第1の実施形態.
図3Aは、本発明の第1の実施形態に係るレベルコンバータ回路1の応用例を示すブロック図である。図3Aにおいて、レベルコンバータ回路1は、低電源電圧VDDL(例えば0.4Vである。)が供給される低電圧回路ブロック200からの信号の信号レベルを変換して、高電源電圧VDDH(例えば3Vである。)が供給される高電圧回路ブロック300に出力する。低電圧回路ブロック200からレベルコンバータ回路1に入力される入力信号INは、ハイレベル又はローレベルを有する2値信号であり、ハイレベルの電位は低電源電圧VDDLであり、ローレベルの電位は接地電位である。また、レベルコンバータ回路1によって高電圧回路ブロック300に出力される出力信号OUTは、ハイレベル又はローレベルを有する2値信号であり、ハイレベルの電位は高電源電圧VDDHであり、ローレベルの電位は接地電位である。以下、低電源電圧VDDLの電圧レベルを第1のハイレベルといい、高電源電圧VDDHの電圧レベルを第2のハイレベルという。また、低電源電圧VDDLを有する電圧源を低電圧源といい、高電源電圧VDDHを有する電圧源を高電圧源という。
図3Bは、本発明の第1の実施形態に係るレベルコンバータ回路1の構成を示すブロック図である。図3Bにおいて、レベルコンバータ回路1は、電流生成回路10と、電流検出回路20と、差動増幅回路30と、ソース接地増幅回路40と、前処理回路50と、端子T1,T2とを備えて構成される。
第1の実施形態に係るレベルコンバータ回路1は、第1のハイレベルを有するデジタル信号である入力信号INを、第1のハイレベルよりも高い第2のハイレベルを有する出力信号OUTに変換するレベルコンバータ回路1において、
入力信号INを増幅して出力信号OUTに出力する差動増幅回路30及びソース接地増幅回路40と、
入力信号INの電圧が変化するとき差動増幅回路30及びソース接地増幅回路40のそれぞれに流れる動作電流IA2,IA3に対応する制御電流IA1を生成する電流生成回路10と、
電流生成回路10によって生成された制御電流IA1を検出して、差動増幅回路30及びソース接地増幅回路40のそれぞれの動作電流IA2,IA3が制御電流IA1に対応するように制御する電流検出回路20とを備え、
電流生成回路10は、電流検出回路20と接地との間に挿入されかつ直列に接続されたnMOSトランジスタMN11,MN12を備え、
nMOSトランジスタMN11は入力信号INに応答して動作しかつnMOSトランジスタMN12は入力信号INの反転信号INBに応答して動作するように構成されたことを特徴とする。
前処理回路50は、pMOSトランジスタMP51と、nMOSトランジスタMN51とを備えて構成される。pMOSトランジスタMP51のソースは、低電圧源に接続される。pMOSトランジスタMP51のゲート及びnMOSトランジスタMN51のゲートは、端子T1に接続され、低電圧回路ブロック200からの入力信号INは当該ゲートに入力される。pMOSトランジスタMP51のドレインは、nMOSトランジスタMN51のドレインに接続される。nMOSトランジスタMN51のソースは接地される。pMOSトランジスタMP51とnMOSトランジスタMN51とは、直列に接続されてインバータを構成しており、当該インバータは入力信号INを反転した信号INB(以下、入力信号INBともいう。)を電流生成回路10及び差動増幅回路30に出力する。
電流生成回路10は、詳細後述するように、電流検出回路20、前処理回路50、及び端子T1に接続され、その回路の接地部は接地される。
電流検出回路20は、pMOSトランジスタMP21を備えて構成される。pMOSトランジスタMP21のソースは、高電圧源に接続され、pMOSトランジスタMP21のゲートは、pMOSトランジスタMP31のゲート及びpMOSトランジスタMP41のゲートに接続されるとともに、pMOSトランジスタMP21のドレインに接続される。pMOSトランジスタMP21のドレインは、電流生成回路10に接続される。pMOSトランジスタMP21,MP31,MP41は、カレントミラー回路を構成する。
差動増幅回路30は、pMOSトランジスタMP31,MP32,MP33と、nMOSトランジスタMN31,MN32とを備えて構成される。pMOSトランジスタMP31のソースは、高電圧源に接続され、pMOSトランジスタMP31のドレインは、pMOSトランジスタMP32のソース及びpMOSトランジスタMP33のソースに接続される。pMOSトランジスタMP32のゲートは、前処理回路50に接続され、入力信号INBは当該ゲートに入力される。pMOSトランジスタMP32のドレインは、nMOSトランジスタMN31のドレインに接続される。pMOSトランジスタMP33のゲートは、端子T1に接続され、入力信号INは当該ゲートに入力される。pMOSトランジスタMP33のドレインは、nMOSトランジスタMN32のドレインに接続される。nMOSトランジスタMN31のゲートは、nMOSトランジスタMN31のドレイン及びnMOSトランジスタMN32のゲートに接続される。nMOSトランジスタMN31のソース及びnMOSトランジスタMN32のソースは接地される。
ソース接地増幅回路40は、pMOSトランジスタMP41と、nMOSトランジスタMN41とを備えて構成される。pMOSトランジスタMP41のソースは、高電圧源に接続され、pMOSトランジスタMP41のドレインは、nMOSトランジスタMN41のドレインに接続される。nMOSトランジスタMN41のゲートは、pMOSトランジスタMP33のドレインとnMOSトランジスタMN32のドレインとの接続点に接続され、nMOSトランジスタMN41のソースは接地される。pMOSトランジスタMP41のドレインとnMOSトランジスタMN41のドレインとの接続点は、端子T2に接続される。ここで、差動増幅回路30とソース接地増幅回路40とは、2段増幅回路を構成する。
レベルコンバータ回路1では、入力信号INがpMOSトランジスタMP33のゲートに入力され、入力信号INBがpMOSトランジスタMP32のゲートに入力される。レベルコンバータ回路1の特徴は、入力信号IN及び入力信号INBを利用した電流生成回路10にある。電流生成回路10は、入力信号INの信号レベルが変化する期間のみ電流IA1(制御電流IA1ともいう。)を生成する。電流検出回路20は、電流IA1を検出して制御電圧Vctrlを発生し、差動増幅回路30に流れる電流IA2(動作電流IA2ともいう。)及びソース接地増幅回路40に流れる電流IA3(動作電流IA3ともいう。)が、電流IA1に対応するようにカレントミラー回路を介して制御する。差動増幅回路30及びソース接地増幅回路40は、それぞれ対応する電流IA2,IA3が供給されると、小振幅の入力信号INを大振幅の出力信号OUTに増幅して出力することによりレベル変換を実行する。以下、レベルコンバータ回路1の動作を詳細に説明する。
レベルコンバータ回路1は、差動増幅回路30及びソース接地増幅回路40を備えて構成される2段増幅回路と、電流生成回路10と、電流検出回路20と、前処理回路50とを備えて構成される。電流生成回路10によって生成される電流IA1に対応する電流IA2及びIA3がそれぞれ差動増幅回路30及びソース接地増幅回路40に供給される場合を考える。入力信号INの電圧が入力信号INBの電圧よりも高い場合、出力信号OUTは第2のハイレベルとなる。一方、入力信号INの電圧が入力信号INBの電圧よりも低い場合、出力信号OUTはローレベルとなる。入力信号INと入力信号INBとは、第1のハイレベル又はローレベルの相補関係であることから、入力信号INがローレベルから第1のハイレベルになったとき、入力信号INBは第1のハイレベルからローレベルとなり、出力信号OUTはローレベルから第2のハイレベルまで上昇する。
ここで、端子T2に対する充放電電流に注目する。出力信号OUTの論理(信号レベル)は、pMOSトランジスタMP41及びnMOSトランジスタMN41を流れる充放電電流によって端子T2が充放電されることによって決定される。充放電を担うpMOSトランジスタMP41及びnMOSトランジスタMN41のゲート電圧は、電流生成回路10によって生成される電流IA1によって決定されるため、pMOSトランジスタMP41及びnMOSトランジスタMN41に流れる電流量のバランスを緻密に調整する必要がない。すなわち、レベルコンバータ回路1は、図2に示す従来技術に係るレベルコンバータ回路100と比較して、高電源電圧VDDHと低電源電圧VDDLとの間の電圧差、プロセスバラツキ、及び温度変化に対して耐性を有する。
