図1は本発明の第1の実施の形態に係る液滴光学装置の構成を示す図である。同図の(a)は本実施の形態の液滴光学装置の構成を示す透視斜視図、同図の(b)は本実施の形態の液滴光学装置の構成を示す平面図、同図の(c)は同図の(a)のA−A’線断面図である。同図に示す本実施の形態の液滴光学装置1は、液滴10の外周を支持する液滴支持部11を有している。そして、液滴10の上面と下面は開口しており、液滴10を通る光路と周囲気体以外に介在物は存在しない構成となっている。つまり、液滴10を通る光の入射口と出射口は気体に接する液滴表面となるように、液滴支持部11は液滴10における光路を妨げないように液滴10の外周のみで液滴10を支持している。このような構成を有する本実施の形態の液滴光学装置によれば、液滴の周縁を支え、可変形状の液滴光学デバイスの滑らかな液滴界面の特性を活用することによって歪みの少ない光学特性を有する光学系デバイスを提供することができる。
図2は本発明の第2の実施の形態に係る液滴光学装置の構成を示す図である。同図の(a)は本実施の形態の液滴光学装置の構成を示す平面図、同図の(b)は同図の(a)のB−B’線断面図である。同図において、図1と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図に示す本実施の形態の液滴光学装置2には、Electro Wettingによる液滴形状制御光学デバイスであって液滴10の形状を制御するための電圧を印加する電極12が液滴支持部11の内周に沿って設けられている。このような構成を有する本実施の形態の液滴光学装置によれば、液滴の周縁を支えつつ液滴の形状を制御することによって、可変焦点レンズとなるだけでなく、液滴の滑らかな表面状態により光の伝播に乱れを少なくできる。
図3は本発明の第3の実施の形態に係る液滴光学装置の構成を示す図である。同図の(a)は本実施の形態の液滴光学装置の構成を示す平面図、同図の(b)は同図の(a)のC−C’線断面図である。同図において、図1と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図に示す本実施の形態の液滴光学装置3には、液滴支持部11内の液滴形成エリアに液体を供給したり、排出したりするための液体供給排出路13が設けられている。この液体供給排出路13に、液体タンク(図示せず)から液体ポンプ(図示せず)によって液体タンク内の液体が供給され、液体供給排出路13を介して液滴支持部11内の液滴形成エリアに液体が供給される。また、液滴支持部11内の液滴形成エリアに形成された液滴10自体を他の液体材料に交換する際は液体供給排出路13を介して液滴支持部11内の液滴形成エリアから液体が排出される。このような構成を有する本実施の形態の液滴光学装置によれば、気体を凝集させることなく液体を供給して保持することができるため凝集させる電力や時間を要せず、かつ気体の種類の制限がなくより多くの液滴を形成できると共に、一旦形成した液滴を再利用して任意の液滴を形成することができるため利用効率を向上することができる。また、気相に接する液滴材料であるため、蒸発しない性質の液滴材料が有用であり、イオン液体が適するが、一方気体を凝集できないことになるので、その場合でも液滴形成エリアに液体が供給できる。
図4は本発明の第4の実施の形態に係る液滴光学装置の構成を示す断面図である。同図において、図2と同じ参照符号は同じ構成要件を示す。同図に示す本実施の形態の液滴光学装置4は、固定の光の媒質を有する固定レンズ基材14の表面を液体膜15で被覆したものである。また、液体膜15はElectro Wettingによって形状制御される。よって、固体レンズなどの固体光学材料の表面が滑らかとなる。ここで、液体膜だけでは所定の屈折率が得にくい場合、例えば液滴の屈折率より大きく、固体レンズの厚みを増やさずにしたい場合は、屈折率の大きい固体レンズ基材14を介して液体膜15で被覆する。この場合、固定レンズ基材14と液体膜15の屈折率が近い値であるほど、固体レンズ基材14の表面凹凸による光の乱れは少なくなるので、表面凹凸量と液体膜15で被覆することによる修復効果を適宜見定めた上で液体膜の材料と固体レンズ基材の材料を選択するほうがよい。また、複雑な非球面形状や表面粗さがある状態を滑らかに修復でき、可変焦点範囲の可変幅が小さいものなどに簡便に適用できる。
