JP5208792B2 - インクジェット記録方法 - Google Patents

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本発明は、インクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録方法は、インクジェットヘッドに形成された多数のノズルからそれぞれインク滴を打滴することによって記録を行うものであり、記録動作時の騒音が低く、ランニングコストが安く、多種多様な記録媒体に対して高品位な画像を記録できることなどから幅広く利用されている。
インクジェット記録方法には、インクと、該インクを凝集させる処理液との2液を反応させてインクを凝集させることにより、インクの定着を促進させる2液反応方法が知られている。
例えば、印字の滲み、印字ムラを抑制することができるインクジェット記録方法として、多価金属塩を含む反応液と、顔料と樹脂エマルションとを含むインク組成物とを記録媒体上に付着させるインクジェット記録方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、オフセット印刷用コート紙等の液体吸収性が低い記録媒体に画像記録してもビーディングが発生しにくく、印刷物に近い画質が得られるインクジェット記録方法として、固体成分と液体成分が特定の含有比である記録用インクを用いるインクジェット記録方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
特開平9−207424号公報 特開2008−101192号公報
しかしながら、特許文献1、2に記載のインクジェット記録方法では、記録媒体上に2色以上のインクを重ねて多次色を形成する場合に、2色目以降のインクによって形成されるドット径が1次色のドット径と比べて拡がることによる解像度の低下や色再現性の劣化が発生する場合があった。
本発明は、多次色を形成する際のドット径の変化が抑制されたインクジェット記録方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 色材と、樹脂粒子と、水とを含み、前記樹脂粒子の含有率が異なる少なくとも2種のインク組成物を用い、前記インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む記録媒体上に、前記樹脂粒子の含有率が少ないインク組成物から順次インクジェット法により前記インク組成物を付与して画像を記録する画像記録工程を備えるインクジェット記録方法。
<2> 前記記録媒体は、コート紙、軽量コート紙、または微塗工紙である前記<1>に記載のインクジェット記録方法。
<3> 前記画像記録工程前に、前記凝集剤を含む処理液を記録媒体上に付与する処理液付与工程をさらに備える前記<1>または<2>に記載のインクジェット記録方法。
<4> 前記凝集剤は、酸性化合物を含む前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
<5> 前記樹脂粒子は、自己分散ポリマー粒子である前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
<6> 前記樹脂粒子は、有機溶剤中で合成されたアニオン性基を有する第1のポリマーを含み、前記第1のポリマー中のアニオン性基の少なくとも一部は中和され、水を連続相とするポリマー分散物として調製される樹脂粒子である前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
<7> 前記色材は、顔料を含む前記<1>〜<6>のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
<8> 前記色材は、水不溶性である第2のポリマーに被覆された顔料である前記<1>〜<7>のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
本発明によれば、多次色を形成する際のドット径の変化が抑制されたインクジェット記録方法を提供することができる。
本発明のインクジェット記録方法は、色材と、樹脂粒子と、水とを含み、前記樹脂粒子の含有率が異なる少なくとも2種のインク組成物を用い、前記インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む記録媒体上に、前記樹脂粒子の含有率が少ないインク組成物から順次インクジェット法により前記インク組成物を付与して画像を記録する画像記録工程を備える。
1色目のインク画像上に、2色目、3色目、・・・n色目のインク組成物を重ね打ちして2次色、3次色、・・・n次色からなる多色のカラー画像を記録する場合、2色目以降のインク組成物によって形成される着滴ドットの径は1色目の着滴ドットの径より拡がりやすく、多色記録時に同一画像中でドット径が変化しやすい傾向がある。本発明においては、インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む記録媒体上に、複数のインク組成物をその樹脂粒子含有率が少ないものから順に吐出するように構成することで、2色目以降の着滴ドットの径の変化が抑制される。これにより、記録画像の解像度の低下、色再現性の低下を効果的に抑制し、高解像度で広い色再現域を有する画像を形成することができる。
すなわち本発明においては、凝集剤を含む記録媒体上に樹脂粒子を含むインク組成物を付与していくと、記録媒体表面に存在する凝集剤が樹脂粒子によって消費されていくのに伴い、次に着滴したインク組成物のドット径が拡大しやすくなる。そこで、凝集剤を消費する樹脂粒子の含有率が少ないインク組成物から順次付与することで、最終的に記録された画像全体として、ドット径の変化が少なくなり、ドット径の均一性が高く、解像性および色再現性に優れた画像が得られる。
[画像記録工程]
画像記録工程は、色材と樹脂粒子と水とを含み、樹脂粒子の含有率が異なる少なくとも2種のインク組成物を用い、インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む記録媒体上に、樹脂粒子の含有率が少ないインク組成物から順次インクジェット法により、インク組成物を付与して画像を記録するものである。
本発明における樹脂粒子の含有率が異なる少なくとも2種のインク組成物は、少なくとも樹脂粒子の含有率が異なっていれば特に制限はないが、樹脂粒子の含有率と色材とがともに異なっている少なくとも2種のインク組成物であることが好ましい。
本発明に用いる少なくとも2種のインク組成物は、その中から選ばれる任意の2種のインク組成物間の樹脂粒子含有率の差が、例えば、0.2質量%以上であればよい。中でも、多次色ドットのドット径変化抑制の観点から、0.3質量%以上異なっていることが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下異なっていることがより好ましい。
(インク組成物)
本発明におけるインク組成物は、色材の少なくとも1種と、樹脂粒子の少なくとも1種と、水とを含む。
本発明におけるインク組成物(以下、インクともいう。)は、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、マゼンタ色調インク、シアン色調インク、及びイエロー色調インクを用いることができ、また、色調を整えるために、更にブラック色調インクを用いてもよい。また、イエロー、マゼンタ、シアン色調インク以外のレッド、グリーン、ブルー、白色インクやいわゆる印刷分野における特色インク(例えば無色)等を用いることができる。
−色材−
前記色材としては、公知の染料、顔料等を特に制限なく用いることができる。中でも、インク着色性の観点から、水に殆ど不溶であるか、又は難溶である色材であることが好ましい。具体的には例えば、各種顔料、分散染料、油溶性染料、J会合体を形成する色素等を挙げることができ、顔料であることがより好ましい。
本発明においては、水不溶性の顔料自体または分散剤で表面処理された顔料自体を色材とすることができる。
本発明における顔料としては、その種類に特に制限はなく、従来公知の有機及び無機顔料を用いることができる。例えば、アゾレーキ、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、酸化チタン、酸化鉄系、カーボンブラック系等の無機顔料が挙げられる。また、カラーインデックスに記載されていない顔料であっても水相に分散可能であれば、いずれも使用できる。更に、上記顔料を界面活性剤や高分子分散剤等で表面処理したものや、グラフトカーボン等も勿論使用可能である。上記顔料のうち、特に、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、カーボンブラック系顔料を用いることが好ましい。
本発明に用いられる有機顔料の具体的には、例えば、特開2007−100071号公報の段落番号[0142]〜[0145]に記載の顔料などが挙げられる。
〜分散剤〜
本発明における着色材が顔料である場合、分散剤によって水系溶媒に分散されていることが好ましい。分散剤としては、ポリマー分散剤でも低分子の界面活性剤型分散剤でもよい。また、ポリマー分散剤としては水溶性の分散剤でも水不溶性の分散剤の何れでもよい。
前記低分子の界面活性剤型分散剤(以下、「低分子分散剤」ということがある)は、インクを低粘度に保ちつつ、有機顔料を水溶媒に安定に分散させる目的で添加することができる。ここでいう低分子分散剤は、分子量2000以下の低分子分散剤である。また、低分子分散剤の分子量は、100〜2000が好ましく、200〜2000がより好ましい。
