JP5208299B1 - 洗浄方法 - Google Patents

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【課題】 放射線汚染物質の除去に有効な洗浄方法を提供する。
【解決手段】焼成後のゼオライト粉末4は細孔内からNaなどが除かれ、全体として負に帯電している。その結果、図3に示すように、正に帯電しているセシウム137などの汚染物質は静電的に吸引されてゼオライト粉末4の細孔内に侵入し、そのまま吸着保持され、水中内に出てこない。
【選択図】 図3

Description

本発明は、ゼオライトを用いた洗浄方法に関する。
ゼオライト(沸石)はケイ素(Si)とアルミニウム(Al)と酸素(O)からなる網目構造をしており、ケイ素(Si)とアルミニウム(Al)の比率の違いで、A型、Y型、クリノプティロライト、モルデナイトなどの種類が存在し、いずれも骨格間に微細な孔が形成され、例えばクリノプティロライトの場合は3.9〜5.4Å、モルデナイトの場合は6.7〜7.0Åの細孔が形成される。
ゼオライトは上記したように、種類ごとに略一定の微細孔を有しており、その大きさが分子レベルであるため、分子篩として従来から知られている。また最近では放射線汚染物質の吸着能があることが着目されている。
非特許文献1には、表面に微細な穴の多い「天然ゼオライト」10グラムを、放射性セシウムを溶かした海水100ミリ・リットルに入れて混ぜると、5時間で約9割のセシウムが吸着されることを確認したと報告されている。
また非特許文献2には、人口ゼオライトに鉄化合物を混ぜて時期を帯びさせることで放射性セシウムを吸着させ、磁石を使って放射線汚染された土壌からセシウムを吸着したゼオライトを分離することが報告されている。
2011年7月21日 読売新聞 2012年7月13日 毎日新聞
従来のゼオライトを用いた汚染物質の洗浄方法は、ゼオライトを分子篩として用い、この分子篩の一方の側に汚染物質を含んだ水を送り込み、圧力を加えてゼオライト層を透過させ、この透過の際に汚染物質をゼオライトの細孔内に取り込んで吸着している。
しかしながら、除染の対象となるのは閉鎖空間内の水などに限られ、建築物、樹木、道路などについての効率のよい洗浄方法は何ら提案されていない。
上記課題を解決するため本発明に係る洗浄方法は以下の工程からなる。
洗浄対象物の表面を水で濡らす工程。
水で濡れた洗浄対象物の表面にゼオライト粉末を供給する工程。
洗浄対象物の表面にゲル状のゼオライト層を形成して静置し、洗浄対象物の表面に付着した放射線汚染物質をゼオライトに吸着させる工程。
水で洗浄対象物の表面のゼオライト層を洗い流す工程。
洗い流したゼオライトを回収する工程。
前記ゼオライトの粒径は平均20μm以下、好ましくは10μm以下とする。粒径を細かくすることで、洗浄対象物の表面と接触するゼオライトの割合が大きくなり洗浄効果が高くなる。
前記静置している間に洗浄対象物の表面に付着している汚染物質がゼオライトの細孔内に吸着される。セシウム137などの汚染物質はゼオライトの細孔内に一旦入り込むとその径がゼオライトの細孔から出にくい大きさなので、強固に吸着される。
静置時間が短いと吸着が不十分となり、静置時間が長いと乾燥して洗い流しにくくなる。また天候、温度によって乾燥具合が大きく変動する。したがって静置の目安としては、ゼオライト層の水分割合が80〜20wt%となるまで静置するのが好ましい。
また、前記洗浄対象物の表面のゼオライト層を洗い流す水にヨウ素化合物、例えばヨウ化ナトリウムやヨウ化カリウムが溶解した水溶液とすることが好ましい。ヨウ化ナトリウムやヨウ化カリウムは非放射性で安定しており、これらを添加することで、洗浄後に洗浄対象物の表面に汚染物質が付着しにくくなる。
本発明に係る洗浄方法によれば、単なる水洗浄では除去できなかったセシウム137などの汚染物質を簡単な作業で確実に除去できる。また、洗浄対象も特に限定されずコスト的にも有利である。
