JP5217100B2 - 光学ユニット - Google Patents
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Description
図17は光通信での波長多重通信において多層膜フィルタを使用する場合を説明する概略図である。波長フィルタの応用としては、例えば、光通信での波長多重通信において、波長の分波素子として用いられる。
図17のように多層膜を配置し、波長が多重化された光を次々に多層膜に入射させ、それぞれの多層膜に対応した波長のみが透過または反射されることによって、波長を分波する。
このような多層膜波長フィルタは、1nm以下の波長間隔で多重化されている高密度な波長多重光に対しても、十分な消光比を取りながら分波することが可能である。
しかしながら、このような構成を実現するためには、透過または反射させる波長に対応した、異なる多層膜を、それぞれ独立に形成する必要があり、それぞれの多層膜を入射ビームが反射する面に正確に配置する必要がある。また、それぞれの多層膜に光を入射させるためにはビーム半径を拡大し、さらに異なる多層膜にそれぞれ入射するために十分な光路を取る必要がある。
このようなことから、複数の多層膜を組み合わせる必要があるために一括で形成することができず、実装精度が要求され、さらに、実装できる大きさに対応した素子サイズとなり、数ミクロン角での実装は困難である。
つまり、高輝度LED光源での色再現性を高めるために、透過波長帯域を10nm以下にすることにより単色性を高めて、色再現性を向上させる必要がある。透過波長帯域の制御は、狭帯域なフィルタを多層膜で構成することが可能である。
しかしながら、異なる波長に対する狭帯域フィルタは、多層膜の層厚または屈折率を精密に制御する必要があるため、画素と同じ大きさで、異なる波長を透過させるカラーフィルタを、多層膜の近接配置で形成することは極めて困難である。さらに、狭帯域なフィルタをすべての光源に独立で形成すると、それぞれの波長に対して多層膜を形成する必要があり、多層膜部品が増えてしまう。
また、多層膜のフィルタは入射角度に対しての透過帯域が異なるという欠点もあり、LEDの発光角度が大きいために入射角度の斜め成分が増えてしまい、透過帯域がシフトするという欠点もあるために、LED光を平行光にする必要があり、光学系が複雑になる。
多層膜に波長サイズの構造を形成した波長フィルタとしては、特許文献1に開示されているように、台座基板に異なるパターンを予め形成し、その上に自己クローニングによるフォトニック結晶を製作して、波長フィルタにする方法が提案されている。しかしながら、この方法ではパターニングした基板に多層膜を成膜する必要があり、透過波長のシフト量を大きくすることができずに、形成できる波長範囲が限られている。
また、特許文献2に開示されているような方式も提案されている。多層膜に同心円状のパターンを形成することで、レンズ効果と波長フィルタ効果を同時に持たせる構成である。この構造であると、同心円状のパターンでは波長フィルタとして働くが、それ以外の部分へ入射した光はすべて損失となり、光検出器以外のフィルタ機能としては用いることが困難である。
また、特許文献2による構造であると、上述したように、同心円状のパターンでは波長フィルタとして働くが、それ以外の部分へ入射した光はすべて損失となり、光検出器以外のフィルタ機能としては用いることが困難である。さらに、同心円状の構造では有効屈折率の変化割合が場所により、一定量でなくなり、うまく光を入射させる必要がある。
そこで、本発明の目的は、上述した実情を考慮して、多層膜の平面内で領域に分割し、それぞれの領域に異なる空洞率を有する空洞を形成することで、同一面内で異なる波長を透過又は反射させ、微小な領域ごとに異なる波長を分波する光制御素子を提供し、さらにこの光制御素子とレンズ構造と組み合わせることで光利用効率を向上させ、また光路シフト素子と組み合わせることで、ドロップ波長を高速で変化させることができる光学ユニットを提供することにある。
また、請求項2に記載の発明は、前記空洞に空気以外の材料が注入される請求項1記載の光学ユニットを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、前記多層膜は、膜厚が1/4波長の光学的厚さの整数倍である屈折率の異なる膜を交互に積み重ねた多層膜である請求項1又は2記載の光学ユニットを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、前記複数の空洞が、基板面に平行な面内で構造異方性を有する請求項1乃至3のいずれか一項記載の光学ユニットを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、前記複数の領域に設けられた複数の空洞が、前記領域内で変化する空洞率を有する複数の空洞である請求項1乃至4のいずれか一項記載の光学ユニットを特徴とする。
