以下、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態という)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.カメラモジュールの第1の実施の形態
2.カメラモジュールの第2の実施の形態
3.カメラモジュールの第3の実施の形態
4.カメラモジュールの第4の実施の形態
5.カメラモジュールの第5の実施の形態
6.第4の実施の形態のカメラモジュールの詳細構成
7.カメラモジュールの第6の実施の形態
8.カメラモジュールの第7の実施の形態
9.レンズ付き基板の詳細構成
10.レンズ付き基板の製造方法
11.レンズ付き基板どうしの接合
12.カメラモジュールの第8及び第9の実施の形態
13.カメラモジュールの第10の実施の形態
14.カメラモジュールの第11の実施の形態
15.他の構造と比較した本構造の効果
16.各種の変形例
17.電子機器への適用例
18.イメージセンサの使用例
<1.カメラモジュールの第1の実施の形態>
図1は、本技術を適用した積層レンズ構造体を用いたカメラモジュールの第1の実施の形態を示す図である。
図1のAは、カメラモジュール1の第1の実施の形態としてのカメラモジュール1Aの構成を示す模式図である。図1のBは、カメラモジュール1Aの概略断面図である。
カメラモジュール1Aは、積層レンズ構造体11と受光素子12とを備える。積層レンズ構造体11は、縦横それぞれ5個ずつ、合計25個の光学ユニット13を備える。光学ユニット13は、1本の光軸方向に複数枚のレンズ21を含んで構成される。カメラモジュール1Aは、光学ユニット13を複数個備えた複眼カメラモジュールである。
カメラモジュール1Aが備える複数個の光学ユニット13の光軸は、図1のBに示されるように、モジュールの外側に向かって広がるように配置され、これにより広角の画像の撮影が可能とされている。
なお、図1のBでは、簡単のため、積層レンズ構造体11はレンズ21を3層だけ積層した構造になっているが、より多くのレンズ21を積層して良いことは言うまでもない。
図1のカメラモジュール1Aは、複数個の光学ユニット13を介して撮影した複数枚の画像をつなぎ合わせて、1枚の広角画像を作り出すことができる。複数枚の画像をつなぎ合わせるため、各画像を撮影する各光学ユニット13の形成および配置には、高い精度が要求される。また、特に広角側の光学ユニット13は、レンズ21への光の入射角度が小さいため、光学ユニット13の内での各レンズ21の位置関係と配置にも、高い精度が要求される。
図2は、特許文献1が開示する、樹脂による固着技術を用いた積層レンズ構造体の断面構造図である。
図2に示される積層レンズ構造体500においては、レンズ511を備えた基板512どうしを固着する手段として、樹脂513が用いられている。樹脂513は、UV硬化性などのエネルギー硬化性樹脂である。
基板512どうしを貼り合わせる前に、基板512表面全面に樹脂513の層が形成される。その後、基板512どうしが貼り合わされ、さらに、樹脂513が硬化される。これにより、貼り合わせた基板512どうしが固着される。
しかし、樹脂513を硬化させた際に、樹脂513は硬化収縮する。図2に示される構造の場合、基板512全体に樹脂513の層を形成した後、樹脂513を硬化させるため、樹脂513の変位量が大きくなってしまう。
また、基板512どうしを貼り合わせて形成した積層レンズ構造体500を個片化し、撮像素子を組み合わせてカメラモジュールを形成した後も、カメラモジュールに備わる積層レンズ構造体500は、図2に示されるように、レンズ511を備えた基板512間全体に、樹脂513が存在している。このため、カメラモジュールをカメラの筐体内に搭載し、実使用した際に、機器の発熱による温度上昇により、積層レンズ構造体500の基板間の樹脂が熱膨張する懸念がある。
図3は、図1のカメラモジュール1Aの積層レンズ構造体11のみを示した断面構造図である。
カメラモジュール1Aの積層レンズ構造体11も、レンズ21を備えたレンズ付き基板41を複数枚積層して形成されている。
カメラモジュール1Aの積層レンズ構造体11では、レンズ21を備えたレンズ付き基板41どうしを固定する手段として、図2の積層レンズ構造体500やその他の先行技術文献に示されるものとは全く異なる固定手段が用いられている。
すなわち、積層される2枚のレンズ付き基板41は、一方の基板表面に形成した酸化物や窒化物による表面層と、他方の基板表面に形成した酸化物や窒化物による表面層と、の間の共有結合によって、直接接合される。具体例として、図4に示されるように、積層する2枚のレンズ付き基板41それぞれの表面に、表面層としてシリコン酸化膜もしくはシリコン窒化膜が形成され、これに水酸基を結合させた後、2枚のレンズ付き基板41どうしが貼り合わされ、昇温されて脱水縮合される。その結果、2枚のレンズ付き基板41の表面層の間で、シリコン−酸素共有結合が形成される。これにより2枚のレンズ付き基板41が直接接合される。なお、縮合の結果、2枚の表面層に含まれる元素同士が直接共有結合を形成することも起こり得る。
本明細書では、このように、2枚のレンズ付き基板41の間に配置した無機物の層を介して2枚のレンズ付き基板41を固定すること、あるいは、2枚のレンズ付き基板41の表面にそれぞれ配置した無機物の層どうしを化学結合させることで2枚のレンズ付き基板41を固定すること、あるいは、2枚のレンズ付き基板41の表面にそれぞれ配置した無機物の層の間に脱水縮合による結合を形成することで2枚のレンズ付き基板41を固定すること、あるいは、2枚のレンズ付き基板41の表面にそれぞれ配置した無機物の層の間に、酸素を介した共有結合あるいは互いの無機物の層に含まれる元素どうしの共有結合を形成することで2枚のレンズ付き基板41を固定すること、あるいは、2枚のレンズ付き基板41の表面にそれぞれ配置したシリコン酸化物層もしくはシリコン窒化物層の間に、シリコン―酸素共有結合あるいはシリコン―シリコン共有結合を形成することで2枚のレンズ付き基板41を固定すること、を直接接合と呼ぶ。
この貼り合わせと昇温による脱水縮合を行うため、本実施の形態では、半導体装置やフラットディスプレイ装置の製造分野で使用される基板を用いて、基板状態でレンズが形成され、基板状態で貼り合わせおよび昇温による脱水縮合が行われ、基板状態で共有結合による接合が行われる。2枚のレンズ付き基板41の表面に形成した無機物の層の間を、共有結合によって接合させた構造は、特許文献1が開示する図2で説明した技術を用いた場合に懸念される、基板全体に渡る樹脂513の硬化収縮による変形や、実使用時の樹脂513の熱膨張による変形を抑える、という作用または効果をもたらす。
図5及び図6は、積層レンズ構造体11と受光素子12を組み合わせた図1のカメラモジュール1Aを形成する工程を示す図である。
まず、図5に示されるように、各レンズ21(不図示)が平面方向に複数形成されたレンズ付き基板41Wが複数枚用意され、これらが積層される。これにより、基板状態のレンズ付き基板41Wが複数枚積層された、基板状態の積層レンズ構造体11Wが得られる。
次に、図6に示されるように、受光素子12が平面方向に複数形成された基板状態のセンサ基板43Wが、図5に示した基板状態の積層レンズ構造体11Wとは別に作製され、用意される。
そして、基板状態のセンサ基板43Wと、基板状態の積層レンズ構造体11Wが、積層され、貼り合わせた基板のモジュール毎に外部端子を着けることで、基板状態のカメラモジュール44Wが得られる。
最後に、基板状態のカメラモジュール44Wが、モジュール単位またはチップ単位に個片化される。個片化されたカメラモジュール44が、別途用意された筐体(不図示)に封入されることで、最終的なカメラモジュール44が得られる。
なお、本明細書及び図面においては、例えば、レンズ付き基板41Wのように、符号に“W”が付加された部品は、それが基板状態(ウエハ状態)であることを表し、レンズ付き基板41のように“W”が付されていないものは、モジュール単位またはチップ単位に個片化された状態であることを表す。その他、センサ基板43W、カメラモジュール44Wなどについても同様である。
図7は、積層レンズ構造体11と受光素子12を組み合わせた図1のカメラモジュール1Aを形成する別の工程を示す図である。
まず、上述した工程と同様に、基板状態のレンズ付き基板41Wが複数枚積層された、基板状態の積層レンズ構造体11Wが製造される。
次に、基板状態の積層レンズ構造体11Wが、個片化される。
また、基板状態の積層レンズ構造体11Wとは別に、基板状態のセンサ基板43Wが作製され、用意される。
そして、基板状態のセンサ基板43Wの各受光素子12の上に、個片化された積層レンズ構造体11が1個ずつマウントされる。
最後に、個片化された積層レンズ構造体11がマウントされた、基板状態のセンサ基板43Wがモジュール単位またはチップ単位に個片化される。積層レンズ構造体11がマウントされ、個片化されたセンサ基板43が、別途用意された筐体(不図示)に封入され、さらに外部端子が着けられることで、最終的なカメラモジュール44が得られる。
さらに、積層レンズ構造体11と受光素子12を組み合わせた図1のカメラモジュール1Aを形成する別の工程の例として、図7に示した基板状態のセンサ基板43Wを個片化し、その結果得られた個々の受光素子12へ、個片化後の積層レンズ構造体11をそれぞれマウントして、個片化されたカメラモジュール44を得ても良い。
図8は、カメラモジュール1Aにおけるレンズ付き基板41の構成を説明する図である。
図8のAは、図1のAと同様の、カメラモジュール1Aの構成を示す模式図である。
図8のBは、図1のBと同様の、カメラモジュール1Aの概略断面図である。
カメラモジュール1Aは、図8のBに示されるように、複数枚のレンズ21を組み合わせて形成し、1本の光軸を備えた光学ユニット13を、複数個備えた複眼カメラモジュールである。積層レンズ構造体11は、縦横それぞれ5個ずつ、合計25個の光学ユニット13を備える。
カメラモジュール1Aでは、複数個の光学ユニット13の光軸が、モジュールの外側に向かって広がるように配置され、これにより、広角の画像の撮影が可能とされている。図8のBでは、簡単のため、積層レンズ構造体11は、レンズ付き基板41を3層だけ積層した構造になっているが、より多くのレンズ付き基板41を積層して良いことは言うまでもない。
図8のC乃至Eは、積層レンズ構造体11を構成する3層のレンズ付き基板41それぞれの平面形状を示す図である。
図8のCは、3層のうちの最上層のレンズ付き基板41の平面図であり、図8のDは、中層のレンズ付き基板41の平面図であり、図8のDは、最下層のレンズ付き基板41の平面図である。カメラモジュール1は、複眼広角カメラモジュールであるため、上層になるに従って、レンズ21の径が大きくなると共に、レンズ間のピッチが広がっている。
図8のF乃至Hは、図8のC乃至Eに示したレンズ付き基板41を得るための、基板状態のレンズ付き基板41Wの平面図である。
図8のFに示されるレンズ付き基板41Wは、図8のCのレンズ付き基板41に対応する基板状態を示し、図8のGに示されるレンズ付き基板41Wは、図8のDのレンズ付き基板41に対応する基板状態を示し、図8のHに示されるレンズ付き基板41Wは、図8のEのレンズ付き基板41に対応する基板状態を示している。
図8のF乃至Hに示される基板状態のレンズ付き基板41Wは、図8のAに示したカメラモジュール1Aを、基板1枚につき8個得られる構成とされている。
図8のF乃至Hの各レンズ付き基板41Wの間で、モジュール単位のレンズ付き基板41内のレンズ間のピッチは、上層のレンズ付き基板41Wと下層のレンズ付き基板41Wとで異なる一方、各レンズ付き基板41Wにおいて、モジュール単位のレンズ付き基板41を配置するピッチは、上層のレンズ付き基板41Wから下層のレンズ付き基板41Wまで、一定となっていることがわかる。
<2.カメラモジュールの第2の実施の形態>
図9は、本技術を適用した積層レンズ構造体を用いたカメラモジュールの第2の実施の形態を示す図である。
図9のAは、カメラモジュール1の第2の実施の形態としてのカメラモジュール1Bの外観を示す模式図である。図9のBは、カメラモジュール1Bの概略断面図である。
カメラモジュール1Bは、2個の光学ユニット13を備える。2個の光学ユニット13は、積層レンズ構造体11の最上層に、絞り板51を備える。絞り板51には、開口部52が設けられている。
カメラモジュール1Bは2個の光学ユニット13を備えるが、これら2つの光学ユニット13の光学パラメータは異なる。すなわち、カメラモジュール1Bは、光学性能が異なる2種類の光学ユニット13を備える。2種類の光学ユニット13は、例えば、近景を撮影するための焦点距離が短い光学ユニット13と、遠景を撮影するために焦点距離が長い光学ユニット13とすることができる。
カメラモジュール1Bでは、2つの光学ユニット13の光学パラメータが異なるため、例えば、図9のBに示されように、2つの光学ユニット13のレンズ21の枚数が異なる。また、2つの光学ユニット13が備える積層レンズ構造体11の同じ層のレンズ21において、径、厚さ、表面形状、体積、または、隣接するレンズとの距離、のいずれかが異なる構成が可能となっている。このため、カメラモジュール1Bにおけるレンズ21の平面形状は、例えば、図9のCに示されるように、2つの光学ユニット13が同じ径のレンズ21を備えていても良いし、図9のDに示すように、 異なる形状のレンズ21を備えていても良いし、図9のEに示すように、一方がレンズ21を備えない空洞21Xとなった構造でも良い。
図9のF乃至Hは、図9のC乃至Eに示したレンズ付き基板41を得るための、基板状態のレンズ付き基板41Wの平面図である。
図9のFに示されるレンズ付き基板41Wは、図9のCのレンズ付き基板41に対応する基板状態を示し、図9のGに示されるレンズ付き基板41Wは、図9のDのレンズ付き基板41に対応する基板状態を示し、図9のHに示されるレンズ付き基板41Wは、図9のEのレンズ付き基板41に対応する基板状態を示している。
図9のF乃至Hに示される基板状態のレンズ付き基板41Wは、図9のAに示したカメラモジュール1Bを、基板1枚につき16個得られる構成とされている。
図9のF乃至Hに示されるように、カメラモジュール1Bを形成するために、基板状態のレンズ付き基板41Wの基板全面に同じ形状のレンズを形成することや、異なる形状のレンズを形成することや、レンズを形成したり形成しなかったりすることが可能である。
<3.カメラモジュールの第3の実施の形態>
図10は、本技術を適用した積層レンズ構造体を用いたカメラモジュールの第3の実施の形態を示す図である。
図10のAは、カメラモジュール1の第3の実施の形態としてのカメラモジュール1Cの外観を示す模式図である。図10のBは、カメラモジュール1Cの概略断面図である。
カメラモジュール1Cは、光の入射面上に、縦横2個ずつ、合計4個の光学ユニット13を備える。4個の光学ユニット13どうしでは、レンズ21の形状は同じになっている。
4個の光学ユニット13は、積層レンズ構造体11の最上層に、絞り板51を備えるが、その絞り板51の開口部52の大きさが、4個の光学ユニット13の間で異なる。これにより、カメラモジュール1Cは、例えば、以下のようなカメラモジュール1Cを実現することができる。すなわち、例えば防犯用の監視カメラにおいて、昼間のカラー画像監視用に、RGB3種類のカラーフィルタを備えてRGB3種の光を受光する受光画素と、夜間の白黒画像監視用に、RGB用のカラーフィルタを備えない受光画素と、を備えた受光素子12を用いたカメラモジュール1Cにおいて、照度が低い夜間の白黒画像を撮影するための画素だけ絞りの開口の大きさを大きくすることが可能となる。このため、1個のカメラモジュール1Cにおけるレンズ21の平面形状は、例えば図10のCに示されるように、4つの光学ユニット13が備えるレンズ21の径は同じであって、かつ、図10のDに示されるように、絞り板51の開口部52の大きさは、光学ユニット13によっては異なる。
図10のEは、図10のCに示したレンズ付き基板41を得るための、基板状態のレンズ付き基板41Wの平面図である。図10のFは、図10のDに示した絞り板51を得るための、基板状態での絞り板51Wを示す平面図である。
図10のEの基板状態のレンズ付き基板41W、及び、図10のFの基板状態の絞り板51Wでは、図10のAに示したカメラモジュール1Cを、基板1枚につき8個得られる構成とされている。
図10のFに示されるように、基板状態での絞り板51Wでは、カメラモジュール1Cを形成するために、カメラモジュール1Cが備える光学ユニット13毎に、異なる開口部52の大きさを設定することができる。
<4.カメラモジュールの第4の実施の形態>
図11は、本技術を適用した積層レンズ構造体を用いたカメラモジュールの第4の実施の形態を示す図である。
図11のAは、カメラモジュール1の第4の実施の形態としてのカメラモジュール1Dの外観を示す模式図である。図11のBは、カメラモジュール1Dの概略断面図である。
カメラモジュール1Dは、カメラモジュール1Cと同様に、光の入射面上に、縦横2個ずつ、合計4個の光学ユニット13を備える。4個の光学ユニット13どうしでは、レンズ21の形状と絞り板51の開口部52の大きさは同じになっている。
