JP5215003B2 - 表面銀固定化ハイドロキシアパタイトを使用したシランの酸化反応 - Google Patents

表面銀固定化ハイドロキシアパタイトを使用したシランの酸化反応 Download PDF

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Description

本発明は、表面銀固定化ハイドロキシアパタイトを使用し、シラン化合物を酸化して対応するシラノール化合物を製造するシラノール化合物の製造方法に関する。
シラノール化合物の利用は様々な分野において期待されている。まず、医薬、農薬の分野においてはそのもの自体が新規な生物活性物質になることが期待される。また、機能材料などの開発においては、これまで広く利用されているシリコンなどの含ケイ素高分子素材の原料としてシラノール化合物が有用である。このように、シラノール化合物は、医薬、農薬、各種機能性物質の開発等、種々の貢献をし得る。
シラノール化合物を製造する際に使用する触媒としては、例えば、非特許文献1、2に記載の触媒が挙げられるが、反応促進作用が低いことが問題であった。また、非特許文献3〜5に記載の触媒は、使用後の触媒回収が困難であり、反応促進作用が低く、反応の選択性が低いことが問題であった。すなわち、有用なシラノール化合物について、容易に調製することができ、繰り返し使用することができる触媒を使用した、簡易で、且つ、効率のよい製造方法が確立されていないのが現状である。
New J.Chem.2002,26,1536−1538 Org.Left.2002,4,2369−2371 J.Am.Chem.Soc.2000,122,12011−12012 J.Org.Chem.2004,69,1741−1743 J.Am.Chem.Soc.2005,127,11938−11939
本発明の目的は、シラン化合物を酸化して対応するシラノール化合物を製造する方法において、容易に調製することができ、且つ、繰り返し使用することができる触媒を使用して、簡易かつ効率よくシラノール化合物の製造を行うことができるシラノール化合物の製造方法を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ハイドロキシアパタイト表面に、Agを固定化した表面銀固定化ハイドロキシアパタイトを使用することで、効率よく、シラン化合物を酸化して対応するシラノール化合物を製造することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、ハイドロキシアパタイト表面に0価のAgを固定化した表面銀固定化ハイドロキシアパタイトの存在下、シラン化合物を酸化してシラノール化合物を得るシラノール化合物の製造方法を提供する。
ハイドロキシアパタイト表面に0価のAgを固定化した表面銀固定化ハイドロキシアパタイト、及び極性溶媒の存在下、シラン化合物を酸化してシラノール化合物得ることが好ましい。
芳香族シラン化合物を酸化して芳香族シラノール化合物を得ることが好ましい。
また、水を酸化剤として使用することが好ましい。
本発明のシラノール化合物の製造方法によれば、容易に製造することができ、優れた反応促進作用を有する表面銀固定化ハイドロキシアパタイトを触媒として使用するため、簡易な操作によりシラン化合物を効率よく酸化して、高い収率で、選択的にシラノール化合物を製造することができる。さらに、本発明における表面銀固定化ハイドロキシアパタイトは、固体であることから、容易に再利用可能であり、特に再生処理を必要とせずに、高い活性を保持したまま繰り返し再利用することができるため、シラノール化合物の製造コストを削減することができ、有用なシラノール化合物を安価に提供することができる。
[表面銀固定化ハイドロキシアパタイト]
本発明における表面銀固定化ハイドロキシアパタイト(「Ag(0)/ハイドロキシアパタイト」と称する場合がある)は、ハイドロキシアパタイト表面に0価のAgが固定化されている。
上記ハイドロキシアパタイトは、例えば、下記式(1)
Ca10-Z(HPO4Z(PO46-Z(OH)2-Z・nH2O (1)
(式中、Zは0≦Z≦1を満たす数である。nは0〜2.5の数である)
で表される化合物である。
ハイドロキシアパタイトは、例えば、湿式合成法により調製することができる。前記湿式合成法は、具体的にはカルシウム溶液とリン酸溶液を10:6の割合のモル濃度比でpHを7.4以上の所定値に維持したバッファー液中に長時間にわたり順次滴下することにより、上記バッファー液中にハイドロキシアパタイトが析出し、析出したハイドロキシアパタイトを捕集する方法である。
本発明において好適に使用できるハイドロキシアパタイトの例としては、例えば、和光純薬工業株式会社製、商品名「りん酸三カルシウム」が挙げられる。