図5は本発明の第5の実施の形態に係る液滴光学装置の構成を示す図である。同図の(a)は同図の(b)のE−E’線断面図、同図の(b)は同図の(a)のD−D’線断面図である。同図に示す本実施の形態の液滴光学装置5によれば、ガラス基板16上に、貫通孔構造の液滴形成エリア17を取り囲むように液滴形成管18が設けられ、更にはP型半導体19とN型半導体20を円周方向に沿って交互に配置されている。また、各P型半導体19の一端と各N型半導体20の一端の間には、放熱器21がそれぞれ設けられると共に、各P型半導体19の他端と各N型半導体20の他端の間には、冷却器22がそれぞれ設けられている。これらのP型半導体19、N型半導体20、放熱器21及び冷却器22を含んで熱電交換器23を構成している。また、始端となるP型半導体19と末端となるN型半導体20の間には、電圧を印加するための電力供給線24が設けられている。このように、液滴形成管18の周囲には、温度可変手段として、熱電変換器23の冷却器22を集合させ、外側に放熱器21を分散配置している。なお、P型半導体19及びN型半導体20はBi-Te等の熱電変換材料、放熱器21及び冷却器22は、Al、Au、Cu、Ni等の電極材料からなる。
次に、図5に示すような構成を有する本実施の形態の液滴光学装置において液滴を形成する様子を図6に従って以下に説明する。先ず、凝集させる周辺の気体の種類、温度、密度を測定して予め露点及び液滴の液量や成長時間に応じて、温度可変手段としての冷却器22の運転時間を算出し、同図の(a),(b)に示すように、算出した運転時間だけ冷却器22を運転することによって液滴形成管18の管壁を算出した露点以下に冷却する。すると、付近の気体が液滴形成管18の管壁に凝集し始め、そして液滴10になり始める。同図の(c),(d)に示すように、更に液滴10は液滴形成管18内の液滴形成エリア17全体に成長し、光の入射口と出射口を有する液滴光学デバイスが形成される。必要に応じて冷却器22を運転して液滴温度を制御することで液滴を制御する。このように本実施の形態の液滴光学装置によれば、液滴光学デバイスとして、光学材料の液滴を所定箇所へ所定量、所定形状に正確に形成することができる。また、所定箇所に保持させ、量を調節し、形状を変化させ、保持箇所を移動させ、液滴材料の種類をできるだけ多く、さらに液滴の温度制御をさせること、及びこれらの機能を効率良く制御することによって、より多様な可変光学デバイスに用いることができる。
また、所定の光学的な透過特性や反射特性を持つ液滴材料および液滴支持基材を適用する。更に、温度可変手段として、熱電変換器のP型半導体及びN型半導体からなるペルチェ素子を示しているが、ヒートパイプにより温度制御することでもできる。また、温度可変手段としての冷却手段は最終段階で分離した状態を示しているが、液滴の形状を形成後さらに調節する場合は接続した状態で形状制御に用いる。液滴支持基材は、熱伝導率が大きいと迅速に面内温度分布が均一化するので、温度分布が均一にならないように、熱伝導率が小さいことが必要であり、例えば電気絶縁性が高い材料や気体(空間)を多く含む多孔質構造材料が適している。液滴支持基材表面に液滴との親和性や親水性を付与することによって、表面の所定の箇所に液滴を形成する場合には、マイクロスタンピングによるSAMs技術のように表面の所定の箇所に限定させる必要がなく、基材表面全面に、界面活性剤の塗布やプラズマ改質などにより、親水性付与しても表面の所定の箇所に液滴を形成させることができるし、液滴の形成効率を上げることができる。
ここで、熱電変換材料、例えばペルチェ効果を利用するものであればBiTeを主成分(Bi、Sb、In、Ga、Se、Te等を置換・添加)とするものが代表的である。N型SiおよびP型Siを使うこともでき、高性能の材料を見出すには、熱伝導率が小さいこと、また導電性が良いことなどの必要性能指数の高い材料が好ましいが、プロセス適合性や安定性能との適正により選択される。
図7は本発明の第6の実施の形態に係る液滴光学装置の構成を示す概略断面図である。同図において、図5と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図に示す本実施の形態の液滴光学装置6において、第5の実施の形態の液滴光学装置5と異なる構成として、液滴形成管18と、P型半導体19、N型半導体20、放熱器21及び冷却器22を有する熱電交換器23とをテーパー形状とし、かつ開口部を広くすることで、貫通孔構造の液滴形成エリア17を円錐形状に形成している。同図の(b)に示すように、開口率を上げ、かつ液滴形成管18の管壁同士の一部の間隔が狭くなることで、光の入射口と出射口を有する液滴10をより早く形成することができる。なお、温度可変手段としての冷却器22が接する液滴形成管18の表面を、光路を含む角柱面、角錐面、円柱面、円錐面、ボビン(バレル)型面、中絞り(逆バレル)型面、または自由曲面にすることでもよい。