カメラモジュール1Dは、光の入射面の縦方向と横方向のそれぞれについて2個ずつ配置した光学ユニット13に備わる光軸が、同じ方向に延びている。図11のBに示される1点鎖線は、光学ユニット13それぞれの光軸を表している。この様な構造のカメラモジュール1Dは、超解像技術を利用して、1個の光学ユニット13で撮影するよりも、解像度が高い画像を撮影することに適している。
カメラモジュール1Dでは、縦方向と横方向のそれぞれについて、光軸が同じ方向を向きながら、異なる位置に配置された複数個の受光素子12で画像を撮影することにより、あるいは1個の受光素子12の中の異なる領域の受光画素で画像を撮影することにより、光軸が同じ方向を向きながら、必ずしも同一ではない複数枚の画像を得ることができる。これら同一ではない複数枚の画像が持っている場所毎の画像データを合わせることで、解像度が高い画像を得ることができる。このため、1個カメラモジュール1Dにおけるレンズ21の平面形状は、図11のCに示されるように、4つの光学ユニット13で同じになっていることが望ましい。
図11のDは、図11のCに示したレンズ付き基板41を得るための、基板状態のレンズ付き基板41Wの平面図である。基板状態のレンズ付き基板41Wは、図11のAに示したカメラモジュール1Dを、基板1枚につき8個得られる構成とされている。
図11のDに示されるように、基板状態のレンズ付き基板41Wでは、カメラモジュール1Dを形成するために、カメラモジュール1Dが複数個のレンズ21を備え、この1個のモジュール用のレンズ群が、基板上に一定のピッチで複数個配置されている。
<5.カメラモジュールの第5の実施の形態>
図12は、本技術を適用した積層レンズ構造体を用いたカメラモジュールの第5の実施の形態を示す図である。
図12のAは、カメラモジュール1の第5の実施の形態としてのカメラモジュール1Eの外観を示す模式図である。図12のBは、カメラモジュール1Eの概略断面図である。
カメラモジュール1Eは、1本の光軸を有する光学ユニット13をカメラモジュール1E内に1個備える、単眼のカメラモジュールである。
図12のCは、カメラモジュール1Eにおけるレンズ21の平面形状を示すレンズ付き基板41の平面図である。カメラモジュール1Eは、1個の光学ユニット13を備える。
図12のDは、図12のCに示したレンズ付き基板41を得るための、基板状態のレンズ付き基板41Wの平面図である。基板状態のレンズ付き基板41Wは、図12のAに示したカメラモジュール1Eを、基板1枚につき32個得られる構成とされている。
図12のDに示されるように、基板状態のレンズ付き基板41Wでは、カメラモジュール1E用のレンズ21が、基板上に一定のピッチで複数個配置されている。
<6.第4の実施の形態のカメラモジュールの詳細構成>
次に、図13を参照して、図11に示した第4の実施の形態に係るカメラモジュール1Dの詳細構成について説明する。
図13は、図11のBに示したカメラモジュール1Dの断面図である。
カメラモジュール1Dは、複数のレンズ付き基板41a乃至41eが積層された積層レンズ構造体11と、受光素子12を含んで構成される。積層レンズ構造体11は、 複数個の光学ユニット13を備える。1点鎖線84は、それぞれの光学ユニット13の光軸を表す。受光素子12は、積層レンズ構造体11の下側に配置されている。カメラモジュール1Dにおいて、上方からカメラモジュール1D内へと入射した光は、積層レンズ構造体11を透過し、積層レンズ構造体11の下側に配置された受光素子12で受光される。
積層レンズ構造体11は、積層された5枚のレンズ付き基板41a乃至41eを備える。5枚のレンズ付き基板41a乃至41eを特に区別しない場合には、単に、レンズ付き基板41と記述して説明する。
積層レンズ構造体11を構成する各レンズ付き基板41の貫通孔83の断面形状は、下側(受光素子12を配置する側)に向かって開口幅が小さくなる、いわゆる下すぼみの形状となっている
積層レンズ構造体11の上には、絞り板51が配置されている。絞り板51は、例えば、光吸収性もしくは遮光性を有する材料で形成された層を備える。絞り板51には、開口部52が設けられている。
受光素子12は、例えば、表面照射型または裏面照射型のCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサで構成される。受光素子12の積層レンズ構造体11側となる上側の面には、オンチップレンズ71が形成されており、受光素子12の下側の面には、信号を入出力する外部端子72が形成されている。
積層レンズ構造体11、受光素子12、絞り板51などは、レンズバレル74に収納されている。
受光素子12の上側には、構造材73が配置されている。その構造材73を介して、積層レンズ構造体11と受光素子12とが固定されている。構造材73は、例えばエポキシ系の樹脂である。
本実施の形態では、積層レンズ構造体11は、積層された5枚のレンズ付き基板41a乃至41eを備えるが、レンズ付き基板41の積層枚数は2枚以上であれば特に限定されない。
積層レンズ構造体11を構成するそれぞれのレンズ付き基板41は、担体基板81にレンズ樹脂部82が追加された構成である。担体基板81は貫通孔83を有し、貫通孔83の内側に、レンズ樹脂部82が形成されている。レンズ樹脂部82は、上述したレンズ21を含み、担体基板81まで延在してレンズ21を担持する部位も併せて、レンズ21を構成する材料によって一体となった部分を表す。
なお、レンズ付き基板41a乃至41eそれぞれの担体基板81、レンズ樹脂部82、または、貫通孔83を区別する場合には、図13に示されるように、レンズ付き基板41a乃至41eに対応して、担体基板81a乃至81e、レンズ樹脂部82a乃至82e、または、貫通孔83a乃至83eのように記述して説明する。
<レンズ樹脂部の詳細説明>
次に、レンズ付き基板41aのレンズ樹脂部82aを例に、レンズ樹脂部82の形状について説明する。
図14は、レンズ付き基板41aを構成する担体基板81aとレンズ樹脂部82aの平面図と断面図である。
図14に示される担体基板81aとレンズ樹脂部82aの断面図は、平面図に示されているB‐B’線とC‐C’線の断面図である。
レンズ樹脂部82aは、レンズ21を構成する材料によって一体となって形成した部位であり、レンズ部91と担持部92を備える。上述した説明において、レンズ21とは、レンズ部91またはレンズ樹脂部82a全体に相当する。
レンズ部91は、レンズとしての性能を有する部位、言い換えれば、「光を屈折させて集束もしくは発散させる部位」、あるいは、「凸面や凹面や非球面などの曲面を備えた部位、もしくはフレネルレンズや回折格子を利用したレンズで用いる複数個の多角形を連続して配置した部位」である。
担持部92は、レンズ部91から担体基板81aまで延在してレンズ部91を担持する部位である。担持部92は、腕部101と脚部102で構成され、レンズ部91の外周に位置する。
腕部101は、レンズ部91の外側に、レンズ部91に接して配置し、レンズ部91から外側方向へ一定の膜厚で延在する部位である。脚部102は、担持部92のなかで腕部101以外の部分で、かつ貫通孔83aの側壁に接する部分を含む部位である。脚部102は、腕部101よりも樹脂の膜厚が厚いことが好ましい。
担体基板81aに形成された貫通孔83aの平面形状は円形であり、その断面形状は当然直径の方向によらず同じである。レンズ形成時に上型と下型の形によって決まる形状であるレンズ樹脂部82aの形状も、その断面形状が直径の方向によらず同じとなるように形成されている。
図15は、図13のカメラモジュール1Dの一部である積層レンズ構造体11と絞り板51を示す断面図である。
カメラモジュール1Dでは、モジュールに入射される光が絞り板51で絞られた後、積層レンズ構造体11の内部で広げられて、積層レンズ構造体11の下方に配置された受光素子12(図15では不図示)へと入射される。すなわち、積層レンズ構造体11全体について概観すると、モジュールに入射された光は、絞り板51の開口部52から下側に向かって、ほぼ末広がりに広がって進行する。このため、積層レンズ構造体11に備わるレンズ樹脂部82の大きさの一例として、図15の積層レンズ構造体11においては、絞り板51の直下に配置されたレンズ付き基板41aに備わるレンズ樹脂部82aが最も小さく、積層レンズ構造体11の最下層に配置されたレンズ付き基板41eに備わるレンズ樹脂部82eが最も大きくなっている。
仮にレンズ付き基板41のレンズ樹脂部82の厚さを一定にした場合、大きさが小さなレンズよりも大きなレンズを作る方が難しい。それは例えば、レンズを製造する際にレンズに加わる荷重によってレンズが変形しやすい、大きさが大きいゆえに強度を保つのが難しい、との理由による。このため、大きさが大きなレンズは、大きさが小さなレンズよりも、厚さを厚くすることが好ましい。このため、図15の積層レンズ構造体11においては、レンズ樹脂部82の厚さは、最下層に配置したレンズ付き基板41eに備わるレンズ樹脂部82eが最も厚くなっている。
図15の積層レンズ構造体11は、レンズ設計の自由度を高めるために、さらに以下の特徴の少なくとも一つを備える。
(1) 担体基板81の厚さが、積層レンズ構造体11を構成する少なくとも複数枚のレンズ付き基板41の間で異なる。例えば、担体基板81の厚さが、下層のレンズ付き基板41の方が厚い。
(2) レンズ付き基板41に備わる貫通孔83の開口幅が、積層レンズ構造体11を構成する少なくとも複数枚のレンズ付き基板41の間で異なる。例えば、貫通孔83の開口幅が、下層のレンズ付き基板41の方が大きい。
(3) レンズ付き基板41に備わるレンズ部91の直径が、積層レンズ構造体11を構成する少なくとも複数枚のレンズ付き基板41の間で異なる。例えば、レンズ部91の直径が、下層のレンズ付き基板41のレンズ部91の方が大きい。
(4) レンズ付き基板41に備わるレンズ部91の厚さが、積層レンズ構造体11を構成する少なくとも複数枚のレンズ付き基板41の間で異なる。例えば、レンズ部91の厚さが、下層のレンズ付き基板41のレンズ部91の方が厚い。
(5) レンズ付き基板41に備わるレンズ間の距離が、積層レンズ構造体11を構成する少なくとも複数枚のレンズ付き基板41の間で異なる。
(6) レンズ付き基板41に備わるレンズ樹脂部82の体積が、積層レンズ構造体11を構成する少なくとも複数枚のレンズ付き基板41の間で、異なる。例えば、レンズ樹脂部82の体積が、下層のレンズ付き基板41のレンズ樹脂部82の方が大きい。
(7) レンズ付き基板41に備わるレンズ樹脂部82の材料が、積層レンズ構造体11を構成する少なくとも複数枚のレンズ付き基板41の間で異なる。
一般的に、カメラモジュールに入射される入射光は、垂直入射光と射入射光とを併せて含んでいる。射入射光の多くは絞り板51に当たり、そこで吸収もしくはカメラモジュール1Dの外側へ反射される。絞り板51によって絞りきれなかった射入射光は、その入射角度によっては貫通孔83の側壁に当たってしまい、そこで反射される可能性がある。
射入射光の反射光が進行する方向は、図13において示される、射入射光85の入射角度と、貫通孔83の側壁の角度とによって決まる。貫通孔83の開口幅が、入射側から受光素子12側へ向かって大きくなる、いわゆる、末広がりの形状の場合、絞り板51によって絞りきれなかった特定の入射角度の射入射光85が、貫通孔83の側壁に当たってしまった際には、それが受光素子12方向へと反射されてしまい、これが迷光あるいはノイズ光となる可能性がある。
しかしながら、図13に示した積層レンズ構造体11においては、図15に示されるように、貫通孔83は、下側(受光素子12を配置する側)に向かって開口幅が小さくなる、いわゆる下すぼみの形状となっている。この形状の場合、貫通孔83の側壁に当たった射入射光85は、下側方向いわゆる受光素子12の方向ではなく、上側方向、いわゆる入射側方向へと反射される。これにより、迷光あるいはノイズ光の発生を抑えるという作用または効果が得られる。
レンズ付き基板41の貫通孔83は、その側壁に当たって反射される光を低減するために、光吸収性の材料を側壁に配置するとなお良い。
一例として、カメラモジュール1Dをカメラとして使用する際に受光したい波長の光(例えば可視光)を、第1の光とし、その第1の光とは波長が異なる光(例えばUV光)を、第2の光とした場合、第2の光(UV光)によって硬化する樹脂に、第1の光(可視光)の吸収材料としてカーボン粒子を分散させたものを、担体基板81の表面に塗布または噴射し、貫通孔83の側壁部の樹脂のみに第2の光(UV光)を照射して硬化させ、これ以外の領域の樹脂を除去することで、貫通孔83の側壁に、第1の光(可視光)に対する光吸収性を有する材料の層を形成して良い。
図15に示した積層レンズ構造体11は、積層した複数枚のレンズ付き基板41の一番上に、絞り板51を配置した構造の例である。絞り板51は、積層した複数枚のレンズ付き基板41の一番上ではなく、中間のレンズ付き基板41のどこかに挿入して配置しても良い。
さらに別の例として、板状の絞り板51をレンズ付き基板41と別に備えるのではなく、レンズ付き基板41の表面に、光吸収性を有する材料の層を形成して、これを絞りとして機能させても良い。例えば、上記第2の光(UV光)によって硬化する樹脂に、上記第1の光(可視光)の吸収材料としてカーボン粒子を分散させたものを、レンズ付き基板41の表面に塗布または噴射し、絞りとして機能させる際に光を透過させたい領域を除いて、それ以外の領域の樹脂へ第2の光(UV光)を照射して、上記樹脂を硬化させて残し、硬化させなかった領域、すなわち絞りとして機能させる際に光を透過させたい領域、の樹脂を除去することで、レンズ付き基板41の表面に絞りを形成しても良い。
なお、上記表面に絞りを形成するレンズ付き基板41は、積層レンズ構造体11の最上層に配置されたレンズ付き基板41であって良いし、あるいは、積層レンズ構造体11の内層となるレンズ付き基板41であっても良い。
図15に示した積層レンズ構造体11は、レンズ付き基板41を積層した構造を備える。
別の実施形態として、積層レンズ構造体11は、レンズ付き基板41を複数枚と、レンズ樹脂部82を備えない担体基板81を少なくも1枚、併せて備えた構造であっても良い。この構造において、レンズ樹脂部82を備えない担体基板81は、積層レンズ構造体11の最下層もしくは最上層に配置しても良いし、積層レンズ構造体11における内側の層として配置しても良い。この構造は、例えば、積層レンズ構造体11が備える複数枚のレンズ間の距離や、積層レンズ構造体11の最下層のレンズ樹脂部82と積層レンズ構造体11の下側に配置される受光素子12との距離を、任意に設定し得る、と言う作用または効果をもたらす。
あるいはまた、この構造は、レンズ樹脂部82を備えない担体基板81の開口幅を適切に設定し、かつ、開口部を除いた領域に光吸収性を有する材料を配置することによって、これを絞り板として機能させ得る、と言う作用または効果をもたらす。
<7.カメラモジュールの第6の実施の形態>
図16は、本技術を適用した積層レンズ構造体を用いたカメラモジュールの第6の実施の形態を示す図である。
図16において、図13に示した第4の実施の形態と対応する部分については同一の符号を付してあり、図13のカメラモジュール1Dと異なる部分に注目して説明する。
図16に示されるカメラモジュール1Fにおいても、図13に示したカメラモジュール1Dと同様に、入射した光が、絞り板51で絞られた後、積層レンズ構造体11の内部で広がり、積層レンズ構造体11の下方に配置された受光素子12へと入射される。すなわち、積層レンズ構造体11全体について概観すると、光は、絞り板51の開口部52から下側に向かって、末広がりに広がって進行する。
図16のカメラモジュール1Fは、積層レンズ構造体11を構成する各レンズ付き基板41の貫通孔83の断面形状が、下側(受光素子12を配置する側)に向かって開口幅が大きくなる、いわゆる末広がりの形状となっている点が、図13に示したカメラモジュール1Dと異なる。
カメラモジュール1Fの積層レンズ構造体11は、入射した光が、絞り板51の開口部52から下側に向かって末広がりに広がって進行する構造であるため、貫通孔83の開口幅が下側向かって大きくなる末広がり形状は、貫通孔83の開口幅が下側に向かって小さくなる下すぼみ形状よりも、例えば、担体基板81が光路の邪魔になりにくい。これにより、レンズ設計の自由度が高いという作用をもたらす。
また、担持部92を含めたレンズ樹脂部82の基板平面方向の断面積は、貫通孔83の開口幅が下側に向かって小さくなる下すぼみ形状の場合、レンズ樹脂部82の下面においては、レンズ21に入射した光線を透過させるために特定の大きさとなり、かつ、レンズ樹脂部82の下面から上面に向かって、その断面積が大きくなって行く。
これに対して、貫通孔83の開口幅が下側向かって大きくなる末広がり形状の場合、レンズ樹脂部82の下面における断面積は、下すぼみ形状の場合と概ね同じとなるが、レンズ樹脂部82の下面から上面に向かって、その断面積が小さくなって行く。
これにより、貫通孔83の開口幅が下側に向かって大きくなる構造は、担持部92を含めたレンズ樹脂部82の大きさを、小さく抑えることができるという作用または効果をもたらす。また、これにより、先に述べたレンズが大きい場合に生じるレンズ形成の難しさを、低減できるという作用または効果をもたらす。
<8.カメラモジュールの第7の実施の形態>
図17は、本技術を適用した積層レンズ構造体を用いたカメラモジュールの第7の実施の形態を示す図である。
