JP5195410B2 - 表示装置、表示装置の駆動方法および電子機器 - Google Patents

表示装置、表示装置の駆動方法および電子機器 Download PDF

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Description

本発明は、表示装置、表示装置の駆動方法および電子機器に関し、特に電気光学素子を含む画素が行列状に2次元配置された平面型(フラットパネル型)表示装置、当該表示装置の駆動方法および当該表示装置を有する電子機器に関する。
近年、画像表示を行う表示装置の分野では、発光素子を含む画素(以下、「画素回路」と記述する場合もある)が行列状に2次元配置されてなる平面型の表示装置が急速に普及している。平面型の表示装置の一つとして、デバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化するいわゆる電流駆動型の電気光学素子を画素の発光素子として用いた表示装置がある。電流駆動型の電気光学素子としては、有機薄膜に電界をかけると発光する現象を利用した有機EL(Electro Luminescence)素子が知られている。
この有機EL素子を画素の発光素子として用いた有機EL表示装置は次のような特長を持っている。すなわち、有機EL素子は、10V以下の印加電圧で駆動できるために低消費電力である。有機EL素子は、自発光素子であるために、画素ごとに液晶にて光源からの光強度を制御することによって画像を表示する液晶表示装置に比べて、画像の視認性が高く、しかもバックライト等の光源を必要としないために軽量化および薄型化が容易である。さらに、有機EL素子の応答速度が数μsec程度と非常に高速であるために動画表示時の残像が発生しない。
有機EL表示装置では、液晶表示装置と同様に、その駆動方式として単純(パッシブ)マトリクス方式とアクティブマトリクス方式とを採ることができる。ただし、単純マトリクス方式の表示装置は、構造が簡単であるものの、電気光学素子の発光期間が走査線(即ち、画素数)の増加によって減少するために、大型でかつ高精細な表示装置の実現が難しいなどの問題がある。
そのため、近年、電気光学素子に流れる電流を、当該電気光学素子と同じ画素内に設けた能動素子、例えば絶縁ゲート型電界効果トランジスタによって制御するアクティブマトリクス方式の表示装置の開発が盛んに行われている。絶縁ゲート型電界効果トランジスタとしては、一般には、TFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)が用いられる。アクティブマトリクス方式の表示装置は、電気光学素子が1フレームの期間に亘って発光を持続するために、大型でかつ高精細な表示装置の実現が容易である。
ところで、有機EL素子は、アノード電極とカソード電極との間に、発光層を含む有機膜を挟持した構造となっている。このような構造の有機EL素子を画素の発光素子として用いた有機EL装置において、当該有機EL素子を形成する工程で異物が混入すると、画素の輝度欠陥が発生する。
具体的には、製造工程で混入する異物が原因となって有機EL素子のアノード電極とカソード電極との間で電極間ショートが引き起こされる場合がある。この有機EL素子の電極間ショートが発生すると有機EL素子が発光しなくなるために、当該有機EL素子を含む画素が非発光画素として視認されるいわゆる滅点と呼称される輝度欠陥が発生する。
この異物混入に起因する輝度欠陥に対する対策として、従来、1つの画素(副画素)内に有機EL素子を含む画素構成素子を複数組設ける技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この提案技術によれば、いずれかの組の有機EL素子が電極間ショート等で欠陥化しても、他の組の画素構成素子が正常に動作することで画素の滅点化を防ぐことができる。
特開2007−41574号公報
しかしながら、特許文献1記載の従来技術では、画素ごとに、例えばカラー画像を形成する単位となる1つの画素を構成する複数の副画素ごとに、有機EL素子を含む画素構成素子を複数組設けることになる。ここで、一例として、1つの副画素内に2つの有機EL素子を設ける場合について考える。
この場合は、図19に示すように、2つの有機EL素子21−1,21−2に対してその駆動回路として、2つの駆動トランジスタ22−1,22−2および2つの保持容量24−1,24−2が設けられる。なお、書込みトランジスタ23については、2つの有機EL素子21−1,21−2に対して1個共通に設けられる。
このように、1つの副画素内に有機EL素子21−1,21−2を2個設ける場合は、図20に示すように、1つの副画素の発光領域は、2個の有機EL素子21−1,21−2によって2分割されることになる。図20において、有機EL素子21−1,21−2は、発光領域となる開口部211−1,211−2を有し、アノード電極212−1,212−2がコンタクト部213−1,213−2を介して駆動トランジスタ22−1,22−2の各ソース電極と電気的に接続されている。
ここで、電極間ショート等で一方の有機EL素子21−1/21−2が欠陥化して発光しないときは、副画素が完全に滅点(発光輝度がゼロ)になるのを防ぐことはできるものの、発光輝度は両方が発光しているときの半分に低下する。この場合、欠陥化した有機EL素子21−1/21−2を含む副画素は滅点ではないが、いわゆる半滅点という点欠陥として知覚されてしまう。
この対策として、有機EL素子21の数を増やして、1つの副画素の発光領域を半滅点として知覚できない程度の大きさまで細分化するという方法が考えられる。しかし、有機EL素子21の数を増やすことで、それに対応して駆動トランジスタ22や保持容量24の数も同数ずつ増えることになる。その結果、回路構成素子間や配線間でのショート等の発生頻度が高くなるために、表示パネルの歩留まりの低下を招くことになる。
そこで、本発明は、欠陥化した有機EL素子を含む画素(副画素)を点欠陥として視認できない画質の実現を可能にした表示装置、当該表示装置の駆動方法および当該表示装置を有する電子機器を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、
電気光学素子および当該電気光学素子を駆動する駆動トランジスタを複数組有するとともに、前記電気光学素子のアノード電極間に接続されたスイッチング素子を有する画素が複数配置された表示装置の駆動に当たって、
映像信号の書込み終了後に前記スイッチング素子を導通状態にし、
前記スイッチング素子が導通状態にあるときに、前記駆動トランジスタに与える電源電位を当該駆動トランジスタに電流を供給する第1電位から当該第1電位よりも低い電位に切り替え、その後に前記第1電位に切り替えるようにする。
上記構成の表示装置において、映像信号の書込み終了後、即ち発光期間にスイッチング素子を導通状態にすることで、複数の電気光学素子のアノード電極間が電気的に接続される。このとき、複数の電気光学素子のいずれも欠陥化していない正常な画素では、アノード電極間が電気的に接続されても各アノード電位は変化しない。一方、電極間ショートによって欠陥化した電気光学素子を含む画素では、電気光学素子に並列に抵抗が挿入された形となり、当該抵抗の値がトランジスタのオン抵抗値や、電気光学素子の発光時の抵抗値に比べて非常に小さい。したがって、複数の電気光学素子各アノード電位はカソード電位に接地されていると考えることができる。
そして、スイッチング素子が導通状態にあるときに、駆動トランジスタに与える電源電位を第1電位から当該第1電位よりも低い電位に切り替え、その後に第1電位に切り替えると、その切替えタイミングで電源電位線から駆動トランジスタのゲート電極に、当該駆動トランジスタのドレイン−ゲート間の容量を介してカップリングが入る。このとき、欠陥化した電気光学素子を含む画素では、複数の電気光学素子各アノード電位はカソード電位に接地された状態にあることから、カップリングによって駆動トランジスタのゲート電位が変化することはない。
一方、正常な画素では、駆動トランジスタのドレイン−ゲート間に形成される容量の、電源電位の立ち下げ時と立ち上げ時との大小関係から、カップリングによって駆動トランジスタのゲート電位が低くなるために、当該駆動トランジスタのゲート−ソース間電圧が低下する。これにより、正常な画素の発光輝度が低下するために、欠陥化した電気光学素子を含む画素との相対的な輝度差が小さくなる。そして、この相対的な輝度差を好ましくはゼロに近づけることで、欠陥化した電気光学素子を含む画素を点欠陥として視認できない画質を得ることができる。
本発明によれば、欠陥化した有機EL素子を含む画素(副画素)を点欠陥として視認できない画質を実現できるために、表示画像の画質の向上を図ることができる。
以下、発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」と記述する)について図面を用いて詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.前提となる有機EL表示装置(2Trの画素構成の場合)
2.実施形態
3.変形例
4.適用例(電子機器)
<1.前提となる有機EL表示装置>
[システム構成]
図1は、本発明の前提となるアクティブマトリクス型表示装置の基本構成の概略を示すシステム構成図である。ここでは、一例として、デバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の電気光学素子、例えば有機EL素子を画素(画素回路)の発光素子として用いたアクティブマトリクス型有機EL表示装置の場合を例に挙げて説明するものとする。
