JP5216889B2 - 新規l−アミノ酸オキシダーゼ、l−リジンの測定方法、キット及び酵素センサー - Google Patents

新規l−アミノ酸オキシダーゼ、l−リジンの測定方法、キット及び酵素センサー Download PDF

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本発明は、新規L-アミノ酸オキシダーゼ並びに、この新規L-アミノ酸オキシダーゼを用いるL-リジンの測定方法、それに用いるキット及び酵素センサーに関する。より詳しくは、L-リジンに対する基質特異性の高いシュードモナス属由来の新規アミノ酸オキシダーゼを利用してL-リジンを正確かつ安価に測定する方法、およびL-リジン測定用キット及び酵素センサーに関する。
L-リジンは、タンパク質構成アミノ酸の一つであるが、体内で生産できない必須アミノ酸である。L-リジンを含むアミノ酸の濃度は、生体内では、恒常性が維持されているが、先天性代謝異常や内臓疾患により、血中濃度が大きく変動する。L-リジンに限らず、生体内のアミノ酸濃度は疾病を検出する有用な手段となり得る。このため、1種類もしくは多種類のアミノ酸の血中濃度を測定することにより、これらの疾病を検出することが可能となる(特許文献1、非特許文献1、非特許文献2)。
近年、アミノ酸の定量法として酵素を用いる方法が多数知られている。酵素を用いる方法は、機器分析的手法と比べ安価で簡易的に行うことができるという利点がある。定量用酵素としては、例えば、デヒドロゲナーゼまたはオキシダーゼが多く用いられる。オキシダーゼを用いる場合、アミノ酸にオキシダーゼを作用させることで生成される過酸化水素をペルオキシダーゼで検出し、定量する方法が挙げられる。この検出および定量には、比色法、蛍光法、電極法のいずれの方法も利用可能である。
L-リジンの定量法としても酵素を用いる方法が知られている。例えば、オキシダーゼによる定量には、L-リジンαオキシダーゼ[EC 1.4.3.14]が用いられてきた。トリコデルマ・ビリデ由来のL-リジンαオキシダーゼは、他のL-アミノ酸オキシダーゼに比べ、基質特異性が高く、市販もされていることから、酵素センサーなどの素子として利用されてきた(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8)。
また、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)由来のL-リジンモノオキシゲナーゼにL-リジンオキシダーゼ活性があるという報告がある(非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11)。この酵素は、L-リジン、L-オルニチン、L-アルギニンを基質とする。
国際公開WO2006/129513号公報 特開昭55-43409号公報
Hepatology Reserch 34:170-177 (2006) Anal. Chem. 81: 307-314 (2009) Sens. Actuators, B 126: 424-430 (2007) Enzyme Microb. Technol. 26: 537-543 (2000) Biosens. Bioelectron. 14: 211-220 (1999) Biosens. Bioelectron. 14: 67-75 (1999) Anal. Bioanal. Chem. 391: 1255-1261 (2008) Anal. Bioanal. Chem. 406: 19-23 (2010) J. Biol. Chem. 248: 3750-3752 (1973) J. Biol. Chem. 249: 2579-2586 (1974) J. Biol. Chem. 249: 2587-2592 (1974)
しかしながら、トリコデルマ・ビリデ由来のL-リジンαオキシダーゼは、L-リジン以外のアミノ酸に対してもオキシダーゼ活性を示す。そのため、血漿のような多種類のアミノ酸を含有する試料をL-リジンα-オキシダーゼを用いて定量した場合、過剰評価になる傾向がある。
また、最近、上記L-リジンα-オキシダーゼに比べて、基質特異性が高い海水魚の粘液由来のL-リジンα-オキシダーゼが報告されている(非特許文献7)。しかし、このL-リジンα-オキシダーゼは、海水魚の粘液由来のであり、培養による酵素生産についての報告はない。従って、この酵素を大量生産してL-リジンの定量に用いることは困難である。
さらに、シュードモナス・フルオレッセンス由来のL-リジンモノオキシゲナーゼをL-リジン定量に用いられた報告はない。また、この酵素をL-リジン定量に用いたとしても、上述のように、L-リジン以外のL-オルニチンおよびL-アルギニンに対してもオキシゲナーゼ活性を有することから、血漿のような多種類のアミノ酸を含有する試料については、L-リジンの定量を厳密に行うことはできない。
L-リジンのオキシダーゼによる定量法は、実現できれば、機器分析的手法と比べ安価で簡易的に行うことができるという観点から有用である。しかし、血漿のような多種類のアミノ酸を含有する試料については、現在までに利用可能な酵素では、基質特異性が低いか、あるいは酵素生産性に問題があるなどの点から、実用に供することができる状況ではなかった。
そこで、本発明は、生体試料中のL-リジンを、多種類のアミノ酸を含有する試料のように、他のアミノ酸が共存する場合であっても特異的に定量可能である酵素的定量法に用いることができるL-リジンに対する基質特異性が高い酵素を提供すること、さらにはこの酵素を用いたL-リジンの酵素的定量法を提供することを目的とする。
さらに本発明は、上記酵素的定量法を実施する際に利用できる測定用のキットを提供することも目的とする。
加えて本発明は、上記酵素的定量法に利用できる酵素センサーを提供することも目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、シュードモナス属菌株を自然界より分離し、本シュードモナス属する微生物が本来産生する、(i)、(ii)の性質を有するアミノ酸オキシダーゼを抽出、精製することに成功した。
(i)L-リジン、L-オルニチン、L-アルギニンを基質とする。
(ii)pH6.5以下の範囲では、L-リジンのみを基質とする。
本発明者らが種々検討した結果、L-リジンに作用させる酵素としてシュードモナス属由来アミノ酸オキシダーゼを用いることにより、検出可能な生成物がL-リジンから定量的に生じること、さらには、本酵素は、他のアミノ酸が共存していても、pH6.5以下の範囲では、L-リジンに特異的に反応して、検出可能な生成物がL-リジンの存在量に比例して生成することを見出して本発明を完成した。
本発明は、以下に示すとおりである。
[1]
下記の(1)〜(3)の何れかのアミノ酸配列を有するタンパク質。
(1)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を有し、L-アミノ酸オキシダーゼ活性を有するアミノ酸配列;
(2)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有し、L-アミノ酸オキシダーゼ活性を有するアミノ酸配列;又は
(3)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して95%以上の相同性を有し、L-アミノ酸オキシダーゼ活性を有するアミノ酸配列、
但し、前記L-アミノ酸オキシダーゼ活性は、酸素及び水の存在下、pH 7.0-8.5においてL-リジン、L-オルニチン及びL-アルギニンに作用して過酸化水素とアンモニアを生成し、かつpH 5.5-6.5においてはL-リジンに対しては上記作用を示すが、L-オルニチン及びL-アルギニンに対しては上記作用を示さないことを意味する。
[2]
下記の何れかのアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子。