図17においても、図13と対応する部分については同一の符号を付してあり、図13に示したカメラモジュール1Dと異なる部分に注目して説明する。
図17のカメラモジュール1Gは、やはり、積層レンズ構造体11を構成する各レンズ付き基板41のレンズ樹脂部82と貫通孔83の形状が、図13に示したカメラモジュール1Dと異なる。
カメラモジュール1Gの積層レンズ構造体11は、貫通孔83の形状が、下側(受光素子12を配置する側)に向かって開口幅が小さくなる、いわゆる下すぼみの形状となったレンズ付き基板41と、貫通孔83の形状が、下側に向かって開口幅が大きくなる、いわゆる末広がりの形状となったレンズ付き基板41と、の双方を備える。
貫通孔83が、下側に向かって開口幅が小さくなる、いわゆる下すぼみの形状となったレンズ付き基板41は、先に述べたように、貫通孔83の側壁に当たった射入射光85が、上側方向いわゆる入射側方向へと反射され、これにより迷光あるいはノイズ光の発生を抑える、という作用または効果をもたらす。
そこで、図17の積層レンズ構造体11においては、積層レンズ構造体11を構成する複数枚のレンズ付き基板41のうち、特に上側(入射側)の複数枚において、貫通孔83が、下側に向かって開口幅が小さくなる、いわゆる下すぼみの形状となったレンズ付き基板41が用いられている。
貫通孔83が、下側に向かって開口幅が大きくなる、いわゆる末広がりの形状となったレンズ付き基板41は、先に述べたように、レンズ付き基板41に備わる担体基板81が光路の邪魔となりにくく、これによって、レンズ設計の自由度が増す、あるいは、レンズ付き基板41に備わる担持部92を含めたレンズ樹脂部82の大きさを小さく抑える、という作用または効果をもたらす。
図17の積層レンズ構造体11においては、光は絞りから下側に向かって、末広がりに広がって進行するため、積層レンズ構造体11を構成する複数枚のレンズ付き基板41のうち、下側に配置した何枚かのレンズ付き基板41に備わるレンズ樹脂部82の大きさが大きい。このような大きいレンズ樹脂部82において、末広がりの形状の貫通孔83を用いると、レンズ樹脂部82の大きさを抑制する作用が大きく現れる。
そこで、図17の積層レンズ構造体11においては、積層レンズ構造体11を構成する複数枚のレンズ付き基板41のうち、特に下側の複数枚において、貫通孔83が、下側に向かって開口幅が大きくなる、いわゆる末広がりの形状となったレンズ付き基板41を用いている。
<9.レンズ付き基板の詳細構成>
次に、レンズ付き基板41の詳細構成について説明する。
図18は、レンズ付き基板41の詳細構成を示す断面図である。
なお、図18では、5枚のレンズ付き基板41a乃至41eのうちの、最上層のレンズ付き基板41aが図示されているが、その他のレンズ付き基板41も同様に構成されている。
レンズ付き基板41の構成としては、図18のA乃至Cのいずれかの構成をとることができる。
図18のAに示されるレンズ付き基板41には、担体基板81に設けられた貫通孔83に対して、上面からみて貫通孔83を塞ぐようにレンズ樹脂部82が形成されている。レンズ樹脂部82は、図14を参照して説明したように、中央部のレンズ部91(不図示)と、その周辺部の担持部92(不図示)で構成される。
レンズ付き基板41の貫通孔83となる側壁には、光反射を起因とするゴーストやフレアを防止するために光吸収性もしくは遮光性を有する膜121が成膜されている。これらの膜121を便宜的に遮光膜121と呼ぶ。
担体基板81とレンズ樹脂部82の上側表面には、酸化物もしくは窒化物あるいはその他の絶縁物を含む上側表面層122が形成されており 、担体基板81とレンズ樹脂部82の下側表面には、酸化物もしくは窒化物あるいはその他の絶縁物を含む下側表面層123が形成されている。
上側表面層122は、一例として、低屈折膜と高屈折膜を交互に複数層積層した反射防止膜を構成している。反射防止膜は、例えば、低屈折膜と高屈折膜を交互に合計4層積層して構成することができる。低屈折膜は、例えば、SiOx(1≦x≦2)、SiOC、SiOFなどの酸化膜、高屈折膜は、例えば、TiO、TaO、Nb2O5などの金属酸化膜で構成される。
なお、上側表面層122の構成は、例えば、光学シミュレーションを用いて所望の反射防止性能が得られるように設計されていればよく、低屈折膜及び高屈折膜の材料、膜厚、積層数などは特に限定されない。本実施の形態では、上側表面層122の最表面は、低屈折膜となっており、その膜厚は、例えば20乃至1000nm、密度は、例えば2.2乃至2.5g/cm3、平坦度が、例えば1nm以下程度の二乗平均粗さRq(RMS)となっている。また、詳細は後述するが、この上側表面層122は、他のレンズ付き基板41と接合される際の接合膜にもなっている。
上側表面層122は、一例として、低屈折膜と高屈折膜を交互に複数層積層した反射防止膜であって良く、そのなかでも無機物の反射防止膜であって良い。上側表面層122は、別の例として、酸化物もしくは窒化物あるいはその他の絶縁物を含む単層膜であっても良く、そのなかでも無機物の膜であっても良い。
下側表面層123も、一例として、低屈折膜と高屈折膜を交互に複数層積層した反射防止膜であって良く、そのなかでも無機物の反射防止膜であって良い。下側表面層123は、別の例として、酸化物もしくは窒化物あるいはその他の絶縁物を含む単層膜であっても良く、そのなかでも無機物の膜であっても良い。
図18のB及びCのレンズ付き基板41については、図18のAに示したレンズ付き基板41と異なる部分についてのみ説明する。
図18のBに示されるレンズ付き基板41においては、担体基板81とレンズ樹脂部82の下側表面に形成されている膜が、図18のAに示したレンズ付き基板41と異なる。
図18のBのレンズ付き基板41では、担体基板81の下側表面には、酸化物もしくは窒化物あるいはその他の絶縁物を含む下側表面層124が形成されている一方、レンズ樹脂部82の下側表面には、下側表面層124が形成されていない。下側表面層124は、上側表面層122と同一材料でもよいし、異なる材料でもよい。
このような構造は、例えば、レンズ樹脂部82を形成する前に、担体基板81の下側表面に下側表面層124を形成しておき、その後、レンズ樹脂部82を形成する製法により、形成し得る。あるいは、レンズ樹脂部82を形成した後に、レンズ樹脂部82にマスクを形成し、担体基板81上にはマスクを形成しない状態で、下側表面層124を構成する膜を、例えばPVDにより、担体基板81の下側表面に堆積させることで、形成し得る。
図18のCのレンズ付き基板41においては、担体基板81の上側表面に、酸化物もしくは窒化物あるいはその他の絶縁物を含む上側表面層125が形成されている一方、レンズ樹脂部82の上側表面には、上側表面層125が形成されていない。
同様に、レンズ付き基板41の下側表面においても、担体基板81の下側表面に、酸化物もしくは窒化物あるいはその他の絶縁物を含む下側表面層124が形成されている一方、レンズ樹脂部82の下側表面には、下側表面層124が形成されていない。
このような構造は、例えば、レンズ樹脂部82が形成される前に、担体基板81に上側表面層125と下側表面層124を形成しておき、その後、レンズ樹脂部82を形成する製法により、形成し得る。あるいは、レンズ樹脂部82を形成した後に、レンズ樹脂部82にマスクを形成し、担体基板81上にはマスクを形成しない状態で、上側表面層125および下側表面層124を構成する膜を、例えばPVDにより、担体基板81の表面に堆積させることで、形成し得る。下側表面層124と上側表面層125は、同一材料でもよいし、異なる材料でもよい。
レンズ付き基板41は、以上のように構成することができる。
<10.レンズ付き基板の製造方法>
次に、図19乃至図29を参照して、レンズ付き基板41の製造方法を説明する。
初めに、複数の貫通孔83が形成された基板状態の担体基板81Wが用意される。担体基板81Wは、例えば、通常の半導体装置に用いる、シリコンの基板を用いることができる。担体基板81Wの形状は、例えば図19のAに示されるような円形で、その直径は、例えば200mmや300mmなどとされる。担体基板81Wは、シリコンの基板ではなく、例えば、ガラスの基板、樹脂の基板、あるいは金属の基板であっても良い。
また、貫通孔83の平面形状は、本実施の形態では、図19のAに示されるように円形であるとするが、図19のBに示されるように、貫通孔83の平面形状は、例えば四角形などの多角形であっても良い。
貫通孔83の開口幅は、例えば、100μm程度から20mm程度まで採り得る。この場合、担体基板81Wには、例えば100個程度から500万個程度まで配置し得る。
本明細書においては、レンズ付き基板41の平面方向における貫通孔83の大きさを、開口幅と呼ぶ。開口幅は、特に断り書きがが無い限り、貫通孔83の平面形状が四角形である場合は一辺の長さ、貫通孔83の平面形状が円形である場合は直径を意味する。
貫通孔83は、図20に示されるように、担体基板81Wの第1の表面における第1の開口幅131よりも、第1の表面と対向する第2の表面における第2の開口幅132の方が、小さくなっている。
第1の開口幅131よりも第2の開口幅132の方が小さい貫通孔83の3次元形状の例として、貫通孔83は、図20のAに示される円錐台の形状であって良いし、多角形の角錐台の形状であっても良い。貫通孔83の側壁の断面形状は、図20のAに示されるような直線であって良いし、図20のBに示されるような曲線であってもよい。あるいはまた、図20のCに示されるように、段差があっても良い。
第1の開口幅131よりも第2の開口幅132の方が小さい形状である貫通孔83は、貫通孔83内に樹脂を供給し、この樹脂を、第1と第2の表面のそれぞれから対向する方向へ型部材で押すことでレンズ樹脂部82を形成する際に、レンズ樹脂部82となる樹脂が、対向する2つの型部材からの力を受けて、貫通孔83の側壁に押し付けられる。これにより、レンズ樹脂部82となる樹脂と担体基板との密着強度が高くなるという作用をもたらし得る。
なお、貫通孔83の他の実施の形態として、第1の開口幅131と第2の開口幅132が等しい形状、すなわち貫通孔83の側壁の断面形状が垂直となる形状であっても良い。
<ウェットエッチングを用いた貫通孔の形成方法>
担体基板81Wの貫通孔83は、担体基板81Wをウェットエッチングにより、エッチングすることによって形成することができる。具体的には、担体基板81Wをエッチングする前に、担体基板81Wの非開口領域がエッチングされることを防ぐためのエッチングマスクが、担体基板81Wの表面に形成される。エッチングマスクの材料には、例えばシリコン酸化膜あるいはシリコン窒化膜などの絶縁膜が用いられる。エッチングマスクは、エッチングマスク材料の層を担体基板81Wの表面に形成し、この層に貫通孔83の平面形状となるパターンを開口することで、形成される。エッチングマスクが形成された後、担体基板81Wをエッチングすることにより、担体基板81Wに貫通孔83が形成される。
担体基板81Wとして、例えば、基板表面方位が(100)の単結晶シリコンを使用する場合、貫通孔83を形成するためには、KOHなどのアルカリ性の溶液を用いた結晶異方性ウェットエッチングを採用することができる。
基板表面方位が(100)の単結晶シリコンである担体基板81Wに、KOHなどのアルカリ性の溶液を用いた結晶異方性ウェットエッチングを行うと、開口側壁に(111)面が現れるようにエッチングが進行する。その結果、エッチングマスクの開口部の平面形状が円形もしくは四角形のどちらであっても、平面形状が四角形であって、貫通孔83の開口幅は第1の開口幅131よりも第2の開口幅132の方が小さく、貫通孔83の3次元形状が角錐台もしくはこれに類似の形状となる貫通孔83が得られる。角錐台となる貫通孔83の側壁の角度は、基板平面に対して、約55°の角度となる。
貫通孔形成のためのエッチングは、別の実施の例として、国際公開第2011/010739号などに開示された、結晶方位の制約を受けずに任意の形状にシリコンをエッチング可能な薬液を用いたウェットエッチングによって行っても良い。この薬液としては、例えば、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液に、界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールの少なくとも1つを加えた薬液、もしくは、KOH水溶液にイソプロピルアルコールを加えた薬液、などを採用することができる。
基板表面方位が(100)の単結晶シリコンである担体基板81Wに、上述したいずれかの薬液を用いて貫通孔83形成のためのエッチングを行うと、エッチングマスクの開口部の平面形状が円形である場合は、平面形状が円形であって、第1の開口幅131よりも第2の開口幅132の方が小さく、3次元形状が円錐台もしくはこれに類似の形状、となる貫通孔83が得られる。
エッチングマスクの開口部の平面形状が四角形である場合には、平面形状が四角形であって、開口幅は第1の開口幅131よりも第2の開口幅132の方が小さく、3次元形状が角錐台もしくはこれに類似の形状、となる貫通孔83が得られる。上記円錐台もしくは角錐台となる貫通孔83の側壁の角度は、基板平面に対して、約45°の角度となる。
<ドライエッチングを用いた貫通孔の形成方法>
また、貫通孔83形成のエッチングには、上述したウェットエッチングではなく、ドライエッチングを用いることも可能である。
図21を参照して、ドライエッチングを用いた貫通孔83の形成方法について説明する。
図21のAに示されるように、担体基板81Wの一方の表面に、エッチングマスク141が形成される。エッチングマスク141は、貫通孔83を形成する部分が開口されたマスクパターンとなっている。
次に、図21のBに示されるように、エッチングマスク141の側壁を保護するための保護膜142が形成された後、図21のCに示されるように、ドライエッチングにより担体基板81Wが所定の深さでエッチングされる。ドライエッチング工程により、担体基板81W表面とエッチングマスク141表面の保護膜142は除去されるが、エッチングマスク141側面の保護膜142は残存し、エッチングマスク141の側壁は保護される。エッチング後、図21のDに示されるように、側壁の保護膜142が除去され、エッチングマスク141が、開口パターンのパターンサイズを大きくする方向に後退される。
そして、再び、図21のB乃至Dの保護膜形成工程、ドライエッチング工程、エッチングマスク後退工程が、複数回繰り返し行われる。これにより、図21のEに示されるように、担体基板81Wは、周期性のある段差を持つ階段形状(凹凸形状)となるようにエッチングされる。
最後に、エッチングマスク141が除去されると、図21のFに示されるように、階段形状の側壁をもつ貫通孔83が、担体基板81Wに形成される。貫通孔83の階段形状の平面方向の幅(1段の幅)は、例えば、400nm乃至1μm程度とされる。
以上のようにドライエッチングを用いて貫通孔83を形成する場合には、保護膜形成工程、ドライエッチング工程、エッチングマスク後退工程が繰り返し実行される。
貫通孔83の側壁が周期性のある階段形状(凹凸形状)であることにより、入射光の反射を抑制することができる。また、仮に、貫通孔83の側壁がランダムな大きさの凹凸形状である場合には、貫通孔83内に形成されるレンズと側壁との間の密着層にボイド(空隙)が発生し、そのボイドが原因でレンズとの密着性が低下する場合がある。しかしながら、上述した形成方法によれば、貫通孔83の側壁は周期性のある凹凸形状となるので、密着性が向上し、レンズ位置ずれによる光学特性の変化を抑制することができる。
各工程で使用される材料の一例としては、例えば、担体基板81Wは単結晶シリコン、エッチングマスク141はフォトレジスト、保護膜142は、C4F8やCHF3などのガスプラズマを用いて形成するフロカーボンポリマー、エッチング処理は、SF6/O2、C4F8/SF6などFを含むガスを用いたプラズマエッチング、マスク後退工程は、O2ガス、CF4/O2などO2を含むプラズマエッチングとすることができる。
あるいはまた、担体基板81Wは単結晶シリコン、エッチングマスク141はSiO2、エッチングは、Cl2を含むプラズマ、保護膜142は、O2プラズマを用いてエッチング対象材を酸化させた酸化膜、エッチング処理は、Cl2を含むガスを用いたプラズマエッチングマスク後退工程は、CF4/O2などFを含むガスを用いたプラズマエッチングとすることができる。
以上のように、ウェットエッチング、または、ドライエッチングにより、担体基板81Wに、複数の貫通孔83を同時形成することができるが、担体基板81Wには、図22のAに示されるように、貫通孔83を形成していない領域に貫通溝151を形成しても良い。
図22のAは、貫通孔83に加えて貫通溝151を形成した担体基板81Wの平面図である。
貫通溝151は、例えば、図22のAに示されるように、行列状に配置された複数個の貫通孔83を避けて、行方向と列方向のそれぞれの貫通孔83の間の一部にだけ配置される。
また、担体基板81Wの貫通溝151は、積層レンズ構造体11を構成する各レンズ付き基板41どうしで、同一の位置に配置することができる。この場合には、積層レンズ構造体11として複数枚の担体基板81Wが積層された状態では、図22のBの断面図のように、複数枚の担体基板81Wの貫通溝151が、複数枚の担体基板81Wの間で貫通した構造となる。
