JP2015073443A - 変異型L−リジンε−酸化酵素および変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子 - Google Patents

変異型L−リジンε−酸化酵素および変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子 Download PDF

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【課題】本発明は、L−リジンに対する基質特異性が極めて高く、夾雑物を多く含む検体におけるL−リジンも高い正確性をもって測定が可能になる上に、一般的な大腸菌で発現可能であり効率的に生産できる変異型L−リジンε−酸化酵素、当該変異型酵素を用いたL−リジンの測定方法、および当該変異型酵素を含むL−リジン測定用キットを提供することを目的とする。また、本発明は、一般的な大腸菌中でも発現することが可能であり、本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素の効率的な製造が可能になる変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子、当該変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子と抗生物質耐性遺伝子との結合体、当該遺伝子または当該遺伝子結合体を含むベクター、および当該ベクターにより形質転換された形質転換体を提供することも目的とする。【解決手段】本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素は、特定のアミノ酸配列を有するものであり、L−リジンに対する基質特異性が非常に高いことを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、L−リジンに対する基質特異性が極めて高く且つ製造が容易な変異型L−リジンε−酸化酵素、一般的な大腸菌を用いた当該変異型酵素の製造が可能になる変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子、当該変異型酵素を用いたL−リジンの測定方法、L−リジンの測定用キットなどに関するものである。
L−リジンはタンパク質構成アミノ酸の一つであるが、体内で生産できない必須アミノ酸である。L−リジンを含むアミノ酸の濃度は、生体内では恒常性が維持されているが、先天性代謝異常や内臓疾患によりその血中濃度が大きく変動する。L−リジンに限らず、生体内のアミノ酸濃度は疾病を検出する有用な手段となり得る。このため、1種類もしくは多種類のアミノ酸の血中濃度を測定することにより、特定の疾病を検出することが可能となる(特許文献1および非特許文献1)。
近年、アミノ酸の定量法として酵素を用いる方法が多数知られている。酵素を用いる方法は、機器分析的手法と比べ安価で簡易的に行うことができるという利点がある。定量用酵素としては、例えば、酸化酵素や脱水素酵素が多く用いられる。酸化酵素を用いる場合、アミノ酸に酸化酵素を作用させることで生成される過酸化水素をペルオキシダーゼで検出し、定量する方法が挙げられる(特許文献2)。この検出および定量には、比色法、蛍光法、電極法のいずれの方法も利用可能である。
L−リジンの定量法としても酵素を用いる方法が知られている。例えば、酸化酵素による定量には、L−リジンα−酸化酵素[EC 1.4.3.14]が用いられてきた。トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)由来のL−リジンα−酸化酵素は、他のL−アミノ酸酸化酵素に比べて基質特異性が高く、市販もされていることから、酵素センサなどの素子に利用されてきた(非特許文献2,非特許文献3および非特許文献4)。
また、海洋バクテリアであるマリノモナス・メディテラネア(Marinomonas mediterranea)NBRC103028T株由来のL−リジンε−酸化酵素を用いたL−リジン定量方法が報告されている(特許文献3および非特許文献4)。当該L−リジンε−酸化酵素をコードする遺伝子lodAを大腸菌に組み込んで当該酵素を合成するには、その発現補助タンパク質遺伝子であるlodBも必要である(非特許文献5)。
また、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)由来のL−リジンモノオキシゲナーゼにL−リジン酸化酵素活性があるという報告がある(非特許文献6および非特許文献7)。この酵素は、L−リジン、L−オルニチン、L−アルギニンを基質とする。
国際公開第2006/129513号パンフレット 特開昭55−43409号公報 特開2011−43396号公報
Anal.Chem.,81,pp.307−314(2009) Sens.Actuators,B,126,pp.424−430(2007) Anal.Bioanal.Chem.,391,pp.1255−1261(2008) Anal.Bioanal.Chem.,406,pp.19−23(2010) Appl.Microbiol.Biotechnol.,DOI 10.1007/S00253−00013−05168−00253(2013) J.Biol.Chem.,249,pp.2579−2586(1974) J.Biol.Chem.,249,pp.2587−2592(1974)
上述したように、様々な生物由来のL−リジン酸化酵素が知られているが、そのほとんどが基質特異性の十分なものでははなく、L−リジン以外のアミノ酸も酸化してしまうものであることから、L−リジンの定量に使用しても、例えば特に血漿のように様々な化合物を含む検体中のL−リジンを正確に測定できるものではなかった。
唯一、L−リジンに対する基質特異性が高いL−リジン酸化酵素として、海洋性バクテリアであるマリノモナス・メディテラネアNBRC103028T株が産生する野生型L−リジンε−酸化酵素が知られている。しかし当該酵素は一般的な大腸菌などでの異種発現が困難であり、生産性に問題があった。
詳しくは、タンパク質を構成する20種の天然アミノ酸に対しては61種のコドンが対応しており、生物によりその使用頻度が異なる。よって、マリノモナス・メディテラネアのような細菌の遺伝子を大腸菌などの異種細胞に導入するような場合には、導入遺伝子に異種細胞で使用頻度の少ないコドンが含まれていると、そのコドンに対応するtRNAが不足し、早期の翻訳終了、フレームシフト変異、誤ったアミノ酸への変異、異種細胞の生育阻害、導入プラスミドベクターの不安定化などの問題が起こる。特許文献3には、L−リジンε−酸化酵素を得る方法として、その遺伝子を異種細胞へ導入して形質転換する方法が例示されてはいるが、実施例で実際に行なわれている方法は、L−リジンε−酸化酵素の産生菌であるマリノモナス・メディテラネアの培養液から単離精製する方法である。非特許文献5には、異種細胞を用いてL−リジンε−酸化酵素を得る方法が開示されているが、使用された細胞は使用頻度の低いコドンに対応するtRNAを高発現させた特殊な大腸菌(メルク社製,製品名「Rosetta」)である。これまで、一般的な大腸菌を用いてL−リジンε−酸化酵素を製造した先例はないし、本発明者らの実験でも、野生型L−リジンε−酸化酵素やその変異体の遺伝子を一般的な大腸菌に導入しても遺伝子は発現せず、これら酵素を得ることはできなかった。
そこで本発明は、L−リジンに対する基質特異性が極めて高く、夾雑物を多く含む検体におけるL−リジンも高い正確性をもって測定が可能になる上に、一般的な大腸菌で発現可能であり効率的に生産できる変異型L−リジンε−酸化酵素、当該変異型酵素を用いたL−リジンの測定方法、および当該変異型酵素を含むL−リジン測定用キットを提供することを目的とする。
また、本発明は、一般的な大腸菌中でも発現することが可能であり、本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素の効率的な製造が可能になる変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子、当該変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子と抗生物質耐性遺伝子との結合体、当該遺伝子または当該遺伝子結合体を含むベクター、および当該ベクターにより形質転換された形質転換体を提供することも目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、海洋性バクテリアであるマリノモナス・メディテラネアNBRC103028T株が産生する野生型L−リジンε−酸化酵素に変異を導入したところ、当該野生型酵素と同様にL−リジンに対して極めて高い基質特異性を示す変異型酵素を得ることに成功した。また、従来公知のL−リジンε−酸化酵素をコードする遺伝子は、野生型、変異型ともに、おそらくはコドンの使用頻度の違いを原因として、一般的な大腸菌における異種発現が難しく、形質転換法を用いた効率的な製造ができなかった。しかし、野生型L−リジンε−酸化酵素の遺伝子に特定の変異を導入することにより、一般的な大腸菌でも発現が可能になることを見出した。
本発明は、下記(1)〜(3)の何れかの変異型L−リジンε−酸化酵素に関する。
(1) 野生型L−リジンε−酸化酵素のアミノ酸配列(配列番号2)において、第286位のヒスチジンがアルギニンまたはリジンに置換されているアミノ酸配列を有する変異型L−リジンε−酸化酵素;
(2) 上記(1)に規定されるアミノ酸配列において、上記第286位を除く領域中で1以上のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列を有し、且つ、L−リジンを基質とした場合に対するL−リジン以外のアミノ酸を基質とした場合の相対活性が5%以下である変異型L−リジンε−酸化酵素;または
(3) 上記(1)に規定されるアミノ酸配列に対して65%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、且つ、L−リジンを基質とした場合に対するL−リジン以外のアミノ酸を基質とした場合の相対活性が5%以下である変異型L−リジンε−酸化酵素(但し、上記(1)に規定されるアミノ酸配列における第286位のアミノ酸の置換は、(3)においてさらに変異しないものとする)。
本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素としては、配列番号2のアミノ酸配列において、第286位のヒスチジンがアルギニンに置換されているアミノ酸配列を有するものが好ましい。かかる変異型L−リジンε−酸化酵素のL−リジンに対する野生型と同様の高い基質特異性は、本発明者らの実験により確認されている。
また、本発明は、下記(1’)〜(3’)の何れかの変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子に関する。