差動増幅回路30及びソース接地増幅回路40は通常、基準電流源回路から生成される電流を利用して動作する。しかしながら、定常的に電流が流れることは消費電力を増大させるので好ましくない。一般に、レベルコンバータ回路1は、入力信号INの電圧が変化するときのみ高速に動作することが求められる。すなわち、入力信号INの電圧が変化するときのみ差動増幅回路30及びソース接地増幅回路40に流れる電流を生成し、入力信号INの電圧が変化しないときには電流を生成しないようにすることで、レベルコンバータ回路1の低消費電力化を実現することができる。このための電流生成回路10を考えた。
図4は、図3Bの電流生成回路10の構成を示すブロック図である。電流生成回路10は、nMOSトランジスタMN11,MN12を備えて構成される。nMOSトランジスタMN11のドレインは、電流検出回路20に接続され、nMOSトランジスタMN11のゲートは、端子T3に接続される。端子T3には、前処理回路50から入力信号INBが入力される。nMOSトランジスタMN11のソースは、nMOSトランジスタMN12のドレインに接続される。nMOSトランジスタMN12のゲートは、端子T4に接続される。端子T4は、端子T1に接続され、入力信号INが端子T4に入力される。nMOSトランジスタMN12のソースは接地される。なお、電流生成回路10は、入力信号INが端子T3に入力され、かつ入力信号INBが端子T4に入力されるように構成されてもよい。
図4において、電流生成回路10では、2つのnMOSトランジスタMN11,MN12を縦続接続し、nMOSトランジスタMN11のゲートに入力信号INBを印加し、nMOSトランジスタMN12のゲートに入力信号INを印加する。このとき、入力信号INB,INの信号レベルは、有限の遅延時間で変化するため、入力信号INB,INがともに有限の電圧を有する期間が存在する。この期間において、nMOSトランジスタMN11は入力信号INBに応答して動作し、nMOSトランジスタMN12は入力信号INに応答して動作して、電流IA1を生成する。
図5は、図4の電流生成回路10に入力される入力信号IN及び入力信号INBの電圧と、電流生成回路10によって生成される電流IA1との間のタイミングを示すタイミング図であり、図5(a)は入力信号IN及び入力信号INBの電圧を示し、図5(b)は電流IA1を示す。入力信号INの電圧が変化すると、前処理回路50を介して入力信号INBの電圧が反転する。このとき、入力信号IN,INBの信号レベルが変化する期間には、入力信号IN,INBの電圧がともに、しきい値電圧Vthを超える期間が存在し、当該期間においてnMOSトランジスタMN11,MN12がオン状態となり、入力信号のいずれか一方がローレベルになるまで電流IA1が生成される。この電流IA1に対応する電流IA2,IA3 が差動増幅回路30及びソース接地増幅回路40に印加されて、レベル変換動作が実行される。入力信号INの電圧が変化しないとき、レベルコンバータ回路1は、nMOSトランジスタMN11,MN12を流れるリーク電流のみで動作する。したがって、この電流生成回路10を利用することで、レベルコンバータ回路1は、低消費電力で信号レベル変換動作を実現することができる。
入力信号INが変化してから出力信号OUTが変化するまでの遅延時間は、電流生成回路10によって生成される電流IA1に依存する。したがって、縦続接続した2つのnMOSトランジスタMN11,MN12のトランジスタサイズ若しくはしきい値電圧を調整する、又は差動増幅回路30及びソース接地増幅回路40のカレントミラー比を調整することで、上記遅延時間を制御することができる。
以上説明したように、第1の実施形態によれば、電流生成回路10によって生成される電流IA1に対応する電流IA2,IA3をそれぞれ差動増幅回路30及びソース接地増幅回路40に印加して、信号レベルを変換するので、低電源電圧VDDLと高電源電圧VDDHとの間の差電圧が大きい場合でも、レベルコンバータ回路1は安定に動作する。また、電流生成回路10は、入力信号INの電圧が変化するときのみ電流IA1を生成し、入力信号INの電圧が変化しないときは電流IA1を生成しないので、レベルコンバータ回路1は低消費電力で動作する。
図6は、図4の電流生成回路10の第1の変形例である電流生成回路10aの構成を示す回路図である。図6の電流生成回路10aは、図4の電流生成回路10と比較して、電圧Vc1を発生するVc1発生器(電圧発生器)501と、電圧Vc2を発生するVc2発生器(電圧発生器)502と、コントローラ503とをさらに備える点が異なる。nMOSトランジスタMN11の基板電位(ウェル電位)は、Vc1発生器501によって発生される電圧Vc1に設定され、nMOSトランジスタMN12の基板電位は、Vc2発生器502によって発生される電圧Vc2に設定される。コントローラ503は、nMOSトランジスタMN11,MN12のしきい値電圧がそれぞれ電流生成回路10におけるnMOSトランジスタMN11,MN12のしきい値電圧よりも低下するように、Vc1発生器501及びVc2発生器502によって発生される電圧Vc1,Vc2を制御する。これにより、電流生成回路10aによって生成される電流IA1が電流生成回路10によって生成される電流IA1よりも増加し、レベルコンバータ回路1が高速に動作するようになる。
図7は、図4の電流生成回路10の第2の変形例である電流生成回路10bの構成を示す回路図である。図7の電流生成回路10bは、図4の電流生成回路10と比較して、nMOSトランジスタMN11の基板電位が、nMOSトランジスタMN11のドレインの電圧と同一の電圧に設定され、nMOSトランジスタMN12の基板電位が、nMOSトランジスタMN12のドレインの電圧と同一の電圧に設定されている点が異なる。これにより、nMOSトランジスタMN11,MN12のしきい値電圧がそれぞれ電流生成回路10におけるnMOSトランジスタMN11,MN12のしきい値電圧よりも低下して、電流生成回路10bによって生成される電流IA1が電流生成回路10によって生成される電流IA1よりも増加し、レベルコンバータ回路1が高速に動作するようになる。
図8は、図4の電流生成回路10の第3の変形例である電流生成回路10cの構成を示す回路図である。図8の電流生成回路10cは、図4の電流生成回路10と比較して、nMOSトランジスタMN11の基板電位が、nMOSトランジスタMN11のドレインの電圧と同一の電圧に設定され、nMOSトランジスタMN12の基板電位が、nMOSトランジスタMN12のソースの電圧と同一の電圧に設定されている点が異なる。これにより、nMOSトランジスタMN11のしきい値電圧がそれぞれ電流生成回路10におけるnMOSトランジスタMN11のしきい値電圧よりも低下して、電流生成回路10cによって生成される電流IA1が電流生成回路10によって生成される電流IA1よりも増加し、レベルコンバータ回路1が高速に動作するようになる。
図9は、図4の電流生成回路10の第4の変形例である電流生成回路10dの構成を示す回路図である。図9の電流生成回路10dは、図4の電流生成回路10と比較して、nMOSトランジスタMN11a,MN12aをさらに備える点が異なる。nMOSトランジスタMN11aのドレインは、電流検出回路20に接続され、nMOSトランジスタMN11aのゲートは、端子T3に接続され、入力信号INBは当該ゲートに入力される。nMOSトランジスタMN11aのソースは、nMOSトランジスタMN12aのドレインに接続される。nMOSトランジスタMN12aのゲートは、端子T4に接続され、入力信号INは当該ゲートに入力される。nMOSトランジスタMN12aのソースは接地される。
図9において、nMOSトランジスタMN11a,MN12aは、図4のnMOSトランジスタMN11,MN12と同様に接続されるように構成される。これによって、電流生成回路10dにおいて電流が流れる経路が、電流生成回路10において電流が流れる経路よりも増加するので、電流生成回路10dによって生成される電流IA1が電流生成回路10によって生成される電流IA1よりも増加し、レベルコンバータ回路1が高速に動作するようになる。
なお、電流生成回路10のnMOSトランジスタMN11,MN12に対して、ゲート幅を大きくする、トランジスタのサイズを大きくする、又はチャネル幅を大きくしてもよく、これによって、電流生成回路10によって生成される電流IA1が増加し、レベルコンバータ回路1が高速に動作するようになる。
第2の実施形態.