また、請求項7に記載の発明は、前記発光体と前記水平シフト素子の間にレンズを設ける請求項6記載の光学ユニットを特徴とする。
また、請求項8に記載の発明は、前記光制御素子を複数設ける請求項6または7記載の光学ユニットを特徴とする。
また、請求項9に記載の発明は、前記水平シフト素子は、強誘電性液晶から形成されている請求項6乃至8のいずれか一項記載の光学ユニットを特徴とする。
また、請求項10に記載の発明は、前記水平シフト素子は、光学結晶から形成されている請求項6乃至8のいずれか一項記載の光学ユニットを特徴とする。
さらには、本発明の光学素子(光制御素子)とレンズ、水平(光路)シフト素子を組み合わせることで、高速なアクティブフィルタとなる光学ユニットが形成でき、素子の集積度や安定性を向上させることができる。
以下で、本発明による光制御素子の第1の実施の形態を図1乃至図3を参照して説明する。図1において、光制御素子PCEは基板1上に屈折率と膜厚の異なる層により多層膜2が形成されている。
図1では屈折率と膜厚が異なる2種類の薄膜3と4を1組として、複数組が積み重なることで、多層膜が形成されている構成を取っているが、多層膜の構成は2種類以上の薄膜構成であっても良い。
例えば、多層膜の構成としては3種類以上の薄膜を1組とした構造であっても良く、また、徐々に屈折率が変化する構造であっても良く、さらに、すべての薄膜構成が異なる構造であっても良い。
この領域S1、S2には、空洞5が複数形成されている。この空洞5は、図では等間隔な円形構造をしているが、間隔と構造は機能によって変化させても良い。領域S1とS2での空洞が異なる分布で構成されていることが本発明の特徴である。
空洞5に異なる分布を与える方法としては、図のように空洞5の大きさが異なることも1つであるが、他に、空洞同士の間隔や、領域内の単位面積内に分布する空洞の個数などにより異なる分布を与えることができる。
ここで、この空洞5の異なる分布を定量的に表した量を空洞率と定義する。つまり、単位面積あたりに空洞部分の占める割合を空洞率として表す。例えば、空洞5として、半径rの円形形状で周期aとする正方配列で分布していると仮定すると、空洞率はπr2/a2で表すことができる。
また、三角配列であれば、2πr2/√3a2と表すことができる。領域S1、S2ごとに空洞率が異なることが特徴であり、空洞率が異なることで、領域S1、S2に対する多層膜2の光学特性を変化させることができる。
図2では、領域S1、S2に対して円形形状の空洞5が或る周期の正方配列で分布し、円形形状の半径の大きさを変化させることで空洞率を変化させた構成である。このとき、図1は直線A1−A2で基板1と垂直に切断したときの切り口であり、円形形状が存在しない部分を切り取っている。
空洞率は様々な方法で変化させることが可能であり、製作方法によって柔軟に選択することが可能である。さらに、複数の方法を組み合わせることで、従来では不可能であった緻密な空洞率制御が可能であり、用途に応じて幅広く対応することが可能となる。
ここで、空洞5が波長以下の大きさを有し、一定の周期を有する構造である場合、このような構造はフォトニック結晶配列として知られる構造となる。このフォトニック結晶配列の場合であれば、波長に対する強力な光閉じ込め効果や、異常分散効果を利用することができる。
空洞部分は図1では空気であることを想定しているが、必ずしも空気(屈折率1.0)である必要はない。つまり、空洞部分の屈折率が、多層膜2を構成している材料の屈折率と異なることで、多層膜2を形成している薄膜との屈折率コントラストが生じればよい。従って、空洞部分に空気以外の材料を充填した構造であってもよい。
例えば、波長633nmに対して、多層膜2を屈折率2.2のTiO2と屈折率1.8のSiO2薄膜で形成し、空洞部分に屈折率1.5のポリマ材料を充填した構造でも良い。
また、波長1300nmに対して、多層膜2を屈折率2.3のTiO2と屈折率1.45のSiO2薄膜とし、空洞部分が屈折率3.5のシリコンであっても良い。さらには、波長1300nmに対して、多層膜2を屈折率3.5のシリコンと屈折率1.45のSiO2薄膜とし、空洞部分が屈折率2.2のTiO2であっても良い。
屈折率の異なる媒質を光学的な波長の1/4の整数倍の膜厚で交互に積み重ねると、高い反射率を有する反射鏡(分布ブラッグ反射鏡)を形成できる。この場合、媒質の屈折率の差が大きいほど反射率を大きくすることが可能で、光学素子の多層膜として広く用いられている構造である。
