特許文献1に示された偏光照明装置は、偏光方向に依存した回折角の違いを利用することにより、アライメントフリーで偏光方向をそろえることが可能となっている。しかしながら、レンズアレイや2枚の回折光学素子)や1/2波長板などの構成要素を多段に含んでいるため、作製工程が複雑であるとともに、装置の小型化が困難となっている。また、回折光学素子として、液晶と高分子から光学媒体、すなわち有機材料を利用しており、高輝度プロジェクタ等に用いるためには、耐光性、耐熱性に課題がある。
特許文献2に示された偏光光源ユニットは、微細金属構造体を用いて偏光分離機能と位相シフト機能を実現し、光源面における反射構造との多重反射を介して偏光をそろえている。したがって偏光光源としての機能しか有さず、光源と分離することはできず、任意の偏光を一方向にそろえる偏光変換素子としての機能は有さない。また、この構成では微細金属構造体および光源構造による斜方向の散乱成分を含み、これは偏光変換効率を低減させるため、十分な効率が得られないという短所がある。
この発明は、このような短所を改善し、薄い平板型の光学素子で、高い偏光制御効率を有する偏光制御素子を提供することを目的とする。また、光学素子数の低減、光学装置の小型化、低価格化が可能となる偏光制御素子及びそれを使用した画像表示装置を提供することを目的とする。
さらに、この発明の偏光制御素子の機能を発現する具体的な金属構造体形状と具体的な配置方法や金属構造体の具体的な材料を特定して、偏光制御性の高い設計が可能な偏光制御素子を提供することを目的とする。
この発明の偏光制御素子は、入射光に対して透明な材料で形成された支持体の表面又は支持体内の平面に、最大サイズが入射光の波長より小さい形状を有する複数個の金属構造体を配置した構成を有し、該金属構造体には少なくとも2種類の異なる形状が含まれることを特徴とする。
この発明の第2の偏光制御素子は、前記偏光制御素子の金属構造体の少なくとも1種類の形状が入射光の伝播方向に直交する平面内において回転対称性を有し、線対称性を有さない形状であることを特徴とする。
この発明の第3の偏光制御素子は、前記偏光制御素子又は第2の偏光制御素子であって、少なくとも2種類の異なる形状の金属構造体を入射光の伝播方向に直交する平面内に入射光の波長以下の間隔で近接して配置したことを特徴とする。
この発明の第4の偏光制御素子は、前記偏光制御素子若しくは第2の偏光制御素子又は第3の偏光制御素子であって、少なくとも2種類の異なる形状の金属構造体を同一平面内に近接して配置した金属構造体ユニットを、入射光の伝播方向に直交する平面内に周期的に配列したことを特徴とする。
この発明の第5の偏光制御素子は、前記偏光制御素子若しくは第2の偏光制御素子又は第3の偏光制御素子であって、少なくとも2種類の異なる形状の金属構造体を入射光の伝播方向に直交する平面内にランダムに配置したことを特徴とする。
この発明の第6の偏光制御素子は、前記偏光制御素子若しくは第2の偏光制御素子又は第3の偏光制御素子であって、少なくとも2種類の異なる形状の金属構造体のうち、いずれかの形状の金属構造体を入射光の伝播方向に直交する平面内に周期的に配列し、他の形状の金属構造体を周期配列状のランダムな位置に配置にしたことを特徴とする。
この発明の第7の偏光制御素子は、前記偏光制御素子若しくは第2の偏光制御素子又は第3の偏光制御素子であって、少なくとも2種類の異なる形状の金属構造体のうち、いずれかの形状の金属構造体を入射光の伝播方向に直交する第1の平面内に周期的に配列し、第1の平面内の金属構造体とは異なる形状を有する金属構造体を入射光の伝播方向に直交する第2の平面内に周期的に配列し、前記第1の平面と第2の平面を入射光の波長より小さい間隔で積層したことを特徴とする。
この発明の第8の偏光制御素子は、前記偏光制御素子若しくは第2の偏光制御素子又は第3の偏光制御素子であって、少なくとも2種類の異なる形状の金属構造体のうち、いずれかの形状の金属構造体を入射光の伝播方向に直交する第1の平面内にランダムに配列し、第1の平面内の金属構造体とは異なる形状を有する金属構造体を入射光の伝播方向に直交する第2の平面内にランダムに配列し、前記第1の平面と第2の平面を入射光の波長より小さい間隔で積層したことを特徴とする。
この発明の第9の偏光制御素子は、前記偏光制御素子若しくは第2の偏光制御素子又は第3の偏光制御素子であって、少なくとも2種類の異なる形状の金属構造体のうち、いずれかの形状の金属構造体を入射光の伝播方向に直交する第1の平面内に周期的に配列し、第1の平面内の金属構造体とは異なる形状を有する金属構造体を入射光の伝播方向に直交する第2の平面内にランダムに配列し、前記第1の平面と第2の平面を入射光の波長より小さい間隔で積層したことを特徴とする。
また、前記金属構造体は、孤立した複数個の金属ドット構造を組み合わせた金属ドット集合体により構成されていることを特徴とする。
さらに、前記金属構造体は、Au、Ag、Pt、Al、Ni、Cr、Cuのいずれか1つ若しくはこれらの組み合わせ又はこれらを主成分とする合金材料・混合材料で構成されていることを特徴とする。
この発明の画像表示装置は、前記偏光制御素子を液晶層に積層したことを特徴とする。
この発明の偏光制御素子は、支持体表面または支持体内に、最大サイズが入射光の波長より小さい形状を有する複数個の金属構造体を配置した構成を有し、この金属構造体には少なくとも2種類の異なる形状が含めることにより、偏光制御効率の高い偏光制御素子を実現できる。また、薄い平板型の素子構成を実現しており、光学素子数の低減や光学装置の小型化、低価格化を実現できる。
