JP5207316B2 - 腹膜線維化抑制用医薬組成物 - Google Patents
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Description
慢性腎不全の原因疾患は日本の調査結果(日本透析療法学会の集計)では、以前は慢性糸球体腎炎が主であったが、近年他の原因疾患、とりわけ糖尿病が増加しており、年度別集計の約10%を占めるに至り、年間透析導入患者では約20%を占めるようになっている。この傾向は現在も続いており、糖尿病に合併する慢性腎不全は増加しつつある。
慢性腎不全の進行を止めるために、食事療法、降圧療法などが施行されるが、その効果は十分でなく、末期腎不全患者に対しては、血液浄化療法、即ち血液透析若しくは腹膜透析、又は腎臓移植が適応される。日本では腎臓移植実施例が少ないため、長期に透析療法を施行する例が多いのが特徴である。現在、日本における末期腎不全透析患者数は約25万人に達し、医療経済に大きな影響を与えている。
血液浄化療の中で、腹膜透析は、腹膜で囲まれた腹腔内に浸透圧の高い腹膜透析液を貯留することによって、生体内の余分な水と老廃物を取り除くことにより行われる。即ち、腹膜透析では、腹腔内に貯留した腹膜透析液と体液との間に生じる浸透圧格差により、腹膜毛細血管から腹腔内の腹膜透析液に生体内の余分な水が移動し、これにより生体内の余分な水と老廃物が取り除かれることになる。
また、血液透析が週に数回の通院を要するのに対し、腹膜透析は自宅や職場で施行でき、通院の頻度が少なくてすむので患者の社会復帰に貢献することや、医療経済への影響は比較的少ないと考えられる。更に、腹膜透析は、血液透析に比べて、循環系や生体内部環境へ与える影響が少ないといった利点を有する。
しかしながら、透析療法に占める腹膜透析の比率は、先進国で約10%、日本では4%に留まり、殆どが血液透析に頼っている状況である。
長期にわたり腹膜透析を行う場合、腹膜機能障害、腹膜線維症を発生することがあり、この結果、腸閉塞、腹部臓器の癒着等が発症するという問題点が存在することがあげられる。また腹膜機能障害のため、体外に水分を除去できなくなり、血液透析に変更する、あるいは血液透析と併用する事態となることも多い。
そこで、長期腹膜透析の問題点である腹膜機能障害、腹膜線維症を予防または治療することのできる療法の確立は、腹膜透析だけによる長期治療を可能とし、医療経済面、患者の「生活の質」(QOL)改善の面で有用である。
しかし、現在は、腹膜炎を発症した時に抗生物質あるいはステロイド剤による治療を行っているのみで、腹膜線維症を軽減し、腹膜機能を維持する医療法は確立されておらず、腹膜透析の普及率は低いレベルに留まっているのが現状である。
一方、利尿作用を有するナトリウム利尿ペプチド(NP)は、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)および脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)等が知られている。また、これらのペプチドに対する受容体については、利尿ペプチド受容体−A(NPR−A、非特許文献1:Chinkers M,et al.,Nature,338;78−83,1989)等が知られており、これらは膜結合型グアニリル・サイクラーゼ構造をとるグアニリル・サイクラーゼ共役受容体である。
更に、ANPおよびBNPはNPR−Aの特異的リガンドであり、これらは各々の受容体結合後、細胞内のcGMPを上昇させることにより利尿作用および血管拡張作用等の生物学的活性を示すと考えられている。(非特許文献2:Rosenzweig A,and Seidman CE,Annu.Rev.Biochem.,60:229−255,1991)。また、ナトリウム利尿ペプチドは、体液の恒常性の制御や血圧の調節に重要な役割を果たすと報告されているが(非特許文献3:Ogawa Y,et al.,J.Clin.Invest.,93:1911−1921,1994)、心臓血管系以外の様々な組織での発現とその生理活性も知られている(非特許文献4:Komatsu Y,et al.,Endocrinology,129:1104−1106,1991;非特許文献5:Chinkers M and Garbers DL,Annu.Rev.Biochem.,60:553−575,1991)。