レベルコンバータ回路1の動作は、入力信号INの波形に強く依存する課題がある。また、レベルコンバータ回路1は、回路動作の特性上、ノイズ耐性に課題がある。すなわち、次の2つの課題がある。
課題A:入力信号INの波形と入力信号INBの波形との間に電圧の重なり、すなわち入力信号IN及び入力信号INBがともに第1のハイレベルである期間がない場合、電流生成回路10が電流IA1を生成しない。
課題B:出力信号OUTの論理確定後、電流生成回路10は動作せず、レベルコンバータ回路1はリーク電流で動作する。このため、レベルコンバータ回路1はノイズ等の外乱に弱い可能性がある。
以下では、課題A及び課題Bのそれぞれについて説明する。
まず、課題Aについて説明する。図10Aは、図3Bのレベルコンバータ回路1への理想的な入力信号IN,INBの波形を示すグラフであり、図10Bは、図3Bのレベルコンバータ回路1への非理想的な入力信号IN,INBの波形を示すグラフである。レベルコンバータ回路1は、入力信号INと入力信号INBとの論理が重なった電圧領域を、縦続接続したnMOSトランジスタMN11,MN12で検出し、電流IA1を生成して動作する。図10Aより明らかなように、理想的な入力信号IN,INBの波形の場合には、入力信号IN及び入力信号INBの論理が変化する期間において、入力信号IN,INBがともに有限の電圧を有する期間、すなわちともに第1のハイレベルである期間が存在する。nMOSトランジスタMN11,MN12がこの期間の間オン状態となりし、レベルコンバータ回路1を動作させるための電流IA1を生成する。一方、図10Bに示す非理想的な入力信号IN,INBの波形の場合は、入力信号INの立ち上がりでは入力信号INと入力信号INBとの波形が重なるが、入力信号INの立ち下がりでは入力信号INと入力信号INBとの波形は重ならない。これは、入力信号INの立ち下がりにおいて、電流生成回路10が十分な電流IA1を生成できないことを意味しており、レベルコンバータ回路1が安定に動作することを保証することができない課題がある。
次に、課題Bについて説明する。レベルコンバータ回路1では、出力信号OUTの論理が切り替わるときのみ電流生成回路10が動作して、電流IA1を生成する。この電流IA1に対応する電流IA2,IA3によって差動増幅回路30及びソース接地増幅回路40が動作し、レベル変換動作を実現する。しかし、出力信号OUTの論理が切り替わった後を考えると、端子T2はフローティング状態となり、ノイズ等の外乱の影響を受けやすい課題がある。すなわち、レベルコンバータ回路1が第2のハイレベルである出力信号OUTを出力すべき期間において、ノイズなどの影響によって出力信号OUTが第2のハイレベルから低下したとしても、これを補正することができない課題がある。また、レベルコンバータ回路1がローレベルである出力信号OUTを出力すべき期間において、ノイズなどの影響によって出力信号OUTがローレベルから上昇したとしても、これを補正することができない課題がある。
第2の実施形態に係るレベルコンバータ回路1Aは、上記の課題A,Bを解決する。レベルコンバータ回路1Aは、レベルコンバータ回路1を基本構造とし、これにフィードバック制御方式を導入することで上記の課題A,Bを解決する。
図11Aは、本発明の第2の実施形態に係るレベルコンバータ回路1Aの応用例を示すブロック図である。図11Aにおいて、レベルコンバータ回路1Aは、低電源電圧VDDL(例えば0.4Vである。)が供給される低電圧回路ブロック200からの信号の信号レベルを変換して、高電源電圧VDDH(例えば3Vである。)が供給される高電圧回路ブロック300に出力する。以下、入力信号IN,INB、第1のハイレベル、第2のハイレベル、低電圧源、及び高電圧源はそれぞれ、第1の実施形態で説明した入力信号IN,INB、第1のハイレベル、第2のハイレベル、低電圧源、及び高電圧源と同様である。
図11Bは、本発明の第2の実施形態に係るレベルコンバータ回路1Aの構成を示すブロック図である。図11Bにおいて、レベルコンバータ回路1Aは、第1の実施形態に係るレベルコンバータ回路1と比較して、電流生成回路10に代えて電流生成回路10Aを備える点が異なり、その他の構成要素は、レベルコンバータ回路1と同様であり、その説明を省略する。図11Bに示すように、電流生成回路10Aには、出力信号OUTが入力されて、フィードバック制御が実行される。
図12は、図11Bの電流生成回路10Aの構成を示す回路図である。電流生成回路10Aは、変化時(CHANGE)電流生成回路11と、立ち上がり(RISE)電流生成回路12と、立ち下がり(FALL)電流生成回路13とを備えて構成される。
変化時電流生成回路11は、図4の電流生成回路10と同様の構成であり、同様に動作する。立ち上がり電流生成回路12は、入力信号INの立ち上がり(RISE)をモニタし、立ち下がり電流生成回路13は、入力信号INの立ち下がり(FALL)をモニタする。ここで、変化時電流生成回路11によって生成される電流を電流IC(制御電流ICともいう。)とし、立ち上がり電流生成回路12によって生成される電流を電流IR(制御電流IRともいう。)とし、立ち下がり電流生成回路13によって生成される電流を電流IF(制御電流IFともいう。)とする。以下、立ち上がり電流生成回路12、及び立ち下がり電流生成回路13について説明する。
立ち上がり電流生成回路12は、pMOSトランジスタMP11と、nMOSトランジスタMN13,MN14,MN15と、端子T5,T6,T7とを備えて構成される。pMOSトランジスタMP11のソースは高電圧源に接続され、pMOSトランジスタMP11のゲートは、端子T5に接続され、出力信号OUTは当該ゲートに入力される。pMOSトランジスタMP11のドレインは、nMOSトランジスタMN13のドレインに接続される。nMOSトランジスタMN13のゲートは、端子T6に接続され、入力信号INは当該ゲートに入力される。nMOSトランジスタMN13のソースは接地される。また、pMOSトランジスタMP11のドレインとnMOSトランジスタMN13のドレインとの接続点をノードN11という。nMOSトランジスタMN14のドレインは、電流検出回路20に接続され、nMOSトランジスタMN14のゲートは、端子T7に接続され、入力信号INは当該ゲートに入力される。nMOSトランジスタMN14のソースは、nMOSトランジスタMN15のドレインに接続される。nMOSトランジスタMN15のゲートはノードN11に接続され、nMOSトランジスタMN15のソースは接地される。ここで、端子T5は端子T2に接続されており、端子T6及び端子T7は端子T1に接続されている。
立ち上がり電流生成回路12は、2段構成で実現される。1段目の回路では、pMOSトランジスタMP11が出力信号OUTをモニタし、nMOSトランジスタMN13が入力信号INをモニタする。2段目の回路では、nMOSトランジスタMN14,MN15を縦続接続し、nMOSトランジスタMN15は、ノードN11の電圧をモニタし、nMOSトランジスタMN14は、入力信号INをモニタする。この回路構成により、pMOSトランジスタMP11は、出力信号OUTに応答して動作し、nMOSトランジスタMN13,MN14は入力信号INに応答して動作し、nMOSトランジスタMN15は、ノードN11の電圧に応答して動作する。また、立ち上がり電流生成回路12は、入力信号INが第1のハイレベルかつ出力信号OUTがローレベルのときにのみ動作して、出力信号OUTが第2のハイレベルとなるように補正するための電流IRを生成する。
入力信号INが第1のハイレベルであり、かつ出力信号OUTが第2のハイレベルのとき、ノードN11の電圧はローレベルとなる。このため、nMOSトランジスタMN15はオフ状態となり、2段目の回路は電流IRを生成しない。一方、入力信号INが第1のハイレベルであり、かつ出力信号OUTがローレベルのとき、すなわち入力信号INと出力信号OUTとの論理が不一致のとき、ノードN11の電圧はハイレベルとなってnMOSトランジスタMN15がオン状態となり、2段目の回路は電流IRを生成する。電流IRの電流量は、入力信号INの電圧、すなわち低電源電圧VDDLによって規定される。
立ち下がり電流生成回路13は、nMOSトランジスタMN16,MN17と、端子T8,T9とを備えて構成される。nMOSトランジスタMN16のドレインは、電流検出回路20に接続され、nMOSトランジスタMN16のゲートは、端子T8に接続され、入力信号INBは当該ゲートに入力される。nMOSトランジスタMN16のソースは、nMOSトランジスタMN17のドレインに接続される。nMOSトランジスタMN17のゲートは、端子T9に接続され、出力信号OUTは当該ゲートに入力される。nMOSトランジスタMN17のソースは接地される。ここで、端子T8には前処理回路50から入力信号INBが入力されており、端子T9は端子T2に接続されている。