レンズ付き基板41の一部としての担体基板81Wの貫通溝151は、例えば、レンズ付き基板41を変形させる応力がレンズ付き基板41の外部から働く場合に、応力によるレンズ付き基板41の変形を緩和する作用または効果をもたらし得る。
あるいは、貫通溝151は、例えば、レンズ付き基板41を変形させる応力がレンズ付き基板41の内部から発生する場合に、応力によるレンズ付き基板41の変形を緩和する作用または効果をもたらし得る。
<レンズ付き基板の製造方法>
次に、図23を参照して、基板状態のレンズ付き基板41Wの製造方法について説明する。
初めに、図23のAに示されるように、貫通孔83が複数形成された担体基板81Wが用意される。貫通孔83の側壁には遮光膜121が成膜されている。図23では、紙面の制約上、2個の貫通孔83のみが示されているが、実際には、図19で示したように、担体基板81Wの平面方向に、多数の貫通孔83が形成されている。また、担体基板81Wの外周に近い領域には、位置合わせのためのアライメントマーク(不図示)が形成されている。
担体基板81W上側の表側平坦部171と、下側の裏側平坦部172は、後の工程で行われるプラズマ接合が可能な程度に平坦に形成された平坦面となっている。担体基板81Wの厚みは、最終的にレンズ付き基板41として個片化され、他のレンズ付き基板41と重ねられた際に、レンズ間距離を決定するスペーサとしての役割も担っている。
担体基板81Wには、熱膨張係数が10ppm/℃以下の低熱膨張係数の基材を用いるのが好ましい。
次に、図23のBに示されるように、凹形状の光学転写面182が一定の間隔で複数配置された下型181の上に、担体基板81Wが配置される。より詳しくは、凹形状の光学転写面182が担体基板81Wの貫通孔83の内側に位置するように、担体基板81Wの裏側平坦部172と下型181の平坦面183とが重ね合わされる。下型181の光学転写面182は、担体基板81Wの貫通孔83と1対1に対応するように形成されており、対応する光学転写面182と貫通孔83の中心が光軸方向で一致するように、担体基板81Wと下型181の平面方向の位置が調整される。下型181は、硬質の型部材で形成されており、例えば、金属やシリコン、石英、ガラスで構成される。
次に、図23のCに示されるように、重ね合わされた下型181と担体基板81Wの貫通孔83の内側に、エネルギー硬化性樹脂191が充填(滴下)される。レンズ樹脂部82は、このエネルギー硬化性樹脂191を用いて形成される。そのため、エネルギー硬化性樹脂191は、気泡を含まないようにあらかじめ脱泡処理されていることが好ましい。脱泡処理としては、真空脱泡処理、または、遠心力による脱泡処理であることが好ましい。また、真空脱泡処理は充填後に行うことが好ましい。脱泡処理を行うことにより、気泡を抱き込むことなく、レンズ樹脂部82の成形が可能となる。
次に、図23のDに示されるように、重ね合わされた下型181と担体基板81Wの上に、上型201が配置される。上型201には、凹形状の光学転写面202が一定の間隔で複数配置されており、下型181を配置したときと同様に、貫通孔83の中心と光学転写面202の中心が光軸方向で一致するように、精度良く位置決めされた上で、上型201が配置される。
紙面上の縦方向となる高さ方向については、上型201と下型181との間隔を制御する制御装置により、上型201と下型181との間隔が予め定めた距離となるように、上型201の位置が固定される。このとき、上型201の光学転写面202と下型181の光学転写面182とで挟まれる空間は、光学設計によって計算されたレンズ樹脂部82(レンズ21)の厚みと等しくなる。
あるいはまた、図23のEに示されるように、下型181を配置したときと同様に、上型201の平坦面203と、担体基板81Wの表側平坦部171とを、重ね合わせても良い。この場合、上型201と下型181との距離は、担体基板81Wの厚みと同値となり、平面方向及び高さ方向の高精度な位置合わせが可能となる。
上型201と下型181との間隔が予め設定した距離となるように制御したとき、上述した図23のCの工程において、担体基板81Wの貫通孔83の内側に滴下されたエネルギー硬化性樹脂191の充填量は、担体基板81Wの貫通孔83と、その上下の上型201及び下型181とで囲まれる空間から溢れないようにコントロールされた量となっている。これにより、エネルギー硬化性樹脂191の材料を無駄にすることなく、製造コストを削減することができる。
続いて、図23のEに示される状態において、エネルギー硬化性樹脂191の硬化処理が行われる。エネルギー硬化性樹脂191は、例えば、熱またはUV光をエネルギーとして与え、所定の時間放置することで、硬化する。硬化中には、上型201を下方向に押し込んだり、アライメントをすることにより、エネルギー硬化性樹脂191の収縮による変形を最小限に抑制することができる。
エネルギー硬化性樹脂191の代わりに、熱可塑性樹脂を用いても良い。その場合には、図23のEに示される状態において、上型201と下型181を昇温することでエネルギー硬化性樹脂191がレンズ形状に成形され、冷却することで硬化する。
次に、図23のFに示されるように、上型201と下型181の位置を制御する制御装置が、上型201を上方向、下型181を下方向へ移動させて、上型201と下型181を担体基板81Wから離型する。上型201と下型181が担体基板81Wから離型されると、担体基板81Wの貫通孔83の内側に、レンズ21を含むレンズ樹脂部82が形成されている。
なお、担体基板81Wと接触する上型201と下型181の表面をフッ素系またはシリコン系等の離型剤でコーティングしてもよい。そのようにすることにより、上型201と下型181から担体基板81Wを容易に離型することができる。また、担体基板81Wとの接触面から容易に離型する方法として、フッ素含有DLC(Diamond Like Carbon)等の各種コーティングを行ってもよい。
次に、図23のGに示されるように、担体基板81Wとレンズ樹脂部82の表面に上側表面層122が形成され、担体基板81Wとレンズ樹脂部82の裏面に、下側表面層123が形成される。上側表面層122及び下側表面層123の成膜前後において、必要に応じてCMP(Chemical Mechanical Polishing)等を行うことで、担体基板81Wの表側平坦部171と裏側平坦部172を平坦化してもよい。
以上のように、担体基板81Wに形成された貫通孔83に、エネルギー硬化性樹脂191を上型201と下型181を用いて加圧成型(インプリント)することで、レンズ樹脂部82を形成し、レンズ付き基板41を製造することができる。
光学転写面182及び光学転写面202の形状は、上述した凹形状に限定されるものではなく、レンズ樹脂部82の形状に応じて適宜決定される。図15に示したように、レンズ付き基板41a乃至41eのレンズ形状は、光学系設計により導出された様々な形状をとることができ、例えば、両凸形状、両凹形状、平凸形状、平凹形状、凸メニスカス形状、凹メニスカス形状、更には高次非球面形状などでもよい。
また、光学転写面182及び光学転写面202の形状は、形成後のレンズ形状がモスアイ構造となる形状とすることもできる。
上述した製造方法によれば、エネルギー硬化性樹脂191の硬化収縮によるレンズ樹脂部82どうしの平面方向の距離の変動を、担体基板81Wの介在によって断ち切ることができるので、レンズ距離間精度を高精度に制御することができる。また、強度の弱いエネルギー硬化性樹脂191を、強度の強い担体基板81Wによって補強する効果がある。これにより、ハンドリング性の良いレンズを複数配置したレンズアレイ基板を提供することができるとともに、レンズアレイ基板の反りを抑制できる効果を有する。
<貫通孔形状が多角形の例>
図19のBに示したように、貫通孔83の平面形状は、例えば四角形などの多角形であっても良い。
図24は、貫通孔83の平面形状が四角形である場合の、レンズ付き基板41aの担体基板81aとレンズ樹脂部82aの平面図と断面図である。
図24におけるレンズ付き基板41aの断面図は、平面図のB‐B’線とC‐C’線における断面図を示している。
B‐B’線断面図とC‐C’線断面図を比較して判るように、貫通孔83aが四角形の場合、貫通孔83aの中心から貫通孔83aの上部外縁までの距離、および、貫通孔83aの中心から貫通孔83aの下部外縁までの距離は、四角形である貫通孔83aの辺方向と対角線方向とで異なり、対角線方向の方が大きい。このため、貫通孔83aの平面形状が四角形の場合、レンズ部91を円形にすると、レンズ部91外周から貫通孔83a側壁までの距離、言い換えれば、担持部92の長さを、四角形の辺方向と対角線方向とで異なる長さにする必要がある。
そこで、図24に示されるレンズ樹脂部82aは、以下の構造を備える。
(1)レンズ部91の外周に配置した腕部101の長さは、四角形の辺方向と対角線方向とで同じである。
(2)腕部101の外側に配置し、貫通孔83a側壁まで延在する脚部102の長さは、四角形の辺方向の脚部102の長さよりも対角線方向の脚部102の長さの方を、長くしている。
図24に示されるように、脚部102は、レンズ部91に直接は接していない一方、腕部101は、レンズ部91に直接接している。
図24のレンズ樹脂部82aでは、レンズ部91に直接接している腕部101の長さと厚さを、レンズ部91の外周全体に渡って一定にすることで、レンズ部91全体を偏りなく一定の力で支える、という作用または効果をもたらし得る。
さらに、レンズ部91全体を偏りなく一定の力で支えることにより、例えば、貫通孔83aを取り囲む担体基板81aから、貫通孔83aの外周全体に渡って応力が加わるような場合には、これをレンズ部91全体に偏りなく伝えることで、レンズ部91の特定の部分だけに偏って応力が伝わることを抑える、という作用または効果をもたらし得る。
図25は、平面形状が四角形である貫通孔83のその他の例について示す、レンズ付き基板41aの担体基板81aとレンズ樹脂部82aの平面図と断面図である。
図25におけるレンズ付き基板41aの断面図は、平面図のB‐B’線とC‐C’線における断面図を示している。
図25においても、図22と同様に、貫通孔83aの中心から貫通孔83aの上部外縁までの距離、および、貫通孔83aの中心から貫通孔83aの下部外縁までの距離は、四角形である貫通孔83aの辺方向と対角線方向とで異なり、対角線方向の方が大きい。このため、貫通孔83aの平面形状が四角形の場合、レンズ部91を円形にすると、レンズ部91外周から貫通孔83a側壁までの距離、言い換えれば、担持部92の長さを、四角形の辺方向と対角線方向とで異なる長さにする必要がある。
そこで、図25に示されるレンズ樹脂部82aは、以下の構造を備える。
(1)レンズ部91の外周に配置した脚部102の長さを、貫通孔83aの四角形の4つの辺に沿って、一定にしている。
(2)上記(1)の構造を実現するために、腕部101の長さは、四角形の辺方向の腕部の長さよりも対角線方向の腕部の長さの方を、長くしている。
図25に示されるように、脚部102は腕部101よりも、樹脂の膜厚が厚い。このため、レンズ付き基板41aの平面方向の単位面積当たりの体積も、脚部102は腕部101よりも大きい。
図25の実施例では、脚部102の体積をできるだけ小さくし、かつ、貫通孔83aの四角形の4辺に沿って一定にすることで、例えば樹脂の膨潤のような変形が発生するような場合には、これによる体積変化をできるだけ抑え、かつ体積変化がレンズ部91の外周全体に渡ってできるだけ偏らないようにする、という作用または効果をもたらし得る。
図26は、レンズ付き基板41のレンズ樹脂部82と貫通孔83の他の実施形態を示す断面図である。
図26に示されるレンズ樹脂部82と貫通孔83は、以下の構造を備える。
(1)貫通孔83の側壁は、段付き部221を備える段付き形状である。
(2)レンズ樹脂部82の担持部92の脚部102が、貫通孔83の側壁上方に配置されるだけでなく、貫通孔83に備わる段付き部221の上にも、レンズ付き基板41の平面方向に延在している。
図27を参照して、図26に示した段付き形状の貫通孔83の形成方法について説明する。
初めに、図27のAに示されるように、担体基板81Wの一方の面に、貫通孔開口の際のウェットエッチングに対する耐性を有するエッチングストップ膜241が形成される。エッチングストップ膜241は、例えば、シリコン窒化膜とすることができる。
次いで、担体基板81Wのもう一方の面に、貫通孔開口の際のウェットエッチングに対する耐性を有するハードマスク242が形成される。ハードマスク242も、例えばシリコン窒化膜とすることができる。
次に、図27のBに示されるように、ハードマスク242の所定の領域が、1回目のエッチングのために開口される。1回目のエッチングでは、貫通孔83の段付き部221の上段となる部分がエッチングされる。このため、1回目のエッチングのためのハードマスク242の開口部は、図26に記載のレンズ付き基板41の上側基板表面における開口に対応した領域となる。
次に、図27のCに示されるように、ウェットエッチングにより、ハードマスク242の開口部に応じて、担体基板81Wが所定の深さ分だけエッチングされる。
次に、図27のDに示されるように、エッチング後の担体基板81Wの表面に、ハードマスク243が改めて形成され、貫通孔83の段付き部221の下側となる部分に対応してハードマスク243が開口される。2回目のハードマスク243も、例えばシリコン窒化膜を採用することができる。
次に、図27のEに示されるように、ウェットエッチングにより、ハードマスク243の開口部に応じて、エッチングストップ膜241に到達するまで担体基板81Wがエッチングされる。
最後に、図27のFに示されるように、担体基板81Wの上側表面のハードマスク243と、下側表面のエッチングストップ膜241が除去される。
以上のように、ウェットエッチングによる貫通孔形成のための担体基板81Wのエッチングを2回に分けて行うことで、図26に示した段付き形状の貫通孔83が得られる。
図28は、貫通孔83aが段付き部221を有し、かつ、貫通孔83aの平面形状が円形である場合の、レンズ付き基板41aの担体基板81aとレンズ樹脂部82aの平面図と断面図である。
図28におけるレンズ付き基板41aの断面図は、平面図のB‐B’線とC‐C’線における断面図を示している。
貫通孔83aの平面形状が円形である場合、貫通孔83aの断面形状は当然直径の方向によらず同じである。これに加えて、レンズ樹脂部82aの外縁、腕部101、及び脚部102の断面形状も、直径の方向によらず同じとなるように形成されている。
図28の段付き形状を有する貫通孔83aは、貫通孔83a内に段付き部221を備えない図14の貫通孔83aと比較して、レンズ樹脂部82の担持部92の脚部102が、貫通孔83aの側壁と接触する面積を大きくできる、という作用または効果をもたらす。また、これにより、レンズ樹脂部82と貫通孔83aの側壁との密着強度、言い換えれば、レンズ樹脂部82aと担体基板81Wとの密着強度を増加させる、という作用または効果をもたらす。
図29は、貫通孔83aが段付き部221を有し、かつ、貫通孔83aの平面形状が四角形である場合の、レンズ付き基板41aの担体基板81aとレンズ樹脂部82aの平面図と断面図である。
図29におけるレンズ付き基板41aの断面図は、平面図のB‐B’線とC‐C’線における断面図を示している。
図29に示されるレンズ樹脂部82と貫通孔83は、以下の構造を備える。
(1)レンズ部91の外周に配置した腕部101の長さは、四角形の辺方向と対角線方向とで同じである。
(2)腕部101の外側に配置し、貫通孔83aの側壁まで延在する脚部102の長さは、四角形の辺方向の脚部102の長さよりも、対角線方向の脚部102の長さが長い。
図29に示されるように、脚部102は、レンズ部91に直接は接していない一方、腕部101は、レンズ部91に直接接している。
図29のレンズ樹脂部82aでは、図24に記載のレンズ樹脂部82aと同様に、レンズ部91に直接接している腕部101の長さと厚さを、レンズ部91の外周全体に渡って一定にすることで、レンズ部91全体を偏りなく一定の力で支える、という作用または効果をもたらし得る。
さらに、レンズ部91全体を偏りなく一定の力で支えることにより、例えば、貫通孔83aを取り囲む担体基板81aから、貫通孔83aの外周全体に渡って応力が加わるような場合には、これをレンズ部91全体に偏りなく伝えることで、レンズ部91の特定の部分だけに偏って応力が伝わることを抑える、という作用または効果をもたらし得る。
さらに、図29の貫通孔83aの構造は、貫通孔83a内に段付き部221を備えない図24等の貫通孔83aと比較して、レンズ樹脂部82aの担持部92の脚部102が、貫通孔83aの側壁と接触する面積を大きくできる、という作用または効果をもたらす。これにより、レンズ樹脂部82aと貫通孔83aの側壁部との密着強度、言い換えれば、レンズ樹脂部82aと担体基板81aとの密着強度が増加する、という作用または効果をもたらす。
<11.レンズ付き基板どうしの直接接合>
次に、複数のレンズ付き基板41が形成された基板状態のレンズ付き基板41Wどうしの直接接合について説明する。
以下の説明では、図30に示されるように、複数のレンズ付き基板41aが形成された基板状態のレンズ付き基板41Wを、レンズ付き基板41W−aと記述し、複数のレンズ付き基板41bが形成された基板状態のレンズ付き基板41Wを、レンズ付き基板41W−bと記述する。その他のレンズ付き基板41c乃至41eについても同様に表す。