また、偏光制御素子を構成する金属構造体の少なくとも1種類の形状を入射光の伝播方向に直交する平面内において回転対称性を有し、線対称性を有さない形状にすることにより、任意の入射直線偏光の一部を入射偏光の方向と直交する偏光成分に変換して出射する旋光性を発現することができ、偏光制御効率の高い偏光制御素子を実現することができる。
また、偏光制御素子を構成する少なくとも2種類の異なる形状の金属構造体を入射光の伝播方向に直交する平面内に入射光の波長以下の間隔で近接して配置することにより、遠方における回折の影響を避けることができ、偏光制御効率の高い偏光制御素子を実現できる。
さらに、偏光制御素子を構成する少なくとも2種類の異なる形状の金属構造体を同一平面内に近接して配置した金属構造体ユニットを、入射光の伝播方向に直交する平面内に周期的に配列することにより、偏光制御効率の高い偏光制御素子の設計を容易にすることができる。
また、偏光制御素子の少なくとも2種類の異なる形状の金属構造体を入射光の伝播方向に直交する平面内にランダムに配置したり、あるいは少なくとも2種類の異なる形状の金属構造体のうち、いずれかの形状の金属構造体を入射光の伝播方向に直交する平面内に周期的に配列し、他の形状の金属構造体を周期配列状のランダムな位置に配置することにより、偏光制御効率の高い偏光制御素子を容易に作製することができる。
さらに、偏光制御素子の少なくとも2種類の異なる形状の金属構造体のうち、いずれかの形状の金属構造体を入射光の伝播方向に直交する第1の平面内に周期的に配列し、第1の平面内の金属構造体とは異なる形状を有する金属構造体を入射光の伝播方向に直交する第2の平面内に周期的に配列し、第1の平面と第2の平面を入射光の波長より小さい間隔で積層したり、あるいは少なくとも2種類の異なる形状の金属構造体のうち、いずれかの形状の金属構造体を入射光の伝播方向に直交する第1の平面内にランダムに配列し、第1の平面内の金属構造体とは異なる形状を有する金属構造体を入射光の伝播方向に直交する第2の平面内にランダムに配列し、第1の平面と第2の平面を入射光の波長より小さい間隔で積層したり、少なくとも2種類の異なる形状の金属構造体のうち、いずれかの形状の金属構造体を入射光の伝播方向に直交する第1の平面内に周期的に配列し、第1の平面内の金属構造体とは異なる形状を有する金属構造体を入射光の伝播方向に直交する第2の平面内にランダムに配列し、第1の平面と第2の平面を入射光の波長より小さい間隔で積層することにより、偏光制御効率の高い偏光制御素子の設計や作製を容易にすることができる。
また、偏光制御素子を構成する金属構造体を、孤立した複数個の金属ドット構造を組み合わせた金属ドット集合体により構成することにより、単純な形状で偏光制御機能を発現することができ、設計ならびに作製が容易な偏光制御素子を提供することができる。
さらに、金属構造体をAu、Ag、Pt、Al、Ni、Cr、Cuのいずれか1つ、あるいは、これらの組み合わせ、又はこれらを主成分とする合金材料・混合材料で構成することにより、偏光制御効率の高い偏光制御素子を提供することができる。
また、この発明の偏光制御素子を画像形成ユニットに使用した画像表示装置は、簡単な構成で良質な画像を安定して表示できる。
図1は、この発明の偏光制御素子の構成を示す平面図である。図に示すように、偏光制御素子1は、支持基板2の表面に最大サイズが入射光の波長より小さい形状を有する金属構造体3,4からなる金属構造体ユニット5を複数格子状に周期配列して構成している。各金属構造体ユニット5は、図2(a)の平面図と(b)のAA断面図に示すように、上面から見た形状が正方形または矩形の金属ドット構造を複数個接合した第1の形状の金属構造体3と、図2(a)の平面図と(c)のBB断面図に示すように、上面から見た形状が正方形または矩形の金属ドット構造を所定間隔だけ隔てて配置した第2の形状の金属構造体4を有する。ここで設計の容易性から、金属構造体3,4として上面から見た形状が矩形の金属ドット構造を複数個接合または所定間隔を空けて配置した構成の金属ドット集合体を例示しているが、必ずしも金属ドット構造である必要はない。以下では金属ドット集合体である場合も金属構造体と総称する。また、図2(b)のAA断面図と(c)のBB断面図においては、第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4を支持基板2に直接形成した場合について示すが、実際には金属構造体3,4と支持基板2との密着性を高め、金属構造体3,4を安定に保持するため、金属構造体3,4と支持基板2の界面に下地層を設ける。この下地層の詳細については、偏光制御素子1の作製方法とともに後述する。
そして図2(b)のAA断面図に示す部分は第1の形状の金属構造体3のみを有し、(c)のBB断面図に示す部分は第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4を含む構成となっている。この第1の形状の金属構造体3は、回転対称性をもち、且つ特定の軸に対して折り返した形状が一致するような線対称性をもたない構造となっており、第2の形状の金属構造体4は紙面縦方向に線対称性を有する構造となっている。この第1の形状の金属構造体3に直線偏光を入射すると金属構造体3内部の電子振動(プラズモン)に共鳴した光と金属構造体3の相互作用により、任意の入射直線偏光の一部を入射偏光の方向と直交する偏光成分に変換して出射する旋光性を発現することができる。また、第2の形状の金属構造体4に直線偏光が入射すると紙面縦方向と横方向において出射光に位相差を生じさせる。このような形状が異なる第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4を有する偏光制御素子1に入射した光は、各金属構造体3,4と相互作用することにより異なる偏光異方性をもち、遠方の観測位置において干渉する。この結果、紙面横方向から縦方向へ変換する偏光成分と、紙面縦方向から横方向へ変換する偏光成分との間に非対称性が生じ、すなわち偏光変換機能が発現する。