前記低分子分散剤は、親水性基と疎水性基とを含む構造を有している。前記親水性基と疎水性基は、それぞれ独立に1分子に1以上含まれていればよく、また、複数種類の親水性基と疎水性基とをそれぞれ有していてもよい。また、親水性基と疎水性基を連結するための連結基も適宜有することができる。
親水性基としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、あるいはこれらを組み合わせたベタイン型等を挙げることができる。
アニオン性基は、マイナスの電荷を有するものであれば特に制限はないが、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基またはカルボキシル基であることが好ましく、リン酸基またはカルボキシル基であることがより好ましく、凝集反応性の観点から、カルボキシル基であることがさらに好ましい。
カチオン性基は、プラスの電荷を有するものであれば特に制限はないが、有機のカチオン性置換基であることが好ましく、窒素またはリンを含むカチオン性基であることがより好ましく、窒素を含むカチオン性基であることが更に好ましい。中でも、ピリジニウムカチオン又はアンモニウムカチオンであることが特に好ましい。
ノニオン性基は、マイナスまたはプラスの電荷を有しないものであれば特に制限はない。例えば、ポリアルキレンオキシド、ポリグリセリン、糖ユニットの一部等が挙げられる。
本発明においては、顔料の分散安定性と凝集性の観点から、親水性基がアニオン性基であることが好ましい。
一方、疎水性基は、炭化水素系、フッ化炭素系、シリコーン系等のいずれの構造を有するものであってもよいが、特に、炭化水素系であることが好ましい。また、これらの疎水性基は、直鎖状構造又は分岐状構造のいずれであってもよい。また疎水性基は、1本鎖状構造、又は2本以上の鎖状構造でもよく、2本鎖状以上の構造である場合は、複数種類の疎水性基を有していてもよい。
また、疎水性基は、炭素数2〜24の炭化水素基が好ましく、炭素数4〜24の炭化水素基がより好ましく、炭素数6〜20の炭化水素基がさらに好ましい。
本発明におけるポリマー分散剤のうち水溶性分散剤としては、親水性高分子化合物を用いることができる。例えば、天然の親水性高分子化合物では、アラビアガム、トラガンガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、アラビノガラクトン、ペクチン、クインスシードデンプン等の植物性高分子、アルギン酸、カラギーナン、寒天等の海藻系高分子、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン等の動物系高分子、キサンテンガム、デキストラン等の微生物系高分子などが挙げられる。
また、天然物を原料として化学修飾した親水性高分子化合物としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素系高分子、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム等のデンプン系高分子、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の海藻系高分子などが挙げられる。
また、合成系の水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル等のビニル系高分子、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、水溶性スチレンアクリル樹脂等のアクリル系樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、四級アンモニウムやアミノ基等のカチオン性官能基の塩を側鎖に有する高分子化合物等が挙げられる。
これらの中でも、顔料の分散安定性と凝集性の観点から、カルボキシル基を含む高分子化合物が好ましく、例えば、水溶性スチレンアクリル樹脂等のアクリル系樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂等のようなカルボキシル基を含む高分子化合物が特に好ましい。
ポリマー分散剤のうち水不溶性分散剤としては、疎水性部と親水性部の両方を有するポリマー(第2のポリマー)を用いることができる。例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体等が挙げられる。
本発明におけるポリマー分散剤の重量平均分子量としては、3,000〜200,000が好ましく、より好ましくは5,000〜100,000、更に好ましくは5,000〜80,000、特に好ましくは10,000〜60,000である。
また、顔料と分散剤との混合質量比(顔料:分散剤)としては、1:0.06〜1:3の範囲が好ましく、1:0.125〜1:2の範囲がより好ましく、更に好ましくは1:0.125〜1:1.5である。
本発明において着色材として染料を用いる場合には、染料を水不溶性の担体に保持したものを水不溶性着色粒子として用いることができる。染料としては公知の染料を特に制限なく用いることができ、例えば、特開2001−115066号公報、特開2001−335714号公報、特開2002−249677号公報等に記載の染料を本発明においても好適に用いることができる。また、担体としては、水に不溶または水に難溶であれば特に制限なく、無機材料、有機材料及びこれらの複合材料を用いることができる。具体的には、特開2001−181549号公報、特開2007−169418号公報等に記載の担体を本発明においても好適に用いることができる。
染料を保持した担体(水不溶性着色粒子)は、分散剤を用いて水系分散物として用いることができる。分散剤としては上述した分散剤を好適に用いることができる。
本発明における色材は、画像の耐光性や品質などの観点から、顔料と分散剤と含むことが好ましく、有機顔料とポリマー分散剤とを含むことがより好ましく、有機顔料とカルボキシル基を含むポリマー分散剤とを含むことが特に好ましい。
また本発明における色材は、凝集性の観点から、水不溶性ポリマー分散剤(第2のポリマー)に被覆された顔料であることが好ましく、カルボキシル基を有する水不溶性ポリマー分散剤(第2のポリマー)に被覆された顔料であることがより好ましい。
ポリマー分散剤としては前述のものを挙げることができる。また、ポリマー分散剤により被覆されたポリマー被覆顔料の作製方法としては、例えば、特開平10−140065号公報に開示されている「転相法」等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明において、色材の平均粒径としては、10〜200nmが好ましく、10〜150nmがより好ましく、10〜100nmがさらに好ましい。平均粒径が200nm以下であることで色再現性が良好になり、インクジェット方式の場合には打滴特性が良好になる。また、平均粒径が10nm以上であることで、耐光性が良好になる。
また、色材の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布又は単分散性の粒径分布のいずれであってもよい。また、単分散性の粒径分布を持つ色材を、2種以上混合して使用してもよい。
尚、色材の平均粒径及び粒径分布は、例えば、光散乱法を用いて測定することができる。
本発明において、上記色材は1種単独で、また2種以上を組合せて使用してもよい。
また、色材の含有量としては、画像濃度の観点から、インク組成物に対して、0.1〜25質量%であることが好ましく、0.2〜15質量%がより好ましく、0.5〜10質量%がさらに好ましく、0.8〜8質量%が特に好ましい。
−樹脂粒子−
本発明におけるインク組成物は、樹脂粒子の少なくとも1種を含有するが、吐出性、インクの保存安定性、凝集剤と接触した際の凝集速度の観点から、好ましくは自己分散ポリマー粒子である。
〜自己分散ポリマー粒子〜
前記樹脂粒子は、自己分散ポリマー粒子の少なくとも1種を含有することが好ましい。自己分散ポリマー粒子とは、他の界面活性剤の不存在下に、ポリマー自身が有する官能基(特に、酸性基またはその塩)によって、水性媒体中で分散状態となりうる水不溶性ポリマーであって、遊離の乳化剤を含有しない水不溶性ポリマーの粒子を意味する。
ここで分散状態とは、水性媒体中に水不溶性ポリマーが液体状態で分散された乳化状態(エマルション)、及び、水性媒体中に水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態(サスペンション)の両方の状態を含むものである。
本発明における水不溶性ポリマーにおいては、インク組成物に含有されたときのインク凝集速度とインク定着性の観点から、水性媒体中に固体状態で分散された分散状態となりうる水不溶性ポリマーであることが好ましい。
本発明における自己分散ポリマー粒子の分散状態とは、水不溶性ポリマー30gを70gの有機溶剤(例えば、メチルエチルケトン)に溶解した溶液、該水不溶性ポリマーの塩生成基を100%中和できる中和剤(塩生成基がアニオン性であれば水酸化ナトリウム、カチオン性であれば酢酸)、及び水200gを混合、攪拌(装置:攪拌羽根付き攪拌装置、回転数200rpm、30分間、25℃)した後、該混合液から該有機溶剤を除去した後でも、分散状態が25℃で少なくとも1週間安定に存在することを目視で確認することができる状態をいう。
また、水不溶性ポリマーとは、ポリマーを105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100g中に溶解させたときに、その溶解量が10g以下であるポリマーをいい、その溶解量が好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下である。前記溶解量は、水不溶性ポリマーの塩生成基の種類に応じて、水酸化ナトリウム又は酢酸で100%中和した時の溶解量である。
