネッセンス素子
を提供する。
本発明のオリゴアニリン化合物は、溶剤に対する溶解性が良好であり、ワニスにした場合の固形分マージンが広い。したがって、当該化合物を電荷輸送性薄膜を構成する材料として用いることで有機EL素子の最適構造を見出す際の膜厚コントロールが容易になる。
また、当該オリゴアニリン化合物から得られた電荷輸送性薄膜は、耐熱性が良好であるため、有機EL素子のエージング耐性を向上させることができ、その結果、有機EL素子の長寿命化を達成できる。
さらに、本発明のオリゴアニリン化合物は、分子量が定まったモノマー同士のアミレーションで合成することができ、分子量分布を持たない単一の化合物として得ることができる。単一の化合物は、分子量分布を持つ一連の一般的なポリマーと比較して精製しやすい利点を有している。
有機EL素子に用いられる電荷輸送性薄膜は、不純物を含まないことが求められているため、精製が容易で不純物を低減化し得る本発明のオリゴアニリン化合物を用いて作製される薄膜は、有機EL素子の電荷輸送性薄膜として好適に用いることができる。
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
式(3)で表されるオリゴアニリン化合物において、R1〜R 14 は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基、スルホン基を表す。
ここで、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子が挙げられる。
一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビシクロヘキシル基等のビシクロアルキル基;ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、1または2または3−ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、キシリル基、トリル基、ビフェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルシクロヘキシル基等のアラルキル基などが挙げられる。
なお、これらの一価炭化水素基の水素原子の一部または全部は、水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基、アルキル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基などで置換されていてもよい。
オルガノオキシ基としては、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基などが挙げられ、これらのアルキル基、アルケニル基、アリール基としては、上記一価炭化水素基と同様のものが挙げられる。
オルガノアミノ基としては、フェニルアミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、ラウリルアミノ基等のアルキルアミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジヘプチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジノニルアミノ基、ジデシルアミノ基等のジアルキルアミノ基;シクロヘキシルアミノ基、モルホリノ基などが挙げられる。
オルガノシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリブチルシリル基、トリペンチルシリル基、トリヘキシルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基などが挙げられる。
オルガノチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、ラウリルチオ基などのアルキルチオ基が挙げられる。
アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
リン酸エステル基としては、−P(O)(OQ1)(OQ2)が挙げられる。
エステル基としては、−C(O)OQ1、−OC(O)Q1が挙げられる。
チオエステル基としては、−C(S)OQ1、−OC(S)Q1が挙げられる。
アミド基としては、−C(O)NHQ1、−NHC(O)Q1、−C(O)NQ12、−NQ1C(O)Q2が挙げられる。
ここで、上記Q1およびQ2は、アルキル基、アルケニル基またはアリール基を示し、これらは上記一価炭化水素基と同様のものを例示することができる。
上記一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基などにおける炭素数は、特に限定されるものではないが、一般に炭素数1〜20、好ましくは1〜8である。
上述の各置換基の中でも、フッ素原子、スルホン基、置換もしくは非置換のオルガノオキシ基、アルキル基、オルガノシリル基がより好ましい。
なお、非置換とは水素原子が結合していることを意味する。また、以上の置換基において、置換基同士が連結されて環状である部分を含んでいてもよい。