図8は本発明の第7の実施の形態に係る液滴光学装置の構成を示す断面図である。同図において、図5と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図に示す本実施の形態の液滴光学装置7は、例えば上述の第5の実施の形態の液滴光学装置を多段(本実施の形態では3段)に設けたものである。同図の(a)において、2段目の液滴光学装置25−2の冷却器によって冷却を開始すると液滴10が形成し始め、同図の(b)に示すように光の入射口と出射口を有する所望のサイズの凸形状の液滴10が形成される。また、同図の(c)に示すように、1段目の液滴光学装置25−1の冷却器と3段目の液滴光学装置25−3の冷却器によって冷却を行って光の入射口と出射口を有する所望のサイズの凹形状の液滴10も形成できる。更に、同図の(d)に示すように、2段目の液滴光学装置25−2の冷却器よりも3段目の液滴光学装置25−3の冷却器の温度を降下させて、同図の(b)に示す液滴10の位置から、液滴10を液滴光学装置25−3の位置まで移動することができる。このように、多段構造の各液滴光学装置の冷却器を温度制御することにより、液滴の形状制御や位置の移動を行うことができる。
図9は本発明の第8の実施の形態に係る液滴光学装置の構成を示す断面図である。同図において、図5と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図の(a)に示す本実施の形態の液滴光学装置8は、例えば上述の第5の実施の形態の液滴光学装置における電力供給線24を全ての熱電交換器23のP型半導体19とN型半導体20にそれぞれ設けている。そして、同図の(b)に示す本実施の形態の液滴光学装置は、第8の実施の形態の液滴光学装置を多段(本実施の形態では3段)に設けたものである。このように各熱電交換器23にそれぞれ電力供給線24を設けたこと、そして多段構造を成すことにより、円環状に配置された熱電交換器の冷却器を個々に制御できる。よって、同図の(b)に示すように、光の入射口と出射口を有する液滴10の光軸を傾けたり中心の軸位置を移動させたりすることができる。なお、同図の(c)は液滴形成エリアのボビン(バレル)型面に沿って多段(ここでは6段)に第8の実施の形態の液滴光学装置25−1〜25−6を設けた例であり、同図の(d)は液滴形成エリアの円錐面に沿って多段(ここでは3段)に第8の実施の形態の液滴光学装置25−1〜25−3を設けた例である。同図の(c)、(d)に示すいずれの例の場合でも、熱電交換器の冷却器を個々に温度制御することによって、光の入射口と出射口を有する液滴10の光軸を傾けることができる。
図10は本発明の第9の実施の形態に係る液滴光学装置の構成を示す断面図である。同図において、図4及び図5と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図に示す本実施の形態の液滴光学装置9は、固定の光の媒質を有する固定プリズム基材26を液低形成エリア17内に設置し、固定プリズム基材26の表面を液体膜15で被覆したものである。光路は固定のプリズム基材26内を透過するが、光の入出射口は固体の光媒体を覆う滑らかな液滴表面となる。
図11は本発明の第10の実施の形態に係る液滴光学装置の構成を示す断面図である。同図において、図5と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図に示す本実施の形態の液滴光学装置50は、P型半導体19、N型半導体20、放熱器21及び冷却器22を有する熱電交換器23を底面に設け、装置全体の厚さを薄くしている。
図12は本発明の第11の実施の形態に係る液滴光学装置の構成を示す図である。同図の(a)は同図の(b)のG−G’線断面図、同図の(b)は同図の(a)のF−F’線断面図である。同図において、図7と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図に示す本実施の形態の液滴光学装置60には、液滴形成エリア17に連通する液滴部材供給排出路27が設けられている。この液滴部材供給排出路27は、液滴形成エリア17に外部から液滴を形成するための液体や気体を導入したり排出したりする供給排出路である。このような構成を有する第11の実施の形態の液滴光学装置60によれば、液滴部材供給排出路27を介して液滴を形成するため液体又は気体が液滴形成エリア17に供給され、液滴を形成するため液体又は気体が熱電交換器の冷却器によって凝集され、所望の液滴10が形成できる。