(1’) 野生型L−リジンε−酸化酵素をコードする遺伝子の塩基配列(配列番号1)において、第276位のアデニンがグアニンに、第675位のチミンがシトシンに、第857位のアデニンがグアニンに、第1593位のアデニンがグアニンに、第1650位のアデニンがグアニンに、第1698位のシトシンがチミンに、第1938位のチミンがグアニンに置換されている塩基配列を有する変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子;
(2’) 上記(1’)に規定される塩基配列において、上記第276位、第675位、第857位、第1593位、第1650位、第1698位および第1938位を除く領域中で1以上の塩基が欠失、置換および/または付加された塩基配列を有し、且つ、少なくとも大腸菌BL21株に導入した場合に発現可能なものである変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子;または
(3’) 上記(1’)に規定される塩基配列に対して65%以上の配列同一性を有する塩基配列を有し、且つ、少なくとも大腸菌BL21株に導入した場合に発現可能なものである変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子(但し、上記(1’)に規定される塩基配列における第276位、第675位、第857位、第1593位、第1650位、第1698位および第1938位の置換は、(3’)においてさらに変異しないものとする)。
さらに、本発明に係るL−リジンε−酸化酵素遺伝子−抗生物質耐性遺伝子結合体は、本発明に係る上記変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子の塩基配列において終止コドンTAGが欠失しており、当該位置にブレオマイシン系抗生物質耐性遺伝子が結合していることを特徴とする。
本発明に係る上記L−リジンε−酸化酵素遺伝子−抗生物質耐性遺伝子結合体としては、変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子とブレオマイシン系抗生物質耐性遺伝子がペプチドリンカーをコードする遺伝子を介して結合しているものがより好ましい。両遺伝子間にリンカー遺伝子が存在すると、両遺伝子の発現タンパク質がペプチドリンカーで連結されることになり、両タンパク質の高次構造が互いに影響され難くなるという効果が得られる。
本発明に係る上記L−リジンε−酸化酵素遺伝子−抗生物質耐性遺伝子結合体において、ブレオマイシン系抗生物質耐性遺伝子としてはフレオマイシン耐性遺伝子を挙げることができ、当該フレオマイシン耐性遺伝子としては配列番号3の塩基配列を有するものを挙げることができる。これらフレオマイシン耐性遺伝子を有するL−リジンε−酸化酵素遺伝子−抗生物質耐性遺伝子結合体の効果は、後記の実施例により実証されている。
本発明に係るL−リジンの測定方法は、(A)水と酸素の存在下、本発明に係る上記変異型L−リジンε−酸化酵素と検体とを混合する工程;および、(B)上記変異型L−リジンε−酸化酵素によるL−リジンの脱アミノ化反応により生成する2−アミノアジピン酸−6−セミアルデヒド、アンモニアまたは過酸化水素を測定する工程を含むことを特徴とする。
本発明に係るL−リジン測定用キットは、本発明に係る上記変異型L−リジンε−酸化酵素を含むことを特徴とする。
本発明に係る上記L−リジン測定用キットとしては、さらに、ペルオキシダーゼとペルオキシダーゼ用発色剤の組合せ、アンモニア検出薬、NAD+とアルデヒドデヒドロゲナーゼまたはアルコールデヒドロゲナーゼとの組合せの少なくとも一つを含むものが好ましい。
本発明に係るベクターは、本発明に係る上記変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子または上記L−リジンε−酸化酵素遺伝子−抗生物質耐性遺伝子結合体を含むことを特徴とする。
本発明に係る形質転換体は、本発明に係る上記ベクターにより形質転換されたものであることを特徴とする。
本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素は、L−リジンに対する基質特異性が野生型と同様に極めて高く、他のアミノ酸に対して酸化酵素活性を示さないか或いはほとんど示さないことから、他のアミノ酸など多くの夾雑物を含む試料においても、L−リジンを精度良く、簡便かつ迅速に測定することが可能となる。また、従来、L−リジンε−酸化酵素をコードする遺伝子は異種発現が難しく、同酵素の産生株の培養液などから単離精製するか、或いは特殊な大腸菌に導入して形質転換するしかなかった。しかし本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子は、一般的な大腸菌においても発現可能であることから、本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素の通常の形質転換法による製造が可能になる。よって本発明は、疾病の診断などのためのL−リジンの測定を産業的に可能にするものとして、非常に有用である。
図1は、ブレオマイシン系抗生物質耐性遺伝子を用いて変異型酵素遺伝子ライブラリーから発現したものを選別するスクリーニング方法の概要を示している。 図2は、マリノモナス・メディテラネアNBRC103028T由来の野生型L−リジンε−酸化酵素と、本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素との遺伝子配列のアライメントを示している。 図3は、本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素の製造に用いたプラスミドの構成を示す模式図である。 図4は、本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子の発現におけるlodBの影響を示すためのグラフである。 図5は、本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素のSDS−PAGEの写真である。レーンAが本発明変異型酵素、レーンBが分子量マーカーを示している。
本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素(1)は、野生型L−リジンε−酸化酵素のアミノ酸配列(配列番号2)において、第286位のヒスチジンがアルギニンまたはリジンに置換されているアミノ酸配列を有することを特徴とする。
上記変異型L−リジンε−酸化酵素(1)において、配列番号2に示すアミノ酸配列は、微生物株分与機関National Institute of Technology and Evaluation Biological Resource Center, Japan(NBRC)から分譲されたマリノモナス・メディテラネアNBRC103028T株が生産するL−リジンε−酸化酵素をコードする遺伝子をクローニングすることにより得られたものである。
L−リジンε−酸化酵素は、以下のとおり、水と酸素の存在下、L−リジンのεアミノ基を脱アミノ化し、(S)−2−アミノアジピン酸−6−ヘミアルデヒド、アンモニアおよび過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素である。
本発明において酵素が「(特定の)アミノ酸配列を有する」とは、その酵素のアミノ酸配列が特定されたアミノ酸配列を含んでいればよく、且つ、その酵素の機能が維持されていることを意味する。その酵素において特定されたアミノ酸配列以外の配列としては、ヒスチジンタグや固定化のためのリンカー配列の他、−S−S−結合などの架橋構造などが挙げられる。また、例えば、後述するように、C末端側にブレオマイシン系抗生物質耐性遺伝子が発現したペプチドが結合してもよいし、また、その間にペプチドからなるリンカー基が存在していてもよい。
本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素(2)は、上記(1)に規定されるアミノ酸配列において、上記第286位を除く領域中で1以上のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列を有し、且つ、L−リジンを基質とした場合に対するL−リジン以外のアミノ酸を基質とした場合の相対活性が5%以下であることを特徴とする。
本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素(2)において、「第286位を除く領域」とは、変異型L−リジンε−酸化酵素(1)のアミノ酸配列中、第1〜285位および第287位以降の領域をいう。
なお、変異の導入によりアミノ酸配列のアミノ酸数や塩基配列の塩基数が変化する場合においても、配列同一性が65%以上である場合には、変異導入後の配列において、変異導入前の特定位置に相当する位置を特定することは当業者にとり容易である。具体的には、アミノ酸配列または塩基配列の多重アラインメント用プログラムで比較すべき配列をアライメントし、位置を決定することが可能である。
また、「1以上のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列」における「1以上」の範囲は、欠失等を有するL−リジンε−酸化酵素が、L−リジンに対する基質特異性が高い酸化酵素活性を有する限り特に限定されるものではない。「1以上」の範囲は、変異型酵素(2)のL−リジンに対する基質特異性が高いことから、例えば、1個以上、30個以下とすることができ、好ましくは1個以上、20個以下、より好ましくは1個以上、10個以下、さらに好ましくは1個以上、7個以下、一層好ましくは1個以上、5個以下、特に好ましくは1個以上、3個以下、1個以上、2個以下、1個程度であることができる。
本発明において「L−リジンを基質とした場合に対するL−リジン以外のアミノ酸を基質とした場合の相対活性が5%以下である」とは、対象となる酵素を用い、基質化合物として20種の天然アミノ酸とL−オルニチンを使って同一の条件で上記酵素反応を行い、L−リジン以外のアミノ酸を基質化合物とした場合の酵素活性値をL−リジンを基質化合物とした場合の酵素活性値で除した場合の割合が5%以下であることをいう。
本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素(3)は、上記(1)に規定されるアミノ酸配列に対して65%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、且つ、L−リジンを基質とした場合に対するL−リジン以外のアミノ酸を基質とした場合の相対活性が5%以下であることを特徴とする(但し、上記(1)に規定されるアミノ酸配列における第286位のアミノ酸の置換は、(3)においてさらに変異しないものとする)。