立ち下がり電流生成回路13は、1段構成で実現される。nMOSトランジスタMN16,MN17が縦続接続され、nMOSトランジスタMN17は出力信号OUTをモニタし、nMOSトランジスタMN16は入力信号INBをモニタする。この回路構成により、nMOSトランジスタMN16は、入力信号INBに応答して動作し、nMOSトランジスタMN17は、出力信号OUTに応答して動作する。また、立ち下がり電流生成回路13は入力信号INがローレベル(このとき、入力信号INBは第1のハイレベルである。)かつ出力信号OUTが第2のハイレベルのときにのみ動作して、出力信号OUTがローレベルとなるように補正するための電流IFを生成する。
入力信号INがローレベルであり、かつ出力信号OUTがローレベルのとき、立ち下がり電流生成回路13は動作しない。入力信号INがローレベルであり、かつ出力信号OUTが第2のハイレベルのとき、すなわち入力信号INと出力信号OUTとの論理が不一致のとき、立ち下がり電流生成回路13は電流IFを生成する。電流IFの電流量は、入力信号INBの電圧、すなわち低電源電圧VDDLによって規定される。
まず、入力信号INが第1のハイレベル(入力信号INBがローレベル)の場合の電流生成回路10Aの動作について以下説明する。まず、出力信号OUTが第2のハイレベルのときについて説明する。このとき、入力信号INと出力信号OUTとの論理は一致する。変化時電流生成回路11は、nMOSトランジスタMN11がオフ状態であるので、電流ICを生成しない。また、立ち上がり電流生成回路12のノードN11の電圧は、pMOSトランジスタMP11がオフ状態でありかつnMOSトランジスタMN13がオン状態であるので、接地電圧まで低下する。nMOSトランジスタMN15は、ノードN11の電圧に応答してオフ状態となる。したがって、立ち上がり電流生成回路12は、電流IRを生成しない。さらに、立ち下がり電流生成回路13は、nMOSトランジスタMN16がオフ状態であるので、電流IFを生成しない。したがって、入力信号INが第1のハイレベルであり、かつ出力信号OUTが第2のハイレベルであるときは、電流生成回路10Aは電流を生成しない。
次に、出力信号OUTがローレベルのときについて説明する。このとき、入力信号INと出力信号OUTとの論理は一致しない。変化時電流生成回路11は、nMOSトランジスタMN11がオフ状態であるので、電流ICを生成しない。また、立ち上がり電流生成回路12において、pMOSトランジスタMP11がオン状態となり、ノードN11の電圧は高電源電圧VDDHまで上昇する。nMOSトランジスタMN15は、ノードN11の電圧に応答してオン状態となり、これによって電流IRが生成される。さらに、立ち下がり電流生成回路13は、nMOSトランジスタMN16がオフ状態であるので、電流IFを生成しない。したがって、入力信号INが第1のハイレベルであり、かつ出力信号OUTがローレベルであるときは、電流生成回路10Aは電流IRを生成する。
次いで、入力信号INがローレベル(入力信号INBが第1のハイレベル)の場合の電流生成回路10Aの動作について以下説明する。まず、出力信号OUTがローレベルのときについて説明する。このとき、入力信号INと出力信号OUTとの論理は一致する。変化時電流生成回路11は、nMOSトランジスタMN12がオフ状態であるので、電流ICを生成しない。また、立ち上がり電流生成回路12において、ノードN11の電圧は、pMOSトランジスタMP11がオン状態でありかつnMOSトランジスタMN13がオフ状態であるので、高電源電圧VDDHまで上昇する。nMOSトランジスタMN15は、ノードN11の電圧に応答してオン状態であるが、入力信号INがローレベルであるためnMOSトランジスタMN14はオフ状態である。したがって、立ち上がり電流生成回路12は電流IRを生成しない。さらに、立ち下がり電流生成回路13は、nMOSトランジスタMN17がオフ状態であるので、電流IFを生成しない。したがって、入力信号INがローレベルであり、かつ出力信号OUTがローレベルであるときは、電流生成回路10Aは電流を生成しない。
次に、出力信号OUTが第2のハイレベルのときについて説明する。このとき、入力信号INと出力信号OUTとの論理は一致しない。変化時電流生成回路11は、nMOSトランジスタMN12がオフ状態であるので、電流ICを生成しない。また、立ち上がり電流生成回路12において、pMOSトランジスタMP11はオフ状態となり、ノードN11がフローティング状態となる。しかし、入力信号INがローレベルであるのでnMOSトランジスタMN14がオフ状態となるため、立ち上がり電流生成回路12は電流IRを生成しない。また、立ち下がり電流生成回路13は、nMOSトランジスタMN16,MN17がオン状態となるため、電流IFを生成する。したがって、入力信号INがローレベルであり、かつ出力信号OUTが第2のハイレベルであるときは、電流生成回路10Aは電流IFを生成する。
さらに、上述したレベルコンバータ回路1の課題A,Bに対するレベルコンバータ回路1Aの効果について考察する。
まず、課題Aについて説明する。入力信号INと入力信号INBとがともに第1のハイレベルとなる期間が存在しない場合、電流生成回路10は正しく電流を生成することができない。このとき、入力信号INと出力信号OUTとの論理は不一致となる場合がある。これに対して、電流生成回路10Aを用いることで論理不一致を解決することができる。すなわち、入力信号INが第1のハイレベルであり、かつ出力信号OUTがローレベルである論理不一致が存在する場合には、立ち上がり電流生成回路12が電流IRを生成する。また、入力信号INがローレベルであり、かつ出力信号OUTが第2のハイレベルである論理不一致が存在する場合には、立ち下がり電流生成回路13が電流IFを生成する。これにより、論理不一致が存在する場合には、電流生成回路10Aによって電流が生成され、正しい論理を出力することを保証することができる。
これは、レベルコンバータ回路1Aが、図10Bで示した非理想的な入力信号IN,INBの波形に対応できることを意味する。また、図10Bと異なる非理想的な波形、すなわち、入力信号INの立ち上がりにおいて入力信号INと入力信号INBとの波形が重ならない場合、及び入力信号INの立ち上がり並びに立ち下がりの両方において入力信号INと入力信号INBとの波形が重ならない場合においても、レベルコンバータ回路1Aは、正常に動作する。
次に、課題Bについて説明する。入力信号INの論理が第1のハイレベルであり、出力信号OUTの論理が第2のハイレベルである場合、すなわち論理がハイレベルで一致している場合を考える。このとき、端子T2はリーク電流で充電され、端子T2はハイインピーダンス状態となる。このとき、外部ノイズ等の外乱により出力信号OUTの電圧が低下した場合を考える。出力信号OUTの電圧が徐々に低下すると、出力信号OUTをモニタする立ち上がり電流生成回路12のpMOSトランジスタMP11が出力信号OUTの電圧の低下に対応した電流を生成し、ノードN11の電圧が徐々に上昇する。これに応じて、ノードN11の電圧をモニタするnMOSトランジスタMN15は、電流IRを生成し始める。上述したように、出力信号OUTの電圧が低下すると、立ち上がり電流生成回路12によって電流IRが生成され、出力信号OUTの電圧の低下を回避するように差動増幅回路30及びソース接地増幅回路40に電流が供給される。
次に、入力信号INの論理がローレベルであり、出力信号OUTの論理がローレベルである場合、すなわち論理がローレベルで一致している場合を考える。このとき、端子T2はリーク電流で放電され、端子T2はハイインピーダンス状態となる。このとき、外部ノイズ等の外乱により出力信号OUTの電圧が上昇した場合を考える。出力信号OUTの電圧が徐々に上昇すると、出力信号OUTをモニタする立ち下がり電流生成回路13のnMOSトランジスタMN17が出力信号OUTの電圧の上昇に対応した電流を生成する。また、nMOSトランジスタMN16のゲートには第1のハイレベルを有する入力信号INBが印加されているため、nMOSトランジスタMN16はオン状態である。上述したように、出力信号OUTの電圧が上昇すると、立ち下がり電流生成回路13によって電流IFが生成され、出力信号OUTの電圧の上昇を回避するように差動増幅回路30及びソース接地増幅回路40に電流が供給される。
以上説明したように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を有する。また、入力信号INと入力信号INBがともに第1のハイレベルである期間が存在しない場合にも、立ち上がり電流生成回路12が電流IRを生成する、又は立ち下がり電流生成回路13が電流IFを生成するので、レベルコンバータ回路1Aは正常に動作する。さらに、外部ノイズ等の外乱により出力信号OUTの電圧が変化する場合にも、立ち上がり電流生成回路12が電流IRを生成する、又は立ち下がり電流生成回路13が電流IFを生成するので、レベルコンバータ回路1Aは正常に動作する。
なお、第2の実施形態では、立ち上がり電流生成回路12及び立ち下がり電流生成回路13を備えて電流生成回路10Aを構成したが、本発明はこれに限らず、立ち上がり電流生成回路12又は立ち下がり電流生成回路13のうちのいずれか一方を備えて電流生成回路10Aを構成してもよい。
第3の実施形態.