様々な材料に対する成膜方法は広く開発されており、屈折率と膜厚を高精度で制御可能であるため、特定の波長範囲に対して高い反射率が得られる構成を形成できる。本発明においても、分布ブラッグ反射鏡で多層膜2を形成することが可能であり、領域S1、S2を分割して、多層膜2の反射帯域を制御することが可能となる。
波動計算シミュレーションには有限差分(FDTD:Finite Difference Time Domain)法を用いた。このシミュレーション方法は、電磁界を表記するマクスウェルの方程式を空間と時間に対して差分化することで、電磁界を直接計算する方法である。
シミュレーションモデルを細かいメッシュで区切って計算するために、メッシュを十分細かくしておけば、任意構造に対してシミュレーションが可能であり、周波数特性などを比較的容易に計算することが可能であり、本実施の形態のような波長程度の大きさで、複雑な形状を有するモデルに対しては、とくに有効である。
図4では三角格子の周期に対しての単位格子を表記してあり、この単位格子が面内に一様に存在する構造を仮定して、周期境界条件を用いたシミュレーションを行っている。シミュレーションのメッシュサイズとしては20nmとした。
図5は計算例を透過率と波長の関係でそれぞれ示す図である。ここでは、多層膜2(図4)の高屈折率媒質の屈折率を2.0、膜厚を100nmとし、低屈折率媒質の屈折率は1.35、膜厚を120nmとした。図5の(a)〜(h)は円形形状の三角配列空洞が配列されている周期を0.26μmとし、円形形状の半径を変化させている。
空洞5(図4)の半径を徐々に大きくしていくと、図5の(a)から(h)まで変化していく。ここで、図5の(a)でのr=0とは、空洞構造が無いことを意味する。空洞5の半径を大きくすることにより、高反射率を示す波長範囲が短波長側にシフトしていく様子が判る。
例えば、波長750nmの光に対して、異なる半径を有するパターンを異なる領域に形成したときに、パターンが形成されていないr=0では、透過率が1%以下であるのに対して、r=0.30aでは透過率が99%以上となる。
一方、波長600nmに対しては、今度は、r=0.30aであれば、透過率が1%以下であるのに対して、r=0では、透過率が99%以上となる。このように、パターンの形状に対して、透過率の性質が全く逆転する構造を形成することが可能となり、極めて近接した2つの領域に対して、異なる性質の多層膜を形成可能となる。
個別に形成しても、膜厚が異なるために、形成された構造に凹凸が生じてしまい、光の散乱などの原因になる。また、異なる多層膜を精度よく実装するには大きさに限界があり、ディスプレイの画素程度の大きさである10μm程度の大きさを実現するのはさらに困難であった。
そこで、このように多層膜を予め形成した後に、フォトニック結晶配列のような空洞などで形成された微小パターンを形成することによって、反射または透過帯域を変化させることができれば、微小な領域であっても異なる波長に対応した多層膜を形成することが可能である。
さらに、その中心波長の変化は150nmから200nmと幅広く取ることができ、可視光を利用したディスプレイから、光通信用のフィルタまで幅広く適用することができる。
図6の(a)〜(h)は円形形状の三角配列の空洞が配列されている周期を0.34μmとし、円形形状の半径を変化させた。
図5と同様に半径が変化すると、反射帯域が短波長側にシフトしていく。波長700nmの光に対して、異なる半径を有するパターンを異なる領域に形成した時に、パターンが形成されていないr=0では、透過率が1%以下であるのに対して、r=0.30aでは透過率が99%以上となる。
一方、波長550nmに対しては、今度は、r=0.30aであれば、透過率が1%以下であるのに対して、r=0では、透過率が99%以上となる。このように、膜厚や周期を調整することで、反射帯域を調整することが可能となる。
この多層膜6とは異なる構成を有する多層膜7が多層膜6上に形成され、さらに、多層膜6、7とは異なる構成を有する多層膜8が順次積み重ねられ、多層膜群を形成している。このような構成にすることで、より複雑な反射特性を有する複合多層膜を形成可能となる。
この多層膜群を基板1と平行な面内で複数の領域に分割し、異なる空洞率を有する空洞9、10を形成することで、多層膜群に対しても同一面内において異なる光学特性を有する多層膜が形成可能である。
ここで、空洞9、10は必ずしもすべての多層膜6、7、8に形成している必要はなく、空洞9、10が貫通された多層膜6、7、8と、空洞9、10が形成されていない多層膜6、7、8とが組み合わさった構造であっても良い。