図2では、金属構造体ユニット5内に第1の形状の金属構造体3を3個、第2の形状の金属構造体4を1個と2種類の金属構造体を4個有する場合について示したが、金属構造体ユニット5内の金属構造体の数は2個以上であれば何個でもよく、また、金属構造体の形状も2種類以上であればよい。ここで、金属構造体ユニット5の金属構造体3,4の間隔は、入射光の波長より小さいことが好ましい。これは、遠方における回折の影響を避けるためであるが、角度依存性や波長依存性をもたせるなど、用途によっては、意図的に波長以上の間隔で金属構造体3,4を配置しても構わない。
次に、偏光制御素子1の個々の構成要素について説明する。偏光制御素子1の支持基板2として用いる材料は、高い効率を得るために可視光領域の波長において吸収の低い透明な材料が好ましく、石英ガラスやBK7、パイレックス(登録商標)などの硼珪酸ガラス、CaF2、ZnSe、Al2O3などの光学結晶材料などを利用する。また、図1は透過型の偏光制御素子1を仮定して説明しているが、偏光制御素子は反射型の構成であってもよく、その場合は、支持基板2の下方にAlやAuなどの金属材料からなる反射膜を形成する。この反射膜の膜厚は、金属中に光がしみ込む表皮深さよりも厚くする必要があり、少なくとも30nmの膜厚とする。また、誘電体多層膜による全反射コーティングによる反射構造を用いても同様の効果が得られる。
また、図1と図2で第1の形状の金属構造体3として上面から見た形状が正方形の金属ドット構造を2個接合した場合を示したが、回転対称性をもち、且つ線対称性をもたない構造で光学的に旋光性を発現するものであれば任意に形状でも良い。例えば図3(a)に示すように、上面から見た形状が正方形の金属ドット構造を2個接合した以外に、図3(b)に示すように、上面から見た形状が矩形の金属ドット構造を2個接合した形状や、(c)に示すように、矩形の端部が反対側に折れ曲がった形状、(d)に示すように、反対称に曲率した円弧状の形状、(e)に示すように、矩形の端部に円形が重なった形状、(f)に示すように、2個の楕円形が重なり合った形状等の任意の形状を組み合わせた構造であっても良い。
第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4のサイズは入射光の波長以下のであることが必要であるが、この第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4のサイズを図4の配置図を参照して説明する。図4(a)は上面から見た形状が正方形の金属ドット構造を2個接合した第1の形状の金属構造体3のサイズを示す。図4(a)に示すように、第1の形状の金属構造体3の最も長い直線距離を長軸とし、金属構造体3の全てが楕円内に収まるような楕円体を描いた際の長径d1および短径d2によりサイズを規定する。この長径d1が入射光の波長よりも小さくなるように第1の形状の金属構造体3を形成する。また、図4(b)は上面から見た形状が正方形で所定間隔を有する金属ドット構造の第2の形状の金属構造体4のサイズを示す。この場合、最も長い直線距離が2本存在するため、その中心を通る直線を楕円体の長軸の向きとして、外側の4つの頂点を通るように楕円体を描いた際の長径d1および短径d2によりサイズを規定する。図4(c)に示すように、矩形の端部が反対側に折れ曲がった形状の金属構造体3の場合も、同様に最も長い直線距離を長軸とし、金属構造体3の全てが楕円内に収まるような楕円体を描いた際の長径d1および短径d2によりサイズを規定する。また、金属構造体3,4の高さに関しては、入射光の偏光方向が紙面に平行な面内にあると仮定すると、すなわち紙面に垂直に光が入射するものと仮定すると、偏光異方性には影響しないため、特に規定する必要はない。また、金属構造体の角部が先鋭である必要はなく、作製工程上得られる鈍った構造であっても構わない。
また、金属構造体3,4を構成する材料は、金属構造体3,4内に電子の共鳴的な集団運動であるプラズモンを励振できる材料であればよく、プラズモンを励振することにより、大きな偏光制御特性が実現できる。プラズモンは、金属と誘電体の界面領域の金属表面に励起される表面プラズモンと、金属による構造がナノスケールに微小になった場合に、金属材料全体に渡って励起される局在表面プラズモンに大別されるが、以下では表面プラズモンと局在表面プラズモンを共にプラズモンと表記する。プラズモンを励振できる金属材料として、Au、Ag、Pt、Al、Ni、Cr、Cuのいずれか、これらの組み合わせ、あるいは、これらを主成分とする合金材料・混合材料が利用できる。