図1に示すように、本例に係る有機EL表示装置10は、発光素子を含む複数の画素20と、当該画素20が行列状に2次元配置された画素アレイ部30と、当該画素アレイ部30の周辺に配置された駆動部とを有する構成となっている。駆動部は、画素アレイ部30の各画素20を発光駆動する。
画素20の駆動部は、例えば、書込み走査回路40および電源供給走査回路50からなる走査駆動系と、信号出力回路60からなる信号供給系とからなる構成となっている。本適用例に係る有機EL表示装置10の場合には、画素アレイ部30が形成された表示パネル70上に信号出力回路60が設けられているのに対して、書込み走査回路40および電源供給走査回路50はそれぞれ、表示パネル(基板)70の外部に設けられている。
ここで、有機EL表示装置10が白黒表示対応の場合は、白黒画像を形成する単位となる1つの画素が画素20に相当する。一方、有機EL表示装置10がカラー表示対応の場合は、カラー画像を形成する単位となる1つの画素は複数の副画素(サブピクセル)から構成され、この副画素が画素20に相当する。より具体的には、カラー表示用の表示装置では、1つの画素は、例えば、赤色(R)光を発光する副画素、緑色(G)光を発光する副画素、青色(B)光を発光する副画素の3つの副画素から構成される。
ただし、1つの画素としては、RGBの3原色の副画素の組み合わせに限られるものではない。すなわち、3原色の副画素にさらに1色あるいは複数色の副画素を加えて1つの画素を構成するようにすることも可能である。より具体的には、例えば、輝度向上のために白色(W)光を発光する副画素を加えて1つの画素を構成したり、色再現範囲を拡大するために補色光を発光する少なくとも1つの副画素を加えて1つの画素を構成したりすることも可能である。
画素アレイ部30には、m行n列の画素20の配列に対して、行方向(画素行の画素の配列方向/水平方向)に沿って書込み走査線31−1〜31−mと電源供給線32−1〜32−mとが画素行ごとに配線されている。さらに、列方向(画素列の画素の配列方向/垂直方向)に沿って信号線33−1〜33−nが画素列ごとに配線されている。
書込み走査線31−1〜31−mは、書込み走査回路40の対応する行の出力端にそれぞれ接続されている。電源供給線32−1〜32−mは、電源供給走査回路50の対応する行の出力端にそれぞれ接続されている。信号線33−1〜33−nは、信号出力回路60の対応する列の出力端にそれぞれ接続されている。
画素アレイ部30は、通常、ガラス基板などの透明絶縁基板上に形成されている。これにより、有機EL表示装置10は、平面型(フラット型)のパネル構造となっている。画素アレイ部30の各画素20の駆動回路は、アモルファスシリコンTFTまたは低温ポリシリコンTFTを用いて形成することができる。低温ポリシリコンTFTを用いる場合には、書込み走査回路40および電源供給走査回路50についても、表示パネル70上に実装することができる。
書込み走査回路40は、クロックパルスckに同期してスタートパルスspを順にシフト(転送)するシフトレジスタ等によって構成されている。この書込み走査回路40は、画素アレイ部30の各画素20への映像信号の書込みに際して、書込み走査線31−1〜31−mに順次書込み走査信号WS(WS1〜WSm)を供給することによって画素アレイ部30の各画素20を行単位で順番に走査する(線順次走査)。
電源供給走査回路50は、クロックパルスckに同期してスタートパルスspを順にシフトするシフトレジスタ等によって構成されている。この電源供給走査回路50は、書込み走査回路40による線順次走査に同期して、第1電源電位Vccと当該第1電源電位Vccよりも低い第2電源電位Vssで切り替わる電源電位DS(DS1〜DSm)を電源供給線32−1〜32−mに供給する。この電源電位DSのVcc/Vssの切替えにより、画素20の発光制御(発光/非発光の制御)が行なわれる。
信号出力回路60は、信号供給源(図示せず)から供給される輝度情報に応じた映像信号の信号電圧(以下、単に「信号電圧」と記述する場合もある)Vsigと基準電位Vofsのいずれか一方を適宜選択して出力する。ここで、信号出力回路60から選択的に出力される基準電位Vofsは、映像信号の信号電圧Vsigの基準となる電位(例えば、映像信号の黒レベルに相当する電位)である。
信号出力回路60は、例えば、周知の時分割駆動方式の回路構成を採る。時分割駆動方式は、セレクタ方式とも呼ばれ、信号供給源であるドライバ(図示せず)の1つの出力端に対して複数の信号線を単位(組)として割り当る。そして、この複数の信号線を時分割にて順次選択する一方、その選択した信号線に対してドライバの出力端ごとに時系列で出力される映像信号を時分割で振り分けて供給することによって各信号線を駆動する方式である。
一例として、カラー表示対応の場合を例に挙げると、隣り合うR,G,Bの3つの画素列を単位とし、ドライバからは1水平期間内にR,G,Bの各映像信号が時系列で信号出力回路60に入力するようにする。信号出力回路60は、R,G,Bの3つの画素列に対応して設けられたセレクタ(選択スイッチ)によって構成され、当該セレクタが時分割にて順次オン動作を行うことで、R,G,Bの各映像信号を対応する信号線に対して時分割で書き込む。
ここでは、R,G,Bの3つの画素列(信号線)を単位としたが、これに限られるものではない。そして、この時分割駆動方式(セレクタ方式)を採用することで、時分割数をx(xは2以上の整数)とすると、ドライバの出力数および当該ドライバと信号出力回路60、ひいては表示パネル70との間の配線数を、信号線の本数の1/xに削減できる利点がある。
信号出力回路60から選択的に出力される信号電圧Vsig/基準電位Vofsは、信号線33−1〜33−nを介して画素アレイ部30の各画素20に対して行単位で書き込まれる。すなわち、信号出力回路60は、信号電圧Vsigを行(ライン)単位で書き込む線順次書込みの駆動形態を採っている。
(画素回路)
図2は、本基本例に係る有機EL表示装置10に用いられる画素(画素回路)20の具体的な構成例を示す回路図である。
図2に示すように、画素20は、デバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の電気光学素子、例えば有機EL素子21と、当該有機EL素子21を駆動する駆動回路とによって構成されている。有機EL素子21は、全ての画素20に対して共通に配線(いわゆる、ベタ配線)された共通電源供給線34にカソード電極が接続されている。
有機EL素子21を駆動する駆動回路は、駆動トランジスタ22、書込みトランジスタ(サンプリングトランジスタ)23および保持容量24を有する構成となっている。ここでは、駆動トランジスタ22および書込みトランジスタ23としてNチャネル型のTFTを用いている。ただし、駆動トランジスタ22および書込みトランジスタ23の導電型の組み合わせは一例に過ぎず、これらの組み合わせに限られるものではない。
なお、駆動トランジスタ22および書込みトランジスタ23としてNチャネル型のTFTを用いると、アモルファスシリコン(a−Si)プロセスを用いることができる。a−Siプロセスを用いることで、TFTを作成する基板の低コスト化、ひいては本有機EL表示装置10の低コスト化を図ることが可能になる。また、駆動トランジスタ22および書込みトランジスタ23を同じ導電型の組み合わせにすると、両トランジスタ22,23を同じプロセスで作成することができるため低コスト化に寄与できる。
駆動トランジスタ22は、一方の電極(ソース/ドレイン電極)が有機EL素子21のアノード電極に接続され、他方の電極(ドレイン/ソース電極)が電源供給線32(32−1〜32−m)に接続されている。
書込みトランジスタ23は、ゲート電極が書込み走査線31(31−1〜31−m)に接続され、一方の電極(ソース/ドレイン電極)が信号線33(33−1〜33−n)に接続され、他方の電極(ドレイン/ソース電極)が駆動トランジスタ22のゲート電極に接続されている。
駆動トランジスタ22および書込みトランジスタ23において、一方の電極とは、ソース/ドレイン領域に電気的に接続された金属配線を言い、他方の電極とは、ドレイン/ソース領域に電気的に接続された金属配線を言う。また、一方の電極と他方の電極との電位関係によって一方の電極がソース電極ともなればドレイン電極ともなり、他方の電極がドレイン電極ともなればソース電極ともなる。
保持容量24は、一方の電極が駆動トランジスタ22のゲート電極に接続され、他方の電極が駆動トランジスタ22の他方の電極および有機EL素子21のアノード電極に接続されている。
なお、有機EL素子21の駆動回路としては、駆動トランジスタ22および書込みトランジスタ23の2つのトランジスタと保持容量24の1つの容量素子とからなる回路構成のものに限られるものではない。例えば、一方の電極が有機EL素子21のアノード電極に、他方の電極が固定電位にそれぞれ接続されることで、有機EL素子21の容量不足分を補う補助容量を必要に応じて設けた回路構成を採ることも可能である。