中央部分に共振器11を設け、多層膜6で挟み込んだ構造である。この構造は多層膜6が共振器11の両面で反射鏡として動作し、ファブリペロー共振器と呼ばれる共振器構造が形成される。
ここでは、共振器部分の光学的な膜厚に対応した波長に対してのみ透過率が高いフィルタが構成できる。共振器11を挟み込む多層膜6は必ずしも同じ構成をしている必要はない。さらに、複数の共振器を複数の多層膜と交互に組み合わせて、複合共振器を形成することも可能である。
このような共振器構造を有する多層膜6を、複数の領域S1、S2に分割し、これらの領域S1、S2に異なる空洞9、10が形成されている。この空洞9、10の空洞率を、領域S1、S2ごとに変化させることにより、共振波長をシフトさせることができる。
図8では空洞9、10を形成している円孔は多層膜6と共振器11を貫通した構造として表記しているが、共振器部分だけ、もしくは多層膜6だけを貫通した構造であっても良い。もちろん、貫通した構造と、貫通しない構造との組み合せでも良い。
この多層膜の組み合せを6組用意し、中間に屈折率2.08、膜厚120nmの共振器構造を導入した。つまり、3組の多層膜、共振器、3組の多層膜で構成されている。円形形状の三角配列空洞が配列されている周期aを0.26μmとし、円形形状の半径を変化させた。
図9は透過波長のスペクトルを示している。半径が0.15aの時、波長510nmの光はほぼ100%透過するが、半径を0.25aとすると、透過率は10%程度に落ち込む。
一方、半径が0.25aの時、波長480nmの光は、ほぼ100%透過するが、半径を0.15aとすると、透過率は15%程度に落ち込む。このように、空洞の円形形状の半径を変化させるだけで、光学的な性質を変化させることが可能となる。
ここでは、空洞9を楕円形状とし、x方向とy方向の半径が異なる構造を与えてある。また、領域S2では、形成された空洞10は真円形状をしているが、配置されている空洞10の周期は、x方向とy方向に対して異方性を有するようにしてある。
この場合、x方向に平行な直線偏光または円偏光の成分と、y方向に平行な直線偏光または円偏光の成分が受ける特性が異なるなり、偏光による特性分離が可能となる。
例えば、或る波長に対して、偏光分離が可能となることや、同じ偏光成分であっても通過する領域の空洞率が異なることで、波長分離も同時に可能になるなどといった構成も可能となる。このような構成にすることで、光の偏光状態によって多層膜の性質を大きく変化させることが可能となる。
図11には、空洞9、10が形成された時の上面図を示している。それぞれの領域S1、S2内では、空洞9、10の面内で異なる形状を形成することで、異方性を持たせてある。
図11では、領域S1、S2を形成し、これらの領域S1、S2が六角形構造をしている。これまでは、正方形を想定していたが、領域S1、S2が多角形であってもよく、用途に応じて様々な形状や大きさを取ることが可能である。
領域S1では空洞9が三角配列で構成され、中心から外側に向けて空洞9の大きさが小さくなる形状をしている。一方、領域S2では、三角配列で構成された空洞10が中心から外側に向けて大きくなる形状をしている。
このように領域S1、S2内で空洞9、10の大きさを変化させることで、等価的な屈折率分布を同時に持たせた多層膜構造も形成可能となり、より複雑な光学特性が得られる多層膜フィルタが形成可能となる。
上記のように、様々な多層膜構成に対して空洞率の異なる空洞を、同一面内に形成することで、異なる性質を有する多層膜を同一平面に形成することが可能となる。
図12において、光学ユニット20は、レンズ12上に多層膜6を形成し、多層膜6を領域S1、S2、S3に分割している。それぞれの領域S1、S2、S3には、空洞率が異なる空洞が形成され、多層膜6の性質が異なるようにしてある。光源(図示せず)からの光をレンズ12に対して、異なる角度から入射させ、結像位置をそれぞれの領域S1、S2、S3に分割できる構成で光源を配置する。
多層膜6は様々な性質を持たせるように設計することが可能であるが、例えば、多層膜6に特定の波長に対してのみ高い透過率を有するようなフィルタ機能を持たせる構成とする。
この時、それぞれの領域S1、S2、S3での空洞率を変化させることで、フィルタの波長に対する透過帯域をシフトさせることができ、異なる波長帯域のフィルタを近接配置させることができる。
ここで、入射光源として利用する光の帯域が、フィルタ帯域と一致すれば、その領域では光が透過し、一致しなければその領域では透過しないような光制御素子を構成可能である。