また、偏光制御素子1における金属構造体3,4は、支持基板2上に形成した場合、機械的に脆く剥がれやすいことが問題となる。これを回避するために、支持基板2と金属構造体3,4を接合する下地層または下地構造を設けても構わない。下地層(下地構造)の膜厚が厚くなると、プラズモンの共鳴効果を低減してしまうが、一方で偏光特性を制御する機能をもたすことも可能となる。支持層(下地構造)としては、支持基板材料と金属材料との密着性の高い材料が適しており、基板材料との界面で固溶体を形成するTi、Cr、Ta、V、Zr、Al、Mg、Mo、Co、Cu、Niなどの金属材料が利用できる。
また、図1、図2では偏光制御素子1における金属構造体3,4が空気中にむき出しとなっている場合について示したが、図5の断面図に示すように、金属構造体3,4の表層部分に保護膜6や保護構造を設けても良い。このように保護膜6や保護構造を設けることにより、外的損傷や金属の酸化などに対する耐性を向上することが可能となる。この保護膜6として用いる材料は、支持基板2と同様に、吸収の少ない、光学素子のコーティング材料として一般的である石英ガラス、BK7、ZnS−SiO2などの硼珪酸ガラスやCaF2、Si、ZnSe、Al2O3、ZnOなどの材料が利用できる。
次に偏光制御素子1の金属構造体3,4の作製方法について、図6の工程図を参照して説明する。入射光の波長以下の大きさを有する第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4の作製には、可視光の回折限界以下の加工精度を有する手法を適用する。具体的な手法としては、電子ビームリソグラフィによる方法、DUV・EUVリソグラフィ、ナノインプリント、材料物性の変質を利用したエッチングなどが利用できる。
以下に、電子ビームリソグラフィによる方法を説明するが、作製方法を限定する必要はない。図6の工程1に示すように、支持基板2として平行平板上の光学ガラス例えばSiO2を用い、その平坦な面にTiなどの下地層7とAuなどの金属膜8を順にスパッタ法や真空蒸着法により堆積し、この金属膜8上にフォトレジスト膜9を形成する。次に工程2に示すように、フォトレジスト膜9を電子ビーム描画により金属配列パターンを残すように露光して露光パターン10を形成する。その後、工程3に示すように、露光パターン10をマスクとして不要な金属部分を反応性イオンエッチング(RIE)などによりエッチングし、その後、工程4に示すように、残ったフォトレジスト膜9の露光パターン10を除去する。このようにして下地層7を介して支持基板2と密着した金属構造体3,4による2次元配列パターンを形成することができる。また、エッチングにより金属構造体3,4の2次元配列パターンを形成する代わりに、フォトレジストパターンに金属材料を堆積し、その後フォトレジストを除去するリフトオフ法を用いて、金属構造体3,4の2次元配列パターンを形成する方法も有効である。
次に、偏光制御素子1の動作を検証するために実施した数値シミュレーションについて、図7と図8に基づいて説明する。数値シミュレーション手法には、電磁場の時間・空間応答を記述するマクスウェル方程式を時間領域、空間領域に差分化して解く、有限差分時間領域法(FDTD法)を利用した。図7(a)は、数値シミュレーションに用いた偏光制御素子1のモデルの平面図、(b)は(a)の平面図を破線BBで切断した断面図である。この数値シミュレーションでは、透過光のスペクトル特性を得るために、入射光として時間幅の十分に短い(スペクトル幅が可視光領域に十分に広がった)パルス光を支持基板(SiO2)の界面から1000nm離れた面から入射し、1000nm離れた透過面において透過光の偏光特性を評価した。また、金属構造体3,4として方形のAuドット構造体を採用し、Au中の電子の光電場に対する応答を記述するために、DrudeモデルとLorentzモデルの重畳した誘電関数を使用することにより、金属材料の波長分散特性を導入した。
この数値シミュレーションに使用した金属構造体3,4は一辺が80nmの方形ドットの組み合わせにより構成し、高さは200nmに設定した。また、第1の形状の金属構造体3は2個の方形ドットが縦方向に40nmシフトして接合している形状とし、第2の形状の金属構造体4は2個の方形ドットが間隔20nmを隔てて配置された形状として金属構造体ユニット5を形成し、200nmピッチの正方格子の格子点の3点に第1の形状の金属構造体3を配列し、第2の形状の金属構造体4は重心が200nmピッチの正方格子の格子点の他の1点に一致するように配列した。
入射偏光は、図7(a)の平面図において紙面の横方向をx軸、縦方向をy軸として、x方向とy方向に設定し、2回の数値シミュレーションを行って偏光特性を評価した。この数値シミュレーションでは、x軸方向、y軸方向の計算領域境界に周期境界条件を適用し、z軸方向の計算領域境界は吸収境界条件を適用した。したがって、偏光制御素子1における金属構造体ユニット5を、400nmピッチで正方格子配列したモデルに相当しており、金属構造体ユニット5内の金属構造体3,4も200nmピッチであることから、全ての金属構造体3,4が200nmピッチの正方格子配列されている。また、数値シミュレーション結果の比較のため、モデルの詳細な説明は省くが、金属構造体ユニット5内を全て第1の形状の金属構造体3で構成した場合の計算も実施した。この場合、他のシミュレーションパラメータは全て同一である。