(1)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を有し、L-アミノ酸オキシダーゼ活性を有するアミノ酸配列;
(2)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、L-アミノ酸オキシダーゼ活性を有するアミノ酸配列;又は
(3)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、L-アミノ酸オキシダーゼ活性を有するアミノ酸配列;
但し、前記L-アミノ酸オキシダーゼ活性は、酸素及び水の存在下、pH 7.0-8.5においてL-リジン、L-オルニチン及びL-アルギニンに作用して過酸化水素とアンモニアを生成し、かつpH 5.5-6.5においてはL-リジンに対しては上記作用を示すが、L-オルニチン及びL-アルギニンに対しては上記作用を示さないことを意味する。
[3]
検体とL-アミノ酸オキシダーゼとを水と酸素の存在下に所定時間放置する工程(A)、
放置後の反応液中に存在する前記L-アミノ酸オキシダーゼの作用による反応生成物の少なくとも一種の量を計測する工程(B)
を含む、前記検体中のL-リジンの定量方法であって、
前記L-アミノ酸オキシダーゼが、[1]に記載のタンパク質である、前記方法。
[4]
工程(A)における放置を、pH 5.5-6.5にて行う、[3]に記載の方法。
[5]
前記工程(B)で計測する反応生成物が過酸化水素である[3]または[4]に記載の方法。
[6]
過酸化水素を、ペルオキシダーゼ反応を用いて測定する[5]に記載の方法。
[7]
過酸化水素を、過酸化水素電極を用いた電流検出型センサーにより測定する[5]に記載の方法。
[8]
前記工程(B)で計測する反応生成物がアンモニアである[3]または[4]に記載の方法。
[9]
アンモニアを、アンモニア検出薬を用いて測定する[8]に記載の方法。
[10]
前記工程(B)で計測する反応生成物がL-リジンの脱アミノ化生成物である[3]または[4]に記載の方法。
[11]
以下の試薬を含むL-リジンの定量用キット。
(K1)L-アミノ酸オキシダーゼ
但し、前記L-アミノ酸オキシダーゼは、[1]に記載のタンパク質である、前記キット。
[12]
(K2)反応用緩衝液、(K3)過酸化水素検出用試薬、(K4)アンモニア検出薬および(K5) L-リジンの脱アミノ化生成物検出薬の少なくとも一つをさらに含む、[11]に記載のキット。
[13]
L-アミノ酸オキシダーゼを検出用電極の表面または検出用電極の近傍に配置したL-リジンの検出または定量用酵素センサーであって、
前記検出用電極は過酸化水素検出用電極であり、かつ
前記L-アミノ酸オキシダーゼは、[1]に記載のタンパク質である、前記センサー。
[14]
過酸化水素検出用電極は、酵素式過酸化水素電極または隔膜式過酸化水素電極である[12]に記載の酵素センサー。
本発明によれば、L-リジンに対する基質特異性が高い新規L-アミノ酸オキシダーゼを提供できる。さらにこのL-アミノ酸オキシダーゼをいることで、他のアミノ酸など多くの夾雑物を含む試料においても、L-リジンを特異的に迅速・簡便な検出を行うことができる。特に、血漿、血清または尿のような生体試料に対し本発明は有効であり、ペルオキシダーゼ等の酵素とカップリングさせることにより発色法や蛍光法でL-リジンを定量できるのみならず、電極型酵素センサーを提供することもできる。
図1は、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.) H8-1-3株由来L-アミノ酸オキシダーゼのSDS-PAGEの写真である。 図2は、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.) H-8-1-3株由来L-アミノ酸オキシダーゼ遺伝子配列から予測される1次構造である。 図3は、実施例2にて精製したL−アミノ酸オキシダーゼ標品のLys、OrnおよびArgに対する酵素活性(pH依存性)を示す。 図4は、実施例2にて精製したL−アミノ酸オキシダーゼ標品を用いた、1〜6mMのL−リジン水溶液を検体とした場合のL−リジン濃度と492nmにおける相関関係を示す。
< L-アミノ酸オキシダーゼ>
本発明は、下記の(1)〜(3)の何れかのアミノ酸配列を有するタンパク質に関する。このタンパク質は、L-アミノ酸オキシダーゼ活性を有する。
(1)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を有し、L-アミノ酸オキシダーゼ活性を有するアミノ酸配列;
(2)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有し、L-アミノ酸オキシダーゼ活性を有するアミノ酸配列;又は
(3)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して95%以上の相同性を有し、L-アミノ酸オキシダーゼ活性を有するアミノ酸配列、
但し、前記L-アミノ酸オキシダーゼ活性は、酸素及び水の存在下、pH 7.0-8.5においてL-リジン、L-オルニチン及びL-アルギニンに作用して過酸化水素とアンモニアを生成し、かつpH 5.5-6.5においてはL-リジンに対しては上記作用を示すが、L-オルニチン及びL-アルギニンに対しては上記作用を示さないことを意味する。
(1)の配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を有し、L-アミノ酸オキシダーゼ活性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質である酵素は、シュードモナス属菌株を新たに自然界より分離し、本シュードモナス属に属する微生物が本来産生する酵素として抽出、精製したものである。この点については実施例において詳述する。
本発明において、本発明のタンパク質が有するL-アミノ酸オキシダーゼ活性は、酸素及び水の存在下、pH 7.0-8.5においてL-リジン、L-オルニチン及びL-アルギニンに作用して過酸化水素とアンモニアを生成し、かつpH 5.5-6.5においてはL-リジンに対しては上記作用を示すが、L-オルニチン及びL-アルギニンに対しては上記作用を示さないことを意味する。これらの作用の有無の測定方法は実施例に記載の分析方法(定量方法)を用いることにより確認できる。
また、L-リジン、L-オルニチン及びL-アルギニン以外のタンパク質構成アミノ酸である、L-チロシン、L-アラニン、L-システイン、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、L-グリシン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-メチオニン、L-アスパラギン、L-プロリン、L-グルタミン、L-アルギニン、L-セリン、L-スレオニン、L-バリンに対し、本発明のタンパク質のL-アミノ酸オキシダーゼは活性を示さない。
本明細書で言う「1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列」における「1から数個」の範囲は、欠失等を有するタンパク質が、酸素及び水の存在下、pH 7.0-8.5においてL-リジン、L-オルニチン及びL-アルギニンに作用して過酸化水素とアンモニアを生成し、かつpH 5.5-6.5においてはL-リジンに対しては上記作用を示すが、L-オルニチン及びL-アルギニンに対しては上記作用を示さない酵素である限り、特に限定されない。前記「1から数個」の範囲は、前記オキシダーゼ活性を有するタンパク質である割合が高いことから、例えば、1から30個、好ましくは1から20個、より好ましくは1から10個、さらに好ましくは1から7個、一層好ましくは1から5個、特に好ましくは1から3個程度であることができる。