図31を参照して、基板状態のレンズ付き基板41W−aと、基板状態のレンズ付き基板41W−bとの直接接合について説明する。
なお、図31では、レンズ付き基板41W−aの各部と対応するレンズ付き基板41W−bの部分には、レンズ付き基板41W−aと同じ符号を付して説明する。
レンズ付き基板41W−aとレンズ付き基板41W−bの上側表面には、上側表面層122または125が形成されている。レンズ付き基板41W−aとレンズ付き基板41W−bの下側表面には、下側表面層123または124が形成されている。そして、図31のAに示されるように、レンズ付き基板41W−aと41W−aの接合される面となる、レンズ付き基板41W−aの裏側平坦部172を含む下側表面全体、及び、レンズ付き基板41W−bの表側平坦部171を含む上側表面全体に、プラズマ活性処理が施される。プラズマ活性処理に使用されるガスは、O2、N2、He、Ar、H2などプラズマ処理可能なガスであれば何でもよい。ただし、プラズマ活性処理に使用されるガスとして、上側表面層122及び下側表面層123の構成元素と同じガスを使用すると、上側表面層122及び下側表面層123の膜自体の変質を抑制することができるので、好ましい。
そして、図31のBに示されるように、活性化された表面状態のレンズ付き基板41W−aの裏側平坦部172と、レンズ付き基板41W−bの表側平坦部171とを貼り合わせる。
このレンズ付き基板どうしの貼り合わせ処理により、レンズ付き基板41W−aの下側表面層123または124の表面のOH基の水素とレンズ付き基板41W−bの上側表面層122または125の表面のOH基の水素との間に水素結合が生じる。これにより、レンズ付き基板41W−aとレンズ付き基板41W−bとが固定される。このレンズ付き基板どうしの貼り合わせ処理は、大気圧の条件下で行い得る。
上記貼り合わせ処理を行ったレンズ付き基板41W−aとレンズ付き基板41W−bに、アニール処理を加える。これによりOH基どうしが水素結合した状態から脱水縮合が起きて、レンズ付き基板41W−aの下側表面層123または124と、レンズ付き基板41W−bの上側表面層122または125との間に、酸素を介した共有結合が形成される。あるいは、レンズ付き基板41W−aの下側表面層123または124に含まれる元素と、レンズ付き基板41W−bの上側表面層122または125に含まれる元素とが共有結合する。これらの結合により、2枚のレンズ付き基板が強固に固定される。このように、上側に配置したレンズ付き基板41Wの下側表面層123または124と、下側に配置したレンズ付き基板41Wの上側表面層122または125との間に共有結合が形成され、これによって2枚のレンズ付き基板41Wが固定されることを、本明細書では直接接合と呼ぶ。特許文献1が開示する複数枚のレンズ付き基板を基板全面に渡って樹脂によって固着する方法は、樹脂の硬化収縮や熱膨張とこれによるレンズの変形の懸念がある。これに対して、本技術の直接接合は、複数枚のレンズ付き基板41Wを固定する際に樹脂を用いないため、これによる硬化収縮や熱膨張を起こすことなく、複数枚のレンズ付き基板41Wを固定することができる、という作用または効果をもたらす。
上記アニール処理も、大気圧の条件下で行い得る。このアニール処理は、脱水縮合を行うため、100℃以上または150℃以上もしくは200℃以上で行い得る。一方、このアニール処理は、レンズ樹脂部82を形成するためのエネルギー性硬化樹脂191を熱から保護する観点やエネルギー性硬化樹脂191からの脱ガスを抑える観点から、400℃以下または350℃以下もしくは300℃以下で行い得る。
上記レンズ付き基板41Wどうしの貼り合わせ処理あるいは上記レンズ付き基板41Wどうしの直接接合処理を、仮に大気圧以外の条件下で行った場合には、接合されたレンズ付き基板41W−aとレンズ付き基板41W−bを大気圧の環境に戻すと、接合されたレンズ樹脂部82とレンズ樹脂部82との間の空間と、レンズ樹脂部82の外部との圧力差が生じてしまう。この圧力差により、レンズ樹脂部82に圧力が加わり、レンズ樹脂部82が変形してしまう懸念がある。
上記レンズ付き基板41Wどうしの貼り合わせ処理あるいは上記レンズ付き基板どうしの直接接合処理の双方を、大気圧の条件下で行うことは、接合を大気圧以外の条件下で行った場合に懸念されるレンズ樹脂部82の変形を回避することができる、という作用または効果をもたらす。
プラズマ活性処理を施した基板を直接接合する、言い換えればプラズマ接合することで、例えば、接着剤として樹脂を用いた場合のような流動性、熱膨張を抑制することができるので、レンズ付き基板41W−aとレンズ付き基板41W−bを接合する際の位置精度を向上させることができる。
レンズ付き基板41W−aの裏側平坦部172と、レンズ付き基板41W−bの表側平坦部171には、上述したように、上側表面層122または下側表面層123が成膜されている。この上側表面層122及び下側表面層123は、先に行ったプラズマ活性処理により、ダングリングボンドが形成されやすくなっている。即ち、レンズ付き基板41W−aの裏側平坦部172に成膜した下側表面層123と、レンズ付き基板41W−bの表側平坦部171に成膜した上側表面層122は、接合強度を増加させる役割も有している。
また、上側表面層122または下側表面層123が酸化膜で構成されている場合には、プラズマ(O2)による膜質変化の影響を受けないため、レンズ樹脂部82に対しては、プラズマによる腐食を抑制する効果も有する。
以上のように、複数のレンズ付き基板41aが形成された基板状態のレンズ付き基板41W−aと、複数のレンズ付き基板41bが形成された基板状態のレンズ付き基板41W−が、プラズマによる表面活性化処理を施したうえで直接接合される、言い換えれば、プラズマ接合を用いて接合される。
図32は、図31を参照して説明した基板状態のレンズ付き基板41Wどうしの接合方法を用いて、図13の積層レンズ構造体11に対応する5枚のレンズ付き基板41a乃至41eを基板状態で積層する第1の積層方法を示している。
最初に、図32のAに示されるように、積層レンズ構造体11において最下層に位置する基板状態のレンズ付き基板41W−eが用意される。
次に、図32のBに示されるように、積層レンズ構造体11において下から2層目に位置する基板状態のレンズ付き基板41W−dが、基板状態のレンズ付き基板41W−eの上に接合される。
次に、図32のCに示されるように、積層レンズ構造体11において下から3層目に位置する基板状態のレンズ付き基板41W−cが、基板状態のレンズ付き基板41W−dの上に接合される。
次に、図32のDに示されるように、積層レンズ構造体11において下から4層目に位置する基板状態のレンズ付き基板41W−bが、基板状態のレンズ付き基板41W−cの上に接合させる。
次に、図32のEに示されるように、積層レンズ構造体11において下から5層目に位置する基板状態のレンズ付き基板41W−aが、基板状態のレンズ付き基板41W−bの上に接合される。
最後に、図32のFに示されるように、積層レンズ構造体11においてレンズ付き基板41aの上層に位置する絞り板51Wが、基板状態のレンズ付き基板41W−aの上に接合される。
以上のように、基板状態の5枚のレンズ付き基板41W-a乃至41W-eを、積層レンズ構造体11における下層のレンズ付き基板41Wから、上層のレンズ付き基板41Wへと、1枚ずつ順番に積層していくことで、基板状態の積層レンズ構造体11Wが得られる。
図33は、図31を参照して説明した基板状態のレンズ付き基板41Wどうしの接合方法を用いて、図13の積層レンズ構造体11に対応する5枚のレンズ付き基板41a乃至41eを基板状態で積層する第2の積層方法を示している。
最初に、図33のAに示されるように、積層レンズ構造体11においてレンズ付き基板41aの上層に位置する絞り板51Wが用意される。
次に、図33のBに示されるように、積層レンズ構造体11において最上層に位置する基板状態のレンズ付き基板41W−aが、上下を反転させたうえで、絞り板51Wの上に接合される。
次に、図33のCに示されるように、積層レンズ構造体11において上から2層目に位置する基板状態のレンズ付き基板41W−bが、上下を反転させたうえで、基板状態のレンズ付き基板41W−aの上に接合される。
次に、図33のDに示されるように、積層レンズ構造体11において上から3層目に位置する基板状態のレンズ付き基板41W−cが、上下を反転させたうえで、基板状態のレンズ付き基板41W−bの上に接合される。
次に、図33のEに示されるように、積層レンズ構造体11において上から4層目に位置する基板状態のレンズ付き基板41W−dが、上下を反転させたうえで、基板状態のレンズ付き基板41W−cの上に接合される。
最後に、図33のFに示されるように、積層レンズ構造体11において上から5層目に位置する基板状態のレンズ付き基板41W−eが、上下を反転させたうえで、基板状態のレンズ付き基板41W−dの上に接合される。
以上のように、基板状態の5枚のレンズ付き基板41W-a乃至41W-eを、積層レンズ構造体11における上層のレンズ付き基板41Wから、下層のレンズ付き基板41Wへと、1枚ずつ順番に積層していくことで、基板状態の積層レンズ構造体11Wが得られる。
図32または図33で説明した積層方法により積層した基板状態の5枚のレンズ付き基板41W-a乃至41W-eは、ブレード若しくはレーザなどを用いてモジュール単位またはチップ単位に個片化されることで、5枚のレンズ付き基板41a乃至41eが積層された積層レンズ構造体11となる。
<12.カメラモジュールの第8及び第9の実施の形態>
図34は、本技術を適用した積層レンズ構造体を用いたカメラモジュールの第8の実施の形態を示す図である。
図35は、本技術を適用した積層レンズ構造体を用いたカメラモジュールの第9の実施の形態を示す図である。
図34及び図35の説明では、図13に示したカメラモジュールEと異なる部分についてのみ説明する。
図34のカメラモジュール1Hと図35のカメラモジュール1Jは、図13に示したカメラモジュールEにおける構造材73の部分が異なる構造に置き換えられている。
図34のカメラモジュール1Hでは、カメラモジュール1Jにおける構造材73の部分が、構造材301a及び301bと、光透過性基板302に置き換えられている。
具体的には、受光素子12の上側の一部に、構造材301aが配置されている。その構造材301aを介して、受光素子12と光透過性基板302が固定されている。構造材301aは、例えばエポキシ系の樹脂である。
光透過性基板302の上側には、構造材301bが配置されている。その構造材301bを介して、光透過性基板302と積層レンズ構造体11が固定されている。構造材301bは、例えばエポキシ系の樹脂である。
これに対して、図35のカメラモジュール1Jでは、図34のカメラモジュール1Hの構造材301aの部分が、光透過性を有する樹脂層311に置き換えられている。
樹脂層311は、受光素子12の上側全面に配置されている。その樹脂層311を介して、受光素子12と光透過性基板302が固定されている。受光素子12の上側全面に配置された樹脂層311は、光透過性基板302の上方から光透過性基板302に応力が加わった場合に、これが受光素子12の一部の領域に集中して印加されることを防ぎ、受光素子12全面に応力を分散させて受け止める作用または効果をもたらす。
光透過性基板302の上側には、構造材301bが配置されている。その構造材301bを介して、光透過性基板302と積層レンズ構造体11が固定されている。
図34のカメラモジュール1Hと図35のカメラモジュール1Jは、受光素子12の上側に光透過性基板302を備える。光透過性基板302は、例えば、カメラモジュール1Hまたは1Jを製造する途中で、受光素子12に傷が着くことを抑える、という作用または効果をもたらす。
<13.カメラモジュールの第10の実施の形態>
図36は、本技術を適用した積層レンズ構造体を用いたカメラモジュールの第10の実施の形態を示す図である。
図36に示されるカメラモジュール1Jにおいて、積層レンズ構造体11は、レンズバレル74に収納されている。レンズバレル74は、シャフト331に沿って移動する移動部材332と、固定部材333で固定されている。レンズバレル74が不図示の駆動モータによってシャフト331の軸方向に移動されることにより、積層レンズ構造体11から受光素子12の撮像面までの距離が調整される。
レンズバレル74、シャフト331、移動部材332、及び、固定部材333は、ハウジング334に収納されている。受光素子12の上部には保護基板335が配置され、保護基板335とハウジング334が、接着剤336により接続されている。
上記の積層レンズ構造体11を移動させる機構は、カメラモジュール1Jを用いたカメラが、画像を撮影する際に、オートフォーカス動作を行うことを可能にする、という作用または効果をもたらす。
<14.カメラモジュールの第11の実施の形態>
図37は、本技術を適用した積層レンズ構造体を用いたカメラモジュールの第11の実施の形態を示す図である。
図37のカメラモジュール1Lは、圧電素子による焦点調節機構を追加したカメラモジュールである。
即ち、カメラモジュール1Lでは、図34のカメラモジュール1Hと同様に、受光素子12の上側の一部に、構造材301aが配置されている。その構造材301aを介して、受光素子12と光透過性基板302が固定されている。構造材301aは、例えばエポキシ系の樹脂である。
光透過性基板302の上側には、圧電素子351が配置されている。その圧電素子351を介して、光透過性基板302と積層レンズ構造体11が固定されている。
カメラモジュール1Lでは、積層レンズ構造体11の下側に配置した圧電素子351へ電圧を印加および遮断することで、積層レンズ構造体11を上下方向に移動させることができる。積層レンズ構造体11を移動する手段としては、圧電素子351に限らず、電圧の印加および遮断によって形状が変化する他のデバイスを用いることができる。例えばMEMSデバイスを用いることができる。
上記の積層レンズ構造体11を移動させる機構は、カメラモジュール1Lを用いたカメラが、画像を撮影する際に、オートフォーカス動作を行うことを可能にする、という作用または効果をもたらす。
<15.他の構造と比較した本構造の効果>
積層レンズ構造体11は、レンズ付き基板41どうしを直接接合により固着させた構造(以下、本構造という。)である。本構造の作用及び効果について、レンズが形成されたレンズ付き基板のその他の構造と比較して説明する。
<比較構造例1>
図38は、本構造と比較するための第1の基板構造(以下、比較構造例1という。)であって、特開2011−138089号公報(以下、比較文献1という。)において図14(b)として開示されたウエハレベル積層構造の断面図である。
図38に示されるウエハレベル積層構造1000は、ウエハ基板1010上にイメージセンサ1011が複数配列されているセンサアレイ基板1012の上に、2枚のレンズアレイ基板1021が、柱状のスペーサ1022を介して積層された構造を有する。各レンズアレイ基板1021は、レンズ付き基板1031と、そのレンズ付き基板1031に複数形成された貫通孔部分に形成されているレンズ1032とで構成される。
<比較構造例2>
図39は、本構造と比較するための第2の基板構造(以下、比較構造例2という。)であって、特開2009−279790号公報(以下、比較文献2という。)において図5(a)として開示されたレンズアレイ基板の断面図である。
図39に示されるレンズアレイ基板1041では、板状の基板1051に設けられた複数の貫通孔1052それぞれに、レンズ1053が設けられている。各レンズ1053は、樹脂(エネルギー硬化性樹脂)1054で形成されており、その樹脂1054は、基板1051の上面にも形成されている。
図40を参照して、図39のレンズアレイ基板1041の製造方法について簡単に説明する。
図40のAは、複数個の貫通孔1052が形成された基板1051が、下型1061の上に置かれた状態を示している。下型1061は、この後の工程で、樹脂1054を下方から上方へ押す金型である。
図40のBは、複数個の貫通孔1052内部と基板1051上面に樹脂1054を塗布した後、上型1062を基板1051の上に配置し、上型1062と下型1061を用いて、加圧成型している状態を示している。上型1062は、樹脂1054を上方から下方へ押す金型である。図40のBに示される状態で、樹脂1054の硬化が行われる。
図40のCは、樹脂1054が硬化した後、上型1062と下型1061を離形させ、レンズアレイ基板1041が完成した状態を示している。
このレンズアレイ基板1041は、(1)基板1051の貫通孔1052の位置に形成された樹脂1054がレンズ1053となり、このレンズ1053が基板1051に複数個形成され、かつ、(2)これら複数個のレンズ1053の間に位置する基板1051の上側表面全体に、樹脂1054の薄い層が形成されている、ことが特徴である。
このレンズアレイ基板1041を複数積層した構造体を形成する場合、基板1051の上側表面全体に形成された樹脂1054の薄い層が、基板どうしを接着する接着剤としての作用または効果をもたらす。
また、レンズアレイ基板1041を複数積層した構造体を形成する場合、比較構造例1として示した図38のウエハレベル積層構造1000と比較して、基板どうしを接着する面積を大きくすることができるので、基板どうしをより強い力で接着することができる。