図8は、この数値シミュレーション結果得られる透過率の非対角成分をプロットした図であり、(a)は金属構造体ユニット5内を第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造4で構成した場合、(b)は比較のために金属構造体ユニット5内を第1の形状の金属構造体3のみで構成した場合を示す。また、透過率の非対角成分とは、入射偏光をx軸方向としたときのy成分の透過率Txyと、入射偏光をy偏光としたときのx成分の透過率Tyxを意味している。図8(b)では、透過率Txyと透過率Tyxが等しく、偏光変換機能が得られていないが、図8(a)に示すように、少なくとも2種類の金属構造体3,4の形状を有する偏光制御素子1においては、透過率Txyと透過率Tyxが共鳴波長近傍で大きくずれ、偏光変換機能が発現していること判る。この数値シミュレーションに用いたモデルは、偏光変換効率を最適化した結果ではないが、この発明の偏光変換素子1の構成により、偏光変換機能が実現できることが数値シミュレーションにより確認できた。この偏光変換効率をさらに向上するには、第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4の断面形状、高さ、充填率(周期)を最適化すればよい。また、動作波長帯を変化させるには、金属構造体3,4の形状を変化させるほか、金属材料を変えてもよい。例えば、Agを金属構造体3,4の材料として利用した場合は、Auの場合よりも短波長側に共鳴波長がシフトする。
このように偏光制御素子1は、支持基板2上に2種類の形状をもつ金属構造体3,4を平面内に周期配列し、さらに金属構造体3,4中に励振されるプラズモンの共鳴効果を利用することにより、高い偏光制御効率を有することが可能となる。また、薄く、平板状の構成で偏光変換機能を実現しており、光学素子数の低減や光学装置の小型化が可能となる。
前記説明では支持基板2の表面に入射光の波長以下のサイズをもつ第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4からなる金属構造体ユニット5を複数格子状に周期配列して偏光制御素子1を構成した場合について示したが、図9の平面図に示すように、第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4を支持基板2の表面にランダムで配置して第2の偏光制御素子1aを構成しても良い。この場合もランダムに配置した隣接する金属構造体間の平均距離は入射光の波長以下となるように構成することが好ましい。これは、遠方における回折による強度分布の空間的な揺らぎを避けるためである。
この第2の偏光制御素子1aを構成する支持基板2や金属構造体3,4として用いる材料は、偏光制御素子1と同様な材料を使用すると良い。また、第2の偏光制御素子1aの支持基板2に金属構造体3,4を作成する方法も偏光制御素子1の場合と同様である。また、金属構造体3,4の表層部分に保護膜6や保護構造を設けることにより、外的損傷や金属の酸化などに対する耐性を向上することができる。
この第2の偏光制御素子1aの特徴について説明する。第2の偏光制御素子1aでは、金属構造体3,4の配置に周期性のないことが特徴であり、偏光制御素子1aの機能を特徴付けるパラメータとして、金属構造体3,4の数密度(または充填率)だけを考慮すれば良いこととなる。また、金属構造体3,4の数密度を調整することにより、偏光制御素子1aの特性を調整することができ、偏光制御特性の設計が容易となっている。また、アライメント精度や電子ビーム描画における描画領域のつなぎ部分の影響などを考慮する必要がなく、偏光制御素子1aを作製するときの作製精度を緩和することができる。
このように第2の偏光制御素子1aは、支持基板2上に2種類の形状をもつ金属構造体3,4を同一平面内にランダムに配置し、さらに金属構造体3,4中に励振されるプラズモンの共鳴効果を利用することにより、高い偏光制御効率を有することが可能となる。また、薄く、平板状の構成で偏光変換機能を実現しており、光学素子数の低減や、光学装置の小型化が可能となる。また、金属構造体3,4の配置をランダムパターンとして構成しており、容易に作製することができる。
前記説明では、第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4を支持基板2の表面にランダムで配置して第2の偏光制御素子1aを構成した場合について説明したが、図10の平面図に示すように、第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4を周期的に、かつ周期配列の格子点のランダムな位置に第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4を配列して第3の偏光制御素子1bを構成しても良い。この第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4の配列の周期は、図10の紙面縦方向、横方向で異方性を有していても構わない。また、金属構造体3,4の周期は、偏光制御素子1や第2の偏光制御素子1aと同様に遠方における回折の影響を避けるため、入射光の波長以下とすることが好ましいが、角度依存性や波長依存性をもたせるなど、用途によっては、意図的に波長以上の間隔で金属構造体3,4を配置しても構わない。
この第3の偏光制御素子1bの金属構造体3,4に入射した光は、金属構造体3,4と相互作用することにより異なる偏光異方性をもち、遠方の観測位置において干渉し、その結果、紙面横方向から縦方向へ変換する偏光成分と、紙面縦方向から横方向へ変換する偏光成分との間に非対称性が生じ、すなわち偏光変換機能が発現する。
