JP5209216B2 - 色素増感型太陽電池用電極およびその製造方法 - Google Patents
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Description
[多孔質半導体層(A)]
本発明における多孔質半導体層(A)は、粒子含有短繊維状金属酸化物および粒子径2〜500nmの金属酸化物微粒子とバインダーとからなる。
本発明における粒子含有短繊維状金属酸化物は、酸化チタン、酸化亜鉛および酸化スズからなる群から選ばれる少なくとも1種からなる。粒子含有短繊維状金属酸化物を構成する粒子の部分と、粒子以外の部分とは同じ種類の金属酸化物であってもよく、異なる種類の金属酸化物であってもよい。例えば粒子の部分が酸化チタン、粒子以外の部分も酸化チタンであってもよく、粒子の部分が酸化チタン、粒子以外の部分が酸化亜鉛または酸化スズであってもよい。
本発明における粒子含有短繊維状金属酸化物はビーズ状である。このビーズ状の形態をとることで比表面積が増大し、色素の吸着量の増加もしくは金属酸化物同士の結着性が向上するため、色素増感型太陽電池用電極として高い物性を発揮することができる。
以下に、本発明における粒子含有短繊維状金属酸化物を得るための好ましい製造方法に用いられる繊維形成用組成物とその成分ならびに粒子含有短繊維状金属酸化物の製造方法について説明する。
[金属アルコキサイド]
粒子含有短繊維状金属酸化物を得るために用いる金属アルコキサイドとしては、チタンアルコキサイドが好ましく、例えば、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラノルマルプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンテトラターシャリーブトキシドが挙げられる。
粒子含有短繊維状金属酸化物を得るために用いる金属アルコキサイドとの錯体形成性化合物としては、例えばカルボン酸、アミド、エステル、ケトン、ホスフィン、エーテル、アルコール、チオールといった配位性の化合物が挙げられる。
粒子含有短繊維状金属酸化物を得るために用いる水に金属イオンが不純物として含まれると、作製された粒子含有短繊維状金属酸化物中に前記金属が残存するため好ましくない。そのため、本製造方法に用いる水は、蒸留水やイオン交換水であることが好ましい。
ビーズ状の粒子含有短繊維状金属酸化物の太部を形成するために用いる、金属酸化物粒子の平均粒径は、好ましくは0.005〜10μmである。平均粒径が0.005μm未満であると得られる粒子含有短繊維状金属酸化物の表面に露出する金属酸化物粒子の割合が小さくなり、粒子含有短繊維状金属酸化物の比表面積が小さくなるため好ましくない。他方、平均粒径が10μmを超えると繊維形成用組成物における分散性が低下するため好ましくない。
次に、粒子含有短繊維状金属酸化物を得るために用いる繊維形成性溶質について説明する。本発明の粒子含有短繊維状金属酸化物を得るための好ましい製造方法の態様においては、繊維形成用組成物に曳糸を持たせることを目的として、繊維形成用組成物に繊維形成性溶質を溶解させる。繊維形成性溶質としては、取り扱いの容易さの観点や、焼成工程において除去される必要があることから、有機高分子を用いることが好ましい。
繊維形成用組成物調製工程においては、金属アルコキサイドと金属アルコキサイドとの錯体形成性化合物とを含む混合物、水、金属酸化物粒子、および、繊維形成性溶質を含む繊維形成用組成物を調製する。
引き続き、上記で得られた溶液に、金属酸化物粒子と繊維形成性溶質とを添加することにより、最終的に繊維形成用組成物を得ることができる。
紡糸工程においては、静電紡糸法にて上記で得られた繊維形成用組成物を噴出することにより、繊維を作製する。以下に、紡糸工程における紡糸方法および紡糸装置について説明する。
累積工程においては、上記の紡糸工程で得られた繊維を累積させて、繊維集合体を得る。具体的には、上記の紡糸工程で形成される繊維状物質を、捕集基板である電極上に累積(積層)することによって繊維集合体を得る。