上記構成の画素20において、書込みトランジスタ23は、書込み走査回路40から書込み走査線31を通してゲート電極に印加されるHighアクティブの書込み走査信号WSに応答して導通状態となる。これにより、書込みトランジスタ23は、信号線33を通して信号出力回路60から供給される輝度情報に応じた映像信号の信号電圧Vsigまたは基準電位Vofsをサンプリングして画素20内に書き込む。この書き込まれた信号電圧Vsigまたは基準電位Vofsは、駆動トランジスタ22のゲート電極に印加されるとともに保持容量24に保持される。
駆動トランジスタ22は、電源供給線32(32−1〜32−m)の電位(以下、「電源電位」と記述する場合もある)DSが第1電源電位Vccにあるときには、一方の電極がドレイン電極、他方の電極がソース電極となって飽和領域で動作する。これにより、駆動トランジスタ22は、電源供給線32から電流の供給を受けて有機EL素子21を電流駆動にて発光駆動する。より具体的には、駆動トランジスタ22は、飽和領域で動作することにより、保持容量24に保持されている信号電圧Vsigの電圧値に応じた電流値の駆動電流を有機EL素子21に供給し、当該有機EL素子21を電流駆動することによって発光させる。
駆動トランジスタ22はさらに、電源電位DSが第1電源電位Vccから第2電源電位Vssに切り替わったときは、一方の電極がソース電極、他方の電極がドレイン電極となって線形領域で動作する、即ちスイッチングトランジスタとして動作する。そして、駆動トランジスタ22は、スイッチング動作によって有機EL素子21への駆動電流の供給を停止することで、有機EL素子21を非発光状態にする。すなわち、駆動トランジスタ22は、有機EL素子21の発光/非発光を制御するトランジスタとしての機能をも併せ持っている。
このようにして、駆動トランジスタ22のスイッチング動作により、有機EL素子21が非発光状態となる期間(非発光期間)を設け、有機EL素子21の発光期間と非発光期間との割合を制御する(いわゆる、デューティ制御)。このデューティ制御により、1フレーム期間に亘って画素20が発光することに伴う残像ボケを低減できるために、特に動画の画品位をより優れたものとすることができる。
電源供給走査回路50から電源供給線32を通して選択的に供給される第1,第2電源電位Vcc,Vssのうち、第1電源電位Vccは有機EL素子21を発光駆動する駆動電流を駆動トランジスタ22に供給するための電源電位である。また、第2電源電位Vssは、有機EL素子21に対して逆バイアスを掛けるための電源電位である。この第2電源電位Vssは、信号電圧Vsigの基準となる基準電位Vofsよりも低い電位、例えば、駆動トランジスタ22の閾値電圧をVthとするときVofs−Vthよりも低い電位、好ましくはVofs−Vthよりも十分に低い電位に設定される。
(画素構造)
図3は、画素20の断面構造の一例を示す断面図である。図3に示すように、画素20は、駆動トランジスタ22等を含む駆動回路が形成されたガラス基板201上に形成されている。具体的には、ガラス基板201上に絶縁膜202、絶縁平坦化膜203およびウインド絶縁膜204がその順に形成され、当該ウインド絶縁膜204の凹部204Aに有機EL素子21が設けられた構成となっている。ここでは、駆動回路の各構成素子の内、駆動トランジスタ22のみを図示し、他の構成素子については省略している。
有機EL素子21は、金属等からなるアノード電極205と、当該アノード電極205上に形成された有機層206と、当該有機層206上に全画素共通に形成された透明導電膜等からなるカソード電極207とから構成されている。アノード電極205は、上記ウインド絶縁膜204の凹部204Aの底部に形成されている。
この有機EL素子21において、有機層206は、アノード電極205上にホール輸送層/ホール注入層2061、発光層2062、電子輸送層2063および電子注入層(図示せず)が順次堆積されることによって形成される。そして、図2の駆動トランジスタ22による電流駆動の下に、駆動トランジスタ22からアノード電極205を通して有機層206に電流が流れることで、当該有機層206内の発光層2062において電子と正孔が再結合する際に発光するようになっている。
駆動トランジスタ22は、ゲート電極221と、半導体層222のゲート電極221と対向する部分のチャネル形成領域225と、半導体層222のチャネル形成領域225の両側のドレイン/ソース領域223,224とから構成されている。ソース/ドレイン領域223は、コンタクトホールを介して有機EL素子21のアノード電極205と電気的に接続されている。
そして、図3に示すように、駆動トランジスタ22を含む駆動回路が形成されたガラス基板201上に、絶縁膜202、絶縁平坦化膜203およびウインド絶縁膜204を介して有機EL素子21が画素単位で形成される。しかる後、パッシベーション膜208を介して封止基板209が接着剤210によって接合され、当該封止基板209によって有機EL素子21が封止されることによって表示パネル70が形成される。
[回路動作]
次に、本適用例に係る有機EL表示装置10の回路動作について、図4のタイミング波形図を基に図5および図6の動作説明図を用いて説明する。
なお、図5および図6の動作説明図では、図面の簡略化のために、書込みトランジスタ23をスイッチのシンボルで図示している。また、周知の通り、有機EL素子21は等価容量(寄生容量)Celを持っている。したがって、ここでは、等価容量Celについても図示している。
図4のタイミング波形図には、書込み走査線31の電位(書込み走査信号)WS、電源供給線32の電位(電源電位)DS、信号線33の電位(Vofs/Vsig)、駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgおよびソース電圧Vsの変化を示している。
〔前フレームの発光期間〕
図4のタイミング波形図において、時刻t1以前は、前のフレーム(フィールド)における有機EL素子21の発光期間となる。この前フレームの発光期間では、電源供給線32の電位DSが第1電源電位(以下、「高電位」と記述する)Vccにあり、また、書込みトランジスタ23が非導通状態にある。
このとき、駆動トランジスタ22は飽和領域で動作するように設計されている。これにより、図5(A)に示すように、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧Vgsに応じた駆動電流(ドレイン−ソース間電流)Idsが、電源供給線32から駆動トランジスタ22を通して有機EL素子21に供給される。よって、有機EL素子21が駆動電流Idsの電流値に応じた輝度で発光する。
〔閾値補正準備期間〕
時刻t1になると、線順次走査の新しいフレーム(現フレーム)に入る。そして、図5(B)に示すように、電源供給線32の電位DSが高電位Vccから第2電源電位(以下、「低電位」と記述する)Vssに切り替わる。低電位Vssは、信号線33の基準電位Vofsに対してVofs−Vthよりも十分に低い電位である。
ここで、有機EL素子21の閾値電圧をVthel、共通電源供給線34の電位(カソード電位)をVcathとする。このとき、低電位VssをVss<Vthel+Vcathとすると、駆動トランジスタ22のソース電圧Vsが低電位Vssにほぼ等しくなるために、有機EL素子21は逆バイアス状態となる。したがって、有機EL素子21は消光する。
次に、時刻t2で書込み走査線31の電位WSが低電位側から高電位側に遷移することで、図5(C)に示すように、書込みトランジスタ23が導通状態となる。このとき、信号出力回路60から信号線33に対して基準電位Vofsが供給されているために、駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgが基準電位Vofsになる。また、駆動トランジスタ22のソース電圧Vsは、基準電位Vofsよりも十分に低い電位Vssにある。
このとき、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧VgsはVofs−Vssとなる。ここで、Vofs−Vssが駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthよりも大きくないと、後述する閾値補正処理を行うことができないために、Vofs−Vss>Vthなる電位関係に設定する必要がある。
このように、駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgを基準電位Vofsに、ソース電圧Vsを低電位Vssにそれぞれ固定して(確定させて)初期化する処理が、後述する閾値補正処理を行う前段階の準備(閾値補正準備)の処理である。したがって、基準電位Vofsおよび低電位Vssは、駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgおよびソース電圧Vsの各初期化電位となる。
〔閾値補正期間〕
次に、時刻t3で、図5(D)に示すように、電源供給線32の電位DSが低電位Vssから高電位Vccに切り替わると、駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgが保たれた状態で閾値補正処理が開始される。すなわち、ゲート電圧Vgから駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthを減じた電位に向けて駆動トランジスタ22のソース電圧Vsが上昇を開始する。