また、第3の偏光制御素子1bを構成する支持基板2や金属構造体3,4として用いる材料は、偏光制御素子1や第2の偏光制御素子1aと同様な材料を使用すると良い。また、第3の偏光制御素子1bの支持基板2に金属構造体3,4を作成する方法も偏光制御素子1や第2の偏光制御素子1aの場合と同様である。また、金属構造体3,4の表層部分に保護膜6や保護構造を設けることにより、外的損傷や金属の酸化などに対する耐性を向上することができる。
この第3の偏光制御素子1bでは、第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4の配列周期と、数密度が設計のパラメータとなり、回折効果と偏光変換機能を重畳させた、自由度の高い偏光制御特性を実現することができる。また、薄く、平板状の構成で偏光変換機能を実現しており、光学素子数の低減や、光学装置の小型化が可能となる。また、設計自由度の高い偏光制御素子を提供することが可能となる。
前記偏光制御素子1と第2の偏光制御素子1a及び第3の偏光制御素子1bはいずれも第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4を支持基板2の同一平面上に形成した場合について説明したが、第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4をそれぞれ異なる平面上に形成して積層構造としても良い。この第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4をそれぞれ異なる平面上に形成して積層構造とした第4の偏光制御素子1cの構成を図11に示す。図11(a)は第2の形状の金属構造体4の2次元配列パターンを示す平面断面図、図11(b)は第1の形状の金属構造体3の2次元配列パターンを示す平面断面図、図11(c)は(a),(b)の平面断面図を破線AAで切断した側面断面図である。
この第4の偏光制御素子1cの第1の形状の金属構造体3は第1の平面である支持基板2の表面に周期的に配列され、第2の形状の金属構造体4は、第1の形状の金属構造体3の表層部分に設けた誘電体層11の表面である第2の平面に周期的に配列されている。また、第2の形状の金属構造体4の表層に誘電体膜12を形成している。この積層された第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4の積層方向で多重反射による干渉効果が出現しないように、第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4は入射光の波長以下の間隔で配置されている。このように第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4を積層して配列することにより、2つの金属構造体3,4の数密度を高めることができる。
また、図11(a),(b)では第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4が重なり合わないように積層した例を示しているが、これらが重なり合うような構成であっても構わない。また、第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4を配列する平面は2層以上の複数層からなる構成であっても構わない。さらに、第1の形状の金属構造体3及び第2の形状の金属構造体4の周期は、図11(a),(b)において、紙面縦方向、横方向で異方性を有していてもよく、遠方における回折の影響を避けるため、入射光の波長以下とすることが好ましいが、角度依存性や波長依存性をもたせるなど、用途によっては、意図的に波長以上の間隔で各金属構造体3,4を配置しても構わない。
このように第4の偏光制御素子1cは、回転対称性をもち、且つ線対称性をもたない構造で、任意の入射直線偏光の一部を入射偏光の方向と直交する偏光成分に変換する第1の形状の金属構造体3と、紙面縦方向に線対称性を有しており、紙面縦方向と横方向において出射光に位相差を生じさせる構成となっている第2の形状の金属構造体4で構成しているから、第4の偏光制御素子1cに入射した光は、金属構造体3,4と相互作用することにより異なる偏光異方性をもち、遠方の観測位置において干渉し、その結果、紙面横方向から縦方向へ変換する偏光成分と紙面縦方向から横方向へ変換する偏光成分との間に非対称性が生じ、すなわち偏光変換機能が発現することができる。
また、図11(a),(b)では、金属構造体3,4として上面から見た形状が矩形の金属ドット構造を接合または所定間隔を空けて配置した構成の金属ドット集合体を例示しているが、必ずしも金属ドット構造である必要はない。
また、第4の偏光制御素子1cを構成する支持基板2や金属構造体3,4として用いる材料は、偏光制御素子1や第2の偏光制御素子1a及び第3の偏光制御素子1bと同様な材料を使用すると良い。また、第4の偏光制御素子1cの支持基板2に金属構造体3,4を作成する方法も偏光制御素子1等の場合と同様である。また、第1の形状の金属構造体3の上部に積層された第2の形状の金属構造体4の表層部分に誘電体からなる保護膜6を設けることにより、外的損傷や金属の酸化などに対する耐性を向上することができる。また、反射型の構成では、支持基板2の下方に表皮深さよりも厚いAlやAuなどの金属材料からなる反射膜を形成するか、または、誘電体多層膜による全反射コーティングによる反射構造を設ける。