焼成工程においては、上記の累積工程において得られた繊維集合体を焼成することにより、粒子含有短繊維状金属酸化物の構造体を得る。
焼成にあたっては、一般的な電気炉を用いることができるが、必要に応じて炉内の気体を置換可能な電気炉を用いてもよい。焼成は金属酸化物の構造体を得るために有機物を燃焼して除去するためと、金属酸化物を結晶化するために行う。焼成温度は、例えば300〜1000℃、さらに好ましくは500〜900℃であり、これは、金属酸化物が、例えば酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタンでのいずれの場合でも同様である。
本発明における多孔質半導体層(A)においては色素の吸着量をさらに増加させて発電効率を上げる目的で金属酸化物微粒子をさらに含む。この金属酸化物微粒子は粒子含有短繊維状金属酸化物を製造したときに用いたものとは別に用いられるものであり、酸化チタン、酸化亜鉛および酸化スズからなる群から選ばれる少なくとも1種からなる。
本発明における多孔質半導体層(A)の構成成分であるバインダーは、金属酸化物成分を固着する作用をする成分であり、例えば金属酸化物前駆体を用いることができる。例えば、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラノルマルプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンテトラターシャリーブトキシド、チタン水酸化物を用いることができる。これらは単体で用いてもよく、複数組み合わせて使用してもよい。
本発明において、多孔質半導体層(A)において、粒子含有短繊維状金属酸化物と金属酸化物微粒子の合計における粒子含有短繊維状金属酸化物の割合は好ましくは10〜70重量%である。10重量%未満であると目的とする多孔質構造が得られない。他方、70重量%を超えると緻密性が不充分であり、透明導電層(B)から電解質への逆電子注入がおこる。
塗液の塗布量は、乾燥時の支持体1m2当り、好ましくは0.5〜50g/m2、さらに好ましくは5〜20g/m2である。
最終的な多孔質半導体層(A)の厚さは、好ましくは1〜30μm、さらに好ましくは2〜10μmである。
透明導電層(B)としては、例えば導電性の金属酸化物(フッ素ドープ酸化スズ、インジウム−スズ複合酸化物(以下「ITO」という)、インジウム−亜鉛複合酸化物(以下「IZO」という)、金属の薄膜(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウムなど)、炭素材料を用いることができる。この透明導電層(B)は2種以上を積層したり、複合化させたものでもよい。これらのなかでもITOおよびIZOは、光線透過率が高く低抵抗であるため、特に好ましい。
(1)酸性もしくはアルカリ性溶液で透明導電層表面を活性化する方法
(2)紫外線や電子線を透明導電層表面に照射して活性化する方法
(3)コロナ処理やプラズマ処理を施して透明導電層表面を活性化する方法
中でもプラズマ処理により表面を活性化する方法は、高い表面張力が得られるため特に好ましい。
本発明において、透明導電層(B)を支える支持体としてプラスチックフィルム(C)を用いる。プラスチックフィルム(C)としては、機械的な強度な強度や安定性の点から、ポリエステルフィルムが好ましい。このポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、芳香族二塩基酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルである。このポリエステルは、ホモポリマーでも、第三成分を共重合したコポリマーでもよい。
なお、ポリエステルは、溶融重合後これをチップ化し、加熱減圧下または窒素などの不活性気流中において更に固相重合を施してもよい。
ポリエステルフィルムの厚みは、好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは20〜400μm、特に好ましくは50〜300μmである。