ANPは、心臓より分泌され、水電解質代謝および血圧の調節に重要な役割を果たすペプチドホルモンである。ヒトおよびモデル動物において、心肥大および心不全の重症度に伴い、血中ANP濃度が上昇することが知られており、心不全の病態に代償的に作用すると考えられている。実際に心不全患者においてANP投与により血管拡張作用および利尿作用が発現し、心臓の前負荷、後負荷が軽減され、血行動態改善効果が認められている(非特許文献6:Suzuki T,et al.,Cardiovasc.Res.,51:489−494,2001)。また、急性心不全薬として既に臨床上用いられている。
BNPは、脳から見出されたホルモンであるが、脳よりも主に心臓から分泌され、血管拡張作用、利尿作用を有して、体液量や血圧の調整に重要な役割を果たしているホルモンである。健常人における血漿中BNP濃度は極めて低いが、心不全患者では重症度に応じて増加する(非特許文献7:Mukoyama M,et al.,J.Clin.Invest.,87:1402−1412,1991)。血中BNPは無症候性心不全において既に高値を示し、重症度に応じて著明に増加するため心不全機能評価法として重要であり、BNPの測定は心不全の病態の把握に重要な意義を有する(非特許文献6:Suzuki T,et al.,Cardiovasc.Res.,51:489−494,2001)。BNPもまた、アメリカ合衆国などで既に急性心不全治療薬として認可されている。
また、ナトリウム利尿ペプチドは心臓や腎臓において線維化抑制作用を有し(非特許文献8:Calderone A,et al.,J.Clin.Invest.,101:812−818.;非特許文献9:Suganami T,et al.,J.Am.Soc.Nephrol.,12:2652−2663,2001)、浸透圧性物質と共に腹膜透析溶液への添加剤として使用されること(特許文献1:特表2000−516836(WO98/52599))が知られているが、今までにナトリウム利尿ペプチドが、腹膜線維化に対して実際に生体内において抑制作用を有することについては報告されておらず、少なくとも本願発明者らは当該報告の存在を知らない。
Chinkers M,et al.,Nature,338;78−83,1989 Rosenzweig A,and Seidman CE,Annu.Rev.Biochem.,60:229−255,1991 Ogawa Y,et al.,J.Clin.Invest.,93:1911−1921,1994 Komatsu Y,et al.,Endocrinology,129:1104−1106,1991 Chinkers M and Garbers DL,Annu.Rev.Biochem.,60:553−575,1991 Suzuki T,et al.,Cardiovasc.Res.,51:489−494,2001 Mukoyama M,et al.,J.Clin.Invest.,87:1402−1412,1991 Calderone A,et al.,J.Clin.Invest.,101:812−818,1998 Suganami T,et al.,J.Am.Soc.Nephrol.,12:2652−2663,2001
即ち、本発明は以下の事項に関する。
(1)ナトリウム利尿ペプチド又は薬学的に許容されるその塩を有効成分として含有する、腹膜線維化抑制用医薬組成物。
(2)ナトリウム利尿ペプチドが、心房性ナトリウム利尿ペプチドである上記(1)に記載の医薬組成物。
(3)心房性ナトリウム利尿ペプチドが、ヒト由来である上記(2)に記載の医薬組成物。
(4)ナトリウム利尿ペプチドを有効成分として1日当り0.1μg/kg〜100mg/kg投与するための上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(5)ナトリウム利尿ペプチド又は薬学的に許容されるその塩を個体に投与することを特徴とする、腹膜維化症の治療方法。
(6)ナトリウム利尿ペプチドが、心房性ナトリウム利尿ペプチドである上記(5)に記載の治療方法。
(7)心房性ナトリウム利尿ペプチドが、ヒト由来である上記(6)に記載の治療方法。
(8)ナトリウム利尿ペプチドを有効成分として1日当り0.1μg/kg〜100mg/kg投与する上記(5)〜(7)のいずれか1項に記載の治療方法。
(9)ナトリウム利尿ペプチドは又は薬学的に許容されるその塩の、腹膜線維化抑制用医薬組成物の製造のための使用。
(10)ナトリウム利尿ペプチドが、心房性ナトリウム利尿ペプチドである上記(9)に記載の使用。
(11)心房性ナトリウム利尿ペプチドが、ヒト由来である上記(10)に記載の使用。
(12)医薬組成物が、ナトリウム利尿ペプチドを有効成分として含有し、1日当り0.1μg/kg〜100mg/kg投与するための組成物である上記(9)〜(11)のいずれか1項に記載の使用。