次に第4の偏光制御素子1cの金属構造体3,4の作製方法を説明する。この入射光の波長以下の大きさを有する第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4の作製には、可視光の回折限界以下の加工精度を有する手法を適用する。具体的な手法としては、電子ビームリソグラフィによる方法、DUV・EUVリソグラフィ、ナノインプリント、材料物性の変質を利用したエッチングなどが利用できる。以下に、電子ビームリソグラフィによる方法を説明するが、作製方法を限定する必要はない。
この第4の偏光制御素子1cの第1の形状の金属構造体3を支持基板2に作製する工程は、図6の工程1から工程4までの工程と同様である。そこで図6の工程図に示す工程1から工程4で第1の形状の金属構造体3を支持基板2に作製した後、第2の形状の金属構造体4を積層する工程を図12の工程図を参照して説明する。
図6の工程4により作製した第1の形状の金属構造体3上に、図12の工程5に示すように、第2の形状の金属構造体4の支持構造となる誘電体層11をスパッタ法などで積層し、表面を研磨等の方法により平坦化し、さらにTiなどの下地膜12とAuなどの金属膜13を順に堆積し、この金属膜13上にするフォトレジスト膜14を形成する。続いて、工程6に示すように、電子ビーム描画により第2の形状の金属構造体4の配列パターンを残すようにフォトレジスト膜14を露光して露光パターン15を形成する。その後、工程7に示すように、露光パターン15をマスクとして不要なフォトレジスト膜と金属部分をRIEなどによりエッチングして除去し、工程8に示すように、残った露光パターン15を除去する。さらに、工程9に示すように、第2の形状の金属構造体4中に励振されるプラズモンの共鳴条件を合わせるために、第2の形状の金属構造体4の表層に誘電体膜の保護膜6をスパッタ法などで被覆し、表面を研磨により平坦化して第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4の2次元パターンを積層した第4の偏光制御素子1cを作製する。
この第4の偏光制御素子1cの特徴について説明する。第4の偏光制御素子1cでは、第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4の2次元配列パターンが、入射光の波長以下の間隔で積層されており、単位堆積あたりの金属構造体3,4の数密度を向上することができる。また、第1の形状の金属構造体3を形成する平面と第2の形状の金属構造体4を形成する平面との間で、金属構造体3,4の周期を変えることにより、数密度を変化させることができ、偏光制御特性を制御することが容易となる。
以上説明したように、第4の偏光制御素子1cは、異なる形状を有する金属構造体3,4をそれぞれ異なる平面内に周期的に配列し、さらに金属構造体3,4中に励振されるプラズモンの共鳴効果を利用することにより、高い偏光制御効率を有する偏光制御素子を提供することができる。また、単位堆積あたり数密度を調整することが容易となっており、設計自由度の高い偏光制御素子を提供することができる。
前記第4の偏光制御素子1cは、第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4をそれぞれ周期的に配列した場合について示したが、図13(a)の第2の形状の金属構造体4の2次元配列パターンを示す平面断面図と(b)の第1の形状の金属構造体3の2次元配列パターンを示す平面断面図に示すように、第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4をそれぞれランダムに配列して第5の偏光制御素子1dを構成しても良い。
この第5の偏光制御素子1dにおいても、第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4はそれぞれランダムで配列しているが、遠方における回折の影響を避けるため、最近接する金属構造体間の平均距離は入射光の波長以下とすることが好ましい。この第5の偏光制御素子1dも第1の形状の金属構造体3は回転対称性をもち、且つ線対称性をもたない構造であり、任意の入射直線偏光の一部を入射偏光の方向と直交する偏光成分に変換し、第2の形状の金属構造体4は紙面縦方向に線対称性を有しており、紙面縦方向と横方向において出射光に位相差を生じさせる構成となっている。したがって第5の偏光制御素子1dに入射した光は、第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4と相互作用することにより異なる偏光異方性をもち、遠方の観測位置において干渉し、その結果、紙面横方向から縦方向へ変換する偏光成分と、紙面縦方向から横方向へ変換する偏光成分との間に非対称性が生じ、すなわち偏光変換機能が発現することができる。また、図13においては、金属構造体3,4として上面から見た形状が矩形の金属ドット構造を複数個接合または所定間隔を空けて配置した構成の金属ドット集合体を例示しているが、必ずしも金属ドット構造である必要はない。
また、第5の偏光制御素子1dを構成する支持基板2や金属構造体3,4として用いる材料は、偏光制御素子1や第4の偏光制御素子1c等と同様な材料を使用すると良い。また、第5の偏光制御素子1dの作製方法も第4の偏光制御素子1cの場合と同様である。