ポリエステルフィルムは、ポリエステルをフィルム状に溶融押出し、キャスティングドラムで冷却固化させて未延伸フィルムとし、この未延伸フィルムをTg〜(Tg+60)℃で長手方向に1回もしくは2回以上合計の倍率が3倍〜6倍になるよう延伸し、その後Tg〜(Tg+60)℃で幅方向に倍率が3〜5倍になるように延伸し、必要に応じて更にTm180℃〜255℃で1〜60秒間熱処理を行うことにより得ることができる。ポリエステルフィルムの長手方向と幅方向における熱収縮率の差、および長手方向の熱収縮を小さくするためには、特開平57−57628号公報に示されるような、熱処理工程で縦方向に収縮せしめる方法や、特開平1−275031号公報に示されるような、フィルムを懸垂状態で弛緩熱処理する方法などを用いることができる。
プラスチックフィルム(C)としてポリエステルフィルムを用いる場合、ポリエステルフィルムには、透明導電層(B)との密着性を向上させるために、ポリエステルフィルムと透明導電層(B)の間に易接着層を設けても良い。易接着層の厚みは好ましくは10〜200nm、さらに好ましくは20〜150nmである。易接着層の厚みが10nm未満であると密着性を向上させる効果が乏しく、200nmを超えると易接着層の凝集破壊が発生しやすくなり密着性が低下することがあり好ましくない。
プラスチックフィルム(C)と透明導電層(B)との密着性、特に密着の耐久性を向上させるために、易接着層と透明導電層(B)との間にハードコート層を設けてもよい。ハードコート層の厚みは好ましくは0.01〜20μm、さらに好ましくは1〜10μmである。
本発明においては、光線透過率を上げて光発電効率を高めることを目的として、透明導電層(B)とは反対側の面に反射防止層を設けてもよい。
反射防止層を設ける方法としては、プラスチックフィルム(C)の屈折率とは異なる屈折率を有する素材を単層もしくは2層以上に積層形成する方法が好ましい。単層構造の場合は、基材フィルムよりも小さな屈折率を有する素材を使用するのがよく、また2層以上の多層構造とする場合は、積層フィルムと隣接する層はプラスチックフィルム(C)よりも大さな屈折率を有する素材とし、その上に積層される層には、これよりも小さな屈折率を有する素材を選択することが好ましい。
反射防止層の積層に先立って、コロナ放電処理、プラズマ処理、スパッタエッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、プライマ処理、易接着処理などの前処理を施してもよい。
本発明の電極を用いて色素増感型太陽電池を作成するには、公知の方法を用いることができる。具体的は例えば下記の方法で作成することができる。
(1)本発明の電極の多孔質半導体層(A)に色素を吸着させる。ルテニウムビピリジン系錯体(ルテニウム錯体)に代表される有機金属錯体色素、シアニン系色素、クマリン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素など、可視光領域および赤外光領域の光を吸収する特性を有する色素を、アルコールやトルエンなどの溶媒に溶解させて色素溶液を作成し、多孔質半導体層(A)を浸漬するか、多孔質半導体層(A)に噴霧または塗布する。(電極A)
(2)対極としては、本発明の電極の透明導電層側に、薄い白金層をスパッタ法により形成したものを用いる。(電極B)
(3)上記電極Aと電極Bを、熱圧着性のポリエチレンフィルム製フレーム型スペーサー(厚さ20μm)を挿入して重ね合わせ、スペーサー部を120℃に加熱し、両電極を圧着する。さらに、そのエッジ部をエポキシ樹脂接着剤でシールする。
(4)シートのコーナー部にあらかじめ設けた電解液注入用の小孔を通して、ヨウ化リチウムとヨウ素(モル比3:2)ならびにスペーサーとして平均粒径20μmのナイロンビーズを3重量%含む電解質水溶液を注入する。内部の脱気を十分に行い、最終的に小孔をエポキシ樹脂接着剤で封じる。