ここでは、駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgの初期化電位Vofsを基準とし、当該初期化電位Vofsから駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthを減じた電位に向けてソース電圧Vsを変化させる処理を閾値補正処理と呼んでいる。この閾値補正処理が進むと、やがて、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧Vgsが駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthに収束する。この閾値電圧Vthに相当する電圧は保持容量24に保持される。
なお、閾値補正処理を行う期間(閾値補正期間)において、電流が専ら保持容量24側に流れ、有機EL素子21側には流れないようにする必要がある。そのために、有機EL素子21がカットオフ状態となるように共通電源供給線34の電位Vcathを設定しておくこととする。
次に、時刻t4で書込み走査線31の電位WSが低電位側に遷移することで、図6(A)に示すように、書込みトランジスタ23が非導通状態となる。このとき、駆動トランジスタ22のゲート電極が信号線33から電気的に切り離されることによってフローティング状態になる。しかし、ゲート−ソース間電圧Vgsが駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthに等しいために、当該駆動トランジスタ22はカットオフ状態にある。したがって、駆動トランジスタ22に流れるドレイン−ソース間電流Idsは非常に小さい。
〔信号書込み&移動度補正期間〕
次に、時刻t5で、図6(B)に示すように、信号線33の電位が基準電位Vofsから映像信号の信号電圧Vsigに切り替わる。続いて、時刻t6で、書込み走査線31の電位WSが高電位側に遷移することで、図6(C)に示すように、書込みトランジスタ23が導通状態になって映像信号の信号電圧Vsigをサンプリングし、当該信号電圧Vsigを画素20内に書き込む。
この書込みトランジスタ23による信号電圧Vsigの書込みにより、駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgが信号電圧Vsigとなる。そして、映像信号の信号電圧Vsigによる駆動トランジスタ22の駆動の際に、当該駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthが保持容量24に保持された閾値電圧Vthに相当する電圧とキャンセルされる。この閾値キャンセルの原理の詳細については後述する。
このとき、有機EL素子21はカットオフ状態(ハイインピーダンス状態)にある。したがって、映像信号の信号電圧Vsigに応じて電源供給線32から駆動トランジスタ22に流れる電流(ドレイン−ソース間電流Ids)は有機EL素子21の等価容量Celに流れ込む。このドレイン−ソース間電流Idsにより、有機EL素子21の等価容量Celの充電が開始される。
この等価容量Celの充電により、駆動トランジスタ22のソース電圧Vsが時間の経過と共に上昇していく。このとき既に、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthの画素ごとのばらつきがキャンセルされており、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Idsは当該駆動トランジスタ22の移動度μに依存したものとなる。ここに、移動度μとは、駆動トランジスタ22のチャネルを構成する半導体薄膜の電子移動度である。
ここで、映像信号の信号電圧Vsigに対する保持容量24の保持電圧Vgsの比率が1(理想値)であると仮定する。この信号電圧Vsigに対する保持電圧Vgsの比率を書込みゲインと呼ぶ場合もある。すると、駆動トランジスタ22のソース電圧VsがVofs−Vth+ΔVの電位まで上昇することで、駆動トランジスタ22のゲート‐ソース間電圧VgsはVsig−Vofs+Vth−ΔVとなる。
すなわち、駆動トランジスタ22のソース電圧Vsの上昇分ΔVは、保持容量24に保持された電圧(Vsig−Vofs+Vth)から差し引かれるように作用する。換言すれば、ソース電圧Vsの上昇分ΔVは、保持容量24の充電電荷を放電するように作用し、負帰還がかけられたことになる。したがって、駆動トランジスタ22のソース電圧Vsの上昇分ΔVは負帰還の帰還量となる。
このように、駆動トランジスタ22に流れるドレイン−ソース間電流Idsに応じた帰還量ΔVでゲート‐ソース間電圧Vgsに負帰還をかけることで、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Idsの移動度μに対する依存性を打ち消すことができる。この移動度μに対する依存性を打ち消す処理が、駆動トランジスタ22の移動度μの画素ごとのばらつきを補正する移動度補正処理である。
より具体的には、駆動トランジスタ22のゲート電極に書き込まれる映像信号の信号振幅Vin(=Vsig−Vofs)が高いほどドレイン−ソース間電流Idsが大きくなるために、負帰還の帰還量ΔVの絶対値も大きくなる。したがって、発光輝度レベルに応じた移動度補正処理が行われる。
また、映像信号の信号振幅Vinを一定とした場合、駆動トランジスタ22の移動度μが大きいほど負帰還の帰還量ΔVの絶対値も大きくなるために、画素ごとの移動度μのばらつきを取り除くことができる。したがって、負帰還の帰還量ΔVは移動度補正の補正量とも言える。移動度補正の原理の詳細については後述する。
〔発光期間〕
次に、時刻t7で書込み走査線31の電位WSが低電位側に遷移することで、図6(D)に示すように、書込みトランジスタ23が非導通状態となる。これにより、駆動トランジスタ22のゲート電極は、信号線33から電気的に切り離されるためにフローティング状態になる。
ここで、駆動トランジスタ22のゲート電極がフローティング状態にあるときは、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間に保持容量24が接続されていることによって、駆動トランジスタ22のソース電圧Vsの変動に連動して(追従して)ゲート電圧Vgも変動する。このように、駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgがソース電圧Vsの変動に連動して変動する動作を、本明細書では保持容量24によるブートストラップ動作と呼ぶこととする。
駆動トランジスタ22のゲート電極がフローティング状態になり、それと同時に、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Idsが有機EL素子21に流れ始めることにより、当該ドレイン−ソース間電流Idsに応じて有機EL素子21のアノード電位が上昇する。
そして、有機EL素子21のアノード電位がVthel+Vcathを越えると、有機EL素子21に駆動電流が流れ始めるため有機EL素子21が発光を開始する。また、有機EL素子21のアノード電位の上昇は、即ち駆動トランジスタ22のソース電圧Vsの上昇に他ならない。駆動トランジスタ22のソース電圧Vsが上昇すると、保持容量24のブートストラップ動作により、駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgも連動して上昇する。
このとき、ブートストラップゲインが1(理想値)であると仮定した場合、ゲート電圧Vgの上昇量はソース電圧Vsの上昇量に等しくなる。故に、発光期間中駆動トランジスタ22のゲート‐ソース間電圧VgsはVsig−Vofs+Vth−ΔVで一定に保持される。そして、時刻t8で信号線33の電位が映像信号の信号電圧Vsigから基準電位Vofsに切り替わる。
以上説明した一連の回路動作において、閾値補正準備、閾値補正、信号電圧Vsigの書込み(信号書込み)および移動度補正の各処理動作は、1水平走査期間(1H)において実行される。また、信号書込みおよび移動度補正の各処理動作は、時刻t6−t7の期間において並行して実行される。
なお、ここでは、閾値補正処理を1回だけ実行する駆動法を採る場合を例に挙げて説明したが、この駆動法は一例に過ぎず、この駆動法に限られるものではない。例えば、閾値補正処理を移動度補正および信号書込み処理と共に行う1H期間に加えて、当該1H期間に先行する複数の水平走査期間に亘って分割して複数回実行する、いわゆる分割閾値補正を行う駆動法を採ることも可能である。
この分割閾値補正の駆動法を採用することにより、高精細化に伴う多画素化によって1水平走査期間に割り当てられる時間が短くなったとしても、閾値補正期間として複数の水平走査期間に亘って十分な時間を確保することができる。その結果、閾値補正処理を確実に行うことができる。
(閾値キャンセルの原理)
ここで、駆動トランジスタ22の閾値補正(即ち、閾値キャンセル)の原理について説明する。閾値補正処理は、先述したように、駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgの初期化電位Vofsを基準として当該電位Vofsから駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthを減じた電位に向かって、駆動トランジスタ22のソース電圧Vsを変化させる処理である。
駆動トランジスタ22は、飽和領域で動作するように設計されているために定電流源として動作する。定電流源として動作することで、有機EL素子21に対して駆動トランジスタ22から、次式(1)で与えられる一定のドレイン−ソース間電流(駆動電流)Idsが供給される。