前記水性媒体は、水を含んで構成され、必要に応じて親水性有機溶剤を含んでいてもよい。本発明においては、水と水に対して0.2質量%以下の親水性有機溶剤とから構成されることが好ましく、水から構成されることがより好ましい。
前記水不溶性ポリマーの主鎖骨格としては、特に制限は無く、例えば、ビニルポリマー、縮合系ポリマー(エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、セルロース、ポリエーテル、ポリウレア、ポリイミド、ポリカーボネート等)を用いることができる。その中で、特にビニルポリマーが好ましい。
ビニルポリマー及びビニルポリマーを構成するモノマーの好適な例としては、特開2001−181549号公報及び特開2002−88294号公報に記載されているものを挙げることができる。また、解離性基(あるいは解離性基に誘導できる置換基)を有する連鎖移動剤や重合開始剤、イニファーターを用いたビニルモノマーのラジカル重合や、開始剤或いは停止剤のどちらかに解離性基(あるいは解離性基に誘導できる置換基)を有する化合物を用いたイオン重合によって高分子鎖の末端に解離性基を導入したビニルポリマーも使用できる。
また、縮合系ポリマーと縮合系ポリマーを構成するモノマーの好適な例としては、特開2001−247787号公報に記載されているものを挙げることができる。
本発明における自己分散ポリマー粒子は、自己分散性の観点から、親水性の構成単位と芳香族基含有モノマーに由来する構成単位とを含む水不溶性ポリマーを含むことが好ましい。
前記親水性の構成単位は、親水性基含有モノマーに由来するものであれば特に制限はなく、1種の親水性基含有モノマーに由来するものであっても、2種以上の親水性基含有モノマーに由来するものであってもよい。前記親水性基としては、特に制限はなく、解離性基であってもノニオン性親水性基であってもよい。
本発明において前記親水性基は、自己分散促進の観点、形成された乳化又は分散状態の安定性の観点から、解離性基であることが好ましく、アニオン性の解離基であることがより好ましい。前記解離性基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などが挙げられ、中でも、インク組成物を構成した場合の定着性の観点から、カルボキシル基が好ましい。
本発明における親水性基含有モノマーは、自己分散性と凝集性の観点から、解離性基含有モノマーであることが好ましく、解離性基とエチレン性不飽和結合とを有する解離性基含有モノマーであることが好ましい。
解離性基含有モノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。
不飽和カルボン酸モノマーとして具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。不飽和スルホン酸モノマーとして具体的には、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。不飽和リン酸モノマーとして具体的には、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記解離性基含有モノマーの中では、分散安定性、吐出安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
本発明における自己分散ポリマー粒子は、自己分散性と反応液と接触したときの凝集速度の観点から、カルボキシル基を有し、酸価(mgKOH/g)が25〜100である第1のポリマーを含むことが好ましい。更に前記酸価は、自己分散性と反応液と接触したときの凝集速度の観点から、25〜80であることがより好ましく、30〜65であることが特に好ましい。
酸価が25以上であることで自己分散性の安定性が良好になる。また酸価が100以下であることで、凝集性が向上する。
前記芳香族基含有モノマーは、芳香族基と重合性基とを含む化合物であれば特に制限はない。前記芳香族基は芳香族炭化水素に由来する基であっても、芳香族複素環に由来する基であってもよい。本発明においては水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、芳香族炭化水素に由来する芳香族基であることが好ましい。
また前記重合性基は、縮重合性の重合性基であっても、付加重合性の重合性基であってもよい。本発明においては水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、付加重合性の重合性基であることが好ましく、エチレン性不飽和結合を含む基であることがより好ましい。
本発明における芳香族基含有モノマーは、芳香族炭化水素に由来する芳香族基とエチレン性不飽和結合とを有するモノマーであることが好ましく、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーであることがより好ましい。
本発明において前記芳香族基含有モノマーは、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記芳香族基含有モノマーとしては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー等が挙げられる。中でも、ポリマー鎖の親水性と疎水性のバランスとインク定着性の観点から、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及びフェニル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレートであることがより好ましく、フェノキシエチルアクリレートであることが特に好ましい。
尚、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
本発明における自己分散ポリマー粒子は、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を含み、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位の含有量が10質量%〜95質量%であることが好ましい。芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーの含有量が10質量%〜95質量%であることで、自己乳化又は分散状態の安定性が向上し、更にインク粘度の上昇を抑制することができる。
本発明においては、自己分散状態の安定性、芳香環同士の疎水性相互作用による水性媒体中での粒子形状の安定化、粒子の適度な疎水化による水溶性成分量の低下の観点から、15質量%〜90質量%であることがより好ましく、15質量%〜80質量%であることがより好ましく、25質量%〜70質量%であることが特に好ましい。
本発明における自己分散ポリマー粒子は、例えば、芳香族基含有モノマーからなる構成単位と、解離性基含有モノマーからなる構成単位とから構成することができるが、必要に応じて、その他の構成単位を更に含んで構成することができる。
前記その他の構成単位を形成するモノマーとしては、前記芳香族基含有モノマーと解離性基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば特に制限はない。中でも、ポリマー骨格の柔軟性やガラス転移温度(Tg)制御の容易さの観点から、アルキル基含有モノマーであることが好ましい。
前記アルキル基含有モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、Nーヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−,イソ)ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−、イソ)ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
本発明における自己分散ポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマーの分子量範囲は、重量平均分子量で、3000〜20万であることが好ましく、5000〜15万であることがより好ましく、10000〜10万であることが更に好ましい。重量平均分子量を3000以上とすることで水溶性成分量を効果的に抑制することができる。また、重量平均分子量を20万以下とすることで、自己分散安定性を高めることができる。
尚、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)によって測定することできる。
本発明における自己分散ポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマーは、ポリマーの親疎水性制御の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーを共重合比率として15〜90質量%とカルボキシル基含有モノマーとアルキル基含有モノマーとを含み、酸価が25〜100であって、重量平均分子量が3000〜20万であることが好ましく、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーを共重合比率として15〜80質量%とカルボキシル基含有モノマーとアルキル基含有モノマーとを含み、酸価が25〜95であって、重量平均分子量が5000〜15万であることがより好ましい。