本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素(3)において、「上記(1)に規定されるアミノ酸配列に対して65%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列」における「配列同一性」は、変異型酵素がL−リジンに対して高い基質特異性を示す限り特に限定されない。前記アミノ酸配列の配列同一性は65%以上であれば特に限定されないが、好ましくは68%以上、70%以上、72%以上、73%以上、74%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、85%以上、90%以上、より一層好ましくは91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上である。本発明において「配列同一性」という語は、2以上のアミノ酸配列の互いに対するアミノ酸の同一性の程度を指す。従って、ある二つのアミノ酸配列の同一性が高い程、それらの配列の同一性ないし類似性は高い。2種類のアミノ酸配列が同一性を有するか否かは、配列の直接の比較によって解析することが可能であり、具体的には、市販の配列解析ソフトウェア等を用いて解析することができる。
本発明において、「但し、上記(1)に規定されるアミノ酸配列における第286位のアミノ酸の置換は、(3)においてさらに変異しないものとする」における「変異」とは、具体的にはアミノ酸残基の欠失、置換および/または付加を意味する。つまり、上記L−リジンε−酸化酵素(3)のアミノ酸配列において、配列同一性の判断の基準となる変異型L−リジンε−酸化酵素(1)のアミノ酸配列における第286位のアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基が、当該変異型L−リジンε−酸化酵素(1)のアミノ酸残基における第286位のアミノ酸残基と同一のアルギニンまたはリジンであることを意味する。
本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素(1)〜(3)は、L−リジンに対する基質特異性が極めて高く、その他の天然アミノ酸およびL−オルニチンに対しては酵素活性をほとんど示さないか全く示さない。
本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子(1’)は、野生型L−リジンε−酸化酵素をコードする遺伝子の塩基配列(配列番号1)において、第276位のアデニンがグアニンに、第675位のチミンがシトシンに、第857位のアデニンがグアニンに、第1593位のアデニンがグアニンに、第1650位のアデニンがグアニンに、第1698位のシトシンがチミンに、第1938位のチミンがグアニンに置換されている塩基配列を有することを特徴とする。
上記変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子(1’)において、配列番号1に示す塩基配列は、微生物株分与機関National Institute of Technology and Evaluation Biological Resource Center, Japan(NBRC)から分譲されたマリノモナス・メディテラネアNBRC103028T株が生産するL−リジンε−酸化酵素をコードする遺伝子の塩基配列である。
本発明において遺伝子が「(特定の)塩基配列を有する」とは、その遺伝子の塩基配列が特定された塩基配列を含んでいればよく、且つ、その遺伝子を大腸菌BL21株など一般的な大腸菌に導入した場合でも良好に発現できることを意味する。その遺伝子において特定された塩基配列以外の配列としては、例えば、後述するように、ブレオマイシン系抗生物質耐性遺伝子や、また、両遺伝子の発現ペプチドを結合するペプチドリンカー基をコードする遺伝子を挙げることができる。
本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子(2’)は、上記(1’)に規定される塩基配列において、上記第276位、第675位、第857位、第1593位、第1650位、第1698位および第1938位を除く領域中で1以上の塩基が欠失、置換および/または付加された塩基配列を有し、且つ、少なくとも大腸菌BL21株に導入した場合に発現可能なものであることを特徴とする。
本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子(2’)において、「第276位、第675位、第857位、第1593位、第1650位、第1698位および第1938位を除く領域」とは、L−リジンε−酸化酵素遺伝子(1’)の塩基配列中、第1〜275番目、第277〜674番目、第676〜856番目、第858〜1592番目、1594〜1649番目、1651〜1697番目、1699〜1937番目、および第1939番目以降の領域をいう。
また、「1以上の塩基が欠失、置換および/または付加された塩基配列」における「1以上」の範囲は、欠失等を有するL−リジンε−酸化酵素遺伝子が、一般的な大腸菌において発現可能であり、且つその発現酵素がL−リジンに対する高い基質特異性を有するものであれば特に限定されるものではない。「1以上」の範囲は、変異型酵素遺伝子(2’)の異種発現性が高いことから、例えば、1個以上、30個以下とすることができ、好ましくは1個以上、20個以下、より好ましくは1個以上、10個以下、さらに好ましくは1個以上、7個以下、一層好ましくは1個以上、5個以下、特に好ましくは1個以上、3個以下、1個以上、2個以下、1個程度であることができる。
本発明において「少なくとも大腸菌BL21株に導入した場合に発現可能なもの」とは、対象となる遺伝子を大腸菌BL21株に導入して形質転換した場合、当該遺伝子が発現して本発明に係るL−リジンε−酸化酵素が得られることをいう。その生成量は特に制限されないが、分析機器で痕跡量認められる程度では十分でなく、少なくとも単離精製できる程度が好ましい。
本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子(3’)は、上記(1’)に規定される塩基配列に対して65%以上の配列同一性を有する塩基配列を有し、且つ、少なくとも大腸菌BL21株に導入した場合に発現可能なものであることを特徴とする(但し、上記(1’)に規定される塩基配列における第276位、第675位、第857位、第1593位、第1650位、第1698位および第1938位の置換は、(3’)においてさらに変異しないものとする)。
本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子(3’)において、「上記(1’)に規定される塩基配列に対して65%以上の配列同一性を有する塩基配列」における「配列同一性」は、対象となる遺伝子を大腸菌BL21株に導入して形質転換した場合、発現して本発明に係るL−リジンε−酸化酵素が得られれば特に限定されない。前記塩基配列の配列同一性は71%以上であれば特に限定されないが、好ましくは68%以上、70%以上、72%以上、73%以上、74%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、85%以上、90%以上、より一層好ましくは91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上である。本発明において「配列同一性」という語は、2以上の塩基配列の互いに対する塩基の同一性の程度を指す。従って、ある二つの塩基配列の同一性が高い程、それらの配列の同一性ないし類似性は高い。2種類の塩基配列が同一性を有するか否かは、配列の直接の比較によって解析することが可能であり、具体的には、市販の配列解析ソフトウェア等を用いて解析することができる。
本発明において、「但し、上記(1’)に規定される塩基配列における第276位、第675位、第857位、第1593位、第1650位、第1698位および第1938位の置換は、(3’)においてさらに変異しないものとする」における「変異」とは、具体的には塩基の欠失、置換および/または付加を意味する。つまり、上記L−リジンε−酸化酵素遺伝子(3’)の塩基配列において、配列同一性の判断の基準となる変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子(1’)の塩基配列における第276位、第675位、第857位、第1593位、第1650位、第1698位および第1938位の塩基に対応する塩基が、当該変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子(1’)の塩基における第276位、第675位、第857位、第1593位、第1650位、第1698位および第1938位の塩基と同一であることを意味する。
本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子(1’)〜(3’)は、大腸菌BL21株など一般的な大腸菌に導入して形質転換した場合に良好に発現して、本発明に係るL−リジンε−酸化酵素が産生される。その生成量は特に制限されないが、分析機器で痕跡量認められる程度では十分でなく、単離精製できる程度が好ましい。少なくとも、一般的な大腸菌において、配列番号1の塩基配列を有する野生型L−リジンε−酸化酵素遺伝子よりも発現量は多く、変異型L−リジンε−酸化酵素が得られる。
本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子は、ブレオマイシン系抗生物質耐性遺伝子と直接またはリンカー遺伝子を介して結合しているものが好ましい。具体的には、かかるL−リジンε−酸化酵素遺伝子−抗生物質耐性遺伝子結合体は、本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子の塩基配列において終止コドンTAGが欠失しており、当該位置にブレオマイシン系抗生物質耐性遺伝子が、直接、またはリンカー遺伝子を介して結合していることを特徴とする。
一般的な大腸菌による発現系では、コドンの使用頻度の問題から導入遺伝子が発現しなかったり、所望のペプチドが得られなかったり、大腸菌が生育しなくなったり、導入プラスミドベクターが不安定化するといった問題があり、本発明者らの実験的知見によれば、野生型L−リジンε−酸化酵素遺伝子や、ランダム変異導入ライブラリーの変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子のほとんども、一般的な大腸菌では発現しなかった。しかし、本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子(1’)〜(3’)は一般的な大腸菌においても発現できる。また、ブレオマイシン系抗生物質耐性遺伝子も、一般的な大腸菌による発現系において発現できるのみならず、本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子(1’)〜(3’)に結合しても、その発現を阻害しなかった。さらに、所望の遺伝子と抗生物質耐性遺伝子を別々に大腸菌に導入すると、上記のコドン使用頻度の問題などから所望の遺伝子が発現せず抗生物質耐性遺伝子のみが発現し、所望の遺伝子が発現していない細胞が抗生物質含有培地において生育するという事態が起こり得る。しかし、上記のように終止コドンを除去して両遺伝子を直接またはリンカー遺伝子を介して結合すれば、ブレオマイシン系抗生物質耐性遺伝子の発現ペプチドが直接またはペプチドリンカーを介して結合した変異型L−リジンε−酸化酵素(1)〜(3)が生成し、本発明遺伝子が発現した大腸菌細胞のみがブレオマイシン系抗生物質耐性を示すことになり、当該大腸菌を選別することが可能になる。