他の液滴を形成するため液体又は気体を交換するときは、液滴部材供給排出路27を介して液滴形成エリア17内から液滴を外部に排出し、他の液体又は気体を供給する。また、形成されている液滴10の形状又はサイズを変えるときは、液滴部材供給排出路27を介して液滴形成エリア17へ気体又は液体を更に供給したり排出したりする。このように、一旦形成した液滴を再利用して任意の液滴を形成することができ、利用効率を向上することができる。また、気相に接する液滴材料であるため、蒸発しない性質の液滴材料が有用であり、イオン液体が利用できるが、一方気体を凝集できないことになるので、その場合でも液滴形成エリアに液体が供給でき、かつ温度制御できる。イオン液体としては、陽イオンの、イミダゾリウム系、ピリジウム系、脂環式アミン系、脂肪族アミン系、脂肪族ホスホニウム系と、陰イオンの、BF4 −、PF6 −等の無機イオン系、CF3SO2 −、(CF3SO2)2N−、CF3CO2 −等のフッ素系陰イオンとの組合せ他様々な構造からなっている常温溶融塩である。
図13は本発明の第12の実施の形態に係る液滴光学装置の構成を示す断面図である。同図において、図11と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図に示す本実施の形態の液滴光学装置70は、第10の実施の形態の液滴光学装置50の構成に、更に制御電極28を配置したElectro Wettingによる液滴形状制御機構を付加したものである。このような構成を有する本実施の形態の液滴光学装置によれば、液滴の周縁を支えつつ、液滴の形状を制御することによって、可変焦点レンズとなるだけでなく、液滴の滑らかな表面状態により光の伝播に乱れを少なくできる。
図14は本発明の第13の実施の形態に係る液滴光学装置の構成を示す断面図である。同図に示す本実施の形態の液滴光学装置80は、図5に示すような液滴光学装置80−1に光の入射口と出射口を有する凹レンズの液滴10を、液滴光学装置80−2に光の入射口と出射口を有する凸レンズの液滴10をそれぞれ形成し、各液滴光学装置80−1,80−2をスタックして組合せレンズを構成したものである。また、図15に示す本発明の第14の実施の形態に係る液滴光学装置90は、図5に示すような液滴光学装置80−1に絞りとなる液滴29を、また液滴光学装置80−2に光の入射口と出射口を有する凸レンズの液滴10をそれぞれ形成し、各液滴光学装置80−1,80−2をスタックして組合せレンズを構成したものである。
図16は本発明の第15の実施の形態に係る液滴光学装置の構成を示す断面図である。同図において、図4及び図5と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図に示す本実施の形態の液滴光学装置100は、図5に示す第5の実施の形態の液滴光学装置5の構成を有し、かつ固体レンズ基材14の表面を液体膜15で被膜したものである。本実施の形態によれば、液滴だけでは所定の屈折率が得にくい場合、例えば液滴の屈折率より大きく、レンズの厚みを増やさずにしたい場合、屈折率の大きい固体レンズ基材14を介して液体膜15で被覆する。この場合、固体レンズ基材14と液体膜15の屈折率が近い値であるほど、固体レンズ基材14の表面凹凸による光の乱れは少なくなるので、表面凹凸を液体膜で被覆することによる修復効果を適宜見定めて、液体膜材料と固体レンズ材料を選択するとよい。また、複雑な非球面形状や表面粗さがある状態をなめらかに修復でき、精密な研磨加工を低減できる。
図17は本発明の第16の実施の形態に係る液滴光学装置の構成を示す断面図である。同図において、図16と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図に示す本実施の形態の液滴光学装置110は、図5に示す第5の実施の形態の液滴光学装置5の構成を有し、かつ平板透明固体基材30の表面を液体膜15で被膜したものである。よって、本実施の形態によれば、厚いレンズを任意の曲率で形成したい場合で、少量の液滴で迅速な形状制御が可能である。固体基材を平滑にすると同時に可変焦点範囲の可変幅が大きいものなどに簡便に適用できる。