本明細書で言う「配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して95%以上の相同性を有するアミノ酸配列」における相同性は、前記アミノ酸配列の相同性を有するタンパク質が、酸素及び水の存在下、pH 7.0-8.5においてL-リジン、L-オルニチン及びL-アルギニンに作用して過酸化水素とアンモニアを生成し、かつpH 5.5-6.5においてはL-リジンに対しては上記作用を示すが、L-オルニチン及びL-アルギニンに対しては上記作用を示さない酵素である限り、特に限定されない。前記アミノ酸配列の相同性は、95%以上であれば特に限定されないが、好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%、特に好ましくは99.5%である。
さらに、本発明に用いるL-リジンオキシダーゼは、同様の活性を有するものであれば、自然界より分離された生物に由来するもの、本酵素をコードする遺伝子を大腸菌や他の生物を宿主として発現させて得られる酵素またはタンパク質も含まれる。
また、異種発現による生産法としては、例えば、同様の活性を有する生物種より抽出したゲノムDNAから該当する遺伝子をPCRにて増幅しpETもしくはpUCなどに組み込んだプラスミドベクターを構築したのち、BL21、JM109などの宿主菌株に形質転換し、培養する方法が挙げられる。これら以外の公知の方法も適宜用いることができる。
本発明で用いるL-アミノ酸オキシダーゼの取得方法は特に制限されず、化学合成により合成したタンパク質でもよいし、遺伝子組換え技術により作製した組換えタンパク質でもよい。組換えタンパク質を作製する場合には、後述するように当該タンパク質をコードする遺伝子(DNA)を取得する。このDNAを適当な発現系に導入することにより、上記L-アミノ酸オキシダーゼを産生することができる。
上記L-アミノ酸オキシダーゼは、上記L-アミノ酸オキシダーゼをコードする遺伝子をベクター上に搭載し、このベクターによって宿主細胞を形質転換した後、形質転換させた宿主細胞を培養して培養物中に前記遺伝子がコードするタンパク質を蓄積し、蓄積したタンパク質を収集することを含む、生産方法により調製することができる。
L-アミノ酸オキシダーゼ活性を有するタンパク質(以下、単にL-アミノ酸オキシダーゼと表記することがある)をコードする遺伝子は、本発明の一態様である。即ち、本発明は、下記の何れかのアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子を包含する。
(1)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を有し、L-アミノ酸オキシダーゼ活性を有するアミノ酸配列;
(2)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、L-アミノ酸オキシダーゼ活性を有するアミノ酸配列;又は
(3)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、L-アミノ酸オキシダーゼ活性を有するアミノ酸配列;
但し、前記L-アミノ酸オキシダーゼ活性は、前述の通りである。
上記L-アミノ酸オキシダーゼをコードする遺伝子の取得方法は特に限定されない。本発明のL-アミノ酸オキシダーゼをコードする遺伝子は、例えば、配列番号1に記載のアミノ酸配列および配列番号2に記載した塩基配列の情報に基づいて、化学合成、遺伝子工学的手法又は突然変異誘発などの当業者に既知の任意の方法で作製することができる。
例えば、配列表の配列番号2に記載の塩基配列を有するDNAに対し、変異原となる薬剤と接触作用させる方法、紫外線を照射する方法、遺伝子工学的手法等を用いて行うことができる。遺伝子工学的手法の一つである部位特異的変異誘発法は特定の位置に特定の変異を導入できる手法であることから有用であり、Molecular Cloning: A laboratory Mannual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.,1989(以下、モレキュラークローニング第2版と略す)、Current Prot℃ols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley & Sons (1987-1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)等に記載の方法に準じて行うことができる。
本明細書中の配列表の配列番号1に記載したアミノ酸配列または配列番号2に示す塩基配列の情報に基づいて適当なブローブやプライマーを調製し、それらを用いてシュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)H-8-1-3株のcDNAまたはゲノムライブラリーをスクリーニングすることにより本発明の遺伝子を単離することができる。cDNAまたはゲノムライブラリーは、常法により作製することができる。
PCR法により本発明のL-アミノ酸オキシダーゼをコードする遺伝子を取得することもできる。上記シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)H-8-1-3株のcDNAまたはゲノムライブラリーを鋳型として使用し、配列番号2に記載した塩基配列を増幅できるように設計した1対のプライマーを用いてPCRを行う。PCRの反応条件は適宜設定することができ、例えば、94℃で30秒間(変性)、55℃で30秒〜1分間(アニーリング)、72℃で2分間(伸長)からなる反応工程を1サイクルとして、例えば30サイクル行った後、72℃で7分間反応させる条件などを挙げることができる。次いで、増幅されたDNA断片を、大腸菌(E. coli)等の宿主で増幅可能な適切なベクター中にクローニングすることができる。
上記したプローブ又はプライマーの調製、ゲノムライブラリーの構築、ゲノムライブラリーのスクリーニング、並びに目的遺伝子のクローニングなどの操作は当業者に既知であり、例えば、モレキュラークローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー等に記載の方法に準じて行うことができる。
上記L-アミノ酸オキシダーゼの遺伝子は適当なベクター中に挿入して使用することができる。本発明で用いるベクターの種類は特に限定されず、例えば、自立的に複製するベクター(例えばプラスミド等)でもよいし、あるいは、宿主細胞に導入された際に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、組み込まれた染色体と共に複製されるものであってもよい。好ましくは、ベクターは発現ベクターである。発現ベクターにおいて上記遺伝子は、転写に必要な要素(例えば、プロモーター等)が機能的に連結されている。プロモータは宿主細胞において転写活性を示すDNA配列であり、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。
細菌細胞で作動可能なプロモータとしては、バチルス・ステアロテルモフィルス・マルトジェニック・アミラーゼ遺伝子(Geobacillus stearothermophilus maltogenic amylase gene)、バチルス・リケニホルミスαアミラーゼ遺伝子(Bacillus licheniformis alpha-amylase gene)、バチルス・アミロリケファチエンス・BANアミラーゼ遺伝子(Bacillus amyloliquefaciens BAN amylase gene)、バチルス・サブチリス・アルカリプロテアーゼ遺伝子(Bacillus Subtilis alkaline protease gene)もしくはバチルス・プミルス・キシロシダーゼ遺伝子(Bacillus pumilus xylosldase gene)のプロモータ、またはファージ・ラムダのPR若しくはPLプロモータ、大腸菌(E. coli)のlac、trp若しくはtacプロモータなどが挙げられる。