ブレオマイシン系抗生物質は、DNA切断グリコペプチドであり、例えば、ブレオマイシン、フレオマイシン、タリソマイシンおよびペプロマイシンを挙げることができる。フレオマイシンをコードする遺伝子としては、配列番号3の塩基配列を有するものを挙げることができる。
変異型L−リジンε−酸化酵素(1)〜(3)とブレオマイシン系抗生物質耐性遺伝子の発現ペプチドとの間のペプチドリンカーのアミノ酸残基数は特に制限されないが、好ましくは30残基以下であり、より好ましくは20残基以下であり、さらにより好ましくは15残基以下であり、さらにより好ましくは10残基以下である。ペプチドリンカーをコードする遺伝子の塩基配列は、当該ペプチドリンカーのアミノ酸配列から容易にデザインできる。
本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素は、上記(1)から(3)に規定される範囲に属するものである限りその由来は特に限定されるものではない。例えば、本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素は、各種遺伝子工学的技術により製造した組換えタンパク質であってもよいし、化学合成により製造した合成タンパク質であってもよく、或いは配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるL−リジンε−酸化酵素の遺伝子ホモログを有する特定の生物種(例えば、細菌)に変異原を与えることにより本発明の変異型酵素を産生し得る変異体を獲得して、当該変異体が産生するタンパク質を抽出および精製することによって製造したタンパク質であってもよい。
但し、本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素は、遺伝子工学技術により効率的に製造することが好ましい。具体的には、本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子(1’)〜(3’)を調製し、各種ベクターに組み込むことにより、本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素を発現させることができる。
本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子(1’)〜(3’)を作製するに当たり、配列番号1に示される塩基配列における第276位、第675位、第857位、第1593位、第1650位、第1698位および第1938位の遺伝子を上記変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子(1’)のとおり置換するため、或いは変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子(2’)の塩基配列において塩基の欠失、置換および/または付加を施すため、或いは変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子(3’)の塩基配列において配列番号1の遺伝子配列と所定の同一性を有する核酸を準備するために、例えばエラープローンPCR法、DNAシャッフリング法、各種部位特異的変異導入法などにより、任意の塩基の欠失、置換および/または挿入を行った後、一般的な大腸菌における異種発現性を確認するなどして選別すればよい。このようにして作製した本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子を適当な発現系に導入することにより、本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素を製造することができる。
本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素を製造するために利用可能な発現系としては、特に限定されるものではないが、例えば各種生物種(ホスト)において組換えタンパク質の発現を可能とする発現ベクターを利用することができる。利用可能な発現ベクターとしては、例えば、細菌や真菌類(例えば、酵母類)などの微生物などのホストにおいてタンパク質の発現を可能とする各種発現ベクターを用いることが可能であり、ウイルスベクター(ファージベクターを含む)でもプラスミドベクターであってもよい。本発明では、宿主細胞として、特に一般的な大腸菌を用いることができる。ここで、「一般的な大腸菌」とは、形質転換に用いられる一般的な大腸菌であり、BL21株やその派生株など、プロテアーゼ欠損株やコンピテントセルを含むが、使用頻度の高いコドンに対応するtRNAを高発現させたものなど、特殊な処理をされたものは含まないものとする。
特定の生物種をホストとして用いた発現系で本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素を発現させる場合には、本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子(1’)〜(3’)をベクターに組み込む工程、当該ベクターによって宿主細胞を形質転換する工程、形質転換させた宿主細胞を培養する工程、培養物中に前記遺伝子がコードするタンパク質を蓄積し、蓄積したタンパク質を収集する工程を含む製造方法により調製することができる。
本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子(1’)〜(3’)、当該遺伝子を含むベクター、および当該ベクターにより形質転換された形質転換体は、本発明の一態様である。これら遺伝子、ベクターおよび形質転換体は、本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素のアミノ酸配列が決定されれば、当業者であれば常法に従って調製可能である。
本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子(1’)〜(3’)の取得方法は特に限定されない。例えば、後記の実施例に記載の通り、マリノモナス・メディテラネアNBRC103028T株から単離した野生型L−リジンε−酸化酵素遺伝子(配列番号1)をコードする核酸を材料として本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子を取得してもよいし、或いは本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素ないし配列番号2に記載のアミノ酸配列と相同性を有するアミノ酸配列をコードする遺伝子を各種細菌から単離し、当該遺伝子をコードする核酸を調製して、上記第276位、第675位、第857位、第1593位、第1650位、第1698位および第1938位の塩基に対応する塩基の置換を行って、本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子(1’)〜(3’)を製造してもよい。また、本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子(1’)〜(3’)は、配列番号1に記載の塩基配列もしくは配列番号2に記載のアミノ酸配列、または配列番号1に記載の塩基配列と一定の同一性を有する公知の塩基配列もしくは配列番号2に記載のアミノ酸配列と一定の同一性を有する公知のアミノ酸配列の情報に基づいて、化学合成、遺伝子工学的手法または突然変異誘発などの当業者に既知の任意の方法で作製することができる。
配列番号2に示されるアミノ酸配列は、菌分譲機関から分譲されたマリノモナス・メディテラネアNBRC103028T株由来の野生型L−リジンε−酸化酵素のアミノ酸配列であるが、当該L−リジンε−酸化酵素には一定の相同性を示す遺伝子が多数知られている。例えば、かかる細菌由来の相同遺伝子に対応する酵素として、表1に示すものが知られている。
野生型L−リジンε−酸化酵素遺伝子の塩基配列と、本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子(1’)の塩基配列についてアライメント解析を行った結果を図2に示す。図2において、白抜きで示される位置のアミノ酸が上記本発明遺伝子(1’)における第276位、第675位、第857位、第1593位、第1650位、第1698位および第1938位の位置である。
本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子(1’)〜(3’)は、具体的には、例えば配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有するDNAに対し、変異原となる薬剤と接触作用させる方法、紫外線を照射する方法、遺伝子工学的手法等を用いて変異を導入した後、一般的な大腸菌での異種発現性を確認することにより特定できる。また、遺伝子工学的手法の一つである部位特異的変異誘発法は特定の位置に特定の変異を導入できる手法であることから、本発明遺伝子を製造する上で、部位特異的な変異を導入するために有用である。
例えば、配列番号1に記載した塩基配列または配列番号2に示すアミノ酸配列の情報に基づいて適当なプローブやプライマーを調製し、それらを用いてマリノモナス・メディテラネアNBRC103028T株を含む細菌のcDNAまたはゲノムライブラリーをスクリーニングすることにより、本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素をコードする遺伝子を製造するための材料となる核酸を準備することができる。cDNAまたはゲノムライブラリーは、常法により作製することができる。
また、PCR法により本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子を製造するための材料を取得することもできる。例えば、マリノモナス・メディテラネアNBRC103028T株を含む細菌のゲノムDNA、cDNAまたはゲノムライブラリーを鋳型として使用し、配列番号1の塩基配列を増幅できるように設計した1対のプライマーを用いてPCRを行う。PCRの反応条件は適宜設定することができ、例えば、94℃で30秒間(変性)、55℃で30秒〜1分間(アニーリング)、72℃で2分間(伸長)からなる反応工程を1サイクルとして、30サイクル行った後、72℃で7分間反応させる条件などを挙げることができる。増幅されたDNA断片は、本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子を製造するための材料として用いることができる。さらに、増幅されたDNA断片を、大腸菌(Escherichia coli)等の宿主で増幅可能な適切なベクター中にクローニングすることにより得られたベクターも本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子を製造するための材料として用いることができる。