式(3)のオリゴアニリン化合物において、m+nは、良好な電荷輸送性を発揮させるという点から4以上であることが好ましく、溶媒に対する溶解性の確保という点から16以下であることが好ましい
式(3)で表されるオリゴアニリン化合物は、溶解性を高めるとともに、電荷輸送性を均一にするということを考慮すると、分子量分布のない、言い換えると分散度が1のオリゴアニリン化合物であることが好ましく、その分子量は材料の揮発の抑制および電荷輸送性発現のために、下限として通常200以上、好ましくは400以上であり、また溶解性向上のために、上限として通常5000以下、好ましくは2000以下である。
式()で表されるオリゴアニリン化合物の製造方法としては、以下の方法を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
すなわち、p−ヒドロキシジフェニルアミン化合物と、下記式(14)で表されるジアミン化合物とを、脱水縮合剤であるテトラアルコキシチタン化合物の存在下で反応させて式()で表されるオリゴアニリン化合物を得ることができる。
Figure 0005217231
式(14)のジアミン化合物と反応させる化合物としては、例えば、p−ヒドロキシジフェニルアミン、4−〔〔4−(フェニルアミノ)フェニル〕アミノ〕フェノール、4−〔〔4−〔〔4−(フェニルアミノ)フェニル〕アミノ〕フェニル〕アミノ〕フェノール、4−〔〔4−〔〔4−〔〔4−(フェニルアミノ)フェニル〕アミノ〕フェニル〕アミノ〕フェニル〕アミノ〕フェノール等が挙げられる。これらの化合物の使用量は、式(14)のジアミン化合物に対して2.0〜3.0倍モルが好適である。
式(14)において、ジアミン化合物のより詳細な具体例としては、式(15)に示すPseudo−p−ジアミノ[2.2]パラシクロファンが挙げられる。
Figure 0005217231
テトラアルコキシチタン化合物としては、テトラ−n−メトキシチタン、テトラ−n−エトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン等が挙げられ、テトラ−n−ブトキシチタンが好適である。その使用量は、式(14)のジアミン化合物に対して2〜20倍モルが好適である。なお、nはノルマルを、iはイソをそれぞれ表す。
反応溶媒としては、DMF、DMAc、NMP、DMI、DMSO、THF、1,4−ジオキサン、トルエンが挙げられ、1,4−ジオキサン、トルエンが好適である。
反応温度は、−50℃から使用する溶媒の沸点まで可能であるが、80〜120℃の範囲が好ましい。反応時間は、通常、0.1〜100時間である。
上記反応により得られた式()で表されるオリゴアニリン化合物は、再結晶法で精製することができる。再結晶溶媒としては、例えば、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に、オリゴアニリン化合物の酸化体を溶解しにくい溶媒が好ましく、このような溶媒としては、例えば、1,4−ジオキサンが挙げられる。
本発明に係る電荷輸送性ワニスは、電荷輸送性物質として、上述したオリゴアニリン化合物を含むものである。
ここで、電荷輸送性ワニスとは、電荷輸送機構の本体である本発明のオリゴアニリン化合物からなる電荷輸送物質、またはこの電荷輸送物質および電子もしくは正孔受容性ドーパント物質からなる電荷輸送性有機材料を少なくとも1種の溶媒に溶解または分散してなるものである。
なお、電荷輸送性とは、導電性と同義であり、正孔輸送性、電子輸送性、正孔および電子の両電荷輸送性のいずれかを意味する。本発明の電荷輸送性ワニスは、それ自体に電荷輸送性があるものでもよく、ワニスを使用して得られる固体膜に電荷輸送性があるものでもよい。
本発明の電荷輸送性ワニスの電荷輸送能等を向上させるために、必要に応じて用いられる電荷受容性ドーパント物質としては、正孔輸送性物質に対しては電子受容性ドーパント物質を、電子輸送性物質に対しては正孔受容性ドーパント物質を用いることができるが、いずれも高い電荷受容性を有することが好ましい。電荷受容性ドーパント物質の溶解性に関しては、ワニスに使用する少なくとも一種の溶媒に溶解するものであれば特に限定されない。
電子受容性ドーパント物質の具体例としては、塩化水素、硫酸、硝酸、リン酸等の無機強酸;塩化アルミニウム(III)(AlCl3)、四塩化チタン(IV)(TiCl4)、三臭化ホウ素(BBr3)、三フッ化ホウ素エーテル錯体(BF3・OEt2)、塩化鉄(III)(FeCl3)、塩化銅(II)(CuCl2)、五塩化アンチモン(V)(SbCl5)、五フッ化砒素(V)(AsF5)、五フッ化リン(PF5)、トリス(4−ブロモフェニル)アルミニウムヘキサクロロアンチモナート(TBPAH)等のルイス酸;ベンゼンスルホン酸、トシル酸、カンファスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、国際公開第2005/000832号パンフレットに記載されている1,4−ベンゾジオキサンジスルホン酸誘導体、国際公開第2006/025342号パンフレットに記載されているアリールスルホン酸誘導体、特開2005−108828号公報に記載されているジノニルナフタレンスルホン酸誘導体等の有機強酸;7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)、ヨウ素等の有機または無機酸化剤を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