以下に、自己分散ポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマーの具体例として、例示化合物B−01〜B−19を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、括弧内は共重合成分の質量比を表す。
B−01:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(50/45/5);B−02:フェノキシエチルアクリレート/ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(30/35/29/6);B−03:フェノキシエチルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(50/44/6);B−04:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(30/55/10/5);B−05:ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(35/59/6);B−06:スチレン/フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(10/50/35/5);B−07:ベンジルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(55/40/5);B−08:フェノキシエチルメタクリレート/ベンジルアクリレート/メタクリル酸 共重合体(45/47/8);B−09:スチレン/フェノキシエチルアクリレート/ブチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(5/48/40/7);B−10:ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(35/30/30/5);B−11:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/メタクリル酸 共重合体(12/50/30/8);B−12:ベンジルアクリレート/イソブチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(93/2/5);B−13:スチレン/フェノキシエチルメタクリレート/ブチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(50/5/20/25);B−14:スチレン/ブチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(62/35/3);B−15:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/51/4);B−16:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/49/6);B−17:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/48/7);B−18:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/47/8);B−19:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/45/10)
本発明における自己分散ポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマーの製造方法としては特に制限はなく、例えば、重合性界面活性剤の存在下に、乳化重合を行い、界面活性剤と水不溶性ポリマーとを共有結合させる方法、上記親水性基含有モノマーと芳香族基含有モノマーとを含むモノマー混合物を溶液重合法、塊状重合法等の公知の重合法により、共重合させる方法を挙げることができる。前記重合法の中でも、凝集速度とインク組成物としたときの打滴安定性の観点から、溶液重合法が好ましく、有機溶剤を用いた溶液重合法がより好ましい。
本発明における自己分散ポリマー粒子は、凝集速度の観点から、有機溶剤中で合成された第1のポリマーを含み、前記第1のポリマーはカルボキシル基を有し、酸価が25〜100であって、前記第1のポリマーのカルボキシル基の少なくとも一部は中和され、水を連続相とするポリマー分散物として調製されたものであることが好ましい。
すなわち、本発明における自己分散ポリマー粒子の製造方法は、有機溶剤中で前記第1のポリマーを合成する工程と、前記第1のポリマーのカルボキシル基の少なくとも一部が中和された水性分散物とする分散工程とを含むことが好ましい。
前記分散工程は、次の工程(1)及び工程(2)を含むことが好ましい。
工程(1):第1のポリマー(水不溶性ポリマー)、有機溶剤、中和剤、及び水性媒体を含有する混合物を、攪拌する工程。
工程(2):前記混合物から、前記有機溶剤を除去する工程。
前記工程(1)は、まず前記第1のポリマー(水不溶性ポリマー)を有機溶剤に溶解させ、次に中和剤と水性媒体を徐々に加えて混合、攪拌して分散体を得る処理であることが好ましい。このように、有機溶剤中に溶解した水不溶性ポリマー溶液中に中和剤と水性媒体を添加することで、強いせん断力を必要とせずに、より保存安定性の高い粒径の自己分散ポリマー粒子を得ることができる。
該混合物の攪拌方法に特に制限はなく、一般に用いられる混合攪拌装置や、必要に応じて超音波分散機や高圧ホモジナイザー等の分散機を用いることができる。
有機溶剤としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒及びエーテル系溶媒が好ましく挙げられる。
アルコール系溶媒としては、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、エタノール等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒の中では、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒とイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒が好ましい。また、油系から水系への転相時への極性変化を穏和にする目的で、イソプロピルアルコールとメチルエチルケトンを併用することも好ましい。該溶剤を併用することで、凝集沈降や粒子同士の融着が無く、分散安定性の高い微粒径の自己分散ポリマー粒子を得ることができる。
中和剤は、解離性基の一部又は全部が中和され、自己分散ポリマーが水中で安定した乳化又は分散状態を形成するために用いられる。本発明の自己分散ポリマーが解離性基としてアニオン性の解離基(例えば、カルボキシル基)を有する場合、用いられる中和剤としては有機アミン化合物、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物等の塩基性化合物が挙げられる。有機アミン化合物の例としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチル−エタノールアミン、N,N−ジエチル−エタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。中でも、本発明の自己分散ポリマー粒子の水中への分散安定化の観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、トリエタノールアミンが好ましい。
これら塩基性化合物は、解離性基100モル%に対して、5〜120モル%使用することが好ましく、10〜110モル%であることがより好ましく、15〜100モル%であることが更に好ましい。15モル%以上とすることで、水中での粒子の分散を安定化する効果が発現し、100モル%以下とすることで、水溶性成分を低下させる効果がある。
前記工程(2)においては、前記工程(1)で得られた分散体から、減圧蒸留等の常法により有機溶剤を留去して水系へと転相することで自己分散ポリマー粒子の水性分散物を得ることができる。得られた水性分散物中の有機溶剤は実質的に除去されており、有機溶剤の量は、好ましくは0.2質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
本発明における自己分散ポリマー粒子の平均粒径は、10〜400nmの範囲であることが好ましく、10〜200nmがより好ましく、10〜100nmがさらに好ましい。10nm以上の平均粒径であることで製造適性が向上する。また、400nm以下の平均粒径とすることで保存安定性が向上する。
また、自己分散ポリマー粒子の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布を持つもの、又は単分散の粒径分布を持つもの、いずれでもよい。また、水不溶性ポリマー粒子を、2種以上混合して使用してもよい。
尚、自己分散ポリマー粒子の平均粒径及び粒径分布は、例えば、光散乱法を用いて測定することができる。
本発明におけるインク組成物における自己分散ポリマー粒子の含有量としては、画像の光沢性などの観点から、インク組成物に対して、1〜30質量%であることが好ましく、2〜15質量%であることがより好ましく、3〜10質量%であることがさらに好ましい。
また、本発明におけるインク組成物中の色材と自己分散ポリマー粒子の含有比率(水不溶性着色粒子/自己分散ポリマー粒子)としては、画像の耐擦過性などの観点から、1/0.3〜1/10であることが好ましく、1/0.5〜1/5であることがより好ましい。