上述の通り準備した本発明遺伝子製造用材料において、上記第276位、第675位、第857位、第1593位、第1650位、第1698位および第1938位に対応する位置に各種変異導入法を用いて塩基の置換を施し、本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子、または当該核酸を含むベクターを製造することができる。なお、上記したプローブまたはプライマーの調製、ゲノムライブラリーの構築、ゲノムライブラリーのスクリーニング、並びに目的遺伝子のクローニングなどの操作は当業者に既知である。また、特別に塩基配列をデザインしたプライマーを用いたPCR法により、本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子の変異を導入することも可能である。
本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子は、適当なベクター中に挿入した状態で使用することができる。本発明で用いるベクターの種類は特に限定されず、例えば、自律的に複製するベクター(例えばプラスミド等)でもよいし、あるいは、宿主細胞に導入された際に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、組み込まれた染色体と共に複製されるものであってもよい。好ましくは、ベクターは発現ベクターである。発現ベクターにおいて、上記遺伝子には、転写に必要な要素(例えば、プロモータ等)が機能的に連結されている。プロモータは宿主細胞において転写活性を示すDNA配列であり、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。
例えば、細菌細胞で作動可能なプロモータとしては、ゲオバチルス・ステアロテルモフィルス・マルトジェニック・アミラーゼ遺伝子(Geobacillus stearothermophilus maltogenic amylase gene)、バチルス・リケニホルミスα−アミラーゼ遺伝子(Bacillus licheniformis alpha−amylase gene)、バチルス・アミロリケファチエンス・BANアミラーゼ遺伝子(Bacillus amyloliquefaciens BAN amylase gene)、バチルス・サブチリス・アルカリプロテアーゼ遺伝子(Bacillus subtilis alkaline protease gene)もしくはバチルス・プミルス・キシロシダーゼ遺伝子(Bacillus pumilus xylosidase gene)のプロモータ、またはファージ・ラムダのPR若しくはPLプロモータ、大腸菌(Escherichia coli)のlac、trp若しくはtacプロモータなどが挙げられる。
また、上記ベクターにおいて、本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子は、必要に応じて、適切なターミネータに機能的に結合されてもよい。本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子を含むベクターは、さらに、ポリアデニレーションシグナル(例えばSV40またはアデノウイルス5E1b領域由来のもの)、転写エンハンサ配列(例えばSV40エンハンサ)などの要素を有していてもよい。本発明に係る組換えベクターは、さらに、当該ベクターが宿主細胞内で複製することを可能にするDNA配列を具備してもよく、その一例としてはSV40複製起点(宿主細胞が哺乳類細胞のとき)が挙げられる。
本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子を含むベクターは、さらに選択マーカーを含有していてもよい。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)またはシゾサッカロマイセス・ポンベTPI遺伝子等のようなその補体が宿主細胞に欠けている遺伝子、または例えばアンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシンもしくはヒグロマイシンのような薬剤耐性遺伝子を挙げることができる。本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子、プロモータ、および所望によりターミネータおよび/または分泌シグナル配列をそれぞれ連結し、これらを適切なベクターに挿入する方法は当業者に周知である。
さらに、本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子を適当な宿主に導入することによって、本発明の形質転換体を作製することができる。本発明のベクターを導入される宿主細胞は、細胞内で本発明のベクターが複製されるものであれば任意の細胞でもよい。さらに、本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素を発現する形質転換体を作製する場合には、ベクターの複製に加えて、言うまでもなく本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素の発現が可能となる任意の細胞である。このような宿主細胞の例としては、細菌、酵母、真菌および高等真核細胞等が挙げられ、使用頻度の低いコドンに対応するtRNAを高発現させた特殊な大腸菌など特殊な処理をされた大腸菌を除く一般的な大腸菌が好ましい。
例えば、細菌細胞の例としては、バチルスまたはストレプトマイセス等のグラム陽性菌や大腸菌(Escherichia coli)等のグラム陰性菌が挙げられる。これら細菌の形質転換は、プロトプラスト法やその他の公知方法でコンピテント細胞を用いることにより行えばよい。DNA構築物の宿主染色体への組み込みは、公知の方法に従い、例えば相同組換えまたは異種組換えにより行うことができる。
上記の形質転換体は、本発明のベクターの複製を可能にする条件下、或いは本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子の発現と本発明酵素の生成を可能にする条件下で適切な栄養培地中で培養する。本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素を生成させた場合、形質転換体の培養物(形質転換体および培養培地を含む)から、本発明の変異型酵素を単離精製するには、通常のタンパク質の単離精製法を用いればよい。例えば、本発明の変異型酵素が細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、細胞を遠心分離により回収し水系緩衝液に懸濁後、超音波破砕機等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。当該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られた上清から、通常のタンパク質の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)セファロース等の樹脂を用いた陰イオン交換クロマトグラフィ法、S−セファロース FF(ファルマシア社製)等の樹脂を用いた陽イオン交換クロマトグラフィ法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等の樹脂を用いた疎水性クロマトグラフィ法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティクロマトグラフィ法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を単独あるいは組み合わせて用い、本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素を精製標品として得ることができる。
以下、本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素を用いたL−リジンの測定方法を説明する。
本発明に係るL−リジンの測定方法は:
(A)水と酸素の存在下、上記の本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素と検体とを混合する工程;および
(B)上記変異型L−リジンε−酸化酵素によるL−リジンの脱アミノ化反応により生成する2−アミノアジピン酸−6−セミアルデヒド、アンモニアまたは過酸化水素を測定する工程を含むことを特徴とする。
本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素は、L−リジンに対する基質特異性が極めて高いため、血液試料など夾雑物を多く含む検体においても、L−リジンを正確に測定することが可能になる。
上記本発明方法には、検体中におけるL−リジンの有無を判断するための検出方法と、検体中におけるL−リジンの濃度や量を測定する定量方法などが含まれるものとする。以下、本発明方法を実施の順番に従って説明する。
酵素反応工程(工程A)
本工程では、水と酸素の存在下、本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素と検体とを混合する。前記反応式に示すように、本発明に係る酵素反応においては、酸素を電子受容体としL−リジンのε位の脱アミノ化が進行し、(S)−2−アミノアジピン酸−6−ヘミアルデヒド、アンモニアおよび過酸化水素が生成する。従って本発明における測定方法では、溶媒である水の存在下、試料溶液に含まれるL−リジンの他、L−リジンε−酸化酵素と酸素が含まれていれば上記反応は進行する。
本発明方法で用いる水は、超純水、純水、精製水、蒸留水、イオン交換水など、上記酵素反応を阻害しないものであれば特に制限されない。また、検体が水を含むものであれば、その水を利用することができる。水の使用量は、検体の形態や検体中のL−リジン濃度などにより適宜調整することができ、また、予備実験により決定してもよい。
酸素は、反応液に含まれる溶存酸素で十分であるが、必要に応じて、空気など酸素を含む混合気体や酸素自体を反応液中に吹き込んでもよい。