図18は本発明の第17の実施の形態に係る液滴光学装置の構成を示す断面図である。同図において、図7と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図に示す本実施の形態の液滴光学装置120によれば、先ず逆角錐(逆台形)の斜面に配置した冷却器22の内側の液滴形成エリアに、1層目の液滴膜31を凝集、液滴を形成させる。その後、1層目の液滴膜31の上に、1層目と混ざり合わない2層目の液滴膜32を凝集、液滴を形成させる。1層目と2層目の界面において表面張力によって滑らかな2層目の液滴膜32の表面が形成でき、プリズム像を生成させる。そして、入射光が平面の液滴に入射するように、平面形状のメニスカスは、表面張力が小さい液体の、平面領域を用いる。よって、液滴プリズム形状制御と液滴温度制御ができる。このとき、2層目の液滴膜32の温度を上昇させることによって気体にならないよう、1層目の液滴膜31の気化温度より2層目の液滴膜32の気化温度が高いように冷却器22の温度を調整する必要がある。そして、入射光が平面の液滴に入射するように、平面形状のメニスカスは、表面張力が小さい液体の、平面領域を用いる。よって、液滴プリズム形状制御と液滴温度制御ができる。
図19は本発明の第18の実施の形態に係る液滴光学装置の構成を示す断面図である。同図において、図5と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図に示す本実施の形態の液滴光学装置130は、光の入射口と出射口を有する液滴10の内部の温度分布による熱レンズ効果を示す例である。つまり、冷却器22を温度制御することによって、熱レンズ効果が大きく得られるのである。なお、液滴10を通過する光による熱エネルギーにより温度上昇しやすい液滴材料、熱が急速に拡散しないような熱伝導率の小さい液滴材料が好ましい。熱レンズの応用としては熱レンズ顕微鏡等に利用される。
図20は別の発明の第1の実施の形態に係る液滴光学デバイスの構成を示す図である。同図の(a)は本実施の形態の液滴光学デバイスの平面図、同図の(b)は同図の(a)のH−H’線断面図である。同図に示す本実施の形態の液滴光学デバイス200は、比熱の大きい基板201に設けられた空洞部202上に、当該空洞部202と連通する貫通孔203を有する液滴支持層204を設け、液特性を検出するため、あるいは液を制御するための検出用電極205及び検出用電極205からの検出信号を取り出す検出信号線206を配置し集積したものである。また、Electro Wetting材料からなる液滴を用い、液滴の電気容量に対して電極パターンにより静電的に形状制御することができ、光路は貫通孔箇所の液滴207を通過する箇所に設定される。なお、検出用電極205の電極パターンは、光の入射口と出射口を有する液滴207を形状制御するだけでなく、液滴の体積に関する熱容量、温度、熱伝導率や粘性などを検出することができる。また、電極パターンに赤外線を検知する機能を付与し、赤外線集光用液滴レンズを集積した赤外線センサに応用できる。また、電極パターンにLEDやフォトダイオードを形成すれば発光素子や受光素子に応用できる。更に、液晶材料からなる液滴を用い、電極パターンによって制御される液晶光学素子に応用できる。
図21は別の発明の第2の実施の形態に係る液滴光学デバイスの構成を示す図である。同図の(a)は本実施の形態の液滴光学デバイスの平面図、同図の(b)は液滴形成後の本実施の形態の液滴光学デバイスの平面図、同図の(c)は同図の(b)のI−I’線断面図である。同図において、図20と同じ参照符号は同じ構成要件を示す。同図に示す本実施の形態の液滴光学デバイス300は、比熱の大きい基板201の空洞部202上に、当該空洞部202と連通する貫通孔203を有する液滴支持層204を設け、液滴支持層204上に、P型半導体膜208、N型半導体膜209、放熱膜210及び冷却膜211を含んで集積化して構成される熱電交換器212を円環状に配置し、薄膜構造を成している。また、始端となるP型半導体膜208と末端となるN型半導体膜209の間に電圧を印加するための電力供給線213を設けている。このように、円環状の内円に沿って熱電変換器212の冷却膜211が集合配置しているので冷却密度が高くなっている。更に、熱電交換器212の冷却膜211と放熱膜210をつなぐPN部材の間隔を空洞部202によって削除し、冷却膜211周辺の熱容量を低減でき、かつ放熱膜210からの熱伝導を低減できる。一方、放熱膜210は円環状の外円に沿って分散配置し、更には比熱の大きい基板201に接しているので、放熱膜210の放熱効果がより一層高くなっている。このような構成を有する本実施の形態の液滴光学デバイス300によれば、冷却膜211で囲まれた液滴形成管壁を冷却膜211によって冷却し、付近の気体が液滴形成管壁に凝集し光の入射口と出射口を有する所定の液滴207が形成できる。また、迅速に温度制御ができるため、液滴207を早く所定の形状に形成することができ、かつ精細な形状制御も可能となる。また、空洞部202のパターンから液滴支持層204の貫通孔に到る箇所まで基板201をエッチングして空洞部202を形成する。