走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、商品名:S−2400)により、得られた粒子含有短繊維状金属酸化物の表面を撮影(倍率:2000倍)し、写真図を得た。得られた写真図から粒子を含有していない部分を無作為に20箇所選択して繊維径を測定し、この測定結果(n=20)の平均値を求めて、粒子含有短繊維状金属酸化物の細部の平均繊維径とした。また、粒子を含有して太くなっている箇所を無作為に20箇所選択して径を測定し、この測定結果(n=20)の平均値を求めて、粒子含有短繊維状金属酸化物の太部の平均繊維径とした。
走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、商品名:S−2400)により、原料の段階での粒子を撮影(倍率:2000倍)し、写真図を得た。得られた写真図から粒子を無作為に20個選択し、粒子径を測定した。粒子径のすべての測定結果(n=20)の平均値を求めて、平均粒子径とした。
走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、商品名:S−2400)により、得られた粒子含有短繊維状金属酸化物の表面を撮影(倍率:2000倍)し、写真図を得た。得られた写真図から粒子を含有していない部分を繊維径を測定し、さらにその繊維長を測定しその比繊維長/細部の平均繊維径を算出した。この測定結果(n=20)の平均値を求めて、粒子含有短繊維状金属酸化物の繊維長/細部の平均繊維径とした。
窒素ガスを用いたBET法により、得られた粒子含有短繊維状金属酸化物の比表面積測定を実施することにより、BET比表面積を得た。
X線回折測定には理学電気社製 ROTA FLEX RU200B を用いて半径185nmのゴニオメータで反射法を採用し、X線はモノクロメーターにより単色化してCu Kα線とした。測定サンプルは、得られた粒子含有短繊維状金属酸化物に内部標準としてX線回折標準用の高純度シリコン粉末を添加したものを用いた。
上記で得られたX線回折プロファイルを強度補正し、回折角2θについては内部標準のシリコンの111回折ピークで補正した。ここでシリコンの111回折ピークの半価幅は0.15°以下であった。補正したX線回折プロファイルについて25.3°付近に現れる回折ピークを用いて、以下のScherrerの式によって結晶子サイズを算出した。2θ=24〜30°の範囲における酸化チタン、ならびにシリコンの回折ピークは、Cu Kα1、Kα2線由来で分離しておらず、全てCu Kα、として取り扱った。
D=K×λ/βcosθ
D:結晶子サイズ;
λ:測定X線波長;
β:結晶子サイズによる回折線の拡がり;
θ:回折ピークのブラッグ角;
K:形状因子(Scherrer定数)
ここでβは光学系の拡がりを補正するため、25.3°付近に現れる酸化チタンの回折ピークの半値幅Bから内部標準のシリコン111回折ピークの半値幅bを差し引いたもの(β=B−b)を採用し、K=1、λ=0.15418nmとした。
固有粘度([η]dl/g)は、35℃のo−クロロフェノール溶液で測定した。
マイクロメーター(アンリツ(株)製のK−402B型)を用いてフィルムの連続製膜方向および幅方向に各々10cm間隔で測定を行い、全部で300ヶ所のフィルム厚みを測定する。得られた300ヶ所のフィルム厚みの平均値を算出してフィルム厚みとした。
(株)島津製作所製分光光度計MPC3100を用い、波長370nmおよび400nmの光線透過率を測定した。
フィルムの小片をエポキシ樹脂(リファインテック(株)製エポマウント)中に包埋し、Reichert−Jung社製Microtome2050を用いて包埋樹脂ごと50nm厚さにスライスし、透過型電子顕微鏡(トプコンLEM−2000)にて加速電圧100KV、倍率10万倍にて観察し、塗膜層の厚みを測定した。
4探針式表面抵抗率測定装置(三菱化学(株)製、ロレスタGP)を用いて任意の5点を測定し、その平均値を代表値として用いた。