さらに、レンズ12の色分散を利用することで、様々な光を有する光を斜めから照射することで、集光位置を変化させることが可能である。従って、集光位置に領域を合わせこむことで、波長分解も可能となる。
集光位置ずれは連続的に起こるので、求められる波長のみを透過させるために、本発明の多層膜フィルタが有効である。また、集光位置ずれは、波長ずれと同じ程度であるために、近接した波長であれば、同一平面内に形成する本発明が効果的である。
また、狭帯域のフィルタを構成することで、透過波長のプロファイルを整形することが可能である。例えば、プロジェクションシステムの照明光としてLEDランプを使用した場合、さらに色再現性を向上させるためには、LEDの中心波長成分からの波長の広がりをカットすることができ、波長成分を抑制することができる。上記では、透過型のフィルタについて記述してあるが、もちろん、反射型のフィルタでも良い。
基板1の多層膜部分6には、領域S1、S2が形成され、それぞれの領域S1、S2に空洞が形成されており、その空洞率が領域S1、S2ごとに異なっている。
また、基板13には、水平シフト素子14を挟んで、多層膜6とは反対側に光の開口部15を設けてある。水平シフト素子14は、光学結晶や液晶など、光学的な異方性を有する媒質でできており、特定の偏光に対して進む方向が異なる機能を有する。
光は開口部15側から入射し、多層膜6側に抜けていく。水平シフト素子14として一軸性結晶を用いた場合に、無偏光の単色光を入射光として用いた時、光は偏光分離され、水平シフト素子14を伝搬していく。
開口部15の大きさと水平シフト素子14の厚みを調整することにより、分離された偏光をそれぞれの領域S1、S2に入射させることが可能となり、それぞれの偏光に対応した光機能を発現させることができる。
例えば、偏光によって異なる性質が生じてしまう多層膜でも、この構成を取ることにより、偏光依存性を解消させることもできるし、さらに大きな偏光依存性を生じさせることも可能である。
この場合、電圧印加により光の進行方向を変化させることが可能となるために、開口部15を図14のように領域の中央に設けることで、入射した光を異なる領域に照射させることも可能となる。
領域ごとの多層膜の光学特性が異なるので、このような構成であると、電圧印加による光学特性の変化を起こすことが可能となり、アクティブな光学素子へ応用が可能である。
このような光の波面の到達場所を変化させる水平シフト素子14は、液晶以外でも光学結晶などで可能であり、同様な性質を有する材料であれば、用途に応じて使い分けることが可能となる。
このような構成はそれぞれの素子が別々に分離されていて、光学的な配置が図で示す配置であればよいし、それらの素子が光学的な距離を保ちながら、密着して配置されていても良い。基板1の多層膜部分は領域S1、S2に分割されていて、その分割された領域S1、S2には空洞が形成され、異なる空洞率を有する。
光は基板2側から入射し、集光されながら水平シフト素子14を通過する。この通過時に水平シフト素子14により光の進行方向がシフトし、基板1上の異なる領域S1、S2に集光される。水平シフト素子14は、図13及び図14で述べてきたような領域により異なる光学性能を示す素子として機能する。
ここで、レンズ12を用いることで、光利用効率を高めることができ、図13及び図14では、原理的に50%の損失であったものをさらに高めることができる。
電界印加によるアクティブ素子にすることも可能となり、可変の多層膜フィルタを構成することができる。さらに、図15のように領域の数倍程度の大きさを有するレンズ12をアレイ状に配置し、異なる性質の領域を交互に配置することにより、大きな面積で同一の光学性能を発現させることも可能となる。
ここで、多層膜が形成された基板1、1’は、複数の領域に分割され、それぞれ異なる空洞率となる空洞が形成されている。水平シフト素子14を挟み込むように多層膜が形成された基板1、1’を設けることで、水平シフトする前で光学特性を特定し、水平シフトした後でさらに光学特性を限定するという複数の多層膜構成を取ることができる。
多層膜を形成する材料としては、酸化物として、例えば、SiO2、TiO2、MgO、ZrO2、Ta2O5、ZnO、Nb2O5、Al2O3などがあり、フッ化物として、例えば、AlF3、MgF2、NdF3などがあり、また、その他の化合物としてZnS、CdSなどを用いることができる。
さらに、半導体では、Si、GeなどのIV族半導体、GaAs、AlAs、InP、GaNなどのIII−V族化合物半導体やZnSe、CdTeなどのII−VI族化合物半導体と、と、その混晶であるAlGaAs、GaInAs、GaInAsPなどがある。