<比較構造例2において樹脂がもたらす作用>
比較構造例2である図39のレンズアレイ基板1041が開示されている比較文献2では、レンズ1053となる樹脂1054の作用として、以下のことが開示されている。
比較構造例2では、樹脂1054としてエネルギー硬化性樹脂が使用されている。そして、エネルギー硬化性樹脂の一例として、光硬化性樹脂が使用されている。エネルギー硬化性樹脂として光硬化性樹脂を使用した場合、UV光が樹脂1054に照射されると、樹脂1054が硬化する。この硬化により、樹脂1054では、硬化収縮が起きる。
しかし、図39のレンズアレイ基板1041の構造によれば、樹脂1054の硬化収縮が起きても、複数個あるレンズ1053の間には基板1051が介在するので、樹脂1054の硬化収縮によるレンズ1053間の距離の変動を断ち切ることができ、これにより、複数個のレンズ1053を配置したレンズアレイ基板1041の反りを抑制することができるとしている。
<比較構造例3>
図41は、本構造と比較するための第3の基板構造(以下、比較構造例3という。)であって、特開2010−256563号公報(以下、比較文献3という。)において図1として開示されたレンズアレイ基板の断面図である。
図41に示されるレンズアレイ基板1081では、板状の基板1091に設けられた複数の貫通孔1092それぞれに、レンズ1093が設けられている。各レンズ1093は樹脂(エネルギー硬化性樹脂)1094で形成されており、その樹脂1094は、貫通孔1092が設けられていない基板1091の上面にも形成されている。
図42を参照して、図41のレンズアレイ基板1081の製造方法について簡単に説明する。
図42のAは、複数個の貫通孔1092が形成された基板1091が、下型1101の上に置かれた状態を示している。下型1101は、この後の工程で、樹脂1094を下方から上方へ押す金型である。
図42のBは、複数個の貫通孔1092内部と基板1091上面に樹脂1094を塗布した後、上型1102を基板1091の上に配置し、上型1102と下型1101を用いて、加圧成型している状態を示している。上型1102は、樹脂1094を上方から下方へ押す金型である。図42のBに示される状態で、樹脂1094の硬化が行われる。
図42のCは、樹脂1094が硬化した後、上型1102と下型1101を離形させ、レンズアレイ基板1081が完成した状態を示している。
このレンズアレイ基板1081は、(1)基板1091の貫通孔1092の位置に形成された樹脂1094がレンズ1093となり、このレンズ1093が基板1091に複数個形成され、かつ、(2)これら複数個のレンズ1093の間に位置する基板1091の上側表面全体に、樹脂1094の薄い層が形成されている、ことが特徴である。
<比較構造例3において樹脂がもたらす作用>
比較構造例3である図41のレンズアレイ基板1081が開示されている比較文献3では、レンズ1093となる樹脂1094の作用として、以下のことが開示されている。
比較構造例3では、樹脂1094としてエネルギー硬化性樹脂が使用されている。そして、エネルギー硬化性樹脂の一例として、光硬化性樹脂が使用されている。エネルギー硬化性樹脂として光硬化性樹脂を使用した場合、UV光が樹脂1094に照射されると、樹脂1094が硬化する。この硬化により、樹脂1094では、硬化収縮が起きる。
しかし、図41のレンズアレイ基板1081の構造によれば、樹脂1094の硬化収縮が起きても、複数個あるレンズ1093の間には基板1091が介在するので、樹脂1094の硬化収縮によるレンズ1093間の距離の変動を断ち切ることができ、これにより、複数個のレンズ1093を配置したレンズアレイ基板1081の反りを抑制することができるとしている。
以上のように、比較文献2及び3では、光硬化性樹脂が硬化する際、硬化収縮が起きることが開示されている。なお、光硬化性樹脂が硬化する際、硬化収縮が起きることは、比較文献2及び3以外にも、例えば、特開2013−1091号公報などでも開示されている。
また、樹脂をレンズの形状に成型し、成型後の樹脂を硬化させると、樹脂に硬化収縮が起きて問題となるのは、光硬化性樹脂に限ったことではない。例えば、光硬化性樹脂と同様にエネルギー硬化性樹脂の一種である熱硬化性樹脂においても、硬化の際に硬化収縮が起きることが問題となる。このことは、例えば、比較文献1や3、特開2010−204631号公報などにおいても開示されている。
<比較構造例4>
図43は、本構造と比較するための第4の基板構造(以下、比較構造例4という。)であって、上述した比較文献2において図6として開示されたレンズアレイ基板の断面図である。
図43のレンズアレイ基板1121は、図39に示したレンズアレイ基板1041と比較すると、貫通孔1042部分以外の基板1141の形状が、上側だけでなく下側にも突出した形状となっている点、及び、基板1141の下側表面の一部にも、樹脂1144が形成されている点が異なる。レンズアレイ基板1121のその他の構成は、図39に示したレンズアレイ基板1041と同様である。
図44は、図43のレンズアレイ基板1121の製造方法を説明する図であって、図40のBに対応する図である。
図44は、複数個の貫通孔1142内部と基板1141上面に樹脂1144を塗布した後、上型1152と下型1151を用いて、加圧成型している状態を示している。樹脂1144は、基板1141下面と下型1151との間にも注入されている。図44に示される状態で、樹脂1144の硬化が行われる。
このレンズアレイ基板1121は、(1)基板1141の貫通孔1142の位置に形成された樹脂1144がレンズ1143となり、このレンズ1143が基板1141に複数個形成され、かつ、(2)これら複数個のレンズ1143の間に位置する基板1141の上側表面全体に、樹脂1144の薄い層が形成されているだけでなく、基板1141の下側表面の一部にも、樹脂1144の薄い層が形成されている、ことが特徴である。
<比較構造例4において樹脂がもたらす作用>
比較構造例4である図43のレンズアレイ基板1121が開示されている比較文献2では、レンズ1143となる樹脂1144の作用として、以下のことが開示されている。
比較構造例4である図43のレンズアレイ基板1121においても、樹脂1144として、エネルギー硬化性樹脂の一例である光硬化性樹脂が使用されている。そして、UV光が樹脂1144に照射されると、樹脂1144が硬化する。この硬化により、比較構造例2および3と同様に、樹脂1144では、硬化収縮が起きる。
しかし、比較構造例4のレンズアレイ基板1121では、複数個のレンズ1143の間に位置する基板1141の上側表面全体だけでなく、基板1141の下側表面の一定の領域にも、樹脂1144の薄い層が形成されている。
このように、基板1141の上側表面と下側表面の双方に樹脂1144を形成した構造とすることにより、レンズアレイ基板1121全体の反りの方向を相殺することができる。
これに対して、比較構造例2として図39に示したレンズアレイ基板1041では、複数個のレンズ1053の間に位置する基板1051の上側表面全体には樹脂1054の薄い層が形成されているが、基板1051の下側表面には、樹脂1054の薄い層が一切形成されていない。
従って、図43のレンズアレイ基板1121では、図39のレンズアレイ基板1041と比較して、反り量をより小さくしたレンズアレイ基板を提供することができる。
<比較構造例5>
図45は、本構造と比較するための第5の基板構造(以下、比較構造例5という。)であって、上述した比較文献2において図9として開示されたレンズアレイ基板の断面図である。
図45のレンズアレイ基板1161は、図39に示したレンズアレイ基板1041と比較すると、基板1171に形成された貫通孔1172近傍の基板裏面に、樹脂はみだし領域1175を有している点が異なる。レンズアレイ基板1161のその他の構成は、図39に示したレンズアレイ基板1041と同様である。
なお、図45のレンズアレイ基板1161は、個片化された後の状態を示している。
このレンズアレイ基板1161は、(1)基板1171の貫通孔1172の位置に形成された樹脂1174がレンズ1173となり、このレンズ1173が基板1171に複数個形成され、かつ、(2)これら複数個のレンズ1173の間に位置する基板1171の上側表面全体に、樹脂1174の薄い層が形成されているだけでなく、基板1171の下側表面の一部にも、樹脂1174の薄い層が形成されている、ことが特徴である。
<比較構造例5において樹脂がもたらす作用>
比較構造例5である図45のレンズアレイ基板1161が開示されている比較文献2では、レンズ1173となる樹脂1174の作用として、以下のことが開示されている。
比較構造例5である図45のレンズアレイ基板1161においても、樹脂1174として、エネルギー硬化性樹脂の一例である光硬化性樹脂が使用されている。そして、UV光が樹脂1174に照射されると、樹脂1174が硬化する。この硬化により、比較構造例2および3と同様に、樹脂1174では、硬化収縮が起きる。
しかし、比較構造例5のレンズアレイ基板1171では、複数個のレンズ1173の間に位置する基板1171の上側表面全体だけでなく、基板1171の下側表面の一定の領域にも、樹脂1174の薄い層(樹脂はみだし領域1175)が形成されている。これにより、レンズアレイ基板1171全体の反りの方向を相殺し、反り量をより小さくしたレンズアレイ基板を提供することができる。
<比較構造例2乃至5において樹脂がもたらす作用の比較>
比較構造例2乃至5において樹脂がもたらす作用についてまとめると、次のようになる。
(1)比較構造例2及び3のように、レンズアレイ基板の上面全体に樹脂の層を配置した構造の場合、複数個のレンズを配置した基板に、反りが発生してしまう。
図46は、比較構造例2及び3のように、レンズアレイ基板の上面全体に樹脂の層を配置した構造を模式的に表した図であり、レンズとなる樹脂がもたらす作用を説明する図である。
図46のA及びBに示されるように、レンズアレイ基板1211(レンズ及び貫通孔の図示は省略)の上面に配置された光硬化性樹脂1212の層では、硬化のためのUV光の照射により、硬化収縮が生じる。これにより、光硬化性樹脂1212の層内では、光硬化性樹脂1212に起因した収縮方向の力が発生する。
一方、レンズアレイ基板1211自体は、UV光を照射しても、収縮も膨張もしない。すなわち、レンズアレイ基板1211自体には、基板に起因した力は発生しない。その結果、レンズアレイ基板1211は、図46のCに示されるように、下に凸の形状に反ってしまう。
(2)しかし、比較構造例4および5のように、レンズアレイ基板の上面と下面の双方に樹脂の層を配置した構造の場合、レンズアレイ基板の反りの方向が相殺されるので、比較構造例2及び3よりも、レンズアレイ基板の反り量を小さくすることができる。
図47は、比較構造例4及び5のように、レンズアレイ基板の上面と下面の双方に樹脂の層を配置した構造を模式的に表した図であり、レンズとなる樹脂がもたらす作用を説明する図である。
図47のA及びBに示されるように、レンズアレイ基板1211の上面に配置した光硬化性樹脂1212の層では、硬化のためのUV光の照射により、硬化収縮が生じる。これにより、レンズアレイ基板1211の上面に配置した光硬化性樹脂1212の層内では、光硬化性樹脂1212に起因した収縮方向の力が発生する。このため、レンズアレイ基板1211の上面側では、レンズアレイ基板1211を下に凸の形状に反らせようとする力が働く。
これに対して、レンズアレイ基板1211自体は、UV光を照射しても、収縮も膨張もしない。すなわち、レンズアレイ基板1211自体には、基板に起因した力は発生しない。
一方、レンズアレイ基板1211の下面に配置した光硬化性樹脂1212の層では、硬化のためのUV光の照射により、硬化収縮が生じる。これにより、レンズアレイ基板1211の下面に配置した光硬化性樹脂1212の層内では、光硬化性樹脂1212に起因した収縮方向の力が発生する。このため、レンズアレイ基板1211の下面側では、レンズアレイ基板1211を上に凸の形状に反らせようとする力が働く。
レンズアレイ基板1211の上面側における、レンズアレイ基板1211を下に凸の形状に反らせようとする力と、レンズアレイ基板1211の下面側における、レンズアレイ基板1211を上に凸の形状に反らせようとする力は、相殺されるように働く。
その結果、図47のCに示されるように、比較構造例4及び5におけるレンズアレイ基板1211の反り量は、図46のCに示した比較構造例2及び3における反り量よりも低減される。
以上のように、レンズアレイ基板を反らせる力およびレンズアレイ基板の反り量は、
(1)当該レンズアレイ基板の上面において当該レンズアレイ基板に作用する力の方向および大きさと、
(2)当該レンズアレイ基板の下面において当該レンズアレイ基板に作用する力の方向および大きさと、
の相対関係の影響を受ける。
<比較構造例6>
そこで、例えば、図48のAに示されるように、レンズアレイ基板1211の上面に配置する光硬化性樹脂1212の層及び面積と、レンズアレイ基板1211の下面に配置する光硬化性樹脂1212の層及び面積とを、同一にするレンズアレイ基板構造が考えられる。このレンズアレイ基板構造を、本構造と比較するための第6の基板構造(以下、比較構造例6という。)と呼ぶ。
比較構造例6では、レンズアレイ基板1211の上面に配置された光硬化性樹脂1212の層では、光硬化性樹脂1212に起因した収縮方向の力が発生する。レンズアレイ基板1211自体は、基板に起因した力が発生しない。このため、レンズアレイ基板1211の上面側では、レンズアレイ基板1211を下に凸の形状に反らせようとする力が働く。
一方、レンズアレイ基板1211の下面に配置された光硬化性樹脂1212の層では、光硬化性樹脂1212に起因した収縮方向の力が発生する。レンズアレイ基板1211自体は、基板に起因した力が発生しない。このため、レンズアレイ基板1211の下面側では、レンズアレイ基板1211を上に凸の形状に反らせようとする力が働く。
レンズアレイ基板1211を反らせようとする上記2つの力が、図47のAに示した構造よりもさらに相殺する方向に働く。その結果、レンズアレイ基板1211を反らせる力およびレンズアレイ基板1211の反り量は、比較構造例4および5よりもさらに低減される。
<比較構造例7>
ところで、実際には、カメラモジュールに組み込まれる積層レンズ構造体を構成するレンズ付き基板の形状は全て同じではない。より具体的には、積層レンズ構造体を構成する複数のレンズ付き基板どうしは、例えば、レンズ付き基板の厚さや貫通孔の大きさが異なっていたり、貫通孔に形成されるレンズの厚みや形状、体積などが異なる場合がある。さらに言えば、レンズ付き基板の上面及び下面に形成される光硬化性樹脂の膜厚なども、各レンズ付き基板で異なる場合もある。
図49は、第7の基板構造(以下、比較構造例7という。)としての、3枚のレンズ付き基板の積層で構成される積層レンズ構造体の断面図である。この積層レンズ構造体では、図48で示した比較構造例6と同様に、各レンズ付き基板の上面及び下面に配置された光硬化性樹脂の層及び面積が同一に形成されているものとする。
図49に示される積層レンズ構造体1311は、3枚のレンズ付き基板1321乃至1323で構成される。
以下では、3枚のレンズ付き基板1321乃至1323のうち、真ん中のレンズ付き基板1321を、第1のレンズ付き基板1321、最上層のレンズ付き基板1322を、第2のレンズ付き基板1322、最下層のレンズ付き基板1323を、第3のレンズ付き基板1323という。
最上層に配置された第2のレンズ付き基板1322と、最下層に配置された第3のレンズ付き基板1323は、基板の厚さ、及び、レンズの厚さが異なる。
より具体的には、レンズの厚さが、第2のレンズ付き基板1322よりも第3のレンズ付き基板1323の方が厚く形成されており、それに伴い、基板の厚さも、第2のレンズ付き基板1322よりも第3のレンズ付き基板1323の方が厚く形成されている。
第1のレンズ付き基板1321と第2のレンズ付き基板1322との接触面、及び、第1のレンズ付き基板1321と第3のレンズ付き基板1323との接触面には、樹脂1341が全面に渡って形成されている。
3枚のレンズ付き基板1321乃至1323の貫通孔の断面形状は、基板上面よりも基板下面の方が広い、いわゆる末広がり形状である。
図50を参照して、形状の異なる3枚のレンズ付き基板1321乃至1323がもたらす作用について説明する。
図50のA乃至Cは、図49に示した積層レンズ構造体1311を模式的に表した図である。
この積層レンズ構造体1311のように、第1のレンズ付き基板1321の上面と下面に、基板の厚さが異なる第2のレンズ付き基板1322と第3のレンズ付き基板1323を配置した場合、3枚のレンズ付き基板1321乃至1323の接触面全面に渡って存在する樹脂1341の層が、積層レンズ構造体1311の厚さ方向のどの位置に存在するかによって、この積層レンズ構造体1311を反らせる力、及び、積層レンズ構造体1311の反る量が、変わる。
3枚のレンズ付き基板1321乃至1323の接触面全面に渡って存在する樹脂1341の層が、積層レンズ構造体1311の中心線、即ち、積層レンズ構造体1311の厚さ方向の中点を通って、基板平面方向に走る線に対して対称に配置されていないと、第1のレンズ付き基板1321の上面と下面に配置された樹脂1341の硬化収縮によって発生する力の作用を、図48のCに示したように、完全に相殺することはできない。その結果、積層レンズ構造体1311はどちらかの方向へ反ってしまう。