本発明方法での測定対象となる検体は、L−リジンを含む可能性のある試料であり、L−リジンの有無を判断すべきものや、L−リジンの濃度や量を測定すべきものであれば特に制限されない。例えば、血液、血清、血漿、臓器の一部のホモジェネート、尿などの生体試料を挙げることができる。さらに、例えば、生体試料に本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素を作用させて生じる、いかなる生成物を定量することで検体中のL−リジンの濃度を測定するのか等により、検体は適宜選択することができる。例えば、発色剤や蛍光剤を利用して上記生成物を定量する場合には無色の水溶液であることが好ましく、血清や血漿などが例として挙げられる。
生体試料などのように検体が様々な成分を含むものであり、その中に正確な測定を損なうものが含まれる場合には、検体からその様な成分を除去するよう前処理することもできる。
本発明により測定可能なL−リジン濃度は、使用するL−リジンε−酸化酵素や、後述する工程(B)で用いる測定方法などに依存する。例えば、生成する過酸化水素をペルオキシダーゼとのカップリングにより呈色させ、エンドポイント法でL−リジンを測定する場合、試料中のL−リジン濃度としては、例えば、0mM以上、1mM以下が適当である。この範囲より高濃度の検体につき測定する場合には、適量の水を加えて反応溶液中のL−リジン濃度をこの範囲に調整することが好ましい。
本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素は、L−リジン以外の天然アミノ酸に対しては、ほとんど又は全く活性を示さない。かかる特性により、L−リジンの測定に適している。また、マリノモナス・メディテラネアNBRC103028T株由来の野生型L−リジンε−酸化酵素のL−リジンに対するKm値は0.002mMであり、L−リジン量が比較的少ない(0〜1mM程度)生体試料などを対象としても使用可能である。このような観点から、反応液における本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素の混合量は、10mU/mL以上、100mU/mL以下程度の範囲に調整することが適当である。
さらに、本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素などに加えて、好ましくは、反応液のpHを当該酵素の至適pHを考慮したpHに調整することができる緩衝液を添加することができる。
反応液のpHは、L−リジンε−酸化酵素に加えて、ペルオキシダーゼとのカップリング反応による比色定量に酵素を用いる場合には、使用する酵素とその他の試薬の安定性、可溶性が許す範囲においていずれのpHでも可能であるが、好ましくはその酵素の至適pH付近で反応を行うことが望ましい。特に本発明の変異型L−リジンε−酸化酵素を用いる場合は、例えば反応液のpHを6.0以上、8.0以下に調整することが好ましい。
本工程の反応条件は、使用する酵素などに応じて適宜調製すればよいが、例えば、4℃以上、80℃以下程度で1分間以上、10時間以下程度反応させればよい。
測定工程(工程B)
本工程(B)では、上記反応後の反応液中に存在する本発明のL−リジンε−酸化酵素の作用による反応生成物の少なくとも一種を測定する。かかる反応生成物としては、上記反応式のとおり、L−リジンの脱アミノ化生成物である(S)−アミノアジピン酸6−セミアルデヒド、アンモニア、過酸化水素を挙げることができる。
本発明においては、測定にはエンドポイント法を用いることができるが、この他に反応の初速度を用いる初速度法を用いることもできる。
本発明のL−リジンε−酸化酵素によって触媒される反応で生じる(S)−アミノアジピン酸6−セミアルデヒド、アンモニアおよび過酸化水素過酸化水素の産生量は、反応によって消費されたL−リジンと化学量論的に等モルであることから、L−リジンの測定に適している。
生成した過酸化水素は、例えば、ペルオキシダーゼ反応を用いて測定する方法等の公知の方法で定量することができる。ペルオキシダーゼ反応を用いて測定する場合、使用可能なペルオキシダーゼは、過酸化水素の定量に利用可能な酵素であればよく、例えば、西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼが挙げられる。また、発色法を採用した場合の発色剤としては、使用するペルオキシダーゼの基質となり得るものであればよく、西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼを用いる場合には、4−アミノアンチピリン:フェノールなどが挙げられる。西洋ワサビペルオキシダーゼを用いる過酸化水素の定量のための反応は以下に示す通りである。
22 + 4−アミノアンチピリン + フェノール → 赤色発色化合物(4−アミノアンチピリンとフェノールの重合物) + H2
上記生成物である過酸化水素は、過酸化水素電極を用いた電流検出型センサを用いて測定することもできる。過酸化水素電極としては、例えば、ペルオキシダーゼをBSA(牛血清アルブミン)とともにグルタルアルデヒドに固定化した膜とフェロセンをカーボンペーストに含有させたものを電極として用いるセンサを挙げることができる。
定量に用いられる生成物がアンモニアである場合、アンモニアはアンモニア検出薬を用いて測定することができる。例えば、遊離するアンモニウムイオンをインドフェノール(インドフェノール青法等)やo−フタル酸アルデヒド等の検出試薬を用いて定量する方法が挙げられる。また、グルタミン酸デヒドロゲナーゼを用いる酵素法も利用できる。インドフェノール青法の原理は、アンモニア窒素が次亜塩素酸塩と反応しモノクロラミンを生成し、さらにモノクロラミンとフェノールとが反応して生ずるインドフェノール青の吸光度を測定することでアンモニア窒素を定量するものである。o−フタル酸アルデヒドを用いる方法は、アンモニアとo−フタル酸アルデヒドから生じる蛍光物質を測定する方法である。また、L−グルタミン酸デヒドロゲナーゼを用いる方法は、グルタミン酸デヒドロゲナーゼの活性により2−オキソグルタル酸とアンモニアからグルタミン酸が生じるのに伴いNADHがNAD+に変換されることを利用して行う方法である。
また、L−リジンの脱アミノ化生成物((S)−アミノアジピン酸−6−セミアルデヒド)は、例えばHPLCなどにより測定することができる。或いは、(S)−アミノアジピン酸−6−セミアルデヒドを例えばアルコールデヒドロゲナーゼやアルデヒドデヒドロゲナーゼを用いて酸化し、NAD(P)+の消費量やNAD(P)Hの増加量を測定する方法が挙げられる。
生じた生成物を定量する反応は、一般的に酵素反応が可能な4〜80℃の範囲で、その酵素の至適温度を考慮して適宜決定される。例えば、生成した過酸化水素を西洋わさび由来ペルオキシダーゼで測定する場合、好ましくは、常温付近、例えば5℃〜40℃で実施することが望ましい。また、反応液のpHは、使用する酵素およびその他の試薬の安定性、可溶性が許す範囲においていずれのpHでも可能であるが、好ましくはその酵素の至適pH付近で行うことが望ましい。特に西洋わさび由来ペルオキシダーゼを用いる場合は、中性付近(pH6〜8)が望ましい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
実施例1:本発明酵素の調製
(1) フレオマイシン耐性遺伝子(zeoR)の増幅
フレオマイシン耐性遺伝子(配列番号3)を増幅するためのPCR反応液として、滅菌水(MilliQ)34μL、プライマー1(配列番号5,100pmol)1μL、プライマー2(配列番号7,100pmol)1μL、ポリメラーゼ(TOYOBO社製,製品名「KOD−Plus−」,1U/μL水溶液)1μL、10×PCRバッファー、2mM dNTPs水溶液5μL、25mM塩化マグネシウム水溶液2μL、およびクローニングベクターとしてpCR−Blunt(Invitrogen社製)1μLを混合した。プライマー1とプライマー2には、それぞれ制限酵素SacIおよびEcoRIのための切断部位を設けた。PCR反応の条件は、(i)94℃で2分間、(ii)94℃で15秒間、(iii)55℃で30秒間、(iv)68℃で2分間とし、(i)と(ii)を30サイクル繰返した。増幅した遺伝子は、アガロースゲル電気泳動により確認した。増幅した遺伝子を、DNA精製キット(Promega社製,製品名「Wizard(登録商標) Genomic DNA Purification Kit)を用いて抽出した。
(2) フレオマイシン耐性遺伝子のベクターへの組換え
上記PCR反応で得られたPCR産物5μLに、制限酵素(SacI 0.5μLとEcoRI 0.5μL)を加え、37℃で1時間インキュベートし、制限酵素処理を行った。制限酵素処理した当該遺伝子5μLと、同様に制限処理したプラスミドベクターpUC19 1μL、およびライゲーションキット(ニッポン・ジーン社製,製品名「2×ライゲーションMix」)6μLを混合し、16℃で30分間インキュベートすることにより、プラスミドベクターpUC19にフレオマイシン耐性遺伝子を組み込んだ。大腸菌BL21(DE3)のコンピテントセル50μLに上記ライゲーション反応液5μLを加え、ヒートショック法で形質転換を行った。ヒートショック法の手順は以下の通りである。大腸菌コンピテントセル50μLに対し、プラスミド5μLを混合し、60分間氷上静置した。その後、42℃で90秒間のヒートショックを行った後、LB液体培地を1mL添加し、37℃で1時間インキュベートした。100μg/mLのアンピシリンを含むLB培地(1.0%ポリペプトン,0.5%イースト抽出物、および1.0%塩化ナトリウム)に生育したコロニーから数株選抜してプラスミドを抽出し、0.7%アガロース電気泳動により、ゼオシン耐性遺伝子のインサートの有無を確認した。フレオマイシン耐性遺伝子を挿入したpUC19プラスミドベクターを、以下「pUC19zeoR」と示す。
(3) L−リジンε−酸化酵素遺伝子(lodA)を含む染色体DNAの取得
L−リジンε−酸化酵素の産生能を有する海洋性細菌であるマリノモナス・メディテラネア(Marinomonas mediterranea)NBRC103028T株を、従属栄養培地(Difco社製,製品名「Marine broth 2216」)5mLに植菌し、25℃、170rpmで48時間培養した。培養後、5,000×gで20分間遠心分離し、菌体を得た。DNA精製キット(Promega社製,製品名「Wizard(登録商標) Genomic DNA Purification Kit)を用いて、目的とする染色体DNA(ゲノムDNA)を得た。
(4) PCRによるL−リジンε−酸化酵素遺伝子(lodA)の増幅
L−リジンε−酸化酵素遺伝子(lodA)を増幅するためのPCR反応液として、滅菌水(MilliQ)28.5μL、上記(3)で得た染色体DNA 1μL、プライマー3(配列番号8,100pmol)1μL、プライマー4(配列番号8,100pmol)1μL、ポリメラーゼ(タカラバイオ社製,製品名「TaKaRa LA Taq」,5units/μL)0.5μL、10×LA PCR BufferII(Mg2+free)5μL、25mM塩化マグネシウム水溶液5μL、およびdNTP Mixture 8μLを混合した。PCR反応の条件は、(i)98℃で5分間、(ii)96℃で10秒間、(iii)55℃で5秒間、(iv)68℃で3分間とし、(i)と(ii)を30サイクル繰返した。増幅した遺伝子を、DNA精製キット(Promega社製,製品名「Wizard(登録商標) Genomic DNA Purification Kit)を用いて抽出した。