特に好ましい電子受容性ドーパント物質としては、5−スルホサリチル酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、国際公開第2005/000832号パンフレットに記載されている1,4−ベンゾジオキサンジスルホン酸誘導体、特開2005−108828号公報に記載されているジノニルナフタレンスルホン酸誘導体等の有機強酸である電子受容性ドーパント物質を挙げることができる。
正孔受容性ドーパントの具体例としては、アルカリ金属(Li,Na,K,Cs)、リチウムキノリノラート(Liq)、リチウムアセチルアセトナート(Li(acac))等の金属錯体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
電荷輸送性ワニスを調製する際に用いられる溶媒としては、電荷輸送性物質および電荷受容性物質を良好に溶解し得る高溶解性溶媒を用いることができる。このような高溶解性溶媒としては、例えば、水;メタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、トルエン等の有機溶媒を用いることができる。これらの溶媒は1種単独で、または2種以上混合して用いることができ、その使用量は、ワニスに使用する溶媒全体に対して5〜100質量%とすることができる。
なお、電荷輸送性ワニスは、上記溶媒に完全に溶解しているか、均一に分散している状態となっていることが好ましい。
また、本発明の電荷輸送性ワニスは、20℃で2〜200mPa・s、特に2〜100mPa・sの粘度を有し、常圧で沸点50〜300℃、特に150〜250℃の高粘度有機溶媒を、少なくとも一種類含有することが好適である。
高粘度有機溶媒としては、特に限定されるものではなく、例えば、シクロヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールジクリシジルエーテル、1,3−オクチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、へキシレングリコール等が挙げられる。
本発明のワニスに用いられる溶媒全体に対する高粘度有機溶媒の添加割合は、固体が析出しない範囲内であることが好ましく、固体が析出しない限りにおいて、添加割合は、5〜80質量%であることが好ましい。
さらに、基板に対する濡れ性の向上、溶媒の表面張力の調整、極性の調整、沸点の調整等の目的で、焼成時に膜の平坦性を付与し得るその他の溶媒を、ワニスに使用する溶媒全体に対して1〜90質量%、好ましくは1〜50質量%の割合で混合することもできる。
このような溶媒としては、例えば、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチルカルビトール、ジアセトンアルコール、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
以上で説明した電荷輸送性ワニスを基材上に塗布し、溶媒を蒸発させることで基材上に電荷輸送性薄膜を形成させることができる。
ワニスの塗布方法としては、特に限定されるものではなく、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り、インクジェット法、スプレー法等が挙げられる。
溶媒の蒸発法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ホットプレートやオーブンを用いて、適切な雰囲気下、すなわち大気、窒素等の不活性ガス、真空中等で蒸発させればよい。これにより、均一な成膜面を有する薄膜を得ることが可能である。
焼成温度は、溶媒を蒸発させることができれば特に限定されないが、40〜250℃で行うことが好ましい。この場合、より高い均一成膜性を発現させたり、基材上で反応を進行させたりする目的で、2段階以上の温度変化をつけてもよい。
電荷輸送性薄膜の膜厚は、特に限定されないが、有機EL素子内で電荷注入層として用いる場合、5〜200nmであることが望ましい。膜厚を変化させる方法としては、ワニス中の固形分濃度を変化させたり、塗布時の基板上の溶液量を変化させたりする等の方法がある。
本発明の電荷輸送性ワニスを用いてOLED素子を作製する場合の使用材料や、作製方法としては、下記のようなものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
使用する電極基板は、洗剤、アルコール、純水等による液体洗浄を予め行って浄化しておくことが好ましく、例えば、陽極基板では使用直前にオゾン処理、酸素−プラズマ処理等の表面処理を行うことが好ましい。ただし陽極材料が有機物を主成分とする場合、表面処理を行わなくともよい。
正孔輸送性ワニスをOLED素子に使用する場合、以下の方法を挙げることができる。
陽極基板上に当該正孔輸送性ワニスを塗布し、上記の方法により蒸発、焼成を行い、電極上に正孔輸送性薄膜を作製する。これを真空蒸着装置内に導入し、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極金属を順次蒸着してOLED素子とする。発光領域をコントロールするために任意の層間にキャリアブロック層を設けてもよい。