例えば、第1のレンズ付き基板1321の上面と下面の2層の樹脂1341が、積層レンズ構造体1311の厚さ方向の中心線よりも上側方向にずれて配置される場合、2層の樹脂1341が硬化収縮を起こすと、積層レンズ構造体1311は、図50のCに示されるように、下に凸の形状に反ってしまう。
さらに、第2のレンズ付き基板1322と第3のレンズ付き基板1323のうち、厚さが薄い方の基板の貫通孔の断面形状が、第1のレンズ付き基板1321の方向に向かって大きくなる形状である場合には、レンズの欠損あるいは破損、となる懸念が増加する。
図49に示した例では、第2のレンズ付き基板1322と第3のレンズ付き基板1323のうち、厚さが薄い方の第2のレンズ付き基板1322の貫通孔の断面形状が、第1のレンズ付き基板1321の方向に向かって大きくなる末広がり形状である。このような形状において、第1のレンズ付き基板1321の上面と下面の2層の樹脂1341が硬化収縮した際には、積層レンズ構造体1311には、図50のCに示したように下に凸の形状に反る力が作用し、この力は、図50のDに示されるように、第2のレンズ付き基板1322において、レンズと基板が離間する方向の力として作用する。この作用により、第2のレンズ付き基板1322のレンズ1332が、欠損あるいは破損、となる懸念が増加する。
次に、樹脂が熱膨張する場合について考える。
<比較構造例8>
図51は、第8の基板構造(以下、比較構造例8という。)としての、3枚のレンズ付き基板の積層で構成される積層レンズ構造体の断面図である。この積層レンズ構造体では、図48で示した比較構造例6と同様に、各レンズ付き基板の上面及び下面に配置された光硬化性樹脂の層及び面積が同一に形成されているものとする。
図51の比較構造例8は、3枚のレンズ付き基板1321乃至1323の貫通孔の断面形状が、基板上面よりも基板下面の方が狭い、いわゆる下すぼみ形状である点のみが、図49の比較構造例7と異なる。
図52のA乃至Cは、図51に示した積層レンズ構造体1311を模式的に表した図である。
ユーザがカメラモジュールを実使用する際、動作に伴う消費電力の増大によりカメラの筐体内の温度が上昇し、カメラモジュールの温度も上昇する。この温度上昇により、図51の積層レンズ構造体1311において、第1のレンズ付き基板1321の上面と下面に配置された樹脂1341が熱膨張する。
第1のレンズ付き基板1321の上面と下面に配置する樹脂1341の面積と厚さを、図48のAのように同一にしたとしても、3枚のレンズ付き基板1321乃至1323の接触面全面に渡って存在する樹脂1341の層が、積層レンズ構造体1311の中心線、即ち、積層レンズ構造体1311の厚さ方向の中点を通って、基板平面方向に走る線に対して対称に配置されていないと、第1のレンズ付き基板1321の上面と下面に配置された樹脂1341の熱膨張によって発生する発生する力の作用を、図48のCに示したように、完全に相殺することはできない。その結果、積層レンズ構造体1311はどちらかの方向へ反ってしまう。
例えば、第1のレンズ付き基板1321の上面と下面の2層の樹脂1341が、積層レンズ構造体1311の厚さ方向の中心線よりも上側方向にずれて配置される場合、2層の樹脂1341が熱膨張を起こすと、積層レンズ構造体1311は、図52のCに示されるように、上に凸の形状に反ってしまう。
さらに、図51に示した例では、第2のレンズ付き基板1322と第3のレンズ付き基板1323のうち、厚さが薄い方の第2のレンズ付き基板1322の貫通孔の断面形状が、第1のレンズ付き基板1321の方向に向かって小さくなる下すぼみ形状である。このような形状において、第1のレンズ付き基板1321の上面と下面の2層の樹脂1341が熱膨張した際には、積層レンズ構造体1311には、上に凸の形状に反る力が作用し、この力は、図52のDに示されるように、第2のレンズ付き基板1322において、レンズと基板が離間する方向の力として作用する。この作用により、第2のレンズ付き基板1322のレンズ1332が、欠損あるいは破損、となる懸念が増加する。
<本構造>
図53は、本構造を採用した3枚のレンズ付き基板1361乃至1363からなる積層レンズ構造体1371を示す図である。
図53のAは、図49の積層レンズ構造体1311に対応した構造であり、貫通孔の断面形状が、いわゆる末広がり形状の構造である。一方、図53のBは、図51の積層レンズ構造体1311に対応した構造であり、貫通孔の断面形状が、いわゆる下すぼみ形状の構造である。
図54は、本構造がもたらす作用を説明するため、図53の積層レンズ構造体1371を模式的に示した図である。
積層レンズ構造体1371は、真ん中の第1のレンズ付き基板1361の上方に第2のレンズ付き基板1362を配置し、第1のレンズ付き基板1361の下方に第3のレンズ付き基板1363を配置した構造である。
最上層に配置された第2のレンズ付き基板1362と、最下層に配置された第3のレンズ付き基板1363は、基板の厚さ、及び、レンズの厚さが異なる。より具体的には、レンズの厚さが、第2のレンズ付き基板1362よりも第3のレンズ付き基板1363の方が厚く形成されており、それに伴い、基板の厚さも、第2のレンズ付き基板1362よりも第3のレンズ付き基板1363の方が厚く形成されている。
本構造の積層レンズ構造体1371では、レンズ付き基板どうしを固着する手段として、基板どうしの直接接合が用いられる。言い換えれば、固着させるレンズ付き基板へプラズマ活性処理が施され、固着させる2つのレンズ付き基板がプラズマ接合される。さらに言い換えれば、積層する2枚のレンズ付き基板それぞれの表面に、シリコン酸化膜を形成し、これに水酸基を結合させた後、2枚のレンズ付き基板どうしを貼り合わせ、これを昇温して脱水縮合させる。こうして、2枚のレンズ付き基板が、シリコン−酸素共有結合により、直接接合されている。
したがって、本構造の積層レンズ構造体1371においては、レンズ付き基板どうしを固着する手段として、樹脂による接着は用いられていない。このため、レンズ付き基板とレンズ付き基板との間に、レンズ形成用の樹脂もしくは基板を接着するための樹脂が配置されない。また、レンズ付き基板の上面や下面に樹脂が配置されないため、レンズ付き基板の上面や下面において、樹脂が熱膨張したり、硬化収縮することはない。
従って、積層レンズ構造体1371では、第1のレンズ付き基板1351の上層及び下層に、レンズの厚さ、及び、基板の厚さが異なる第2のレンズ付き基板1362と第3のレンズ付き基板1363が配置されても、上述した各比較構造例1乃至8のような、硬化収縮に起因した基板の反り、及び、熱膨張に起因した基板の反りは発生しない。
即ち、レンズ付き基板どうしを直接接合により固着させた本構造は、上方と下方に、レンズの厚さ、及び、基板の厚さが異なるレンズ付き基板を積層した場合でも、上述した各比較構造例1乃至8よりも、基板の反りを大きく抑制することができる、という作用及び効果をもたらす。
<16.各種の変形例>
上述した各実施の形態のその他の変形例について、以下説明する。
<積層レンズ構造体1401の構成例>
図55は、積層レンズ構造体1401の断面の模式図である。なお、図55では、主に説明に必要な部分を図示しており、説明に必要のない部分の図示は適宜省略している。
積層レンズ構造体1401においては、レンズ付き基板1411a乃至1411eが5層に積層されている。
レンズ付き基板1411aの担体基板1421aの貫通孔1424aの内側には、レンズ樹脂部1422aが形成されている。
レンズ付き基板1411bの担体基板1421bの貫通孔1424bの内側には、レンズ樹脂部1422bが形成されている。また、担体基板1421bの上面には、空気溝1423bが形成されている。空気溝1423bは、基板状態のレンズ付き基板1411W−b(図56等)において、隣接する貫通孔1424bを接続するように形成される。
なお、レンズ付き基板1411c乃至1411eもレンズ付き基板1411bと同様の構成を有しており、その説明は省略する。
積層レンズ構造体1401の側面には、樹脂1425がコーティングされている。樹脂1425は、空気溝1423b乃至1423eを塞ぐためのものであり、少なくとも積層レンズ構造体1401の側面において空気溝1423b乃至1423eによる開口を塞いでいればよい。
なお、以下、レンズ付き基板1411a乃至1411eを個々に区別する必要がない場合、単にレンズ付き基板1411と称する。以下、担体基板1421a乃至1421eを個々に区別する必要がない場合、単に担体基板1421と称する。以下、レンズ樹脂部1422a乃至1422eを個々に区別する必要がない場合、単にレンズ樹脂部1422と称する。以下、空気溝1423b乃至1423eを個々に区別する必要がない場合、単に空気溝1423と称する。以下、貫通孔1424a乃至1424eを個々に区別する必要がない場合、単に貫通孔1424と称する。
<積層レンズ構造体1401の製造方法>
次に、図56乃至図68を参照して、積層レンズ構造体1401の製造方法について説明する。なお、以下、主に積層レンズ構造体1401の製造方法の特徴を表す工程について説明する。説明を省略した工程は、基本的に上述した工程と同様である。
図56は、レンズ樹脂部1422bを形成する前の基板状態の担体基板1421W−bの一部の平面図を模式的に示している。
この図に示されるように、まず、担体基板1421W−bに、複数の貫通孔1424bが格子状に並ぶように形成される。また、隣接する貫通孔1424bを接続するように空気溝1423bが形成される。空気溝1423bは、各貫通孔1424bの各辺のほぼ中心を通るように格子状に配置される。各貫通孔1424bは、空気溝1423b及び他の貫通孔1424bを介して、担体基板1421W−bの端部の貫通孔1424bのいずれかに接続されている。
図57乃至図59は、空気溝1423bの形状の例を示している。図57は、担体基板1421W−bの一部の斜視図である。図58及び図59は、図57における空気溝1423bのA−A断面図であり、空気溝1423bの形状の一例を示している。
図58の例では、空気溝1423bの断面が二等辺三角形になっている。この空気溝1423bは、例えば、結晶異方性ウェットエッチングにより作製される。
図59の例では、空気溝1423bの断面が矩形になっている。この空気溝1423bは、例えば、ドライエッチングにより作製される。
なお、貫通孔1424aの平面形状は、必ずしも矩形でなくてもよく、例えば、図60に示されるように円形にすることも可能である。
次に、図61に示されるように、担体基板1421W−bの貫通孔1424bの内側にエネルギー硬化性樹脂1452が充填される。そして、光学転写面1462が一定の間隔で複数配置された下型1461、及び、光学転写面1472が一定の間隔で複数配置された上型1471を用いて、各貫通孔1424aの内部にレンズ樹脂部1422bが形成される。なお、レンズ樹脂部1422bの形成方法は、上述した方法と同様であり、詳細な説明は省略する。
ここで、レンズ樹脂部1422bの形成時にエネルギー硬化性樹脂1452が空気溝1423bに入り込まないように、空気溝1423bの底が、レンズ樹脂部1422bを形成する位置より高くなるように調整されている。これにより、レンズ樹脂部1422bが形成された後も、隣接する貫通孔1424bの間が空気溝1423bにより接続された状態となる。
また、下型1461と上型1471を担体基板1421W−bに重ね合わせて、レンズ樹脂部1422bを形成した後、空気溝1423bにより、下型1461と上型1471を担体基板1421W−bから離型する際には、空気溝1423bが存在するため下型1461および上型1471と担体基板1421W−bとの間に空気が入りやすい。これにより離形が容易になる。
図62は、担体基板1421W−bにレンズ樹脂部1422bが形成された後のレンズ付き基板1411W−bの一部の平面図を模式的に示したものである。この図では、レンズ樹脂部1422が、四角の枠の中に円を描いた形状により模式的に示されている。
このようにして、基板状態のレンズ付き基板1411W−bが作製される。
なお、同様の工程により、担体基板1421W−a及び担体基板1421W−c乃至1421W−eに、貫通孔1424及びレンズ樹脂部1422がそれぞれ形成され、基板状態のレンズ付き基板1411W−a及びレンズ付き基板1411W−c乃至1411W−eが作製される。また、レンズ付き基板1411W−c乃至1411W−eには、空気溝1423がそれぞれ作製される。一方、レンズ付き基板1411W−aには、空気溝は作製されない。
次に、図63に示されるように、上述した方法により、基板状態のレンズ付き基板1411W−a乃至1411W−eが直接接合され、基板状態の積層レンズ構造体1401Wが作製される。
このとき、例えば、レンズ付き基板1411W−bとレンズ付き基板1411W−cを貼り合わせる場合、図64に示されるように、円形のレンズ付き基板1411W−bの中心C付近に上から力が加えられる。これにより、図内の矢印で示されるように、中心Cから周囲に向かう方向に、レンズ付き基板1411W−bとレンズ付き基板1411W−cとの貼り合わせ(重ね合わせ)が進行する。
一方、例えば、図65に示されるように、レンズ付き基板1411W−bとレンズ付き基板1411W−cを貼り合わせる場合、レンズ樹脂部1422bとレンズ樹脂部1422cとの間の空間S1等にエア溜まりが発生する。このエア溜まりにより、レンズ付き基板1411W−bとレンズ付き基板1411W−cの間に空気抵抗が発生し、ボンディングの進行が阻害されたり、レンズ付き基板1411W−bとレンズ付き基板1411W−cの張り合わせ部にボイド(隙間)が発生するおそれがある。
しかし、エア溜まりの空気は、レンズ付き基板1411W−cの上面の空気溝1423cを通って、図64内の矢印で示される方向に抜けていく。これにより、レンズ付き基板1411W−bとレンズ付き基板1411W−cの間の空気抵抗が低下し、ボンディングが円滑に進行するようになる。また、レンズ付き基板1411W−bとレンズ付き基板1411W−cの間の貼り合わせ部のボイドの発生が防止され、貼り合わせ部の強度が向上する。
なお、他のレンズ付き基板1411W間の貼り合わせ時も同様に、エア溜まりの空気が空気溝1423を通って抜けていき、両者の貼り合わせが円滑に行わるとともに、貼り合わせ部のボイドの発生が防止される。
また、レンズ付き基板1411Wを貼り合わせた後、アニール処理が行われる場合、上下に積層されたレンズ付き基板1411Wのレンズ樹脂部1422の間のボイド部(空間)内の空気が膨張し、貼り合わせ部が剥がれて直接接合の進行を妨げたり、レンズ樹脂部1422にダメージが与えられるおそれがある。しかし、レンズ付き基板1411W間のボイド部内の空気が膨張しても、空気溝1423を介して空気が抜けていく。その結果、貼り合わせ部の剥がれや、レンズ樹脂部1422のダメージの発生が防止され、積層レンズ構造体1401の品質が向上する。
次に、図66に示されるように、基板状態の積層レンズ構造体1401Wが、ブレード又はレーザなどを用いて図内の点線Bに沿って切断され、1個単位に個片化され、複数の積層レンズ構造体1401が作製される。
次に、図67に示されるように、N2置換が行われる。例えば、所定の容器1481に積層レンズ構造体1401を入れ、容器1481内が真空にされた後、レンズ付き基板1411間のボイド部、及び、空気溝1423内のガスが吸引される。次に、容器1481内をN2雰囲気にすることで、レンズ付き基板1411間のボイド部及び空気溝1423内がN2置換される。
次に、図68に示されるように、積層レンズ構造体1401の側面に樹脂1425がコーティングされ、積層レンズ構造体1401の側面が封止される。なお、この封止工程は、N2置換後から封止完了までが短時間であれば、水分雰囲気の混入が十分に少ないと想定されるため、大気中の雰囲気で行ってもよい。また、樹脂1425は、室温で硬化し、脱ガス量が少ないものが望ましい。
これにより、空気溝1423b乃至1423eにより形成される積層レンズ構造体1401の側面の開口が塞がれ、レンズ付き基板1411間のボイド部及び空気溝1423内にN2ガスが充填された状態となる。その結果、ボイド部内の空気が熱膨張したり、ボイド部に結露が発生したりして、レンズ付き基板1411Wの貼り合わせ部が剥がれたり、レンズ樹脂部1422のダメージが発生したりすることが防止され、積層レンズ構造体1401の品質が向上する。
<積層レンズ構造体1401の変形例>
次に、図69乃至図79を参照して、積層レンズ構造体1401の変形例について説明する。
<積層レンズ構造体1401の第1の変形例>
例えば、図69に示されるように、空気溝1423bを、貫通孔1424bの間だけでなく、貫通孔1424bと担体基板1421W−bのエッジ(端部)の間にも形成するようにしてもよい。これは、他の担体基板1421Wについても同様である。
これにより、レンズ付き基板1411W間のボイド部及び空気溝1423内の空気が、各担体基板1421Wの端部からも抜けるようになり、空気の流れがより円滑になる。その結果、レンズ付き基板1411Wの直接接合がさらに容易になるとともに、積層レンズ構造体1401の品質がさらに向上する。
<積層レンズ構造体1401の第2の変形例>