ハイドロキシアパタイト表面に0価のAgを固定化する方法としては、例えば、銀化合物の溶液とハイドロキシアパタイトとを混合し、撹拌することによりハイドロキシアパタイト表面に銀化合物を吸着させ、還元処理を施す方法等が挙げられる。銀化合物としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の銀塩の他、銀錯体等を使用することもできる。
溶媒としては、銀化合物を溶解できればよく、例えば、水、アセトン、アルコール類等を例示することができる。Agの固定化処理を行う際の銀化合物の溶液の濃度は特に制限されず、例えば、0.1〜1000mMの範囲から選択することができる。撹拌時の温度は、例えば20〜150℃の範囲から選択することができるが、通常室温で行うことができる。表面銀固定化ハイドロキシアパタイトのAg含有率は特に制限されないが、例えば、ハイドロキシアパタイト1gに対して0.01〜10mmol、好ましくは0.05〜0.5mmolの範囲から選択することができる。撹拌時間は撹拌時の温度によっても異なるが、例えば1〜360分間、好ましくは5〜90分間の範囲から選択することができる。撹拌終了後は、必要に応じて水や有機溶媒等で洗浄し、乾燥し、さらに還元処理を施すことにより本発明の表面銀固定化ハイドロキシアパタイトを調製することができる。
還元処理を施す還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、水素化ホウ素リチウム(LiBH4)又は水素化ホウ素カリウム(KBH4)等の水素化ホウ素錯化合物、ヒドラジン、水素(H2)、トリメチルシラン等のシラン化合物、ヒドロキシ化合物などが挙げられる。ヒドロキシ化合物としては第1級アルコール、第2級アルコール等のアルコール化合物が含まれる。また、ヒドロキシ化合物は、複数のヒドロキシル基を有していてもよく、1価アルコール、2価アルコール、多価アルコール等の何れであってもよい。
本発明における還元剤としては、なかでも水素化ホウ素錯化合物が好ましく、特に水素化ホウ素カリウム(KBH4)が好ましい。水素化ホウ素カリウム(KBH4)で還元することにより得られた表面銀固定化ハイドロキシアパタイトは、固定化したAg粒子の平均粒径がより小さくなる傾向があり、それにより、比表面積を増大することができ、触媒活性を著しく向上させることができる。
[シラノール化合物の製造]
本発明に係るシラノール化合物の製造方法は、上述のハイドロキシアパタイト表面に0価のAgを固定化した表面銀固定化ハイドロキシアパタイトの存在下、シラン化合物を酸化してシラノール化合物を製造することを特徴とする。本発明の方法によれば、シラン化合物を酸化して対応するシラノール化合物を選択的に、且つ、高収率で製造することができる。
本発明におけるシラン化合物は、一般式(2)
Figure 0005215003
(式中、R1は水素原子又はm価の有機基を示す。R2、R3、R4は、同一又は異なって水素原子又は炭化水素基を示す。mは1以上の整数を示す。mが2以上の整数の場合、m個の−SiR234基は、同一であっても異なっていてもよい。R1、m個のR2、m個のR3、及びm個のR4のうち少なくとも1つは水素である)
で表される。
1におけるm価の有機基には、m価の炭化水素基、m価の複素環式基、これらが連結基を介して又は介することなく2以上結合した基などが含まれる。R1における有機基の炭素数としては、例えば、1〜30、好ましくは6〜15である。また、前記連結基としては、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、アミン結合(−NR’−)、カルボニル結合(−C(=O)−)、エステル結合(−C(=O)−O−)、シリル結合(−Si−)、カーボネート結合、アミド結合、尿素結合、ウレタン結合等が挙げられる。R’はアルキル基を示す。
1におけるm価の炭化水素基としては、本反応を阻害しないような基(例えば、本方法における反応条件下で非反応性の基)であればよく、例えば、m価の脂肪族炭化水素基、m価の脂環式炭化水素基、m価の芳香族炭化水素基、及びこれらの結合したm価の基が含まれる。前記炭化水素基には、置換基を有する炭化水素基も含まれる。
1価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシル、ドデシル基などの炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜3)程度のアルキル基;ビニル、アリル、1−ブテニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜3)程度のアルケニル基;エチニル、プロピニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜3)程度のアルキニル基などが挙げられる。