100mm2大の色素増感型太陽電池を形成し、下記の方法で光発電効率を算出した。ぺクセルテクノロジーズ社製ソーラーシュミレーター(PEC−L10)を用い入射光強度が100mW/cm2の模擬太陽光を、気温25℃、湿度50%の雰囲気で測定した。電流電圧測定装置(PECK 2400)を用いて、システムに印加するDC電圧を10mV/secの定速でスキャンし、素子の出力する光電流を計測することにより、光電流−電圧特性を測定し、光発電効率を算出した。
(ポリエステルフィルムの作成)
固有粘度が0.63で、実質的に粒子を含有しないポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのペレットを170℃で6時間乾燥後、押出機ホッパーに供給し、溶融温度305℃で溶融し、平均目開きが17μmのステンレス鋼細線フィルターで濾過し、3mmのスリット状ダイを通して表面温度60℃の回転冷却ドラム上で押出し、急冷して未延伸フィルムを得た。このようにして得られた未延伸フィルムを120℃にて予熱し、さらに低速、高速のロール間で15mm上方より850℃のIRヒーターにて加熱して縦方向に3.1倍に延伸した。この縦延伸後のフィルムの片面に下記の塗剤Aを乾燥後の塗膜厚みが0.25μmになるようにロールコーターで塗工し易接層を形成した。
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル66部、イソフタル酸ジメチル47部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル8部、エチレングリコール54部、ジエチレングリコール62部を反応器に仕込み、これにテトラブトキシチタン0.05部を添加して窒素雰囲気下で温度を230℃にコントロールして加熱し、生成するメタノールを留去させてエステル交換反応を行った。次いで反応系の温度を徐々に255℃まで上昇させ系内を1mmHgの減圧にして重縮合反応を行い、ポリエステルを得た。このポリエステル25部をテトラヒドロフラン75部に溶解させ、得られた溶液に10000回転/分の高速攪拌下で水75部を滴下して乳白色の分散体を得、次いでこの分散体を20mmHgの減圧下で蒸留し、テトラヒドロフランを留去し、固形分が25重量%のポリエステルの水分散体を得た。
上記のポリエステルの水分散体8重量部、アクリルの水分散体7重量部と水溶液85重量部を混合して、塗剤Aを作成した。
得られたポリエステルフィルムを用い、この易接層側にUV硬化性ハードコート剤(JSR製 デソライトR7501)を厚さ約5μmになるよう塗布し、UV硬化させてハードコート層を形成した。
ハードコート層が形成された片面に、主として酸化インジウムからなり酸化亜鉛が10重量%添加されたIZOターゲットを用いた直流マグネトロンスパッタリング法により、膜厚260nmのIZOからなる透明導電層を形成した。透明導電層のスパッタリング法による形成は、プラズマの放電前にチャンバー内を5×10−4Paまで排気した後、チャンバー内にアルゴンと酸素を導入して圧力を0.3Paとし、IZOターゲットに2W/cm2の電力密度で電力を印加して行った。酸素分圧は3.7mPaであった。透明導電層の表面抵抗値は15Ω/□であった。
次いで、常圧プラズマ表面処理装置(積水化学工業製AP−T03−L)を用いて、窒素気流下(60L/分)、1m/分にて透明導電層表面にプラズマ処理を施した。このとき、表面抵抗値16Ω/□、表面張力は71.5mN/mであった。
積層フィルムの透明導電層を形成した面とは反対側の面に、厚さ75nmで屈折率1.89のY2O3層、その上に厚さ120nmで屈折率2.3のTiO2層、更にその上に厚さ90nmで屈折率1.46のSiO2を、夫々高周波スパッタリング法によって製膜し、反射防止処理層とした。各静電体薄膜を製膜するに際し、いずれも真空度は1×10−3Torrとし、ガスとしてAr:55sccm、O2:5sccmを流した。また、基板は製膜行程中、加熱もしくは冷却をすることなく室温のままとした。
[第一調製工程]