(13)腹膜線維化を抑制するための、ナトリウム利尿ペプチドは又は薬学的に許容されるその塩。
(14)ナトリウム利尿ペプチドが、心房性ナトリウム利尿ペプチドである、上記(13)に記載のナトリウム利尿ペプチドは又は薬学的に許容されるその塩。
(15)心房性ナトリウム利尿ペプチドが、ヒト由来である上記(14)に記載のナトリウム利尿ペプチドは又は薬学的に許容されるその塩。
(16)1日当り0.1μg/kg〜100mg/kgのナトリウム利尿ペプチド投与するための、上記(13)〜(15)のいずれか1項に記載のナトリウム利尿ペプチドは又は薬学的に許容されるその塩。
本発明に係るナトリウム利尿ペプチドを有効成分とする腹膜線維化抑制用医薬組成物は、生体内において腹膜線維化を抑制するという格別な効果を奏するものである。腹膜維化の抑制により腹膜線維症の治療を行うことができる可能性が高まった。
図2は、腹膜擦過により誘発した腹膜線維症モデルラットの病理学的所見を示す図である。各図は、対照(擦過なし)、擦過3日後(day3)、7日後(day7)、14日後(day14)の典型的な1例の組織染色像を示す。上段:マッソン・トリクロム染色、膠原線維が青く染色される、中段:ED−1染色、マクロファージの浸潤を示す、下段:α−SMA染色、活性化された線維芽細胞が染色される。マクロファージの浸潤はday3がピークとなり、その後day7、day14に線維化が進展することが示される。
図3は、腹膜擦過により誘発した腹膜線維症モデルラットの腹膜における利尿ペプチド受容体−A(NPR−A)の遺伝子発現を示す図である。各値は、対照(擦過なし)、擦過3日後(day3)、7日後(day7)、14日後(day14)におけるNPR−A mRNAの18s rRNA発現に対する相対的発現量を、対照の発現量を1として示した図である。各群5例の平均値±標準誤差を表す。対照群の腹膜においてもANP受容体の発現が認められるが、腹膜擦過後その発現が増加することが示される。
図4は、腹膜擦過により誘発した腹膜線維症モデルラットにおけるANPの腹膜肥厚抑制作用を示す図である。ANPは腹膜擦過3日前より0.15または0.30μg/minの用量で持続静脈内投与した。図4Aは評価法を示す。図4BおよびCは、近位側(正中部)(図4B)、遠位側(側腹部)(図4C)の腹膜肥厚度の平均値±標準誤差(対照群およびANP非投与群各12例、h−ANP投与群各7例)をそれぞれ表す。*p<0.01,**p<0.001,h−ANP投与群と非投与群に対する一元配置分散分析(ANOVA)検定による比較。
図5は、腹膜擦過により誘発した腹膜線維症モデルラットにおけるANPのIII型コラーゲン沈着に対する作用を示す図である。図5Bにおける値は、h−ANP非投与群(非投与群)、及びANP0.30μg/min投与群(h−ANP投与群)の平均値±標準誤差(μm2×103)(非投与群12例、h−ANP投与群7例)を示す。h−ANP投与群と非投与群の有意差は一元配置分散分析(ANOVA)法で検討した。
図6は、腹膜擦過により誘発した腹膜線維症モデルラットにおけるANPのTGF−β発現に対する作用を示す図である。図6Bにおける値は、各個体のTGF−β発現度を半定量的にグレード0〜3で判定し、h−ANP非投与群(非投与群)及びANP0.30μg/min投与群(h−ANP投与群)の平均値±標準誤差(非投与群12例、h−ANP投与群7例)を示す。h−ANP投与群と非投与群の有意差は一元配置分散分析(ANOVA)法で検討した。
図7は、腹膜擦過により誘発した腹膜線維症モデルラットにおけるANPのマクロファージ浸潤に対する作用を示す図である。図7Bにおける値は、h−ANP非投与群(非投与群))、及びANP0.30μg/min投与群(h−ANP投与群)における、中皮下緻密層(submesothelial compact zone)内の細胞数の平均値±標準誤差(非投与群12例、h−ANP投与群7例)を示す。h−ANP投与群と非投与群の有意差は一元配置分散分析(ANOVA)法で検討した。
図8は、腹膜擦過により誘発した腹膜線維症モデルラットにおけるANPの血管新生に対する作用を示す図である。図8Bにおける値は、h−ANP非投与群(非投与群)及び0.30μg/min投与群(h−ANP投与群)における、中皮下緻密層(submesothelial compact zone)内の血管数の平均値±標準誤差(非投与群12例、h−ANP投与群7例)を示す。h−ANP投与群と非投与群の有意差は一元配置分散分析(ANOVA)法で検討した。