−親水性有機溶剤−
本発明におけるインク組成物は、水を溶媒として含むものであるが、親水性有機溶剤の少なくとも1種を更に含むことが好ましい。前記親水有機溶剤は乾燥防止剤、浸透促進剤として含有することができる。
乾燥防止剤は、特に、本発明におけるインク組成物をインクジェット方式による画像記録方法に適用する場合、インク噴射口におけるインクの乾燥によって発生し得るノズルの目詰まりを効果的に防止することができる。
乾燥防止剤は、水より蒸気圧の低い親水性有機溶剤であることが好ましい。乾燥防止剤の具体的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体等が挙げられる。中でも、乾燥防止剤としては、グリセリン、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、ジエチレングリコール等の多価アルコールが好ましい。また、上記の乾燥防止剤は単独で用いても、2種以上併用しても良い。これらの乾燥防止剤は、インク組成物中に、3〜30質量%含有されることが好ましい。
また、浸透促進剤は、インクを記録媒体(印刷用紙)により良く浸透させる目的で、好適に使用される。浸透促進剤の具体的な例としては、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類やラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムやノニオン性界面活性剤等を好適に用いることができる。これらの浸透促進剤は、インク組成物中に、5〜30質量%含有されることで、充分な効果を発揮する。また、浸透促進剤は、印字の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない添加量の範囲内で、使用されることが好ましい。
また、親水性有機溶剤は、上記以外にも、粘度の調整に用いることができる。粘度の調整に用いることができる親水性有機溶剤の具体的な例としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)及びその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が含まれる。
尚、親水性有機溶剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
−その他の添加剤−
本発明におけるインク組成物は、上記成分に加え、必要に応じてその他の添加剤を含むことができる。その他の添加剤としては、例えば、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、インク組成物を調製後に直接添加してもよく、インク組成物の調製時に添加してもよい。
紫外線吸収剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。紫外線吸収剤としては、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。
褪色防止剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。より具体的にはリサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのIないしJ項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を用いることができる。
防黴剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン及びその塩等が挙げられる。これらは水性インク組成物中に0.02〜1.00質量%使用するのが好ましい。
pH調整剤としては、中和剤(有機塩基、無機アルカリ)を用いることができる。pH調整剤は水性インク組成物の保存安定性を向上させる目的で、該インク組成物がpH6〜10となるように添加するのが好ましく、pH7〜10となるように添加するのがより好ましい。
表面張力調整剤としては、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ベタイン界面活性剤等が挙げられる。
また、表面張力調整剤の添加量は、インクジェット方式で良好に打滴するために、水性インク組成物の表面張力を20〜60mN/mに調整する添加量とすることができる。中でも、20〜45mN/mに調整する添加量が好ましく、30〜45mN/mに調整する添加量がより好ましく、30〜40mN/mに調整する添加量がさらに好ましい。インク組成物の表面張力が前記範囲内であることで、2次色の着滴ドット径の変化をより効果的に抑制することができ、より高解像度で、より広い色再現域を有する画像を記録することができる。
尚、インク組成物の表面張力は、例えば、プレート法を用いて25℃で測定される。
界面活性剤の具体的な例としては、炭化水素系では脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。
また、アセチレン系界面活性剤も好ましく用いられる。アセチレン系界面活性剤としては、例えば、SURFYNOLS(AirProducts&ChemicaLs社)や「オルフィンE1010」(日信化学工業(株)製)等を挙げることができる。
さらにまた、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。
更に、特開昭59−157636号公報の第(37)〜(38)頁、リサーチディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも用いることができる。
また、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載されているようなフッ素(フッ化アルキル系)系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等を用いることにより、耐擦性を良化することもできる。
また、これら表面張力調整剤は、消泡剤としても使用することができ、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、及びEDTAに代表されるキレート剤等、も使用することができる。
これらの中でも、インク組成物の凝集性と2次色の着滴ドット径変化抑制の観点から、アセチレン系界面活性剤が好ましく、アセチレン系界面活性剤をインク組成物の表面張力を30〜45mN/mに調整する含有量で用いることがより好ましい。
本発明におけるインク組成物の粘度としては、打滴安定性と凝集速度の観点から、1〜30mPa・sの範囲が好ましく、1〜20mPa・sの範囲がより好ましく、2〜15mPa・sの範囲がさらに好ましく、2〜10mPa・sの範囲が特に好ましい。
インク組成物の粘度は、例えば、ブルックフィールド粘度計を用いて25℃で測定される。
本発明においてインク組成物は、インクジェット法によって記録媒体上に付与される。前記インクジェット法は、特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット方式等のいずれであってもよい。インクジェット法としては、特に、特開昭54−59936号公報に記載の方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させるインクジェット法を有効に利用することができる。
また、インクジェット法で用いるインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また、吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができるが、いずれの吐出方式を用いても構わない。
尚、前記インクジェット法により記録を行う際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
インクジェットヘッドとしては、単尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを記録媒体の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式と、記録媒体の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式とがある。ライン方式では、記録素子の配列方向と直交する方向に記録媒体を走査させることで記録媒体の全面にシングルパスで画像記録を行なうことができ、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、キャリッジの移動と記録媒体との複雑な走査制御が不要になり、記録媒体だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。本発明のインクジェット記録方法は、これらのいずれにも適用可能であるが、インク付与間隔が短時間であるライン方式に適用した場合に、より効果的に画像の解像度低下が抑制される。
(記録媒体)
本発明における記録媒体は、インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤の少なくとも1種を含む。前記記録媒体としては、凝集剤を含む層を基材上に設けた記録媒体であっても、凝集剤を実質的に含まない記録媒体上に凝集剤を含む処理液を付与して形成したものであってもよい。
インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む記録媒体を用いることで、解像度がより高い画像を記録することができる。