チタンテトラノルマルブトキシド(和光純薬工業株式会社製、一級)1重量部に、酢酸(和光純薬工業株式会社製、特級)1.0重量部を添加し、攪拌することにより、均一な溶液を得た。得られた溶液に、イオン交換水1重量部を攪拌しながら添加したところ、溶液中にゲルが生成した。さらに攪拌を続けることにより、生成したゲルは解離し、透明なチタン含有溶液を調製することができた。
上記で得られたチタン含有溶液に、酸化チタン粒子(和光純薬工業株式会社製、結晶型:アナターゼ型、BET比表面積:41m2/g、粒度:5μm以下、平均粒径:0.5μm、含量(純分分析による):99.9%)0.1重量部を混合し、白色溶液を得た。引き続き、得られた白色溶液に、ポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製、一級、平均分子量:300,000〜500,000)0.016重量部を混合することにより、繊維形成用組成物(紡糸溶液)を調製した。
上記で得られた繊維形成用組成物(紡糸溶液)を用いて、図1に示す静電紡糸装置により繊維形成用組成物を噴出し、連続的に紡糸を行うことにより繊維を蓄積させて、繊維集合体を作製した。このときの噴出ノズル1の内径は0.2mm、電圧は15kV、噴出ノズル1から電極4までの距離は15cmであった。
上記で得られた繊維集合体を、空気雰囲気下で電気炉を用いて600℃まで10時間かけて昇温し、その後、600℃で2時間保持することにより粒子含有繊維構造体を得た。
得られた粒子含有短繊維状金属酸化物につき、上記の各種測定・評価を実施した。この粒子含有短繊維状金属酸化物は、繊維軸方向にビーズ状の太部が多数連なった形態であり、細部の平均繊維径は370nm、太部の平均繊維径は777nm、太部の平均繊維径/細部の平均繊維径は2.1、繊維長/細部の繊維径は9.1であり、BET比表面積は3.4m2/gであった。また、得られた粒子含有短繊維状金属酸化物のX線回折結果から、2θ=25.4°に鋭いピークが認められたことから、アナターゼ型結晶が形成されていることが確認された。結晶子サイズを算出したところ、39nmであった。
テトライソプロポキシチタン60重量部を0.1M硝酸120重量部に滴下後12時間加熱還流することでバインダーを得た。乾燥後の固形物重量は17重量%であった。
上記の粒子含有短繊維状金属酸化物を全金属酸化物重量中44重量%及び昭和タイタニウム製酸化チタン分散液SP−200(酸化チタン含量:25重量% アナターゼ相および若干のルチル相、平均粒子0.1μmを全酸化チタン重量中44重量%、前述のバインダーを全酸化チタン重量中12重量%分を、エタノール(和光純薬製)中に分散し、固形物濃度12重量%の分散液を作成し40.0Hzの超音波照射下30分処理した。結果均一な塗液を得た。この塗液を直ちに透明導電層上にバーコーターにて塗布し、大気中180℃で5分間の熱処理を行って厚み5μmになるように多孔質半導体層を形成した。熱処理後多孔質半導体層の剥離や脆さは観察されず、基材と密着性の良い色素増感型太陽電池の電極を作成した。
この電極をルテニウム錯体(Ru535bisTBA、Solaronix製)の300μMエタノール溶液中に24時間浸漬し、光作用電極表面にルテニウム錯体を吸着させた。また、前記の積層フィルムの透明導電層上にスパッタリング法によりPt膜を堆積して対向電極を作成した。電極と対向電極を、熱圧着性のポリエチレンフィルム製フレーム型スペーサー(厚さ20μm)を介して重ね合わせ、スペーサー部を120℃に加熱し、両電極を圧着する。さらに、そのエッジ部をエポキシ樹脂接着剤でシールする。電解質溶液(0.5Mのヨウ化リチウムと0.05Mのヨウ素と0.5Mのtert−ブチルピリジンを含む3−メトキシプロピオニトリル溶液)を注入した後、エポキシ系接着剤でシールした。
完成した色素増感型太陽電池のI−V特性の測定(有効面積100mm2)を行った結果、開放電圧0.7V、短絡電流密度7.1mA/cm2、曲線因子0.49で、光発電効率2.5%であった。