図13Aは、本発明の第3の実施形態に係るレベルコンバータ回路1Bの応用例を示すブロック図である。図13Aにおいて、レベルコンバータ回路1Bは、低電源電圧VDDL(例えば0.4Vである。)が供給される低電圧回路ブロック200からの信号の信号レベルを変換して、高電源電圧VDDH(例えば3Vである。)が供給される高電圧回路ブロック300に出力する。以下、入力信号IN,INB、第1のハイレベル、第2のハイレベル、低電圧源、及び高電圧源はそれぞれ、第1の実施形態で説明した入力信号IN,INB、第1のハイレベル、第2のハイレベル、低電圧源、及び高電圧源と同様である。
図13Bは、本発明の第3の実施形態に係るレベルコンバータ回路1Bの構成を示すブロック図である。第2の実施形態に係るレベルコンバータ回路1Aでは、電流IFの特性を十分に評価できない課題があった。
レベルコンバータ回路1Bは、レベルコンバータ回路1Aと比較して、差動増幅回路30に代えて差動増幅回路30Bを備える点、ソース接地増幅回路40に代えてプッシュプル型ソース接地増幅回路40Bを備える点が異なり、その他の構成要素はレベルコンバータ回路1Aと同様であり、その説明を省略する。
差動増幅回路30Bは、差動増幅回路30と比較して、pMOSトランジスタMP32のドレインとnMOSトランジスタMN31のドレインとの接続点がnMOSトランジスタMN42のゲートに接続されている点、及びpMOSトランジスタMP33のドレインとnMOSトランジスタMN32のドレインとの接続点がnMOSトランジスタMN43のゲートに接続されている点が異なり、その他の構成要素及び動作は差動増幅回路30と同様である。
プッシュプル型ソース接地増幅回路40Bは、pMOSトランジスタMP42,MP43と、nMOSトランジスタMN42,MN43とを備えて構成される。pMOSトランジスタMP42のソースは高電圧源に接続され、pMOSトランジスタMP42のゲートは、pMOSトランジスタMP42のドレイン及びpMOSトランジスタMP43のゲートに接続される。pMOSトランジスタMP42のドレインは、nMOSトランジスタMN42のドレインに接続される。nMOSトランジスタMN42のゲートは、pMOSトランジスタMP32のドレインとnMOSトランジスタMN31のドレインとの接続点に接続され、nMOSトランジスタMN42のソースは接地される。pMOSトランジスタMP43のソースは高電圧源に接続され、pMOSトランジスタMP43のドレインは、nMOSトランジスタMN43のドレインに接続される。nMOSトランジスタMN43のゲートは、pMOSトランジスタMP33のドレインとnMOSトランジスタMN32のドレインとの接続点に接続され、nMOSトランジスタMN43のソースは接地される。pMOSトランジスタMP43のドレインとnMOSトランジスタMN43のドレインとの接続点は、端子T2に接続される。ここで、差動増幅回路30Bとプッシュプル型ソース接地増幅回路40Bとは、2段増幅回路を構成する。
プッシュプル型ソース接地増幅回路40Bは、上述したように構成されるので、出力信号OUTの立ち上がり及び立ち下がりの両方において、電流生成回路10Aによって生成される電流に対応した電流によって端子T2を充電及び放電することができる。
以上説明したように、第3の実施形態によれば、第2の実施形態と同様の作用効果を有する。
なお、第1及び第2の実施形態では、差動増幅回路30及びソース接地増幅回路40を備えてレベルコンバータ回路1及びレベルコンバータ回路1Aを構成したが、本発明はこれに限らず、差動増幅回路30B及びプッシュプル型ソース接地増幅回路40Bを備えてレベルコンバータ回路1及びレベルコンバータ回路1Aを構成してもよい。
第1の実施形態に係るレベルコンバータ回路1についてのシミュレーション評価(実施例1)について以下説明する。図3Bのレベルコンバータ回路1について、SPICEシミュレーション評価の結果を示す。使用したプロセスは0.35μmCMOSプロセスである。低電源電圧VDDLは0.4〜0.8Vとし、また高電源電圧VDDHは3Vとした。
本発明者らは、電流生成回路10のシミュレーション評価を行った。図14は、図4の電流生成回路10によって生成されるピーク電流の低電源電圧VDDLへの依存性を示すグラフである。図14は、低電源電圧VDDLを0.4V〜0.8Vに変化させたときに、電流生成回路10によって生成される電流IA1のピーク電流値を示す。低電源電圧VDDLの上昇に従って、ピーク電流は指数関数的に増加することが確認できる。これは、低電源電圧VDDLが低電圧であるときは、電流生成回路10の縦続接続したnMOSトランジスタMN11,MN12がしきい値電圧以下のサブスレッショルド領域で動作し、低電源電圧VDDLが上昇すると、nMOSトランジスタMN11,MN12のゲート電圧が上昇して、nMOSトランジスタMN11,MN12に流れる電流が指数関数的に増加するためである。
電流生成回路10によって生成される電流IA1は、pMOSトランジスタMP21,MP31,MP41を備えて構成されるカレントミラー回路を介して差動増幅回路30及びソース接地増幅回路40に供給される。図5に示すように、電流生成回路10によって生成される電流IA1はパルス電流となるため、カレントミラー回路を介しての電流供給精度の課題がある。そこで、差動増幅回路30に供給される電流IA2及びソース接地増幅回路40に供給される電流IA3の周波数特性を評価した。
図15は、図3Bの電流IA2,IA3の周波数応答特性を示すグラフである。図15に示すように、カレントミラー回路は、電流IA1の周波数が約2MHz以下の場合、一定の電流利得を維持したまま電流を差動増幅回路30及びソース接地増幅回路40に供給できることがわかる。電流IA1の周波数が2MHzを超えると、カレントミラー回路のローパスフィルタの効果によって電流利得は減少する。すなわち、レベルコンバータ回路1は、数MHz帯域の動作帯域を有する。レベルコンバータ回路1の動作帯域を向上させるためには、電流生成回路10によって生成される電流IA1の電流量を高める工夫が必要になる。上述した電流生成回路10の変形例に係る電流生成回路10a,10b,10c,10dを用いることによって、電流生成回路10によって生成される電流IA1の電流量を高めることができる。
本発明者らは、レベルコンバータ回路1の動作の一例として、低電源電圧VDDLを0.55V、入力信号INの周波数を10kHzとしてシミュレーション評価を行った。図16(a)は、図1のレベルコンバータ回路1への入力信号INの波形及び図1のレベルコンバータ回路1からの出力信号OUTの波形を示すグラフであり、図16(b)は、図2の電流生成回路10によって生成される電流IA1の波形を示すグラフである。図16(a)に示すように、入力信号INの論理に同期して、0〜3Vの振幅を有する出力信号OUTが出力される。また、図16(b)に示すように、入力信号INの論理が反転するときにのみ、大きな電流IA1が生成される。