ここで、熱電変換材料、例えばペルチェ効果を利用するものであればBiTeを主成分(Bi、Sb、In、Ga、Se、Te等を置換・添加)とするものが代表的である。N型SiおよびP型Siを使うこともでき、SOI基板を用いSOI層を、熱電変換材料BOX層を液滴支持層とすることができる。高性能の材料を見出すには、熱伝導率が小さいこと、また導電性が良いことなどの必要性能指数の高い材料が好ましいが、プロセス適合性や安定性能との適正により選択される。次に、熱電変換器の電極と冷却器、放熱器の役割をなすAl、Auなどの金属材料をパターン形成する。そして、外部引出し配線電極(ボンディングパッド:図示省略)領域を除き、SiO2、Si3N4やAl2O3等のパッシベーション材料で被覆する。
図22は別の発明の第3の実施の形態に係る液滴光学デバイスの構成を示す図である。同図の(a)は本実施の形態の液滴光学デバイスの平面図、同図の(b)は同図の(a)のJ−J’線断面図である。同図において、図20及び図21と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図に示す本実施の形態の液滴光学デバイス400は、図21に示す第2の実施の形態の液滴光学デバイス300の構成に、更に液特性を検出するため、あるいは液を制御するための検出用電極205及び検出用電極205からの検出信号を取り出す検出信号線206を追加配置し集積したものである。光の入射口と出射口を有する液滴207を冷却膜211により形状制御するだけでなく、検出用電極205によって液膜の体積に関する熱容量、温度、熱伝導率や粘性などを検出すると共に、例えばElectro Wetting材料からなる液膜を用い、この液膜に電荷を与えて液膜を制御することができる。なお、検出用電極205に赤外線を検知する機能を付与し、赤外線集光用液滴レンズを集積した赤外線センサや、電極パターンにLEDやフォトダイオードを形成すれば発光素子や受光素子に応用できる。液晶材料からなる液滴を用い、検出用電極205によって制御される液晶光学素子にもできる。よって、本実施の形態によれば、電極層または電極を併設することにより、温度制御と同時に、より高精度の液滴制御ができる。なお、図23に示すように、周囲雰囲気の気体の種類、温度、密度及び蒸気圧をモニタする検出器214及び検出器214からの検出信号を取り出す検出信号線215を近傍に集積することにより、液滴付近の気体の種類、温度、密度及び蒸気圧を測定し、気体を凝集させる冷却器の温度(露点以下)を設定でき、液滴付近の気体の状態変化に応じた液滴を増量させるための冷却温度の維持や、液滴からの蒸発程度を観測し液滴の保持に必要な冷却温度が設定できる。
図24は別の発明の第4の実施の形態に係る液滴光学デバイスの構成を示す図である。同図の(a)は本実施の形態の液滴光学デバイスの平面図、同図の(b)は同図の(a)のL−L’線断面図である。同図において、図21と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図に示す本実施の形態の液滴光学デバイス500は、冷却膜211を平行に対向させて配置し、対向間隙の液滴形成エリアに光の入射口と出射口を有する液滴207を形成するものである。このようなパターン配置により、液滴の形状を効率良く、迅速に、正確に形成できる。そして、液滴207を形成する冷却膜211の対向間隙に、光路216を液滴207と同一面上に設定し、光導波路を集積したものである。よって、光導波路中の液滴光学デバイスの温度変化の影響が制御できるので、安定して使うことができ、かつ同一の基板内で対処できる。
図25は別の発明の第5の実施の形態に係る液滴光学デバイスの構成を示す図である。同図の(a)は本実施の形態の液滴光学デバイスの平面図、同図の(b)は同図の(a)のM−M’線断面図である。同図において、図21と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図に示す本実施の形態の液滴光学デバイス600は、冷却膜211で囲まれた液滴形成管壁に連通する液滴部材供給排出路217が設けられている。この液滴部材供給排出路217は、液滴形成管壁に外部から液滴を形成するための液体や気体を導入したり排出したりする供給排出路である。このような構成を有する第5の実施の形態の液滴光学デバイスによれば、液滴部材供給排出路217を介して液滴を形成するため液体又は気体が液滴形成管壁に供給され、光の入射口と出射口を有する液滴207を形成するため液体又は気体が熱電交換器212の冷却膜211によって凝集され、所望の液滴207が形成できる。