(5) L−リジンε−酸化酵素遺伝子(lodA)のベクターへの組換え
制限酵素XbaIで処理した上記(2)のpUC19zeoR 1μL、上記(4)で得たL−リジンε−酸化酵素遺伝子のPCR産物3μL、およびクローニングキット(タカラバイオ社製,製品名「5×In−Fusion HD Enzyme Premix」)1μLを混合して50℃で15分間反応させることにより、ゼオシン耐性遺伝子が挿入されたプラスミドベクターpUC19zeoRにL−リジンε−酸化酵素遺伝子(lodA)を導入した。大腸菌BL21(DE3)のコンピテントセル50μLに、5μLの上記反応液を加え、ヒートショック法で形質転換を行った。100μg/mLのアンピシリンを含むLB培地に生育したコロニーから数株選抜してプラスミドを抽出し、0.7%アガロース電気泳動により、L−リジンε−酸化酵素遺伝子(lodA)の導入の有無を確認した。なお、本組換え大腸菌が産生するL−リジンε−酸化酵素は、C末端側にフレオマイシン耐性遺伝子発現ペプチドが付加した融合タンパク質として生成されるように発現用プラスミドベクターを構築した。ここで得られたlodA導入プラスミドベクターを、以下「pUC19zeoR−lodA」と示す。
(6) L−リジンε−酸化酵素遺伝子(lodA)へのランダム変異導入
上記(5)で得られたpUC19zeoR−lodAの水溶液10μLを、ヒートショック法により、ランダム突然変異導入用大腸菌XL−1 Red(Stratagene社製)に導入して形質転換した。100μg/mLのアンピシリンを含むLB培地で48時間培養し、生育したコロニーを100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)にコンラージ棒を用いて懸濁し、菌体を回収した。プラスミドベクターを抽出し、変異型酵素ライブラリーとした。
(7) lodA発現補助タンパク質遺伝子(lodB)の増幅
L−リジンε−酸化酵素遺伝子(lodA)の発現を促進するためのlodA発現補助タンパク質遺伝子(lodB)を増幅するためのPCR反応液として、滅菌水(MilliQ)28.5μL、上記(3)で得た染色体DNA 1μL、プライマー5(配列番号10,100pmol)1μL、プライマー6(配列番号11,100pmol)1μL、ポリメラーゼ(タカラバイオ社製,製品名「TaKaRa LA Taq」,5units/μL)0.5μL、10×LA PCR BufferII(Mg2+free)5μL、25mM塩化マグネシウム水溶液5μL、およびdNTP Mixture 8μLを混合した。プライマー5とプライマー6には、それぞれ制限酵素NcoIおよびPstIのための切断部位を設けた。PCR反応の条件は、(i)98℃で5分間、(ii)96℃で10秒間、(iii)55℃で5秒間、(iv)68℃で2分間とし、(i)と(ii)を30サイクル繰返した。増幅した遺伝子を、DNA精製キット(Promega社製,製品名「Wizard(登録商標) Genomic DNA Purification Kit)を用いて抽出した。
(8) lodA発現補助タンパク質遺伝子(lodB)のベクターへの組換え
上記(7)のPCR反応で得られたPCR産物5μLに、制限酵素NcoI 0.5μLとPstI 0.5μLを加え、37℃で1時間インキュベートし、制限酵素処理を行った。制限酵素処理した当該遺伝子 5μLと、同様に制限処理したプラスミドベクターpCDF 1μL、およびライゲーションキット(ニッポン・ジーン社製,製品名「2×ライゲーションMix」)6μLを混合し、16℃で30分間インキュベートすることにより、プラスミドベクターにL−リジンε−酸化酵素発現補助タンパク質遺伝子(lodB)を組み込んだ。大腸菌BL21(DE3)のコンピテントセル50μLに、上記ライゲーション反応液5μLを加え、ヒートショック法で形質転換を行った。ヒートショック法の手順は以下の通りである。大腸菌コンピテントセル50μLに対し、プラスミド5μLを混合し、60分間氷上静置した。その後、42℃で90秒間のヒートショックを行った後、LB液体培地を1mL添加し、37℃で1時間インキュベートした。100μg/mLのストレプトマイシンを含むLB培地に生育したコロニーから数株選抜してプラスミドを抽出し、0.7%アガロース電気泳動により、L−リジンε−酸化酵素発現補助タンパク質遺伝子(lodB)のインサートの有無を確認した。lodA発現補助タンパク質遺伝子(lodB)を挿入したプラスミドベクターpCDFを、以下「ppCDF−lodB」と示す。
(9) 変異型L−リジンε−酸化酵素ライブラリーからの活性型酵素発現プラスミドベクターの選別
上記(8)で得られたプラスミドベクターpCDF−lodBを、大腸菌BL21(DE3)に上記(8)と同様の条件のヒートショック法により導入し、形質転換した。100μg/mLのストレプトマイシンを含むLB培地に生育したコロニーを用いて、大腸菌lodB発現株のコンピテントセルを作成した。上記(6)で得られた変異型L−リジンε−酸化酵素ライブラリーを上記大腸菌lodB発現株に同様のヒートショック法により導入し、形質転換した(図3を参照)。25μg/mLのフレオマイシンと0.5μg/mL IPTGを含むLB培地に生育したコロニーを、25μg/mLのフレオマイシンと0.5μg/mL IPTGを含むLB液体培地に植菌し、25℃で24時間培養した。
L−リジンε−酸化酵素の変異型遺伝子(lodA)が発現することで、フレオマイシン耐性遺伝子も変異型L−リジンε酸化酵素に融合した形で共発現し、そのプラスミドベクターを有する株がフレオマイシン耐性能を示すようになる。変異型L−リジンε酸化酵素遺伝子が発現しない、もしくは、当該遺伝子の発現タンパク質が不溶性である場合には、フレオマイシン耐性能は示さない。目的タンパク質が発現することで、C末端側のフレオマイシン耐性遺伝子が発現し、フレオマイシン耐性能を有する。このことから、フレオマイシンを含む培地で選別することで、変異型L−リジンε−酸化酵素の取得に成功した。
得られたコロニーをランダムに選び、DNAシーケンサーを用いてDNA配列を解読した結果、多くのコロニーのL−リジンε−酸化酵素遺伝子の塩基配列において、野生型L−リジンε−酸化酵素の遺伝子の塩基配列(配列番号1)に対して、第276位のアデニンがグアニンに、第675位のチミンがシトシンに、第857位のアデニンがグアニンに、第1593位のアデニンがグアニンに、第1650位のアデニンがグアニンに、第1698位のシトシンがチミンに、第1938位のチミンがグアニンに置換されていた。配列番号1の塩基配列の第857位の変異により、野生型L−リジンε−酸化酵素のアミノ酸配列(配列番号2)に対して第286位のみヒスチジンがアルギニンに置換されていたが、その他6点の変異に関しては、サイレント変異によるものであった(図2)。
試験例1:酵素活性測定
上記実施例1で得られた変異型L−リジンε酸化酵素の酵素活性を調べるために、L−リジンε−酸化酵素活性を測定した。具体的には、マイクロプレートに、氷上、表2の組成を有するL−リジンε−酸化酵素測定用発色液100μL、100mM L−リジン水溶液水溶液100μL、および1U酵素水溶液50μLを加え、30℃で反応させた。また、対照(ブランク)として、L−リジン水溶液の代わりに同量の100mMリン酸カリウム緩衝液を添加して同様に反応させた。
反応開始から、0、0.5、1、1.5、2、3、4、5時間後に試料を取得し、マイクロプレートリーダーで550nmの吸光度を測定した。
得られた吸光度変化により、下記計算式に基づきL−リジンε−酸化酵素活性を算出した。なお、上記条件において、1分間に1マイクロモルの基質を与える酵素量を1Uとした。
活性値(U/ml)={ΔOD/min(ΔODtest−ΔODblank)×3.1(mL)×希釈倍率}/{13×1.0(cm)×0.1(mL)}
3.1(mL):全液量
13:ミリモル吸光係数
1.0cm:セルの光路長
0.1(mL):酵素サンプル液量
野生型L−リジンε−酸化酵素遺伝子を導入した本大腸菌発現系から得られた粗酵素液の酵素活性を測定したが、活性は見られなかった。野生型L−リジンε−酸化酵素自体は酸化酵素活性を有するはずであるので、zeoRの発現によりフレオマイシン耐性は表われたが、コドンの使用頻度などの問題で野生型L−リジンε−酸化酵素遺伝子は発現できなかったと考えられる。pET系、pCold系、pETDuet発現ベクターでも同様の実験を行ったが、活性が見られなかった。それに対して、本発明に係る変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子を大腸菌に導入した場合には、粗酵素液の酵素活性が見られ、0.751U/mgの比活性が認められた。
試験例2:lodBとの共発現によるL−リジンε−酸化酵素活性への影響
lodBとの共発現による酵素活性への影響を調べるために、blank(pUC19zeoRとpCDF)、lodAのみ(pUC19zeoR−lodA)、lodBのみ(pCDF−lodB)およびlodAとlodBの共発現(pUC19zeoR−lodAとpCDF−lodB)の各々のプラスミドベクターを用いて大腸菌BL21(DE3)を形質転換し、酵素活性を測定した。結果を図4に示す。
図4に示される通り、lodAとlodBの共発現の時においてのみ変異型L−リジンε−酸化酵素は酵素活性を示したことから、lodBが本発明酵素の発現に重要であることが明らかとなった。
実施例2:本発明酵素の調製
(1) 大腸菌発現株からのL−リジンε−酸化酵素遺伝子(lodA)の精製
(i) L−リジンε−酸化酵素発現大腸菌の培養
上記で得られた本発明に係る変異型酵素の詳細な特性を明らかにするために、酵素を精製した。上記実施例1(9)で得られた発現株[大腸菌BL21(DE3)/pUC19zeoR−lodA,pCDF−lodB]を、25μg/mLのフレオマイシン、100μg/mLのアンピシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、および0.5mMのIPTGを含むLB培地2L(500mL×2L容バッフル付きフラスコ4個)に植菌後、25℃で36時間培養した。
(ii) 無細胞抽出液の調製
上記培養液を6,000×gで5分間遠心分離後、上清を取り除き、残渣に対し5倍量の1.0Mリン酸カリウム緩衝液を加えて懸濁後、超音波ホモジナイザーにて細胞を破砕した。この破砕液を20,000×gで30分間遠心分離し、上清を無細胞抽出液とした。
(iii) 硫安分画