Ids=(1/2)・μ(W/L)Cox(Vgs−Vth)2 ……(1)
ここで、Wは駆動トランジスタ22のチャネル幅、Lはチャネル長、Coxは単位面積当たりのゲート容量である。
図7に、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Ids対ゲート−ソース間電圧Vgsの特性を示す。
この特性図に示すように、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthの画素ごとのばらつきに対する補正を行わないと、閾値電圧VthがVth1のとき、ゲート−ソース間電圧Vgsに対応するドレイン−ソース間電流IdsがIds1になる。
これに対して、閾値電圧VthがVth2(Vth2>Vth1)のとき、同じゲート−ソース間電圧Vgsに対応するドレイン−ソース間電流IdsがIds2(Ids2<Ids)になる。すなわち、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthが変動すると、当該駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧Vgsが一定であってもドレイン−ソース間電流Idsが変動する。
一方、上記構成の画素(画素回路)20では、先述したように、発光時の駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧VgsがVsig−Vofs+Vth−ΔVであるために、これを式(1)に代入すると、ドレイン−ソース間電流Idsは、次式(2)で表される。
Ids=(1/2)・μ(W/L)Cox(Vsig−Vofs−ΔV)2
……(2)
すなわち、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthの項がキャンセルされており、駆動トランジスタ22から有機EL素子21に供給されるドレイン−ソース間電流Idsは、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthに依存しない。その結果、駆動トランジスタ22の製造プロセスのばらつきや経時変化により、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthが画素ごとに変動したとしても、ドレイン−ソース間電流Idsが変動しないために、有機EL素子21の発光輝度を一定に保つことができる。
(移動度補正の原理)
続いて、駆動トランジスタ22の移動度補正の原理について説明する。移動度補正処理は、先述したように、駆動トランジスタ22に流れるドレイン−ソース間電流Idsに応じた補正量ΔVで駆動トランジスタ22のゲート−ソース間の電位差に負帰還をかける処理である。この移動度補正処理により、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Idsの移動度μに対する依存性を打ち消すことができる。
図8に、駆動トランジスタ22の移動度μが相対的に大きい画素Aと、駆動トランジスタ22の移動度μが相対的に小さい画素Bとを比較した状態で特性カーブを示す。駆動トランジスタ22をポリシリコン薄膜トランジスタなどで構成した場合、画素Aや画素Bのように、画素間で移動度μがばらつくことは避けられない。
画素Aと画素Bで移動度μにばらつきがある状態で、駆動トランジスタ22のゲート電極に例えば両画素A,Bに対して同レベルの信号振幅Vin(=Vsig−Vofs)を書き込んだ場合を考える。この場合、移動度μの補正を何ら行わないと、移動度μの大きい画素Aに流れるドレイン−ソース間電流Ids1′と移動度μの小さい画素Bに流れるドレイン−ソース間電流Ids2′との間には大きな差が生じてしまう。このように、移動度μの画素ごとのばらつきに起因してドレイン−ソース間電流Idsに画素間で大きな差が生じると、画面のユニフォーミティが損なわれる。
ここで、先述した式(1)のトランジスタ特性式から明らかなように、移動度μが相対的に大きいとドレイン−ソース間電流Idsが大きくなる。したがって、負帰還における帰還量ΔVは移動度μが大きくなるほど大きくなる。図8に示すように、移動度μが相対的に大きな画素Aの帰還量ΔV1は、移動度μが相対的に小さな画素Bの帰還量ΔV2に比べて大きい。
そこで、移動度補正処理によって駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Idsに応じた帰還量ΔVでゲート−ソース間電圧Vgsに負帰還をかけることにより、移動度μが大きいほど負帰還が大きくかかることになる。その結果、移動度μの画素ごとのばらつきを抑制することができる。
具体的には、移動度μの大きな画素Aで帰還量ΔV1の補正をかけると、ドレイン−ソース間電流IdsはIds1′からIds1まで大きく下降する。一方、移動度μの小さな画素Bの帰還量ΔV2は小さいために、ドレイン−ソース間電流IdsはIds2′からIds2までの下降となり、それ程大きく下降しない。結果的に、画素Aのドレイン−ソース間電流Ids1と画素Bのドレイン−ソース間電流Ids2とはほぼ等しくなるために、移動度μの画素ごとのばらつきが補正される。
以上をまとめると、移動度μの異なる画素Aと画素Bがあった場合、移動度μの大きい画素Aの帰還量ΔV1は移動度μの小さい画素Bの帰還量ΔV2に比べて大きくなる。つまり、移動度μが大きい画素ほど帰還量ΔVが大きく、ドレイン−ソース間電流Idsの減少量が大きくなる。
したがって、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Idsに応じた帰還量ΔVで、ゲート−ソース間電圧Vgsに負帰還をかけることで、移動度μの異なる画素のドレイン−ソース間電流Idsの電流値が均一化される。その結果、移動度μの画素ごとのばらつきを補正することができる。すなわち、駆動トランジスタ22に流れる電流(ドレイン−ソース間電流Ids)に応じた帰還量ΔVで、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧Vgsに負帰還をかける処理が移動度補正処理となる。
ここで、図2に示した画素(画素回路)20において、閾値補正、移動度補正の有無による映像信号の信号電位(サンプリング電位)Vsigと駆動トランジスタ22のドレイン・ソース間電流Idsとの関係について図9を用いて説明する。
図9において、(A)は閾値補正処理および移動度補正処理を共に行わない場合、(B)は移動度補正処理を行わず、閾値補正処理のみを行った場合、(C)は閾値補正処理および移動度補正処理を共に行った場合をそれぞれ示している。図9(A)に示すように、閾値補正処理および移動度補正処理を共に行わない場合には、閾値電圧Vthおよび移動度μの画素A,Bごとのばらつきに起因してドレイン−ソース間電流Idsに画素A,B間で大きな差が生じることになる。
これに対して、閾値補正処理のみを行った場合は、図9(B)に示すように、ドレイン−ソース間電流Idsのばらつきをある程度低減できるものの、移動度μの画素A,Bごとのばらつきに起因する画素A,B間でのドレイン−ソース間電流Idsの差は残る。そして、閾値補正処理および移動度補正処理を共に行うことで、図9(C)に示すように、閾値電圧Vthおよび移動度μの画素A,Bごとのばらつきに起因する画素A,B間でのドレイン−ソース間電流Idsの差をほぼ無くすことができる。したがって、どの階調においても有機EL素子21の輝度ばらつきは発生せず、良好な画質の表示画像を得ることができる。
また、図2に示した画素20は、閾値補正および移動度補正の各補正機能に加えて、先述した保持容量24によるブートストラップ動作の機能を備えていることで、次のような作用効果を得ることができる。
すなわち、有機EL素子21のI−V特性の経時変化に伴って駆動トランジスタ22のソース電圧Vsが変化したとしても、保持容量24によるブートストラップ動作により、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電位Vgsを一定に維持することができる。したがって、有機EL素子21に流れる電流は変化せず一定となる。その結果、有機EL素子21の発光輝度も一定に保たれるために、有機EL素子21のI−V特性が経時変化したとしても、それに伴う輝度劣化のない画像表示を実現できる。
[画素分割]
以上説明した、本発明の前提となる有機EL表示装置10において、前にも述べたように、有機EL素子21を形成する工程や、駆動トランジスタ22、書込みトランジスタ23、保持容量24を形成する基板工程で異物が混入すると輝度欠陥が発生する。この輝度欠陥として、有機EL素子21の電極間ショートによる滅点などが挙げられる。
これら画素単位の輝度欠陥(点欠陥)が発生し、その欠陥数があらかじめ定められた基準数よりも多いと、所望の画品位の表示画像を得ることができないため、欠陥数が基準数よりも多い表示パネル70については廃棄せざるを得ない。その結果、表示パネル70、ひいては有機EL表示装置10の歩留まりが低下する。
そのため、一般的に、1つの画素(副画素)内に有機EL素子を含む画素構成素子を複数組設け、1つの画素の発光領域を複数の有機EL素子によって複数の発光領域に分割することで、個々の発光領域部分を分割画素とする画素分割の技術が用いられている。この画素分割の技術を用いることで、または、レーザーリペアなどのリペア技術を適用することで、滅点などの輝度欠陥の発生を防ぐことができるために、当該輝度欠陥に起因する表示パネル70の歩留まりの低下を抑えることができる。