哺乳動物細胞で作動可能なプロモータの例としては、SV40プロモータ、MT−1(メタロチオネイン遺伝子)プロモータ、またはアデノウイルス2主後期プロモータなどがある。昆虫細胞で作動可能なプロモータの例としては、ポリヘドリンプロモータ、P10プロモータ、オートグラファ・カリホルニカ・ポリヘドロシス塩基性タンパクプロモータ、バキュウロウイルス即時型初期遺伝子1プロモータ、またはバキュウロウイルス39K遅延型初期遺伝子プロモータ等がある。酵母宿主細胞で作動可能なプロモータの例としては、酵母解糖系遺伝子由来のプロモータ、アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子プロモータ、TPI1プロモータ、ADH2-4cプロモータなどが挙げられる。糸状菌細胞で作動可能なプロモータの例としては、ADH3プロモータまたはtpiAプロモータなどがある。
また、上記L-アミノ酸オキシダーゼの遺伝子は必要に応じて、適切なターミネータに機能的に結合されてもよい。L-アミノ酸オキシダーゼの遺伝子を含む組換えベクターは更に、ポリアデニレーションシグナル(例えばSV40またはアデノウイルス5E1b領域由来のもの)、転写エンハンサ配列(例えばSV40エンハンサ)などの要素を有していてもよい。L-アミノ酸オキシダーゼの遺伝子を含む組換えベクターは更に、該ベクターが宿主細胞内で複製することを可能にするDNA配列を具備してもよく、その一例としてはSV40複製起点(宿主細胞が哺乳類細胞のとき)が挙げられる。
L-アミノ酸オキシダーゼの遺伝子を含む組換えベクターはさらに選択マーカーを含有してもよい。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)またはシゾサッカロマイセス・ポンベTPI遺伝子等のようなその補体が宿主細胞に欠けている遺伝子、または例えばアンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン若しくはヒグロマイシンのような薬剤耐性遺伝子を挙げることができる。L-アミノ酸オキシダーゼの遺伝子、プロモータ、および所望によりターミネータおよび/または分泌シグナル配列をそれぞれ連結し、これらを適切なベクターに挿入する方法は当業者に周知である。
L-アミノ酸オキシダーゼの遺伝子を含む組換えベクターを適当な宿主に導入することによって形質転換体を作製することができる。L-アミノ酸オキシダーゼの遺伝子を含む組換えベクターを導入される宿主細胞は、L-アミノ酸オキシダーゼの遺伝子を発現できれば任意の細胞でよく、細菌、酵母、真菌および高等真核細胞等が挙げられる。
細菌細胞の例としては、バチルスまたはストレプトマイセス等のグラム陽性菌又は大腸菌(E. coli)等のグラム陰性菌が挙げられる。これら細菌の形質転換は、プロトプラスト法、または公知の方法でコンピテント細胞を用いることにより行えばよい。哺乳類細胞の例としては、HEK293細胞、HeLa細胞、COS細胞、BHK細胞、CHL細胞またはCHO細胞等が挙げられる。哺乳類細胞を形質転換し、該細胞に導入されたDNA配列を発現させる方法も公知であり、例えば、エレクトロポーレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等を用いることができる。
酵母細胞の例としては、サッカロマイセスまたはシゾサッカロマイセスに属する細胞が挙げられ、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)またはサッカロマイセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)等が挙げられる。酵母宿主への組換えベクターの導入方法としては、例えば、エレクトロポレーション法、スフェロブラスト法、酢酸リチウム法等を挙げることができる。
他の真菌細胞の例は、糸状菌、例えばアスペルギルス、ニューロスポラ、フザリウム、またはトリコデルマに属する細胞である。宿主細胞として糸状菌を用いる場合、DNA構築物を宿主染色体に組み込んで組換え宿主細胞を得ることにより形質転換を行うことができる。DNA構築物の宿主染色体への組み込みは、公知の方法に従い、例えば相同組換えまたは異種組換えにより行うことができる。
昆虫細胞を宿主として用いる場合には、組換え遺伝子導入ベクターおよびバキュロウイルスを昆虫細胞に共導入して昆虫細胞培養上清中に組換えウイルスを得た後、さらに組換えウイルスを昆虫細胞に感染させ、タンパク質を発現させることができる(例えば、Baculovirus Expression Vectors, A Laboratory Manua1;及びカレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、Bio/Technology, 6, 47(1988)等に記載)。
バキュロウイルスとしては、例えば、ヨトウガ科昆虫に感染するウイルスであるアウトグラファ・カリフォルニカ・ヌクレアー・ポリヘドロシス・ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus)等を用いることができる。
昆虫細胞としては、Spodoptera frugiperdaの卵巣細胞であるSf9、Sf21〔バキュロウイルス・エクスプレッション・ベクターズ、ア・ラボラトリー・マニュアル、ダブリュー・エイチ・フリーマン・アンド・カンパニー(W. H. Freeman and Company)、ニューヨーク(New York)、(1992)〕、Trichoplusia niの卵巣細胞であるHiFive(インビトロジェン社製)等を用いることができる。
組換えウイルスを調製するための、昆虫細胞への組換え遺伝子導入ベクターと上記バキュロウイルスの共導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法又はリポフェクション法等を挙げることができる。
上記の形質転換体は、導入された遺伝子の発現を可能にする条件下で適切な栄養培地中で培養する。形質転換体の培養物から、本発明で用いるL-アミノ酸オキシダーゼを単離精製するには、通常のタンパク質の単離、精製法を用いればよい。例えば、本発明で用いるL-アミノ酸オキシダーゼが、細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、細胞を遠心分離により回収し水系緩衝液に懸濁後、超音波破砕機等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られた上清から、通常のタンパク質の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)セファロース等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S-Sepharose FF(ファルマシア社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィ一法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を単独あるいは組み合わせて用い、本発明のL-アミノ酸オキシダーゼを精製標品として得ることができる。
<L-リジンの定量方法>
本発明のL-リジンの定量方法は、
検体とL-アミノ酸オキシダーゼとを水と酸素の存在下に所定時間放置する工程(A)、
放置後の反応液中に存在する前記L-アミノ酸オキシダーゼの作用による反応生成物の少なくとも一種の量を計測する工程(B)
を含む。但し、前記L-アミノ酸オキシダーゼは、上記本発明のタンパク質(酵素)である。
本発明の方法で、検体として用いられる生体試料は、L-リジンを含む可能性のある試料であれば、如何なるものでもよい。生体試料にL-アミノ酸オキシダーゼを作用させて生じる、どの生成物を定量することで生体試料中のL-リジンの濃度を測定するのかにより、生体試料は適宜選択することができる。例えば、発色剤や蛍光剤を利用して上記生成物を定量する場合には無色の水溶液であることが好ましく、血清及び血漿などが例として挙げられる。