図9は、腹膜擦過により誘発した腹膜線維症モデルラットにおけるANPのCTGF mRNA発現に対する作用を示す図である。値は、対照(腹膜擦過なし)、h−ANP非投与群(非投与群)及びh−ANP0.30μg/min投与群(h−ANP投与群)の平均値±標準誤差(対照6例、非投与群7例、h−ANP投与群7例)を示す。非投与群に対する有意差を一元配置分散分析(ANOVA)法で検討した。
そこで、ナトリウム利尿ペプチドが腹膜における線維化についても抑制作用を有するか否かについて検討したところ、腹膜組織に利尿ペプチド受容体−A(NPR−A)が発現し、その発現が腹膜線維症発症時に増加すること、及びナトリウム利尿ペプチドの持続投与が腹膜線維化を抑制することが本発明により初めて明らかにされた。
本発明では、腹膜線維症の動物モデルに対してナトリウム利尿ペプチドを投与することにより、腹膜の線維化を抑制されることを見いだした。当該モデルは、腹膜に滅菌チューブにより機械的に擦過して物理的刺激を加えることにより、初期に強い炎症が生じて線維化が進展することから、急性炎症(例えば、腹膜炎)により惹起される線維化進展モデルである。
本発明に係る医薬組成物の有効成分として用い得る物質は、ナトリウム利尿ペプチドが好ましく、例えば心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)及び脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)等が挙げられるが、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)が好ましい。
本発明におけるANPとしては、28個のアミノ酸よりなるヒト由来ANP(SLRRSSCFGG RMDRIGAQSG LGCNSFRY:SEQ ID NO:1)、ラット由来ANP(SLRRSSCFGG RIDRIGAQSG LGCNSFRY:SEQ ID NO:3)など、ナトリウム利尿ペプチド受容体であるNPR−Aを介してcGMP産生を亢進し得る特性を有するものを用いることができる。本発明に係る有効成分のこれらのペプチドは、NPR−Aを介してcGMP産生を亢進し得る特性を発揮するため、少なくとも当該ANPのリング構造(例えば、ヒトANPのアミノ酸配列の場合には、SEQ ID NO:1の7位Cysと23位Cysとに基づくジスルフィド結合の形成に基づくリング構造)とリング構造に続くC末端部とを有するペプチド(すなわち、ヒトANPの場合にはSEQ ID NO:1の7−28位に相当するSEQ ID NO:2)であればよい。その様な構造的特徴を有するペプチドとしては、例えば、SEQ ID NO:1に記載するANPそのもの、またはその部分アミノ酸配列を有するペプチドであって上記ヒトANPの7−28位のアミノ酸からなるペプチドを内包するペプチド、例えば上記ヒトANPの7−28位のアミノ酸からなるペプチド(SEQ ID NO:2)そのもの、を挙げることができる。
本発明におけるBNPとしては、32個のアミノ酸よりなるヒト由来BNP(SPKMVQGSGC FGRKMDRISS SSGLGCKVLR RH:SEQ ID NO:4)、ブタ由来BNP(SPKTMRDSGC FGRRLDRIGS LSGLGCNVLR RY:SEQ ID NO:6)、ラット由来BNP(SQDSAFRIQE RLRNSKMAHS SSCFGQKIDR IGAVSRLGCD GLRLF:SEQ ID NO:7)など、ナトリウム利尿ペプチド受容体であるNPR−Aを介してcGMP産生を亢進し得る特性を有するものを用いることができる。本発明に係る有効成分のこれらのペプチドは、NPR−Aを介してcGMP産生を亢進し得る特性を発揮するため、少なくとも当該BNPのリング構造(例えば、ヒトBNPのアミノ酸配列の場合には、SEQ ID NO:4の10位Cysと26位Cysとに基づくジスルフィド結合の形成に基づくリング構造)とリング構造に続くC末端部とを有するペプチド(すなわち、ヒトBNPの場合にはSEQ ID NO:4の10−32位に相当するSEQ ID NO:5)であればよい。その様な構造的特徴を有するペプチドとしては、例えば、SEQ ID NO:4に記載するBNPそのもの、またはその部分アミノ酸配列を有するペプチドであって上記ヒトBNPの10−32位のアミノ酸からなるペプチドを内包するペプチド、例えば上記ヒトBNPの10−32位のアミノ酸からなるペプチド(SEQ ID NO:5)そのもの、を挙げることができる。