1価の脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルキル基;シクロペンテニル、シクロへキセニル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルケニル基;パーヒドロナフタレン−1−イル基、ノルボルニル、アダマンチル、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3−イル基などの橋かけ環式炭化水素基などが挙げられる。1価の芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル基などの炭素数6〜14(好ましくは6〜10)程度の芳香族炭化水素基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した1価の炭化水素基には、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル基などのシクロアルキル−アルキル基(例えば、C3-20シクロアルキル−C1-4アルキル基など)などが含まれる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した1価の炭化水素基には、アラルキル基(例えば、C7-18アラルキル基など)、アルキル置換アリール基(例えば、1〜4個程度のC1-4アルキル基が置換したフェニル基又はナフチル基など)などが含まれる。
1における1価の炭化水素基としては、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-15シクロアルキル基、C6-14芳香族炭化水素基、C3-15シクロアルキル−C1-4アルキル基、C7-14アラルキル基、1〜4個程度のC1-4アルキル基が置換したフェニル基又はナフチル基等が好ましい。
前記炭化水素基は、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基など)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基など)、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、置換又は無置換アミノ基、スルホ基、複素環式基などを有していてもよい。前記ヒドロキシル基やカルボキシル基は有機合成の分野で慣用の保護基で保護されていてもよい。また、脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基の環には芳香族性又は非芳香属性の複素環が縮合していてもよい。
1における2価以上の炭化水素基(脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びこれらの結合した基)の例としては、上記例示された1価の炭化水素基に対応する2価以上の炭化水素基が挙げられる。
1におけるm価の複素環式基を構成する複素環には、芳香族性複素環及び非芳香族性複素環が含まれる。1価の複素環としては、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、フラン、テトラヒドロフラン、オキサゾール、イソオキサゾール、γ−ブチロラクトン環などの5員環、4−オキソ−4H−ピラン、テトラヒドロピラン、モルホリン環などの6員環、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、4−オキソ−4H−クロメン、クロマン、イソクロマン環などの縮合環、3−オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン−2−オン環、3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン環などの橋かけ環)、ヘテロ原子としてイオウ原子を含む複素環(例えば、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾール環などの5員環、4−オキソ−4H−チオピラン環などの6員環、ベンゾチオフェン環などの縮合環など)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール環などの5員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン環などの6員環、インドール、インドリン、キノリン、アクリジン、ナフチリジン、キナゾリン、プリン環などの縮合環など)などが挙げられる。
1における2価以上の複素環式基の例としては、上記例示された1価の複素環式基に対応する2価以上の複素環式基が挙げられる。
上記複素環式基には、前記炭化水素基が有していてもよい置換基のほか、アルキル基(例えば、メチル、エチル基などのC1-4アルキル基など)、シクロアルキル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基など)などの置換基を有していてもよい。
2、R3、R4における炭化水素基の例としては、上記R1における1価の炭化水素基の例と同様の例を挙げることができる。