また、例えば、図70に示されるように、レンズ付き基板1411W−bにおいて、貫通孔1424bの一部にレンズ樹脂部1422bを形成しないようにしてもよい。これは、他のレンズ付き基板1411Wについても同様である。
なお、レンズ樹脂部1422を形成しない貫通孔1424の位置は、任意に設定することが可能であるが、レンズ付き基板1411W間で位置を合わせるようにすることが望ましい。
これにより、例えば、図71に示されるように、レンズ付き基板1411W−bとレンズ付き基板1411W−cとを貼り合わせる場合、レンズ樹脂部1422bとレンズ樹脂部1422cとの間の空間S2内のエア溜まりの空気が、空気溝1423cを通って、図内の矢印で示される方向に抜けていく。さらに、レンズ樹脂部1422bが形成されていない貫通孔1424b及びレンズ樹脂部1422cが形成されていない貫通孔1424cを介して、空気が上下方向にも抜けるようになり、空気の流れがより円滑になる。その結果、レンズ付き基板1411Wの直接接合がさらに容易になるとともに、積層レンズ構造体1401の品質がさらに向上する。
<積層レンズ構造体1401の第3の変形例>
また、空気溝1423を形成する位置及び方向は、上述した例に限定されるものではなく、任意に設定することできる。
例えば、図72に示されるように、レンズ付き基板1411W−bの担体基板1421W−bの面の強度が高い方向に空気溝1423bを形成するようにしてもよい。この例では、斜め方向に隣接するレンズ樹脂部1422bが形成されている貫通孔1424b(不図示)を接続するように空気溝1423bが形成されている。これにより、空気溝1423を形成することによる担体基板1421W−bの強度の低下が防止される。これは、他のレンズ付き基板1411Wについても同様である。
<積層レンズ構造体1401の第4の変形例>
また、例えば、レンズ付き基板1411の位置により、空気溝1423の方向を変化させるようにしてもよい。具体的には、レンズ付き基板1411Wを貼り合わせる場合、レンズ付き基板1411W間のボイド部内の空気は、貼り合わせの際、貼り合わせの進行方向へ移動しやすい。
そこで、例えば、図73に示されるように、レンズ付き基板1411W−bを中心Cを基準にして領域R1乃至R4の4つの領域に分割し、領域毎に空気溝1423bの方向を変えるようにしてもよい。例えば、レンズ付き基板1411W−bの図内の右上の領域R1内では、矢印で示される右上方向に空気溝1423bが形成される。レンズ付き基板1411W−bの図内の右下の領域R2内では、矢印で示される右下方向に空気溝1423bが形成される。レンズ付き基板1411W−bの図内の左下の領域R3内では、矢印で示される左下方向に空気溝1423bが形成される。レンズ付き基板1411W−bの図内の左上の領域R4内では、矢印で示される左上方向に空気溝1423bが形成される。
なお、図73の下には、領域R3内の空気溝1423bの方向が図示されている。領域R3内では、左斜め下方向に隣接するレンズ樹脂部1422bが形成されている貫通孔1424b(不図示)を接続するように空気溝1423bが形成されている。
これにより、空気の流れがより円滑になり、レンズ付き基板1411Wの直接接合がさらに容易になるとともに、積層レンズ構造体1401の品質がさらに向上する。これは、他のレンズ付き基板1411Wについても同様である。
また、例えば、図74に示されるように、レンズ付き基板1411W−bを中心Cを基準にして領域R11乃至R18の8つの領域に分割し、領域毎に空気溝1423bの方向を変えるようにしてもよい。
例えば、レンズ付き基板1411W−bの図内の上の領域R11内では、矢印で示される上方向に空気溝1423bが形成される。レンズ付き基板1411W−bの図内の右上の領域R12内では、矢印で示される右上方向に空気溝1423bが形成される。レンズ付き基板1411W−bの図内の右の領域R13内では、矢印で示される右方向に空気溝1423bが形成される。レンズ付き基板1411W−bの図内の右下の領域R14内では、矢印で示される右下方向に空気溝1423bが形成される。レンズ付き基板1411W−bの図内の下の領域R15内では、矢印で示される下方向に空気溝1423bが形成される。レンズ付き基板1411W−bの図内の左下の領域R16内では、矢印で示される左下方向に空気溝1423bが形成される。レンズ付き基板1411W−bの図内の左の領域R17内では、矢印で示される左方向に空気溝1423bが形成される。レンズ付き基板1411W−bの図内の左上の領域R18内では、矢印で示される左上方向に空気溝1423bが形成される。
これにより、空気の流れがより円滑になり、レンズ付き基板1411Wの直接接合がさらに容易になるとともに、積層レンズ構造体1401の品質がさらに向上する。これは、他のレンズ付き基板1411Wについても同様である。
なお、必ずしも各レンズ付き基板1411W間で空気溝1423の位置及び方向が一致している必要はなく、レンズ付き基板1411Wごとに、異なる位置及び方向に空気溝1423を形成することも可能である。
<積層レンズ構造体1401の第5の変形例>
また、例えば、図75に示されるように、積層レンズ構造体1401に上下方向の溝1511を形成するようにしてもよい。溝1511は、各レンズ付き基板1411の空気溝1423に隣接するように形成され、空気溝1423を流れる空気を上方向に逃がす働きをする。
例えば、図76に示されるように、担体基板1421W−bの貫通孔1424b及び空気溝1423bを形成する工程において、図内の横方向の空気溝1423に隣接するように貫通孔1531bが形成される。担体基板1421W−a、1421W−c及び1421W−dにおいても、貫通孔1531bと同じ位置にそれぞれ貫通孔1531a、1531c及び1531d(不図示)が形成される。そして、レンズ付き基板1411W−a乃至1411W−eが貼り合わされ、貫通孔1531a乃至1531dが接続されることにより、図75の溝1511が形成される。
この溝1511により、レンズ付き基板1411W間のボイド部及び空気溝1423の空気が上下方向にも抜けるようになる。これにより、レンズ付き基板1411Wの直接接合がさらに容易になるとともに、積層レンズ構造体1401の品質がさらに向上する。また、N2置換の効率が向上する。
なお、溝1511の位置及び数は、空気溝1423に接するという条件の下で、任意に変更することが可能である。また、例えば、空気溝1423を上下方向に貫通するように溝1511を形成することも可能である。
また、溝1511を貫通孔1424に隣接するように形成してもよい。
例えば、図77に示されるように、担体基板1421W−bの貫通孔1424b及び空気溝1423bを形成する工程において、各貫通孔1424bに隣接する位置に貫通孔1532bが形成される。担体基板1421W−a、1421W−c及び1421W−dにおいても、貫通孔1531bと同じ位置にそれぞれ貫通孔1532a、1532c及び1532d(不図示)が形成される。そして、レンズ付き基板1411W−a乃至1411W−eが貼り合わされ、貫通孔1532a乃至1532dが接続されることにより、貫通孔1424に隣接する溝1511(不図示)が形成される。
これにより、レンズ付き基板1411W間のボイド部の空気が、空気溝1423だけでなく、溝1511を介して抜けるようになる。これにより、空気の流れがより円滑になり、レンズ付き基板1411Wの直接接合がさらに容易になるとともに、積層レンズ構造体1401の品質がさらに向上する。また、N2置換の効率が向上する。
なお、図75の例では、溝1511を積層レンズ構造体1401の上方向のみに貫通する例を示したが、例えば、上下方向に貫通するようにしたり、下方向のみに貫通するようにしてもよい。
<積層レンズ構造体1401の第6の変形例>
また、例えば、図78に示されるように、以上の説明では、空気溝を各レンズ付き基板(各担体基板)の上面でなく、下面に形成することも可能である。
図78は、積層レンズ構造体1601の断面の模式図である。なお、図78では、主に説明に必要な部分を図示しており、説明に必要のない部分の図示は適宜省略している。
積層レンズ構造体1601においては、レンズ付き基板1611a乃至1611eが5層に積層されている。
レンズ付き基板1611aの担体基板1621aの貫通孔1624aの内側には、レンズ樹脂部1622aが形成されている。また、担体基板1621aの下面には、空気溝1623aが形成されている。空気溝1623aは、基板状態のレンズ付き基板1611W−aにおいて、隣接する貫通孔1624aを接続するように形成される。
なお、レンズ付き基板1611b乃至1611eもレンズ付き基板1611aと同様の構成を有しており、その説明は省略する。ただし、レンズ付き基板1611eには、空気溝は形成されない。
積層レンズ構造体1601の側面には、樹脂1625がコーティングされている。樹脂1625は、空気溝1623a乃至1623dを塞ぐためのものであり、少なくとも積層レンズ構造体1601の側面において空気溝1423a乃至1423dによる開口を塞いでいればよい。
例えば、レンズ付き基板1611W−aとレンズ付き基板1611W−bを貼り合わせる場合、図79に示されるように、レンズ樹脂部1622aとレンズ樹脂部1622bとの間の空間S3等にエア溜まりが発生する。しかし、エア溜まりの空気は、レンズ付き基板1611W−aの下面の空気溝1623aを通って、図79内の矢印で示される方向に抜けていく。
これにより、レンズ付き基板1611Wの直接接合がさらに容易になるとともに、積層レンズ構造体1601の品質が向上する。
なお、レンズ付き基板の上下の両方に空気溝を設けるようにしてもよい。
また、上述した積層レンズ構造体1401の変形例は、互いに組み合わせることが可能である。
また、上述した技術は、例えば、積層レンズ構造体1401のレンズ付き基板1411のレンズ樹脂部1422間のボイド部のように、複数の基板を積層した場合に基板間にボイド部ができる装置に適用することができる。
<17.電子機器への適用例>
上述したカメラモジュール1は、デジタルスチルカメラやビデオカメラ等の撮像装置や、撮像機能を有する携帯端末装置や、画像読取部に固体撮像装置を用いる複写機など、画像取込部(光電変換部)に固体撮像装置を用いる電子機器に組み込んだ形で使用することが可能である。
図80は、本技術を適用した電子機器としての、撮像装置の構成例を示すブロック図である。
図80の撮像装置2000は、カメラモジュール2002、およびカメラ信号処理回路であるDSP(Digital Signal Processor)回路2003を備える。また、撮像装置2000は、フレームメモリ2004、表示部2005、記録部2006、操作部2007、および電源部2008も備える。DSP回路2003、フレームメモリ2004、表示部2005、記録部2006、操作部2007および電源部2008は、バスライン2009を介して相互に接続されている。
カメラモジュール2002内のイメージセンサ2001は、被写体からの入射光(像光)を取り込んで撮像面上に結像された入射光の光量を画素単位で電気信号に変換して画素信号として出力する。このカメラモジュール2002として、上述したカメラモジュール1が採用されており、イメージセンサ2001は、上述した受光素子12に対応する。
表示部2005は、例えば、液晶パネルや有機EL(Electro Luminescence)パネル等のパネル型表示装置からなり、イメージセンサ2001で撮像された動画または静止画を表示する。記録部2006は、イメージセンサ2001で撮像された動画または静止画を、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録する。
操作部2007は、ユーザによる操作の下に、撮像装置2000が持つ様々な機能について操作指令を発する。電源部2008は、DSP回路2003、フレームメモリ2004、表示部2005、記録部2006および操作部2007の動作電源となる各種の電源を、これら供給対象に対して適宜供給する。
上述したように、カメラモジュール2002として、高精度に位置決めされて接合(積層)された積層レンズ構造体11を搭載したカメラモジュール1を用いることで、高画質化及び小型化を実現することができる。従って、ビデオカメラやデジタルスチルカメラ、さらには携帯電話機等のモバイル機器向けカメラモジュールなどの撮像装置2000においても、半導体パッケージの小型化と、撮像画像の高画質化の両立を図ることができる。
<18.イメージセンサの使用例>
図81は、カメラモジュール1として構成されたイメージセンサを使用する使用例を示す図である。
カメラモジュール1として構成されたイメージセンサは、例えば、以下のように、可視光や、赤外光、紫外光、X線等の光をセンシングする様々なケースに使用することができる。
・ディジタルカメラや、カメラ機能付きの携帯機器等の、鑑賞の用に供される画像を撮影する装置
・自動停止等の安全運転や、運転者の状態の認識等のために、自動車の前方や後方、周囲、車内等を撮影する車載用センサ、走行車両や道路を監視する監視カメラ、車両間等の測距を行う測距センサ等の、交通の用に供される装置
・ユーザのジェスチャを撮影して、そのジェスチャに従った機器操作を行うために、TVや、冷蔵庫、エアーコンディショナ等の家電に供される装置
・内視鏡や、赤外光の受光による血管撮影を行う装置等の、医療やヘルスケアの用に供される装置
・防犯用途の監視カメラや、人物認証用途のカメラ等の、セキュリティの用に供される装置
・肌を撮影する肌測定器や、頭皮を撮影するマイクロスコープ等の、美容の用に供される装置
・スポーツ用途等向けのアクションカメラやウェアラブルカメラ等の、スポーツの用に供される装置
・畑や作物の状態を監視するためのカメラ等の、農業の用に供される装置
本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
例えば、本技術は、可視光の入射光量の分布を検知して画像として撮像する固体撮像装置への適用に限らず、赤外線やX線、あるいは粒子等の入射量の分布を画像として撮像する固体撮像装置や、広義の意味として、圧力や静電容量など、他の物理量の分布を検知して画像として撮像する指紋検出センサ等の固体撮像装置(物理量分布検知装置)全般に対して適用可能である。
例えば、上述した複数の実施の形態の全てまたは一部を組み合わせた形態を採用することができる。
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、本明細書に記載されたもの以外の効果があってもよい。
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
複数の第1の貫通孔が形成され、
各前記第1の貫通孔の内側にレンズが配置され、
各前記第1の貫通孔を接続する溝が形成されている
レンズ付き基板。
(2)
各前記第1の貫通孔は、前記溝及び他の前記第1の貫通孔を介して、前記レンズ付き基板の端部に配置されている前記第1の貫通孔のいずれかに接続されている
前記(1)に記載のレンズ付き基板。
(3)
前記溝は、前記レンズ付き基板の端まで達している
前記(1)又は(2)に記載のレンズ付き基板。
(4)
前記溝は、前記レンズ付き基板の面の強度が高い方向に延びている
前記(1)乃至(3)のいずれかに記載のレンズ付き基板。
(5)
前記溝は、前記レンズ付き基板を他のレンズ付き基板と貼り合わせる場合に貼り合わせが進行する方向に延びている
前記(1)乃至(4)のいずれかに記載のレンズ付き基板。
(6)
前記溝又は前記第1の貫通孔の少なくとも一方に接する第2の貫通孔が形成されている
前記(1)乃至(5)のいずれかに記載のレンズ付き基板。
(7)
複数の基板のそれぞれに複数の第1の貫通孔を形成するとともに、各前記第1の貫通孔を接続する溝を形成する第1の工程と、
各前記基板の各前記第1の貫通孔の内側にレンズを形成する第2の工程と、
各前記基板を直接接合により積層する第3の工程と、
積層した前記基板を個片化する第4の工程と
を含む積層レンズ構造体の製造方法。
(8)
前記第2の工程において、一部の前記第1の貫通孔に前記レンズを形成しない
前記(7)に記載の積層レンズ構造体の製造方法。
(9)
前記第1の工程において、少なくとも一部の前記基板において、前記溝又は前記第1の貫通孔の少なくとも一方に接する第2の貫通孔を形成する
前記(7)又は(8)に記載の積層レンズ構造体の製造方法。
(10)
個片化された前記積層レンズ構造体の側面の前記溝による開口を樹脂により封止する第5の工程を
さらに含む前記(7)乃至(9)のいずれかに記載の積層レンズ構造体の製造方法。
(11)
複数の基板のそれぞれに複数の貫通孔を形成するとともに、各前記貫通孔を接続する溝を形成する第1の工程と、
各前記基板の各前記貫通孔の内側にレンズを形成する第2の工程と、
各前記基板を直接接合により積層する第3の工程と、
積層した前記基板を個片化する第4の工程と
を含む工程により製造される積層レンズ構造体。
(12)
複数の基板のそれぞれに複数の貫通孔を形成するとともに、各前記貫通孔を接続する溝を形成する第1の工程と、
各前記基板の各前記貫通孔の内側にレンズを形成する第2の工程と、
各前記基板を直接接合により積層する第3の工程と、
積層した前記基板を個片化する第4の工程と
を含む工程により製造される積層レンズ構造体を
備える電子機器。