L-アミノ酸オキシダーゼによるL-リジンの酸化反応を以下の反応式Aに示す。
本発明で用いるL-アミノ酸オキシダーゼとは、上記式Aに示す反応を触媒する。
工程(A)における
L-アミノ酸オキシダーゼの混合量は、10 mU/ml(リジン1 μmolを1分間で消費する活性を1 Uとする)以上とすることが適当であり、水の混合量は、サンプル中のLys濃度に応じて適宜決定できるが、例えば、5〜95%の範囲とすることができる。L-アミノ酸オキシダーゼの混合量の上限は特にないが、実用的には、例えば、100 mU/ml以下であることができる。しかし、L-アミノ酸オキシダーゼの混合量および水の混合量は、この範囲に限定する意図ではなく、適宜調整できる。
さらに、L-アミノ酸オキシダーゼおよび水に加えて、好ましくは、L-アミノ酸オキシダーゼの至適pHを考慮したpHを示す緩衝液を含むことができる。
次いで、前記混合により得られた反応液を酸素の存在下に所定時間放置する。L-アミノ酸オキシダーゼによるL-リジン酸化反応においては、反応式Aに示すように、L-リジン脱アミノ化生成物である2-オキソ-6-アミノヘキサン酸と共に、アンモニア(NH3)と過酸化水素(H2O2)が生成物として得られる。上記反応を空気中で実施することで、反応液中の溶存酸素として上記酸素は供給される。反応液中酸素を供給する目的で反応液に空気などの酸素含有気体を強制的に供給する必要は通常はない。酵素反応に必要とされる酸素量が微量であり、溶存酸素により十分に賄えるためである。酵素のための放置時間は、例えば、使用する酵素量にもよるが、例えば、10分〜1時間の範囲とすることができる。しかし、この範囲に限定する意図ではなく、適宜調整できる。
工程(B)
工程(B)では、放置後の反応液中に存在する前記酵素の作用による反応生成物の少なくとも一種の量を計測する。
定量に用いられる生成物が過酸化水素である場合、例えばペルオキシダーゼ反応を用いて測定する方法等の公知の方法により、過酸化水素定量可能である。ペルオキシダーゼ反応を用いて測定する場合、使用可能なペルオキシダーゼは過酸化水素の定量に利用可能な酵素であればよく、例えば西洋わさび由来ペルオキシダーゼが挙げられる。また、使用するペルオキシダーゼの基質となり得るものであれば発色剤として使用可能であり、西洋わさび由来ペルオキシダーゼを用いる場合には4-アミノアンチピリン:フェノールなどが挙げられる。西洋わさび由来ペルオキシダーゼを用いる過酸化水素定量のための反応は以下に示す通りである。
4-アミノアンチピリン等の発色剤や蛍光剤は、使用されるペルオキシダーゼの種類によって適宜選択することが可能である。
L-アミノ酸オキシダーゼ反応の生成物である過酸化水素は、過酸化水素電極を用いた電流検出型センサーを用いて測定することもできる。過酸化水素電極としては、例えば、ペルオキシダーゼを牛血清アルブミンとともにグルタルアルデヒドに固定化した膜とフェロセンをカーボンペーストに含有させたものを電極として用いるセンサーを挙げることができる。
定量に用いられる生成物がアンモニアである場合には、アンモニア検出薬を用いて測定することができる。アンモニア検出薬としては、例えば、フェノールと次亜塩素酸の組み合わせによるインドフェノール法を挙げることができる。具体的には、サンプルをフェノール・ニトロプルシド溶液および過塩素酸溶液と混合して発色させ、635 nmの吸光度を測定することにより、アンモニア定量が可能である。
定量に用いられる生成物がL-リジンの脱アミノ化生成物である2-オキソ-6-アミノヘキサン酸である場合には、2-オキソ-6-アミノヘキサン酸を3-メチル-2-ベンゾチアゾロンヒドラジンハイドロクロライド(3-methyl-2-benzothiazolone hydrazine hydrochloride)と反応させてヒドラゾン(hydrazone)誘導体を分光定量することにより、2-オキソ-6-アミノヘキサン酸の定量を行うことができる。
<L-リジンの定量用キット>
本発明は、以下の試薬を含むL-リジンの定量用キットを包含する。
(K1)L-アミノ酸オキシダーゼ
上記L-アミノ酸オキシダーゼは、前記本発明のL-アミノ酸オキシダーゼである。
本発明のキットは、(K2)反応用緩衝液、(K3)過酸化水素検出用試薬、(K4)アンモニア検出薬および(K5)L-リジンの脱アミノ化生成物である2-オキソ-6-アミノヘキサン酸検出薬の少なくとも一つをさらに含むことができる。
(K2)反応用緩衝液は、反応液中を定量反応に適したpHに維持するために用いられる。後述の実施例に示すL-アミノ酸オキシダーゼは、pH 5.5-6.5においてはL-オルニチン及びL-アルギニンに対して作用せず、L-リジンのみを基質とすることから、精度良くL-リジンを定量するには、pH5.5-6.5の範囲の緩衝液であることが望ましい。
(K3) 過酸化水素検出用試薬は、過酸化水素の検出を、例えば、発色もしくは蛍光によって行う場合に用いる。過酸化水素検出用試薬としては、例えば、ペルオキシダーゼとその基質となり得る発色剤の組合せであることができる。具体的には、西洋わさびペルオキシダーゼと2-アミノアンチピリン・フェノールの組み合わせを挙げることができる。
(K4)アンモニア検出薬としては、例えば、フェノールと次亜塩素酸の組み合わせによるインドフェノール法を挙げることができる。
(K5) L-リジンの脱アミノ化生成物である2-オキソ-6-アミノヘキサン酸検出薬としては、例えば、2-オキソ-6-アミノヘキサン酸と3-メチル-2-ベンゾチアゾロンヒドラジンハイドロクロライド(3-methyl-2-benzothiazolone hydrazine hydrochloride)を反応させて、ヒドラゾン(hydrazone)誘導体を分光定量する方法を用いることができる。
<酵素センサー>
本発明は、L-アミノ酸オキシダーゼを検出用電極の表面または検出用電極の近傍に配置したL-リジンの検出または定量用酵素センサーを包含する。この酵素センサーに用いるL-アミノ酸オキシダーゼは、前記本発明のL-アミノ酸オキシダーゼである。
前記検出用電極は過酸化水素検出用電極である。過酸化水素検出用電極は、酵素式過酸化水素電極または隔膜式過酸化水素電極であることができる。L-アミノ酸オキシダーゼがL-リジンと反応することで、過酸化水素が生成するので、この過酸化水素を過酸化水素検出用電極で検出することができる。酵素式過酸化水素電極としては、例えば、ペルオキシダーゼを牛血清アルブミンとともにグルタルアルデヒドに固定化した膜とフェロセンをカーボンペーストに含有させたものを電極として用いるセンサーを挙げることができる。隔膜式過酸化水素電極は、隔膜により過酸化水素と反応する電極が隔離されたタイプの電極である。
前記L-アミノ酸オキシダーゼは、検出用電極の表面または検出用電極の近傍に配置されることが好ましく、検出用電極の表面に配置される場合には、検出用電極の表面に固定化されても固定化されなくてもよい。検出用電極の表面に固定化されることで、本発明のセンサーを繰り返し利用できる利点はある。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例中、活性測定試薬、L-リジン測定用試薬組成物は以下のような組成で調製した。測定条件は、以下のように行った。また、L-アミノ酸オキシダーゼの活性は、以下のように測定した。
(1)L-アミノ酸オキシダーゼ活性測定用試薬の調製
(2)L-アミノ酸オキシダーゼの活性測定法
L-アミノ酸オキシダーゼ活性は、L-アミノ酸の酸化で生成される過酸化水素量を、表1の発色液を用いて比色法で求めた。マイクロプレートを用いる活性測定は、発色液 100μL に表2に示すアミノ酸の100mM 溶液100μLおよび50μL の酵素液を加えて、氷上で分注した後30℃で0、0.5、1、1.5、2、3、4、5時間反応し、マイクロプレートリーダーで550nmの吸光度を測定した。L-アミノ酸オキシダーゼ活性の基質は、表2に示した20種類のアミノ酸(100mM溶液)を用い、ブランクでは、基質の代わりに100mMリン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)を添加した。