陽極材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)に代表される透明電極が挙げられ、平坦化処理を行ったものが好ましい。高電荷輸送性を有するポリチオフェン誘導体やポリアニリン誘導体を用いることもできる。
正孔輸送層を形成する材料としては、(トリフェニルアミン)ダイマー誘導体(TPD)、(α−ナフチルジフェニルアミン)ダイマー(α−NPD)、[(トリフェニルアミン)ダイマー]スピロダイマー(Spiro−TAD)等のトリアリールアミン類、4,4’,4”−トリス[3−メチルフェニル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(m−MTDATA)、4,4’,4”−トリス[1−ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(1−TNATA)等のスターバーストアミン類、5,5”−ビス−{4−[ビス(4−メチルフェニル)アミノ]フェニル}−2,2’:5’,2”−ターチオフェン(BMA−3T)等のオリゴチオフェン類を挙げることができる。
発光層を形成する材料としては、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)(Alq3)、ビス(8−キノリノラート)亜鉛(II)(Znq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)(BAlq)および4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)等が挙げられ、電子輸送材料または正孔輸送材料と発光性ドーパントとを共蒸着することによって、発光層を形成してもよい。
電子輸送材料としては、Alq3、BAlq、DPVBi、(2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)(PBD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、バソクプロイン(BCP)、シロール誘導体等が挙げられる。
発光性ドーパントとしては、キナクリドン、ルブレン、クマリン540、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy)3)、(1,10−フェナントロリン)−トリス(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−ブタン−1,3−ジオナート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)3phen)等が挙げられる。
キャリアブロック層を形成する材料としては、PBD、TAZ、BCP等が挙げられる。
電子注入層を形成する材料としては、酸化リチウム(Li2O)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミナ(Al23)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化ストロンチウム(SrF2)、Liq、Li(acac)、酢酸リチウム、安息香酸リチウム等が挙げられる。
陰極材料としては、アルミニウム、マグネシウム−銀合金、アルミニウム−リチウム合金、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等が挙げられる。
また、電子輸送性ワニスをOLED素子に使用する場合、以下の方法を挙げることができる。
陰極基板上に当該電子輸送性ワニスを塗布して電子輸送性薄膜を作製し、これを真空蒸着装置内に導入し、上記と同様の材料を用いて電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層を形成した後、陽極材料をスパッタリング等の方法により成膜してOLED素子とする。
本発明の電荷輸送性ワニスを用いたPLED素子の作製方法は、特に限定されないが、以下の方法が挙げられる。
上記OLED素子作製において、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の真空蒸着操作を行う代わりに、発光性電荷輸送性高分子層を形成することによって本発明の電荷輸送性ワニスによって形成される電荷輸送性薄膜を含むPLED素子を作製することができる。
具体的には、陽極基板上に、電荷輸送性ワニス(正孔輸送性ワニス)を塗布して上記の方法により正孔輸送性薄膜を作製し、その上部に発光性電荷輸送性高分子層を形成し、さらに陰極電極を蒸着してPLED素子とする。
あるいは、陰極基板上に、電荷輸送性ワニス(電子輸送性ワニス)を塗布して上記の方法により電子輸送性薄膜を作製し、その上部に発光性電荷輸送性高分子層を形成し、さらにスパッタリング、蒸着、スピンコート等の方法により陽極電極を作製してPLED素子とする。
使用する陰極および陽極材料としては、上記OLED素子作製時と同様の物質が使用でき、同様の洗浄処理、表面処理を行うことができる。