粒子含有短繊維状金属酸化物製造時の第二調整工程において金属酸化物粒子を0.2重量部とした以外は請求工1記載の手法を用いて粒子含有短繊維状金属酸化物を作成した。得られた粒子含有短繊維状金属酸化物は、繊維軸方向にビーズ状の太部が多数連なった形態であり、細部の平均繊維径は350nm、太部の平均繊維径は875nm、太部の平均繊維径/細部の平均繊維径は2.5、繊維長/細部の繊維径は10.1であり、BET比表面積は16m2/gであった。この粒子含有短繊維状金属酸化物のX線回折結果から、2θ=25.4°に鋭いピークが認められたことから、アナターゼ型結晶が形成されていることが確認された。結晶子サイズを算出したところ、25nmであった。
完成した色素増感型太陽電池のI−V特性の測定(有効面積100mm2)を行った結果、開放電圧0.7V、短絡電流密度8.3mA/cm2、曲線因子0.45、光発電効率2.7%であった。
粒子含有短繊維状金属酸化物製造時の第二調整工程において金属酸化物粒子を添加しない以外は実施例1記載の手法を用いて粒子含有短繊維状金属酸化物を作成した。得られた粒子含有短繊維状金属酸化物は、繊維軸方向にビーズ状の太部が多数連なった形態ではなく、平均繊維径が384nm、BET比表面積が0.5m4/gであった。また、得られた粒子含有短繊維状金属酸化物のX線回折結果から、2θ=25.4°に鋭いピークが認められたことから、アナターゼ型結晶が形成されていることが確認された。結晶子サイズを算出したところ、169nmであった。
完成した色素増感型太陽電池のI−V特性の測定(有効面積100mm2)を行った結果、開放電圧0.7V、短絡電流密度6.4mA/cm2、曲線因子0.50、光発電効率2.3%であった。
2 溶液
3 溶液保持槽
4 電極
5 高電圧発生器
Claims (5)
- 粒子含有短繊維状金属酸化物10〜70重量%および粒子径2〜500nmの金属酸化物微粒子30〜90重量%の合計100重量部とバインダー0.1〜40重量部とからなる多孔質半導体層(A)、透明導電層(B)ならびにプラスチックフィルム(C)からなる色素増感型太陽電池用電極であって、粒子含有短繊維状金属酸化物が、細部の平均繊維径50〜1000nm、繊維長/細部の平均繊維径が3以上であり、その形状がビーズ状であることを特徴とする、色素増感型太陽電池用電極。
但し、ビーズ状とは、繊維軸方向に、粒子含有短繊維状金属酸化物に含まれる粒子からなる太部が多数連なった形状である。 - 粒子含有短繊維状金属酸化物の結晶サイズが10〜100nm、BET比表面積が3〜1000m2/gである、請求項1記載の色素増感型太陽電池用電極。
- 粒子含有短繊維状金属酸化物が、アナターゼ型酸化チタンからなる、請求項1記載の色素増感型太陽電池用電極。
- 粒子含有短繊維状金属酸化物が、金属アルコキシドと金属アルコキシドとの錯体形成性化合物とを含む混合物、水、金属酸化物粒子および、繊維形成性溶質を含んでなる繊維形成用組成物を調製する繊維形成用組成物調製工程と、静電紡糸法にて前記繊維形成用組成物を噴出することにより繊維を得る紡糸工程と、前記繊維を累積させて繊維集合体を得る累積工程と、前記繊維集合体を焼成して、粒子含有短繊維状金属酸化物の構造体を得る焼成工程と、を含む製造方法で製造された、請求項1記載の色素増感型太陽電池用電極。
- 金属アルコキシドと金属アルコキシドとの錯体形成性化合物とを含む混合物、水、金属酸化物粒子および、繊維形成性溶質を含んでなる繊維形成用組成物を調製する繊維形成用組成物調製工程と、静電紡糸法にて前記繊維形成用組成物を噴出することにより繊維を得る紡糸工程と、前記繊維を累積させて繊維集合体を得る累積工程と、前記繊維集合体を焼成して、粒子含有短繊維状金属酸化物の構造体を得る焼成工程と、を含む製造方法で製造された粒子含有短繊維状酸化金属酸化物を含む分散液をプラスチックフィルム(C)上に設けられた透明導電層(B)のうえに塗布して色素増感型太陽電池用電極を得る、色素増感型太陽電池用電極の製造方法。
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