また、酵素精製における1cm石英セルをいた吸光度計での測定では、反応液の全量は1mLとした。得られた吸光度変化により、下記計算式に基づきL-リジンオキシダーゼ酵素活性を算出した。尚、上記条件で1分間に1マイクロモルの基質を与える酵素量を1Uとした。得られた吸光度変化より、下記計算式に基づきL-アミノ酸オキシダーゼの酵素活性を算出した。
(3)L-アミノ酸オキシダーゼ活性の計算式
活性値(U/ml)={ΔOD/min(ΔODtest−ΔODblank)×3.1(ml)×希釈倍率}/{13×1.0(cm)×0.1(ml)}
3.1(ml):全液量
13:ミリモル吸光係数
1.0cm:セルの光路長
0.1(ml):酵素サンプル液量
(4) シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)H-8-1-3株由来L-アミノ酸オキシダーゼの酵素精製
(i)シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)H-8-1-3株の培養法
シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)H8-1-3株を、前培養として5mlのTGY培地(0.5%ポリペプトン、0.5%イースト抽出物、0.1%KH2PO4、0.1%D-グルコース、pH 7.0)に植菌し、30℃、200rpmで12時間培養した。その後、500mlのTGY培地を含む2Lの坂口フラスコに植菌し、30℃、96rpmで48時間培養した。培養後、5000 x g、20分間遠心分離し、菌体を得た。
(ii)無細胞抽出液の調製
5mLのTGY培地でH8-1-3株を前培養(200rpm、30℃、12時間)して、前培養液を500mLのTGY培地に植菌し、2L坂口フラスコを用いて、30℃で2日間振とう培養(96rpm)した(全量20L)。大型遠心機で集菌し(5,000rpm、10分間、4℃)、生理食塩水(0.9% NaCl)で洗浄した後、培地5L分の菌体を100mLの20mM リン酸緩衝液(pH 7.0)(KPB)に懸濁した。100mLの菌体液を15分間超音波処理し、遠心分離(8,000rpm、20分間、4℃)で得られた上清を無細胞抽出液とした。
(iii)プロタミン硫酸による除核酸処理
無細胞抽出液に、プロタミン硫酸ナトリウムを0.5%加え、30分間攪伴した後、大型遠心機で分離して(3,000rpm、10分間、4℃)、上清を得た。
(iv)硫安分画
除核酸処理をした無細胞抽出液を氷中にてスターラーで撹拌しながら、30%飽和となるように粉末状硫安を少しずつ加えた。30分間撹拌した後、遠心分離した(8,000rpm、10分間、4℃)。上清を氷中で撹拌しながら、60%飽和となるように粉末状硫安を加え、30分間撹拌した後、遠心分離した。同様に、90%飽和となるように粉末状硫安を加え、遠心分離した。各画分で得られた沈殿(0-30%画分、30-60%画分及び60-90%画分)を10mlの20mM KPB(pH 7.0)に懸濁し、5Lの同緩衝液(×3回)で、1晩透析を行った。
(v)陰イオン交換カラムクロマトグラフィー(DEAE-トヨパール)
20mM KPBにより平衡化したDEAE-トヨパール樹脂15mlをカラムに充填し、透析した30-60%画分の酵素液を吸着させた。100mLの20mM KPBでカラムを洗浄した後、20mM KPB 200ml及び500mM NaCl を含む20mM KPB 200mlを用いて、グラジエントによりNaCl濃度を徐々に上げ、酵素を溶出させた。フラクションコレクターを用いて、15mLずつ試験管にフラクションを採取し、活性が認められたフラクションを集め、同緩衝液により1晩透析した。
(vi)ヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィー(GIGA-PITE)
20mM リン酸緩衝液により平衡化したGIGA-PITE樹脂5mlをカラムに充填し、酵素液を吸着させた。50mLの20mM KPBでカラムを洗浄した後、20mM KPB 50ml及び500mM KPB 200mlを用いて、グラジエントによりKPB濃度を徐々に上げ、酵素を溶出させた。活性が確認された非吸着画分を5Lの同緩衝液(x3回)で、1晩透析を行った。
(vii)強イオン交換カラムクロマトグラフィー(MonoQ HR10/100)
中圧高速液体クロマトグラフィー(FPLC、カラム:20mM KPBで平衡化したMonoQ HR 10/100カラム)を用いた。サンプルループに限外ろ過(セントリコンチューブ)により濃縮した酵素液200μLを注入し、20mM KPB及び0.5mM NaClを含む20mM KPBの2つの溶媒を用いて、FPLCのグラジエントシステムにより、酵素を溶出させた。各フラクション(0.5mL)の活性が認められたフラクションを集め、1晩透析した。透析した後、セントリコンを用いて酵素液を200μLまで濃縮した。
(viii)ゲルろ過クロマトグラフィー(Superdex 200 10/30)
中圧高速液体クロマトグラフィー(FPLC、カラム:150mM NaClを含む20mM KPBで平衡化したSuperdex 200 10/30カラムを用いた。サンプルループに酵素液200μLを注入し、150mM NaClを含む20mM KPBの溶媒を用いて、FPLCのシステムにより酵素を溶出させた。活性が認められたフラクションを集め1晩透析した。
各精製ステップのタンパク質量と酵素活性を表3に示した。
(5)SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によるH-8-1-3株由来L-アミノ酸オキシダーゼの分子量測定
泳動ゲルとして、36%アクリルアミド 5.25ml、0.68M トリス‐HCL緩衝液(pH 8.8)8.25mL、1% SDS 1.58mL、10% TEMED 187μL、2% APS562.5μL組成のゲルに36% ポリアクリルアミド 0.5mL、0.179 M トリス-HCl(pH 6.8)3.5mL、1% SDS 0.5mL、10% TEMED 125μL、2% APS 375μL組成の濃縮ゲルを重層したものを用い、緩衝液(グリセロール200μL、1M トリス-HCl(pH 8.0)40μL、水360μL、2-メルカプトエタノール200μL及び10% SDS 200μL)と等量混合した精製酵素サンプル10μLをランニング緩衝液(トリス3.0g、グリシン 14.1g及びSDS 10g)中、30mAで電気泳動を行い、その後、1時間タンパク染色液(CBB 2.5g、メタノール 500mL、酢酸 50mL及び水450mL)で染色し、脱色液(メタノール:酢酸:水=3:1:6)でバンドが鮮明になるまで脱色した。
分子量マーカー(Bio-Rad)は、phosphorylase (97,400), bovine serum albumin (66,267), aldolase (42,200), carbonic anhydrase (30,000) and soybean trypsin inhibitor (20,000)のものを用いた。
図1にシュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)H8-1-3株由来L-アミノ酸オキシダーゼのSDS-PAGEの写真を示した。
(6)シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.) H-8-1-3株由来L-アミノ酸オキシダーゼのN末端アミノ酸配列の決定
精製したシュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.) H-8-1-3株由来L-アミノ酸オキシダーゼをEdman分解法によりN末端側から8残基決定した。