本発明においては、汎用性の観点から、凝集剤を実質的に含まない記録媒体上に凝集剤を含む処理液を付与して形成された記録媒体であることが好ましい。前記凝集剤を実質的に含まない記録媒体としては特に制限はないが、一般のオフセット印刷などに用いられる、いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする一般印刷用紙を用いることができる。セルロースを主体とする一般印刷用紙は水系のインク組成物を用いた一般のインクジェット記録方法では、比較的インクの吸収、乾燥が遅いため画像品質が低下しやすいが、本発明のインクジェット記録方法によれば高解像度で広い色再現域を有する画像を記録することができる。
前記記録媒体として用いる一般印刷用紙は、一般に市販されているものを使用することができ、例えば、王子製紙(株)製の「OKプリンス上質」、日本製紙(株)製の「しおらい」、及び日本製紙(株)製の「ニューNPI上質」等の上質紙(A)、王子製紙(株)製の「OKエバーライトコート」及び日本製紙(株)製の「オーロラS」等の微塗工紙、王子製紙(株)製の「OKコートL」及び日本製紙(株)製の「オーロラL」等の軽量コート紙(A3)、王子製紙(株)製の「OKトップコート+」及び日本製紙(株)製の「オーロラコート」等のコート紙(A2、B2)、王子製紙(株)製の「OK金藤+」及び三菱製紙(株)製の「特菱アート」等のアート紙(A1)等が挙げられる。また、インクジェット記録用の各種写真専用紙を用いることも可能である。
本発明における記録媒体としては、前記一般印刷用紙の中でも、汎用性と印刷物として風合いの観点から、コート紙、軽量コート紙、または微塗工紙であることが好ましい。
−凝集剤−
凝集剤としては、インク組成物と接触して、インク組成物中で安定的に分散している色材、樹脂粒子等のインク組成物成分の凝集を促進させることができる化合物であれば特に制限はなく、インク組成物に応じて適宜選択することができる。例えば、インク組成物のpHを変化(好ましくは低下)させることができる化合物、多価金属塩、塩基性基を有する高分子化合物等を挙げることができる。
前記凝集剤は、1種単独でも2種以上を組合せて用いてもよい。
前記インク組成物のpHを変化(好ましくは低下)させることができる化合物としては、例えば、酸性化合物を挙げることができる。酸性化合物としては、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、又はカルボキシル基を有する化合物、あるいはその塩(例えば多価金属塩)を使用することができる。中でも、水性インク組成物の凝集速度の観点から、リン酸基又はカルボキシル基を有する化合物がより好ましく、カルボキシル基を有する化合物であることが更に好ましく、有機カルボン酸が特に好ましい。
カルボキシル基を有する化合物としては、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩(例えば多価金属塩)等の中から選ばれることが好ましい。
中でも、インク組成物と反応してインク全体を凝集・固定化させる観点から、2価以上の有機カルボン酸が好ましい。
前記多価金属塩としては、周期表の第2属のアルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム)、周期表の第3属の遷移金属(例えば、ランタン)、周期表の第13属からのカチオン(例えば、アルミニウム)、ランタニド類(例えば、ネオジム)の塩を挙げることができる。金属の塩としては、カルボン酸塩(蟻酸、酢酸、安息香酸塩など)、硝酸塩、塩化物、及びチオシアン酸塩が好適である。中でも、好ましくは、カルボン酸(蟻酸、酢酸、安息香酸塩など)のカルシウム塩又はマグネシウム塩、硝酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びチオシアン酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩である。
また前記塩基性基を有する高分子化合物としては、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン誘導体等を挙げることができる。
本発明において凝集剤を含む記録媒体は、凝集剤を含む処理液が記録媒体上に付与されて形成されたものであることが好ましい。前記処理液は凝集剤の少なくとも1種を含み、必要に応じて他の成分を含んで構成することができる。
本発明において処理液が含む凝集剤は、前述の凝集剤を特に制限なく用いることができるが、インク組成物の高速凝集性と高解像度の観点から、インク組成物のpHを変化させることができる化合物であることが好ましく、カルボキシル基を有する化合物であることがより好ましい。
本発明における処理液が、インク組成物のpHを変化させることができる化合物を含む場合、処理液のpH(25℃)は、インク組成物の凝集速度の観点から、3.5以下であることが好ましく、0.5〜2.5であることが好ましく、更には0.5〜1.5であることがより好ましい。この場合、後述の画像記録工程で用いるインク組成物のpH(25℃)は、7.5以上(より好ましくは8以上)であることが好ましい。
中でも、本発明においては、画像濃度、解像度、及びインクジェット記録の高速化の観点から、前記インク組成物のpH(25℃)が8以上であって、処理液のpH(25℃)が3.5以下(より好ましくは0.5〜2.5)である場合が好ましい。
凝集剤の処理液中における含有量としては、凝集効果の観点から、処理液の全質量に対して、5〜95質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。特に、有機カルボン酸の含有量が10〜40質量%であると、後述の画像記録工程で複数のインク組成物を用いて画像を記録した場合のドット径変化が効果的に抑制され、ドット径の均一性が高く細線や微小部分の再現性に優れた画像描画性を発現することができる。
また処理液が、多価金属塩あるいは塩基性基を有する高分子化合物を含む場合、それらの処理液中における含有量としては、1〜10質量%が好ましく、より好ましくは1.5〜7質量%であり、更に好ましくは2〜6質量%の範囲である。
本発明における処理液は、凝集剤と共に、水系溶媒(例えば水、有機溶剤)を更に含んで構成することができる。本発明の処理液では、親水性の有機溶剤を処理液の全質量に対して1〜40質量%の範囲で含有することが好ましい。有機溶剤の含有量が前記範囲内であると、凝集剤の処理液容器壁や塗布時の容器壁などの液/空気界面での乾燥析出の防止効果、また、凝集剤が記録媒体、特に塗工紙の表面コート層に添加されている炭酸カルシウムとの酸中和反応が有機溶剤の存在により抑制され、酸が凝集剤として有効に作用する点で有利である。有機溶剤の含有量は、更には処理液の全質量に対して5〜20質量%の範囲であることがより好ましい。
処理液に含有する有機溶剤としては、前述のインク組成物に使用可能な親水性有機溶剤と同様のものを用いることができ、その好ましい態様も同様である。
処理液は、更に、アニオン性界面活性剤及び/又はノニオン性界面活性剤を含有することが好ましい。これらの界面活性剤を含有することで、処理液の表面張力を適度なところに調整することができる。界面活性剤の具体例としては、前述のインク組成物中における界面活性剤と同様のものを挙げることができ、好ましい態様も同様である。
アニオン性界面活性剤及び/又はノニオン性界面活性剤の処理液中における含有量としては、処理液の全質量に対して、0.0001〜1質量%が好ましく、0.001〜0.5質量%が好ましい。これら界面活性剤の含有量が前記範囲内であると、処理液中での分離や析出物の発生がなく、表面張力を適度なところに調整可能な点で有利である。
処理液の粘度としては、インク組成物の凝集速度の観点から、1〜30mPa・sの範囲が好ましく、1〜20mPa・sの範囲がより好ましく、2〜15mPa・sの範囲がさらに好ましく、2〜10mPa・sの範囲が特に好ましい。なお、粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO. LTD製)を用いて25℃の条件下で測定されるものである。
また、処理液の表面張力としては、インク組成物の凝集速度の観点から、40〜60mN/mであることが好ましく、加えて処理液の塗布性、具体的には例えば記録画像中の色濃度ムラやスジ状の濃淡ムラ、ハジキ状ムラの発生防止の点も加味すると、42〜50mN/mの範囲がより好ましく、43〜48mN/mの範囲が更に好ましい。なお、表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学(株)製)を用いて25℃の条件下で測定されるものである。
(その他成分)
本発明における処理液は、前記凝集剤に加えて、更にその他の各種添加剤を用いて構成することができる。その他の各種添加剤の詳細については、前述のインク組成物におけるその他の添加剤と同様である。
[処理液付与工程]
本発明のインクジェット記録方法は、前記画像記録工程前に、凝集剤を含む処理液を記録媒体上に付与する処理液付与工程を更に備えることが好ましい。
処理液の記録媒体上への付与は、公知の液体付与方法を特に制限なく用いることができ、スプレー塗布、塗布ローラ等の塗布、インクジェット方式による付与、浸漬などの任意の方法を選択することができる。