更に、本発明に係るナトリウム利尿ペプチドとしては、天然から純粋に単離・精製されたもの、または化学合成法もしくは遺伝子組換え法により製造されたものであってもよく、例えば上記物質(ANP等)に係るアミノ酸配列に基づき、当業者であれば適宜公知の方法により、当該配列中のアミノ酸残基を少なくとも一つ以上、例えば一つ又は数個のアミノ酸を欠失、置換、付加及び/又は挿入等の修飾を施すことにより得ることができ、何れかの方法により得られた物質がNPR−Aに作用してcGMP産生を亢進し得る物質であれば何れも用いることができる。
得られた物質がNPR−Aに作用してcGMP産生を亢進し得るか否かについては、当業者であれば従来の方法により容易に測定を実施することができる。具体的には、NPR−A(Chinkers M,et al.,Nature 338;78−83,1989)を強制発現させた培養細胞に物質を添加し、cGMP産生能を評価することで可能である。
本発明に係る医薬組成物の有効成分として用い得る物質は、上述したナトリウム利尿ペプチド受容体であるNPR−Aを介してcGMP産生を亢進し得る特性を有する物質の薬学的に許容される塩、好ましくはナトリウム利尿ペプチドの薬学的に許容される塩であってもよい。すなわち、本発明においては、上述した物質の、無機酸、例えば塩酸、硫酸、リン酸、または有機酸、例えばギ酸、酢酸、酪酸、コハク酸、クエン酸等の酸付加塩を、有効成分として使用することもできる。あるいは、本発明においては、上述した物質の、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム等の金属塩、有機塩基による塩の形態を有効成分として使用することもできる。また、本発明に係る医薬組成物は、その有効成分に係る物質の遊離形としても、またはその医薬的に許容し得る塩であってもよい。
本発明の上述した組成物を個体に投与することにより、腹膜へのIII型コラーゲンの沈着面積、腹膜でのTGF−βの発現、腹膜のマクロファージ浸潤、そして腹膜への血管新生を、いずれも有意に抑制し、そしてその結果、腹膜の線維化を抑制することができる。このように腹膜の線維化を抑制することができることから、腹膜透析により惹起される腹膜線維化を抑制することも可能になる。
本発明に係る医薬組成物の有効成分として用い得る物質またはその薬理学的に許容し得る塩は、公知の薬理学的に許容し得る担体、賦形剤、希釈剤などと混合して医薬に一般に使用されている投与方法、即ち経口投与方法、または静脈内投与、筋肉内投与もしくは皮下投与等の非経口投与方法によって個体に投与するのが好ましい。
有効成分がペプチド性物質の場合、消化管内で分解を受けにくい製剤、例えば活性成分であるペプチドをリボゾーム中に包容したマイクロカプセル剤として経口投与することも可能である。また、直腸、鼻内、舌下などの消化管以外の粘膜から吸収せしめる投与方法も可能である。この場合は坐剤、点鼻スプレー、舌下錠といった形態で個体に投与することができる。
本発明に係る医薬組成物の有効成分として用い得る物質の投与量は、疾患の種類、個体(患者)の年齢、体重、症状の程度および投与経路などによっても異なるが、一般的に1日当り0.1μg/kg〜100mg/kgの範囲で投与することができ、0.5μg/kg〜50mg/kgで投与するのが好ましく、更に1μg/kg〜1mg/kgで投与するのが好ましい。
本発明に係る医薬組成物の投与頻度は、使用する有効成分、投与経路、および処置する特定の疾患に依存しても変動する。例えばナトリウム利尿ペプチドを経口投与する場合、一日当たり4回以下の投与回数で処方することが好ましく、また非経口投与、例えば静脈内投与する場合にはインフュージョンポンプを利用して持続的に投与することが好ましい。
更に、本発明において好ましい投与形態の例としては、例えば、静脈投与により持続的に投与する場合、腹膜において腹膜炎等による急性炎症が生じた直後から数日間(例えば3〜7日間程度)に0.001〜0.5μg/kg/min(例えば、0.025μg/kg/min)で投与することが挙げられ、この場合の1日当りの投与量の範囲は1.44〜720μg/kg(例えば、36μg/kg)となる。
参考例 培養線維芽細胞におけるナトリウム利尿ペプチド受容体発現、及びナトリウム利尿ペプチドの線維化抑制効果
上述のように、従来技術においては、ナトリウム利尿ペプチドが心臓や腎臓において線維化抑制作用を有することが報告されているが、本発明においては、腹膜組織にNPR−Aが発現し、その発現が腹膜線維症発症時に増加すること、ナトリウム利尿ペプチドの持続投与が腹膜線維化を抑制することを初めて明らかにした。