図17は、低電源電圧VDDLの電圧値に対する図3Bのレベルコンバータ回路1及び従来技術に係るレベルコンバータ回路100の遅延時間を示すグラフである。図3Bのレベルコンバータ回路1の遅延時間を図2に示した従来技術に係るレベルコンバータ回路100の遅延時間と比較する。従来技術に係るレベルコンバータ回路100は、低電源電圧VDDLが0.7V以上のときに、レベルコンバータ回路1よりも高速に動作する。しかし、低電源電圧VDDLが低下するにつれ、レベルコンバータ回路100の動作遅延は指数関数的に増大し、低電源電圧VDDLが約0.52V以下になると、レベルコンバータ回路100は、動作することができない。これは、従来技術に係るレベルコンバータ回路100では、出力信号OUTの電圧を低下させるために端子T102を放電する電流は、低電源電圧VDDLの電圧に依存するためである。すなわち、低電源電圧VDDLが低電圧になるほどnMOSトランジスタMN102を流れる電流が減少し、遅延時間が指数関数的に増大する。そして、低電源電圧VDDLが約0.52V以下になるとnMOSトランジスタMN102を流れる電流量よりpMOSトランジスタMP102を流れる電流量の方が多くなり、出力信号OUTの論理は反転することなく、レベルコンバータ回路100は動作を停止する。
一方、レベルコンバータ回路1では、電流生成回路10によって生成される電流IA1の電流量で遅延時間が決定される。低電源電圧VDDLが0.65V付近よりも低い領域では、電流生成回路10のnMOSトランジスタMN11,MN12が、サブスレッショルド領域で動作する。このため、図14に示すように、電流IA1の電流量が低電源電圧VDDLに対して指数関数的に変化する。これにより、低電源電圧VDDLの上昇に従って、遅延時間が指数関数的に減少する。また、低電源電圧VDDLが約0.65Vより高い領域では、遅延時間はほぼ一定となる。これは、低電源電圧VDDLが0.65V以上になると電流生成回路10によって生成される電流IA1は増加するものの、図15に示すようにカレントミラー回路のローパスフィルタの効果によって生成される電流IA1の供給能力が減少する。その結果、差動増幅回路30に流れる電流IA2及びソース接地増幅回路40に流れる電流IA3は増加せず、遅延時間はほぼ一定となる。このことは、図17の遅延時間の逆数である周波数がMHzオーダーであることからも図15の結果と一致する。レベルコンバータ回路1は、電流生成回路10によって生成される電流IA1に対応する電流を用いて、端子T2に対する充電及び放電の両方を実行するため、従来技術に係るレベルコンバータ回路100が有する問題は発生せず、低電源電圧VDDLと高電源電圧VDDHとの間の電源電圧の差が大きくなるような低い低電源電圧VDDLにおいても安定に動作する。
図18は、低電源電圧VDDLの電圧値に対する図3Bのレベルコンバータ回路1及び従来技術に係るレベルコンバータ回路100の消費電力を示すグラフである。ここでは、入力信号INの周波数は1kHzである。また、図3Bのレベルコンバータ回路1の消費電力を図2に示した従来技術に係るレベルコンバータ回路100の消費電力と比較する。図18より明らかなとおり、レベルコンバータ回路1は、従来技術に係るレベルコンバータ回路100と比較して、低消費電力で動作可能である。従来技術に係るレベルコンバータ回路100は、高電圧源から多量の貫通電流が流れるため消費電力が高くなる。
また、図18において、従来技術に係るレベルコンバータ回路100の消費電力が、低電源電圧VDDLの上昇とともに指数関数的に減少していることが確認できる。これは、低電源電圧VDDLで動作するロジック回路の信号波形が原因である。低電源電圧VDDLで動作するロジック回路においては、トランジスタの電流駆動能力が極めて低くなり、信号が緩やかに変化する。そのため、0.55V程度の低電源電圧VDDLでは、信号の遷移時間が長くなり、高電圧源から多量の貫通電流が流れる。一方で、低電源電圧VDDLの上昇とともに、信号は急峻に変化するため、高電圧源からの貫通電流が減少する。
一方、レベルコンバータ回路1の消費電力は、低電源電圧VDDLが変化しても、ほぼ変化しない。これは、低電源電圧VDDLの上昇による次の2つの要因に起因する。
(1)電流生成回路10によって生成される電流IA1の増加。
(2)低電源電圧VDDLによって駆動されるロジック回路の信号の遅延改善。
図14に示すとおり、電流生成回路10によって生成される電流IA1が、低電源電圧VDDLの上昇に従って指数関数的に増加する。一方で、低電源電圧VDDLの上昇に従って低電源電圧VDDLで動作するロジック回路の遅延時間は指数関数的に減少する。これら2つの要因により、瞬間的に流れる電流IA1は指数関数的に増加するが、電流IA1が流れる時間は指数関数的に短くなるので、最終的に流れる電流IA1の全体量はほぼ変化しない。したがって、レベルコンバータ回路1の消費電力は、低電源電圧VDDLに対する依存性が小さい。
表1は、図3Bのレベルコンバータ回路1及び従来技術に係るレベルコンバータ回路100のプロセスバラツキ及び温度変化に対する耐性を示す。表1では、低電源電圧VDDLは0.6Vである。また、表1中のFF,FS,TT,SF,SSは、nMOSトランジスタ及びpMOSトランジスタのコーナーモデルを表し、Pは当該レベルコンバータ回路が正常に動作するパス状態を表し、Fは当該レベルコンバータ回路が正常に動作しないフェイル状態を表す。
従来技術に係るレベルコンバータ回路100は、プロセスバラツキ及び温度変化によってnMOSトランジスタのしきい値電圧が高くなると、正常に動作しなくなる。これは、遅延時間の低電源電圧VDDLに対する依存性の結果と同様に、nMOSトランジスタMN102を流れる電流がpMOSトランジスタMP102を流れるリーク電流よりも小さくなることで、端子T102が放電されないためである。一方、レベルコンバータ回路1は、プロセスバラツキ及び温度変化に対して安定に動作する。
本発明者らは、レベルコンバータ回路1の有効性を確認するために、チップを試作した。試作チップの信号波形及び消費電力の測定結果を以下に示す。使用したプロセスは0.35μm 2P−4M CMOSプロセスである。図19に試作チップの写真を示す。回路面積は、43μm×43μmと小面積である。
図20は、図19の試作チップの動作を測定するための測定環境を示すブロック図である。図20に示すように、パッケージされた試作チップ402をボード上に実装して測定を行った。ファンクションジェネレータ401を用いて低振幅の入力信号INを生成し、レベルコンバータ回路(試作チップ402)に入力する。ファンクションジェネレータ401からの入力信号IN及びレベルコンバータ回路からの出力信号OUTをオシロスコープ403に入力して評価した。また、高電源電圧VDDHは3Vである。
図21(a)は、図20の測定環境において、試作チップ402への入力信号INの波形を示すグラフであり、図21(b)は、図20の測定環境において、試作チップからの出力信号OUTの波形を示すグラフである。図21は、低電源電圧VDDLが0.4V、入力信号INの周波数が10kHzであるときの入力信号INの波形及び出力信号OUTの波形を示す。0.4Vの振幅を有する低振幅の入力信号INが、レベルコンバータ回路1によって3Vの振幅を有する大振幅の出力信号OUTにレベル変換されている様子が確認できる。
また、図21の結果から、入力信号INが変化してから、出力信号OUTが変化するまでの立ち上がり時間と立ち下がり時間とが異なることがわかる。その結果、出力信号OUTのデューティ比が50%以下となった。これは、レベルコンバータ回路1の特性に起因する。図3Bに示したレベルコンバータ回路1の端子T2の充放電は、pMOSトランジスタMP41及びnMOSトランジスタMN41に流れる電流によって行われる。このとき、出力信号OUTの立ち上がり時間は、pMOSトランジスタMP41を流れる電流、すなわち、カレントミラー回路を介して供給される電流生成回路10によって生成される電流IA1に対応する電流によって決まる。一方、nMOSトランジスタMN41を流れる電流は、nMOSトランジスタMN41のゲートに印加される電圧によって決まる。nMOSトランジスタMN41のゲートの容量を充放電するための時間も、カレントミラー回路を介して供給される電流生成回路10によって生成される電流IA1に対応する電流によって決まるが、差動増幅回路30の回路構成の特性から、pMOSトランジスタMP41によって端子T2が充電される時間と、nMOSトランジスタMN41によって端子T2が放電される時間とは異なる。そのため、出力信号OUTの立ち上がり時間と立ち下がり時間とが異なる結果となる。今後は、立ち上がり時間と立ち下がり時間とが等しくなるような回路を構成するなど、デューティ比を50%に近づける必要がある。