このように第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4をそれぞれランダムで配列して積層した第5の偏光制御素子1dは、金属構造体3,4の2次元ランダムパターンが、入射光の波長以下の間隔で積層されており、単位体積あたりの金属構造体3,4の数密度を向上することができる。また、第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4の配置に周期性のないことから、偏光制御素子1dの機能を特徴付けるパラメータとして、金属構造体3,4の数密度だけを考慮すれば良いこととなり、偏光制御特性の設計が容易となっている。また、アライメント精度や電子ビーム描画における描画領域のつなぎ部分の影響などを考慮する必要がなく、偏光制御素子1dの作製精度を緩和することができる。さらに、第5の偏光制御素子1dは異なる形状を有する金属構造体3,4をそれぞれ異なる平面内にランダムに配置し、さらに金属構造体3,4中に励振されるプラズモンの共鳴効果を利用することにより、高い偏光制御効率を有する偏光制御素子を提供することができる。また、単位体積あたり数密度を調整することが容易となっており、設計自由度の高い偏光制御素子を提供することが可能となる。また、金属構造体の配置をランダムパターンとして構成しており、作製が容易な偏光制御素子を提供することが可能となる。
前記第4の偏光制御素子1cは第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4をそれぞれ周期的に配列して積層し、第5の偏光制御素子1dは第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4をそれぞれランダムに配列して積層して形成した場合について示したが、図14(a)の第2の形状の金属構造体4の2次元配列パターンを示す平面断面図と(b)の第1の形状の金属構造体3の2次元配列パターンを示す平面断面図に示すように、第2の形状の金属構造体4をランダムに配列し、第1の形状の金属構造体3を周期的に配列して積層して第6の偏光制御素子1eを構成しても良い。また、第2の形状の金属構造体4を周期的に配列し、第1の形状の金属構造体3をランダムに配列して積層して第6の偏光制御素子1eを構成しても良い。この場合、第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4の数は異なっても良い。また、第6の偏光制御素子1eにおいても、遠方における回折の影響を避けるため、金属構造体3,4を周期配列する平面においては、その周期は入射光の波長以下とし、ランダムに配置する金属構造体4又は金属構造体3間の平均距離が、入射光の波長以下とすることが好ましい。
この第6の偏光制御素子1eも、第1の形状の金属構造体3は回転対称性をもち、且つ線対称性をもたない構造であり、任意の入射直線偏光の一部を入射偏光の方向と直交する偏光成分に変換し、第2の形状の金属構造体4は紙面縦方向に線対称性を有しており、紙面縦方向と横方向において出射光に位相差を生じさせる構成となっている。したがって第6の偏光制御素子1eに入射した光は、金属構造体と相互作用することにより異なる偏光異方性をもち、遠方の観測位置において干渉し、その結果、紙面横方向から縦方向へ変換する偏光成分と、紙面縦方向から横方向へ変換する偏光成分との間に非対称性が生じ、すなわち偏光変換機能が発現することができる。
この第6の偏光制御素子1eは第2の形状の金属構造体4をランダムに配列し、第1の形状の金属構造体3を周期的に配列し積層して構成したり、あるいは第2の形状の金属構造体4を周期的に配列し、第1の形状の金属構造体3をランダムに配列し積層して構成しているから、単位体積あたりの金属構造体の数密度を向上することができる。また、金属構造体3,4の2次元配列パターンを有していることから、角度依存性や波長依存性を制御することが可能となる。また、第1の形状の金属構造体3と第2の形状の金属構造体4中に励振されるプラズモンの共鳴効果を利用することにより、高い偏光制御効率を有する偏光制御素子を提供することができる。また、単位体積あたり数密度を調整することが容易となっており、設計自由度の高い偏光制御素子を提供することができる。
次に、前記のように形成された偏光制御素子1〜1eのいずれかを使用した画像表示装置について説明する。
図15は、例えば偏光制御素子1を使用した液晶プロジェクタ30の概略構成を示す。図に示すように、液晶プロジェクタ30は、R,G,Bの3色の画像形成ユニット31R,31G,31Bと光合成プリズム32と投射レンズ33及びスクリーン34を有する。画像形成ユニット31R,31G,31Bはそれぞれ光源35と偏光制御素子1と液晶パネル36及び偏光板37が積層されて形成されている。
この液晶プロジェクタ30でスクリーン34に画像を投影するときは、各画像形成ユニット31R,31G,31Bの光源35から出射された光を偏光制御素子1から液晶パネル36と偏光板37を透過させた後、光合成プリズム32で合成し、合成した光を投射レンズ32によりスクリーン33に投射して画像を表示する。この画像を表示するとき、フルカラーの画像を連続的にスクリーン33に投射することができ、良質な画像を安定して表示できる。また、簡単な構成で液晶プロジェクタ30を作製することができ、液晶プロジェクタ30を低価格で提供することができる。
前記説明では画像表示装置として液晶プロジェクタ30について説明したが、偏光制御素子1をLEDアレイの前面に配置して液晶ディスプレイのバックライトとして使用すると、拡散板や色フィルタ及び偏光板が不要になり、液晶ディスプレイの構成を簡略化できる。