金属では、特定の波長に対して、吸収係数が低い場合が存在し、Au、Ag、Al、Cuなどにより形成することが可能である。さらには有機材料で構成することも可能である。
さらに、この光制御素子と水平シフト素子とを集積化することで、入射光を制御し、異なるフォトニック結晶配列によりアクティブに制御できる波長選択性の高い光制御素子と、その製作方法に関するものである。
例えば、可視光に対して透過型で用いる場合は、ガラス基板や石英基板などを用いることができ、赤外光であれば、半導体基板を用いることが可能である。さらに、基板には透明電極やTFT構成を形成しておいても良く、半導体基板を用いるのであれば、LSIや光デバイスを形成してあっても良い。
この基板に、多層膜を形成する。多層膜の形成には、スパッタ法やCVD法による成膜方法を用いる。基板に直接成膜しても良いし、成膜された多層膜を基板に接合する方法をとっても良い。
この多層膜を形成された基板に、パターニングとエッチングでパターンを形成する。パターニングには、フォトリソグラフィ、電子線リソグラフィ、X線リソグラフィなどのリソグラフィや、ナノインプリントなどの複製パターニングの方法を用いることで可能となる。
空洞の大きさは、光の波長程度であれば、数100nmであるので、上記方法で十分可能である。空洞を形成するには、薬品によるウェットエッチングや、プラズマによるドライエッチングを使用する。
多層膜の厚みは成膜する層数によって変わるが、例えば、1組100nmの薄膜ペアーを20組積層しても2μmであるので、材料を適切に選ぶことで十分にドライエッチングにより貫通させることが可能となる。
上記では、光学的な性質のみを仮定しているが、これは電磁波全般に対して応用できる性質であり、空洞のサイズと適切な材料の選択により、電波領域での波長に対しても同様な性質を有する。
上述したように、本発明によれば、同一の多層膜構造を有しながら、透過または反射する波長が異なる領域を一括で形成できる光制御素子を提供することができる。
また、本発明によれば、多層膜からなる光制御素子の、透過または反射する波長を制御できる、光利用効率を向上させ、偏光に対する制御や、電圧印加によるアクティブ制御ができる光学ユニットを提供することができる。
Claims (10)
- 基板と、該基板上に屈折率と層厚の異なる2種類の層の組み合わせを1組としてこの組を複数積み重ねた多層膜を積み重ねた多重多層膜とからなる光制御素子と、光の開口部と、前記光の開口部と前記多重多層膜とに挟まれ、偏光に応じて光の進む方向を異ならせる水平シフト素子とを含む光学ユニットにおいて、前記多層膜に複数の空洞を有する複数の領域を設け、該複数の領域での空洞の空洞率が異なり、前記多重多層膜は、第一の多層膜に、前記第一の多層膜とは屈折率と膜厚の組み合わせが異なる第二の多層膜を積み重ねた多重多層膜であり、前記水平シフト素子は、偏光に応じて前記複数の領域のそれぞれに入射させることを特徴とする光学ユニット。
- 前記空洞に空気以外の材料が注入されることを特徴とする請求項1記載の光学ユニット。
- 前記多層膜は、膜厚が1/4波長の光学的厚さの整数倍である屈折率の異なる膜を交互に積み重ねた多層膜であることを特徴とする請求項1又は2記載の光学ユニット。
- 前記複数の空洞は、基板面に平行な面内で構造異方性を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の光学ユニット。
- 前記複数の領域に設けられた複数の空洞は、前記領域内で変化する空洞率を有する複数の空洞であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載の光学ユニット。
- 請求項1乃至5のいずれか一項記載の光学ユニットであって、空洞を有する多層膜からなる光制御素子と、異なる波長を発光する発光体と、前記水平シフト素子とを含む光学ユニットにおいて、前記水平シフト素子は前記光制御素子と発光体との間に設けられることを特徴とする光学ユニット。
- 前記発光体と前記水平シフト素子の間にレンズを設けることを特徴とする請求項6記載の光学ユニット。
- 前記光制御素子を複数設けることを特徴とする請求項6又は7記載の光学ユニット。
- 前記水平シフト素子は、強誘電性液晶から形成されていることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項記載の光学ユニット。
- 前記水平シフト素子は、光学結晶から形成されていることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項記載の光学ユニット。
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