(7)シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.) H-8-1-3株由来L-アミノ酸オキシダーゼ遺伝子のクローニング
(i)シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)H-8-1-3株の染色体DNAの抽出
シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.) H-8-1-3株をTGY培地3mLに植菌し、30℃、200rpmで、12時間培養した。培養液1mLから菌体を遠心分離して(15,000rpm、5分間、4℃)、集菌した。STE緩衝液(NaCl 0.58g、1Mトリス-HCl(pH 8.0)1mL及び0.5M EDTA(pH8.0)200μLを水で100mLに定量したもの)1mLで洗浄した後、同緩衝液に懸濁した。68℃で、15分間加熱した後、遠心分離し(15,000rpm、5分間、4℃)、上清を除き、リゾチーム-RNase液(リゾチーム 5mg、10mg/mL RNase 10mLを1液:グルコース0.9g、1Mトリス-HCl(pH8.0)2.5 ml、0.5M EDTA(pH8.0)2mLを超純水で100mLに定量したもの1mLで溶解したもの)300μLに懸濁した。37℃で30分間インキュベートした後、プロテイナーゼK液 (プロテイナーゼK 10mg/1液1mL)6μLを加え、穏やかに混合し、37℃で10分間インキュベートした。N-ラウロイルザリコシン3mgを加えて、穏やかに混合した後、37℃で3時間インキュベートし、フェノール-クロロホルム処理を穏やかに2回行った。上清300μLに5M NaCl溶液10μLとエタノール600μLを加えて混合した後、遠心分離した(15,000rpm、10分間、4℃)。70%エタノールで洗浄した後、風乾し、TE緩衝液100μLに溶解し、目的とする染色体DNAを得た。
(ii)PCRによるシュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.) H-8-1-3株由来L-アミノ酸オキシダーゼ遺伝子の増幅
PCR反応液の組成は,水35μL、10×Ex Taq buffer 5μL、2mM dNTP 5μL、100pmolプライマー1(5'-ATGAACAANAANAACCGCCACCCSGCCGAC-3')(配列番号3)1μL、100pmolプライマー2(5'-TCARTCYGCCAGGGCGATYGGSCCGATYTC-3') (配列番号4)1μL、鋳型DNA2μL及びEx Taq 1μLとした。PCR反応の条件は、(i)98℃で5分間、(ii)96℃で10秒間、(iii)50℃で5秒間、(iv)60℃で4分間及び(ii)までを31サイクルとした。増幅した遺伝子は、アガロースゲル電気泳動により確認した。増幅した遺伝子をVIOGENE(USA)社のGel-Mゲル抽出キットを用いて抽出した。
(iii)H-8-1-3株由来L-アミノ酸オキシダーゼ遺伝子配列のシーケンシング
遺伝子の両方の鎖についてシーケンシングを行うため、プライマー1、プライマー2、プライマー3(5'- AGCACGGTAATCGATCTGGA-3') (配列番号5)及び、プライマー4(5'- CATCGAGTGCCAGTTGCACG-3') (配列番号6)を用いてシーケンス反応を行った。反応液組成は、1.6μLの各プライマー、1.6μLの、1μLのBigDyeプレミックスソリューション、1.6μLの5xBigDye シーケンシングバッファーと2.8μLの滅菌水とし、全量10μLとした。PCR反応の条件は、(i)96℃で2分間、(ii)96℃で10秒間、(iii)50℃で5秒間、(iv)60℃で4分間、(v)(ii)〜(iv)を25回及び(vi)72℃で5分間とした。PCR産物に、1μLの3M 酢酸ナトリウム(pH 5.2)、1μLの0.125M EDTAと25μLのエタノールを加え、室温で15分間放置した後、遠心分離により(15,000rpm、8分間、4℃)、沈殿させた。上清を廃棄した後、10μLの Hi Di Formamideを加え、100℃で5分間加熱した後に、氷水で急冷したものをABI PRISM 310 Genetic Analyzerで塩基配列の解読をした。得られたシーケンスデータの解析はGenetyxで行い、それぞれのプライマーで増幅した断片を連結した。図2に、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.) H-8-1-3株由来L-アミノ酸オキシダーゼ遺伝子配列から予測される1次構造を示した。
(iv)シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.) H-8-1-3株由来L-アミノ酸オキシダーゼ遺伝子の大腸菌(E.coli JM 109)への形質転換
ライゲーション反応の組成は、PCR産物 5μL、pT7 Blue T-Vecter (Novagen)1μL、ライゲーションミックス(Takara)6μLとし、16℃で30分間反応させた。大腸菌(E.coli JM 109)のコンピテントセル100μLに12μLのライゲーション反応液を加え、ヒートショック法で形質転換を行った。80μg/mLのアンピシリンを含むLB培地 (1.0% ポリペプトン、0.5%イースト抽出物及び1.0% NaCl)に生育したコロニーを数株選抜してプラスミド抽出し、0.7%アガロース電気泳動により、インサートの有無の確認を行った。
(8)シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.) H-8-1-3株由来L-アミノ酸オキシダーゼ遺伝子の大腸菌(E.coli BL21)における発現
(i)シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.) H-8-1-3株由来L-アミノ酸オキシダーゼ酵素遺伝子の増幅
上記クローニングで得られたプラスミドを鋳型DNAとし、PCRを行った。PCR反応液の組成は、水35μL、10×Ex Taq buffer 5μL、2mM dNTP 5μL、100pmol/μL プライマー5(5'- TATAATCATATGAACAAGAACAACCGCCA-3') (配列番号7)1μL、100 pmol/μLプライマー6 (5'- TATTACTCGAGTCAGTCCGCCAGGGCGATTG-3') (配列番号8)1μL、鋳型DNA 100ng及びEx Taq 5unitとした。プライマー5およびプライマー6にはそれぞれNdeIおよびXhoIの制限酵素サイトを設けた。PCR反応の条件は、(i)98℃で5分間、(ii)96℃で10秒間、(iii)50℃で5秒間、(iv)60℃で4分間及び(ii)までを31サイクルとした。
(ii)シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.) H-8-1-3株由来L-アミノ酸オキシダーゼ遺伝子のpET15bベクターへの組換えと大腸菌(E. coli BL21)への形質転換
PCR反応で得られた、PCR産物5μLに、1μL NdeIと1μL XhoIを加え、37℃で1時間インキュベートし、制限酵素処理を行った。ライゲーション反応は、5μL DNA、1μL pET15b(増幅遺伝子と同様の制限酵素処理を行ったもの)、6μLライゲーションMixとし、16℃で30分間インキュベートした。得られたライゲーション反応液全量を、ヒートショック法により、大腸菌(E. coli BL21)に導入した。尚、本組換え大腸菌が生成するL-アミノ酸オキシダーゼは、N末端側にヒスチジンtag6が付加した融合タンパクとして生成されるように発現用プラスミドを構築した。
(iii)シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.) H-8-1-3株由来L-アミノ酸オキシダーゼ遺伝子の発現とNi-Sepharoseを用いたヒスチジンtag6融合酵素の精製