<2.実施形態>
[システム構成]
図10は、画素分割を用いた本発明の一実施形態に係るアクティブマトリクス型表示装置の基本構成の概略を示すシステム構成図であり、図中、図1および図2と同等部分には同一符号を付して示している。
ここでも、一例として、デバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の電気光学素子、例えば有機EL素子を画素の発光素子として用いたアクティブマトリクス型有機EL表示装置の場合を例に挙げて説明するものとする。
図10に示すように、本実施形態に係る有機EL表示装置10Aは、画素20Aを駆動する駆動部として、書込み走査回路40、電源供給走査回路50および信号出力回路60に加えて、制御走査回路80を有する構成となっている。書込み走査回路40、電源供給走査回路50および信号出力回路60については、先述した本発明の前提となる有機EL表示装置10の場合と基本的に同じ構成となっている。
制御走査回路80は、クロックパルスckに同期してスタートパルスspを順にシフトするシフトレジスタ等によって構成されている。この制御走査回路80は、書込み走査回路40による線順次走査に同期して制御走査信号CSを行単位で順に出力する。画素アレイ部30には、m行n列の画素20の配列に対して、行方向に沿って制御走査線35(35−1〜35−m)が画素行ごとに配線されている。制御走査回路80から出力される制御走査信号CSは、制御走査線35を通して行単位で各画素20Aに与えられる。
前にも述べたように、有機EL表示装置10Aが白黒表示対応の場合は、白黒画像を形成する単位となる1つの画素が画素20Aに相当する。一方、有機EL表示装置10Aがカラー表示対応の場合は、カラー画像を形成する単位となる1つの画素が複数の副画素から構成され、この副画素が画素20Aに相当する。
本実施形態に係る有機EL表示装置10Aは、画素(副画素)20Aごとに有機EL素子21を含む画素構成素子を複数組設ける画素分割の構成を採っている。ここでは、一例として、画素20Aが2つの有機EL素子21−1,21−2を有し、当該有機EL素子21−1,21−2の開口部によって発光領域を2分割する画素分割(図20参照)の場合を例に挙げて説明するものとする。
図10には、ある1つの画素20Aの画素回路について示している。画素20Aは、2つの有機EL素子21−1,21−2に対してその駆動回路として、2つの駆動トランジスタ22−1,22−2および2つの保持容量24−1,24−2を有している。なお、本例の場合には、書込みトランジスタ23については、2つの有機EL素子21−1,21−2に対して1個共通に設けられている。
有機EL素子21−1,21−2は、各カソード電極が電位Vcathの共通電源供給線34に接続されている。駆動トランジスタ22−1,22−2は、ドレイン電極が電源供給線32に共通に接続され、ソース電極が有機EL素子21−1,21−2の各アノード電極にそれぞれ接続されている。
書込みトランジスタ23は、ゲート電極が書込み走査線31に、ソース電極が信号線33にそれぞれ接続され、ドレイン電極が駆動トランジスタ22−1,22−2の各ゲート電極に共通に接続されている。保持容量24−1,24−2は、各一端が駆動トランジスタ22−1,22−2の各ゲート電極に接続され、各他端が有機EL素子21−1,21−2の各アノード電極(駆動トランジスタ22−1,22−2の各ソース電極)に接続されている。
画素20Aはさらに、2つの有機EL素子21−1,21−2の駆動回路として、駆動トランジスタ22−1,22−2、書込みトランジスタ23および保持容量24−1,24−2に加えて、スイッチング素子であるスイッチングトランジスタ25を有している。スイッチングトランジスタ25は、2つの有機EL素子21−1,21−2の各アノード電極間に接続され、ゲート電極が制御走査線35に接続されている。
このスイッチングトランジスタ25は、制御走査回路80が制御走査線35を介してゲート電極に与えられる制御走査信号CSに応答して、書込みトランジスタ23による映像信号の信号電圧Vsigの書込み終了後の一定時間経過後に導通状態になる。スイッチングトランジスタ25が導通状態にあるときに、電源供給走査回路50は電源供給線32の電位DSを低電位Vssにする。
[回路動作]
続いて、上記構成の本実施形態に係る有機EL表示装置10Aの回路動作について、図11のタイミング波形図を参照しつつ説明する。
図11のタイミング波形図には、書込み走査信号WS、制御走査信号CS、電源供給線32の電位(電源電位)DSおよび信号線33の電位(Vofs/Vsig)のタイミング関係を示している。
閾値補正準備処理から信号書込み処理(移動度補正を含む)までの期間ではスイッチングトランジスタ25は非導通状態にある。したがって、有機EL素子21−1側の駆動回路と有機EL素子21−2側の駆動回路はそれぞれ独立して、先述した回路動作の場合と同様の閾値補正準備、閾値補正、信号書込みおよび移動度補正の各処理を実行する。これにより、有機EL素子21−1,21−2はそれぞれ独立に発光することになる。
そして、有機EL素子21−1,21−2の発光期間において、具体的には書込みトランジスタ23による映像信号の信号電圧Vsigの書込み終了後の一定時間T1経過後において、制御走査回路80は制御走査信号CSをアクティブ状態(“H”レベル状態)にする。この制御走査信号CSに応答して、スイッチングトランジスタ25が導通状態になり、有機EL素子21−1,21−2の各アノード電極間を電気的に接続する。
ここで、有機EL素子21−1,21−2のいずれも欠陥化していない画素、即ち滅点を含まない正常な画素であれば、有機EL素子21−1,21−2の各アノード電極間が接続されても、有機EL素子21−1,21−2の各アノード電位は変化しない。したがって、滅点を含まない正常な画素においては、スイッチングトランジスタ25が導通状態になっても発光状態が正常に維持される。
一方、電極間ショートによって欠陥化した有機EL素子を含む画素(以下、「欠陥化素子を含む画素」と記述する)では、図12の等価回路図に示すように、有機EL素子に並列に抵抗が挿入された形となる。ここでは、有機EL素子21−1,21−2のうち、有機EL素子21−2が欠陥化している例を示している。したがって、有機EL素子21−2に並列に抵抗Rが挿入された形となる。
この抵抗Rの抵抗値は、トランジスタのオン抵抗値や、有機EL素子の発光時の抵抗値に比べ、非常に小さい。したがって、欠陥化した有機EL素子21−2を含む画素においては、有機EL素子21−1,21−2の各アノード電極間が接続されることで、有機EL素子21−1,21−2の各アノード電位はカソード電位Vcathに接地されていると考えることができる。
次に、スイッチングトランジスタ25が導通状態にあるときに、電源供給走査回路50は電源供給線32の電位DSを高電位Vccから低電位Vssに変化させる。電源電位DSが高電位Vccから低電位Vssに変化することで、電源供給線32から駆動トランジスタ22−1,22−2の各ゲート電極に、当該駆動トランジスタ22−1,22−2のゲート−ドレイン間の寄生容量を介して負方向のカップリングが入る。
そして、一定時間T2の経過後に、電源供給走査回路50は電源電位DSが低電位Vssから高電位Vccに変化させる。また、制御走査回路80は、電源電位DSが高電位Vccになった後に、制御走査信号CSを“H”レベルから“L”レベルに遷移させる。これにより、スイッチングトランジスタ25が非導通状態になり、有機EL素子21−1,21−2の各アノード電極間の電気的接続を解除する。
ここで、欠陥化素子を含む画素では、上述したように、スイッチングトランジスタ25が導通状態になることで、正常に発光する有機EL素子21−1のアノード電位がカソード電位Vcathに接地される。これにより、電源電位DSが高電位Vccから低電位Vssに変化しても、有機EL素子21−1のアノード電位は変化しない。よって、電源電位DSが高電位Vccから低電位Vssに変化するときの負方向のカップリング量と、電源電位DSが低電位Vssから高電位Vccに変化するときの正方向のカップリング量とは等しくなる。
これに対して、有機EL素子21−1,21−2のいずれも欠陥化していない正常な画素においては、電源電位DSが高電位Vccから低電位Vssに変化することで、有機EL素子21−1,21−2のアノード電位は、発光電位から低電位Vssへと変化する。ここで、発光電位とは、有機EL素子21−1,21−2が発光するときの電位を言うものとする。
図13に、電源電位DSが高電位Vccから低電位Vssに変化するときと、低電位Vssから高電位Vccに変化するときの遷移波形を示す。ここで、アノード電位が発光電位から低電位Vssへ変化する際に、電源電位DSがVcc−Vssの中間値よりも高い電位Vxのときに駆動トランジスタ22−1,22−2のゲート−ドレイン間にチャネルが形成されるものとする。すなわち、電位Vxは、駆動トランジスタ22−1,22−2の動作領域が飽和領域から線形領域に切り替わり、ゲート−ドレイン間にチャネルが形成される電位である。
駆動トランジスタ22−1,22−2のゲート−ドレイン間にチャネルが形成されることで、駆動トランジスタ22−1,22−2のゲート−ドレイン間容量は大きくなる。また、有機EL素子21−1,21−2のアノード電位が発光電位から低電位Vssへ変化するので、駆動トランジスタ22−1,22−2のゲート電位Vgも、発光時の電位から低下する。