発光性電荷輸送性高分子層の形成法としては、発光性電荷輸送性高分子材料、またはこれに発光性ドーパントを加えた材料に溶媒を加えて溶解するか、均一に分散し、正孔注入層を形成してある電極基板に塗布した後、溶媒の蒸発により成膜する方法が挙げられる。
発光性電荷輸送性高分子材料としては、ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)等のポリフルオレン誘導体、ポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキソキシ)−1,4−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)等のポリフェニレンビニレン誘導体、ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)などのポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等を挙げることができる。
溶媒としては、トルエン、キシレン、クロロホルム等を挙げることができ、溶解または均一分散法としては攪拌、加熱攪拌、超音波分散等の方法が挙げられる。
塗布方法としては、特に限定されるものではなく、インクジェット法、スプレー法、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り等が挙げられる。なお、塗布は、窒素、アルゴン等の不活性ガス下で行うことが望ましい。
溶媒の蒸発法としては、不活性ガス下または真空中、オーブンまたはホットプレートで加熱する方法を挙げることができる。
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例で用いた各測定装置は以下のとおりである。
[MSスペクトル]
装置(MALDI−TOF):Applied Biosystems社製 Voyager−DETM PRO
装置(FAB):日本電子(株)製 JMS−700T
[NMRスペクトル]
日本電子株式会社製 ECP300
[元素分析]
Perkin Elmer社製 PE2400シリーズII
[膜厚測定]
日本真空技術社製 表面形状測定装置 DEKTAK3ST
[イオン化ポテンシャル(以下Ipと略す)]
理研計器社製 光電子分光装置 AC−2
[差動型示差熱天秤]
MACサイエンス株式会社(現ブルカーエイエックスエス(株))製 Tg−DTA 2000SR
[OLED素子特性]
プレサイスゲージ社製 有機EL発光効率測定装置 EL1003
[1]原料化合物の合成
[合成例1]
式(15)に示すPseudo−p−ジアミノ[2.2]パラシクロファン(以下P−p−DACと略す)は以下の合成方法によって合成した。
Figure 0005217231
P−p−DACは[2.2]パラシクロファンを出発原料とし、Pseudo−p−ジブロモ[2.2]パラシクロファンを経由した後(式1)、カップリングすることで合成した(式2)。
Figure 0005217231
臭素(46.08g,288mmol)を秤量し、ジクロロメタン150mlに溶解させた。調製した臭素溶液50mL、ジクロロメタン100mL、および鉄(468.7mg,8.33mmol)を4つ口フラスコに加え、1時間加熱還流した。次いで、[2.2]パラシクロファン(30.02g,144mmol)のジクロロメタンスラリー液(100mL)を反応溶液に加えた後、加熱還流しながら残りの臭素溶液を5時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間加熱還流した。
反応終了後、室温まで冷却し、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液200mLを加え、液々抽出し、残った臭素を除去した。次いで、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液で有機層を洗浄し、分離した有機相は硫酸マグネシウムにて乾燥させた。乾燥剤を除去し、溶媒を留去後、得られた固体をジクロロエタン(200mL)から再結晶した。得られた白色固体は、1H−NMRから目的のPseudo−p−ジブロモ[2.2]パラシクロファンであることが確認された。収量は11.35g、収率は21.5%であった。
Figure 0005217231
窒素置換した4つ口フラスコにPseudo−p−ジブロモ[2.2]パラシクロファン(20.58g,56.2mmol)、t−ブトキシナトリウム(13.18g,137.1mmol)、Pd2(dpa)3(520.5mg,0.569mmol)、BINAP(943.5mg,1.52mmol)、およびベンゾフェノンイミン(24.41g,134.7mmol)を加えた。次いで、脱気したトルエン400mLを加え、窒素雰囲気下で14時間加熱還流した。HPLCにて原料の消失を確認した後に反応を終了した。その後、室温まで放冷し、析出した固体を吸引ろ過にてろ取し、得られた固体を200mLのトルエンで洗浄した。減圧乾燥後、得られた固体を4つ口フラスコに加え、THF200mL、1M塩酸200mLを加え、4時間加熱還流した。室温まで冷却後、1M水酸化ナトリウム水溶液200mLを加え、30分撹拌した後、ジクロロメタンを200mL加え、液々抽出した。水層をジクロロメタンで3回洗浄し、得られた有機層を硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた。乾燥剤を除去し、有機層を濃縮した後、展開溶媒にジクロロエタンを用い、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。目的のP−p−DACはジクロロエタン:酢酸エチル=4:1を用いて溶出させて集めた後、有機溶媒を留去した。