具体的には、例えば、ホリゾンタルサイズプレス法、ロールコーター法、カレンダーサイズプレス法などに代表されるサイズプレス法;エアーナイフコーター法などに代表されるサイズプレス法;エアーナイフコーター法などに代表されるナイフコーター法;ゲートロールコーター法などのトランスファーロールコーター法、ダイレクトロールコーター法、リバースロールコーター法、スクイズロールコーター法などに代表されるロールコーター法;ビルブレードコーター法、ショートデュエルコーター法;ツーストリームコーター法などに代表されるブレードコーター法;ロッドバーコーター法などに代表されるバーコーター法;ロッドバーコーター法などに代表されるバーコーター法;キャストコーター法;グラビアコーター法;カーテンコーター法;ダイコーター法;ブラシコーター法;転写法などが挙げられる。
また、特開平10−230201号公報に記載の塗布装置のように、液量制限部材を備えた塗布装置を用いることで塗布量を制御して塗布する方法であってもよい。
処理液を付与する領域は、記録媒体全体に付与する全面付与であっても、後の画像記録工程でインクジェット記録が行なわれる領域に部分的に付与する部分付与であってもよい。本発明においては、処理液の付与量を均一に調整し、細線や微細な画像部分等を均質に記録し、画像ムラ等の濃度ムラを抑える観点から、塗布ローラ等を用いた塗布によって記録媒体全体に付与する全面付与が好ましい。
処理液の付与量としては、インク組成物を凝集させるに足る量であれば、特に制限はないが、0.25g/m以上であることが好ましく、インク組成物を凝集により固定化しやすい点で、0.30g/m以上3.0g/m未満であることがより好ましく、0.5g/m以上2.0g/m未満であることが更に好ましい。
〜乾燥除去工程〜
処理液付与工程には、処理液の付与後(前述の画像記録工程の前)に、処理液中に含まれる溶媒を乾燥除去する乾燥除去工程をさらに設けることが好ましい。処理液の付与後に処理液中の溶媒を乾燥除去することにより、カールやカックル、ハジキの発生を抑えて画像の耐擦過性を向上させ得ることに加え、後述の画像記録工程で着滴したインク組成物の移動を抑制し、より均一性の高いドットを形成して画像の描画性(細線や微細部の再現性)を向上させることができる。
乾燥除去工程は、水性処理液に含まれる溶媒(例えば、水、有機溶剤)の少なくとも一部を除去することができれば、特に制限はない。乾燥除去は、例えば、加熱、送風(乾燥風をあてる等)などによって乾燥させる方法により行なえる。
[他の工程]
本発明のインクジェット記録方法は、上記の画像記録工程と処理液付与工程に加え、必要に応じて、他の工程を設けて構成することができる。
他の工程としては、特に制限はなく、例えば、記録媒体に付与されたインク組成物中の有機溶剤を乾燥除去するインク乾燥工程や、インク組成物中に含まれる樹脂粒子やポリマーラテックスを溶融定着する加熱定着工程など、目的に応じて適宜選択することができる。
前記インク乾燥工程は、既述の処理液付与工程で設けてもよい乾燥除去工程と同様に構成することができ、インク組成物中の溶媒の少なくとも一部を乾燥除去できる方法であれば特に制限はない。具体的には、画像部に対して加熱や送風(乾燥風の供給)などの一般に用いられる方法を適用して行なえる。このインク乾燥工程は、カールやカックルの発生抑制と画像の耐擦性の観点から、インク組成物を付与する画像記録工程の後に設けることがより好ましい。
前記加熱定着工程としては、インク組成物中に含まれる樹脂粒子を溶融定着することができる方法であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
<実施例1>
〜インク組成物の調製〜
[顔料(色材)分散液の調製]
(水不溶性ポリマー分散剤PD−1の調製)
反応容器に、スチレン6部、ステアリルメタクリレート11部、スチレンマクロマーAS−6(東亜合成製)4部、ブレンマーPP−500(日本油脂製)5部、メタクリル酸5部、2−メルカプトエタノール0.05部、メチルエチルケトン24部の混合溶液を調液した。
一方、滴下ロートに、スチレン14部、ステアリルメタクリレート24部、スチレンマクロマーAS−6(東亜合成製)9部、ブレンマーPP−500(日本油脂製)9部、メタクリル酸10部、2−メルカプトエタノール0.13部、メチルエチルケトン56部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2部を入れ、混合溶液を調液した。
そして、窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら75℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を1時間かけて徐々に滴下した。滴下終了から2時間経過後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2部をメチルエチルケトン12部に溶解した溶液を3時間かけて滴下し、更に75℃で2時間、80℃で2時間熟成させ、水不溶性ポリマー分散剤(PD−1)溶液を得た。
得られたポリマー分散剤溶液の一部について、溶媒を除去することによって単離し、得られた固形分をテトラヒドロフランにて0.1%に希釈し、高速GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)HLC−8220GPCにて、TSKgeL SuperHZM−H、TSKgeL SuperHZ4000、TSKgeL SuperHZ2000(東ソー(株)製)を3本直列につなぎ重量平均分子量を測定した。その結果、単離された固形分は、ポリスチレン換算で重量平均分子量が25,000であった。酸価は計算値で100mgKOH/gであった。
(シアン分散液Cの調製)
次に、上記で得られた水不溶性ポリマー分散剤溶液を固形分換算で5.0g、シアン顔料Pigment Blue 15:3(大日精化製)10.0g、メチルエチルケトン40.0g、1mol/L水酸化ナトリウム8.0g、イオン交換水82.0g、0.1mmジルコニアビーズ300gをベッセルに供給し、レディーミル分散機(アイメックス製)で1000rpm、6時間分散した。得られた顔料分散液をエバポレーターでメチルエチルケトンが十分留去できるまで減圧濃縮し、顔料濃度が約12%になるまで濃縮した。
その後、顔料分散液に対して8000rpm、30分間の遠心処理を行い、沈殿物として残留した粗大粒子を除去した。上澄みの吸光度を測定し、顔料濃度を決定した。
上記のようにして、色材としてのシアン分散液Cを調液した。得られたシアン分散液Cの平均粒径は81nmであった。
(マゼンタ分散液Mの調製)
シアン分散液Cの調製において、ピグメント・ブルー15:3(シアン顔料)の代わりに、C.I.ピグメント・レッド122(クラリアントジャパン社製)を用いた以外は、シアン分散液Cの調製と同様にして、マゼンタ分散液Mを調製した。
(イエロー分散液Yの調製)
シアン分散液Cの調製において、ピグメント・ブルー15:3(シアン顔料)の代わりに、C.I.ピグメント・イエロー74(クラリアントジャパン社製)を用いた以外は、シアン分散液Cの調製と同様にして、イエロー分散液Yを調製した。
[自己分散ポリマー粒子の調製]
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン360.0gを仕込んで、窒素雰囲気下で75℃まで昇温した。反応容器内温度を75℃に保ちながら、フェノキシエチルアクリレート180.0g、メチルメタクリレート162.0g、アクリル酸18.0g、メチルエチルケトン72g、及び「V−601」(和光純薬(株)製)1.44gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、「V−601」0.72g、メチルエチルケトン36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌後、さらに「V−601」0.72g、イソプロパノール36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌した後、85℃に昇温して、さらに2時間攪拌を続けた。得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は64000(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で算出、使用カラムはTSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー社製))、酸価は38.9(mgKOH/g)であった。
次に、重合溶液668.3gを秤量し、イソプロパノール388.3g、1mol/L NaOH水溶液145.7mlを加え、反応容器内温度を80℃に昇温した。次に蒸留水720.1gを20ml/minの速度で滴下し、水分散化せしめた。その後、大気圧下にて反応容器内温度80℃で2時間、85℃で2時間、90℃で2時間保った後、反応容器内を減圧にし、イソプロパノール、メチルエチルケトン、蒸留水を合計で913.7g留去し、固形分濃度28.0%の自己分散ポリマー粒子(B−01)の水分散物を得た。
[インク組成物の調製]
上記で得られた色材分散液(マゼンタ分散液M)および自己分散ポリマー粒子(B−01)を用いて、下記インク組成となるように各成分を混合した。これをプラスチック製ディスポーザブルシリンジに詰め、PVDF5μフィルター(ミリポア社製Millex−SV、直径25mm)で濾過して、インクM−1(インク組成物)とした。
(インクM−1の組成)
・マゼンタ顔料(ピグメント・レッド122) : 4.5%
・水不溶性ポリマー分散剤(PD−1) : 2.3%
・樹脂粒子(自己分散ポリマー粒子B−01) : 5.0%
・サンニックスGP250 : 15.0%
(三洋化成工業製、親水性有機溶剤)
・ジエチレングリコール(和光純薬製、親水性有機溶剤) : 10.0%