洗浄前の洗浄対象物の表面を示す拡大図 洗浄対象物の表面に水をかけた後の拡大図 水をかけた後の洗浄対象物の表面にゼオライト粉末を供給した状態の拡大図 ゼオライト粉末の細孔内に汚染物質が吸着された状態を示す拡大図
以下に本発明の実施例を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は洗浄前の洗浄対象物の表面を示す拡大図であり、洗浄対象物1の表面にはセシウム137などの汚染物質2が付着している。この洗浄対象物1の表面に散水機などを用いて水をかける。その結果、図2に示すように浄対象物1の表面に水膜3が形成される。
尚、水で洗浄しただけでは、洗浄対象物1の表面に付着している汚染物質2は除去されない。
次いで、水膜3が形成されている洗浄対象物1の表面にゼオライトの粉末4を噴射装置を用いて吹き付ける。噴射装置としてはコンプレッサからの圧縮空気を用いてタンク内に貯留したゼオライト粉末4を噴射するものが考えられる。
噴射するゼオライト粉末4は天然ゼオライトを焼成したのちに、グラインダーにより微細化したもので、出来るだけ小さな径が好ましいが、最低でも20μm以下とすることが洗浄効果を高める上で好ましい。
また、散布空間をビニールシートなどによって囲むことが、ゼオライト粉末4を無駄に飛散させず、付着効率を上げることができる。
焼成前のゼオライト粉末4の細孔にはNaなどが吸着されており、これらの持つ正電荷によりゼオライト粉末4は正に帯電しているが、焼成後のゼオライト粉末4は細孔内からNaなどが除かれ、全体として負に帯電している。その結果、図3に示すように、正に帯電しているセシウム137などの汚染物質は静電的に吸引されてゼオライト粉末4の細孔内に侵入し、そのまま吸着保持され、水中内に出てこない。
上記の吸着を行わせるため、本発明方法では静置を行う。この静置時間は気温や天候によって左右されるが凡その目安として、30分〜24時間、ゼオライト粉末4の層の水分量が20〜80wt%となるまで行う。
この後、水でゼオライト粉末4の層を洗い流す。また、洗い流したゼオライト粉末4には汚染物質2が吸着しているので回収し、保管する。
尚、洗浄水中にヨウ化ナトリウムやヨウ化カリウムを溶解させてもよい。このようにすることで、ヨウ化ナトリウムやヨウ化カリウムが汚染物質が付着しやすい箇所に先に付着し、洗浄後の洗浄対象物の表面に再び汚染物質が付着しにくくなる。
以下の(表)は洗浄前と本発明方法で洗浄した後の放射性物質(セシウム137)の濃度(μSv/h)を比較したものである。
測定場所は三菱食品(株)二本松営業所、測定箇所(A〜K)は屋根、屋上、駐車場、測定高さは地上から0.01m、0.5m及び1mの3か所、使用したゼオライトの平均粒径は6μm、静置時間は24時間、洗浄後の測定時刻は9時と16時の2回として平均値を採用した。
上記の表から明らかなように、本発明方法により、大幅に放射性物質が除去されることが分かる。
本発明に係る洗浄方法は、放射性物質によって汚染された、建物、道路、樹木の洗浄に利用することができる。
1…洗浄対象物、2…汚染物質、3…水膜、4…ゼオライト粉末。

Claims (3)

  1. 以下の工程からなる洗浄方法。
    建物、道路または樹木のいずれかの洗浄対象物の表面を水で濡らす工程。
    水で濡れた洗浄対象物の表面にゼオライト粉末を供給する工程。
    洗浄対象物の表面にゲル状のゼオライト層を形成して静置し、洗浄対象物の表面に付着した放射線汚染物質をゼオライトに吸着させる工程。
    水で洗浄対象物の表面のゼオライト層を洗い流す工程。
    洗い流したゼオライトを回収する工程。
  2. 請求項1に記載の洗浄方法において、前記ゼオライトの粒径は平均20μm以下とすることを特徴とする洗浄方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の洗浄方法において、前記静置はゼオライト層の水分割合が80〜20wt%となるまで行うことを特徴とする洗浄方法。
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