得られた固体をトルエン(400mL)から再結晶した。得られた固体は、淡緑色であり、NMRおよびLC−MSからP−p−DACであることが確認された。収量は8.40g、収率は62.8%であった。
[2]オリゴアニリン化合物の合成
[比較例1]
式(16)に示されるフェニルテトラアニリン(以下PTAと略す)は、ブレティン・オブ・ケミカル・ソサエティ・オブ・ジャパン(Bulletin of Chemical Society of Japan)、1994年、第67巻、p.1749−1752に従って、p−ヒドロキシジフェニルアミンとp−フェニレンジアミンとから合成した(薄青色固体、収率85%)。
Figure 0005217231
得られたPTA20g(0.0452mmol)と、活性炭2g(PTAの10質量%)と、超音波を用いて脱気した脱水1,4−ジオキサン500gとを窒素雰囲気下にて1L3つ口丸底フラスコに加えた。次いで、オイルバスを使用して内温を90℃に保持したまま、1時間加熱攪拌し、PTAを完全に溶解させた。その後、桐山ガラスS−60、桐山ろ紙3C、固定相としてセライト545を用いて、温度コントローラ付き水循環装置を90℃に保温したまま熱時ろ過を行い、活性炭を除去した。ろ液は内温が20℃になるまで放冷した。放冷後、PTAが析出した薄紫色溶液を、反応容器に入れたままグローブボックスに移し、相対湿度が5%になるまで窒素フローを行った。相対湿度5%を保持し、グローブボックス中で析出したPTAを吸引ろ過した。ブフナーロート上のPTAは1,4−ジオキサン200mL、脱水トルエン200mL、ジエチルエーテル200mLの順序で洗浄した。グローブボックス中でフッ素樹脂ミクロスパーテルを用いてPTAを100mL丸底フラスコに移し取り、3方コックを用いて減圧後、窒素パージした。その後、120℃に保持した真空乾燥機中で24時間減圧乾燥して白色固体のPTA19.34gが得られた。回収率は96%であった。
なお、脱水1,4−ジオキサンは関東化学製、ヒドラジン1水和物は和光純薬製、活性炭素は純正化学製、セライトは純正化学製(セライト545)を使用した。
[実施例1]
式(17)に示されるビス(4−ジフェニルアミノ)−2,2−p−シクロファン(アニリノシクロファン;以下AnCyと略す)は、(式3)に示されるように、p−ヒドロキシジフェニルアミンと、合成例1で得られたP−p−DACとから合成した(茶緑色粉末、収率72%)。
Figure 0005217231
Figure 0005217231
100mLナス型フラスコに脱水トルエン20mL、P−p−DAC 1.9066g(8mmol)、およびテトラ−n−ブトキシチタン24.5030g(72mmol.9eq.)と酢酸p−トリル10.8122g(72mmol,9eq.)とをエバポレーターで60℃30分間エバポレートして得られた脱水縮合剤を加え、窒素雰囲気下、100℃で攪拌した。次いで、p−ヒドロキシジフェニルアミン(p−DPHA)3.5562g(19.2mmol,2.4eq.)を加え、100℃で加熱しながら48時間攪拌した。
反応終了後、室温まで冷却した反応液を濾過し、粗成生物をトルエン、次いでジエチルエーテルで洗浄した後、乾燥してAnCyの粗生成物を得た。
得られたAnCyの粗生成物を、比較例1に準じた活性炭処理・再結晶処理を施すことで精製した。回収率は96%であった。
上記式(16)および(17)で示される化合物の構造は、1H−NMR、MALDI−TOF−MS、元素分析から同定した。MALDI−TOF−MSおよび元素分析の結果を表1に示す。
Figure 0005217231
[3]電荷輸送性ワニスおよび電荷輸送性薄膜の作製
[比較例2]
比較例1で得られたPTA 0.0500g(0.1130mmol)と、式(18)で示される5−スルホサリチル酸(以下5−SSA・2水和物と略す)0.1149g(0.4520mmol;SSA換算)とを、窒素雰囲気下でN,N−ジメチルアセトアミド(以下DMAcと略す)0.8433gに完全に溶解させた。得られた溶液に、シクロヘキサノール(以下c−HexOHと略す)2.5299gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分4.2%)。
この電荷輸送性ワニスを、ワニス塗布の直前まで40分間オゾン洗浄を行ったITO付きガラス基板上にスピンコート法により塗布し、空気中200℃で60分間焼成し、均一な正孔輸送性薄膜を作製した。
Figure 0005217231
[実施例2]
実施例1で得られたAnCy 0.0500g(0.0873mmol)と、式(18)で示される5−SSA・2水和物0.0888g(0.3492mmol;SSA換算)とを、窒素雰囲気下でDMAc0.7197gに完全に溶解させた。得られた溶液に、c−HexOH2.1591gを加えて攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分4.2%)。