図22は、図19の試作チップのシュム(Shmoo)プロットを示す図である。低電源電圧VDDLに対して、レベルコンバータ回路1が動作可能な周波数帯をプロットしている。低電源電圧VDDLが0.4Vから0.64V付近であるとき、動作可能な最大周波数が指数関数的に増加している。これは、低電源電圧VDDLの上昇に従って電流生成回路10によって生成される電流IA1が指数関数的に増加するためである。低電源電圧VDDLが0.64Vを超えると動作可能な周波数は2MHz付近からほぼ一定となる。これは、図17に示したシミュレーション結果と同様に、カレントミラー回路のローパスフィルタの効果により、電流生成回路10によって生成された電流IA1の高周波成分が差動増幅回路30及びソース接地増幅回路40に供給されず、差動増幅回路30及びソース接地増幅回路40に流れる電流が制限されるためである。
図23は、低電源電圧VDDLの電圧値に対する図19の試作チップの消費電力を示すグラフである。ここでは、入力信号INの周波数は10kHzである。試作チップの消費電力は、低電源電圧VDDLへの依存性が小さく、低電源電圧VDDLの上昇とともに減少している。これは、図18のシミュレーション結果と一致する。
レベルコンバータ回路1は、クロスカップル型レベルコンバータ回路100よりも低消費電力で動作し、かつ低電源電圧VDDLが低電圧であっても安定に動作することから、低電圧動作LSIに有用である。
第1の実施形態では、回路ブロック間の電源電圧の差電圧が大きい場合でも安定に動作可能なレベルコンバータ回路1を提案した。レベルコンバータ回路1は、2段増幅回路を基本とした回路を構成することで、従来技術に係るレベルコンバータ回路100の問題点である充放電部分の電源電圧差依存性を緩和する。さらに、レベルコンバータ回路1は入力信号INが変化するときのみ電力を消費することから低消費電力で動作することができる。0.35μm標準CMOSプロセスを用いてチップを試作し、測定により動作を確認した。レベルコンバータ回路1を用いることで、0.4V振幅の低電圧信号を3V振幅の高電圧信号に変換することができる。レベルコンバータ回路1は、低消費電力、低電圧動作LSIに有用である。
第2の実施形態に係るレベルコンバータ回路1Aについてのシミュレーション評価(実施例2)について以下説明する。本発明者らは、レベルコンバータ回路1Aの動作を確認するためのシミュレーション評価を行った。使用したCMOSプロセスは、0.35μmCMOSプロセスである。
本発明者らは、レベルコンバータ回路1Aのシミュレーション評価を行った。ここで、低電源電圧VDDLは0.4Vであり、高電源電圧VDDHは3.0Vである。シミュレーションの結果を図24〜図27に示す。図24は、図11Bのレベルコンバータ回路1Aへの入力信号IN,INBの波形及び図11Bのレベルコンバータ回路1Aからの出力信号OUTの波形を示すグラフである。図25は、図12の変化時電流生成回路11によって生成される電流ICの波形を示すグラフである。図26は、図12の立ち下がり電流生成回路13によって生成される電流IFの波形を示すグラフである。図27は、図12の立ち上がり電流生成回路12によって生成される電流IRの波形を示すグラフである。
図24に示すように、入力信号INの論理に一致して出力信号OUTがレベル変換されて出力されている。また、入力信号INの立ち上がりと入力信号INBの立ち下がりとにおいては、波形が重なっているが、入力信号INの立ち下がりと入力信号INBの立ち上がりとにおいては、波形が重なっていない。これは、入力信号INの立ち下がりでは電流ICが正しく生成されないことを意味する。
図25に示すように、入力信号INの立ち上がり時に、変化時電流生成回路11は、正常に電流ICを生成している(1ナノアンペアオーダーのピーク電流である。)。一方、入力信号INの立ち下がり時には、変化時電流生成回路11は、電流ICを生成しているように見える(2ナノアンペアオーダーのピーク電流である。)。しかし、上述のように、入力信号INの立ち下がりでは、入力信号INと入力信号INBとは重ならないため、変化時電流生成回路11が正常動作しているとはいえない。この電流ICは、出力信号OUTのキックバック現象によって生成された電流であり、変化時電流生成回路11によって生成された電流ではない。
しかしながら、レベルコンバータ回路1Aは、所望の動作(すなわち、ローレベルの出力信号OUTを出力する。)を行っている。これは、レベルコンバータ回路1Aのレベル変換動作が、差動増幅回路30及びソース接地増幅回路40における出力信号OUTの立ち上がり時間の遅延時間並びに立ち下がり時間の遅延時間、及び電流生成回路10Aの遅延時間に依存するためである。レベルコンバータ回路1Aの差動増幅回路30及びソース接地増幅回路40では、出力信号OUTの立ち上がり遅延時間はpMOSトランジスタMP41の充電電流IA3で決定され、出力信号OUTの立ち下がり時間はnMOSトランジスタMN41の放電電流IA4で決定される。充電電流IA3は電流生成回路10Aによって生成される電流IA1に依存する一方で、放電電流IA4は電流生成回路10Aによって生成される電流に依存しないことが考えられる。
これを図11Bに示す差動増幅回路30及びソース接地増幅回路40の回路図で考える。充電電流IA3は、pMOSトランジスタMP21,MP41で構成されるカレントミラー回路を介して供給される電流生成回路10Aによって生成された電流IA1に対応する電流である。一方、放電電流IA4は、ソース接地増幅回路40のnMOSトランジスタMN41のゲート電圧、すなわち差動増幅回路30のノードN31の電圧に依存する。ノードN31の電圧は、入力信号INがローレベルとなると、ローレベルから第1のハイレベルの近傍電圧に変化する。ノードN31の電圧は、nMOSトランジスタMN41のゲートに印加されるため、出力信号OUTは立ち下がってローレベルとなる。ノードN31の電圧は、電流生成回路10Aによって生成される電流IA1に依存せず、第1のハイレベルの近傍電圧となって出力信号OUTを立ち下げる。すなわち、差動増幅回路30及びソース接地増幅回路40では、出力信号OUTの立ち上がり遅延時間が長く、立ち下がり遅延時間が短い。立ち上がり遅延時間が長いため、入力信号INの立ち上がりにおいて論理不一致が生じ、電流生成回路10Aの立ち上がり電流生成回路12が論理不一致を検出し、電流IRを生成して出力信号OUTの立ち上がりを加速させる。一方、レベルコンバータ回路1Aの差動増幅回路30及びソース接地増幅回路40は、出力信号OUTの立ち下がり時には素早く反応するため、立ち下がり電流生成回路13は動作せずともレベルコンバータ回路1Aはローレベルの出力信号OUTを出力することができる。
図26に示すように、電流IFが生成されていないことが確認できる。これは、上述のように出力信号OUTの立ち下がり遅延時間が短いので、電流生成回路10Aが動作を開始する前に、出力信号OUTがローレベルに立ち下がるからである。一方、出力信号OUTの立ち上がりにおいて、図25に示すように電流ICが生成されているが、出力信号OUTを立ち上げるのに十分な電流量とは言えず、立ち上がり電流生成回路12が論理不一致を検出し、電流IRを生成する。図27に示すように、出力信号OUTの立ち上がりにおいて、電流IRが生成されていることが確認できる。