このため、一定時間T2の経過後、電源電位DSを低電位Vssから再び高電位Vccとする際に、駆動トランジスタ22−1,22−2のゲート電位Vgは、最初に電源電位DSが高電位Vccから低電位Vssへ変化したときよりも低くなっている。また、駆動トランジスタ22−1,22−2のゲート−ドレイン間容量は、ゲート−ドレイン間にチャネルが形成されているために大きい。
ここで、電源電位DSが低電位Vssから上昇し、Vcc−Vssの中間値よりも低い電位Vyになったときに駆動トランジスタ22−1,22−2のゲート−ドレイン間にチャネルが形成されなくなるものとする。すなわち、電位Vyは、駆動トランジスタ22−1,22−2の動作領域が線形領域から飽和領域に切り替わり、ゲート−ドレイン間にチャネルが形成されなくなる電位である。したがって、電源電位DSが電位Vyになれば駆動トランジスタ22−1,22−2のゲート−ドレイン間容量は小さくなると言える。
駆動トランジスタ22−1,22−2のゲート−ドレイン間にチャネルが形成される電位Vxと、チャネルが形成されなくなる電位Vyとを比較した場合、電位Vxの方が電位Vyよりも高くなる。これは、駆動トランジスタ22−1,22−2のゲート−ドレイン間にチャネルが形成されるか否かは駆動トランジスタ22−1,22−2のゲート電位Vgに依存するからである。
以上より、電源電位DSを高電位Vccから低電位Vssに切り替え、一定時間T2経過後に低電位Vssから再び高電位Vccに切り替えることで、正常な画素における駆動トランジスタ22−1,22−2のゲート−ソース間電圧Vgsが低下する。このとき、ゲート−ソース間電圧Vgsは、電位Vxと電位Vyとの差分で決定されるカップリング量だけ低下する。逆に、欠陥化素子を含む画素における駆動トランジスタ22−1,22−2のゲート−ソース間電圧Vgsは先述したように変化しない。
つまり、有機EL素子21−1,21−2のいずれも欠陥化していない正常な画素においては、駆動トランジスタ22−1,22−2のゲート−ソース間電圧Vgsが低下することで、画素の発光輝度が低下する。一方、欠陥化素子を含む画素では、駆動トランジスタ22−1,22−2のゲート−ソース間電圧Vgsが変化しないために、有機EL素子21−1のみによる発光輝度のままである。
すなわち、一方の有機EL素子21−2の欠陥化によって発光輝度が低下した画素に対して、正常な画素の発光輝度が低下することで、両画素の相対的な輝度差が小さくなる。そして、電源電位DSの切替えによる駆動トランジスタ22−1,22−2のゲート−ソース間電圧Vgsの低下量を調整することで、欠陥化素子を含む画素と正常な画素との相対的な輝度差をより小さく、好ましくは輝度差をゼロにすることができる。これにより、欠陥化素子を含む画素を半滅点の点欠陥として視認できない画質を得ることができる。
ここで、スイッチングトランジスタ25の導通状態における電源電位DSの切替えによる駆動トランジスタ22−1,22−2のゲート−ソース間電圧Vgsの低下量(カップリング量)は、電位Vxと電位Vyとの差分で決定される。したがって、ゲート−ソース間電圧Vgsの低下量については、電源電位DSを高電位Vccから当該高電位Vccよりも低い電位(本例では、Vss)に切り替えるときの当該電位の設定によって調整することができる。
一例として、電源電位DSを高電位Vccから当該高電位Vccよりも低い電位に切り替えるときの当該電位を低電位(第2電源電位)Vssよりも低く設定することで、駆動トランジスタ22−1,22−2のゲート−ソース間電圧Vgsの低下量が大きくなる。これにより、正常な画素の発光輝度を、欠陥化素子を含む画素の発光輝度により近づけることができる。
ただし、高電位Vccから切り替えるときの電位としては、低電位Vssよりも低い電位に限られるものではない。なお、高電位Vccから切り替えるときの電位として低電位Vssを用いることで、電源供給走査回路50の構成を変更せずに、タイミング関係を変更するだけで、所期の目的を達成できるという利点がある。
また、スイッチングトランジスタ25の導通状態における電源電位DSのVcc→Vss、Vss→Vccの切り替え回数を複数回にすることによっても駆動トランジスタ22−1,22−2のゲート−ソース間電圧Vgsの低下量を大きくすることができる。すなわち、電源電位DSの切り替え回数を増やすことで、正常な画素の発光輝度を、欠陥化素子を含む画素の発光輝度により近づけることができる。
上述したように、先ず、映像信号の信号電圧Vsigの書込み終了後にスイッチングトランジスタ25を導通状態にして有機EL素子21−1,21−2のアノード電極間を電気的に接続(短絡)する。次いで、スイッチングトランジスタ25が導通状態にあるときに、電源電位DSを高電位Vccから低電位Vssに、その後再び高電位Vccに切り替える。この一連の動作を行うことで、正常な画素の発光輝度を下げて欠陥化素子を含む画素の発光輝度との相対的な輝度差を小さくすることができる。そして、両画素間の相対的な輝度差を好ましくはゼロに近づけることで、欠陥化素子を含む画素を半滅点の点欠陥として視認できない画質を得ることができる。
また、有機EL素子21−1,21−2のアノード電極間を電気的に接続した状態であっても、正常な画素と同様に欠陥化素子を含む画素においても、先述した一連の閾値補正処理を正常に行うことができる。したがって、特に低階調表示時においても滅点のような点欠陥を視認できない画質を得ることができる。
因みに、欠陥化素子を含む画素を滅点または半滅点の画素として視認されないようにする方法として、当該画素に書き込む信号電圧Vsigを高くする方法も考えられる。滅点または半滅点の画素に書き込む信号電圧Vsigを高くするということは、白表示時の映像信号の信号電圧を上げることを意味する。この場合、映像信号の供給源である信号ドライバの耐圧を増加させる必要がある。そして、信号ドライバの耐圧を増加させるには、低耐圧の回路素子に比べて高価な高耐圧の回路素子を用いることになるために信号ドライバの価格が高くなる。その結果、表示装置全体の高コスト化を招く。
これに対して、本実施形態に係る駆動法を採用することで、白表示時の映像信号の信号電圧を上げずに、欠陥化素子を含む画素を滅点または半滅点の画素として視認されないようにすることができる。これにより、信号ドライバを高耐圧ドライバとする必要がなくために、表示装置全体の高コスト化を招くことなく、欠陥化素子を含む画素を滅点または半滅点の画素として視認されないようにすることができる。
<3.変形例>
上記実施形態では、画素分割について、1つの画素(副画素)が2つの有機EL素子を有し、これら有機EL素子の開口部によって発光領域を2分割する場合を例に挙げて説明したが、本発明は2分割の画素分割への適用に限られるものではない。すなわち、3分割以上の画素分割に対しても同様に適用することが可能である。3分割以上の画素分割の場合には、3つ以上の有機EL素子相互のアノード電極間にスイッチング素子25を設けるようにすることで、同様の作用効果を得ることができる。
また、上記実施形態では、有機EL素子21の駆動回路が、基本的に、駆動トランジスタ22および書込みトランジスタ23の2つのトランジスタ(Tr)を有する2Tr構成の場合を例に挙げて説明したが、本発明はこの2Tr構成への適用に限られるものではない。2Tr以外には、例えば、有機EL素子21の発光/非発光を制御するトランジスタを有したり、駆動トランジスタ22のゲート電極に基準電位Vofsを選択的に書き込むスイッチングトランジスタを有したりする画素構成など、種々の画素構成のものが考えられる。
また、上記実施形態では、画素の電気光学素子として、有機EL素子を用いた有機EL表示装置に適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明はこの適用例に限られるものではない。具体的には、本発明は、無機EL素子、LED素子、半導体レーザー素子等、デバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型電気光学素子(発光素子)を用いた表示装置全般に対して適用可能である。
<4.適用例>
以上説明した本発明による表示装置は、電子機器に入力された映像信号、若しくは、電子機器内で生成した映像信号を、画像若しくは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
本発明による表示装置によれば、欠陥化した有機EL素子を含む画素(副画素)を点欠陥として視認できない画質を実現できるために、表示画像の画質の向上を図ることができる。したがって、あらゆる分野の電子機器の表示装置として本発明による表示装置を用いることで、当該電子機器の表示装置の高品位の画表示を実現できる。
本発明による表示装置は、封止された構成のモジュール形状のものをも含む。このモジュール形状のものとしては、例えば、画素アレイ部に透明なガラス等の対向部が貼り付けられて形成された表示モジュールが該当する。この透明な対向部には、カラーフィルタ、保護膜等、さらには、上記した遮光膜が設けられてもよい。なお、表示モジュールには、外部から画素アレイ部への信号等を入出力するための回路部やFPC(フレキシブルプリントサーキット)等が設けられていてもよい。