このようなナトリウム利尿ペプチドの抗線維化作用が、いずれの線維芽細胞においても認められるものかを確認するために、ラット腎臓由来の線維芽細胞株であるNRK49F細胞(American Type Culture Collection,USA)、及びラット胎児(全身組織)由来の線維芽細胞株である3Y1細胞(理研Cell Bank,日本)を培養し、NPR−Aの発現をリアルタイムPCR法で検討した。NPR−A mRNA発現は、Applied Biosystem社のTaqMan(登録商標)リアルタイムPCR法で解析した。即ち、NRK49F細胞、及び3Y1細胞由来の全RNAを単離し、cDNA合成後、フォワードプライマーおよびリバースプライマーを使用してNPR−A配列を増幅し、18S rRNAを内部対照として使用して、Applied Biosystem社のマニュアル中で記載された方法に従って、遺伝子発現の比定量を行った。18S rRNAは、フォワードプライマーおよびリバースプライマーを使用して増幅した。リアルタイムPCR用のプライマーおよびプローブのセットはApplied Biosystems社より購入した(TaqMan(登録商標)Gene Expression Assay、18sリボソームRNA;Code No.4326317E、ラットNPR−A;Code No.Rn00561678_m1)。
この結果、3Y1細胞ではNPR−A mRNAの発現が認められたが、NRK49F細胞では認められなかった。
次に、3Y1細胞を用いて、ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の線維化反応に対する作用を検討した。線維化反応の指標として、TGF−β添加時のプラスミノーゲン活性化因子阻害因子−1(PAI−1)mRNA発現を指標とした。即ち、3Y1細胞を培養し、サブコンフルエントになった後、血清を除去し、TGF−β(5ng/mL、R&D systems、USA)を添加して24時間培養した。24時間後に細胞を回収し、トータルRNAを抽出し、フォワードプライマーおよびリバースプライマーを使用して、TaqMan PCR法にてPAI−1 mRNA発現を解析した。プライマーおよびプローブのセットにはApplied Biomedical社の遺伝子発現アッセイプローブNo.Rn00561717_m1(TaqMan(登録商標)Gene Expression Assay)を用い、18s rRNAを対照として解析した。
この結果、TGF−βの添加によりPAI−1遺伝子の発現が増加し、線維化反応が惹起されたが、ANP(1μM)をTGF−βと同時に添加しても、この発現は抑制されなかった(図1)。
これらの結果から、ナトリウム利尿ペプチドの線維化抑制作用は、普遍的なものではなく、その受容体の発現や、受容体結合後のシグナル伝達や機能は、組織や刺激により異なることが示唆される。
実施例1 腹膜線維症モデル動物でのナトリウム利尿ペプチド受容体の発現
腹膜線維症の発症には、尿毒症状態や腹膜透析液曝露による慢性炎症に加え、急性腹膜炎による増悪が関与すると考えられており、腹膜中皮細胞の障害と共に線維化が進む機序が考えられる。そこで、本実施例においては、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の腹膜線維化に対する作用を、腹膜擦過により誘発したラット腹膜線維症モデル(Mizuno M,et al.,J.Am.Soc.Nephrol.,17:755A,2006)を用いて組織学的に検討した。次に、本腹膜線維症モデルの腹膜組織におけるナトリウム利尿ペプチド受容体(NPR−A)の発現をリアルタイムPCR法で解析した。
実験には、7週齢のSprague−Dawley系雄性ラット(中部科学資材、日本)を用いた。エーテル麻酔下にてラットの腹部を正中切開した。右側の壁側腹膜を、滅菌ポリプロピレン製遠心チューブ(TPP、Switzerland)を用いて広範に60秒間擦過して腹膜中皮細胞を剥離した後、閉腹することにより、腹膜線維症モデルを作製した。
中皮細胞の剥離前、及び3、7、14日後に、腹膜の病理組織学的検査、及び免疫染色を行い、腹膜線維化、マクロファージの集積、線維芽細胞の発現を、マッソン・トリクロム染色、抗ED−1抗体、及び、抗α−平滑筋アクチン(smooth muscle actin;α−SMA)抗体を用いた免疫染色により検討した。即ち、ラットの腹膜部を採取し、10%中性ホルマリン溶液中で16時間固定し、パラフィン包埋処理を行った。病理組織解析のために、4μm厚の組織を用いて、マッソン・トリクロム染色を行った。