図26は別の発明の第6の実施の形態に係る液滴光学デバイスの構成を示す断面図である。同図において、図21と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図に示す本実施の形態の液滴光学デバイス700は、基板201と液滴支持層204の間に、液滴支持層204を上下させるための熱膨張伸縮部材又は圧電振動部材を用いた伸縮層218を設けている。この伸縮層218を均一に上下することにより、液滴光学デバイス700によって形成された、光の入射口と出射口を有する液滴207のレンズの焦点位置を変えることができる。また、この伸縮層218の伸縮幅を不均等に変化して傾けることにより、液滴光学デバイス700によって光の入射口と出射口を有する液滴207のレンズの光軸を傾けることができる。
図27は別の発明の第7の実施の形態に係る液滴光学デバイスの構成を示す断面図である。同図において、図21と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図に示す本実施の形態の液滴光学デバイス800は、基板201及び液滴支持層204を挟むように、静電電極膜219を設けている。電極端子220を介して各静電電極膜219の間に印加する電圧の電圧値を可変することにより、静電電極膜219の間に働くクーロン力により液滴支持層204が湾曲することによって、形成された液滴207の曲率が湾曲して、光の入射口と出射口を有する液滴207のレンズの焦点位置を変えることができる。
図28は別の発明の第8の実施の形態に係る液滴光学デバイスの構成を示す図である。同図の(a)は本実施の形態の液滴光学デバイスの適用例の平面図、同図の(b)は同図の(a)のN−N’線断面図である。同図において、図22と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図に示す本実施の形態の液滴光学デバイス900は、第3の実施の形態の液滴光学デバイス400を同一基板に複数個(ここでは3個)集積しアレー状に配列している。よって、本実施の形態の液滴光学デバイスを、複数個を配置すれば、マイクロレンズアレー及び3次元映像装置を実現できる。ただ、複数個を異なる形状制御する上では個々の液体レンズに対してそれぞれ異なる温度制御も必要になる。そこで、複数個を配置するにあたり、個々の液滴を温度制御する機構を配置し、集積した液滴光学デバイスとしている。なお、複数個集積するに当たり、MEMS構造が適している。また、液滴形成、保持や温度制御させるための条件設定するにあたり、周囲気体などの状態検出機構も同一基板に隣接させて集積することができる。
図29は別の発明の第9の実施の形態に係る液滴光学デバイスの構成を示す断面図である。同図において、図25と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図に示すように、同図に示す本実施の形態の液滴光学デバイス1000では、異なる種類(本実施の形態では2種類)の第1の液滴207−1,第2の液滴207−2を積層させ、複合レンズのような光学系を形成させている。詳細には、個々の種類の気体の性質に対応させ、気体を凝集させる工程を冷却膜211の温度制御によって行う。つまり、異なる種類の液滴を凝集温度の高い材料から順に、冷却膜211の温度を降下させて積層凝集させる。このように、本実施の形態の液滴光学デバイスは多成分複層液滴を示すもので、液滴部材供給排出路217を介して液滴形成エリアに第1の液滴の気体を供給して凝集し第1の液滴207−1を形成した後、液滴部材供給排出路217を介して液滴形成エリアに第2の液滴の気体を供給して凝集し第1の液滴207−1の上に第2の液滴207−2を形成する。同図のようなMEMSによる構造以外の構造でも可能である。よって、多種類の液滴を積層させることができる液滴光学デバイスにより、光学デバイスとして応用範囲が広くなる。
図30は別の発明の第10の実施の形態に係る液滴光学デバイスの構成を示す断面図である。同図において、図22と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図に示すように、同図に示す本実施の形態の液滴光学デバイス1100は、2枚の合わせレンズであって、1枚ごとに異なる基板に集積し、基板を接合したものである。同図の(a)に示す例はスタック、同図の(b)は裏面どうしを接合したものであり、同図の(c)は対面を接合したもので、空洞内の気体成分を外部と異なるように設定することができる。特に、同図の(c)に示す対面接合タイプのものは、基板の厚みに関係なく、2枚のレンズを短い間隔から長距離まで製作できる自由度がある。このように、複数個を基板に集積することによって、多種多様な液滴光学系が高精度に実現できる。