以下に、本発明が適用される電子機器の具体例について説明する。一例として、図14〜図18に示す様々な電子機器、例えば、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話機等の携帯端末装置、ビデオカメラなどの表示装置に本発明を適用することが可能である。
図14は、本発明が適用されるテレビジョンセットの外観を示す斜視図である。本適用例に係るテレビジョンセットは、フロントパネル102やフィルターガラス103等から構成される映像表示画面部101を含んでいる。そして、映像表示画面部101として本発明による表示装置を用いることにより、本適用例に係るテレビジョンセットが作製される。
図15は、本発明が適用されるデジタルカメラの外観を示す斜視図であり、(A)は表側から見た斜視図、(B)は裏側から見た斜視図である。本適用例に係るデジタルカメラは、フラッシュ用の発光部111、表示部112、メニュースイッチ113、シャッターボタン114等を含んでいる。そして、表示部112として本発明による表示装置を用いることにより、本適用例に係るデジタルカメラが作製される。
図16は、本発明が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を示す斜視図である。本適用例に係るノート型パーソナルコンピュータは、本体121に、文字等を入力するときに操作されるキーボード122、画像を表示する表示部123等を含んでいる。そして、表示部123として本発明による表示装置を用いることにより、本適用例に係るノート型パーソナルコンピュータが作製される。
図17は、本発明が適用されるビデオカメラの外観を示す斜視図である。本適用例に係るビデオカメラは、本体部131、前方を向いた側面に被写体撮影用のレンズ132、撮影時のスタート/ストップスイッチ133、表示部134等を含んでいる。そして、表示部134として本発明による表示装置を用いることにより、本適用例に係るビデオカメラが作製される。
図18は、本発明が適用される携帯端末装置、例えば携帯電話機を示す外観図であり、(A)は開いた状態での正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態での正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
本適用例に係る携帯電話機は、上側筐体141、下側筐体142、連結部(ここではヒンジ部)143、ディスプレイ144、サブディスプレイ145、ピクチャーライト146、カメラ147等を含んでいる。そして、ディスプレイ144やサブディスプレイ145として本発明による表示装置を用いることにより、本適用例に係る携帯電話機が作製される。
本発明の前提となる有機EL表示装置の構成の概略を示すシステム構成図である。 画素の基本的な回路構成を示す回路図である。 画素の断面構造の一例を示す断面図である。 本発明の前提となる有機EL表示装置の回路動作の説明に供するタイミング波形図である。 本発明の前提となる有機EL表示装置の回路動作の説明に供する動作説明図(その1)である。 本発明の前提となる有機EL表示装置の回路動作の説明に供する動作説明図(その2)である。 駆動トランジスタの閾値電圧Vthのばらつきに起因する課題の説明に供する特性図である。 駆動トランジスタの移動度μのばらつきに起因する課題の説明に供する特性図である。 閾値補正、移動度補正の有無による映像信号の信号電圧Vsigと駆動トランジスタのドレイン・ソース間電流Idsとの関係の説明に供する特性図である。 本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置の構成の概略を示すシステム構成図である。 本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置の回路動作の説明に供するタイミング波形図である。 電極間ショートによって欠陥化した有機EL素子を含む画素の等価回路図である。 電源電位DSが高電位Vccから低電位Vssに変化するときと、低電位Vssから高電位Vccに変化するときの遷移波形を示す波形図である。 本発明が適用されるテレビジョンセットの外観を示す斜視図である。 本発明が適用されるデジタルカメラの外観を示す斜視図であり、(A)は表側から見た斜視図、(B)は裏側から見た斜視図である。 本発明が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を示す斜視図である。 本発明が適用されるビデオカメラの外観を示す斜視図である。 本発明が適用される携帯電話機を示す外観図であり、(A)は開いた状態での正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態での正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。 滅点対策のための画素回路の一例を示す回路図である。 1つの副画素内に有機EL素子を2個有する場合の有機EL素子のレイアウトを示す平面パターン図である。
符号の説明
10,10A…有機EL表示装置、20,20A…画素(画素回路)、21(21−1,21−2)…有機EL素子、22(22−1,22−2)…駆動トランジスタ、23…書込みトランジスタ、24(24−1,24−2)…保持容量、25…スイッチングトランジスタ、30…画素アレイ部、31(31−1〜31−m)…走査線、32(32−1〜32−m)…電源供給線、33(33−1〜33−n)…信号線、34…共通電源供給線、35…制御走査線、40…書込み走査回路、50…電源供給走査回路、60…信号出力回路、70…表示パネル、80…制御走査回路、WS(WS1〜WSm)…走査線の電位(書込み走査信号)、DS(DS1〜DSm)…電源供給線の電位(電源電位)

Claims (8)

  1. 電気光学素子および当該電気光学素子を駆動する駆動トランジスタを複数組有するとともに、前記電気光学素子のアノード電極間に接続されたスイッチング素子を有する画素が複数配置された画素アレイ部と、
    映像信号の書込み終了後に前記スイッチング素子を導通状態にする制御走査回路と、
    前記スイッチング素子が導通状態にあるときに、前記駆動トランジスタに与える電源電位を当該駆動トランジスタに電流を供給する第1電位から当該第1電位よりも低い電位に切り替え、その後に前記第1電位に切り替える電源供給走査回路と
    を備えた表示装置。
  2. 前記電源電位を前記第1電位から当該第1電位よりも低い電位に切り替えるときの当該低い電位によって、前記スイッチング素子の導通状態における前記駆動トランジスタのゲート−ソース間電圧の低下量を決める
    請求項1記載の表示装置。
  3. 前記電源供給走査回路は、前記駆動トランジスタに与える電源電位を前記第1電位と、当該第1電位よりも低く、前記電気光学素子に逆バイアスをかける第2電位とに選択的に切替え可能であり、
    前記電源電位を前記第1電位から当該第1電位よりも低い電位に切り替えるときの当該低い電位は前記第2電位である
    請求項2記載の表示装置。
  4. 前記電源供給走査回路は、前記駆動トランジスタに与える電源電位を当該駆動トランジスタに電流を供給する第1電位から当該第1電位よりも低い電位に切り替え、その後に前記第1電位に切り替える動作を複数回行う
    請求項1記載の表示装置。
  5. 前記電源電位を前記第1電位から当該第1電位よりも低い電位に切り替え、その後に前記第1電位に切り替える動作を複数回行う際の回数によって、前記スイッチング素子の導通状態における前記駆動トランジスタのゲート−ソース間電圧の低下量を決める
    請求項4記載の表示装置。
  6. 前記画素は、前記駆動トランジスタのゲート電位およびソース電位を初期化する閾値補正準備機能と、前記駆動トランジスタのゲート電位の初期化電位を基準として当該初期化電位から前記駆動トランジスタの閾値電圧を減じた電位に向かって、前記駆動トランジスタのソース電位を変化させる閾値補正機能とを有し、
    前記制御走査回路は、前記閾値補正準備機能、前記閾値補正機能の各処理期間および映像信号の書込み期間では前記スイッチング素子を非導通状態にする
    請求項1記載の表示装置。
  7. 電気光学素子および当該電気光学素子を駆動する駆動トランジスタを複数組有するとともに、前記電気光学素子のアノード電極間に接続されたスイッチング素子を有する画素が複数配置された表示装置の駆動に当たって、
    映像信号の書込み終了後に前記スイッチング素子を導通状態にし、
    前記スイッチング素子が導通状態にあるときに、前記駆動トランジスタに与える電源電位を当該駆動トランジスタに電流を供給する第1電位から当該第1電位よりも低い電位に切り替え、その後に前記第1電位に切り替える
    表示装置の駆動方法。
  8. 電気光学素子および当該電気光学素子を駆動する駆動トランジスタを複数組有するとともに、前記電気光学素子のアノード電極間に接続されたスイッチング素子を有する画素が複数配置された画素アレイ部と、
    映像信号の書込み終了後に前記スイッチング素子を導通状態にする制御走査回路と、
    前記スイッチング素子が導通状態にあるときに、前記駆動トランジスタに与える電源電位を当該駆動トランジスタに電流を供給する第1電位から当該第1電位よりも低い電位に切り替え、その後に前記第1電位に切り替える電源供給走査回路と
    を備えた表示装置を有する電子機器。
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