また、2μm厚の凍結組織切片をアセトンで室温にて10分間処理して固定し、抗ED−1抗体(マウス抗−ラット単球/マクロファージ抗体(mouse anti−rat monocytes/macrophages antibody;BMA Biomedicals SG,Switzerland)とインキュベートし、その後FITC標識抗マウスIgG抗体(FITC−labeled goat anti−mouse IgG antibody,Cappel Laboratory,USA)を二次抗体として用いて、FITCの蛍光を検出した。α−SMAの免疫組織化学的検出はペルオキシダーゼ間接標識法により行った。内因性ペルオキシダーゼ活性を阻害するために、2μm厚の凍結組織切片を0.1%アジ化ナトリウムと0.3%過酸化水素水で処理し、また、非特異的なタンパク質結合を阻害するために、正常ヤギ血清で処理した後、抗α−SMAモノクローナル抗体(mAb 1A4,Dako Japan)、とともにインキュベートした。その後、ヤギ抗マウスIgGポリクローナル抗体、またはヤギ抗ウサギIgGポリクローナル抗体と、西洋ワサビペルオキシダーゼ、及びデキストラン骨格の複合物(EnVIsionTMsystem,Dako Japan)で処理して発色させた。
図2に腹膜擦過モデルの経時的病理学的所見を示した。
擦過前のラットでは、腹膜を中皮細胞が覆い、マッソン・トリクロム染色で青く染色される膠原線維成分や、ED−1抗体で染色されるマクロファージの集積、α−SMAで染色される活性化線維芽細胞は認められなかった。
一方、擦過後は中皮細胞が脱落し、3日後にはED−1の強染色、即ち、マクロファージの集積が見られ、α−SMA陽性細胞の出現もみられた。7、14日後にはマッソン・トリクロム染色、及びα−SMA陽性細胞が増加した。このことから、本モデルでは、擦過により炎症が発生し、その後線維化が進展することが示唆された。
また、NPR−A mRNA発現を、参考例と同様に、Applied Biosystem社のTaqMan(登録商標)リアルタイムPCR法で解析した。即ち、ラット腹膜由来の全RNAを単離し、cDNA合成後、18S rRNAを内部対照として使用して、Applied Biosystem社のマニュアル中で記載された方法に従って、遺伝子発現の比定量を行った。擦過前に比べて、擦過3、7、14日後の腹膜組織はナトリウム利尿ペプチド受容体であるNPR−A遺伝子発現が2〜3倍に増加した(図3)。
これらより、腹膜擦過により中皮細胞が脱落し、炎症細胞が浸潤した後、腹膜の線維化が進行し、臨床的に、腹膜透析時の腹膜炎のような急性炎症が惹起されることが明らかになり、このモデルが、腹膜において線維化が進展することに類似したモデルであることが示唆された。また、擦過後、ナトリウム利尿ペプチド受容体の発現が腹膜で増加することが初めて明らかとなった。
実施例2 ナトリウム利尿ペプチドの腹膜線維化に対する作用の検討(1)
腹膜擦過誘発線維症モデルの腹膜でナトリウム利尿ペプチド受容体の発現誘導を認めたことから、本実施例においては次に本モデルの腹膜線維化に対するナトリウム利尿ペプチドの効果を検討した。
実験には、7週齢のSprague−Dawley系雄性ラット(中部科学資材、日本)を用いた。薬物は浸透圧ポンプ(alzet(登録商標)osmotic pump,DURECT Corp.,USA)を用いて、頸静脈から17日間持続投与した。即ち、ヒトANP(アスビオファーマ、日本)を0.3または0.15μg/min(約1.0または0.5μg/kg/minに相当)の用量になるように調製し、浸透圧ポンプに充填し、ポンプの先端にポリエチレンカテーテルを接続した。ラットをジエチルエーテル(和光純薬、日本)で麻酔後、頚部正中を切開し、頸静脈にポリエチレンカテーテルを挿入した。ポンプを背部皮内に埋め込み、切開部を縫合してラットに浸透圧ポンプを装着させ、ANPの投与を開始した。対照群には、生理食塩水を投与した。
ANPまたは生理食塩水投与開始3日後に、ジエチルエーテル麻酔下にて腹部を正中切開し、右側の壁側腹膜を、滅菌ポリプロピレン製遠心チューブ(TPP、Switzerland)を用いて広範に60秒間擦過して腹膜中皮細胞を剥離し、閉腹することにより、腹膜線維症を惹起した。
中皮細胞の剥離14日後に、腹膜の病理組織学的検査、免疫染色を行い、ANPの腹膜線維化に対する作用を評価した。線維化の指標として腹膜肥厚度、III型コラーゲン沈着、TGF−β発現を評価項目とし、炎症の指標としてマクロファージの浸潤を評価項目とした。また、線維化が進展した結果として誘導される新生血管数も評価した。