上記で得られた無細胞抽出液に終濃度15%になるように硫酸アンモニウムを添加し、氷上で30分間撹拌した後に、20,000×gで30分間遠心分離し、上清を回収した。得られた上清に終濃度が30%になるように硫酸アンモニウムを添加し、氷上で30分間撹拌した後に、20,000×gで30分間遠心分離、沈殿物に20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を加えて懸濁後、同緩衝液で一晩透析を行った。
(iv) 陰イオン交換カラムクロマトグラフィ
20mM KPB(pH7.0)により平衡化した陰イオン交換樹脂(GEヘルスケア社製,「Qセファロース樹脂」)100mLをカラムに充填し、上記(iii)で得た酵素液を吸着させた。500mLの20mMリン酸カリウム緩衝液でカラムを洗浄した後、20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)500mLおよび500mM塩化ナトリウムを含む20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)500mLを用いて、グラジエントにより溶離液のNaCl濃度を徐々に上げ、酵素を溶出させた。フラクションコレクターを用いて10mLずつ試験管にフラクションを採取し、活性が認められたフラクションを集めた。
(v) 疎水クロマトグラフィ
活性が得られたフラクションに、終濃度が2Mになるように硫酸アンモニウムを添加し、これを酵素液とした。2M硫酸アンモニウムを含む20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)により平衡化した疎水吸着樹脂(GEヘルスケア社製,「Octyl sepharose樹脂」)100mLをカラムに充填し、活性フラクションを吸着させた。2M硫酸アンモニウムを含む20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)500mLでカラムを洗浄した後、2M硫酸アンモニウムを含む20mMリン酸カリウム緩衝液250mLおよび20mMリン酸カリウム緩衝液250mlを用いて、グラジエントにより硫酸アンモニウム濃度を徐々に下げ、酵素を溶出させた。活性が確認された非吸着画分を5Lの同緩衝液(×2回)で、一晩透析を行った。
(vi) ゲル濾過クロマトグラフィ(Superdex 200)
0.15M塩化ナトリウムを含む0.05Mリン酸カリウム緩衝液で平衡化したゲル濾過クロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製「Superdex 200」)を用い、中圧高速液体クロマトグラフィ(FPLC)で酵素を精製した。サンプルループに、限外濾過チューブ(ミリポア社製,「セントリコン」)により濃縮した酵素液200μLを注入し、0.15M塩化ナトリウムを含む0.05Mリン酸カリウム緩衝液を用いて、酵素を溶出させた。各フラクション(0.5mL)から活性が認められたフラクションを集め、一晩透析した。透析した後、限外濾過チューブ(ミリポア社製,「セントリコン」)を用いて酵素液を200μLまで濃縮した。以上の精製状況を、表3にまとめる。
(2) L−リジンε−酸化酵素の分子量測定
36%アクリルアミド5.25mL、0.68Mトリス−HCl緩衝液(pH8.8)8.25mL、1%SDS 1.58mL、10%TEMED 187μL、2%APS 562.5μLの組成を有するゲルに、36%ポリアクリルアミド0.5mL、0.179Mトリス−HCl(pH6.8)3.5mL、1%SDS 0.5mL、10%TEMED 125μL、2%APS 375μLの組成を有する濃縮ゲルを重層したものを用い、緩衝液(グリセロール200μL,1Mトリス−HCl(pH8.0)40μL,水360μL,2−メルカプトエタノール200μL,10%SDS 200μL)と等量混合した精製酵素サンプル10μLを、ランニング緩衝液(トリス3.0g,グリシン14.1g,SDS 10g)中、30mAで電気泳動を行った。その後、ゲルをタンパク染色液(CBB2.5g,メタノール500mL,酢酸50mL,水450mL)で1時間染色し、脱色液(メタノール:酢酸:水=3:1:6)でバンドが鮮明になるまで脱色した。
分子量マーカー(Bio−Rad社製)としては、以下のものを用いた。
β−ガラクトシダーゼ (116,250)
ホスフォリラーゼ (97,400)
血清アルブミン (66,200)
オボアルブミン (45,000)
カルボニックアンヒドラーゼ (31,000)
トリプシンインヒビター (21,500)
リゾチーム (14,400)
図5に、得られた電気泳動ゲルのSDS−PAGEの写真を示す。
試験例3:各アミノ酸に対する酵素活性
本発明に係る変異型酵素の基質特異性を調べるために、L−リジンの代わりに表4のアミノ酸を用いた以外は上記試験例1と同様にして、酵素活性を測定した。また、L−リジンについても再度実験を行った。
結果としては、本発明に係るL−リジンε−酸化酵素は、L−リジンを基質として酸化する一方で、他のほとんどのアミノ酸を基質とせず、酵素活性を全く示さなかった。上記アミノ酸の中では、唯一、L−オルニチンをわずかに基質とするのみであった。L−リジンに対する酵素活性を100とした場合のL−オルニチンに対する相対活性を表5に示す。
以上の結果のとおり、本発明に係るL−リジンε−酸化酵素は、L−リジンに対して極めて高い特異性を示すことから、L−リジンの定量に非常に有用であることが明らかになった。

Claims (12)

  1. 下記(1)〜(3)の何れかの変異型L−リジンε−酸化酵素。
    (1) 野生型L−リジンε−酸化酵素のアミノ酸配列(配列番号2)において、第286位のヒスチジンがアルギニンまたはリジンに置換されているアミノ酸配列を有する変異型L−リジンε−酸化酵素;
    (2) 上記(1)に規定されるアミノ酸配列において、上記第286位を除く領域中で1以上のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列を有し、且つ、L−リジンを基質とした場合に対するL−リジン以外のアミノ酸を基質とした場合の相対活性が5%以下である変異型L−リジンε−酸化酵素;または
    (3) 上記(1)に規定されるアミノ酸配列に対して65%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、且つ、L−リジンを基質とした場合に対するL−リジン以外のアミノ酸を基質とした場合の相対活性が5%以下である変異型L−リジンε−酸化酵素(但し、上記(1)に規定されるアミノ酸配列における第286位のアミノ酸の置換は、(3)においてさらに変異しないものとする)。
  2. 配列番号2のアミノ酸配列において、第286位のヒスチジンがアルギニンに置換されている請求項1に記載の変異型L−リジンε−酸化酵素。
  3. 下記(1’)〜(3’)の何れかの変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子。
    (1’) 野生型L−リジンε−酸化酵素をコードする遺伝子の塩基配列(配列番号1)において、第276位のアデニンがグアニンに、第675位のチミンがシトシンに、第857位のアデニンがグアニンに、第1593位のアデニンがグアニンに、第1650位のアデニンがグアニンに、第1698位のシトシンがチミンに、第1938位のチミンがグアニンに置換されている塩基配列を有する変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子;
    (2’) 上記(1’)に規定される塩基配列において、上記第276位、第675位、第857位、第1593位、第1650位、第1698位および第1938位を除く領域中で1以上の塩基が欠失、置換および/または付加された塩基配列を有し、且つ、少なくとも大腸菌BL21株に導入した場合に発現可能なものである変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子;または
    (3’) 上記(1’)に規定される塩基配列に対して65%以上の配列同一性を有する塩基配列を有し、且つ、少なくとも大腸菌BL21株に導入した場合に発現可能なものである変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子(但し、上記(1’)に規定される塩基配列における第276位、第675位、第857位、第1593位、第1650位、第1698位および第1938位の置換は、(3’)においてさらに変異しないものとする)。
  4. 請求項3に記載の変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子の塩基配列において終止コドンTAGが欠失しており、当該位置にブレオマイシン系抗生物質耐性遺伝子が結合していることを特徴とするL−リジンε−酸化酵素遺伝子−抗生物質耐性遺伝子結合体。
  5. 変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子とブレオマイシン系抗生物質耐性遺伝子がペプチドリンカーをコードする遺伝子を介して結合している請求項4に記載のL−リジンε−酸化酵素遺伝子−抗生物質耐性遺伝子結合体。
  6. ブレオマイシン系抗生物質耐性遺伝子がフレオマイシン耐性遺伝子である請求項4または5に記載のL−リジンε−酸化酵素遺伝子−抗生物質耐性遺伝子結合体。
  7. フレオマイシン耐性遺伝子が配列番号3の塩基配列を有する請求項6に記載のL−リジンε−酸化酵素遺伝子−抗生物質耐性遺伝子結合体。
  8. L−リジンを測定するための方法であって:
    (A)水と酸素の存在下、請求項1または2に記載の変異型L−リジンε−酸化酵素と検体とを混合する工程;および
    (B)上記変異型L−リジンε−酸化酵素によるL−リジンの脱アミノ化反応により生成する2−アミノアジピン酸−6−セミアルデヒド、アンモニアまたは過酸化水素を測定する工程
    を含むことを特徴とする方法。
  9. 請求項1または2に記載の変異型L−リジンε−酸化酵素を含むことを特徴とするL−リジン測定用キット。
  10. さらに、ペルオキシダーゼとペルオキシダーゼ用発色剤の組合せ、アンモニア検出薬、NAD+とアルデヒドデヒドロゲナーゼまたはアルコールデヒドロゲナーゼとの組合せの少なくとも一つを含む請求項9に記載のキット。
  11. 請求項3に記載の変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子または請求項4〜7のいずれかに記載のL−リジンε−酸化酵素遺伝子−抗生物質耐性遺伝子結合体を含むことを特徴とするベクター。
  12. 請求項11に記載のベクターにより形質転換されたものであることを特徴とする形質転換体。
JP2013209828A 2013-10-07 2013-10-07 変異型L−リジンε−酸化酵素および変異型L−リジンε−酸化酵素遺伝子 Pending JP2015073443A (ja)

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