80μg/mLのアンピシリンを含む4LのLB培地(1.0% ポリペプトン、0.5% イースト抽出物、1.0% NaCl、pH 7.0)に組換え大腸菌(BL21)を植菌し、37℃で12時間培養後、0.5mM IPTGを添加して引き続き30℃で12時間培養してL-アミノ酸オキシダーゼを誘導した。大型遠心機で集菌し(5,000rpm、10分間、4℃)、生理食塩水(0.9% NaCl)で洗浄した後、100mLの20mM リン酸緩衝液(pH 7.0)(KPB)に懸濁した。100mLの菌体液を15分間超音波処理し、遠心分離(8,000rpm、20分間、4℃)で得られた上清を無細胞抽出液とした。無細胞抽出液を20mM KPBで置換したNi-Sepharoseカラムに吸着させ、20mM KPBでカラムを洗浄後、500mM イミダゾールを含む20mM KPBで酵素液を溶出させた。
(9)シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.) H-8-1-3株由来L-アミノ酸オキシダーゼの活性測定
精製酵素標品の酵素活性を、表2におけるアミノ酸をそれぞれ単独に含有する測定試薬にて測定し、本酵素標品が以下の性質を有するものであることを確認した:
(a)L-リジン、L-アルギニン、L-オルニチンを基質とする(表4)。これら以外のタンパク質構成アミノ酸(L-チロシン、L-アラニン、L-システイン、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、L-グリシン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-メチオニン、L-アスパラギン、L-プロリン、L-グルタミン、L-アルギニン、L-セリン、L-スレオニン、L-バリン)に対してはL-アミノ酸オキシダーゼは活性を示さなかった。
(b)pH6.5以下の範囲ではL-リジンのみに作用する(図3)。
(10)シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)H-8-1-3株由来L-アミノ酸オキシダーゼを用いたL−リジンの定量
実施例2にて精製したL−アミノ酸オキシダーゼ標品を用いて、上述のL−リジン測定用試薬組成物を調製した。本試薬組成物を用い、L−リジン測定を実施した。検体としては、1〜6mMのL−リジン水溶液を調製した。
(11)結果として、L−リジン水溶液を検体とした場合には十分な反応性が認められ、L−リジン濃度と測定データは良好な正の相関を示した(図4)。したがい、本発明のL−リジン測定用試薬組成物を用いることにより、正確なL−リジンの測定を行うことができることを示す。
L-リジンに関しては、先天性アミノ酸代謝異常の一つとして高リジン血症が知られており、マススクリーニングの方法として本発明は有望である。また、L-リジンは、必須アミノ酸であり食物として取り込む場合でも不足しがちである。代謝系に与える影響も大きいことから動物実験等における代謝研究用あるいは食品等のL-リジン測定キットとしても需要が期待される。また、複数のアミノ酸の濃度より算出される「アミノインデックス(登録商標)」による疾病検出にも他のアミノ酸定量用酵素と組み合わせて使用することが可能である。これらの利用法に関し、実施例で示す発色法以外に蛍光法、電極法等での測定、酵素センサーとして構築し、小型酵素センサーとして事業化可能である。

Claims (14)

  1. 下記の(1)〜(3)の何れかのアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (1)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、L-アミノ酸オキシダーゼ活性を有するアミノ酸配列;
    (2)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有し、L-アミノ酸オキシダーゼ活性を有するアミノ酸配列;又は
    (3)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を有し、L-アミノ酸オキシダーゼ活性を有するアミノ酸配列、
    但し、前記L-アミノ酸オキシダーゼ活性は、酸素及び水の存在下、pH 7.0-8.5においてL-リジン、L-オルニチン及びL-アルギニンに作用して過酸化水素とアンモニアを生成し、かつpH 5.5-6.5においてはL-リジンに対しては上記作用を示すが、L-オルニチン及びL-アルギニンに対しては上記作用を示さないことを意味する。
  2. 下記の何れかのアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子。
    (1)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、L-アミノ酸オキシダーゼ活性を有するアミノ酸配列;
    (2)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、L-アミノ酸オキシダーゼ活性を有するアミノ酸配列;又は
    (3)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、L-アミノ酸オキシダーゼ活性を有するアミノ酸配列;
    但し、前記L-アミノ酸オキシダーゼ活性は、酸素及び水の存在下、pH 7.0-8.5においてL-リジン、L-オルニチン及びL-アルギニンに作用して過酸化水素とアンモニアを生成し、かつpH 5.5-6.5においてはL-リジンに対しては上記作用を示すが、L-オルニチン及びL-アルギニンに対しては上記作用を示さないことを意味する。
  3. 検体とL-アミノ酸オキシダーゼとを水と酸素の存在下に所定時間放置する工程(A)、
    放置後の反応液中に存在する前記L-アミノ酸オキシダーゼの作用による反応生成物の少なくとも一種の量を計測する工程(B)
    を含む、前記検体中のL-リジンの定量方法であって、
    前記L-アミノ酸オキシダーゼが、請求項1に記載のタンパク質である、前記方法。
  4. 工程(A)における放置を、pH 5.5-6.5にて行う、請求項3に記載の方法。
  5. 前記工程(B)で計測する反応生成物が過酸化水素である請求項3または4に記載の方法。
  6. 過酸化水素を、ペルオキシダーゼ反応を用いて測定する請求項5に記載の方法。
  7. 過酸化水素を、過酸化水素電極を用いた電流検出型センサーにより測定する請求項5に記載の方法。
  8. 前記工程(B)で計測する反応生成物がアンモニアである請求項3または4に記載の方法。
  9. アンモニアを、アンモニア検出薬を用いて測定する請求項8に記載の方法。
  10. 前記工程(B)で計測する反応生成物がL-リジンの脱アミノ化生成物である請求項3または4に記載の方法。
  11. 以下の試薬を含むL-リジンの定量用キット。
    (K1)L-アミノ酸オキシダーゼ
    但し、前記L-アミノ酸オキシダーゼは、請求項1に記載のタンパク質である、前記キット。
  12. (K2)反応用緩衝液、(K3)過酸化水素検出用試薬、(K4)アンモニア検出薬および(K5) L-リジンの脱アミノ化生成物検出薬の少なくとも一つをさらに含む、請求項11に記載のキット。
  13. L-アミノ酸オキシダーゼを検出用電極の表面または検出用電極の近傍に配置したL-リジンの検出または定量用酵素センサーであって、
    前記検出用電極は過酸化水素検出用電極であり、かつ
    前記L-アミノ酸オキシダーゼは、請求項1に記載のタンパク質である、前記センサー。
  14. 過酸化水素検出用電極は、酵素式過酸化水素電極または隔膜式過酸化水素電極である請求項13に記載の酵素センサー。
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