腹膜肥厚度は、実施例1に示したと同様に、腹膜組織をマッソン・トリクロム染色した後、中皮細胞下組織の厚さを任意の6ポイントで測定し(Williams法;Williams JD,et al.,J.Am.Soc.Nephrol.13:470−479,2002)、その平均値を各群で比較した。(図4A)。腹膜肥厚度は、腹部の近位側(正中部)、遠位側(側腹部)共にANPの用量依存的に抑制され、低用量群では近位側の、高用量では両部位の腹膜肥厚を対照群に比べて有意に抑制した(近位側(正中部)および遠位側(側腹部)それぞれについて図4Bおよび図4C)。
次いで、III型コラーゲン沈着、TGF−β発現、マクロファージ浸潤、新生血管数は、それぞれ、抗III型コラーゲン抗体(ウサギ抗III型コラーゲン抗体、LSL,日本)、抗TGF−β抗体(ウサギポリクローナル IgG 抗TGF−β1,2,3抗体、Santa Cruz Biotechnology Inc.CA,USA)、抗ED−1抗体(マウス抗ラット単球/マクロファージ抗体、BMA Biomedicals SG,Switzerland)、抗CD31抗体(マウス抗ラットCD31抗体、BD Bioscience,日本)を用いた免疫染色法で行った。免疫染色法は、実施例1に示したのと同様の方法で実施した。III型コラーゲン沈着、及びTGF−β発現は、顕微鏡下で各切片の任意の6視野を観測し、各個体における発現量とした。また、ED−1陽性細胞、CD−1陽性細胞数は、中皮下緻密層(submesothelial compact zone)内の細胞数を計測し、マクロファージ数、血管数を求めた。
腹膜のIII型コラーゲン沈着面積(μm2×103)は、高用量(0.3μg/min)のヒトANP投与群(h−ANP投与群)では対照群(非投与群)と比べて有意に沈着面積が抑制された(図5AおよびB)。
腹膜のTGF−β発現は、高用量(0.3μg/min)のヒトANP投与群(h−ANP投与群)では対照群(非投与群)と比べて有意に発現量が抑制された(図6AおよびB)。
腹膜のマクロファージ浸潤は、高用量(0.3μg/min)のヒトANP投与群(h−ANP投与群)では対照群(非投与群)と比べて有意に浸潤が抑制された(図7AおよびB)。
腹膜の血管新生は、高用量(0.3μg/min)のヒトANP投与群(h−ANP投与群)では対照群(非投与群)と比べて有意に新生が抑制された(図8AおよびB)。
以上のように、ナトリウム利尿ペプチドの持続投与は、腹膜線維症モデルにおいて、炎症、線維化、血管新生を抑制し、腹膜肥厚・腹膜線維化を抑制することが判明した。このことから、ナトリウム利尿ペプチドは腹膜炎等の急性炎症により惹起、進展する腹膜線維症の予防に有用であることが示された。
実施例3 ナトリウム利尿ペプチドの腹膜線維化に対する作用の検討(2)
ANPの腹膜線維化抑制作用をさらに明確にするために、ANPの腹膜における結合組織増殖因子(connective tissue growth factor;CTGF)mRNA発現に対する効果を検討した。CTGFはTGF−βにより誘導されるタンパク質で、TGF−βの下流で線維化、細胞外マトリックス沈着に働くことが知られている(Leask A,Abraham DJ,FASEB J.,18,816−827,2004)。
実施例2で作製した腹膜線維化モデルを用いて、中皮細胞の剥離14日後に、ラット腹膜組織を採取し、全RNAを単離した。cDNA合成後、Applied Biosystem社のマニュアル中に記載された方法に従って、18S rRNAを内部対照として使用して、CTGF mRNA発現をTaqMan(登録商標)リアルタイムPCR法で解析した。CTGFについてのリアルタイムPCR用のプライマーおよびプローブのセットは、Applied Biosystems社より購入した(TaqMan(登録商標)Gene Expression Assay、ラットCTGF;Code No.Rn00573960_g1)。
腹膜のCTGF mRNA発現は、対照に比べて腹膜線維化を惹起したh−ANP非投与群で著明に上昇したが、h−ANP投与群では、その発現が非投与群と比べて有意に抑制された(図9)。このことから、ANPがTGFβの下流のシグナルにも拮抗し、腹膜線維化を抑制したことが示された。
[配列表]
Claims (3)
- ナトリウム利尿ペプチド又は薬学的に許容されるその塩を有効成分として含有する、腹膜線維化抑制用医薬組成物。
- ナトリウム利尿ペプチドが、心房性ナトリウム利尿ペプチドである請求項1に記載の腹膜線維化抑制用医薬組成物。
- 心房性ナトリウム利尿ペプチドが、ヒト由来である請求項2に記載の腹膜線維化抑制用医薬組成物。
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