図28は、低電源電圧VDDLの電圧値に対する図11Bのレベルコンバータ回路1A及び図3Bのレベルコンバータ回路1の遅延時間を示すグラフである。図28において、フィードバック制御を有するレベルコンバータ回路1Aの遅延時間は実線で示され、フィードバック制御を有しないレベルコンバータ回路1の遅延時間は破線で示される。図28に示すように、レベルコンバータ回路1Aの遅延時間は、低電源電圧VDDLの上昇とともに減少することが確認できる。また、レベルコンバータ回路1Aは、レベルコンバータ回路1と比較して、高速に動作することが確認できる。低電源電圧VDDLが約0.55V以下の低電圧では、レベルコンバータ回路1Aはレベルコンバータ回路1よりも数倍程度高速に動作し、低電源電圧VDDLが高くなるにつれて、その差は大きくなることが確認できる。立ち上がり電流生成回路12によって生成される電流IR及び立ち下がり電流生成回路13によって生成される電流IFが差動増幅回路30及びソース接地増幅回路40の動作電流に加算されることが、レベルコンバータ回路1Aの高速動作に繋がっているといえる。
図29は、低電源電圧VDDLの電圧値に対する図11Bのレベルコンバータ回路1A及び図3Bのレベルコンバータ回路1の消費電力を示すグラフである。図29において、フィードバック制御を有するレベルコンバータ回路1Aの消費電力は実線で示され、フィードバック制御を有しないレベルコンバータ回路1の消費電力は破線で示される。レベルコンバータ回路1Aは、レベルコンバータ回路1よりも消費電力が多い。これは、立ち上がり電流生成回路12によって生成される電流IR及び立ち下がり電流生成回路13によって生成される電流IFが、差動増幅回路30及びソース接地増幅回路40の動作電流に加算されるためである。しかし、増加する消費電力は、ナノワットオーダーの微小電力に抑えることができている。
本発明者らは、電流生成回路10Aの特性評価を行うためのシミュレーション評価を行った。ここでは、図12に示す電流生成回路10Aにおいて、以下の2つのシミュレーションを実行した。
シミュレーション1:入力信号INを第1のハイレベルに固定し、入力信号INBをローレベルに固定し、出力信号OUTを0Vから3Vまで変化させて、立ち上がり電流生成回路12によって生成される電流IR及び立ち下がり電流生成回路13によって生成される電流IFを測定する。
シミュレーション2:入力信号INをローレベルに固定し、入力信号INBを第1のハイレベルに固定し、出力信号OUTを0Vから3Vまで変化させて、立ち上がり電流生成回路12によって生成される電流IR及び立ち下がり電流生成回路13によって生成される電流IFを測定する。
まず、シミュレーション1の結果について説明する。図30Aは、図12の電流生成回路10Aにおいて、入力信号INを第1のハイレベルに固定し、入力信号INBをローレベルに固定し、出力信号OUTを0Vから3Vに変化させた場合に生成される電流IFを示すグラフである。また、図30Bは、図12の電流生成回路10Aにおいて、入力信号INを第1のハイレベルに固定し、入力信号INBをローレベルに固定し、出力信号OUTを0Vから3Vに変化させた場合に生成される電流IRを示すグラフである。
入力信号INが第1のハイレベルであり、入力信号INBがローレベルであるため、出力信号OUTは第2のハイレベルであることが理想である。図30Bに示すように、出力信号OUTが約2.4V以下の低い電圧である場合、電流IRが生成されることが確認できる。この電流IRは、出力信号OUTを上昇させるようにカレントミラー回路を介して差動増幅回路30及びソース接地増幅回路40に供給される。一方、出力信号OUTが高い電圧、すなわち第2のハイレベルに近い場合、電流IRは生成されないことが確認できる。また、このとき、入力信号INBはローレベルであり、出力信号OUTを立ち下げる必要はないため、図30Aに示すように電流IFは生成されない。電流IRの電流量(シミュレーション1では約17nAである。)は、低電源電圧VDDLの値(シミュレーション1では0.4Vである。)に依存する。低電源電圧VDDLが上昇すると、電流IRは増大する。
次に、シミュレーション2の結果について説明する。図31Aは、図12の電流生成回路10Aにおいて、入力信号INをローレベルに固定し、入力信号INBを第1のハイレベルに固定し、出力信号OUTを0Vから3Vに変化させた場合に生成される電流IFを示すグラフである。また、図31Bは、図12の電流生成回路10Aにおいて、入力信号INをローレベルに固定し、入力信号INBを第1のハイレベルに固定し、出力信号OUTを0Vから3Vに変化させた場合に生成される電流IRを示すグラフである。
入力信号INがローレベルであり、入力信号INBが第1のハイレベルであるため、出力信号OUTはローレベルであることが理想である。図31Aに示すように、出力信号OUTが約0.3V以上の高い電圧である場合、電流IFが生成されることが確認できる。この電流IFは、出力信号OUTを低下させるようにカレントミラー回路を介して差動増幅回路30及びソース接地増幅回路40に供給される。一方、出力信号OUTが低い電圧、すなわちローレベルに近い場合、電流IFは生成されないことが確認できる。また、このとき、入力信号INはローレベルであり、出力信号OUTを立ち上げる必要はないため、図31Bに示すように電流IRは生成されない。電流IFの電流量(シミュレーション2では約17nAである。)は、低電源電圧VDDLの値(シミュレーション2では0.4Vである。)に依存する。低電源電圧VDDLが上昇すると、電流IFは増大する。
第3の実施形態に係るレベルコンバータ回路1Bについてのシミュレーション評価(実施例3)について以下説明する。本発明者らは、レベルコンバータ回路1Bのシミュレーション評価を行った。その結果を図32〜図35に示す。図32は、図13Bのレベルコンバータ回路1Bへの入力信号IN,INBの波形及び図13Bのレベルコンバータ回路1Bからの出力信号OUTの波形を示すグラフである。図33は、図12の変化時電流生成回路11によって生成される電流ICの波形を示すグラフである。図34は、図12の立ち下がり電流生成回路13によって生成される電流IFの波形を示すグラフである。図35は、図12の立ち上がり電流生成回路12によって生成される電流IRの波形を示すグラフである。
図32に示すように、入力信号INの論理に一致して出力信号OUTがレベル変換されて出力されている。また、入力信号INの立ち上がりと入力信号INBの立ち下がりとにおいては、波形が重なっているが、入力信号INの立ち下がりと入力信号INBの立ち上がりとにおいては、波形が重なっていない。このため、図33に示すように、入力信号INの立ち上がりでは電流ICが生成されるが、入力信号INの立ち下がりでは電流ICが生成されない。レベルコンバータ回路1Bは、レベルコンバータ回路1Aと比較して、2段増幅回路の構成を変更したので、電流生成回路10Aが動作を開始する前に出力信号OUTがローレベルに立ち下がることがなくなり、図34に示すように、電流IFが解析通りに生成されている。また、図35に示すように、入力信号INの立ち上がりにおいて、電流IRが生成されている。上述したように、電流生成回路10Aのすべての回路ブロック(変化時電流生成回路11、立ち上がり電流生成回路12、及び立ち下がり電流生成回路13)が解析通りに動作することを確認した。