mは、1以上の整数を示し、好ましくは1〜6、特に好ましくは1又は2である。
本発明におけるシラン化合物としては、例えば、ジメチルフェニルシラン、ジメチル−p−クロロフェニルシラン、ジメチル−p−メトキシフェニルシラン、メチルジフェニルシラン、トリフェニルシラン、ジフェニルシラン、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン等の芳香族シラン化合物;t−ブチルジメチルシラン、トリ(n−ブチル)シラン、トリ(イソプロピル)シラン、ジメチルオクタデカノイルシラン等の脂肪族シラン化合物を挙げることができる。
本発明におけるシラン化合物としては、なかでも、芳香族シラン化合物(−SiH基が芳香環に直接結合している化合物)が好ましい。表面銀固定化ハイドロキシアパタイトと、芳香族シラン化合物のベンゼン環との相互作用により、表面銀固定化ハイドロキシアパタイトによる反応促進作用がより高まり、より効率よく対応するシラノール化合物を製造することができるためである。
本発明において、シラン化合物の酸化反応に使用する酸化剤としては、水を使用することができる。水の使用量としては、例えば、シラン化合物1molに対して1〜10mol程度である。酸化剤としての水は大過剰量使用してもよい。
酸化反応は、例えば、上記シラン化合物(基質)、表面銀固定化ハイドロキシアパタイト(触媒)、及び酸化剤を混合撹拌することにより行うことができる。表面銀固定化ハイドロキシアパタイトの使用量は特に制限されないが、例えば、シラン化合物1molに対して、銀が0.001〜1mol、好ましくは0.001〜0.1mol、特に好ましくは0.01〜0.1molとなるような範囲から選択することができる。反応は、液相で行ってもよく、気相で行うこともできる。作業性などを考慮して、本発明においては液相で反応を行うことが好ましい。
反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行うことができる。溶媒としては反応を阻害しないものであれば特に制限されず、公知慣用の溶媒から適宜選択して使用することができる。例えば、水;トリフルオロトルエン、フルオロベンゼン、フルオロヘキサンなどのフッ素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ニトロベンゼンなどの芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;1,2−ジオキサン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル等のエーテル類;アセトアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル;これらの混合物等が挙げられる。本発明においては、なかでも、極性溶媒が好ましく、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル等(特に、酢酸エチル)を好適に使用することができる。また、従来は水を溶媒として使用すると、シラノール化合物の選択性が低下して、ジシロキサンが主生成物として得られることが多かったが、しかし、本発明においては水を溶媒として使用してもシラノール化合物を選択的に製造することができる。
反応は、酸素雰囲気下又は空気雰囲気下で行ってもよく、酸素以外の酸化剤(例えば、水)を使用する場合は、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下等の不活性雰囲気下で行ってもよい。
反応は常圧、又は加圧下において行うことができる。反応温度は、原料として使用するシラン化合物の種類や溶媒の種類に応じて選択することができ、特に制限されないが例えば、0〜250℃、好ましくは60〜200℃、特に好ましくは100〜200℃の範囲から選択することができる。
反応時間は、原料として使用するシラン化合物の種類や溶媒の種類、反応温度等に応じて適宜選択することができ特に制限されないが、例えば0.1〜200時間、好ましくは0.1〜50時間の範囲から選択することができる。反応は、回分式、半回分式、連続式等の慣用の方式で行うことができる。反応終了後、反応生成物は、例えば、ろ過、濃縮、蒸溜、抽出、晶析、再結晶、吸着、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段やこれらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