図31は別の発明の第11の実施の形態に係る液滴光学デバイスの構成を示す断面図である。同図において、図22と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図に示す本実施の形態の液滴光学デバイス1100は、裏面どうしを接合したものであり、液滴光学デバイス400−2で形成した可変形状の不透明な液滴221により、光路を可変形状に制限する絞り機構に応用するにあたり、液滴光学デバイス400−1で形成された光の入射口と出射口を有する液滴207を冷却膜211により温度制御するものである。液滴光学デバイス400−2における冷却膜で不透明な液滴221を形成し、形状やサイズを冷却膜の温度制御により可変にするとともに、周囲温度変動や光から与えられる熱により、液滴の膨張、粘性低下や表面張力低下が生じるので、冷却器で温度制御し、所定の形状を得る。このように、不透明な液滴を形成することによる可変形状絞りに適用することができる。
図32は別の発明の第12の実施の形態に係る液滴光学デバイスの構成を示す断面図である。同図の(a)は本実施の形態の液滴光学デバイスの平面図、同図の(b)は同図の(a)のO−O’線断面図である。同図において、図24と同じ参照符号は同じ構成要件を示す。同図に示す本実施の形態の液滴光学デバイス1300は、基板上に薄膜形成することによって液滴支持部となるパイプ222を形成し、このパイプ222を冷却する機構によりパイプ222内に光の入射口と出射口を有する液滴207を形成し、かつ形状制御するものである。
図33は別の発明の第13の実施の形態に係る液滴光学デバイスの構成を示す図である。同図の(a)は斜視図、同図の(b)は平面図、同図の(c)は同図の(b)のP−P’線断面図である。同図に示す本実施の形態の液滴光学デバイス1400は、支持基材や支持層の表面を起立させる姿勢で冷却膜211を形成している。このように、上述したような支持基材や支持層に液滴形成箇所を組み合わせるのではなく、基板を製造する過程の中で表面に起立する姿勢を形成することにより、光学系に必要な高精度の形状、寸法を得ることができる。また、本実施の形態では、レーザダイオード223などの放射光源を搭載しており、集光系や拡散系を含む作像装置を構成することができる。なお、イメージセンサを搭載すれば結像系を含む撮像装置となる。
図34は別の発明の液滴撮像デバイスの構成を示す断面図である。同図において、図22と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図に示す本発明の液滴撮像デバイス1500は、第3の実施の形態の液滴光学デバイス400と、撮像デバイス230とを一体化して構成する。詳細には、同図に示すように、イメージセンサ224の受光経路に液滴光学デバイス400での光の入射口と出射口を有する液滴207が形成できるように、基板どうしのパターンを配置し、基板を接合する。なお、図示していないが制御回路も同一基板上に集積できる。このように、高精度に一体化することにより、イメージセンサからの熱影響のばらつきが小さくできるので、液滴の温度制御がばらつき少なく正確にできる。また、一体化すると全体のシステムが簡略化されるだけでなく、制御回路も集積できるので、なお簡便であり信頼性が向上する。
図35は別の発明の液滴光源デバイスの構成を示す断面図である。同図において、図22と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図に示す本発明の液滴光源デバイス1600は、第3の実施の形態の液滴光学デバイス400と、放射光源デバイス240とを一体化して構成する。詳細には、同図に示すように、発光ダイオード225の発光経路に液滴光学デバイス400での光の入射口と出射口を有する液滴207が形成できるように、基板どうしのパターンを配置し、基板を接合する。なお、図示していないが制御回路も同一基板上に集積できる。このように、高精度に一体化することにより、放射光源からの熱影響のばらつきが小さくできるので、液滴の温度制御がばらつき少なく正確にできる。また、一体化すると全体のシステムが簡略化されるだけでなく、制御回路も集積できるので、なお簡便であり信頼性が向上する。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内の記載であれば多種の変形や置換可能であることは言うまでもない。