・オルフィンE1010 : 1.0%
(日信化学製、アセチレン系界面活性剤)
・イオン交換水 : 全量が100.0%となるように添加。
上記インクM−1の調製において、樹脂粒子の含有率が、下記表1のインク組成となるようにインク組成を変更した以外はインクM−1と同様にして、インクM−2〜M−4を調製した。
またインクM−1の調製において、マゼンタ分散液Mの代わりにシアン分散液Cまたはイエロー分散液Yを用いて、シアン顔料またはイエロー顔料の含有率と樹脂粒子の含有率が、下記表1のインク組成となるようにインク組成を変更した以外はインクM−1と同様にして、インクC−1〜C−3、Y−1〜Y−2を調製した。
調製したインク組成物の表面張力を、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学(株)製)を用いて25℃の条件下で測定した。結果を表1に示す。
Figure 0005208792
(処理液の調製)
下記に示した組成となるように各成分を混合して処理液を調製した。
・クエン酸(凝集剤) : 15部
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル : 15部
・界面活性剤(オルフィンE1010、日信化学製) : 1部
・イオン交換水 : 69部
<インクジェット記録方法>
上記で調製したインクM−1、インクC−1、インクY−1からなるインクセット1を用い、以下のようなシングルパスのライン方式にて、インクジェット画像記録を行い、記録された画像の1次色ドット径および2次色ドット径について評価した。併せて記録画像の耐擦性についても評価した。
[1次色画像記録]
(1)処理液付与工程
記録媒体としてA4サイズの特菱アート(三菱製紙(株)製)を用い、記録媒体の全面に、上記で調製した処理液を塗布バーにより塗布量が1.7g/mになるように塗布した。
(2)乾燥除去工程
次いで、下記条件にて処理液が塗布された記録媒体を乾燥した。
・風速:15m/s
・温度:記録媒体の記録面側の表面温度が60℃となるように、記録媒体の記録面の反対側(背面側)から接触型平面ヒーターで加熱
・送風領域:450mm(乾燥時間0.7秒)
(3)画像記録工程
その後、処理液が塗布された記録媒体の塗布面に、下記条件にて第1色目のインク組成物のインクジェット法による付与をインク1、インク2、インク3の順で行い、画像を記録した。
・ヘッド:1200dpi/20inch幅ピエゾフルラインヘッドを3色分配置
・吐出液滴量:2.4pLにて記録
・駆動周波数:30kHz(記録媒体の搬送速度635mm/sec)
(4)インク乾燥除去工程
次いで、水性インクが付与された記録媒体を下記条件で乾燥した。
・乾燥方法:送風乾燥
・風速:15m/s
・温度:記録媒体の記録面側の表面温度が60℃となるように、記録媒体の記録面の反対側(背面側)から接触型平面ヒーターで加熱
・送風領域:640mm(乾燥時間:1秒間)
(5)定着工程
次に、下記条件でローラ対を通過させることにより加熱定着処理を実施した。
・シリコンゴムローラ(硬度50°、ニップ幅5mm)
・ローラ温度:70℃
・圧力:0.8MPa
<評価>
マイクロスコープを用いて、上記で記録された画像を構成するインクドットの画像を撮影した。得られた画像について画像処理を行い、各インクによって記録されたインクドットのフェレ径をそれぞれ50ドットずつ算出して、その算術平均値をそれぞれのインクの1次色ドット径とした。得られた1次色ドット径について下記評価基準に従って評価した。
〜評価基準〜
A:1次色ドット径が35μm未満であった。
B:1次色ドット径が35μm以上38μm未満であった。
C:1次色ドット径が38μm以上であった。
[2次色画像記録]
(1)処理液付与工程
記録媒体としてA4サイズの特菱アート(三菱製紙(株)製)を用い、記録媒体の全面に、上記で調製した処理液を塗布バーにより塗布量が1.7g/mになるように塗布した。
(2)乾燥除去工程
次いで、下記条件にて処理液が塗布された記録媒体を乾燥した。
・風速:15m/s
・温度:記録媒体の記録面側の表面温度が60℃となるように、記録媒体の記録面の反対側(背面側)から接触型平面ヒーターで加熱
・送風領域:450mm(乾燥時間0.7秒)
(3)画像記録工程
その後、処理液が塗布された記録媒体の塗布面に、下記条件にて、表3に示した第1色目のインク組成物のインクジェット法による付与を行い、第1色目の100%ベタ画像を記録し、記録された第1色目の100%ベタ画像上に、表3に示した第2色目のインク組成物を付与して2次色ドット画像を記録した。
・ヘッド:1200dpi/20inch幅ピエゾフルラインヘッドを3色分配置
・吐出液滴量:2.4pLにて記録
・駆動周波数:30kHz(記録媒体の搬送速度635mm/sec)
(4)インク乾燥除去工程
次いで、水性インクが付与された記録媒体を下記条件で乾燥した。
・乾燥方法:送風乾燥
・風速:15m/s
・温度:記録媒体の記録面側の表面温度が60℃となるように、記録媒体の記録面の反対側(背面側)から接触型平面ヒーターで加熱
・送風領域:640mm(乾燥時間:1秒間)
(5)定着工程
次に、下記条件でローラ対を通過させることにより加熱定着処理を実施した。
・シリコンゴムローラ(硬度50°、ニップ幅5mm)
・ローラ温度:70℃
・圧力:0.8MPa
<評価>
(2次色ドット径)
マイクロスコープを用いて、上記で記録された2次色のインクドットの画像を撮影した。得られた画像について画像処理を行い、記録された2次色のインクドットのフェレ径をそれぞれ50ドットずつ算出して、その算術平均値をそれぞれの2次色ドット径とした。得られた2次色ドット径について下記評価基準に従って評価した。
〜評価基準〜
A:2次色ドット径が35μm未満であった。
B:2次色ドット径が35μm以上38μm未満であった。
C:2次色ドット径が38μm以上であった。
(耐擦性)
第1色目の100%ベタ画像上に、第2色目の100%ベタ画像を記録したこと以外は前記画像記録工程と同様にして記録した2次色ベタ画像を形成した試料をそれぞれ作製した。得られた3つの試料について以下のようにしてそれぞれ耐擦性を評価し、最も悪い試料の結果をそのインクセットにおける耐擦性の評価結果とした。評価結果を表3に示した。
2次色画像を印画した直後、記録していない記録媒体(記録に用いたものと同じ記録媒体)を重ねて荷重150kg/mをかけて10往復擦り、記録画像についた傷と、前記記録していない記録媒体(未使用サンプル)の白地部分へのインクの転写度合いを目視で観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。
〜評価基準〜
AA:記録画像の傷とインクの転写が全く認められなかった。
A:記録画像に僅かに傷が認められるが、インクの転写はほとんど目立たなかった。
B:記録画像の傷とインクの転写が僅かに認められ、実用上の許容限界であった。
C:記録画像の傷が顕著であった、及び/又はインクの転写が顕著であった。
<実施例2〜3、比較例1〜3>
また、下記表2に記載したインクセット2〜インクセット6を用いて上記と同様にして、それぞれインクジェット画像記録を行い、1次色ドット径、2次色ドット径、および耐擦性の評価を行なった。評価結果を表3に示した。
Figure 0005208792
Figure 0005208792
表3から、本発明のインクジェット記録方法によって記録された2次色のドット径は、1次色のドット径に対するドット径変化の発生が抑制され、均一なドット径の画像が記録されていることが分かる。また、記録画像の耐擦性にも優れていることが分かる。

Claims (8)

  1. 色材と、樹脂粒子と、水とを含み、前記樹脂粒子の含有率が異なる少なくとも2種のインク組成物を用い、前記インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む記録媒体上に、前記樹脂粒子の含有率が少ないインク組成物から順次インクジェット法により前記インク組成物を付与して画像を記録する画像記録工程を備えるインクジェット記録方法。
  2. 前記記録媒体は、コート紙、軽量コート紙、または微塗工紙である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記画像記録工程前に、前記凝集剤を含む処理液を記録媒体上に付与する処理液付与工程をさらに備える請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記凝集剤は、酸性化合物を含む請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記樹脂粒子は、自己分散ポリマー粒子である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  6. 前記樹脂粒子は、有機溶剤中で合成されたアニオン性基を有する第1のポリマーを含み、前記第1のポリマー中のアニオン性基の少なくとも一部は中和され、水を連続相とするポリマー分散物として調製される樹脂粒子である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  7. 前記色材は、顔料を含む請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  8. 前記色材は、水不溶性である第2のポリマーに被覆された顔料である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
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