本発明における表面銀固定化ハイドロキシアパタイトは、0価のAgがハイドロキシアパタイト表面に強固に固定化されているため、反応溶液中への銀の溶出がない。そのため、反応終了後、表面銀固定化ハイドロキシアパタイトは、ろ過や遠心分離等の操作により回収し、そのまま、又は必要に応じて水や有機溶媒などにより洗浄後、繰り返しシラン化合物の酸化反応に触媒として使用することができる。表面銀固定化ハイドロキシアパタイトは、繰り返し使用して反応を行った場合であっても、その触媒活性は低下せず、高い収率で対応するシラノール化合物を製造することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
製造例1
200mLのナスフラスコにAgNO3(1.0ミリモル)を加え、水(150mL)を加えて銀水溶液を作製し、そこにハイドロキシアパタイト(りん酸三カルシウム、和光純薬工業株式会社製)2.0gを加え、空気雰囲気下、室温(25℃)で6時間撹拌した。撹拌後、吸引濾過し、脱イオン水(1L)で洗浄し、24時間真空乾燥させてAg(I)/ハイドロキシアパタイト(Agとして0.3ミリモル/g)を得た。
200mLのナスフラスコにKBH4(9ミリモル)を加え、水(150mL)を加えて溶解し、そこに得られたAg(I)/ハイドロキシアパタイト(1.8g)を加え、アルゴン雰囲気下、室温(25℃)で1時間撹拌した。撹拌後、吸引濾過し、脱イオン水(1L)で洗浄し、24時間真空乾燥させてAg(0)/ハイドロキシアパタイト(Agとして0.3ミリモル/g)を得た。
製造例2
200mLのナスフラスコにAgNO3(1.0ミリモル)を加え、水(150mL)を加えて溶解して得た溶液に、HT(富田製薬株式会社製:商品名『トミタAD500NS』)2.0gを加え、室温(25℃)で6時間撹拌後、脱イオン水で洗浄し、さらに24時間真空乾燥することにより、Ag(I)/HTを得た。
200mLのナスフラスコにKBH4(9ミリモル)を加え、水(150mL)を加えて溶解し、そこに得られたAg(I)/HT(1.8g)を加え、アルゴン雰囲気下、室温(25℃)で1時間撹拌した。撹拌後、吸引濾過し、脱イオン水(1L)で洗浄し、24時間真空乾燥させてAg(0)/HT(Agとして0.2ミリモル/g)を得た。
製造例3
200mLのナスフラスコにAgNO3(1.0ミリモル)を加え、水(150mL)を加えて溶解して得た溶液に、TiO2(富士チタン工業株式会社製:商品名『JRC−TIO−2』)2.0gを加え、室温(25℃)で6時間撹拌後、脱イオン水で洗浄し、さらに24時間真空乾燥することにより、Ag(I)/TiO2を得た。
200mLのナスフラスコにKBH4(9ミリモル)を加え、水(150mL)を加えて溶解し、そこに得られたAg(I)/TiO2(1.8g)を加え、アルゴン雰囲気下、室温(25℃)で1時間撹拌した。撹拌後、吸引濾過し、脱イオン水(1L)で洗浄し、24時間真空乾燥させてAg(0)/TiO2(Agとして0.003ミリモル/g)を得た。
製造例4
200mLのナスフラスコにAgNO3(1.0ミリモル)を加え、水(150mL)を加えて溶解して得た溶液に、SiO2(日揮化学株式会社製:商品名『JRC−SIO−4』)2.0gを加え、室温(25℃)で6時間撹拌後、脱イオン水で洗浄し、さらに24時間真空乾燥することにより、Ag(I)/SiO2を得た。
200mLのナスフラスコにKBH4(9ミリモル)を加え、水(150mL)を加えて溶解し、そこに得られたAg(I)/SiO2(1.8g)を加え、アルゴン雰囲気下、室温(25℃)で1時間撹拌した。撹拌後、吸引濾過し、脱イオン水(1L)で洗浄し、24時間真空乾燥させてAg(0)/SiO2(Agとして0.003ミリモル/g)を得た。
実施例1
1気圧の酸素雰囲気下、バルーンを取り付けたシュレンク管に、製造例1で得られたAg(0)/ハイドロキシアパタイト0.1g(Ag:0.03ミリモル)、酢酸エチル5mL、水5ミリモル(0.09g)、ジメチルフェニルシラン1.0ミリモルを加え、80℃で5分間撹拌した。収率99%超、選択率99%超で、ジメチルフェニルシラノールを得た。
実施例2
反応温度を室温(25℃)とし、反応時間を10分とした以外は実施例1と同様に反応させた。収率96%、選択率99%で、ジメチルフェニルシラノールを得た。
実施例3
酸素雰囲気下をアルゴン雰囲気下に代えた以外は実施例1と同様に反応させた。収率99%、選択率99%で、ジメチルフェニルシラノールを得た。
実施例4
1気圧の酸素雰囲気下、バルーンを取り付けたシュレンク管に、製造例1で得られたAg(0)/ハイドロキシアパタイト0.1g(Ag:0.03ミリモル)、アセトン5mL、水5ミリモル(0.09g)、ジメチルフェニルシラン1.0ミリモルを加え、80℃で5分間撹拌した。収率87%、選択率99%超で、ジメチルフェニルシラノールを得た。
実施例5
溶媒としてアセトンの代わりにアセトニトリルを使用した以外は実施例4と同様に反応させた。収率82%、選択率99%超で、ジメチルフェニルシラノールを得た。
実施例6
溶媒としてアセトンの代わりにテトラヒドロフランを使用した以外は実施例4と同様に反応させた。収率74%、選択率99%超で、ジメチルフェニルシラノールを得た。
実施例7