この電荷輸送性ワニスを用いた以外は、比較例2と同様にしてITO付きガラス基板上に正孔輸送性薄膜を作製した。
[比較例3]
比較例1で得られたPTA 0.0386g(0.0873mmol)とNSO−20.0788g(0.0873mmol)とを、窒素雰囲気下でDMAc0.6695gに完全に溶解させた。得られた溶液に、c−HexOH2.0085gを加え攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分4.2%)。
この電荷輸送性ワニスを用いた以外は、比較例2と同様にしてITO付きガラス基板上に正孔輸送性薄膜を成膜した。
なお、NSO−2は、国際公開第2006/025342号パンフレットに従って合成した(収率81%)。
Figure 0005217231
[実施例3]
実施例1で得られたAnCy 0.0500g(0.0873mmol)とNSO−20.0788g(0.0873mmol)とを、窒素雰囲気下でDMAc0.7345gに完全に溶解させた。得られた溶液に、c−HexOH2.2034gを加え攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分4.2%)。
この電荷輸送性ワニスを用いた以外は、比較例2と同様にしてITO付きガラス基板上に正孔輸送性薄膜を成膜した。
上記実施例2,3および比較例2,3で製膜した薄膜の膜厚、Ipを表2に示す。
Figure 0005217231
表3に示されるように、ホストをPTAからAnCyに変更することで、Ipが大きくなっていることが分かる。Ipは、比較例2と実施例2とを比較すると0.06eV、比較例3と実施例3とを比較すると、0.07eV大きくなっており、ホストを変更することで、仕事関数を容易に変化させることができ、コントロールできることが確認できた。
[4]オリゴアニリン化合物の溶解性
[比較例4]
ホストをPTA、ドーパントを5−SSA・2水和物、溶媒組成をDMAc:c−HexOH=1:3(質量比)とし、固形分11質量%となるように電荷輸送性ワニスを調製したところ、固形分は溶解した。
なお、溶解性試験は固形分が完全に溶解し、目視で残留する固形分が確認できない場合は溶解と、確認できた場合は不溶とした。固形分を溶解させる際には、23℃一定で撹拌し、24時間経過した後の様相を観察し、溶解性の定義とした(以下、同様)。
[比較例5]
ホストをPTA、ドーパントを5−SSA・2水和物、溶媒組成をDMAc:c−HexOH=1:3(質量比)とし、固形分12質量%となるように電荷輸送性ワニスを調製したところ、固形分は不溶であった。
[比較例6]
ホストをPTA、ドーパントをNSO−2、溶媒組成をDMAc:c−HexOH=1:3(質量比)とし、固形分9質量%となるように電荷輸送性ワニスを調製したところ、固形分は溶解した。
[比較例7]
ホストをPTA、ドーパントをNSO−2、溶媒組成をDMAc:c−HexOH=1:3(質量比)とし、固形分10質量%となるように電荷輸送性ワニスを調製したところ、固形分は不溶であった。
[実施例4]
ホストをAnCy、ドーパントを5−SSA・2水和物、溶媒組成をDMAc:c−HexOH=1:3(質量比)とし、固形分19質量%となるように電荷輸送性ワニスを調製したところ、固形分は溶解した。
[実施例5]
ホストをAnCy、ドーパントを5−SSA・2水和物、媒組成をDMAc:c−HexOH=1:3(質量比)とし、固形分20質量%となるように電荷輸送性ワニスを調製したところ、固形分は不溶であった。
[実施例6]
ホストをAnCy、ドーパントをNSO−2、媒組成をDMAc:c−HexOH=1:3(質量比)とし、固形分13質量%となるように電荷輸送性ワニスを調製したところ、固形分は溶解した。
[実施例7]
ホストをAnCy、ドーパントをNSO−2、媒組成をDMAc:c−HexOH=1:3(質量比)とし、固形分14質量%となるように電荷輸送性ワニスを調製したところ、固形分は不溶であった。
上記実施例4〜7、比較例4および7で用いたホストおよびドーパント、固形分、溶解性試験の結果を表3に示す。
Figure 0005217231
表3に示されるように、ホストをPTAからAnCyに変更すると溶解性が向上することが確認された。ホストをPTAに、ドーパントを5−SSA・2水和物に設定(比較例4および5参照)すると、固形分12質量%では不溶であったのに対し、ホストをAnCyに、ドーパントを5−SSA・2水和物に設定(実施例4および5参照)すると、固形分19質量%でも溶解した。
また、ホストをPTAに、ドーパントをNSO−2に設定(比較例6および7参照)すると、固形分10質量%では不溶であったのに対し、ホストをAnCyに、ドーパントをNSO−2に設定(実施例6および7参照)すると、固形分13質量%でも溶解した。
表4から、溶解性が向上したことが明らかとなり、電荷輸送性ワニスを調製する時の製造マージンが拡大し、この電荷輸送性ワニスを用いて電荷輸送性薄膜を作製する際にも膜厚コントロールが容易になり、厚膜化できることが確認できた。