溶媒としてアセトンの代わりに1,4−ジオキサンを使用した以外は実施例4と同様に反応させた。収率64%、選択率99%超で、ジメチルフェニルシラノールを得た。
実施例8
溶媒としてアセトンの代わりにジメチルホルムアミドを使用した以外は実施例4と同様に反応させた。収率59%、選択率96%で、ジメチルフェニルシラノールを得た。
実施例9
1気圧の酸素雰囲気下、バルーンを取り付けたシュレンク管に、製造例1で得られたAg(0)/ハイドロキシアパタイト0.1g(Ag:0.03ミリモル)、水2mL、ジメチルフェニルシラン1.0ミリモルを加え、80℃で5分間撹拌した。収率41%、選択率99%超で、ジメチルフェニルシラノールを得た。
実施例10
1気圧の酸素雰囲気下、バルーンを取り付けたシュレンク管に、製造例1で得られたAg(0)/ハイドロキシアパタイト0.1g(Ag:0.03ミリモル)、水2mL、ジメチルフェニルシラン1.0ミリモルを加え、80℃で15分間撹拌した。収率93%、選択率99%超で、ジメチルフェニルシラノールを得た。
実施例11〜16
原料となるシラン化合物、及び、反応時間(分)を変えたこと以外は実施例2と同様にして実施例11〜16を行った。結果を下記表1にまとめて示す。
Figure 0005215003
実施例17
実施例1の反応終了後、反応溶液をろ過して使用後のAg(0)/ハイドロキシアパタイトを回収し、回収されたAg(0)/ハイドロキシアパタイトを水を使用して洗浄し、再生(1)−Ag(0)/ハイドロキシアパタイトを得た。
再生(1)Ag(0)/ハイドロキシアパタイトを使用した以外は実施例1と同様にして、収率99%で、ジメチルフェニルシラノールを得た。
実施例18
実施例16の反応終了後、反応溶液をろ過して使用後の再生(1)−Ag(0)/ハイドロキシアパタイトを回収し、回収された再生(1)−Ag(0)/ハイドロキシアパタイトを水を使用して洗浄し、再生(2)−Ag(0)/ハイドロキシアパタイトを得た。
再生(2)Ag(0)/ハイドロキシアパタイトを使用した以外は実施例1と同様にして、収率96%で、ジメチルフェニルシラノールを得た。
実施例19〜27
実施例17、18と同様にして、さらに反応−回収を繰り返して、再生(3)〜(11)−Ag(0)/ハイドロキシアパタイトを得た。
得られた再生(3)〜(11)−Ag(0)/ハイドロキシアパタイトを使用した以外は実施例1と同様にして、ジメチルフェニルシラノールを得た(実施例19〜27)。実施例19〜27の結果を下記表2にまとめて示す。
Figure 0005215003
比較例1
1気圧の酸素雰囲気下、バルーンを取り付けたシュレンク管に、ハイドロキシアパタイト(りん酸三カルシウム、和光純薬工業株式会社製)0.1g、酢酸エチル5mL、水5ミリモル(0.09g)、ジメチルフェニルシラン1.0ミリモルを加え、80℃で5分間撹拌した。ジメチルフェニルシラノールは得られなかった。
比較例2
製造例1で得られたAg(0)/ハイドロキシアパタイトに代えて製造例2で得られたAg(0)/HTを使用した以外は実施例1と同様に反応させた。収率33%、選択率99%で、ジメチルフェニルシラノールを得た。
比較例3
製造例1で得られたAg(0)/ハイドロキシアパタイトに代えて製造例3で得られたAg(0)/TiO2を使用した以外は実施例1と同様に反応させた。収率35%、選択率99%で、ジメチルフェニルシラノールを得た。
比較例4
製造例1で得られたAg(0)/ハイドロキシアパタイトに変えて製造例4で得られたAg(0)/SiO2を使用した以外は実施例1と同様に反応させた。収率13%、選択率99%で、ジメチルフェニルシラノールを得た。
比較例5
製造例1で得られたAg(0)/ハイドロキシアパタイトに変えてAgPF6(和光純薬工業株式会社製)を使用した以外は実施例1と同様に反応させた。収率35%、選択率68%で、ジメチルフェニルシラノールを得た。
比較例6
製造例1で得られたAg(0)/ハイドロキシアパタイトに変えてAgOTf(トリフルオロメタンスルホン酸銀、和光純薬工業株式会社製)を使用した以外は実施例1と同様に反応させた。収率9%、選択率18%で、ジメチルフェニルシラノールを得た。

Claims (4)

  1. ハイドロキシアパタイト表面に0価のAgを固定化した表面銀固定化ハイドロキシアパタイトの存在下、シラン化合物を酸化してシラノール化合物を得るシラノール化合物の製造方法。
  2. ハイドロキシアパタイト表面に0価のAgを固定化した表面銀固定化ハイドロキシアパタイト、及び極性溶媒の存在下、シラン化合物を酸化してシラノール化合物を得る請求項1に記載のシラノール化合物の製造方法。
  3. 芳香族シラン化合物を酸化して芳香族シラノール化合物を得る請求項1又は2に記載のシラノール化合物の製造方法。
  4. 水を酸化剤として使用する請求項1〜3の何れかの項に記載のシラノール化合物の製造方法。
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