[5]オリゴアニリン化合物の耐熱性
[比較例8]
比較例1で得られたPTAのTg−DTAを測定したところ、5%Tg減の温度は285℃であった。
なお、Tg−DTAは30〜300℃までを走査し、1分間に1℃昇温させた(以下、同様)。
[実施例8]
実施例1で得られたAnCyのTg−DTAを測定したところ、5%Tg減の温度は292℃であった。
上記比較例8および実施例8の結果から、Tgの5%重量減という閾値に対して、AnCyはPTAよりも7℃耐熱性が向上していることが分かる。この要因は、分子内にアリール基が積層したシクロファン骨格を含有しているためと考えられる。
一般的にオリゴアニリン化合物は成膜された状態で、分子間でパッキング構造を構築しており、これが耐熱性を向上させているが、シクロファン骨格は既に分子内で積層するベンゼン環のπ電子がパッキング構造を形成している。
すなわち、本発明に含有されるAnCyは分子内と分子間との両方でパッキング構造を形成しているため、より強固な膜を形成することが示唆される。
また、耐熱性が向上した材料をOLED素子の電荷輸送性材料として組み込み、評価を行うと寿命が長寿命化することが期待でき、比較例8もしくは実施例8のように7℃の耐熱性向上でも、OLED素子としたときの効果は十分に期待できると考える。
[6]OLED素子の作製
[比較例9]
比較例2で作製した電荷輸送性薄膜を真空蒸着装置内に導入し、α−NPD、Alq3、LiF、およびAlを順次蒸着した。膜厚は、それぞれ40nm、60nm、0.5nm、100nmとして、それぞれ8×10-4Pa以下の圧力となってから蒸着操作を行い、OLED素子を作製した。その際の蒸着レートはLiF以外の材料については0.3〜0.4nm/s、またLiFについては0.02〜0.04nm/sとした。一連の蒸着操作は全ての層を蒸着するまで真空下で行った。
[比較例10]
比較例3で作製した電荷輸送性薄膜を用いた以外は、比較例9と同様にして、OLED素子を作製した。
[実施例9]
実施例2で作製した電荷輸送性薄膜を用いた以外は、比較例9と同様にして、OLED素子を作製した。
[実施例10]
実施例3で作製した電荷輸送性薄膜を用いた以外は、比較例9と同様にして、OLED素子を作製した。
上記実施例9,10、および比較例9,10で得られたOLED素子について特性を評価した。結果を表4に示す。
なお、OLED素子の特性は、10mA/cm2および50mA/cm2を閾値としたときの電圧、輝度、発光効率を示した。
Figure 0005217231
表4に示されるように、ホストをPTAからAnCyに変更した場合、10mA/cm2または50mA/cm2通電時を閾値としたときに、電圧および輝度は同等で、発光効率が向上していることがわかる。
ホストをAnCyに変更したことによる発光効率の向上は、励起子の失活を抑制することに起因すると考えられ、発光効率が向上しているにも関わらず、閾値電流密度における電圧および輝度特性が同等になっていることは、アニリン骨格の中にシクロファン骨格が導入されていても、分子内でπ電子共役系は切断しておらず、π電子が分子内で非局在化し、導電性材料として機能発現をしていることが考えられる。
以上に示したように、分子内のアニリンの繰り返し単位の中にアニリン骨格とは異なるπ電子共役系が積層したアリール基を導入した構造単位を有するオリゴアニリン化合物は高溶解性であり、かつ、この化合物を用いることで高耐熱性を有する電荷輸送性薄膜が得られることから、当該オリゴアニリン化合物が、有機EL素子の機能を十分に発現させ得る電荷輸送性材料として有用であることを確認できた。

Claims (9)

  1. 式(3)で表されることを特徴とするオリゴアニリン化合物。
    Figure 0005217231
    (式中、R1 〜R 14は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基、またはスルホン基を示す。mおよびnは、それぞれ独立に、1以上の整数、かつ、m+n≦20を満足する。
  2. 前記R 1 〜R 14 が、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のオルガノオキシ基、炭素数1〜20のオルガノアミノ基、炭素数1〜20のオルガノシリル基、炭素数1〜20のオルガノチオ基、またはスルホン基である請求項1記載のオリゴアニリン化合物。
  3. 請求項1または2記載のオリゴアニリン化合物からなる電荷輸送性物質。
  4. 請求項1または2記載のオリゴアニリン化合物を含む電荷輸送性ワニス。
  5. 請求項4記載の電荷輸送性ワニスから作製される電荷輸送性薄膜。
  6. 請求項1または2記載のオリゴアニリン化合物を含む電荷輸送性薄膜。
  7. 請求項5または6記載の電荷輸送性薄膜を少なくとも1層備える有機電子デバイス。
  8. 請求項5または6記載の電荷輸送性薄膜を少なくとも1層備える有機エレクトロルミネッセンス素子。
  9. 前記電荷輸送性薄膜が、正孔注入層または正孔輸送層である請求項8記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
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